説明

洋菓子類製造用米粉とグルテンのブレンド粉とそれを用いた洋菓子類

【課題】洋菓子製造適性良好な、米粉を含有する洋菓子製造用ブレンド粉、及びそれを用いて製造される品質良好な洋菓子類を提供する。
【解決手段】画期的に洋菓子製造適性良好なアルカリ処理米粉と凍結乾燥グルテンを適当量ブレンドし、従来の米粉とグルテンとのブレンド粉に比べ洋菓子製造の非常に優れた米粉ブレンド粉を提供する。本米粉ブレンド粉を用いて従来品に比べ格段に高品質の洋菓子類を製造できる。本法によって得られる洋菓子類は従来品に比べ総合的な品質が良好で、特に(商品価値を左右する)ボリュームに優れた特性を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋菓子製造適性の良好なアルカリ処理米粉と凍結乾燥グルテンを適当量ブレンドした洋菓子製造適性に優れた洋菓子類製造用米粉ブレンド粉に関し、更に詳しくは従来の米粉ブレンド粉に比べ格段に洋菓子製造適性に優れたアルカリ処理米粉と凍結乾燥グルテンとの最適比率でブレンドした洋菓子類製造用ブレンド粉とそれを用いて製造された品質良好な洋菓子類に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、米は米飯として、粒食の用途が大部分であり、粉食用途としては団子、米菓、打物等の和菓子に限られ、小麦粉の様な広範囲の加工利用は行われてこなかった。しかしながら、最近、米を多量の損傷デンプンを出すことなく微粉砕する技術が開発され、米粉の広範囲の加工利用技術が開発されつつある。
【0003】
しかしながら、これまでの検討は主に米粉の製粉方法の改善と得られた米粉をパン、麺、菓子に利用するための製法の改良について行われてきた。米粉の製粉方法については、例えば、特許文献1〜3に記載があり、米粉を洋菓子に利用するための製法の改良については、特許文献4〜5に記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−287652号公報
【特許文献2】特開平11−32706号公報
【特許文献3】特開2000−175636号公報
【特許文献4】特開2010−263869号公報
【特許文献5】特開2009−213379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの技術によって米粉の菓子製造適性等はかなり向上したが、向上後の菓子製造適性も未だに薄力小麦粉のそれには遙かに劣る状況である。洋菓子類の大部分を占める食品は、スポンジ生地またはバター生地から製造される。前者から製造されるものとしては、スポンジケーキ、シフォンケーキ等がある。これらの食品は、主に鶏卵の気泡性により焼成後の膨らみと軽い食感が得られる。後者から製造される食品としてはパウンドケーキやクッキーがあり、主にバターやショートニング等の油脂の気泡性や膨張剤(気泡剤)により焼成後の膨らみと軽い食感が得られる。
【0006】
現状では、特に米粉を用いたスポンジ生地やバター生地から洋菓子類を製造する場合に、米粉の洋菓子製造適性を一定レベルに維持するため、調達しやすい外国産の低タンパク小麦粉を米粉に混合して使用したり、米粉に適量のグルテンを添加してその品質を一定レベルに維持している。しかし、前者の場合は、外国産の小麦(外麦)を挽いた小麦粉を使用した洋菓子類は、国内産の小麦粉(内麦)を挽いた小麦粉を使用した洋菓子類に比べて風味が劣ると評価され、また後者の場合は、添加するグルテンが洋菓子類のボリューム(膨らみ)を低下させ、独特の不快な風味(グルテン臭)を持つ場合があるため、得られた食品の品質が非常に劣るという欠点も持っている。このような理由から、米粉を用いて十分な品質の菓子類、特に、洋菓子類が製造できていないのが現状である。
【0007】
このような状況から、米粉とグルテンのとのブレンド粉を用いた洋菓子類製造において、小麦粉並の洋菓子製造適性が強く望まれていると共に、米粉とグルテンとのブレンド粉を用いた、小麦粉製品並み品質で、且つ、米粉の良好な特徴が発揮された特徴的洋菓子類の製造技術と開発が強く求められている。
【0008】
本発明の目的は、米粉とグルテンとのブレンド粉であって、小麦粉並又はそれ以上の洋菓子製造適性を有する、米粉ブレンド粉を提供することにある。さらに本発明は、このブレンド粉を用いて、米粉の良好な特徴が発揮された特徴的洋菓子類を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の問題を解決するための米粉の製造方法、米粉にブレンドするグルテンの種類、さらには米粉と特定のグルテンのブレンド割合等について鋭意研究した結果、本発明を完成した。
【0010】
本発明は以下の通りである。
[1]
凍結乾燥グルテンを4質量部〜12質量部およびアルカリ処理米粉を96質量部〜88質量部含有する洋菓子類製造用ブレンド粉であって、但し、凍結乾燥グルテンおよびアルカリ処理米粉の合計を100質量部とし、前記アルカリ処理米粉は、平均粒径が3.0μm以上20.0μm以下、損傷澱粉量が0.5質量%以上5.0質量%以下、タンパク質含量が0.01質量%以上1.0質量%以下で、且つ、非澱粉性糖類が1.0質量%以上2.0質量%以下の米粉である、前記ブレンド粉。
[2]
凍結乾燥グルテンを6質量部〜10質量部およびアルカリ処理米粉を94質量部〜90質量部含有する、[1]に記載のブレンド粉。
[3]
前記洋菓子類が、スポンジケーキ類、パウンドケーキ類、シフォンケーキ類、蒸しケーキ類、カステラ類、ドーナツ類、およびビスケット類から成る群から選ばれる少なくとも1種の洋菓子類である[1]または[2]に記載のブレンド粉。
[4]
前記米粉が以下の工程(1)〜(3)を含む方法で製造される米粉である、[1]〜3のいずれかに記載のブレンド粉。
(1)生米粒をアルカリ性水溶液とともに粉砕処理するか、または生米粒を粉砕した米粉をアルカリ性水溶液に浸漬処理し、処理後の米粉とアルカリ性水溶液とを分離する工程、
(2) 分離した米粉をアルカリ性水溶液に浸漬処理し、処理後の米粉とアルカリ性水溶液とを分離する工程、但し、この工程は、1回または2回以上行う、
(3)得られた米粉を、任意に水洗及び/又は中和した後に、脱水及び/又は乾燥して米粉を得る工程
[5]
[1]〜[4]のいずれかに記載のブレンド粉を用いて洋菓子類を製造する、洋菓子類の製造方法。
[6]
[1]〜[4]のいずれかに記載の米粉ブレンド粉を用いて製造された洋菓子類。
[7]
前記洋菓子類がスポンジケーキ類、パウンドケーキ類、シフォンケーキ類、蒸しケーキ類、カステラ類、ドーナツ類、およびビスケット類から成る群から選ばれる少なくとも1種の洋菓子類である[6]に記載の洋菓子類。
【0011】
即ち、本発明は、適当なアルカリ処理により損傷デンプン量が非常に少なく、且つ、非常に粒径が小さく、グルテンとブレンドした場合の洋菓子製造適性が画期的に改善された米粉に、洋菓子製造適性の良好な凍結乾燥グルテンをブレンドすることによって、従来に比べ、洋菓子製造適性が非常に改善され米粉ブレンド粉を提供し、さらに、このブレンド粉を用いることによって小麦粉製品並みの品質で、且つ、米粉の良好な特徴が発揮された特徴的洋菓子類を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、洋菓子製造適性が飛躍的に改善された米粉ブレンド粉を提供することができる。この効果は主に洋菓子製造適性が飛躍的に改善されたアルカリ処理米粉と凍結乾燥グルテンの併用による効果である。これにより、本米粉ブレンド粉を用いることで、市販薄力粉からの洋菓子類と同等の高品質の各種洋菓子類を製造することが可能になる。その結果、従来外麦(外国産小麦)薄力粉を主に用いて製造されていた各種洋菓子類を国内産、地域産の米粉、小麦グルテンを用いて製造することが可能になり、従来主に粒食に向けられていた米の消費の拡大と国内産、地域産小麦グルテンの需要拡大に多大の寄与が期待される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[ブレンド粉]
本発明は、凍結乾燥グルテンを4質量部〜12質量部およびアルカリ処理米粉を96質量部〜88質量部含有する洋菓子類製造用ブレンド粉である。但し、凍結乾燥グルテンおよびアルカリ処理米粉の合計を100質量部とする。さらに、前記アルカリ処理米粉は、平均粒径が3.0μm以上20.0μm以下、損傷澱粉量が0.5質量%以上5.0質量%以下、タンパク質含量が0.01質量%以上1.0質量%以下で、且つ、非澱粉性糖類が1.0質量%以上2.0質量%以下の米粉である。
【0014】
本発明で用いる凍結乾燥グルテンとは、小麦粉に水を加えて混捏し、小麦粉中に含まれるグルテンを水和、膨潤させて粘着性でまとまりのある生地をつくり、この生地を水で洗浄して生地中の澱粉や水溶性物質を洗い出して調製した生グルテンを凍結乾燥した後、粉砕して製造されるグルテン粉末のことである。具体的な凍結乾燥グルテン製品としては、北国フード株式会社のH印小麦蛋白、内麦小麦蛋白を挙げることができるが、上記の方法で作成された凍結乾燥グルテンであれば特に限定は無く、本発明の凍結乾燥グルテンに包含される。
【0015】
上記したアルカリ処理米粉にブレンドする凍結乾燥グルテン含量としては、凍結乾燥グルテンおよびアルカリ処理米粉の合計を100質量部としたときに、凍結乾燥グルテンを4質量部〜12質量部とし、アルカリ処理米粉を96質量部〜88質量部とする。この範囲より凍結乾燥グルテン含量が低いと十分な洋菓子製造適性が発揮されず、逆に凍結乾燥グルテン含量が上記範囲より高いと得られた洋菓子類の食感等が好ましくない傾向を示す。
【0016】
本発明において、凍結乾燥グルテン及び米粉の質量はすべて13.5質量%水分ベースの質量であり、米粉ブレンド粉の凍結乾燥グルテン及び米粉の質量パーセントもすべて13.5%水分ベースの質量に基づく質量%である。
【0017】
<アルカリ処理米粉>
本発明において用いるアルカリ処理米粉は、平均粒径が3.0μm以上20.0μm以下、損傷澱粉量が0.5質量%以上5.0質量%以下、タンパク質含量が0.01質量%以上1.0質量%以下で、且つ、非澱粉性糖類が1.0質量%以上2.0質量%以下である。米粉は、好ましくは、平均粒径が6.0μm以上18.0μm以下、損傷澱粉量が0.8質量%以上3.0質量%以下、タンパク質含量が0.1質量%以上0.8質量%以下で、且つ、非澱粉性糖類が1.2質量%以上1.9質量%以下である。米粉は、さらに好ましくは、平均粒径が10.0μm以上17.0μm以下、損傷澱粉量が0.9質量%以上2.0質量%以下、タンパク質含量が0.2質量%以上0.7質量%以下で、且つ、非澱粉性糖類が1.3質量%以上1.8質量%以下である。数値限定の理由は以下の通りである。
【0018】
本発明で用いるアルカリ処理米粉は、平均粒径が3.0μm以上20.0μm以下である。平均粒径が3.0μm未満になると、洋菓子類の製造過程で本米粉に水分を加えて生地を形成する際にまとまりにくく、製造された洋菓子類の内相はつぶれ不規則な構造となるため、品質が低下する。一方、平均粒径が20.0μmを超えると、製造された洋菓子類は十分に膨らまず、内相はつぶれて食感は粗くなり、風味も劣るため、各種洋菓子類の品質が低下する。
【0019】
本発明で用いるアルカリ処理米粉は、損傷澱粉量が0.5質量%以上5.0質量%以下であることで、本発明の米粉ブレンド粉を用いて製造した洋菓子類が、市販の小麦粉のみで製造した洋菓子類とほぼ同等の品質で、かつ米粉がもたらす良好な食感等の特徴が付与されるという利点がある。損傷澱粉量を0.5質量%未満にするためには、製造工程が複雑となってコストがかかるという問題があり、5.0質量%を超えると製造された洋菓子類は十分に膨らまず、内相はつぶれて食感と風味が劣るため、各種洋菓子類の品質が低下するという問題がある。
【0020】
本発明で用いるアルカリ処理米粉は、タンパク質含量が0.01質量%以上1.0質量%以下であることで、本発明の米粉ブレンド粉から製造した洋菓子類が、市販の小麦粉のみで製造した洋菓子類とほぼ同等の品質で、且つ、米粉がもたらす良好な食感等の特徴が付与されるという利点がある。タンパク質含量を0.01質量%未満にするためには、製造工程が複雑となってコストがかかるという問題があり、1.0質量%を超えると製造された菓子類は十分に膨らまず、内相はつぶれて食感と風味は劣るため、各種洋菓子類の品質が低下するという問題がある。
【0021】
本発明で用いるアルカリ処理米粉は、非澱粉性糖類が1.0質量%以上2.0質量%以下であることで、本発明の米粉ブレンド粉を用いて製造された洋菓子類が、市販の小麦粉のみで製造した洋菓子類とほぼ同等の品質で、且つ、米粉がもたらす良好な食感等の特徴が付与されるという利点がある。非澱粉性糖類を1.0質量%未満にするためには、製造工程が複雑となってコストがかかるという問題があり、2.0質量%を超えると製造された洋菓子類は十分に膨らまず、内相はつぶれて食感と風味が劣るため、各種洋菓子類の品質が低下するという問題がある。
【0022】
なお、上記の方法によって得られたアルカリ処理米粉の平均粒径は、Sympatec社(ドイツ)のHELOS Particle Size Analysisを用いて水分含量12.0質量%から14.0質量%の範囲の試料を用いて測定される平均粒径の値と定義される。また、損傷澱粉量は、乾物試料ベースでメガザイム社(アイルランド)のstarch damage assay kitを用いて測定される損傷澱粉量(質量%)と定義される。本米粉のタンパク質含量は、乾物試料ベースで標準ケルダール法で求めた値(%)と定義する。また、本米粉の非澱粉性糖類の含量は、乾燥試料ベースの値(%)であり、測定値は全乾物試料質量を100%とし、それから酵素法により求めた乾物試料ベースでの澱粉含量(質量%)と上記のタンパク質含量(%)を差し引いて求めた値(%)と定義する。
【0023】
乾物試料ベースでの試料中の澱粉含量の値(%)は以下のように測定する。試料0.1〜0.2gに50%エタノール水溶液を添加混合し上清を除去することによって低分子の糖を除去する。次に、十分量の水を添加したサンプルをほぼ100℃で3分間加熱し、完全に澱粉を糊化させる。このサンプルを冷却後グルコアミラーゼ剤(日本バイオコン株式会社製)を十分量添加し、37℃、2時間インキュベートし、澱粉を完全に分解する。この分解サンプルを適当な濾紙で濾過し濾液中のグルコース量をグルコース測定キットを用いて測定する。得られたグルコース量から以下の式によって乾物試料当たりの澱粉含量(%)を計算によって求める。
乾物試料当たりの澱粉含量(%)=グルコース量(g)×0.9/乾物試料質量(g)×100
【0024】
本発明のアルカリ処理米粉とは、以下の方法によって調製され、以下に示す分析値を示す米粉と定義する。
本発明の米粉の製造方法は、以下の工程(1)〜(3)を含む。
(1)生米粒をアルカリ性水溶液とともに粉砕処理するか、または生米粒を粉砕した米粉をアルカリ性水溶液に浸漬処理し、処理後の米粉とアルカリ性水溶液とを分離する工程、
(2)分離した米粉をアルカリ性水溶液に浸漬処理し、処理後の米粉とアルカリ性水溶液とを分離する工程、但し、この工程は、1回または2回以上行う、
(3)得られた米粉を、任意に水洗及び/又は中和した後に、脱水及び/又は乾燥して米粉を得る工程
【0025】
工程(1)
工程(1)では、生米粒をアルカリ性水溶液とともに粉砕処理するか、または生米粒を粉砕した米粉をアルカリ性水溶液に浸漬処理する。米原料の種類は特に限定は無く、例えば、粳種、糯種、長粒種、中粒種、短粒種など種々のものが使用できる。また、米粒は、通常精米が使用され、例えば、70〜90質量%の精米歩合のものを使用することができる。70〜90質量%の精米歩合のものを使用することで、アルカリ処理の効果が首尾良く発揮され、望ましい特性の米粉を効率的に調製することができるという利点がある。
【0026】
アルカリ性水溶液としては、例えば、NaOH水溶液が用いられるがそれに限定されるものではない。食品製造に使用可能なアルカリ性の物質溶液でNaOH水溶液と同様の塩基度、効果を発揮するアルカリ物質の水溶液であればいずれのも使用することができる。アルカリ物質としては、Na、K、Caなどのアルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物や炭酸塩等いずれも用いることができる。米粒をアルカリ性水溶液に浸漬して米粉を調製する場合は、浸漬処理した米粒を水挽き方式の粉砕機(グラインダー方式粉砕機、石臼式製粉機、胴搗粉砕機等)を用いて粉砕する。生米粒を粉砕した米粉をアルカリ性水溶液に浸漬処理する場合には、事前に、生米粒を乾式または湿式粉砕し、得られた米粉をアルカリ性水溶液に浸漬処理する。
【0027】
アルカリ性水溶液としては、例えば、0.2質量%(0.05規定)から5質量%(1.25規定)、好ましくは0.2質量%(0.05規定)から3質量%(0.75規定)のNaOH溶液相当の塩基度のアルカリ水溶液を用いる。上記濃度範囲のアルカリ性水溶液を用いることで、米粉の澱粉が糊化することなく、タンパク質、損傷澱粉、非澱粉性糖類が容易に除去されるというという利点がある。タンパク質、損傷澱粉、非澱粉性糖類の除去は、このアルカリ性水溶液中に、米粒または米粉を、1℃から40℃の温度範囲、好ましくは3℃から10℃の範囲で8から24時間好ましくは10から15時間浸漬することで行うことができる。この範囲の温度及び時間とすることで、本発明の所望の米粉を得ることができる。米粒または米粉のアルカリ処理用のアルカリ性水溶液の量は、米粒または米粉に対して6から10倍量、好ましくは7から9倍量である。この範囲の量とすることで、本発明の所望の米粉を得ることができる。但し、アルカリ処理効果が十分に発揮できる割合であれば、温度、時間及び量には、特に制限はない。
【0028】
浸漬処理後、遠心分離、デカンテーション等の操作でアルカリ性水溶液の上清を除去する。
【0029】
工程(2)
工程(2)では、工程(1)で分離した米粉を、再度、0.2質量%(0.05規定)から5質量%(1.25規定)、好ましくは0.2質量%(0.05規定)から3質量%(0.75規定)のアルカリ性水溶液に浸漬処理し、処理後の米粉とアルカリ性水溶液とを分離する。アルカリ性水溶液への浸漬処理は、工程(1)と同様の条件で実施してもよいし、工程(1)と異なる条件で実施してもよい。但し、このアルカリ性水溶液のアルカリ度や浸漬温度、時間及び量は、工程(1)の説明を参照することができる。浸漬処理後の分離は、遠心分離、デカンテーション等の操作によって上清のアルカリ水溶液を除去することが行う。工程(2)では、このアルカリ性水溶液への浸漬および分離を1回または2回以上行う。2回以上行う場合、繰り返しの回数は、米粉のアルカリ処理の度合い等を考慮して、適宜決定することができ、例えば、10回までの範囲で実施できる。但し、上限は10回に限定される意図ではない。必要により10回を超える回数のアルカリ性水溶液への浸漬および分離を実施することもできる。繰返し操作におけるアルカリ性水溶液への浸漬条件や分離条件は、各回同一でも異なってもよい。
【0030】
工程(3)
工程(3)では、工程(2)で分離した米粉を、脱水及び/又は乾燥して米粉を得る。脱水及び/又は乾燥前には、任意で、水洗及び/又は中和をすることもできる。中和処理に使用する酸は食品用に利用できる酸であれば特に限定はなく、例えば、塩酸、硫酸、亜硫酸などの無機酸や酢酸、乳酸、クエン酸などの有機酸やこれらの塩の単独もしくは2種以上組み合わせて用いることができる。中和処理後の水洗は、通常大過剰の水を加えた後、中和処理した米粉混合液を良く混合し、遠心分離、デカンテーション等の操作によって、上清の分離と脱水を行う。中和処理後の水洗は、一回でも目的を達成できるが、好ましくは中和処理によって生成する塩類、可溶性タンパク質、非澱粉性糖類等を極力除去するため3回程度行うことが好ましい。
【0031】
上清の分離と脱水後の乾燥は、通常行われる乾燥法(通風乾燥、棚式乾燥、チューブドライヤー乾燥、ドラムドライヤー乾燥等)のいずれの方法も採用可能であるが、米粉の澱粉の糊化が起こらない50℃以下の温度で乾燥することが好ましい。
【0032】
上記のアルカリ溶液処理により、本発明が目的とする米粉の調製は可能であるが、より高品質の本発明の米粉を調製するためには、アルカリ、中和処理の前後でタンパク質分解酵素または細胞壁溶解酵素を含有した溶液中での処理が有効ある。この操作により、得られる米粉のタンパク質、非澱粉性糖類の含量を効率的に低下でき、得られる米粉の品質をより向上させることができる。これらの酵素処理は、原料米粒又はその粉砕した米粉に対して、アルカリ、中和処理の前後でタンパク質分解酵素又は細胞壁溶解酵素を含有した水溶液による浸漬処理を単独又は複数組み合わせて施すことが望ましい。本処理により米粒又は米粉中のタンパク質、非澱粉性糖類が首尾良く分解され、アルカリ浸漬、洗浄工程でより効率的にタンパク質、非澱粉性糖類が除去される。
【0033】
上記タンパク質分解酵素としては、例えば、各種酸性、中性又はアルカリ性プロテアーゼなどのタンパク質を分解する作用のある酵素すべてが包含されるが、タンパク質の除去効率向上にはエンド型プロテアーゼがより効果的である。これらの酵素は、混合して使用しても良く、また、目的の活性を持っていれば純粋酵素である必要は無く、粗酵素でも使用できる。タンパク質分解酵素水溶液による浸漬条件は、米粒又は米粉の平均粒径や粒度分布、アルカリ、中和処理の前後のどちらで酵素処理を行うかによってその条件は最適化する必要があるが、基本的には約0.005〜0.5%の酵素液に20〜50℃の範囲好ましくは25〜40℃の範囲で0.5〜24時間の範囲で、更に好ましくは3〜10時間の範囲で浸漬すれば良く、個々の条件を勘案し適宜最適条件を設定する。
【0034】
上記細胞壁溶解酵としては、例えば、ペクチナーゼ、ヘミセルラーゼ、セルラーゼ、マセレーティング酵素などの植物細胞壁を溶解する作用のある酵素を用いる。これらの酵素は、混合して使用しても良く、また、目的の活性を持っていれば純粋酵素である必要は無く、粗酵素でも使用できる。細胞壁溶解酵素水溶液による浸漬条件は、米粒又は米粉の平均粒径や粒度分布、アルカリ、中和処理の前後のどちらで酵素処理を行うかによってその条件は最適化する必要があるが、基本的には約0.005〜0.5%の酵素液に20〜50℃の範囲好ましくは25〜40℃の範囲で0.5〜24時間の範囲で、更に好ましくは3〜10時間の範囲で浸漬すれば良く、個々の条件を勘案し適宜最適条件を設定する。
【0035】
タンパク質分解酵素または細胞壁溶解酵素を含有した溶液中での処理、水洗及び/又は中和の後、150メッシュのベントシーブなどにより篩別を行い、粗粒や細胞壁成分の除去を行い、その後乾燥という操作で米粉を調製することが好ましい。
【0036】
上記のアルカリ溶液処理により、本発明が目的とする米粉の調製は可能であるが、より高品質のアルカリ処理米粉を調製するためには、乾燥処理後の米粉をさらに乾式または湿式粉砕することが有効である。この処理により、得られる米粉の平均粒径を本発明の範囲内で効率的に低下でき、得られる米粉の洋菓子製造適性をより向上させることができる。
【0037】
上記の方法によって、平均粒径が3.0μm以上20.0μm以下、損傷澱粉量が0.5質量%5.0質量%以下以上、タンパク質含量が0.01質量%以上1.0質量%以下で、且つ、非澱粉性糖類が1.0質量%以上2.0質量%以下である米粉が得られる。条件を上記で説明した範囲で調整することで、上記本発明のブレンド粉に用いることが好ましい、平均粒径が6.0μm以上18.0μm以下、損傷澱粉量が0.8質量%以上3.0質量%以下、タンパク質含量が0.1質量%以上0.8質量%以下で、且つ、非澱粉性糖類が1.2質量%以上1.9質量%以下である米粉を製造することができる。さらに、条件を上記で説明した範囲で調整することで、上記本発明のブレンド粉に用いることがさらに好ましい、平均粒径が10.0μm以上17.0μm以下、損傷澱粉量が0.9質量%以上2.0質量%以下、タンパク質含量が0.2質量%以上0.7質量%以下で、且つ、非澱粉性糖類が1.3質量%以上1.8質量%以下である米粉を製造することができる。
【0038】
平均粒径は、主に、工程(1)における粉砕と工程(3)において任意に実施される篩別の条件によって制御できる。損傷澱粉量は、主に、工程(1)及び(2)における浸漬時間、及び処理後の米粉とアルカリ性水溶液とを分離する回数によって制御できる。タンパク質含量は、主に、工程(1)及び(2)における浸漬時間、及び処理後の米粉とアルカリ性水溶液とを分離する回数によって制御できる。非澱粉性糖類量は、主に、工程(1)及び(2)における処理後の米粉とアルカリ性水溶液とを分離する回数によって制御できる。
【0039】
上記アルカリ処理米粉は、所定量の凍結乾燥グルテンとのブレンド粉とすることで、得られたブレンド粉は洋菓子製造適性が従来の米粉に比べ格段に優れたものになることが特徴である。上記アルカリ処理米粉を用いることで、従来不可能であった米粉と粉末グルテンのブレンド粉より、多量に米粉を利用した高品質で、且つ、米粉の良好な特徴を発揮した各種洋菓子類の製造が可能になる。
【0040】
本発明のブレンド粉の特徴は、主に従来の米粉に比べ格段に洋菓子製造適性に優れたアルカリ処理米粉と適当量の凍結乾燥グルテンを使用していることにある。この併用効果により、従来に比べ格段に高品質な洋菓子類を製造することが可能になる。また、本発明の米粉ブレンド粉は、高品質の凍結乾燥グルテンを使用しているため通常のグルテン粉末製品の特有のグルテン臭が洋菓子類製品に無く、従来の米粉に比べボリュームにおいても風味面でも格段に良好な洋菓子類製品の製造が可能である。
【0041】
本発明は、上記本発明のブレンド粉を用いて洋菓子類を製造する、洋菓子類の製造方法を包含する。さらに本発明は、本発明のブレンド粉を用いて製造された洋菓子類を包含する。
【0042】
本発明の洋菓子類は、本発明の米粉ブレンド粉に、その他の穀粉、卵、油脂(含バター)、糖類、粉乳(含牛乳)、膨張剤、食塩、調味料、香料、乳化剤、色素、酸化剤、還元剤、及び各種酵素類等の原料の全部または一部に、水、その他の物を加えて混合し製造されたスポンジ生地やバター生地を焼く、蒸す、揚げる等の加熱調理をすることによって製造できる。本発明の洋菓子類としては、例えば、スポンジケーキ、パウンドケーキ、シフォンケーキ、ホットケーキ、ロールケーキ、マドレーヌ、バウムクーヘン、カステラ、ドーナツ、シュークリーム、パイ、ビスケット、クッキー、クラッカー、蒸しケーキ等を挙げることができる。
【実施例】
【0043】
次に表1〜2に示す試験例(比較例を含む)に基づいて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0044】
[実施例1]
表1に示す配合で種々の本発明の米粉ブレンドについて、以下に示すオールインワンミックス法で典型的なスポンジ生地であるスポンジケーキを製造し、スポンジケーキ適性評価を行なった。本実施例に使用した米粉の調製法を以下に示す。オールインワンミックス法とは、すべての原料を一度に添加し生地をミキシングし主に全卵の気泡力で生地にガスを包含させて製造するスポンジケーキの製造法であり、試験結果に再現性があり、工場でのスポンジケーキの多量生産に適した方法であり、米粉ブレンド粉のスポンジ適性を的確に評価できる方法であるため採用した。
【0045】
なお、本発明のすべての実施例、比較例において、配合は水分含量13.5質量%ベースの米粉ブレンド粉100に対する質量部で示した。すべての実施例の官能評価は、(独)農研機構・北海道農業研究センターの職員5人のパネラーによって、第1、2表に示された項目について4段階評価(◎:非常に良好、○:良好、△:やや劣る、×:劣る)で行った。
【0046】
以下に本発明の米粉ブレンド粉に使用した米粉の調製方法を示す。
アルカリ処理米粉A:
精米した粳米の米粒200gに4℃に冷却した0.5質量%(0.125規定)のNaOH溶液1000mlを添加し、20℃前後で、12時間放置する。次に、水挽き方式の粉砕機で米粒を粉砕する。得られた米粉懸濁液を遠心分離し、上清のアルカリ溶液を除去する。遠心分離後の米粉沈殿物に0.5質量%(0.125規定)のNaOH溶液1000mlを添加し良く混合し20℃前後で、12時間放置し、遠心分離後上清のアルカリ溶液を除去する。次に、蒸留水1000mlを米粉沈殿物に添加し塩酸でpH7前後になるように中和処理する。この米粉懸濁液を同様に遠心分離し上清を除去する。この水洗操作を更に2回繰り返す(2回目以降は中和処理無し)。最後の水洗を終了した米粉沈殿は150メッシュの篩で篩別し、粗粒や細胞壁成分の除去を行なう。最後に得られた米粉沈殿物を40℃で通風乾燥後、乾燥粉末を乳鉢でマイルドに粉砕しアルカリ処理米粉Aを得た。アルカリ処理米粉Aの各種成分含量は以下のとおりである。平均粒径15.3μm、損傷澱粉量1.1%、タンパク質含量0.60%、非澱粉性糖類1.5%。
【0047】
以下にスポンジケーキ製造工程、条件(オールインワンミックス法)を示す。
ミキシング :ミキサーボールに粉以外の材料を入るホイッパーを使い低速で30秒ミキシングする。次に、ミキサーボールに粉を一度に入れ生地比重が0.45±0.02になるまで中速でミキシングを行う。
生地の型入れ:生地を18cmの丸ケーキ型に350g入れ、空気抜きのため型を10cm位の高さから何度か落とし、台のうえで回転させる。
焼成 :ナショナルNE-F3オーブンにて天板を2枚ひいた160℃のオーブン45分焼成する。
冷却・保管 :焼き上がったら、15cmの高さから垂直に台の上に落とし、型から外して上向きに網にのせて約40分冷まし、ポリエチレンの袋に2重に入れてシーラーでとめ、湿度70%、温度20℃で保管し、翌日官能評価を行う。
【0048】
表1の結果から、本発明の米粉と凍結乾燥グルテンとのブレンド粉のスポンジケーキ製造適性(試験例1〜5)ブレンド粉のスポンジケーキ製造適性は、従来の米粉ブレンド粉(比較例1〜4)に比べ全般に良好な結果を示し、特に、食感(もちもち感)、風味が非常に良好な評価となり、明らかに外観、内相・色相が優れた。市販薄力粉100%の比較例6と比較しても米粉ブレンド粉のスポンジケーキ適性は、同等程度であり、本発明の効果が非常に大きいことが判る。特に、6、7、8、10%の凍結乾燥グルテンを含有する米粉ブレンド粉(試験例2、3、4、5)のスポンジケーキ適性は、総合的に最も優れていた。
【0049】
また、アルカリ処理米粉Aと7%の凍結乾燥グルテンまたはスプレードライグルテンを混合した場合の比較(試験例3、参考例1)では凍結乾燥グルテンを使用したスポンジケーキが優れていた。さらに市販米粉または市販上新粉に7%の凍結乾燥グルテンまたはスプレードライグルテンを混合した場合の比較(比較例1と3および比較例2と4)でも凍結乾燥グルテンを使用したスポンジケーキが優れていた。
以上の結果から、本発明の効果は明らかであり、本発明の米粉ブレンド粉を用いることによって、従来の粉末グルテン含有の米粉スポンジケーキに比べ飛躍的に高品質の米粉のスポンジケーキが得られ、その品質は市販薄力粉のスポンジケーキ並であることがわかる。
【0050】
【表1】

【0051】
1)アルカリ処理米粉A:平均粒径15.3μm、損傷澱粉量1.1%、タンパク質含量0.60%、非澱粉性糖類1.5%。
2)市販米粉:酵素処理・気流製粉米粉(現状で最も製パン性の優れた市販米粉)、平均粒径51.7μm、損傷澱粉量3.8%、タンパク質含量7.4%、非澱粉性糖類2.5%。
3)市販上新粉:平均粒径81.8μm、損傷澱粉量11.8%、タンパク質含量6.9%、非澱粉性糖類2.5%。
4)市販凍結乾燥グルテン:国産小麦蛋白、北国フード(株)製
5)市販スプレードライグルテン、シグマ株式会社製
6)乳化油脂:メロディアップ、カネカ(株)製
【0052】
7)スポンジケーキ評価、ケーキ生地調製時の生地状態、ケーキの外観、内相・色相、食感、風味、ボリュームの評価基準は以下の通りである。
◎:非常に良好、 ○:良好、 △:やや劣る、 ×:劣る
なお、各評価項目の評価の主な基準は以下の通りである。
ケーキ生地調製時生地状態:生地のホイップ時適当な粘度を示し、均一にガスを包含し適切な生地比重に短時間に到達する生地を調製時生地状態が良いと評価する。
外観:スポンジケーキが均一に良く膨らんでいるか、表面色が均一で良好であるか、外観、形状がきれいかどうかを主な評価基準として評価する。
内相・色相:スポンジケーキをカットした時の内相のキメ、マクが均一で色相が均一で良好かどうかで評価する。
食感:スポンジケーキを食した時の米粉スポンジケーキの独特のもちもち感があるかどうかで評価する。
風味:スポンジケーキとして良好な食味、香りがあるかどうかで評価する。
ボリューム:一定条件で製造したスポンジケーキのボリュームで評価する。
【0053】
[実施例2]
表2に示すパウンドケーキ配合で種々の本発明の米粉ブレンド粉を用いて、以下に示す製造工程、条件で典型的なバター生地であるパウンドケーキを製造し、米粉ブレンド粉のパウンドケーキ適性を官能評価により評価した。
本法は、油脂(バター)と膨張剤(ベーキングパウダー)により生地にガスを包含させて製造するパウンドケーキの製造法であり、試験結果に再現性があり、かつ工場でのパウンドケーキの多量生産に適した方法であり、米粉ブレンド粉のパウンドケーキ適性を的確に評価できる方法であるため採用した。
【0054】
以下にパウンドケーキの製造工程と条件を示す。
ミキシング :バターに砂糖を入れて白っぽくなるまでよくホイップする。これに溶き卵を3回に分けて加えよく混ぜる。ブレンド粉又は小麦粉とベーキングパウダーをふるいながら加え,ゴムべらで十分混合する。
型入れ :このパウンドケーキ生地全量を、内側にバターを塗った四角型に入れて、3センチ程度の高さから落としガスをぬく。
焼成 :型に入ったパウンドケーキ生地をオーブンで170℃に熱したオーブンで35分焼成する。
冷却 :パウンドケーキを型にいれたまま、常温で1値時間以上冷却する。
【0055】
表2の結果から、本発明の米粉と凍結乾燥グルテンとのブレンド粉のスポンジケーキ製造適性(試験例6〜10)ブレンド粉のパウンドケーキは、従来の米粉ブレンド粉(比較例6〜9)に比べ全般に良好な結果を示し、特に、ボリューム・外観が良好なパウンドケーキが得られた。市販薄力粉100%の比較例11のパウンドケーキと比較しても本発明の米粉と凍結乾燥グルテンブレンド粉のパウンドケーキは、同等程度かそれ以上であり、本発明の効果が非常に大きいことが判る。特に、アルカリ処理米粉Aに7、9、10%の凍結乾燥グルテンを含有する米粉ブレンド粉(試験例7、9、10)のパウンドケーキ適性は最も良好な結果を示した。
【0056】
また、アルカリ処理米粉Aと9%の凍結乾燥グルテンまたはスプレードライグルテンを混合した場合の比較(試験例9、参考例2)では凍結乾燥グルテンを使用したパウンドケーキがボリュームや内相の状態が優れていた。内相の状態やボリュームが劣る場合は商品価値を大きく減じるので、この点は重要なファクターである。さらに市販米粉または上新粉に9%の凍結乾燥グルテンまたはスプレードライグルテンを混合した場合の比較(比較例6と8および比較例7と9)でも凍結乾燥グルテンを使用したパウンドケーキの風味が優れていた。
【0057】
以上の結果から、本発明の効果は明らかであり、本発明の米粉、グルテンブレンド粉を用いることによって、主に油脂の気泡力を利用する典型的なバター生地の洋菓子であるパウンドケーキにおいても、従来の米粉とスプレードライグルテンブレンド粉に比べ飛躍的に高品質の製品が得られ、その品質は市販薄力粉の並のパウンドケーキであることがわかる。
【0058】
【表2】

【0059】
1)アルカリ処理米粉A:平均粒径15.3μm、損傷澱粉量1.1%、タンパク質含量0.60%、非澱粉性糖類1.5%。
2)市販米粉:酵素処理気流製粉米粉(現状で最も製パン性の優れた市販米粉)、平均粒径51.7μm、損傷澱粉量3.8%、タンパク質含量7.4%、非澱粉性糖類2.5%。
3)市販上新粉:平均粒径81.8μm、損傷澱粉量11.8%、タンパク質含量6.9%、非澱粉性糖類2.5%。
4)市販凍結乾燥グルテン:国産小麦蛋白、北国フード(株)製
5)市販スプレードライグルテン、シグマ株式会社製
【0060】
6)パウンドケーキ評価、ケーキ生地調製時の生地状態、ケーキの外観、内相・色相、食感、風味、ボリュームの評価基準は以下の通りである。
◎:非常に良好、 ○:良好、 △:やや劣る、 ×:劣る
なお、各評価項目の評価の主な基準は以下の通りである。
ケーキ生地調製時生地状態:生地のミキシング時適当な物性を示し、均一にガスを包含し適切な生地状態に短時間に到達する生地を調製時生地状態が良いと評価する。
外観:パウンドケーキが均一に良く膨らんでいるか、表面色が均一で良好であるか、外観、形状がきれいかどうかを主な評価基準として評価する。
内相・色相:パウンドケーキをカットした時の内相のキメ、マクが均一で色相が均一で良好かどうかで評価する。
食感:パウンドケーキを食した時の米粉スポンジケーキの独特のもちもち感があるかどうかで評価する。
風味:パウンドケーキとして良好な食味、香りがあるかどうかで評価する。
ボリューム:一定条件で製造したパウンドケーキのボリュームで評価する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凍結乾燥グルテンを4質量部〜12質量部およびアルカリ処理米粉を96質量部〜88質量部含有する洋菓子類製造用ブレンド粉であって、但し、凍結乾燥グルテンおよびアルカリ処理米粉の合計を100質量部とし、前記アルカリ処理米粉は、平均粒径が3.0μm以上20.0μm以下、損傷澱粉量が0.5質量%以上5.0質量%以下、タンパク質含量が0.01質量%以上1.0質量%以下で、且つ、非澱粉性糖類が1.0質量%以上2.0質量%以下の米粉である、前記ブレンド粉。
【請求項2】
凍結乾燥グルテンを6質量部〜10質量部およびアルカリ処理米粉を94質量部〜90質量部含有する、請求項1に記載のブレンド粉。
【請求項3】
前記洋菓子類が、スポンジケーキ類、パウンドケーキ類、シフォンケーキ類、蒸しケーキ類、カステラ類、ドーナツ類、およびビスケット類から成る群から選ばれる少なくとも1種の洋菓子類である請求項1または2に記載のブレンド粉。
【請求項4】
前記米粉が以下の工程(1)〜(3)を含む方法で製造される米粉である、請求項1〜3のいずれかに記載のブレンド粉。
(1)生米粒をアルカリ性水溶液とともに粉砕処理するか、または生米粒を粉砕した米粉をアルカリ性水溶液に浸漬処理し、処理後の米粉とアルカリ性水溶液とを分離する工程、
(2)分離した米粉をアルカリ性水溶液に浸漬処理し、処理後の米粉とアルカリ性水溶液とを分離する工程、但し、この工程は、1回または2回以上行う、
(3)得られた米粉を、任意に水洗及び/又は中和した後に、脱水及び/又は乾燥して米粉を得る工程
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のブレンド粉を用いて洋菓子類を製造する、洋菓子類の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の米粉ブレンド粉を用いて製造された洋菓子類。
【請求項7】
前記洋菓子類がスポンジケーキ類、パウンドケーキ類、シフォンケーキ類、蒸しケーキ類、カステラ類、ドーナツ類、およびビスケット類から成る群から選ばれる少なくとも1種の洋菓子類である請求項6に記載の洋菓子類。

【公開番号】特開2012−183007(P2012−183007A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47210(P2011−47210)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度、経済産業省、「地域イノベーション創出研究開発事業」委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【出願人】(503308508)江別製粉株式会社 (7)
【出願人】(302024571)株式会社 山本忠信商店 (8)
【Fターム(参考)】