説明

洗い出し調化粧層およびその製造方法

【課題】施工に必要な原材料および施工により発生する廃棄物の低減を図ることができながら、工数を低減して、簡易な工法により洗い出し調化粧層を製造することのできる、洗い出し調化粧層の製造方法、および、その方法により製造される洗い出し調化粧層を提供すること。
【解決手段】基材2の上に、ベース骨材5、砂6および樹脂結合剤7からベース層4を形成した後、その上に、化粧骨材9および樹脂結合剤10から化粧骨材層8を形成し、その後、ベース層4の上において、化粧骨材9間の隙間に充填するように、砂12および樹脂結合剤13から骨材充填層11を形成することにより、洗い出し調化粧層1を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗い出し調化粧層およびその製造方法、詳しくは、主として歩道の舗装や壁面に使用される洗い出し調化粧層、および、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
商用施設のアプローチ・エントランス、公園・庭園の遊歩道、公共施設・マンション・住宅などのエクステリアなどの舗装において、化粧骨材を敷き詰めて舗装する、洗い出し仕上げが知られている。
【0003】
洗い出し仕上げは、従来から図2に示す工法により施工されている。すなわち、まず、図2(a)に示すように、コンクリート基礎21の上にモルタル層22を設け、図2(b)に示すように、そのモルタル層22の上に、化粧骨材23を含むプレグラウトモルタル24を塗布する。その後、プレグラウトモルタル24の上に硬化遅延剤を散布し、次いで、図2(c)に示すように、プレグラウトモルタル24の上に、養生シート25を被覆する。そして、数時間放置して、プレグラウトモルタル24の下層部分を硬化させる。なお、プレグラウトモルタル24の上層部分は、硬化遅延剤の散布により硬化しないまま維持される。次いで、養生シート25を除去して、図2(d)に示すように、プレグラウトモルタル24の上層部分を水で洗い出す。
【0004】
これによって、図2(d)に示すように、化粧骨材23の下部がプレグラウトモルタル24に埋設され、化粧骨材23の上部がプレグラウトモルタル24から露出する、洗い出しの化粧層が形成される。
【0005】
しかるに、上記の工法では、硬化遅延剤を均一に散布しなければ化粧骨材23の露出斑が発生するため、施工には熟練を必要とし、また、プレグラウトモルタル24は除去する分、余分に必要となる一方、除去したプレグラウトモルタル24の処分が煩雑となり、さらには、洗い出しにより、化粧骨材23のプレグラウトモルタル24に対する接着強度が低下するなど、種々の不具合がある。
【0006】
そのため、例えば、図3(a)に示すように、基体31の上に粒子の長径が2〜10mmである美麗骨材32を合成樹脂結合剤で結合させ、次いで、図3(b)に示すように、その美麗骨材32の間をセメントペースト33で埋め、そして、そのセメントペースト33が初期凝結したときに、図3(c)に示すように、その美麗骨材32の表面が露出するように、セメントペースト33を除去する工法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特公平7−11178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載される工法でも、やはり、セメントペーストを除去する工程があり、セメントペーストは除去する分、余分に必要となる一方、除去したセメントペーストの処分が煩雑となり、従来の工法と同様の不具合がある。
【0008】
さらに、従来の工法および特許文献1に記載される工法では、骨材の粒径があまりに小さいと(例えば、粒径0.5〜3mm)、接着面積が小さくなるため、プレグラウトモルタルまたはセメントペーストを除去するときに一緒に除去されてしまう一方、骨材の粒径があまりに大きいと(例えば、粒径15mm以上)、鏝により敷き均したときに骨材が密集せず、仕上りの外観が不良となる。そのため、施工できる骨材の粒径範囲が限定される。
【0009】
本発明の目的は、施工に必要な原材料および施工により発生する廃棄物の低減を図ることができながら、工数を低減して、簡易な工法により洗い出し調化粧層を製造することのできる、洗い出し調化粧層の製造方法、および、その方法により製造される洗い出し調化粧層を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の洗い出し調化粧層は、少なくとも砂および樹脂結合剤から形成されるベース層と、前記ベース層の上に、化粧骨材および樹脂結合剤から形成される化粧骨材層と、前記ベース層の上において、前記化粧骨材間の隙間に充填され、砂および樹脂結合剤から形成される骨材充填層とを備えていることを特徴としている。
【0011】
本発明の洗い出し調化粧層では、前記化粧骨材は、前記ベース層に部分的に埋設されていることが好適である。
【0012】
本発明の洗い出し調化粧層では、前記ベース層が、ベース骨材、砂および樹脂結合剤から形成されており、前記化粧骨材の粒径が、前記ベース骨材の粒径以上であることが好適である。
【0013】
本発明の洗い出し調化粧層では、前記ベース層、前記化粧骨材層および前記骨材充填層の樹脂結合剤が、ポリウレタン樹脂結合剤であることが好適であり、少なくとも、前記化粧骨材層および前記骨材充填層のポリウレタン樹脂結合剤が、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートおよび芳香脂肪族ポリイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1つのポリイソシアネートと、ポリオールとを含んでいることが好適である。
【0014】
また、本発明の洗い出し調化粧層の製造方法は、基材の上に、少なくとも砂および樹脂結合剤から形成されるベース層を形成する工程と、前記ベース層の上に、化粧骨材および樹脂結合剤から化粧骨材層を形成する工程と、前記ベース層の上において、前記化粧骨材間の隙間に充填するように、砂および樹脂結合剤から骨材充填層を形成する工程とを備えていることを特徴としている。
【0015】
本発明の洗い出し調化粧層の製造方法において、前記化粧骨材層を形成する工程では、前記化粧骨材を、前記ベース層に部分的に埋設することが好適である。
【0016】
本発明の洗い出し調化粧層の製造方法では、前記ベース層を、ベース骨材、砂および樹脂結合剤から形成し、前記化粧骨材の粒径が、前記ベース骨材の粒径以上であることが好適である。
【0017】
本発明の洗い出し調化粧層の製造方法では、前記化粧骨材層を形成する工程と前記骨材充填層を形成する工程との間に、前記化粧骨材層および前記骨材充填層の前記樹脂結合剤を養生により硬化させる工程を備えていることが好適である。
【0018】
本発明の洗い出し調化粧層の製造方法では、前記ベース層、前記化粧骨材層および前記骨材充填層の樹脂結合剤が、ポリウレタン樹脂結合剤であることが好適であり、少なくとも、前記化粧骨材層および前記骨材充填層のポリウレタン樹脂結合剤が、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートおよび芳香脂肪族ポリイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1つのポリイソシアネートと、ポリオールとを含んでいることが好適である。
【発明の効果】
【0019】
本発明の洗い出し調化粧層の製造方法では、ベース層の上に化粧骨材層を形成した後、ベース層の上において、化粧骨材間の隙間に充填するように骨材充填層を形成する。これによって、従来の工法および特許文献1に記載される工法のような除去工程を不要とすることができる。そのため、樹脂結合剤を余分に使用することなく、その使用量の低減を図ることができる。また、除去により発生する廃棄物を処分する手間もかからず、工数を低減して、簡易な工法により洗い出し調化粧層を製造することができる。さらに、この方法では、除去工程がない一方で、化粧骨材が骨材充填層により充填されるので、化粧骨材を幅広い粒径範囲から選択することができる。
【0020】
そのため、本発明の洗い出し調化粧層は、意匠性に優れ、かつ、低コストで提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の洗い出し調化粧層の製造方法の一実施形態を、図1を参照して、詳細に説明する。
【0022】
この方法では、まず、図1(a)に示すように、基材2の上に、土台となるベース層4を積層する。
【0023】
基材2は、洗い出し調化粧層1を施工すべき外壁や道路の基礎であって、例えば、コンクリート基礎、モルタル下地またはアスファルト下地などからなる。基材2の表面は、金鏝仕上げまたはそれと同等程度の仕上げであることが好適である。また、施工に際しては、基材2の表面を予め清掃する。
【0024】
基材2の上にベース層4を形成するには、好ましくは、まず、プライマー3を塗布する。プライマー3の塗布により、基材2とベース層4との間の接着強度を向上させることができる。
【0025】
プライマー3は、例えば、ウレタン樹脂プライマー、エポキシ樹脂プライマー、アクリル樹脂プライマーなど、公知のプライマーを使用することができる。好ましくは、ウレタン樹脂プライマーを使用する。
【0026】
プライマー3は、例えば、100〜300g/m、好ましくは、100〜200g/mの塗布量で、刷毛塗り、ローラー塗りなどの公知の方法により塗布する。その後、例えば、プライマー3中の溶剤が揮散するまでの時間、好ましくは、指触乾燥するまでの時間乾燥する。
【0027】
そして、プライマー3の乾燥後に、ベース層4を形成する。ベース層4は、砂6の粒径が、例えば、600〜1700μmであれば、砂6および樹脂結合剤7から形成することができるが、好ましくは、ベース層4は、ベース骨材5、砂6および樹脂結合剤7から形成する。ベース層4を、ベース骨材5、砂6および樹脂結合剤7から形成するには、ベース骨材5、砂6および樹脂結合剤7を含む第1混練物を、基材2の表面に敷き均してベース層4を形成する。
【0028】
ベース骨材5は、粗骨材および細骨材を含み、例えば、細石、軽石、火山噴出物などの天然骨材、例えば、砕石、高炉スラグなどの人工骨材、例えば、廃材粉砕物などの再生骨材などから、その目的および用途により適宜選択される。好ましくは、天然骨材、さらに好ましくは、細石が挙げられる。ベース骨材5の粒径範囲は、例えば、0.5〜5mmであり、好ましくは、1〜3mmである。ベース骨材5の粒径が、上記の範囲より大きいと、化粧骨材9のベース層4に対する円滑な沈み込みを損なう場合がある。
【0029】
砂6は、例えば、川砂、珪砂などが挙げられ、その粒径範囲は、例えば、75〜1700μmであり、好ましくは、425〜600μmである。砂6の粒径が、上記の範囲より小さいと、ベース層4のクッション性が低下し、また、樹脂結合剤7に対する分散性が低下する場合がある。
【0030】
樹脂結合剤6は、特に制限されないが、例えば、ウレタン樹脂結合剤、エポキシ樹脂結合剤、アクリル樹脂結合剤などを使用する。追従性、耐衝撃性などの観点から、好ましくは、微弾性タイプのウレタン樹脂結合剤を使用する。とりわけ、いわゆる無黄変タイプのポリイソシアネートと、ポリオールとを含むウレタン樹脂結合剤を使用すれば、変色が少なく、良好な耐候性を維持することができる。
【0031】
無黄変タイプのポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネート、例えば、イソホロンジイソシアネートなどの脂環族ポリイソシアネート、例えば、キシリレンジイソシアネートなどの芳香脂肪族ポリイソシアネートなどが挙げられる。また、ポリオールとしては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールなどが挙げられる。
【0032】
ウレタン樹脂結合剤は、その目的および用途により、上記例示のものから、ポリイソシアネートおよびポリオールを適宜選択して、1液タイプまたは2液タイプとして調製され、好ましくは、1液タイプとして調製される。
【0033】
より具体的には、例えば、イソホロンジイソシアネートおよびポリプロピレングリコールを反応させたイソシアネート末端ウレタンプレポリマーと、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリマーとを混合した、1液タイプとして調製することができる。
【0034】
そして、第1混練物は、ベース骨材5、砂6および樹脂結合剤7を配合し、例えば、攪拌機や攪拌鍬などを使用して、塊がなくなるまで均一に混練することにより、調製することができる。
【0035】
各成分の配合割合は、その目的および用途によるが、例えば、ベース骨材5、砂6および樹脂結合剤6の総量100重量部に対して、樹脂結合剤6が、5〜11重量部、好ましくは、7〜9重量部である。また、ベース骨材5と砂6との配合割合は、例えば、ベース骨材5および砂6の総量100重量部に対して、ベース骨材5が15〜35重量部、好ましくは、20〜30重量部であり、砂6がその残部である。ベース層4において、樹脂結合剤6を上記の割合で配合し、かつ、ベース骨材5および砂6を上記の割合で併用することにより、ベース層4の化粧骨材層8に対するクッション性を確保しつつ、化粧骨材9のベース層4に対する適度な沈み込みを確保することができる。
【0036】
なお、砂6の粒径が600〜1700μmであれば、上記したように、砂6および樹脂結合剤7から第1混練物を、上記の方法に従って調製してもよい。なお、この場合においても、各成分の配合割合は、その目的および用途によるが、例えば、砂6および樹脂結合剤6の総量100重量部に対して、樹脂結合剤6が、5〜11重量部、好ましくは、7〜9重量部である。
【0037】
そして、第1混練物を、基材2の表面に均一に敷き均して、ベース層4を形成する。敷き均しは、例えば、基材2の表面に、第1混練物を適宜の分量で配した後、金鏝で叩きながら押さえ込み、均一に均す。金鏝により叩きながら押さえ込めば、化粧骨材層8を形成するときに、化粧骨材9の過度の沈み込みを確保することができ、化粧骨材9の均一な分散を確保することができる。
【0038】
ベース層4の厚みは、例えば、2〜10mm、好ましくは、4〜8mmに設定する。厚み範囲が、上記の範囲であれば、ベース層4の化粧骨材層8に対するクッション性を確保しつつ、化粧骨材9のベース層4に対する適度な沈み込みを確保することができる。
【0039】
次いで、この方法では、図1(b)に示すように、ベース層4の上に、化粧骨材層8を形成する。化粧骨材層8は、化粧骨材9および樹脂結合剤10を含む第2混練物を、ベース層4の上に敷き均して、形成する。
【0040】
化粧骨材9は、ベース骨材5と同様の骨材を使用することができる。さらに、化粧骨材9として、セラミック、ガラス球、廃ガラスなどが含まれる。化粧骨材9は、上記の各種骨材から、その目的および用途により適宜選択される。好ましくは、天然骨材、さらに好ましくは、細石が挙げられる。化粧骨材9の粒径範囲は、その目的および用途から広範囲に選択することができ、例えば、0.5〜30mmであり、好ましくは、1mmを超過し30mm以下である。また、化粧骨材9の粒径は、ベース骨材5の粒径以上であること、さらには、ベース骨材5の粒径よりも大きいことが、意匠性の観点から好適である。
【0041】
樹脂結合剤10は、ベース層4にて例示の樹脂結合剤6と、同様のものを使用することができる。好ましくは、微弾性タイプのウレタン樹脂結合剤を使用する。とりわけ、上記と同様に、いわゆる無黄変タイプのポリイソシアネートとポリオールとを含むウレタン樹脂結合剤が好適である。
【0042】
そして、第2混練物は、化粧骨材9および樹脂結合剤10を配合し、例えば、攪拌機や攪拌鍬などを使用して、樹脂結合剤10が化粧骨材9の表面に均一に付着するまで攪拌することにより、調製することができる。
【0043】
化粧骨材9および樹脂結合剤10の配合割合は、その目的および用途によるが、例えば、化粧骨材9および樹脂結合剤10の総量100重量部に対して、樹脂結合剤10が、0.5〜3重量部、好ましくは、0.5〜2重量部である。樹脂結合剤10がこれより多いと、樹脂結合剤10が厚く付着して、化粧骨材9の表面が滑りやすくなって、新たに滑り止め工法などが必要となる場合がある。また、樹脂結合剤10がこれより少ないと、化粧骨材9の表面に付着する樹脂結合剤10が不足して、化粧骨材9と、ベース層4および骨材充填層11との間の接着強度が低下する場合がある。化粧骨材9および樹脂結合剤10を上記の配合で配合することにより、化粧骨材9を、ベース層4の上においてバランスよく配置することができ、かつ、強固に固着させることができる。
【0044】
その後、第2混練物を、ベース層4の表面に敷き均し、その後、転圧することにより化粧骨材層8を形成する。敷き均しは、例えば、ベース層4の表面に、第2混練物(樹脂結合剤10が表面に付着した化粧骨材9)を均一に配り、金鏝で押さえ込み、均一に均す。例えば、化粧骨材9の粒径が0.5〜9mmの場合には2〜3層に配り、化粧骨材9の粒径が9mmを超える場合には1層に配る。これによって、ベース層4の表面に化粧骨材9を均一に点在させる。
【0045】
転圧は、均した第2混練物(樹脂結合剤10が表面に付着した化粧骨材9)の表面に布類を敷き、ゴム鏝で叩きながら転圧するか、あるいは、布類の上にスポンジを載せ、その上に平板を敷いて足踏みする。これによって、化粧骨材9の下側部分がベース層4に埋設され、化粧骨材9がベース層4に固着される。
【0046】
このように、化粧骨材9の下側部分をベース層4に埋設すれば、次に、第3混練物を充填するときに、化粧骨材9が動くことを防止することができる。
【0047】
化粧骨材層8の厚み、すなわち、ベース層4の表面から化粧骨材9の上端部までの高さは、例えば、1〜20mm、好ましくは、2〜15mmに設定する。厚み範囲が、上記の範囲であれば、化粧骨材9を骨材充填層11で固着しつつ、その骨材充填層11から化粧骨材9を露出させて、意匠性を向上させることができる。
【0048】
その後、養生して、ベース層4の樹脂結合剤6および化粧骨材層8の樹脂結合剤10を硬化させる。このとき、ベース層4および化粧骨材層8は、いずれも樹脂結合剤6、10の硬化により固化するので、化粧骨材9がベース層4に適度に沈み込みながら、これら樹脂結合剤6、10が互いに強固に接着される。
【0049】
養生時間は、季節により異なるが、例えば、冬季(例えば、温度10℃、相対湿度50%)の場合には、約40時間以上であり、春秋季(例えば、温度20℃、相対湿度60%)の場合には、約27時間以上であり、夏季(例えば、温度25℃、相対湿度70%)の場合には、約15時間以上である。なお、反応触媒を添加して、養生時間を短縮することもできる。
【0050】
養生中は、施工現場への立ち入りを禁止し、必要により雨水から保護する。
【0051】
このように養生して、ベース層4の樹脂結合剤6および化粧骨材層8の樹脂結合剤10を硬化させれば、第3混練物を充填するときに、化粧骨材9が動くことを防止できるとともに、ベース層4から露出する化粧骨材9の表面に、第3混練物が付着することを低減することができる。
【0052】
次いで、この方法では、図1(c)に示すように、好ましくは、ベース層4および化粧骨材層8の完全硬化(表面タックのない状態)後、ベース層4の上において、化粧骨材9間の隙間に、骨材充填層11を形成する。骨材充填層11は、砂12および樹脂結合剤13を含む第3混練物を、ベース層4の上において化粧骨材9間の隙間に充填する。
【0053】
砂12は、例えば、川砂、珪砂などが挙げられ、その粒径範囲は、例えば、75〜1700μmであり、好ましくは、ベース層4の砂6よりも小さく、75〜300μmである。砂12の粒径が、上記の範囲より小さいと、第3混練物の混練時に混合斑が広がり、樹脂結合剤13の結合力が低下する場合がある。また、上記の範囲より大きいと、化粧骨材9間の隙間に第3混練物を円滑に充填できない場合がある。
【0054】
樹脂結合剤13は、ベース層4にて例示の樹脂結合剤6と、同様のものを使用することができる。好ましくは、微弾性タイプのウレタン樹脂結合剤を使用する。とりわけ、上記と同様に、いわゆる無黄変タイプのポリイソシアネートと、ポリオールとを含むウレタン樹脂結合剤が好適である。
【0055】
特に、この方法では、ベース層4の樹脂結合剤6と、化粧骨材層8の樹脂結合剤10と、骨材充填層11の樹脂結合剤13とが、すべて、ウレタン樹脂結合剤であることが好適である。すべてがウレタン樹脂結合剤であれば、各層を強固に固着させることができるとともに、耐久性の向上を図ることができる。
【0056】
また、この方法では、少なくとも、化粧骨材層8の樹脂結合剤10と、骨材充填層11の樹脂結合剤13とが、無黄変タイプのポリイソシアネートと、ポリオールとを含むウレタン樹脂結合剤であることが好適である。これによって、変色を抑制して意匠性の向上を図ることができる。
【0057】
そして、第3混練物は、砂12および樹脂結合剤13を配合し、例えば、攪拌機や攪拌鍬などを使用して、塊がなくなるまで均一に混練することにより、調製することができる。砂12および樹脂結合剤13の配合割合は、その目的および用途によるが、例えば、砂12および樹脂結合剤13の総量100重量部に対して、樹脂結合剤13が、7〜14重量部、好ましくは、9〜13重量部である。この割合で配合すれば、作業性および充填性の向上を図ることができる。
【0058】
また、第3混練物には、さらに、仕上がりの色合いを調合すべく、顔料を配合することが好適である。顔料としては、例えば、セメント(ホワイトセメントなど)が挙げられる。顔料の配合割合は、砂12、樹脂結合剤13および顔料の総量100重量部に対して、15〜35重量部、好ましくは、20〜30重量部である。また、顔料は、砂12および樹脂結合剤13とともに配合して、均一に混練する。
【0059】
その後、第3混練物を、ベース層4の表面に、化粧骨材9間の隙間に充填するように、敷き均し、その後、転圧することにより、骨材充填層11を形成する。敷き均しは、例えば、ベース層4の表面に第3混練物を配り、化粧骨材9の粒径が0.5〜5mmの場合には、ゴム鏝にて化粧骨材9間にしごきながら均一に充填する。また、化粧骨材9の粒径が5mmを超える場合には、箒で掃きながら化粧骨材9間に均一に充填する。厚くなる部分は、ブラシなどで掻き出して均一に均す。
【0060】
転圧は、均した第3混練物の表面に、ローラーを上下左右に転動させる。また、第3混練物が化粧骨材9を覆う場合には、ブラシなどにより、余分の第3混練物を除去する。
【0061】
骨材充填層11の厚みは、例えば、0.5〜10mm、好ましくは、1〜8mmに設定する。厚み範囲が、上記の範囲であれば、化粧骨材9を骨材充填層11で固着しつつ、その骨材充填層11から化粧骨材9を露出させて、意匠性を向上させることができる。
【0062】
その後、骨材充填層11の樹脂結合剤13を、季節により様々ではあるが、例えば、15〜40時間放置することより硬化させる。なお、反応触媒を添加して、硬化時間を短縮することもできる。これによって、洗い出し調化粧層1を形成する。洗い出し調化粧層1では、ベース層4、化粧骨材層8および骨材充填層11が、すべて樹脂結合剤6、10および13で結合され、化粧骨材9がしっかりと固着される。
【0063】
このように洗い出し調化粧層1を形成すれば、例えば、骨材充填層11を余分に積層した後、下層部分を残して、上層部分を除去することにより形成する場合に比べて、除去工法を不要とすることができる。そのため、化粧骨材9や樹脂結合剤10を余分に使用することなく、それらの使用量の低減を図ることができる。また、除去により発生する廃棄物を処分する手間もかからず、工数を低減して、簡易な工法により洗い出し調化粧層1を形成することができる。さらに、この方法では、除去工程がない一方で、化粧骨材9が骨材充填層11により充填されるので、化粧骨材9の粒径範囲を幅広く選択することができる。
【0064】
そのため、このようにして形成された洗い出し調化粧層1は、意匠性に優れ、かつ、低コストで提供することができる。
【実施例】
【0065】
次に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。
【0066】
実施例1
基材2としての道路を舗装するために、洗い出し調化粧層1を施工した。まず、コンクリート下地の基材2の表面を清掃した後、その表面に、プライマー3としてウレタン樹脂プライマー(ハイプレンXLP−4003A−1、三井化学ポリウレタン社製)を、150g/mの塗布量で中毛ウーローラーを用いて塗布し、0.5時間乾燥させた。
【0067】
ベース骨材5として細石(7厘:1〜3mm)1.5kg、砂6として珪砂(5号:425〜600μm)5.5kg、および、樹脂結合剤6としてウレタン樹脂結合剤(イソホロンジイソシアネートおよびポリプロピレングリコールを反応させたイソシアネート末端ウレタンプレポリマーと、ヘキサメチレンジイソシアネートのトリマーとの混合物(タケネートF−777N、三井化学ポリウレタン社製)、以下同様)560gを混練して、第1混練物を調製した。
【0068】
そして、第1混練物を、基材2の表面に、第1混練物を適宜の分量で配した後、金鏝で叩きながら押さえ込み、均一に均し、厚み約5mmのベース層4を形成した(図1(a)参照。)。
【0069】
次いで、化粧骨材9として細石(大磯4分:9〜12mm)14.0kg、および、樹脂結合剤10としてウレタン樹脂結合剤105gを混練して、第2混練物を調製した。
【0070】
その後、第2混練物を、左官材受け板に載せて、ベース層4の表面に均一に配り、金鏝で押さえ込み、均一に均した。これによって、ベース層4の表面に化粧骨材9を均一に点在させた。そして、均した第2混練物の表面にバスタオルを敷き、ゴム鏝で叩きながら転圧した。これによって、化粧骨材9の下側部分をベース層4に埋設させて、厚み8mmの化粧骨材層8を形成した(図1参照(b)。)。
【0071】
その後、24時間養生して、ベース層4および化粧骨材層8の表面タックがないことを確認した。
【0072】
次いで、砂12として珪砂(7号:105〜150μm)540g、顔料としてセメント(グレー)135g、および、樹脂結合剤13としてウレタン樹脂結合剤75gを混練して、第3混練物を調製した。
【0073】
その後、第3混練物を、ベース層4の表面に配り、ナイロン製土間箒で掃きながら化粧骨材9間に均一に充填した。厚くなる部分は、ナイロン製ブラシで掻き出した。その後、均した第3混練物の表面に、中毛ウーローラーを上下左右に転動させた。このとき、化粧骨材9を覆っている第3混練物を、ナイロン製ブラシで掃き、化粧骨材9の露出の仕方を揃えて、厚さ4mmの骨材充填層11を形成した。その後、樹脂結合剤13の硬化のために24時間放置して、洗い出し調化粧層1を形成した(図1参照(c)。)。
【0074】
実施例2
第2混練物を以下のように調製した以外は、実施例1と同様の方法により、洗い出し調化粧層1を形成した。
【0075】
化粧骨材9として細石(大磯6分:17〜30mm)19.0kg、および、樹脂結合剤10としてウレタン樹脂結合剤115gを混練して、第2混練物を調製した。なお、化粧骨材層8の厚みは、厚み15mmであった。
【0076】
実施例3
第2混練物および第3混練物を以下のように調製し、化粧骨材層8および骨材充填層11を以下のように形成した以外は、実施例1と同様の方法により、洗い出し調化粧層1を形成した。
【0077】
化粧骨材9として細石(大磯7厘:1〜3mm)5.5kg、および、樹脂結合剤10としてウレタン樹脂結合剤85gを混練して、第2混練物を調製した。
【0078】
その後、第2混練物を、左官材受け板に載せて、ベース層4の表面に2層に配り、金鏝で押さえ込み、均一に均した。そして、均した第2混練物の表面にバスタオルを敷き、ゴム鏝で叩きながら転圧した。これによって、化粧骨材9の下側部分をベース層4に埋設させて、厚み2mmの化粧骨材層8を形成した。
【0079】
砂12として珪砂(7号:105〜150μm)335g、顔料としてセメント(グレー)85g、および、樹脂結合剤13としてウレタン樹脂結合剤46gを混練して、第3混練物を調製した。
【0080】
その後、第3混練物を、ベース層4の表面に配り、ゴム鏝にて化粧骨材9間にしごきながら均一に充填した。厚くなる部分は、ナイロン製ブラシで掻き出した。その後、均した第3混練物の表面に、中毛ウーローラーを上下左右に転動させた。このとき、化粧骨材9を覆っている第3混練物を、ナイロン製ブラシで掃き、化粧骨材9の露出の仕方を揃えて、厚さ1mmの骨材充填層11を形成した。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】本発明の洗い出し調化粧層の製造方法の一実施形態を示す工程図である。
【図2】従来の洗い出し仕上げ工法を示す工程図である。
【図3】特公平7−11178号公報に記載されている工法を示す工程図である。
【符号の説明】
【0082】
1 洗い出し調化粧層
2 基材
4 ベース層
5 ベース骨材
6 砂
7 樹脂結合剤
8 化粧骨材層
9 化粧骨材
10 樹脂結合剤
11 骨材充填層
12 砂
13 樹脂結合剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも砂および樹脂結合剤から形成されるベース層と、
前記ベース層の上に、化粧骨材および樹脂結合剤から形成される化粧骨材層と、
前記ベース層の上において、前記化粧骨材間の隙間に充填され、砂および樹脂結合剤から形成される骨材充填層と
を備えていることを特徴とする、洗い出し調化粧層。
【請求項2】
前記化粧骨材は、前記ベース層に部分的に埋設されていることを特徴とする、請求項1に記載の洗い出し調化粧層。
【請求項3】
前記ベース層が、ベース骨材、砂および樹脂結合剤から形成されており、
前記化粧骨材の粒径が、前記ベース骨材の粒径以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の洗い出し調化粧層。
【請求項4】
前記ベース層、前記化粧骨材層および前記骨材充填層の樹脂結合剤が、ポリウレタン樹脂結合剤であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の洗い出し調化粧層。
【請求項5】
少なくとも、前記化粧骨材層および前記骨材充填層のポリウレタン樹脂結合剤が、
脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートおよび芳香脂肪族ポリイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1つのポリイソシアネートと、
ポリオールと
を含んでいることを特徴とする、請求項4に記載の洗い出し調化粧層。
【請求項6】
基材の上に、少なくとも砂および樹脂結合剤から形成されるベース層を形成する工程と、
前記ベース層の上に、化粧骨材および樹脂結合剤から化粧骨材層を形成する工程と、
前記ベース層の上において、前記化粧骨材間の隙間に充填するように、砂および樹脂結合剤から骨材充填層を形成する工程と
を備えていることを特徴とする、洗い出し調化粧層の製造方法。
【請求項7】
前記化粧骨材層を形成する工程では、前記化粧骨材を、前記ベース層に部分的に埋設することを特徴とする、請求項6に記載の洗い出し調化粧層の製造方法。
【請求項8】
前記ベース層を、ベース骨材、砂および樹脂結合剤から形成し、
前記化粧骨材の粒径が、前記ベース骨材の粒径以上であることを特徴とする、請求項6または7に記載の洗い出し調化粧層の製造方法。
【請求項9】
前記化粧骨材層を形成する工程と前記骨材充填層を形成する工程との間に、
前記化粧骨材層および前記骨材充填層の前記樹脂結合剤を養生により硬化させる工程を備えていることを特徴とする、請求項6〜8のいずれかに記載の洗い出し調化粧層の製造方法。
【請求項10】
前記ベース層、前記化粧骨材層および前記骨材充填層の樹脂結合剤が、ポリウレタン樹脂結合剤であることを特徴とする、請求項6〜9のいずれかに記載の洗い出し調化粧層の製造方法。
【請求項11】
少なくとも、前記化粧骨材層および前記骨材充填層のポリウレタン樹脂結合剤が、
脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートおよび芳香脂肪族ポリイソシアネートからなる群から選択される少なくとも1つのポリイソシアネートと、
ポリオールと
を含んでいることを特徴とする、請求項10のいずれかに記載の洗い出し調化粧層の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−297181(P2008−297181A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−147379(P2007−147379)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【出願人】(501140544)三井化学ポリウレタン株式会社 (115)
【Fターム(参考)】