説明

注文入力装置及びこの装置を構成するハンディ端末の通信制御プログラム

【課題】コストの増大を招くことなくパネル型と見開き型の両方のタイプに対応できる上、品質的にも十分な注文入力装置を提供する。
【解決手段】注文入力装置は、近距離無線と近接無線とをそれぞれ搭載した複数のハンディ端末を連動させて注文データの入力を受付け、入力された注文データを注文管理装置に伝送する。このものにおいて、各ハンディ端末は、注文管理装置との通信には近距離無線を使用し、他のハンディ端末との通信には近接無線を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、注文データの入力を受付け、入力された注文データを、無線を利用して注文管理装置に伝送する注文入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
飲食店等の無線オーダシステムで使用されるハンディ型の注文入力装置には、単板状のパネル型と2つ折りの見開き型とがある。見開き型はパネル型に比してボタン類を多く配置することができ、慣れない店員にとっては使いやすい。一方、熟練した店員に取っては、見開き型の大きさが欠点となり、却ってパネル型の方が使いやすい場合がある。しかし、両方の機種を用意することはコストの増大を招き、非現実的である。
【0003】
また、見開き型の注文入力装置は、本体と蓋体とで構成される。そして、本体側にはLCDやバッテリーを初め処理機能の大部分が搭載され、蓋体側には拡張キー入力用のメンブレンスイッチマトリックスが配置される。この場合、何らかの手段で本体側から蓋体側に電源供給をしながら、データ通信を行わなければならない。そのための最も簡単な方法は、電気的なケーブルを使って本体側と蓋体側を直接繋ぐことである。しかし、この方法では、蓋の開閉に伴う疲労劣化によりケーブルの断線が起こりやすく、品質的には十分とは云えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−202974号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、パネル型と見開き型の注文入力装置はそれぞれ長所を有しているが、両方の機種を用意するのはコストの増大を招くことになる。また、見開き型の注文入力装置においては、本体側から蓋体側への電源供給及び両者間のデータ通信が必要となるが、電気的なケーブルを使った場合には品質的に十分とは云えない。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、コストの増大を招くことなくパネル型と見開き型の両方のタイプに対応できる上、品質的にも十分な注文入力装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態において、注文入力装置は、近距離無線と近接無線とをそれぞれ搭載した複数のハンディ端末を連動させて注文データの入力を受付け、入力された注文データを注文管理装置に伝送するものであって、各ハンディ端末は、注文管理装置との通信には近距離無線を使用し、他のハンディ端末との通信には近接無線を使用する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態のシステム構成図。
【図2】同実施形態におけるハンディ端末の要部構成を示すブロック図。
【図3】1つの赤外線トランシーバで筐体の両側面部に送受信部を配置するための一構成例を示す模式図。
【図4】図3における受光部の受光面を示す模式図。
【図5】第1の実施形態において、ハンディ端末のCPUが通信制御プログラムに従って実行する電源オン処理の主要な手順を示す流れ図。
【図6】第1の実施形態において、ハンディ端末のCPUが、注文受付処理のなかで通信制御プログラムに従って実行する通信制御処理の主要な手順を示す流れ図。
【図7】第2の実施形態のシステム構成図。
【図8】第2の実施形態において、ハンディ端末のCPUが通信制御プログラムに従って実行する電源オン処理の主要な手順を示す流れ図。
【図9】第1の実施形態において、ハンディ端末のCPUが、注文受付処理のなかで通信制御プログラムに従って実行する通信制御処理の主要な手順を示す流れ図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、いくつかの実施形態について、図面を用いて説明する。
なお、これらの実施形態は、いずれも飲食店の無線オーダシステムで使用されるハンディ型の注文入力装置に本発明を適用した場合である。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係わる無線オーダシステムの全体構成図である。本システムは、有線LAN(Local Area Network)を構成する通信ケーブル10に、ステーション20、POS(Point Of Sales)端末30、キッチンプリンタ40及びアクセスポイント50を接続している。アクセスポイント50は、無線LANの親機として機能し、このアクセスポイント50に、ハンディ型の注文入力装置60が無線通信により接続可能となっている。
【0011】
注文入力装置60は、飲食メニューに係わる注文データの入力を受付け、入力された注文データを無線LAN経由で注文管理装置としてのステーション20に伝送する。注文入力装置60から無線送信された注文データは、アクセスポイント50で受信され、通信ケーブル10を介してステーション20に伝送される。
【0012】
注文入力装置60で入力された注文データを受信すると、ステーション20は、この注文データを記憶部で記憶保持する。また、この注文データから、注文伝票の印字データを編集する。そして、この印字データを、通信ケーブル10を介してキッチンプリンタ40に出力する。キッチンプリンタ40は、ステーション20から送られてきた印字データにより、注文内容の明細を示す注文伝票をプリントアウトする。
【0013】
POS端末30は、注文伝票の伝票番号入力手段を有する。伝票番号は、注文伝票の識別情報である。POS端末30において伝票番号が入力されると、ステーション20は、その伝票番号で識別される注文伝票に対応した注文データを、通信ケーブル10を介してPOS端末30に出力する。POS端末30は、ステーション20から送られてきた注文データにより、飲食代金の会計を処理する。
【0014】
注文入力装置60は、本体フレーム61と、2台のハンディ端末62A,62Bとからなる。本体フレーム61は、軸61Cと、この軸61Cを挟んで左右両側に設けられた一対の端末保持板61A,61Bとからなる。本体フレーム61は、軸61Cを中心にして、端末保持板61A,61Bをそれぞれ内側に折り畳み可能となっている。各端末保持板61A,61Bの内面には、それぞれ凹部が形成されており、これらの凹部に、それぞれハンディ端末62A,62Bが背面側から着脱自在に装着される。
【0015】
ハンディ端末62A,62Bは同一構造であり、その要部構成を図2のブロック図で示す。図1及び図2に示すように、ハンディ端末62A,62Bは、片手で携帯が可能な板状の筐体70の正面に、液晶ディスプレイ71とタッチセンサ72とからなるタッチパネル73を取り付けている。また、ハンディ端末62A,62Bは、筐体70内に、制御ボード74と、近距離無線の一種である無線LAN通信に対応したトランシーバ(以下、無線LANトランシーバと称する)75と、近接無線の一種である赤外線通信に対応したトランシーバ(以下、赤外線トランシーバと称する)76とを搭載している。
【0016】
制御ボード74には、CPU(Central Processing Unit)741、ROM(Read Only Memory)742、RAM(Random Access Memory)743、通信コントローラ744及びタッチパネルコントローラ745が実装されている。CPU741は、ハンディ端末62A,62Bを注文入力装置60として機能させるための制御の中枢を担う。ROM742は、CPU741が実行するプログラムや固定的なデータを記憶する。RAM743は、種々の可変的なデータを一時的に記憶する。通信コントローラ744は、前記無線LANトランシーバ75と赤外線トランシーバ76の駆動を制御する。タッチパネルコントローラ745は、タッチパネル73における液晶ディスプレイ71の画面表示を制御する。またタッチパネルコントローラ745は、タッチセンサ72の検出信号から、液晶ディスプレイ71の画面上のタッチ位置データを取得する。
【0017】
無線LANトランシーバ75は、アンテナ751を接続しており、無線LANの子機として機能する。すなわち無線LANトランシーバ75は、アクセスポイント50との間で、無線LANを用いた近距離無線によりデータを送受信する。このとき使用する周波数は、アクセスポイント50と無線LANトランシーバ75の間で予め設定されている。
【0018】
赤外線トランシーバ76は、第1の送受信部761と第2の送受信部762とを接続しており、これらの送受信部761,762のいずれか一方または両方に近接した他の赤外線トランシーバの送受信部との間で、赤外線を用いた近接無線によりデータを送受信する。ここで、第1の送受信部761と第2の送受信部762は、それぞれ筐体70の長手方向における両側面部の同じ高さに配置している。本実施形態では、第1の送受信部761は、タッチパネル73が設けられている正面側から見て右側面部に配置され、第2の送受信部762は左側面部に配置されている。
【0019】
図3は、1つの赤外線トランシーバ76で筐体70の両側面部に送受信部761,762を配置するための一構成例を示す模式図である。この例は、赤外線トランシーバ76の作用により発光部81から発光される赤外光L0を、右方向の赤外光L1と左方向の赤外光L2とに分離するために、光学系のミラー82を用いる。また、赤外光L1が到達する筐体70の右側面部と、赤外光L2が到達する筐体70の左側面部とに、それぞれ窓83,84を形成する。窓83及び窓84には、いずれも使用する波長の赤外光だけが通過可能なフィルタを介在させる。
【0020】
こうすることにより、右側の窓83からは赤外光L1だけが筐体70の外部に出射され、また、この赤外光L1と同一波長の赤外光L3だけが外部から筐体70内に入射される。同様に、左側の窓84からは赤外光L2だけが筐体70の外部に出射され、また、この赤外光L2と同一波長の赤外光L4だけが外部から筐体70内に入射される。筐体70内に入射した赤外光L3,L4は、いずれもミラー82で反射して、受光部85で受光される。
【0021】
受光部85の受光面は、図4に示すように、右側受光面85Rと左側受光面85Lとに区分されている。赤外線トランシーバ75は、右側受光面85Rで赤外光L3を受光すると、第1の送受信部761でデータを受信したものとして処理する。同様に、左側受光面85Lで赤外光L4を受光すると、第2の送受信部762でデータを受信したものとして処理する。
【0022】
なお、赤外光の送信時には受光部85の電源を切り、受信時には発光部81の電源を切ることによって、出力の回り込みを防ぐことができる。
【0023】
かかる構成のハンディ端末62A,62Bは、いずれも単体では、パネル型の注文入力装置として用いることができる。また、本体フレーム61の端末保持板61A,61Bに装着することによって、ハンディ端末62A,62Bは、見開き型の注文入力装置として用いることができる。見開き型の注文入力装置として用いる場合、ハンディ端末62A,62Bを端末保持板61A,61Bのどちらに装着するかは、特に制限されるものではない。
【0024】
今、図1に示すように、正面から見て左側の端末保持板61Aにハンディ端末62Aが装着され、右側の端末保持板61Bにハンディ端末62Bが装着されているものとする。この状態で、ハンディ端末62A,62Bの電源をそれぞれ投入すると、両ハンディ端末62A,62BのCPU741は、いずれも図5の流れ図に示す処理を実行する。この処理の手順は、ROM742に記憶された通信制御プログラムに従ったものである。
【0025】
先ず、CPU741は、通信コントローラ744を制御して赤外線トランシーバ76を起動し、左右の送受信部761,762から赤外線通信によって端末IDのデータを送信させる(ST1)。端末IDは、ハンディ端末62A,62B毎に固有のデータであり、それぞれROM742に予め設定されている。
【0026】
端末IDを送信後、CPU741は、所定時間内に赤外線トランシーバ76において他のハンディ端末の端末IDを受信するのを待機する(ST2)。
図1に示すように、本体フレーム61にハンディ端末62A,62Bが装着されていた場合には、一方のハンディ端末から赤外線通信によって送信される端末IDのデータは、他方のハンディ端末で受信される。ところが、本体フレーム61に装着されていない場合には、他のハンディ端末の端末IDを受信することはない。
【0027】
他のハンディ端末の端末IDを受信することなく所定時間が経過した場合(ST2のNO)、CPU741は、パネル型の注文入力装置としての処理ルーチンに移行する。すなわち、ハンディ端末62A,62Bは、単体ではパネル型の注文入力装置として機能する。
【0028】
これに対し、所定時間内に他のハンディ端末の端末IDを受信したならば(ST2のYES)、CPU741は、左右どちらの送受信部761,762で端末IDを受信したのかを判定する(ST3)。右側の送受信部761で端末IDを受信した場合、そのCPU741を搭載したハンディ端末は左側の端末保持板61Aに装着されている。この場合、CPU741は、RAM743に用意された主端末フラグを“ON”する(ST4)。またCPU741は、液晶ディスプレイ71に主端末用画面を表示させる(ST5)。
【0029】
これに対し、左側の送受信部762で端末IDを受信した場合には、そのCPU741を搭載したハンディ端末は右側の端末保持板61Bに装着されている。この場合、CPU741は、主端末フラグを“OFF”する(ST6)。また、液晶ディスプレイ71に副端末用画面を表示させる(ST7)。
【0030】
図1において、ハンディ端末62Aのタッチパネル73に表示されている画面は主端末用画面の一例であり、ハンディ端末62Bのタッチパネル73に表示されている画面は副端末用画面の一例である。図1に示すように、主端末用画面には、新規キー,追加キー,テーブナンバーキー、伝票ナンバーキー等のファンクションキーや、テンキー等が配設されている。副端末用画面には、各種の飲食メニュー品目がそれぞれ割り当てられたメニューマトリクスキーが配設されている。
【0031】
主端末画面または副端末画面を表示させた後、CPU741は、通信コントローラ744を制御して無線LANトランシーバ75を起動し、アクセスポイント50との間で、無線LANを用いたテスト通信を実施して、その受信レベルを測定する(ST8:受信レベル検出手段)。そして、受信レベルを測定できたならば、CPU741は、主端末フラグが“ON”なのか“OFF”なのかを識別する(ST9)。
【0032】
主端末フラグが“OFF”の場合、CPU741は、赤外線トランシーバ76を起動し、左右の送受信部761,762から赤外線通信によって受信レベルのデータを送信する(ST10)。これに対し、主端末フラグが“ON”の場合には、CPU741は、赤外線トランシーバ76を監視し、他のハンディ端末から赤外線通信によって送られてくる受信レベルのデータを受信する(ST11:収集手段)。すなわち、図1においては、右側のハンディ端末62B(主端末フラグが“OFF”)が、左右の送受信部761,762から無線LAN受信レベルを赤外線通信により送信し、左側のハンディ端末62A(主端末フラグが“ON”)が、ハンディ端末62Bの左側送受信部762から送信された無線LAN受信レベルを右側送受信部761で受信する。
【0033】
主端末フラグが“ON”であるハンディ端末62AのCPU741は、ステップST8の処理で検出した自己の無線LAN受信レベルPと、ステップST10の処理で受信した相手端末62Bの無線LAN受信レベルQとを比較する(ST12:比較手段)。その結果、自己の無線LAN受信レベルPが相手端末62Bの無線LAN受信レベルQより大きいか等しい場合(ST12のYES)、当該ハンディ端末62Aは、無線LANを用いた近距離無線の担当端末となる。この場合、ハンディ端末62AのCPU741は、赤外線トランシーバ76を起動し、左右の送受信部761,762から赤外線通信によって近距離無線担当外を通知するデータを送信する(ST13:通知手段)。またCPU741は、RAM743に用意された近距離無線フラグを“ON”する(ST14)。
【0034】
これに対し、自己の無線LAN受信レベルPが相手端末62Bの無線LAN受信レベルQより小さい場合には(ST12のNO)、相手端末62Bが無線LANを用いた近距離無線の担当端末となる。この場合、CPU741は、赤外線トランシーバ76を起動し、左右の送受信部761,762から赤外線通信によって近距離無線担当を通知するデータを送信する(ST15:通知手段)。またCPU741は、近距離無線フラグを“OFF”する(ST16)。
【0035】
一方、主端末フラグが“OFF”であるハンディ端末62BのCPU741は、ステップST10にて無線LAN受信レベルのデータを赤外線通信によって送信した後、相手端末62Aから近距離無線担当または近距離無線担当外を通知するデータを待機する(ST17)。そして、赤外線通信によって近距離無線担当を通知するデータを受信した場合には(ST17のYES)、CPU741は近距離無線フラグを“ON”し(ST14)、近距離無線担当外を通知するデータを受信した場合には(ST17のNO)、近距離無線フラグを“OFF”する(ST16)。
【0036】
こうして、近距離無線フラグをONまたはOFFしたならば、CPU741は、注文受付処理を開始する(ST18)。注文受付処理は、主端末用画面から入力されるテーブルナンバー、伝票ナンバー、人数等の顧客データ受付処理と、副端末画面から入力されるオーダデータの受付処理を含む。また、この注文受付処理の中で、CPU741は、図6に示す手順の通信制御処理を実行する。この処理も、前記通信制御プログラムに従ったものである。
【0037】
すなわちCPU741は、注文受付処理の中で、相手端末へのデータ通信要求が発生するか(ST21)、ステーション20へのデータ通信要求が発生するのを待機する(ST22)。
【0038】
相手端末へのデータ通信要求が発生した場合(ST21のYES)、CPU741は、赤外線トランシーバ76を起動し、左右の送受信部761,762から赤外線通信によって要求のあったデータを送信する(ST23)。
【0039】
一方、ステーション20へのデータ通信要求が発生した場合には(ST22のYES)、CPU741は、近距離無線フラグが“ON”なのか“OFF”なのかを識別する(ST24)。近距離無線フラグが“ON”の場合(ST24のYES)、当該ハンディ端末は、無線LANを用いた近距離無線の担当端末である。この場合、CPU741は、無線LANトランシーバ75を起動し、無線LANを用いてアクセスポイント50に、要求のあったデータを送信する(ST25)。
【0040】
これに対し、近距離無線フラグが“OFF”の場合には(ST24のNO)、当該ハンディ端末は、無線LANを用いた近距離無線の担当端末でない。この場合、CPU741は、赤外線トランシーバ76を起動し、左右の送受信部761,762から赤外線通信によって要求のあったデータを送信する(ST23)。
【0041】
CPU741は、注文受付処理が終了したか否かを判断する(ST26)。注文受付処理が終了していない場合(ST26のNO)、CPU741は、相手端末へのデータ通信要求が発生するか(ST21)、ステーション20へのデータ通信要求が発生するのを待機する(ST22)。
【0042】
こうして、注文受付処理が終了するまで、CPU741は、ステップST21〜ST25の通信制御処理を繰り返す。そして、注文受付処理が終了したならば(ST26のYES)、CPU741は、ステップST8の処理に戻る。すなわちCPU741は、無線LANの受信レベルを再度測定する。以後、CPU741は、ステップST9以降の処理を再度実行する。
【0043】
このように、本体フレーム61の左右の端末保持板61A,61Bにそれぞれハンディ端末62A,62Bを装着して各ハンディ端末62A,62Bの電源を投入すると、正面から見て左側のハンディ端末62Aにおいては、そのタッチパネル73に主端末画面が表示され、右側のハンディ端末62Bにおいては、そのタッチパネル73に副端末画面が表示される。また、ハンディ端末62Aの無線LAN受信レベルPとハンディ端末62Bの無線LAN受信レベルQとが比較され、レベルの大きい方が近距離無線の担当端末として決定される。
【0044】
その後、ハンディ端末62A,62Bでは、注文受付処理が可能となる。このとき、左側のハンディ端末62Aと右側のハンディ端末62Bとの連動のために相互間でデータ通信が必要となった場合には、赤外線を用いた近接無線によってデータ通信が行われる。また、ハンディ端末62A,62Bとステーション20との間でデータ通信が必要となった場合には、ハンディ端末62A,62Bのうち、近距離無線の担当端末として決定されたハンディ端末が、無線LANを用いた近距離無線によってデータ通信を行う。かくして、ハンディ端末62A,62Bは、見開き型の注文入力装置として機能する。
【0045】
このように本実施形態によれば、単体ではパネル型として機能するハンディ端末を2台用意することで、見開き型の注文入力装置を実現することができる。したがって、コストの増大を招くことなくパネル型と見開き型の両方のタイプに対応することができる。
【0046】
また、見開き型の注文入力装置として使用する場合、一方のハンディ端末62Aと他方のハンディ端末62Bとの間が電気的なケーブルで接続されていない。したがって、本体フレーム61の開閉に伴う疲労劣化によりケーブルの断線が起こるようなことはなく、十分に高品質な見開き型の注文入力装置を提供することができる。
【0047】
しかも、注文入力装置60とステーション20との間の無線LANを用いた近距離通信は、2台のハンディ端末62A,62Bのうち無線LANの受信レベルが大きい方を選択してデータ通信を実行する。したがって、近距離無線の通信品質も、高レベルで推移するようになる。
【0048】
また、本実施形態では、見開き型の注文受付装置であるときには、注文受付処理が終了する毎にお互いの無線LAN受信レベルを比較し、高い方のハンディ端末を近距離無線の担当端末として決定している。したがって、通信状況の変化によって受信レベルが変動しても、その影響を極力排除することができる。
【0049】
(第2の実施形態)
図7は、第2の実施形態に係わる無線オーダシステムの全体構成図である。なお、第1の実施形態と共通する部分には同一の符号を付し、その詳しい説明は省略する。
【0050】
本システムは、第1の実施形態の無線オーダシステムに加えて、コンテンツ配信システムを追加している。コンテンツ配信システムは、コンテンツサーバ200を備え、このサーバ200に、通信ケーブル100を介してアクセスポイント500を接続している。コンテンツ配信システムのアクセスポイント500は、無線オーダシステムのアクセスポイント50が使用する第1の周波数とは異なる第2の周波数を使用する。
【0051】
注文入力装置60、つまりは本体フレーム61と第1,第2のハンディ端末62A,62Bとのハードウェア構成は、第1の実施形態と同一である。第2の実施形態が第1の実施形態と異なる点は、ハンディ端末62A,62BのCPU741が実行する通信制御プログラムの処理手順である。第2の実施形態において、ハンディ端末62A,62Bの電源をそれぞれ投入すると、両ハンディ端末62A,62BのCPU741は、いずれも図8の流れ図に示す処理を実行する。
【0052】
先ず、CPU741は、通信コントローラ744を制御して赤外線トランシーバ76を起動し、左右の送受信部761,762から赤外線通信によって端末IDのデータを送信させる(ST31)。その後、CPU741は、所定時間内に赤外線トランシーバ76において他のハンディ端末の端末IDを受信するのを待機する(ST32)。
【0053】
他のハンディ端末の端末IDを受信することなく所定時間が経過した場合(ST32のNO)、CPU741は、パネル型の注文入力装置としての処理ルーチンに移行する。すなわち、ハンディ端末62A,62Bは、第1の実施形態と同様に、単体ではパネル型の注文入力装置として機能する。
【0054】
これに対し、所定時間内に他のハンディ端末の端末IDを受信したならば(ST32のYES)、CPU741は、左右どちらの送受信部761,762で端末IDを受信したのかを判定する(ST33)。右側の送受信部761で端末IDを受信した場合、CPU741は、RAM743に用意された主端末フラグを“ON”する(ST34)。またCPU741は、液晶ディスプレイ71に注文受付用画面を表示させる(ST35)。さらに、CPU741は、無線LANトランシーバ75に対し、無線LAN通信で使用する周波数を、無線オーダシステムのアクセスポイント50が使用する第1の周波数に設定する(ST36)。
【0055】
これに対し、左側の送受信部762で端末IDを受信した場合には、CPU741は、主端末フラグを“OFF”する(ST37)。また、液晶ディスプレイ71にコンテンツ用画面を表示させる(ST38)。さらに、CPU741は、無線LANトランシーバ75に対し、無線LAN通信で使用する周波数を、コンテンツ配信システムのアクセスポイント500が使用する第2の周波数に設定する(ST39)。
【0056】
図7において、ハンディ端末62Aのタッチパネル73に表示されている画面は注文受付用画面の一例であり、ハンディ端末62Bのタッチパネル73に表示されている画面はコンテンツ用画面の一例である。注文受付用画面は、第1の実施形態の主端末用画面と副端末用画面との切替ができる。コンテンツ用画面は、ハンディ端末62Aの注文受付用画面から入力された飲食メニュー品目の画像などのコンテンツが表示される。
【0057】
無線LAN通信で使用する周波数を設定した後、CPU741は、注文受付処理を開始する(ST40)。注文受付処理は、注文受付用画面から入力されるテーブルナンバー、伝票ナンバー、人数等の顧客データ受付処理やオーダデータの受付処理を含む。また、この注文受付処理の中で、CPU741は、図9に示す手順の通信制御処理を実行する。この処理も、前記通信制御プログラムに従ったものである。
【0058】
すなわちCPU741は、注文受付処理の中で、相手端末へのデータ通信要求が発生するか(ST51)、ステーション20へのデータ通信要求が発生するか(ST52)、コンテンツサーバ200へのデータ通信要求が発生するのを待機する(ST53)。
【0059】
相手端末へのデータ通信要求が発生した場合(ST51のYES)、CPU741は、赤外線トランシーバ76を起動し、左右の送受信部761,762から赤外線通信によって要求のあったデータを送信する(ST54)。
【0060】
一方、ステーション20へのデータ通信要求が発生した場合には(ST52のYES)、CPU741は、主端末フラグが“ON”なのか“OFF”なのかを識別する(ST55)。主端末フラグが“ON”の場合(ST55のYES)、当該ハンディ端末は、無線オーダシステムのアクセスポイント50が使用する第1の周波数を設定する。この場合、CPU741は、無線LANトランシーバ75を起動し、無線LANを用いてアクセスポイント50に、第1の周波数で要求のあったデータを送信する(ST56)。
【0061】
これに対し、主端末フラグが“OFF”の場合には(ST24のNO)、当該ハンディ端末は、コンテンツ配信システムのアクセスポイント500が使用する第2の周波数を設定する。アクセスポイント50が使用する第1の周波数は設定していないので、ステーション20への通信はできない。この場合、CPU741は、赤外線トランシーバ76を起動し、左右の送受信部761,762から赤外線通信によって要求のあったデータを送信する(ST54)。
【0062】
また、コンテンツサーバ200へのデータ通信要求が発生した場合には(ST53のYES)、CPU741は、主端末フラグが“ON”なのか“OFF”なのかを識別する(ST57)。主端末フラグが“OFF”の場合(ST57のNO)、当該ハンディ端末は、第2の周波数を設定する。この場合、CPU741は、無線LANトランシーバ75を起動し、無線LANを用いてアクセスポイント500に、第2の周波数で要求のあったデータを送信する(ST58)。
【0063】
これに対し、主端末フラグが“ON”の場合には(ST57のYES)、当該ハンディ端末は、第1の周波数を設定する。第2の周波数は設定していないので、コンテンツサーバ200への通信はできない。この場合、CPU741は、赤外線トランシーバ76を起動し、左右の送受信部761,762から赤外線通信によって要求のあったデータを送信する(ST54)。
【0064】
CPU741は、注文受付処理が終了したか否かを判断する(ST59)。注文受付処理が終了していない場合(ST59のNO)、CPU741は、相手端末へのデータ通信要求が発生するか(ST51)、ステーション20へのデータ通信要求が発生するか(ST52)、コンテンツサーバ200へのデータ通信要求が発生するのを待機する(ST53)。
【0065】
こうして、注文受付処理が終了するまで、CPU741は、ステップST51〜ST59の通信制御処理を繰り返す。そして、注文受付処理が終了したならば(ST59のYES)、CPU741は、この通信制御処理を終了する。
【0066】
このように、本体フレーム61の左右の端末保持板61A,61Bにそれぞれハンディ端末62A,62Bを装着して各ハンディ端末62A,62Bの電源を投入すると、正面から見て左側のハンディ端末62Aにおいては、そのタッチパネル73に注文受付用画面が表示され、右側のハンディ端末62Bにおいては、そのタッチパネル73にコンテンツ用画面が表示される。また、ハンディ端末62Aの無線LANトランシーバ75には、無線オーダシステムで使用する第1の周波数が設定され、ハンディ端末62Bの無線LANトランシーバ75には、婚姻津配信システムで使用する第2の周波数が設定される。
【0067】
そして、ハンディ端末62Aにおいて、ステーション20へのデータ通信要求が発生すると、ハンディ端末62Aは、無線LANトランシーバ75を起動して、そのデータを無線LAN通信によりアクセスポイント50経由でステーション20に送信する。同様に、ハンディ端末62Bにおいて、コンテンツサーバ200へのデータ通信要求が発生すると、ハンディ端末62Bは、無線LANトランシーバ75を起動して、そのデータを無線LAN通信によりアクセスポイント500経由でコンテンツサーバ200に送信する。
【0068】
また、ハンディ端末62Aにおいて、コンテンツサーバ200へのデータ通信要求が発生した場合には、ハンディ端末62Aは、赤外線トランシーバ76を起動して、そのデータを赤外線通信によりハンディ端末62Bに送信する。ハンディ端末62Bは、無線LANトランシーバ75を起動して、そのデータを無線LAN通信によりアクセスポイント500経由でコンテンツサーバ200に送信する。同様に、ハンディ端末62Bにおいて、ステーション20へのデータ通信要求が発生した場合には、ハンディ端末62Bは、赤外線トランシーバ76を起動して、そのデータを赤外線通信によりハンディ端末62Aに送信する。ハンディ端末62Bは、無線LANトランシーバ75を起動して、そのデータを無線LAN通信によりアクセスポイント50経由でステーション20に送信する。
【0069】
したがって、第2の実施形態によれば、一方のハンディ端末62Aを使用して客の注文データを入力しつつ、他方のハンディ端末62Bのディスプレイに当該注文データのメニュー画像を表示させるというような運用を、容易に実施することができる。
【0070】
以下、その他の実施形態について説明する。
例えば前記実施形態では、ハンディ端末が本体フレーム61の正面から見て左側に装着されたのか右側に装着されたのかを、赤外線通信によるデータの受信方向から自動的に判別した(図5のST1〜ST3、図8のST31〜ST33を参照)。しかるに、マニュアル操作によって装着位置をハンディ端末のメモリに設定する形態としても、前記実施形態の効果は奏し得るものである。
【0071】
また、1つの赤外線トランシーバ76で筐体70の両側面部に送受信部761,762を配置するための一構成例を図3に示したが、別の形態も可能である。例えば、ミラー82を使わずに、光ファイバーや透明のプラスチックで赤外光を左右の窓83,84に誘導する方式を採用してもよい。この場合、赤外光の経路を任意に取ることができるため、トランシーバモジュールの設置の自由度が増加する。
【0072】
また、各窓83,84の内側に、それぞれ発光部81と受光部85を配置し、赤外線トランシーバ76と信号線で接続するとともに、その信号線にスイッチを介在させて時系列に切り替えることで、右側の窓の受光部85で受光したか、左側の窓の受光部85で受光したかを識別することもできる。さらには、コストやサイズを気にしなければ、赤外線トランシーバ76を右側用と左側用の2つ設けてもよい。
【0073】
また、前記実施形態では、近距離無線として無線LANを例示し、近接無線として赤外線通信を例示したが、通信媒体の種類は特に限定されるものではない。また、ハンディ端末の台数も2台に限定されるものではない。要は、複数のハンディ端末を連動させて注文データの入力を受付け、入力された注文データを注文管理装置に伝送するものにおいて、注文管理装置との通信には近距離無線を使用し、他のハンディ端末との通信には近接無線を使用するものであれば、本実施形態に含まれる。
【0074】
また、前記実施形態では、受信状態が良好であるか否かを受信レベルの高さで判断したが、良好か否かの判定方法は特に限定されるものではない。別の通信要素から受信状態を判定し、最も良好なハンディ端末を注文管理装置との通信用端末として使用してもよい。
【0075】
また、前記第2の実施形態では、無線オーダシステムとは別のシステムとしてコンテンツシステムを例示したが、システムの種類は特に限定されるものではない。
【0076】
さらに、前記実施形態は、端末内部のROM742に発明の機能を実現させる通信制御プログラムが予め記録されているものとした。しかしこれに限らず、同様のプログラムがネットワークからハンディ端末にダウンロードされてもよい。あるいは、記録媒体に記録された同様のプログラムが、ハンディ端末にインストールされてもよい。記録媒体は、CD−ROM,メモリカード等のようにプログラムを記憶でき、かつ装置が読み取り可能であれば、その形態は問わない。また、プログラムのインストールやダウンロードにより得る機能は、装置内部のOS(オペレーティング・システム)等と協働してその機能を実現させるものであってもよい。
【0077】
この他、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0078】
10,100…通信ケーブル、20…ステーション、50,500…アクセスポイント、60…注文入力装置、61…本体フレーム、62A,62B…ハンディ端末、70…筐体、73…タッチパネル、74…制御ボード、75…無線LANトランシーバ、76…赤外線トランシーバ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近距離無線と近接無線とをそれぞれ搭載した複数のハンディ端末を連動させて注文データの入力を受付け、入力された注文データを注文管理装置に伝送する注文入力装置であって、
前記各ハンディ端末は、前記注文管理装置との通信には前記近距離無線を使用し、他のハンディ端末との通信には前記近接無線を使用することを特徴とする注文入力装置。
【請求項2】
前記各ハンディ端末は、前記近接無線の送受信部を、それぞれ当該ハンディ端末の筐体における長手方向の両側面部に配置したことを特徴とする請求項1記載の注文入力装置。
【請求項3】
前記各ハンディ端末は、それぞれの前記近距離無線の受信状態を比較し、受信状態が最も良好なハンディ端末を前記注文管理装置との通信用端末として使用することを特徴とする請求項1または2記載の注文入力装置。
【請求項4】
前記各ハンディ端末は、それぞれ前記近距離無線の受信レベルを検出する受信レベル検出手段を備え、
前記各ハンディ端末のうちいずれか1台は、他のハンディ端末の前記受信レベル検出手段で検出された受信レベルを前記近接無線を利用して収集する手段と、収集した他のハンディ端末の受信レベルと自らの前記受信レベル検出手段で検出された受信レベルとを比較する手段と、各ハンディ端末の受信レベルを比較した結果、最も受信レベルが高いハンディ端末を前記注文管理装置との通信用端末として決定し、その結果を、前記近接無線を利用して他のハンディ端末に通知する手段と、をさらに備えたことを特徴とする請求項3記載の注文入力装置。
【請求項5】
2台のハンディ端末を連動させて注文データの入力を受付けるものであり、
一方のハンディ端末は、第1の周波数を使って前記注文管理装置と近距離無線でデータ通信を行い、
他方のハンディ端末は、前記第1の周波数とは異なる第2の周波数を使って前記注文管理装置とは異なる業務サーバと近距離無線でデータ通信を行うことを特徴とする請求項1または2記載の注文入力装置。
【請求項6】
近距離無線と近接無線とをそれぞれ搭載した複数のハンディ端末を連動させて注文データの入力を受付け、入力された注文データを注文管理装置に伝送する注文入力装置の前記ハンディ端末に実装される通信制御プログラムであって、
前記ハンディ端末に、
他のハンディ端末の受信レベル検出手段で検出された前記近距離無線の受信レベルを前記近接無線を利用して収集する機能と、
収集した他のハンディ端末の受信レベルと自らの前記受信レベル検出手段で検出された受信レベルとを比較する機能と、
各ハンディ端末の受信レベルを比較した結果、最も受信レベルが高いハンディ端末を前記注文管理装置との通信用端末として決定し、その結果を、前記近接無線を利用して他のハンディ端末に通知する機能と、
を実現させるための通信制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−221305(P2012−221305A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87455(P2011−87455)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000003562)東芝テック株式会社 (5,631)
【Fターム(参考)】