説明

洗い場床パン

【課題】熱可塑性樹脂により形成された発泡体を用いた場合でも熱膨張による反りを抑制し、排水勾配を維持することができる洗い場床パンを提供することを目的とする。
【解決手段】熱可塑性発泡プラスチックよりも高い強度を有し、上下方向にみたときに矩形状を呈する床基材と、排水口と、外周部に設けられ壁パネルが載置される壁パネル載置部と、を有し、前記床基材により下方から支えられ、熱可塑性発泡プラスチックにより形成されて前記排水口に向けて下方へ傾斜した排水勾配が表面に形成され、上下方向にみたときに矩形状を呈する床面材と、を備え、前記床基材は、上下方向にみたときに前記壁パネル載置部とは重ならない位置において前記床基材を上下方向に貫通する開口部を有し、前記床面材は、下側に設けられ前記開口部の縁部と係合する係合部を有することを特徴とする洗い場床パンが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、浴室やシャワー室などに用いられる洗い場床パンに関する。
【背景技術】
【0002】
フレームに固定された部分とリブに固定された部分との間で屈曲されて緩衝帯が形成された衛生設備室の床構造がある(特許文献1)。特許文献1に記載された衛生設備室の床構造では、緩衝帯の開口は、床ベース部の熱膨張圧縮に追従して拡がりまたは狭まって、床ベース部の熱膨張圧縮がフレームに影響を及ぼさないようになっている。
【0003】
また、防水パンの外周部よりも内側に、温度変化を受けたときに伸縮しやすい部分(伸縮許容部)が設けられた防水機能を有する床がある(特許文献2)。特許文献2に記載された防水機能を有する床では、防水パンが温度変化環境下で膨張・収縮しようとしたときに、伸縮許容部が伸縮してくれることで、防水パンの外周部には、温度変化による変形の影響が及ばないようにされている。
【0004】
本発明者は、例えばリサイクル化を推進することで二酸化炭素の排出量を削減し環境への負荷を軽減したり、型費を削減することなどを目的として、熱可塑性樹脂により形成された発泡体を用いた洗い場床パンを検討中である。
【0005】
熱可塑性樹脂により形成された発泡体の線膨張係数は、繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)の線膨張係数の例えば約5倍以上である。そのため、熱可塑性樹脂により形成された発泡体を洗い場床パンに用いると、その発泡体は、浴室やシャワー室などの内部の温度と外部の温度との温度差の影響を受け、FRPよりも大きく膨張する。
【0006】
この場合において、洗い場床パンの外周部には浴室等の壁パネルが載置されるため、洗い場床パンの外周部においては、熱膨張による「反り(ソリ)」などと呼ばれる変形は、洗い場床パンの中央部と比較すると生じにくい。一方で、洗い場床パンの中央部には浴室等の壁パネルなどは載置されないため、洗い場床パンの中央部においては、熱膨張による変形が生ずるおそれがある。例えば、洗い場床パンの中央部においては、上方への反りが生ずるおそれがある。
【0007】
一般的に、洗い場床パンの表面には、排水口に向けて傾斜させた排水勾配が設けられている。しかしながら、洗い場床パンの中央部において上方への反りが生ずると、洗い場床パンの表面の水(湯を含む)は、排水口に向かって流れにくくなるおそれがある。つまり、洗い場床パンの中央部において上方への反りが生ずると、排水性能が悪化するおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−146429号公報
【特許文献2】特開2008−25123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、熱可塑性樹脂により形成された発泡体を用いた場合でも熱膨張による反りを抑制し、排水勾配を維持することができる洗い場床パンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、熱可塑性発泡プラスチックよりも高い強度を有し、上下方向にみたときに矩形状を呈する床基材と、排水口と、外周部に設けられ壁パネルが載置される壁パネル載置部と、を有し、前記床基材により下方から支えられ、熱可塑性発泡プラスチックにより形成されて前記排水口に向けて下方へ傾斜した排水勾配が表面に形成され、上下方向にみたときに矩形状を呈する床面材と、を備え、前記床基材は、上下方向にみたときに前記壁パネル載置部とは重ならない位置において前記床基材を上下方向に貫通する開口部を有し、前記床面材は、下側に設けられ前記開口部の縁部と係合する係合部を有することを特徴とする洗い場床パンである。
【0011】
この洗い場床パンによれば、上下方向に貫通する開口部が床基材に設けられているため、例えば洗い場床パンの施工作業を行う作業者などは、その開口部から手を入れて床基材の下方へ手を伸ばすことで、アジャスタ機能付きの支持脚の高さ調整を行ったり、床基材の裏側において配管類の配設や接続を楽に行うことができる。また、施工作業後には、開口部は、床基材の上に載置された床面材により覆われる。そのため、浴室等あるいは洗い場床パンの意匠性が損なわれることはない。
【0012】
床面材の外周部は、壁パネル載置部に立設された壁パネルにより上方から押さえられている。そのため、浴室等の内部の温度と外部の温度との温度差により床面材が熱膨張しても、床面材の外周部においては、熱膨張による「反り(ソリ)」などと呼ばれる変形は、床面材の中央部と比較すると生じにくい。一方で、床面材の中央部は、壁パネルなどにより上方から押さえられているわけではない。そのため、床面材の中央部においては、熱膨張による変形が生ずるおそれがある。例えば、床面材の中央部においては、上方への反りが生ずるおそれがある。
【0013】
これに対して、この洗い場床パンによれば、床面材よりも高い強度を有する床基材の開口部の縁部に床面材の係合部を係合させている。これにより、床面材の熱膨張による上方への反りを抑えることができる。言い換えれば、床面材が床基材から浮くことをより確実に抑えることができる。これにより、床面材の表面に形成された排水勾配を維持し、洗い場床パンの排水性能が損なわれることを抑制することができる。また、洗い場床パンが備える床面材に熱可塑性発泡プラスチックを用いることで、洗い場床パンのリサイクルを可能とし環境への負担を軽減したり、製造コストを低減することができる。
また、洗い場床パンの施工作業に用いる開口部の縁部を利用して、床面材の係合部を係合させている。これにより、床基材に、床面材と係合させるための新たな開口部や穴を形成する必要がないので、製造コストを低減することができる。
【0014】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記床面材は、下面に設けられ前記開口部に嵌め込まれて前記開口部の全体を埋める凸部を有し、前記係合部は、前記凸部の周縁部に設けられたことを特徴とする洗い場床パンである。
【0015】
この洗い場床パンによれば、開口部の上方における床面材の部分は、床基材により下方から支持されるわけではない一方で、床面材は、開口部の全体を埋める凸部を下面に有する。そのため、使用者などが洗い場床パンを踏みつけた際の床面材の撓みをより小さく抑えることができる。これにより、洗い場床パンの踏み心地が低下することを抑えることができる。また、床基材により下方から支持されていない床面材の部分が経年変化によって下方へ撓み変形することを抑えることができる。
【0016】
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、前記床基材は、前記開口部が形成された受け板と、前記受け板を下方から支持する支持フレームと、を有し、前記係合部の下面は、前記支持フレームの下面よりも上方に位置し、前記開口部および前記支持フレームの少なくともいずれかの側面には、前記係合部が係合される被係合部が設けられたことを特徴とする洗い場床パンである。
【0017】
この洗い場床パンによれば、床面材が床基材の上に載置された状態において、床面材の係合部が支持フレームの下面から下方へは突出しない。そのため、床面材の係合部が床基材の下方に配設された配管等の邪魔になったり、配管等と接触したりすることを防止できる。これにより、洗い場床パンの低床化を図ることができる。
【0018】
また、第4の発明は、第3の発明において、前記被係合部は、前記開口部の内周面から前記開口部の内側へ向かって突出した押さえ片であり、前記床面材が前記床基材に載置される際には、前記係合部は、前記押さえ片を前記開口部の外側へ向かって一時的に押し込むことで前記被係合部と係合し、前記床面材が熱膨張した際には、前記押さえ片は、前記開口部の内周面から前記開口部の内側へ向かって突出した状態を維持して前記床面材を拘束し、前記床面材が前記床基材から浮き上がることを抑制することを特徴とする洗い場床パンである。
【0019】
この洗い場床パンによれば、床面材が床基材に載置される際には、係合部は、押さえ片を開口部の外側へ向かって一時的に押し込むことで被係合部と係合する。浴室等の内部の温度と外部の温度との温度差により床面材が熱膨張した際には、押さえ片は、開口部の内周面から開口部の内側へ向かって突出した状態を維持し床面材を拘束する。これにより、係合部が熱可塑性発泡プラスチックにより形成された場合でも、施工の際に係合部が破壊することを防止できる。そのため、床面材が熱膨張しても、床面材の中央部において上方への反りが生ずることを抑制できる。これにより、床面材の表面に形成された排水勾配を維持し、洗い場床パンの排水性能が損なわれることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の態様によれば、熱可塑性樹脂により形成された発泡体を用いた場合でも熱膨張による反りを抑制し、排水勾配を維持することができる洗い場床パンが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態にかかる洗い場床パンを表す分解模式図である。
【図2】図1に表した切断面A−Aにおける断面模式図である。
【図3】図2に表した範囲A1を拡大した拡大模式図である。
【図4】図2に表した範囲A2を拡大した拡大模式図である。
【図5】本実施形態の床面材を斜め下方から眺めた斜視模式図である。
【図6】本実施形態の床面材を下方から眺めた平面模式図および本実施形態の床基材を上方から眺めた平面模式図である。
【図7】本実施形態の床面材の係合部の他の一例の近傍を表す断面模式図である。
【図8】本実施形態の床面材の係合部のさらに他の一例の近傍を表す断面模式図である。
【図9】本実施形態の床面材の変形例を例示する平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる洗い場床パンを表す分解模式図である。
【0023】
図1に表した洗い場床パン100は、床基材110と、床面材130と、クッション材140と、表皮材150と、を備える。洗い場床パン100は、周縁部が上方へ折り曲げられた浅底の器状(パン状)に形成され、例えば浴室やシャワー室などの衛生設備室の外部に水を漏出させない防水性を有する。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加温されたお湯も含むものとする。
【0024】
床基材110は、支持脚111と、支持フレーム113と、受け板115と、を有する。支持フレーム113は、長手方向が第1の方向に配置された例えば4本の第1のフレーム113aと、長手方向が第1の方向と直交する第2の方向に配置された例えば4本の第2のフレーム113bと、を有する。支持脚111は、支持フレーム113の4隅に設けられている。支持脚111は、ボルト部を有し、そのボルト部の回転により高さ調整可能な構造を有する。
【0025】
床基材110は、浴室等の設置場所の限られた空間の中において、洗い場床パン100の上面にかかる荷重を受け、その位置を保持するものである。そのため、床基材110には、充分な強度が必要とされる。そこで、この充分な強度が得られる一例として、本実施形態では鋼材が床基材110に用いられる。
【0026】
床基材110は、浴室等の設置面(例えば、建物の床)の上に載置され、支持脚111のボルト部の回転により適宜高さ調整をされる。これにより、洗い場床パン100の水平面が確保される。そして、支持脚111および支持フレーム113は、受け板115を下方から支持している。言い換えれば、支持脚111および支持フレーム113の上には、受け板115が載置されている。受け板115は、例えばねじ等の締結部材により支持フレーム113に固定されている。
【0027】
受け板115の上面は、洗い場床パン100が備える各部材の垂直方向の基準位置すなわち水平基準面となる。また、受け板115は、床面材130を下方から支持し、受け板115の上に載置される部材から荷重を受ける。そのため、受け板115としては、比較的に高強度で剛性を有する平板状の素材が好適である。その一例として、例えばデッキプレートやサンドイッチパネルなどが挙げられる。床基材110の強度は、後述する熱可塑性発泡プラスチックにより形成された床面材130の強度よりも高い。
【0028】
図1に表したように、床基材110の略中央部には、作業口(開口部)117が設けられている。例えば、洗い場床パン100の施工作業を行う作業者は、作業口117から手を入れて床基材110の下方へ手を伸ばすことで、支持脚111の高さ調整を行ったり、床基材110の裏側において排水管の配設や接続を楽に行うことができる。なお、施工作業後には、作業口117は、床基材110の上に載置された床面材130により覆われる。そのため、浴室等あるいは洗い場床パン100の意匠性が損なわれることはない。
【0029】
床基材110の上には、床面材130が載置されている。床面材130は、熱可塑性発泡プラスチックにより形成されている。熱可塑性発泡プラスチックとしては、例えば発泡ポリプロピレン、発泡ポリスチレン、発泡ポリエチレン、発泡ポリウレタンなどが挙げられる。本実施形態では、一例として発泡ポリプロピレンが用いられている。熱可塑性発泡プラスチックは、リサイクル可能なため、これを用いることで床面材130の製造・廃棄に伴うCO排出量を削減して環境に優しい製品を提供できることになる。
【0030】
図1に表したように、床面材130の例えば長辺側の外周部近傍には、図示しない排水管に連通する排水口131が形成されている。排水口131が設けられた部分は、凹部形状を有する。また、床面材130の表面には、排水口131に向けて下方に傾斜した排水勾配が形成されている。
【0031】
床面材130の上には、クッション材140を介して表皮材150が設けられている。クッション材140および表皮材150は、洗い場床パン100の床面の外観意匠や使用感などの官能的な性能向上や、防水性などの洗い場床パン100に必然的に求められる機能を向上させるために用いられている。
【0032】
すなわち、クッション材140は、使用者に与える床面の柔らかさを得るものである。クッション材140の材料としては、例えば発泡ポリウレタン等の軟質素材が用いられている。クッション材140の硬さ(柔らかさ)を変えることで、床面の硬さ(柔らかさ)の仕様を変更することができる。
【0033】
表皮材150は、洗い場床パン100の表面を形成するものである。表皮材150の材料としては、防水性を有する可撓性を有する軟質シート材が用いられている。表皮材150には、洗い場床パン100の表面の意匠性や水はけ性を向上させるために、凹凸加工や柄模様を施したりすることも可能である。
【0034】
なお、クッション材140および表皮材150は、洗い場床パン100を施工する前において、床面材130の表面に予め貼り付けられている。床面材130が軽量な熱可塑性発泡プラスチックにより形成されているため、クッション材140および表皮材150が床面材130の表面に予め貼り付けられていても、作業者は、十分な軽さを得たまま、施工作業を行うことができる。
【0035】
図2は、図1に表した切断面A−Aにおける断面模式図である。
また、図3は、図2に表した範囲A1を拡大した拡大模式図である。
また、図4は、図2に表した範囲A2を拡大した拡大模式図である。
また、図5は、本実施形態の床面材を斜め下方から眺めた斜視模式図である。
【0036】
図1に関して前述したように、本実施形態の床面材130は、熱可塑性発泡プラスチックにより形成されている。熱可塑性発泡プラスチックの線膨張係数は、繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)の線膨張係数の例えば5倍以上である。そのため、床面材130は、浴室等の内部の温度と外部の温度との温度差の影響を受け、FRPよりも大きく膨張するおそれがある。
【0037】
ここで、図4に表したように、床面材130は、浴室等の壁パネル201が載置される壁パネル載置部139を外周部に有する。壁パネル載置部139は、床面材130の外周部の全周(四辺)にわたって設けられていなくともよい。例えば、四辺のうちの少なくとも一辺(例えば浴槽側の一辺)には、壁パネル載置部139は、設けられていない場合がある。壁パネル載置部139は、凹部形状を有し、壁パネル201を立設させることができる。そのため、壁パネル載置部139が設けられた部分、すなわち床面材130の外周部は、壁パネル201により上方から押さえられている。そのため、床面材130が熱膨張をしても、床面材130の外周部においては、熱膨張による「反り(ソリ)」などと呼ばれる変形は、床面材130の中央部と比較すると生じにくい。
【0038】
一方で、床面材130の中央部には壁パネル201などは載置されない。そのため、床面材130の中央部は、壁パネル201などにより上方から押さえられているわけではない。そのため、床面材130の中央部においては、熱膨張による変形が生ずるおそれがある。例えば、床面材130の中央部においては、上方への反りが生ずるおそれがある。
【0039】
これに対して、本実施形態の床面材130は、床面材130の熱膨張による変形を抑え床面材130が床基材110から離れることを抑制する離間抑制部を有する。具体的には、図3に表したように、床面材130は、下側(床基材110が設けられた側)において、床基材110の作業口117の縁部と係合する係合部(離間抑制部)135を有する。
【0040】
図5に表したように、床面材130は、下面において下方へ突出した凸部133を有する。図5に表した床面材130は、略中心からみて両側にそれぞれ1つずつの凸部133を有するが、これだけに限定されるわけではない。床面材130は、下面の略中央部に1つの凸部133を有していてもよい。そして、係合部135は、凸部133の周縁部に設けられている。ここにいう「周縁部」という範囲には、凸部133の下面および凸部133の側面が含まれるものとする。図5に表した床面材130では、係合部135は、凸部133の側面に設けられ外側へ突出している。
【0041】
作業口117は、壁パネル載置部139とは重ならない位置において床基材110を上下方向に貫通している。図2に表したように、床面材130の凸部133は、床基材110の作業口117に嵌め込まれている。この状態において、図3に表したように、係合部135は、床基材110に設けられた押さえ片(被係合部)118と係合している。押さえ片118は、床基材110の作業口117の内周面(側面)115aに設けられ、その内周面115aから作業口117の内側へ向かって突出している。押さえ片118は、例えば板ばねなどのような弾性を有する。
【0042】
作業者などが床面材130の凸部133を床基材110の作業口117に嵌め込み床面材130を床基材110の上に載置する際には、係合部135は、押さえ片118を作業口117の外側へ向かって一時的に押し込む。そして、作業者などが床面材130をさらに下方へ押し込むと、係合部135が押さえ片118を押し込む力が解除され、押さえ片118は、作業口117の内側へ向かって変形する。これにより、係合部135が、作業口117の縁部に配置されている押さえ片118と係合する。
【0043】
このとき、図3に表したように、係合部135は、支持フレーム113の下面113dから下方へは突出していない。言い換えれば、係合部135が押さえ片118と係合した状態において、係合部135の下面134は、支持フレーム113の下面113dよりも上方に位置する。
【0044】
これによれば、係合部135が押さえ片118と係合した状態すなわち床面材130が床基材110の上に載置された状態において、床面材130の係合部135が支持フレーム113の下面113dから下方へは突出しない。そのため、床面材130の係合部135が床基材110の下方に配設された配管等の邪魔になったり、配管等と接触したりすることを防止できる。これにより、洗い場床パン100の低床化を図ることができる。
【0045】
浴室等の内部の温度と外部の温度との温度差により床面材130が熱膨張した際には、押さえ片118は、作業口117の内周面115aから作業口117の内側へ向かって突出した状態を維持し床面材130を拘束する。これにより、床面材130が床基材110から浮くことを抑えることができる。つまり、床面材130が熱膨張しても、床面材130の中央部において上方への反りが生ずることを抑制できる。これにより、床面材130の表面に形成された排水勾配を維持し、洗い場床パン100の排水性能が損なわれることを抑制することができる。
【0046】
なお、床面材130には、複数の係合部135が設けられていることがより好ましい。これによれば、応力が1つの係合部135に集中することを防止し、例えば係合部135が破損するなどの不具合を防止することができる。
【0047】
図6は、本実施形態の床面材を下方から眺めた平面模式図および本実施形態の床基材を上方から眺めた平面模式図である。
なお、図6(a)は、本実施形態の床面材130を下方から眺めた平面模式図である。図6(b)は、本実施形態の床基材110を上方から眺めた平面模式図である。
【0048】
図6(a)に表したように、床面材130を下方あるいは上方からみたときに、床面材130は、矩形状を呈し、矩形状の凸部133を下面に有する。図6(b)に表したように、床基材110を下方あるいは上方からみたときに、床基材110は、矩形状を呈し、矩形状の作業口117を有する。
【0049】
図2に関して前述したように、床面材130の凸部133は、床基材110の作業口117に嵌め込まれている。すなわち、図6(a)に表した床面材130の凸部133の第1の方向の長さD1は、図6(b)に表した作業口117の第1の方向の長さD3よりもやや短い。また、図6(a)に表した床面材130の凸部133の第2の方向の長さD2は、図6(b)に表した作業口117の第2の方向の長さD4よりもやや短い。そのため、図2に表したように、床面材130の凸部133が床基材110の作業口117に嵌め込まれた際には、凸部133は、作業口117の略全体を埋めている。そして、凸部133の周縁部に設けられた係合部135は、床基材110に設けられた押さえ片118と係合している。
【0050】
これによれば、作業口117の上方における床面材130の部分は、床基材110により下方から支持されるわけではない一方で、床面材130は、作業口117の略全体を埋める凸部133を下面に有する。そのため、使用者などが洗い場床パン100を踏みつけた際の床面材130の撓みをより小さく抑えることができる。これにより、洗い場床パン100の踏み心地が低下することを抑えることができる。また、床基材110により下方から支持されていない床面材130の部分が経年変化によって下方へ撓み変形することを抑えることができる。
【0051】
次に、本実施形態の床面材の他の係合部について、図面を参照しつつ説明する。
図7は、本実施形態の床面材の係合部の他の一例の近傍を表す断面模式図である。
なお、図7は、図2に表した範囲A1を拡大した拡大模式図に相当する。
【0052】
図7に表した床基材110では、作業口117の側の支持フレーム113の側面に、係合口(被係合部)113cが形成されている。係合口113cは、支持フレーム113の側面において作業口117の側に開口しており、孔の形状を有していてもよいし、溝の形状を有していてもよい。
【0053】
図7に表した床面材130は、下面において下方へ突出した凸部133を有する。この凸部133は、図5および図6に関して前述した如くである。凸部133の周縁部には、係合部135が設けられている。図7に表した床面材130では、係合部135は、凸部133の側面に設けられ外側へ突出している。
【0054】
作業者などが床面材130の凸部133を床基材110の作業口117に嵌め込み床面材130を床基材110の上に載置する際には、係合部135は、作業口117の縁部および支持フレーム113の側面から力を受け作業口117の内側へ向かって一時的に変形する。そして、作業者などが床面材130をさらに下方へ押し込むと、係合部135が受ける力が解除され、係合部135は、作業口117の外側へ向かって変形する。これにより、係合部135が支持フレーム113の側面に形成された係合口113cと係合する。
【0055】
このとき、図7に表したように、係合部135は、支持フレーム113の下面113dから下方へは突出していない。言い換えれば、係合部135が係合口113cと係合した状態において、係合部135の下面134は、支持フレーム113の下面113dよりも上方に位置する。
【0056】
これによれば、係合部135が係合口113cと係合した状態すなわち床面材130が床基材110の上に載置された状態において、床面材130の係合部135が支持フレーム113の下面113dから下方へは突出しない。そのため、床面材130の係合部135が床基材110の下方に配設された配管等の邪魔になったり、配管等と接触したりすることを防止できる。これにより、洗い場床パン100の低床化を図ることができる。
【0057】
図8は、本実施形態の床面材の係合部のさらに他の一例の近傍を表す断面模式図である。
なお、図8は、図2に表した範囲A1を拡大した拡大模式図に相当する。
【0058】
図8に表した床面材130は、下面において下方へ突出した凸部133を有する。この凸部133は、図5および図6に関して前述した如くである。凸部133の周縁部には、係合部135が設けられている。図8に表した床面材130では、係合部135は、凸部133の側面に設けられ外側へ突出している。
【0059】
作業者などが床面材130の凸部133を床基材110の作業口117に嵌め込み床面材130を床基材110の上に載置する際には、係合部135は、作業口117の縁部から力を受け作業口117の内側へ向かって一時的に変形する。そして、作業者などが床面材130をさらに下方へ押し込むと、係合部135が受ける力が解除され、係合部135は、作業口117の外側へ向かって変形する。これにより、係合部135が作業口117の縁部と係合する。
【0060】
これによれば、床基材110に設けられた作業口117に直接、床面材130を係合させるため、わざわざ床面材130を係合させるための被係合部を形成する必要がない。そのため、床基材120および床面材130の構造を簡略化させることができる。そのため、製造コストを削減することができる。
【0061】
次に、本実施形態の床面材の変形例について、図面を参照しつつ説明する。
図9は、本実施形態の床面材の変形例を例示する平面模式図である。
なお、図9は、本変形例の床面材を下方から眺めた平面模式図である。
【0062】
本変形例の床面材130aは、床面材本体132aと、凸部133aと、を有する。凸部133aは、床面材本体132aと一体的に形成されているわけではない。つまり、凸部133aは、床面材本体132aとは別体として形成されている。そして、床面材本体132aおよび凸部133aがそれぞれ形成された後に、図9に表した矢印のように、凸部133aは、床面材本体132aの下面に固定される。なお、図9に表した左側の2つの凸部133aは、床面材本体132aと一体的に形成されたことを表しているわけではなく、床面材本体132aの下面に固定された後の状態を表している。
【0063】
凸部133aの周縁部には、係合部135が設けられている。図9の表した係合部135は、図5に関して前述したように、凸部133aの側面に設けられ外側へ突出している。これによれば、本具体例の床面材130aが床基材110の上に載置されると、係合部135は、床基材110に設けられた押さえ片118と係合する。そのため、床面材130aが熱膨張しても、床面材130aの中央部において上方への反りが生ずることを抑制できる。
【0064】
また、床面材本体132aが凸部133aとは別体として形成されているため、床面材本体132aの構造を簡略化することができる。そして、洗い場床パン100のリサイクルの効率化を図ったり、床面材本体132aの製造コストを低減することができる。
【0065】
以上説明したように、本実施形態によれば、床面材130よりも高い強度を有する床基材110の作業口117の縁部に床面材130の係合部135を係合させている。これにより、床面材130の熱膨張による上方への反りを抑えることができる。言い換えれば、床面材130が床基材110から浮くことをより確実に抑えることができる。これにより、床面材130の表面に形成された排水勾配を維持し、洗い場床パン100の排水性能が損なわれることを抑制することができる。また、洗い場床パン100が備える床面材130に熱可塑性発泡プラスチックを用いることで、洗い場床パン100のリサイクルを可能とし環境への負担を軽減したり、製造コストを低減することができる。
【0066】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、床基材110、120aや床面材130などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などや係合部135や被係合部などの離間抑制部の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0067】
100 洗い場床パン、 110 床基材、 111 支持脚、 113 支持フレーム、 113a 第1のフレーム、 113b 第2のフレーム、 113c 係合口、 113d 下面、 115 受け板、 115a 内周面、 117 作業口、 118 押さえ片、 130、130a 床面材、 131 排水口、 132a 床面材本体、 133 、133a 凸部、 134 下面、 135 係合部、 139 壁パネル載置部、 140 クッション材、 150 表皮材、 201 壁パネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性発泡プラスチックよりも高い強度を有し、上下方向にみたときに矩形状を呈する床基材と、
排水口と、外周部に設けられ壁パネルが載置される壁パネル載置部と、を有し、前記床基材により下方から支えられ、熱可塑性発泡プラスチックにより形成されて前記排水口に向けて下方へ傾斜した排水勾配が表面に形成され、上下方向にみたときに矩形状を呈する床面材と、
を備え、
前記床基材は、上下方向にみたときに前記壁パネル載置部とは重ならない位置において前記床基材を上下方向に貫通する開口部を有し、
前記床面材は、下側に設けられ前記開口部の縁部と係合する係合部を有することを特徴とする洗い場床パン。
【請求項2】
前記床面材は、下面に設けられ前記開口部に嵌め込まれて前記開口部の全体を埋める凸部を有し、
前記係合部は、前記凸部の周縁部に設けられたことを特徴とする請求項1記載の洗い場床パン。
【請求項3】
前記床基材は、
前記開口部が形成された受け板と、
前記受け板を下方から支持する支持フレームと、
を有し、
前記係合部の下面は、前記支持フレームの下面よりも上方に位置し、
前記開口部および前記支持フレームの少なくともいずれかの側面には、前記係合部が係合される被係合部が設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の洗い場床パン。
【請求項4】
前記被係合部は、前記開口部の内周面から前記開口部の内側へ向かって突出した押さえ片であり、
前記床面材が前記床基材に載置される際には、前記係合部は、前記押さえ片を前記開口部の外側へ向かって一時的に押し込むことで前記被係合部と係合し、
前記床面材が熱膨張した際には、前記押さえ片は、前記開口部の内周面から前記開口部の内側へ向かって突出した状態を維持して前記床面材を拘束し、前記床面材が前記床基材から浮き上がることを抑制することを特徴とする請求項3記載の洗い場床パン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−72234(P2013−72234A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−212855(P2011−212855)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】