説明

注意喚起舗装

【課題】車両運転者に対し、車両が道路から逸脱したり走行速度が速すぎることを適確に注意喚起する舗装道路を提供する。
【解決手段】アスファルト混合物からなる舗装道路路面に溝を形成し、溝の幅および溝どうしの間隔を適宜設定することにより、車両の走行により発生する振動音の高さおよび強さを変化させて警告音とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両走行用舗装道路に関し、特に運転者の注意喚起を促す注意喚起舗装に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両運転者の不注意により、車両が道路から逸脱したり走行速度が速すぎたりすることを防止するために、道路舗装体表面に走行方向と垂直方向の溝を形成することがしばしば行われている。このような注意喚起舗装の構築方法として、道路区画線に沿ってテンプレート部材を設置し、締固め機械で圧入後に離脱させて連続的な溝を形成する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−29905号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した注意喚起舗装は、道路区画線に沿って溝を形成するものなので、車両運転者が道路からの逸脱に気づいたときには手遅れになっている場合がある。
本発明の目的は、車両運転者への注意喚起をより適切に行いうる車両走行用舗装道路の注意喚起舗装を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、第1に、アスファルト混合物からなる舗装道路の路面に、車両の走行により警告音を発生する複数条の溝を車両走行方向と交差する方向に形成した舗装において、複数の溝から構成される溝ゾーンの溝どうしの間隔が隣り合う溝ゾーンごとにしだいに広くなる区間および/または前記溝ゾーンの溝どうしの間隔が隣り合う溝ゾーンごとにしだいに狭くなる区間、を設けたことを特徴とする注意喚起舗装である。
【0006】
本発明は、第2に、アスファルト混合物からなる舗装道路の路面に、車両の走行により警告音を発生する複数条の溝を車両走行方向と交差する方向に形成した舗装において、複数の溝から構成される溝ゾーンの溝の幅が隣り合う溝ゾーンごとにしだいに大きくなる区間および/または前記溝ゾーンの溝の幅が隣り合う溝ゾーンごとにしだいに小さくなる区間、を設けたことを特徴とする注意喚起舗装である。
【0007】
本発明は、第3に、上記2種の舗装を組み合わせることを特徴とする注意喚起舗装である。
本発明は、第4に、上記のアスファルト混合物が、バインダとしてポリマー改質アスファルトを配合していることを特徴とする上記いずれかの注意喚起舗装である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、舗装道路の路面に設けた溝から発生する警告音により、確実に車両運転者に対する注意喚起を行える。
さらに、舗装道路の曲線部や急勾配部に溝を設ければ、この溝が路面排水機能を発揮するので、スリップ事故の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一態様の溝ゾーンの組合せを示す説明図。
【図2】本発明の別の一態様の溝ゾーンの組合せを示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の注意喚起舗装は、アスファルト混合物からなる舗装道路の路面に車両走行方向と交差する方向に、複数の溝を所定の幅および間隔で設けることにより、車両運転者に対する警告音を発生させるものである。
本発明において、「交差する方向」とは直交する方向のみならず、斜めに交わる方向も含むものである。
【0011】
本発明における溝としては、溝幅が15〜25mm程度、溝深さが5〜7mm程度であるものが好ましい。
本発明の注意喚起舗装はある程度以上の長さに亘り前記した所定間隔で溝を形成したものであり、典型的には、音の高さを変化させる態様と音の強さを変化させる態様を包含している。
【0012】
音の高さを変化させる態様は、図1に示すように、溝ゾーンを構成する溝どうしの間隔がしだいに広くなる第1区間と、溝ゾーンを構成する溝どうしの間隔がしだいに狭くなる第2区間とを交互に配置する態様であり、第1区間では低音から高音へ変化し、第2区間では高音から低音へ変化する。
【0013】
第1区間のみを連続して設けてもよいし、第2区間のみを連続して設けてもよいし、第1区間と第2区間とを交互に設けてもよい。
溝どうしの間隔の一例としては、パトカーのサイレン音を模倣した音の場合、車両の走行速度を60km/hに設定すると、ゾーンA50mm(ミ)、ゾーンB47mm(ファ)、ゾーンC42mm(ソ)、ゾーンD37mm(ラ)、ゾーンC42mm(ソ)、ゾーンB47mm(ファ)ゾーンA50mm(ミ)、ゾーンB47mm(ファ)、ゾーンC42mm(ソ)の順の繰返しが例示される。
【0014】
救急車のサイレン音を模倣した音の場合、溝どうしの間隔の例として、車両の走行速度を60km/hに設定すると、ゾーン(1)84mm(ソ)、ゾーン(2)67mm(シ)、ゾーン(1)84mm(ソ)、ゾーン(2)67mm(シ)、ゾーン(1)84mm(ソ)、ゾーン(2)67mm(シ)の順の繰返しが例示される。
【0015】
音の強さを変化させる態様は、図2に示すように、溝ゾーンを構成する溝の幅がしだいに大きくなる第3区間と、溝ゾーンを構成する溝の幅がしだいに小さくなる第4区間とを交互に配置する態様であり、第3区間では弱音から強音へ変化し、第4区間では強音から弱音へ変化する。
第3区間のみを連続して設けてもよいし、第4区間のみを連続して設けてもよいし、第1区間と第2区間とを交互に設けてもよい。
【0016】
溝の幅の一例としては、ゾーンD9mm(小)、ゾーンE12mm(中)、ゾーンF15mm(大)、ゾーンF15mm(大)、ゾーンE12mm(中)、ゾーンD9mm(小)の順の繰返しが例示される。
【0017】
本発明では、上記の音の高さを変化させる態様(区間)と音の強さを変化させる態様(区間)を組み合せることも可能であり、それにより運転者に対する一層効果的な警告音を得ることができる。
【0018】
溝の形成方法は特に限定はされないが、複数枚の円盤状切削ブレードを溝の幅と間隔にあわせて組み合わせた切削装置を用いて溝を切削する方法が効率的である。
対象となる舗装も特に限定はされないが、バインダとしてポリマー改質アスファルトを用いた密粒度アスファルト混合物からなる舗装道路に適用すると、溝の切削時に角欠けなどがなく仕上がりが良好で耐久性も高いので好ましい。
尚、変形例として表面に凹凸を設けて溝の形状としたシート部材を路面に貼り付けることも可能である。
【実施例】
【0019】
本発明の効果を確認するために、アスファルト混合物とこれに用いるバインダの種類を変えた舗装による試験施工を行った。溝の切削には舗装用カッタを用いた。
結果は下表のとおりである。
密粒度アスファルト混合物とポリマー改質アスファルトII型との組合せが、最も良好な結果となった。
密粒度アスファルト混合物とストレートアスファルトとの組合せは、車両走行による溝のつぶれがあった。
開粒度アスファルト混合物では溝の切削時に骨材の飛散があり、結果は不良であった。
【0020】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルト混合物からなる舗装道路の路面に、車両の走行により警告音を発生する複数条の溝を車両走行方向と交差する方向に形成した舗装において、複数の溝から構成される溝ゾーンの溝どうしの間隔が隣り合う溝ゾーンごとにしだいに広くなる区間および/または前記溝ゾーンの溝どうしの間隔が隣り合う溝ゾーンごとにしだいに狭くなる区間、を設けたことを特徴とする注意喚起舗装。
【請求項2】
アスファルト混合物からなる舗装道路の路面に、車両の走行により警告音を発生する複数条の溝を車両走行方向と交差する方向に形成した舗装において、複数の溝から構成される溝ゾーンの溝の幅が隣り合う溝ゾーンごとにしだいに大きくなる区間および/または前記溝ゾーンの溝の幅が隣り合う溝ゾーンごとにしだいに小さくなる区間、を設けたことを特徴とする注意喚起舗装。
【請求項3】
請求項1および請求項2の舗装を組み合わせることを特徴とする注意喚起舗装。
【請求項4】
アスファルト混合物が、バインダとしてポリマー改質アスファルトを配合していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の注意喚起舗装。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−248794(P2010−248794A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−99560(P2009−99560)
【出願日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(390030384)末広産業株式会社 (7)
【出願人】(590002482)株式会社NIPPO (130)
【Fターム(参考)】