説明

洋上風力発電施設の輸送据付方法および洋上風力発電施設の輸送据付バージ

【課題】洋上風力発電施設の輸送および据付けにおける安全性、経済性が向上した小型のバージで据付け可能な輸送据付方法および洋上風力発電施設の輸送据付バージを提供する。
【解決手段】 支持構造体21を備えた洋上風力発電施設20を進行台13上に横倒させた状態で輸送据付バージ10に搭載し、洋上風力発電施設20を搭載した輸送据付バージ10を洋上風力発電施設20の設置場所まで輸送し、進行台13上の係止手段14と支持構造体21の基部25との係合を解いて、洋上風力発電施設20を滑動させて進水させることにより立設させて据付けを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全性および経済性の良好な洋上風力発電施設の輸送据付方法および洋上風力発電施設の輸送据付バージに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洋上風力発電施設の輸送据付方法としては、洋上風力発電施設のうち、少なくとも支持構造を含む一部の支持構造体を洋上に横倒させ船舶により牽引して設置場所まで輸送し、クレーンによって吊り上げて、連結および立設させる方法が用いられている(例えば、特許文献1、特許文献2)。クレーンを使用する場合、特に洋上風力発電施設が長大なものとなるのでクレーンのブームも長いものが必要となり、吊り上げ時のモーメントが大きくなるため、それを支える浮体や船舶として巨大なものが必要であった。
【0003】
特許文献1には、海面上の所定の高さに立設された構造体の上端部に風車取り付け用鋼製タワーを継続立設する構成が開示されている。しかし、この構成によれば極めて高い位置までナセルおよびブレード(風力発電部)を引き上げる必要がある。
【0004】
特許文献2には、大型の起重機船を用いることなく、洋上風力発電施設の施工を可能とするために、支柱の上端に風力発電部を取り付けた後、支柱を引き上げてその下端を固定する風力発電装置の施行方法が開示されている。この方法によれば、風力発電部を取り付ける高さを抑制できるものの、海上で風力発電部を取り付ける作業が必要となる。
【0005】
特許文献3には、洋上風力発電設備の運搬時における揺れを抑制するために、動揺防止枠桁を備えた作業船および運搬方法が開示されている。しかし、同文献に開示された運搬方法は、運搬時、洋上風力発電設備を鉛直状態に保って運搬するものである。このため、非常に大きなクレーンを備えた大型の船が必要となる。
【0006】
特許文献4には、ドック設置にかかる建設コストを節減するために、陸上で建造された船舶をバージに船積みした後、バージを沈降させて船舶を自己浮上させる船舶進水工法が開示されている。また、特許文献5には、荷役作業を安定した状態で効率良く安全に行うために、アーム先端部下面の緩衝式着座部材を他の浮体などにおける床面に軟着座させることができるアーム駆動機構を備えた貨物移動用傾動式レール部材付きバージが開示されている。
しかし、これら特許文献に開示の発明は、船舶や貨物に関するものであって、洋上風力発電施設の輸送据付方法に関するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−207948号公報
【特許文献2】特開2003−293938号公報
【特許文献3】特開2010−208723号公報
【特許文献4】特表2007−523011号公報
【特許文献5】特開平9−142378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の洋上風力発電施設の輸送および据付け方法は、巨大な浮体や船舶を必要とし、安全性および経済性も十分なものとはいえない。そこで、本発明は、洋上風力発電施設の輸送および据付けにおける安全性、経済性が向上した小型のバージで据付け可能な輸送据付方法および洋上風力発電施設の輸送据付バージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の本発明の洋上風力発電施設の輸送据付方法は、洋上風力発電施設の少なくとも支持構造体を横倒させてバージに搭載し、前記バージを前記洋上風力発電施設の設置場所まで輸送し、前記支持構造体を直接的あるいは間接的に滑動させて進水させることにより立設させて据付けたことを特徴とする。
滑動させ進水させて立設することにより、大型クレーンなどの重機を用いることなく支持構造体を据付けることができる。
【0010】
請求項2の本発明は、請求項1に記載の洋上風力発電施設の輸送据付方法において、少なくとも前記支持構造体を支持する架構により、前記進水時に前記架構を滑動させて前記支持構造体を間接的に滑動させたことを特徴とする。
上記の構成により、少なくとも支持構造体を架構により保護、補強した状態で、洋上風力発電施設の輸送据付をすることができる。このため例えば、(1)支持構造体から突出する部分を保護し、(2)備え付け前の工程において想定外の大きな力が加わった場合の破損を防止し、(3)進水させる際、少なくとも支持構造体が架構により覆われた状態で間接的に滑動させることができる。
ここで、「架構」とは据付け前の洋上風力発電施設を支えるために材を結合して作った構造物をいう。「支持構造体を支持する」とは、進水時に支持構造体が間接的に滑動できるように、支持構造体と係わりをもった状態で支え持つことをいう。支持構造体が「間接的に滑動する」とは、支持構造体自身が滑ることにより動く(支持構造体表面がバージとの滑動面となる直接的な滑動)のではなく、支持構造体を支持する架構が滑ることにより支持構造体が動くこと(架構表面がバージとの滑動面となる)をいう。
【0011】
請求項3の本発明は、請求項1または請求項2に記載の洋上風力発電施設の輸送据付方法において、前記輸送が、前記支持構造体に前記洋上風力発電施設のタワーとナセルを一体化して輸送したことを特徴とする。
上記の構成により、滑動前にバージ上で、あるいは支持構造体を滑動させて進水させた後、海上において支持構造体にタワーとナセルを取り付けることが不要となる。
請求項4の本発明は、請求項3に記載の洋上風力発電施設の輸送据付方法において、前記洋上風力発電施設のローターも一体化した輸送であり、前記搭載が、前記ローターを上側に向けて横倒させたことを特徴とする。
上記の構成により、一体化されたローターがバージ(艀、はしけ)と接触することを防止できる。
【0012】
請求項5の本発明は、請求項3または請求項4に記載の洋上風力発電施設の輸送据付方法において、前記据付けが、前記架構で前記タワーおよび前記ナセルの少なくとも一方も支持して滑動させたことを特徴とする。
上記の構成により、洋上風力発電施設の支持構造体以外の部分をも架構で保護、補強することができる。
請求項6の本発明は、請求項1から請求項5のうちの1項に記載の洋上風力発電施設の輸送据付方法において、前記据付けが、前記支持構造体を傾斜させることにより直接的あるいは間接的に滑動させたことを特徴とする。
上記の構成により、重力を利用して支持構造体を滑動させることができる。
請求項7の本発明は、請求項1から請求項6のうちの1項に記載の洋上風力発電施設の輸送据付方法において、前記据付けが、前記支持構造体の基部側に向かって滑動させたことを特徴とする。
上記の構成により、重量の大きな基部から進水させることができる。
請求項8の本発明は、請求項1から請求項7のうちの1項に記載の洋上風力発電施設の輸送据付方法において、前記据付けが、前記支持構造体の直接的あるいは間接的な滑動時の速度を制御したことを特徴とする。
上記の構成により、支持構造体の滑動速度を抑えて、据付けを円滑(スムーズ)なものとし、安全性を向上させることができる。
請求項9の本発明は、請求項1から請求項8のうちの1項に記載の洋上風力発電施設の輸送据付方法において、前記据付けが、前記支持構造体を滑り機構あるいは転がり機構を介して直接的あるいは間接的に滑動させたことを特徴とする。
上記の構成により、支持構造体の滑動をより円滑なものとすることができる。
請求項10の本発明は、請求項9に記載の洋上風力発電施設の輸送据付方法において、前記滑り機構あるいは前記転がり機構を前記架構に設けたことを特徴とする。
上記の構成により、設計の自由度を高くすることができる。
【0013】
請求項11の本発明は、請求項2から請求項10のうちの1項に記載の洋上風力発電施設の輸送据付方法において、前記支持構造体の前記進水後に前記架構を前記バージに撤収したことを特徴とする。
上記の構成により、撤収した架構を再利用して複数の支持構造体の進水に用いることができる。
請求項12の本発明は、請求項1から請求項11のうちの1項に記載の洋上風力発電施設の輸送据付方法において、前記輸送が、複数基の前記支持構造体を一度に前記バージに搭載し、前記据付けが、前記設置場所で1基ずつ順次据付けたことを特徴とする。
上記の構成により、複数の支持構造体を据付ける場合の輸送効率と安全性を向上させることができる。
請求項13の本発明は、請求項1から請求項12のうちの1項に記載の洋上風力発電施設の輸送据付方法において、前記支持構造体は、浮体式であることを特徴とする。
浮体式とすることにより、進水させた後に支持構造体の位置を容易に調整することができる。
【0014】
請求項14の本発明の洋上風力発電施設の輸送据付バージは、バージを航行させる航行手段と、前記バージ上に設けた傾斜した進行台と、前記進行台上に支持構造体あるいは架構を係止する係止手段を備えたことを特徴とする。
上記の構成により、係止手段により進行台上に支持構造体を支持した状態で航行手段により航行して輸送し、係止を解くことにより、進行台上の支持構造体を直接的あるいは間接的に滑動させて、進水させ立設することができる。支持構造体を直接的に滑動させる場合、洋上風力発電施設の少なくとも支持構造体が進行台表面と接触することとなり、支持構造体を間接的に滑動させる場合、少なくとも支持構造体を支持する架構が進行台表面と接触することとなる。
上記の輸送据付バージは、本発明の洋上風力発電施設の輸送据付方法の実施に用いることができ、特に、傾斜を利用して支持構造体あるいは架構を滑動させる洋上風力発電施設の輸送据付方法の実施に好適である。
【0015】
請求項15の本発明の洋上風力発電施設の輸送据付バージは、バージを航行させる航行手段と、前記バージ上に設けた進行台と、前記進行台を傾斜させて前記進行台上の支持構造体あるいは架橋を滑動させる傾斜付与手段を備えたことを特徴とする。
上記の構成により、係止手段により進行台上に支持構造体を支持した状態で航行手段により航行して輸送し、傾斜付与手段により進行台を傾斜させ、進行台上の支持構造体を直接的あるいは間接的に滑動させ、進水させ立設することができる。上記の輸送据付バージは、本発明の洋上風力発電施設の輸送据付方法の実施に用いることができ、特に、傾斜を利用して支持構造体あるいは架構を滑動させる洋上風力発電施設の輸送据付方法の実施に好適である。
請求項16の本発明は、請求項14または請求項15に記載の洋上風力発電施設の輸送据付バージにおいて、前記進行台に2条以上の線状滑動機構を設け、前記線状滑動機構の間に凹部を形成したことを特徴とする。
上記の構成により、支持構造体の突出部が凹部内に位置する状態で輸送し、滑動、進水により立設して据付けることができる。
請求項17の本発明は、請求項14から請求項16のうちの1項に記載の洋上風力発電施設の輸送据付バージにおいて、前記進行台の進水側の終端部を水面方向に湾曲させたことを特徴とする。
上記の構成により、支持構造体の進水をより円滑にすることができる。
請求項18の本発明は、請求項14から請求項17のうちの1項に記載の洋上風力発電施設の輸送据付バージにおいて、前記進行台上を滑動する際における前記支持構造体または前記架構の動揺を抑える緩衝装置を備えていることを特徴とする
上記の構成により、進水時における支持構造体または架構の動揺を抑えることができる。
【0016】
請求項19に記載の本発明の洋上風力発電施設の輸送据付バージは、バージを航行させる航行手段と、前記バージを傾斜させるバージ傾斜手段とを備えたことを特徴とする。
上記の構成により、支持構造体を支持した状態で航行手段により航行して輸送し、バージ傾斜手段でバージ自体の傾斜の程度を制御することにより、バージ上の支持構造体を直接的あるいは間接的に滑動させて、進水させ立設することができる。上記の輸送据付バージは、本発明の洋上風力発電施設の輸送据付方法の実施に用いることができ、特に、傾斜を利用して支持構造体あるいは架構を滑動させる洋上風力発電施設の輸送据付方法の実施に好適である。
請求項20の本発明は、請求項14から請求項19のうちの1項に記載の洋上風力発電施設の輸送据付バージにおいて、前記バージの船尾の平面視した形状を凹型に形成したことを特徴とする。
上記の構成により、バージの重心に近い船尾の凹型に形成した部分から支持構造体を進水させることができる。
請求項21の本発明は、請求項14から請求項20のうちの1項に記載の洋上風力発電施設の輸送据付バージにおいて、前記バージの船型を双胴船としたことを特徴とする。
上記の構成により、支持構造体の両側に位置する船体の浮力が働くことからバージを安定させることができ、また、バージの重心に近い部分から支持構造体を進水させることができる。
【0017】
請求項22の本発明は、請求項14から請求項21のうちの1項に記載の洋上風力発電施設の輸送据付バージにおいて、前記支持構造体を含む洋上風力発電施設の重心部あるいは前記支持構造体を含む洋上風力発電施設を支持している前記架構の重心部の移動を抑制して滑動させる重心保持手段をさらに備えたことを特徴とする。
上記の構成により、洋上風力発電施設あるいは洋上風力発電施設を支持している架構(洋上風力発電施設と架構)の重心部の移動を抑制しながら、滑動させて進水し、立設することができる。
請求項23の本発明は、請求項14から請求項22のうちの1項に記載の洋上風力発電施設の輸送据付バージにおいて、前記航行手段は自航式としたことを特徴とする。
自航式とすることにより、バージ以外の航行手段を必用としない。
【0018】
請求項24の本発明は、請求項14から請求項23のうちの1項に記載の洋上風力発電施設の輸送据付バージにおいて、複数基の前記洋上風力発電施設が搭載可能であることを特徴とする。
上記の構成により、複数基の洋上風力発電施設を同時に設置場所まで輸送することができる。洋上風力発電施設が支持構造体に加えて他の構成を備えている場合、当該他の構成を含めて搭載可能なものとする。
請求項25の本発明は、請求項24に記載の洋上風力発電施設の輸送据付バージにおいて、複数基の前記洋上風力発電施設の据付けに当たり共用可能な単数の前記架構と、少なくとも前記支持構造体を前記架構に移動させる移動手段を備えたことを特徴とする。
上記の構成により、単数の架構を複数基の洋上風力発電施設の据付けに共用することができる。
請求項26の本発明は、請求項24に記載の洋上風力発電施設の輸送据付バージにおいて、複数の前記架構に対応した複数の前記進行台を備えたことを特徴とする。
上記の構成により、進行台から洋上風力発電施設の少なくとも支持構造体を支持する架構を滑動、進水させ立設する際、各進行台上に架構とともに一基の洋上風力発電施設が載置される。このため、複数基搭載している場合であっても、洋上風力発電施設を架構に移動させることが不要となり、傾斜付与手段への負荷も一基の洋上風力発電施設によるものとすることが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、支持構造体の据付けを滑動させ進水させ立設することにより行うから、支持構造体を据付けるために大型クレーンなどの重機を用いる必要がない。また、バージに大きなモーメントがかからないのでバランスが崩れにくくバージも小型のものでよい。このため、洋上風力発電施設の輸送および据付けにおける安全性および経済性を向上させることができる。
架構で支持した状態で支持構造体を間接的に滑動させる構成とすれば、支持構造体を保護、補強し、滑動を円滑にして、より安全に立設することが可能になる。
洋上風力発電施設のタワーとナセルとを支持構造体に一体化して輸送することにより、これらの取り付けを設置場所より安全な陸上や陸の近傍、あるいは専用の浮体等で行うことができる。このため、洋上風力発電施設の輸送据付の安全性および経済性を向上させることができる。
輸送の際、タワーとナセルに加えてローターを一体化し、ローターを上側に向けて横倒させることにより、ローターのバージとの接触を防止することが可能となり、輸送時の波浪等に起因する揺れにより洋上風力発電施設のローターが破損することを抑制できる。
【0020】
洋上風力発電施設の支持構造体以外の部分をも架構で保護すれば、洋上風力発電施設のさらに多くの部分を保護、補強し、円滑な滑動を実現することが可能となる。
支持構造体を傾斜させ、重力を利用して滑動させる構成とすれば、クレーンで吊り上げる場合と比較して小さい力で、バージのバランスが崩れにくい状態で安全に支持構造体を据付けることができる。
重量の大きな基部側から進水させる構成とすれば、進水時の方向が定まり易く据付けが円滑になり、洋上風力発電施設の立設がより容易かつ安全なものとなる。
また、支持構造体の滑動時の速度を抑制する構成、滑り機構あるいは転がり機構を利用する構成とすれば、据付けが円滑になるから、洋上風力発電施設の立設がより容易かつ安全なものとなる。滑り機構あるいは転がり機構を架構に設けることとすれば、洋上風力発電施設あるいはバージに滑り機構あるいは転がり機構を設けることが不要となり、設計の自由度が向上するから、高性能または低コストなものにできる。
【0021】
進水後に架構を撤収する構成とすれば、架構の再利用ができ費用を抑制することが可能となる。
複数基の支持構造体を据付ける場合、複数基の支持構造体を一度にバージに搭載することにより輸送効率が向上する。そして、設置場所で1基ずつ順次据付けることにより、据付時のバージのバランスが崩れにくくなり、安全かつ容易に据付け作業を行うことができる。
支持構造体を浮体式とすれば、設置場所において進水後の位置を容易に調整できるから、支持構造体を進水させて立設する位置を厳密に規定することが不要となる。
【0022】
本発明の輸送据付バージによれば、傾斜を利用した滑動により、洋上風力発電施設の輸送および据付けにおける安全性および経済性を良好にすることができる。
進行台に2条以上の線状滑動機構および凹部を備えた構成とすれば、支持構造体が突出部を有する場合でも、凹部内に突出部を位置させて、進行台との接触により突出部が破壊されることを抑制できる。また、線状滑動機構として滑りやすい材質を選ぶことにより、少ない傾斜で進水させることも可能となる。
また、進行台の終端部を水面方向に湾曲させた構成や、緩衝装置により進水時における支持構造体の動揺を抑える構成とすれば、進水をより円滑なものとして、安全性を向上させることができる。
【0023】
バージ自体を傾斜させる構成とすれば、簡単な構成により支持構造体を滑動させて進水させることができる。
バージの重心に近い船尾の凹型に形成した部分から支持構造体を進水させる構成とすれば、バージの重心に近い部分から支持構造体を進水させることができる。また、進水時におけるバージの揺動が抑制されるから、据付けの安全性が向上する。
バージの船型を双胴船とすれば、バージを安定させることができる。また、バージの重心に近い部分から支持構造体を進水させることができ、進水時におけるバージの揺動が抑制されるから、据付けの安全性が向上する。
【0024】
また、重心保持手段を備えた構成とすれば、据付け時における洋上風力発電施設の重心部の移動を抑制し、バージの揺動を抑制し洋上風力発電施設を円滑に据付けることができる。
航行手段を自航式とすることにより、バージ以外の航行手段を必用とせず、設置場所に自航で移動できる。
【0025】
複数基の洋上風力発電施設を同時に設置場所まで輸送することができる構成とすれば、洋上風力発電施設の輸送据付バージの輸送効率が向上する。この場合、単数の架構を複数基の洋上風力発電施設の据付けに共用する構成とすれば、コストを抑制することができる。また、架構に対応した複数の進行台を備えた構成とすれば、洋上風力発電施設を架構に移動させることが不要となり、傾斜付与手段に係る負荷を低減し、出力の小さい傾斜付与手段を用いることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施の形態1の輸送据付バージ(例その1)の概略を示す模式図
【図2】図1の矢印Aの方向から進行台を見た状態を示す模式図
【図3】実施の形態1の輸送据付バージ(例その2)の概略を示す模式図
【図4】実施の形態1の輸送据付バージ(例その3)の概略を示す模式図
【図5】実施の形態1の輸送据付バージ(例その4)の概略を示す模式図
【図6】実施の形態2の輸送据付バージ(例その1)の概略を示す模式図
【図7】実施の形態2の輸送据付バージ(例その2)の概略を示す模式図
【図8】実施の形態3の輸送据付バージ(例その1)の概略を示す、(a)輸送工程、(b)据付け工程、(c)立設された洋上風力発電施設の模式図
【図9】実施の形態3の輸送据付バージ(例その2)の概略を示す、(a)輸送工程、(b)据付け工程、(c)立設された洋上風力発電施設の模式図
【図10】実施の形態3の輸送据付バージ(例その3)の概略を示す、(a)輸送工程、(b)据付け工程、(c)立設された洋上風力発電施設の模式図
【図11】実施の形態4の輸送据付バージの概略を示す模式図
【図12】実施の形態5の輸送据付バージの概略を示す模式図
【図13】図12のB−B’矢視断面図
【図14】図12とは別の架構の例(その1)を示す模式図
【図15】図12とは別の架構の例(その2)を示す模式図
【図16】実施の形態6の輸送据付バージ(例その1)の概略を示す、(a)輸送工程、(b)据付け工程1、(c)据付け工程2、(d)架構により支持された状態で立設された洋上風力発電施設模式図の模式図
【図17】図16の輸送据付バージによる架構の撤収を説明する、(a)架構の支持を外して洋上風力発電施設が据付けられた状態、(b)架構に取り付けられているワイヤーで架構を進行台上に引き上げる際の状態、(c)架構を滑動させて進行台上に載置した状態、(d)進行台を水平に戻した状態の模式図
【図18】実施の形態6の輸送据付バージ(例その2)の概略を示す、(a)輸送工程、(b)据付け工程1、(c)据付け工程2、(d)架構により支持された状態で立設された洋上風力発電施設の模式図
【図19】実施の形態6の輸送据付バージ(例その3)の概略を示す、(a)輸送工程、(b)据付け工程、(c)架構により支持された状態で立設された洋上風力発電施設の模式図
【図20】実施の形態7の輸送据付バージの概略を示す、(a)輸送工程、(b)据付け工程1、(c)据付け工程2、(d)立設された洋上風力発電施設を模式的に示す平面図
【図21】図20の輸送据付バージの進行台上の架構に別の洋上風力発電施設を移動して載置する工程を示しており、(a)架構を進行台に撤収した状態、(b)進行台を水平に戻した状態でローターを備えていない洋上風力発電施設を移動手段のワイヤーに取り付けた状態、(c)洋上風力発電施設を架構上に移動した状態、(d)進行台上でローターを取り付け架構に支持された別の洋上風力発電施設を進行台に搭載した状態の模式図
【図22】実施の形態8の輸送据付バージ(例その1)の概略を示す模式図
【図23】実施の形態8の輸送据付バージ(例その2)の概略を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0027】
洋上風力発電施設の支持構造体を直接的に滑動させて進水させる形態、すなわち少なくとも支持構造体の表面とバージとが接した状態で滑動、進水させる形態について、実施の形態1〜4として説明する。
(実施の形態1)
本実施の形態では、ローターを上側に向けてバージ上の傾斜可能な進行台に横倒させた状態で洋上風力発電施設を輸送した後、設置場所で進行台を傾斜させ、支持構造体の基部側に向かって滑動させつつ進水させることにより、支持構造体を含む洋上風力発電施設を据付ける輸送据付方法およびこの方法に好適に用いることができる輸送据付バージについて説明する。
【0028】
(洋上風力発電施設の輸送据付方法)
本実施の形態の輸送据付方法は、(1)洋上風力発電施設の少なくとも支持構造体を横倒させてバージに搭載する工程(搭載工程)と、(2)バージにより支持構造体を洋上風力発電施設の設置場所まで輸送する工程(輸送工程)と、(3)滑動させて進水させることにより支持構造体を海上に立設させて据付ける工程(据付け工程)を備えている。
【0029】
搭載工程において、横倒させてバージに搭載するものには、少なくとも支持構造体が含まれていればよい。すなわち、搭載工程には、(A)支持構造体のみを搭載する場合、(B)支持構造体とタワーとを一体化したものを搭載する場合、(C)支持構造体とタワーとナセルとを一体化したものを搭載する場合、(D)支持構造体とタワーとナセルとローターとを一体化したものを搭載する場合の何れも含まれる。(B)〜(D)のように、洋上風力発電施設の少なくとも一部が支持構造体と一体化された状態で搭載することにより、洋上での危険な取り付け作業が減って経済性および安全性が向上する。このため、支持構造体に洋上風力発電施設のタワーとナセルとローターを一体化して搭載することが好ましい。
【0030】
輸送工程において、タワーとナセルとローターとを一体化して輸送する場合、ローターを上側に向けて横倒させた状態で輸送することが好ましい。これにより、輸送工程において波浪の影響を受けてローターがバージと接触して破損することを防止できる。
また、輸送工程において複数基の支持構造体を一度にバージに搭載して輸送し、据付け工程において設置場所で支持構造体を1基ずつ順次据付けることとしてもよい。このようにすれば、複数の支持構造体を据付ける場合の輸送効率を向上させることができる。
【0031】
据付け工程は、進行台上を滑動させて進水させることにより、支持構造体を海に立設する工程である。本実施の形態では、支持構造体を載置している部分を傾斜させることにより、重力を利用して支持構造体を滑動させる。例えば、バージ上に傾斜した進行台を設け、支持構造体を係止手段で係止して輸送し、設置場所で係止を解除し、重力を利用して支持構造体を滑動させて進水させてもよい。また、支持構造体を載置している部分を傾斜させることなく、支持構造体に力を加えることにより滑動させて進水させてもよい。支持構造体を滑動させて進水させることにより円滑かつ安全な据付けを実現することができる。支持構造体を載置している部分を傾斜させて滑動させる構成を採用することにより、重力を利用できるから、据付けに要するエネルギーを少なくすることができる。また、支持構造体の滑動を減速させて、安全な安全性が確保される滑動速度とすることが好ましい。
【0032】
本実施の形態では、支持構造体の基部側すなわち立設された状態で下方となる重量の大きな側に向かって支持構造体を滑動させて進水させる。このため、滑動方向が安定した状態で支持構造体を据付けることができる。なお「立設」とは、支持構造体の長手方向が垂直方向(鉛直方向)となるように設置することをいう。
【0033】
(洋上風力発電施設の輸送据付バージ)
本実施の形態の洋上風力発電施設の輸送据付バージは、据付け工程において、支持構造体を傾斜させることにより直接的に滑動させる輸送据付方法に用いることができる。
図1は、本実施の形態の輸送据付バージ(例その1)の概略を示す模式図である。同図に示すように、輸送据付バージ10は、主機11、プロペラ12、進行台13および係止手段14を備えており、支持構造体21、タワー22、ナセル23およびローター24を備えた洋上風力発電施設20の輸送据付に用いられるものである。
【0034】
本実施の形態の輸送据付バージ10は、航行手段として主機11およびプロペラ12を備えた自航式のものである。このため、曳航用の船を用意する必要がない。ただし、本発明の輸送据付バージは自航式ではなく、航行手段を他の船により曳航されるものとして構成することもできる。
【0035】
進行台13は予め傾斜した状態で輸送据付バージ10上に設けられている。そして、進行台13は、洋上風力発電施設20を載置する載置面の進水側の終端部近傍に、洋上風力発電施設20を係止する係止手段14を備えている。係止手段14は、載置面に突出可能なものであり、突出した状態で支持構造体21の基部25と係合して係止する。そして、進行台13上に横倒させた状態の洋上風力発電施設20を係止し、輸送据付バージ10に搭載して輸送する。
設置位置まで洋上風力発電施設20を輸送した後、係止手段14による係止を解除すれば、進行台13上の洋上風力発電施設20を滑動させて海面に進水させ立設できる。
【0036】
図2は、図1の矢印Aの方向から進行台13を見た状態を示す模式図である。同図に示すように、進行台13の洋上風力発電施設20を載置する側の載置面には2条の線状滑動機構15が設けられている。そして、線状滑動機構15の間に凹部16が形成されている。
線状滑動機構15は、その表面が洋上風力発電施設20の支持構造体21と線接触するように、洋上風力発電施設20の長手方向に沿って設けられている。そして、線状滑動機構15間の凹部16内にナセル23の一部(凸部)が位置しており、ナセル23は進行台13表面と接触しない。進行台13に線状滑動機構15を設けることにより、ナセル23が進行台13の表面と接触することを防止し、輸送工程および据付け工程において洋上風力発電施設20が損傷することを抑制する。なお、線状滑動機構15は支持構造体21との接触部を凸状に形成してもよい。また、線状滑動機構15の接触部を滑りやすい材質で形成することにより、少ない傾斜で洋上風力発電施設20を滑動させて進水させることも可能となる。
【0037】
図3は、本実施の形態の輸送据付バージ(例その2)の概略を示す模式図である。同図に示す輸送据付バージ10は、進行台13の代わりに進水側の終端部が水面方向に湾曲した進行台17を備えている。この湾曲を備えた進行台17により、進水時に支持構造体21が水面に向かって滑らかに向きを変えるから、洋上風力発電施設20の進水をより円滑にすることができる。
【0038】
洋上風力発電施設20が進行台13上を滑動する際、安全な滑動速度まで減速させる手段について図4および図5を参照して説明する。
図4は実施の形態1の輸送据付バージ(例その3)の概略を示す模式図である。同図に示すように、輸送据付バージ10は、洋上風力発電施設20の滑動時の速度を制御するワイヤー18を備えている。このワイヤー18は、その一端が洋上風力発電施設20の支持構造体21に固定された状態で、輸送据付バージ10から繰り出される長さを制御することで、据付け工程における洋上風力発電施設20の滑動時の速度を安全な範囲に制御するものである。したがって、洋上風力発電施設20の滑動により生じる重心変位の速度を抑制し、洋上風力発電施設20の据え付けをより円滑かつ安全にすることができる。
【0039】
図5は実施の形態1の輸送据付バージ(例その3)の概略を示す模式図である。同図に示す輸送据付バージ10は、洋上風力発電施設20の滑動時の速度を制御するブレーキ機構19を備えている。このブレーキ機構19は、洋上風力発電施設20の滑動を制動して、速度を制御するものであり、例えば、洋上風力発電施設20を挟む力を調整してブレーキ機構19と洋上風力発電施設20との間の摩擦抵抗を制御する機構を用いて構成することができる。また、ブレーキ機構19を摩擦の大きい材料で構成し、その回転を制御することにより速度を制御することも可能である。
【0040】
洋上風力発電施設20は、その支持構造体21の基部25が海底に固定される固定式のもの、海上に浮かんだ状態で所定位置に据付けられる浮体式のものの何れも用いることができる。これらのうち、据付け工程により海上に立設した後の位置調整が容易である浮体式のものを用いれば、据付け工程における位置制御を厳密に行う必要がなくなる。すなわち、海上に立設した後に設置場所において位置を微調節し、係留索等で係留することが可能である。
【0041】
(実施の形態2)
本実施の形態では、進行台を予め傾斜させるのではなく、傾斜付与手段により進行台を傾斜させ、進行台上の支持構造体を滑動させて進水させる輸送据付バージとして、本発明を実施する場合について説明する。上述した実施の形態において説明した部材と機能の同じ部材については、同じ符号を付し、説明を省略する。このことは、本実施形態の以降の説明においても同様である。
【0042】
図6は、本実施の形態の輸送据付バージ(例その1)の概略を示す模式図である。同図に示すように、輸送据付バージ30は、進行台31およびバラストタンク(バージ傾斜手段)32を備えている。進行台31は、同図中に破線で示したとおり輸送工程においては水平である。そして、バラストタンク32中のバラスト水を制御して輸送据付バージ30自体を傾斜させることにより、進行台31を傾斜させ洋上風力発電施設20を滑動させて、海上に立設する。
【0043】
図7は、本実施の形態の輸送据付バージ(例その2)の概略を示す模式図である。洋上風力発電施設20を傾斜させる傾斜付与は、バージ傾斜手段としてのバラストタンク32に限られず、据付け工程において進行台を傾斜させ得る手段であればよい。例えば、図7に示すように、進行台17を輸送据付バージ30本体に支持する進行台支持部(傾斜付与手段)33のそれぞれの高さを変化させて進行台17を傾斜させる構成を用いることができる。また、進行台支持部に傾斜を持たせる手段として、電動機を用いることができる。上述した構成の他、輸送据付バージ30の重量バランスを調整する構成などを用いることもできる。
【0044】
(実施の形態3)
本実施の形態では、支持構造体を滑動、進水させてその中央付近に据付けることができる輸送据付バージとして、本発明を実施する場合について説明する。本実施の形態の輸送据付バージによれば、支持構造体が進水する位置を輸送据付バージ中央近くとすることができる。この結果として、進水時の輸送据付バージのバランスが崩れにくく、姿勢の安定が実現され、据付け工程の円滑化ならびに安全性が向上する。
【0045】
図8は本実施の形態の輸送据付バージ(例その1)の概略を示す模式図である。同図は左側が側面から見た状態、右側が上方から見た状態に対応し、(a)が輸送工程、(b)が据付け工程、(c)が立設された洋上風力発電施設を示している。
同図に示す輸送据付バージ40は、平面視した形状(右側の図の形状)が凹型となるように形成された船尾41を備えている。そして、この船尾41の凹型の部分に洋上風力発電施設20を進水させることにより、進水時の輸送据付バージ40のバランスがよくなり、据付け工程をより円滑かつ安全なものにできる。
【0046】
図8(a)に示すように、輸送工程においては、輸送据付バージ40に備えられている支持部(傾斜付与手段)42A〜D上に洋上風力発電施設20が横倒させて載置されている。そして、同図(b)に示すように、支持部42A〜Dの高さを変化させることにより、洋上風力発電施設20を傾斜して滑動させ、進水させる。これにより、同図(c)に示すように、船尾41の凹型の部分に洋上風力発電施設20を進水させることができる。
このため輸送据付バージ40の浮心(浮力の中心)の近傍で洋上風力発電施設20を進水、立設させることが可能となり、輸送据付バージ40のバランスの崩れを抑制できる。
なお、本実施形態では、支持部42A〜D上を洋上風力発電施設20が滑動することから、支持部42A〜Dが進行台としても機能している。
【0047】
図9は本実施の形態の輸送据付バージ(例その2)の概略を示す模式図である。同図は左側が側面から見た状態、右側が上方から見た状態に対応し、(a)が輸送工程、(b)が据付け工程、(c)が立設された洋上風力発電施設を示している。
同図に示す輸送据付バージ50は、船型が双胴船である点において、輸送据付バージ40とは異なっているものの、滑動時の支持構造体が進水する位置を輸送据付バージ中央近くにできる点は同様である。すなわち、輸送据付バージ50の双胴の間の空間51が船尾41の凹形の部分と同様に機能する。また、支持構造体の両側に双胴船である輸送据付バージ50の浮力が働くことから、横揺れを抑えて安定させることができる。
【0048】
図9(a)に示すように、輸送工程においては、輸送据付バージ50に備えられている支持部(傾斜付与手段)52A〜D上に洋上風力発電施設20が横倒させて載置されている。そして、同図(b)に示すように、支持部52Aを抜き去るとともに、支持部52B〜Dの位置(高さ)を制御することにより、洋上風力発電施設20を傾斜させて、支持部52B〜C上を滑動させ、進水させる。この結果として、同図(c)に示すように、空間51に洋上風力発電施設20を進水させることができる。
【0049】
図10は本実施の形態の輸送据付バージ(例その3)の概略を示す模式図である。同図は左側が側面から見た状態、右側が上方から見た状態に対応し、(a)が輸送工程、(b)が据付け工程、(c)が立設された洋上風力発電施設を示している。同図に示した輸送据付バージ50は、支持部52Aを洋上風力発電施設20の重心部を保持する重心保持手段として用いる点において図9に示したものと相違する。
すなわち、図10の輸送据付バージ50は、(a)の輸送工程および(c)の据付け工程後の立設された状態については図9のものと同じであるが、(b)の据付け工程において、洋上風力発電施設20の下方で支持していた支持部52Aを外した後、洋上風力発電施設20の上方から、制動部(重心保持手段)53により洋上風力発電施設20に対し、矢印で示すように鉛直下方向への力を加える。この制動部53の動きと連動(協働)して、支持部52Bが矢印で示すように水平方向(横方向)船首側へ移動する。これにより、滑動時において、洋上風力発電施設20に回転方向の力が加えられて、その重心部の移動を抑制して、輸送据付バージ50の浮心により近い位置に進水させることができる。したがって、据付け工程において洋上風力発電施設20の重心部が移動することに起因する輸送据付バージ50のバランスが崩れることを抑制できる。
【0050】
(実施の形態4)
本実施の形態では、支持構造体を傾斜させることなく据付け工程を行う場合につき説明する。
図11は、本実施の形態の輸送据付バージの概略を示す模式図である。同図に示す輸送据付バージ60は、進行台61を傾斜させることなく、洋上風力発電施設20の据付け工程を実施するものである。すなわち、輸送工程後に、進行台61上に移動可能に設けられている滑動手段62により、洋上風力発電施設20に力を加えて滑動させて、進水させることにより立設する。
【0051】
上述した実施の形態1〜4では、洋上風力発電施設を直接的に滑動させて進水させる形態について説明した。以下では、洋上風力発電施設を間接的に滑動させて進水させる形態、すなわち洋上風力発電施設を支持する架構を滑動させて、進水させる形態について説明する。
【0052】
(実施の形態5)
本実施の形態は、支持構造体を架構で支持した状態として実施する点において、実施の形態1と相違している。
(洋上風力発電施設の輸送据付方法)
本実施の形態の輸送据付方法は、(1)洋上風力発電施設の少なくとも支持構造体を架構により支持した状態で横倒させてバージに搭載する工程(搭載工程)と、(2)架構により支持された支持構造体をバージにより洋上風力発電施設の設置場所まで輸送する工程(輸送工程)と、(3)少なくとも支持構造体を架構により支持した状態で滑動させて進水させることにより支持構造体を海上に立設させて据付ける工程(据付け工程)を備えている。
【0053】
洋上風力発電施設を構成する支持構造体および他の部材は、通常、据付けられた状態を想定してその形状や強度が設定されている。このため、上記した洋上風力発電施設を横倒した状態から立設させる各工程において、支持構造体や他の部材の重量が非常に重いこともあり曲げ応力等の想定外の力が加わると、これらが破損するおそれがある。そこで、本実施の形態では、支持構造体等の保護機構および補強機構としての役割を果たす架構を設けている。架構により支持構造体等を支持した状態で上記各工程を行うことにより、想定外の力が加えられた場合に支持構造体等が破損することを防止できる。また、架構により洋上風力発電施設の関連部材や細部の構造を保護することも可能となる。そして、架構は据付け後に回収されるものであるから、上記各工程で用いられることに適した構造とすることができる。このため、例えば、架構のバージ側表面を平滑な形状とすれば、据付け工程における支持構造体の間接的な滑動を円滑にすることができる。
【0054】
据付け工程は、進行台上の架構により支持された支持構造体を滑動させ進水させて、洋上風力発電施設を海に立設する工程である。上述したように、架構は、保護機構、補強機構および滑動円滑化機構として機能する。このため、支持構造体に加えて、タワーおよびナセルの少なくとも一方も架構に支持された状態で、据付け工程を行うこととしてもよい。これにより、架構により支持された部材をも保護、補強、滑動円滑化することができる。また、この場合、搭載工程および輸送工程も据付け工程と同様の状態で行うことが好ましい。
【0055】
(洋上風力発電施設の輸送据付バージ)
本実施の形態の洋上風力発電施設の輸送据付バージは、据付け工程において、架構に支持された支持構造体を傾斜させることにより間接的に滑動させる輸送据付方法に好適に用いることができる。
図12は、本実施の形態の輸送据付バージの概略を示す模式図である。同図に示すように、輸送据付バージ70は、洋上風力発電施設20の輸送据付に用いられるものである。輸送据付バージ70は、架構71により支持された支持構造体21を搭載、輸送、据付ける点において、実施の形態1の輸送据付バージ10と異なっている。
【0056】
支持構造体21は架構71により支持された状態で、架構71を介して、進行台13上に載置されている。このため、係止手段14は、支持構造体21の基部25側で架構71と係合して係止する。そして、この状態で横倒させた洋上風力発電施設20を進行台13上に係止し、輸送据付バージ70に搭載して輸送する。
設置位置まで洋上風力発電施設20を輸送した後、係止手段14による係止を解除すれば、進行台13上の架構71により支持された洋上風力発電施設20を滑動させて海面に進水させ立設することができる。
【0057】
図13は図12のB−B’矢視断面図である。同図に示すように、架構71は進行台13上と支持構造体21との間および両側面を取り囲む断面コの字状に形成されている。図12に示した架構71は、洋上風力発電施設20の支持構造体21、タワー22およびナセル23を支持するものであるから、その内面はこれらを取り囲む形状とされている。架構71の進行台13側を滑りやすい材質で構成すれば、少ない傾斜で洋上風力発電施設20を滑動させて進水させることも可能となる。
【0058】
図12および図13では、コの字状の部材が間隔を開けて複数連接されてなる構成を示している。しかし、架構71はこれに限られるものではなく、洋上風力発電施設20の少なくとも支持構造体21の進行台13側と両側を保護し、補強する機能を備えたものであればよい。
また、図13に破線で示したように、開放側(鉛直上方側)に取り外し可能な覆いを設ける構成としてもよい。この場合、洋上風力発電施設20を滑動させて海面に進水させた後に覆いを取り外して、洋上風力発電施設20を据付ける。
また、架構71の立設時の上方(図12のナセル23側)を開放しておくこともできる。
架構71上方が開放されていると、立設時に浮体式の洋上風力発電施設20を架構71に引っ掛けることなく容易に進水させ立設せることができる。
【0059】
図14は図12とは別の架構の例(その1)を示す模式図である。同図に示す架構72は、洋上風力発電施設20の支持構造体21のみを支持している。このように、架構72は、支持構造体21のみを支持するものとしてもよい。また、図14に示した支持構造体21のみを支持する架構72に加えてタワー22およびナセル23を架構が支持する構成や、タワー22およびナセル23のうちの一方と支持構造体21とを架構が支持する構成としてもよい。
【0060】
図15は図12とは別の架構の例(その2)を示す模式図である。同図に示した架構73は、進行台13側に滑り・転がり機構(滑り機構、転がり機構)74を備えている。架構73は、滑り・転がり機構74によって滑動をより円滑にすることができる。滑り機構は、例えば円滑な摩擦係数の少ない材料で機構を構成したり、その形状を工夫することにより滑動を円滑にする機構である。また転がり機構は、例えば車輪やローラーやボールによりそれ自身が転動して滑動を円滑にする機構である。滑り・転がり機構74はこれらの滑り機構と転がり機構の機能を併せ持った機構である。
【0061】
(実施の形態6)
本実施の形態では、その中央付近で支持構造体を滑動、進水させてその中央付近に据付けることができる輸送据付バージとして、本発明を実施する場合について説明する。
本実施の形態の輸送据付バージ80は、支持部42A〜D上に進行台13を備えており、進行台13上に架構71により支持された洋上風力発電施設20を搭載して輸送工程および据付工程を行う構成において、実施の形態3の輸送据付バージ40と異なっている。
【0062】
図16は本実施の形態の輸送据付バージ(例その1)の概略を示す模式図である。同図は左側が側面から見た状態、右側が上方から見た状態に対応し、(a)が輸送工程、(b)(c)が据付け工程、(d)が架構により支持された状態で立設された洋上風力発電施設をそれぞれ示している。
図16に示す輸送据付バージ80は、平面視した形状(右側の図の形状)が凹型となるように形成された船尾41の内側面にフェンダー(緩衝装置)81を複数備えている。このフェンダー81により、進行台13上を滑動する際の架構71の動揺を抑えて、進水を円滑にして安全性を向上させることができる。フェンダー81は、公知のものを用いることができるが、例えば、衝突の干渉作用に加えて回転により抵抗低減作用をも有するローリングフェンダー(回転式緩衝装置)を用いることができる。これらの緩衝装置の緩衝メカニズムは、基本的には「ばね」であるが、手段、材料としては空気、ゴムまたは金属が用いられる。空気ばね及び/又はゴムばねの代表例がゴム式フェンダーであるが、ゴム式フェンダーにも様々なタイプがあり、用途に応じて各種のものが選択でき、また組み合わせても使用可能である。
【0063】
図16(a)に示すように、輸送工程においては、支持部42A〜Dにより支持された進行台13上に架構71に支持された洋上風力発電施設20が横倒させて載置されている。そして、同図(b)に示すように、支持部42A〜Dの高さを変化させて進行台13を傾斜させる。この進行台13の傾斜により、同図(c)に示すように、洋上風力発電施設20を支持した架構71が進行台13上を滑動し進水する。これにより、同図(d)に示すように、船尾41の付近に架構71により支持された洋上風力発電施設20を進水させ、立設することができる。
【0064】
図17は、図16の輸送据付バージによる架構の撤収を説明する模式図である。同図は左側が側面から見た状態、右側が上方から見た状態に対応し、(a)から(d)の順に撤収工程を段階的に示している。
図17(a)は、架構71の支持を外して洋上風力発電施設20が据付けられた状態を示している。洋上風力発電施設20が据付けられた後に、同図(b)に示すように、架構71に取り付けられているワイヤー18で架構71を進行台13上に引き上げる。そして、同図(c)に示すように架構71を据付け工程とは反対側に滑動させて、進行台13上に載置する。その後、同図(d)に示すように、支持部42A〜Dの高さを変化させて進行台13を水平に戻す。
【0065】
図18は、本実施の形態の輸送据付バージ(例その2)の概略を示す模式図である。同図は左側が側面から見た状態、右側が上方から見た状態に対応し、(a)が輸送工程、(b)が据付け工程1、(c)が据付け工程2、(d)が架構により支持された状態で立設された洋上風力発電施設をそれぞれ示している。図18に示す輸送据付バージ90は、支持部42A〜D上に進行台13を備えておらず、支持部42A〜D上に支持構造体21を支持した架構71が直接載置される構成において、図16に示した輸送据付バージ80と異なっている。このため、支持部42A〜Dが進行台として機能する。
【0066】
図19は本実施の形態の輸送据付バージ(例その3)の概略を示す模式図である。同図は左側が側面から見た状態、右側が上方から見た状態に対応し、(a)が輸送工程、(b)が据付け工程、(c)が架構により支持された状態で立設された洋上風力発電施設をそれぞれ示している。
輸送据付バージ100は、洋上風力発電施設20を架構71に支持した状態で上記各工程を行う点において、実施の形態3の輸送据付バージ50とは異なっている。しかし、輸送据付バージ100の双胴の間の空間51の機能および横揺れを抑える機能などは、輸送据付バージ50と同様である。
【0067】
(実施の形態7)
本実施の形態では、複数基の洋上風力発電施設を搭載可能に構成した輸送据付バージとして、本発明を実施する形態について説明する。
図20は、本実施の形態の輸送据付バージの概略を示しており、(a)が輸送工程、(b)(c)が据付け工程、(d)が立設された洋上風力発電施設における輸送据付バージを模式的に示す平面図である。
同図に示すように、本実施形態の輸送据付バージ110は、平面視した形状が凹型となるように形成された船尾111を備えている。船尾111の凹型の部分の上方に進行台13が設けられている。船尾111の形状は、通常、進行台13が傾斜可能となるように進行台13の外形に合わせて凹型の部分が形成される。ただし、進行台13が傾斜可能であれば良いので、凹型の部分を進行台13の外形よりも大きく形成してもよい。
【0068】
図20(a)は、輸送工程における輸送据付バージ110を平面視した状態を示している。同図に示すように、本実施形態の輸送据付バージ110は3基の洋上風力発電施設20を輸送可能に構成されている。しかし、同時に輸送可能な洋上風力発電施設20の数は一例であり、2基または4基以上を同時に輸送する構成としてもよい。
同図に示した輸送工程では、架構71に支持された状態で進行台13上に載置されている洋上風力発電施設20のみナセル23にローター24が取り付けられた組立状態であり、他のものはナセル23から特にスペースを要するローター24が取り外された分解状態である。このように、少なくとも一部を分解状態とすることにより、輸送据付バージ110上の領域を有効に用いることができる。なお、輸送対象の洋上風力発電施設20が輸送据付バージ110上の領域を占める割合に応じて、組立状態とする洋上風力発電施設20の数を変化させてもよい。
【0069】
図20(b)(c)は、据付け工程における輸送据付バージ110を平面視した状態を示している。(b)(c)では、洋上風力発電施設20および進行台13の一部が水に浸かっており、この水に浸かった部分を斜線で示している。
図20(b)に示すように、進行台13を傾斜させることにより、架構71に支持された支持構造体21の一部が水に浸かる。また、図20(c)示すように、重力によって架構71を進行台13の傾斜に沿って滑動させることにより、架構71が進水する。そして、図20(d)に示すように、架構71に支持された状態の洋上風力発電施設20が進行台13上を離れて立設し、その全体が進水する。この状態で架構71による支持構造体21の支持を解くことにより、洋上風力発電施設20の据付け工程が完了する。
【0070】
図21は、図20の輸送据付バージの進行台上の架構に別の洋上風力発電施設を移動して載置する工程を示す模式図であり、(a)は架構を進行台に撤収した状態、(b)は進行台を水平に戻した状態でローターを備えていない洋上風力発電施設を移動手段のワイヤーに取り付けた状態、(c)は(b)の洋上風力発電施設を架構上に移動した状態、(d)は進行台上でローターを取り付け架構に支持された別の洋上風力発電施設を進行台に搭載した状態をそれぞれ示している。
【0071】
架構71は、輸送工程において輸送された洋上風力発電施設20の据付けに当たり共用可能に構成されている。このため、図21(a)に示すように撤収して再度利用される。なお、同図では、進行台13の傾斜はその上に架構71を保持可能な程度となっている。そして、図21(b)に示すように進行台13を水平にした後、支持構造体21、タワー22およびナセル23が組立てられたものをワイヤー118に取り付けて、移動手段112を用いて架構71に載置する。その後、図21(c)に示すように、架構71に載置された状態でナセル23にローター24を取り付ける。この後に、図20に示した工程と同様にして、別の洋上風力発電施設20の据付を行う。移動手段112は、例えば大型のクレーンを用いることができる。
【0072】
なお、図20(a)および図21(b)に示した進行台13を水平にする工程を省略して、進行台13が傾斜された状態を維持して、洋上風力発電施設20の輸送、据付け、別の洋上風力発電施設20の積載、輸送、据付けを行うこととしてもよい。
【0073】
(実施の形態8)
本実施形態は、架構を複数備えており、進行台が複数の前記架構を同時に載置可能な輸送据付バージとして、本発明を実施する形態について説明する。
図22および図23は、本実施の形態の輸送据付バージ(例その1および例その2)の概略を示す模式図である。
図22に示すように、輸送据付バージ120の進行台123は複数の洋上風力発電施設20を同時に載置可能な横幅を有している。また、ワイヤー18による架構71の牽引に用いられる牽引装置121を有している。牽引装置121は輸送据付バージ120上に設けられたレール122により船側方向(図22において上下方向)に移動可能なものであるため、3基の洋上風力発電施設20を各支持する架構71の牽引に適した位置に牽引装置121を移動させることができる。
【0074】
図22に示すように、進行台123は、各1基の洋上風力発電施設20を支持する架構71−1、71−2および71−3、ならびに架構の数に対応した合計3基の進行台123−1、123−2および123−3から構成されている。このように、進行台123を架構71−1〜3に対応した数に分割した複数の進行台123−1〜3としている。この構成により、傾斜させる際に各進行台123−1〜3にかかる負荷は、一基の洋上風力発電施設20のものとなる。このため、進行台123上に洋上風力発電施設20を複数搭載している場合であっても、一基分に対応する力によって洋上風力発電施設20を滑動させて据付けることが可能となる。また、設置場所を若干変えながら順次、洋上風力発電施設20を進水させることができる。
【0075】
図23は、実施の形態8の輸送据付バージ(例その2)の概略を示す模式図である。同図に示すように、輸送据付バージ130の進行台133は、複数の洋上風力発電施設20を同時に載置可能な横幅を有する一体のものとして構成されている。そして、ワイヤー18−1、18−2および18−3による架構71−1、71−2および71−3の牽引に用いられる3基の牽引装置121−1、121−2および121−3を有している。各牽引装置121−1〜3は進行台133上の3基の洋上風力発電施設20−1、20−2、および20−3を各支持する架構71−1〜3を支持、牽引するために用いられる。
【0076】
進行台133は一体に形成されているから、これを傾斜させることによりその上に載置されている複数の架構71−1〜3に支持された複数の洋上風力発電施設20−1〜3が全て傾斜する。しかし、各洋上風力発電施設20−1〜3は、ワイヤー18−1〜3を介して牽引装置121―1〜3に係止されているため、ワイヤー18−1〜3を介して牽引装置121―1〜3により洋上風力発電施設20−1〜3の滑動を個別に制御することができる。したがって、ワイヤー18により洋上風力発電施設を選択的に滑動、進水させて据付けることができる。このため、設置場所を若干変えながら順次、洋上風力発電施設20を進水させることができる。
【0077】
図22に複数の架構に対応した数の進行台と移動可能な一つの牽引装置との組み合わせを示し、図23に複数の架構を載置可能な一つの進行台と複数の架構に対応した数の牽引装置との組み合わせを示した。しかし、進行台と牽引装置の組み合わせは、これらに限られるものではない。上記以外にも、複数の架構に対応した数の進行台と複数の架構に対応した数の牽引装置との組み合わせや、一つの進行台と移動可能な一つの牽引装置との組み合わせとしてもよい。ただし、一つの進行台と移動可能な一つの牽引装置との組み合わせとした場合、進行台の傾斜によりワイヤーを介して牽引装置により支持されている洋上風力発電施設を選択的に滑動させるために、据付け対象外の洋上風力発電施設を進行台上に係止する手段を設ける必要がある。
【0078】
本発明は、以下に記す洋上風力発電施設の輸送据付方法または洋上風力発電施設の輸送据付バージとして実施することもできる。
洋上風力発電施設の少なくとも支持構造体を横倒させてバージに搭載し、前記バージにより前記支持構造体を前記洋上風力発電施設の設置場所まで輸送し、前記支持構造体を滑動させて進水させることにより立設させて据付けた第1の洋上風力発電施設の輸送据付方法。
第1の洋上風力発電施設の輸送据付方法において、前記輸送が、前記支持構造体に前記洋上風力発電施設のタワーとナセルとローターを一体化して輸送した第2の洋上風力発電施設の輸送据付方法。
第2の洋上風力発電施設の輸送据付方法において、前記搭載が、前記ローターを上側に向けて横倒させた第3の洋上風力発電施設の輸送据付方法。
前記第1から第3のうちのいずれかの洋上風力発電施設の輸送据付方法において、前記据付けが、前記支持構造体を傾斜させることにより滑動させた第4の洋上風力発電施設の輸送据付方法。
第1から第4のうちのいずれかの洋上風力発電施設の輸送据付方法において、前記据付けが、前記支持構造体の基部側に向かって滑動させた第5の洋上風力発電施設の輸送据付方法。
第1から第5のうちのいずれかの洋上風力発電施設の輸送据付方法において、前記据付けが、前記支持構造体の滑動時の速度を制御した第6の洋上風力発電施設の輸送据付方法。
第1から第6のうちのいずれかの洋上風力発電施設の輸送据付方法において、前記輸送が、複数基の前記支持構造体を前記バージに搭載して一度に輸送し、前記据付けが、前記設置場所で1基ずつ順次据付けた第7の洋上風力発電施設の輸送据付方法。
第1から第7のうちのいずれかの洋上風力発電施設の輸送据付方法において、前記支持構造体は、浮体式である第8の洋上風力発電施設の輸送据付方法。
【0079】
バージを航行させる航行手段と、前記バージ上に設けた前記支持構造体を滑動させる傾斜した進行台と、前記進行台上に前記支持構造体を係止する係止手段を備えた第1の洋上風力発電施設の輸送据付バージ。
バージを航行させる航行手段と、前記バージ上に設けた前記洋上風力発電施設の支持構造体を滑動させる進行台と、前記進行台を傾斜させて前記進行台上の前記支持構造体を滑動させる傾斜付与手段を備えた第2の洋上風力発電施設の輸送据付バージ。
第1または第2の洋上風力発電施設の輸送据付バージにおいて、前記進行台に2条以上の線状滑動機構を設け、前記線状滑動機構の間に凹部を形成した第3の洋上風力発電施設の輸送据付バージ。
第1から第5のうちのいずれかの洋上風力発電施設の輸送据付バージにおいて、前記進行台の進水側の終端部を水面方向に湾曲させた第4の洋上風力発電施設の輸送据付バージ。
支持構造体を輸送するバージと、前記バージを航行させる航行手段と、前記バージを傾斜させるバージ傾斜手段と、前記バージ傾斜手段にて前記バージを傾けて前記支持構造体を滑動させる傾斜制御手段を備えた第5の洋上風力発電施設の輸送据付バージ。
第1から第5のいずれかの洋上風力発電施設の輸送据付バージにおいて、前記バージの船尾の平面視した形状を凹型に形成した第6の洋上風力発電施設の輸送据付バージ。
第1から第6のうちのいずれかの洋上風力発電施設の輸送据付バージにおいて、前記バージの船型を双胴船とした第7の洋上風力発電施設の輸送据付バージ。
第1から第7のうちのいずれかの洋上風力発電施設の輸送据付バージにおいて、前記支持構造体を含む洋上風力発電施設の重心部を保持して滑動させる重心保持手段をさらに備えた第8の洋上風力発電施設の輸送据付バージ。
第1から第8のうちのいずれかの洋上風力発電施設の輸送据付バージにおいて、前記航行手段は自航式とした第9の洋上風力発電施設の輸送据付バージ。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明は、洋上風力発電施設を輸送した後に据付ける方法およびこの方法を実施するためのバージとして用いることができる。
【符号の説明】
【0081】
10、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、輸送据付バージ
11 主機(航行手段)
12 プロペラ(航行手段)
13、17、31、61、123、123−1、123−2、123−3、133 進行台
14 係止手段
15 線状滑動機構
16 凹部
18、118 ワイヤー
19 ブレーキ機構
20 洋上風力発電施設
21 支持構造体
22 タワー
23 ナセル
24 ローター
25 基部
32 バラストタンク(バージ傾斜手段)
33 進行台支持部(傾斜付与手段)
41、111 船尾
42A〜D、52A〜D 支持部(傾斜付与手段、進行台)
52B 支持部(重心保持手段)
53 制動部(重心保持手段)
71、72、73 架構
74 滑り・転がり機構(滑り機構、転がり機構)
81 フェンダー(緩衝装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洋上風力発電施設の少なくとも支持構造体を横倒させてバージに搭載し、
前記バージを前記洋上風力発電施設の設置場所まで輸送し、
前記支持構造体を直接的あるいは間接的に滑動させて進水させることにより前記支持構造体を立設させて据付けたことを特徴とする洋上風力発電施設の輸送据付方法。
【請求項2】
少なくとも前記支持構造体を支持する架構により、前記進水時に前記架構を滑動させて前記支持構造体を間接的に滑動させたことを特徴とする請求項1に記載の洋上風力発電施設の輸送据付方法。
【請求項3】
前記輸送が、前記支持構造体に前記洋上風力発電施設のタワーとナセルを一体化して輸送したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の洋上風力発電施設の輸送据付方法。
【請求項4】
前記輸送が、前記洋上風力発電施設のローターも一体化した輸送であり、前記搭載が、前記ローターを上側に向けて横倒させたことを特徴とする請求項3に記載の洋上風力発電施設の輸送据付方法。
【請求項5】
前記据付けが、前記架構で前記タワーおよび前記ナセルの少なくとも一方も支持して滑動させたことを特徴とする請求項3あるいは請求項4に記載の洋上風力発電施設の輸送据付方法。
【請求項6】
前記据付けが、前記支持構造体を傾斜させることにより直接的あるいは間接的に滑動させたことを特徴とする請求項1から請求項5のうちの1項に記載の洋上風力発電施設の輸送据付方法。
【請求項7】
前記据付けが、前記支持構造体の基部側に向かって直接的あるいは間接的に滑動させたことを特徴とする請求項1から請求項6のうちの1項に記載の洋上風力発電施設の輸送据付方法。
【請求項8】
前記据付けが、前記支持構造体の直接的あるいは間接的な滑動時の速度を制御したことを特徴とする請求項1から請求項7のうちの1項に記載の洋上風力発電施設の輸送据付方法。
【請求項9】
前記据付けが、前記支持構造体を滑り機構あるいは転がり機構を介して直接的あるいは間接的に滑動させたことを特徴とする請求項1から請求項8のうちの1項に記載の洋上風力発電施設の輸送据付方法。
【請求項10】
前記滑り機構あるいは前記転がり機構を前記架構に設けたことを特徴とする請求項9に記載の洋上風力発電施設の輸送据付方法。
【請求項11】
前記支持構造体の前記進水後に前記架構を前記バージに撤収したことを特徴とする請求項2から請求項10のうちの1項に記載の洋上風力発電施設の輸送据付方法。
【請求項12】
前記輸送が、複数基の前記支持構造体を一度に前記バージに搭載し、
前記据付けが、前記設置場所で1基ずつ順次据え付けたことを特徴とする請求項1から請求項11のうちの1項に記載の洋上風力発電施設の輸送据付方法。
【請求項13】
前記支持構造体は、浮体式であることを特徴とする請求項1から請求項12のうちの1項に記載の洋上風力発電施設の輸送据付方法。
【請求項14】
バージを航行させる航行手段と、
前記バージ上に設けた傾斜した進行台と、
前記進行台上に支持構造体あるいは架構を係止する係止手段を備えた洋上風力発電施設の輸送据付バージ。
【請求項15】
バージを航行させる航行手段と、
前記バージ上に設けた進行台と、
前記進行台を傾斜させて前記進行台上の支持構造体あるいは架構を滑動させる傾斜付与手段を備えたことを特徴とする洋上風力発電施設の輸送据付バージ。
【請求項16】
前記進行台に2条以上の線状滑動機構を設け、前記線状滑動機構の間に凹部を形成したことを特徴とする請求項14または請求項15に記載の洋上風力発電施設の輸送据付バージ。
【請求項17】
前記進行台の進水側の終端部を水面方向に湾曲させたことを特徴とする請求項14から請求項16のうちの1項に記載の洋上風力発電施設の輸送据付バージ。
【請求項18】
前記進行台上を滑動する際における前記支持構造体または前記架構の動揺を抑える緩衝装置を備えていることを特徴とする請求項14から請求項17のうちの1項に記載の洋上風力発電施設の輸送据付バージ。
【請求項19】
バージを航行させる航行手段と、
前記バージを傾斜させるバージ傾斜手段とを備えたことを特徴とする洋上風力発電施設の輸送据付バージ。
【請求項20】
前記バージの船尾の平面視した形状を凹型に形成したことを特徴とする請求項14から請求項19のうちの1項に記載の洋上風力発電施設の輸送据付バージ。
【請求項21】
前記バージの船型を双胴船としたことを特徴とする請求項14から請求項20のうちの1項に記載の洋上風力発電施設の輸送据付バージ。
【請求項22】
前記支持構造体を含む洋上風力発電施設の重心部あるいは前記支持構造体を含む洋上風力発電施設を支持している前記架構の重心部の移動を抑制して滑動させる重心保持手段をさらに備えたことを特徴とする請求項14から請求項21のうちの1項に記載の洋上風力発電施設の輸送据付バージ。
【請求項23】
前記航行手段は自航式としたことを特徴とする請求項14から請求項22のうちの1項に記載の洋上風力発電施設の輸送据付バージ。
【請求項24】
複数基の前記洋上風力発電施設が搭載可能であることを特徴とする請求項14から請求項23のうちの1項に記載の洋上風力発電施設の輸送据付バージ。
【請求項25】
複数基の前記洋上風力発電施設の据付けに当たり共用可能な単数の前記架構と、
少なくとも前記支持構造体を前記架構に移動させる移動手段を備えたことを特徴とする請求項24に記載の洋上風力発電施設の輸送据付バージ。
【請求項26】
複数の前記架構に対応した複数の前記進行台を備えたことを特徴とする請求項24に記載の洋上風力発電施設の輸送据付バージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2013−29101(P2013−29101A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−140195(P2012−140195)
【出願日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【出願人】(501204525)独立行政法人海上技術安全研究所 (185)
【Fターム(参考)】