説明

洗い場床用表面材

【課題】本発明は、床面部材と排水ピット部材とを熱融着によって接合一体化した表面材において、熱融着時の熱によって床面部材の凹凸パターンが変形・消失することを防止し、高い水捌け性能を維持することが可能な洗い場床用表面材を提供することを目的とする。
【解決手段】浴室ユニットに組み込まれる洗い場床パンの上に積層される洗い場床用表面材であって、上面に凹凸形状が形成され、洗い場床の床面部を構成する床面部材と、洗い場床の排水ピット部を構成する排水ピット部材とから構成されており、前記床面部材の端部裏面に前記排水ピット部材の上端を熱融着によって接合一体化されており、前記排水ピット部材における前記床面部材との接合部には、熱融着によって優先的に溶ける優先溶解部が一部のみに設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室ユニットに組み込まれる洗い場床パンの上に積層される洗い場床用表面材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浴室ユニットに組み込まれる洗い場床として、その基材にFRP(Fiber Reinforced Plastic)製の防水パンを備えたものが多く利用されている。このような洗い場床としては、特に表面材がないもの(例えば特許文献1参照)の他、外観意匠性を向上させたり防水性を付与したりするために表面材が設けられたものもある(例えば特許文献2,3参照)。
【0003】
特許文献2に開示されている表面材は、洗い場床の床面部のみに平面状の表面材を被覆したものであり、排水ピット部には表面材が積層されていない。このような平面状の表面材であれば、印刷加飾層を含む複層の薄いフィルム状の材料を積層接着させるラミネート成形が採用できる。このラミネート成形は、長尺シート状の加飾シートを効率的に連続生産できるものであるため、多彩な意匠を経済性高く実現可能な手法である。しかしながら、ラミネート成形は、その製法上、排水ピット部のような複雑な3次元形状を付与することが困難である。そのため、防水パンを意匠性や防水性に優れていない材料(例えば発泡材)で形成する際には、防水パンの排水ピット部をラミネート成形で形成した表面材で覆うことができない。
【0004】
また、特許文献3に開示されている表面材は、床面部と排水ピット部の両方に表面材を被覆したものであり、床面部と排水ピット部とをプレス成形によって一体成形している。このようなプレス成形によって形成した表面材は、ラミネート成形に比べて多彩な意匠を付与することが困難である。
【0005】
このように、ラミネート成形された表面材を貼り付ける手法は高い意匠性をもった製品を安価に実現する手法の一つではあるが、その一方で、3次元形状の成形を行いにくいものでもある。こうした状況下で高い意匠を持った3次元形状の表面材を形成させるとすれば、例えば、床面部材をラミネート成形のシート状の部材で形成し、射出成形などで別に形成した排水ピット部材とこの床面部材を後から接合して一体化することなどが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−189310号公報
【特許文献2】特開2010−59652号公報
【特許文献3】特開2010−229791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
床面部材と排水ピット部材を別々に成形し、それらを両面テープや接着剤などで一体化した場合、その接合部が従来の一体成形品に比べて強度的に弱くなってしまう。しかも、洗い場床に用いられる表面材であるため、接合部は、高い接合強度と水密性が要求される。かかる課題を解決するべく本発明者らは、床面部と排水ピット部材とを接合する構造に着目しつつ種々の検討をした結果、床面部材と排水ピット部材とは熱融着によって接合一体化することが、高い接合強度と水密性を満足するためには好ましいとの知見を得るに至った。
【0008】
しかしながら、床面部材と排水ピット部材との接合部に熱を発生させて、それぞれの部材を溶かして接着させるにあたっては、それぞれの部材の溶かす程度を制御するのは困難であり、床面部材側が過剰に溶けてしまう場合がある。特に、床面部材の表面には、洗い場床としての水捌け性能を向上させる目的で所定の凹凸パターンが施されており、この凹凸パターンが熱融着時の過剰な熱で変形、消失すると、洗い場床としての水捌け性能を損なうという問題が発生する。
【0009】
そこで、本発明は、床面部材と排水ピット部材とを熱融着によって接合一体化した表面材において、熱融着時の熱によって床面部材の凹凸パターンが変形・消失することを防止し、高い水捌け性能を維持することが可能な洗い場床用表面材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明はかかる知見に基づくものであり、浴室ユニットに組み込まれる洗い場床パンの上に積層される洗い場床用表面材であって、上面に凹凸形状が形成され、洗い場床の床面部を構成する床面部材と、洗い場床の排水ピット部を構成する排水ピット部材とから構成されており、前記床面部材の端部裏面に前記排水ピット部材の上端を熱融着によって接合一体化されており、前記排水ピット部材における前記床面部材との接合部には、熱融着によって優先的に溶ける優先溶解部が一部のみに設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明にかかる洗い場床用表面材においては、防水パンの上に表面材を設けていることから、外観意匠性や防水性の低い材料からなる防水パン(例えば発泡材による床パン)を採用することが可能となる。これによれば、防水パンの材料や製法の選択肢が広がり、基材設計の自由度を向上させることができる。
【0012】
また、本発明にかかる洗い場床用表面材においては、表面材を構成する床面部と排水ピット部とを別々に成形しているため、床面部と排水ピット部とを一体成形する製法ないし製品に比べ、床面部に付与できる意匠が増えるとともに、経済的に最適な加飾手法を組み合わせることが出来るため、意匠設計の自由度・経済性を向上させることもできる。
【0013】
さらに、本発明にかかる洗い場床用表面材においては、床面部材の端部裏面に排水ピット部材の上端を接合しているため、カバー部材(トラップカバー)を載置した状態において、浴室内にいる使用者からは排水ピット部が見えなくなっている。このため、この点においても排水ピット部およびその周辺部の意匠性が向上する。また、上述のように接合した場合、床面部材と排水ピット部材の継ぎ目が洗い場床の上面に露出しないため、当該床上面を流れる排水性を向上させることができる。
【0014】
さらに、本発明にかかる洗い場床用表面材においては、床面部材および排水ピット部材は、熱融着によって接合しているため、水密性と高い接合強度との両立を図ることができる。
【0015】
しかも、本発明にかかる洗い場床用表面材においては、排水ピット部材における床面部材との接合部に、熱融着によって優先的に溶ける優先溶解部が一部のみに設けられている。例えば、排水ピット部材における床面部材との接合部全体を満遍なく溶かそうとすると接合部に多くの熱を発生させる必要があり、床面部材側にも多くの熱が加わり、ダメージを受けることとなる。本発明によれば、排水ピット部材の接合部の一部のみに設けられた優先溶解部が優先的に溶けるため、必要最小限の発熱で融着が可能であり、熱融着時の熱によって床面部材の凹凸パターンが変形・消失することを防止でき、排水性(排水溝や梨地が形成)に影響を与えにくくできる。また、融着時においては、床面部材に比べて排水ピット部材(具体的には優先溶解部)の方が相対的に多く溶けるため堅実な融着が可能となる。
【0016】
また、本発明にかかる洗い場床用表面材においては、前記優先溶解部は、前記接合部の両端部の中間位置に設けられていることが好ましい。この好ましい態様によれば、熱融着によって優先溶解部が溶けた際に、溶けた樹脂が、床面部材と排水ピット部材との接合部の表側(浴室内側)に流出することを防止できる。このため、表面材としての外観意匠性と排水性を向上させることができる。また、溶けた樹脂は、接合部の裏側(浴室外側)にも流出することを防止できるため、より堅実な融着が可能となる。
【0017】
また、本発明にかかる洗い場床用表面材においては、前記優先溶解部は、当該接合部全体に対して前記床面部材の裏面側に突出した突起であることが好ましい。突起(特にその先端部分)は熱容量が小さく溶けやすいものである。すなわち、熱融着時に熱容量の小さな突起が床面部材の裏面に接触して熱を受けて他の部分より先んじて優先的に溶けることとなる。この好ましい態様によれば、排水ピット部材の接合部の形状を工夫するだけの簡単な構成で熱融着時の熱によって床面部材の凹凸パターンが変形・消失することを防止できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、床面部材と排水ピット部材とを熱融着によって接合一体化した表面材において、熱融着時の熱によって床面部材の凹凸パターンが変形・消失することを防止し、高い水捌け性能を維持することが可能な洗い場床用表面材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明にかかる洗い場床が適用された浴室ユニットの一例を示す斜視図である。
【図2】洗い場床の構成例を示す斜視図である。
【図3】洗い場床を構成する表面材、基材等を示す分解斜視図である。
【図4】(A)別々に成形された床面部材と排水ピット部材とを示す斜視図、(B)これら床面部材と排水ピット部材とを一体化して構成される表面材の斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態を示す洗い場床の排水口周辺の縦断面図である。
【図6】排水口周辺の部材の構成例を示す分解斜視図である。
【図7】排水口周辺の部材の構成例を示す分解斜視図である。
【図8】排水ピット部材の表面の構成例を示す斜視図である。
【図9】排水口周辺の部材の構成例を一部断面とともに示す斜視図である。
【図10】本発明の第2の実施形態を示す洗い場床の排水口周辺の縦断面図である。
【図11】本発明の第3の実施形態を示す洗い場床の排水口周辺の縦断面図である。
【図12】本発明の第4の実施形態を示す洗い場床の排水口周辺の縦断面図である。
【図13】排水ピット部材の第1の実施形態を示す断面構成を示す拡大縦断面図である。(a)は融着前の状態を示し、(b)は融着後の状態を示す。
【図14】排水ピット部材の第2の実施形態を示す断面構成を示す拡大縦断面図である。(a)は融着前の状態を示し、(b)は融着後の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の構成を図面に示す実施の形態の一例に基づいて詳細に説明する。
【0021】
図1等に本発明にかかる洗い場床の例を示す。本発明にかかる洗い場床1は表面材2、基材5、排水トラップ6、トラップカバー(カバー部材)7などを備え、さらに接合部保護手段8が設けられている。
【0022】
洗い場床1は浴室ユニット10に組み込まれ、浴槽200に隣接する洗い場の床を形成している(図1等参照)。当該洗い場床1において最も低くなる位置には排水口11が形成されている。洗い場床1の表面(表面材2)にはこの排水口11が最も低くなるような排水勾配がつけられており、表面材2上の水が排水勾配に沿って流れ排水口11(の排水ピット部材4)に集水されるようになっている。
【0023】
表面材2は基材5の表面全体を覆って防水性を付与する部材である。本実施形態の表面材2は、洗い場床1の床面部1aを構成する床面部材3と、洗い場床1の排水ピット部(図5において符号Tで示す)を構成する排水ピット部材4とで構成されている(図4、図5参照)。表面材2として、模様が付されているなど、洗い場床1の意匠性を向上させるものを採用することも好ましい。
【0024】
本実施形態では、床面部材3の端部裏面に排水ピット部材4の上端を接合することによってこれら床面部材3と排水ピット部材4とを一体化している(図4〜図6参照)。本実施形態では床面部材3と排水ピット部材4とを熱融着によって接合し、水密性と高い接合強度との両立を図るようにしている(図5参照)。
【0025】
また、図13に示すように、排水ピット部材4における床面部材3との接合部には、熱融着によって優先的に溶ける優先溶解部41が一部のみに設けられている。このようにして、排水ピット部材4の接合部の一部のみに設けられた優先溶解部41が優先的に溶けるため、熱融着時の熱によって床面部材3の凹凸パターンが変形・消失することを防止でき、排水性(排水溝や梨地が形成)に影響を与えにくくできる。また、融着時においては、床面部材3に比べて排水ピット部材4(具体的には優先溶解部41)の方が相対的に多く溶けるため堅実な融着が可能となる。
【0026】
また、優先溶解部41は、接合部の両端部の中間位置に設けられている。このため、熱融着によって優先溶解部41が溶けた際に、溶けた樹脂が、床面部材3と排水ピット部材4との接合部の表側(浴室内側)に流出することを防止できる。このことにより、表面材2としての外観意匠性と排水性を向上させることができる。また、溶けた樹脂は、接合部の裏側(浴室外側)にも流出することを防止できるため、より堅実な融着が可能となる。
【0027】
より詳しく説明すると優先溶解部41は、当該接合部全体に対して床面部材3の裏面側に突出した突起41である。突起31(特にその先端部分)は熱容量が小さく溶けやすいものである。すなわち、熱融着時に熱容量の小さな突起31が床面部材3の裏面に接触して熱を受けて他の部分より先んじて優先的に溶けることとなる。この好ましい態様によれば、排水ピット部材4の接合部の形状を工夫するだけの簡単な構成で熱融着時の熱によって床面部材3の凹凸パターンが変形・消失することを防止できる。
【0028】
また、排水ピット部材4の接合部には、優先溶解部41の排水ピット部側(浴室内側)には、流出抑止部42、43が設けられている。
【0029】
流出抑止部42は、当該接合部全体に対して下方に凹んだ凹状ポケット42であり、凹状ポケット42は、熱融着によって優先溶解部41が溶けて液状化した樹脂を溜める機能を有する。この凹状ポケット42によって、熱融着によって優先溶解部41が溶けて液状化した余剰の樹脂が浴室内側に流出することを抑止することができ、外観や排水性に影響を与えにくくできる。
【0030】
また、流出抑止部43は、当該接合部全体に対して床面部材3の裏面側に突出した突起43であり、突起は、熱融着によって優先溶解部41が溶けて液状化した樹脂の流れを堰き止める機能を有する。この突起41によって、熱融着によって優先溶解部41が溶けて液状化した余剰の樹脂が浴室内側に流出することを抑止することができ、外観や排水性に影響を与えにくくできる。
【0031】
尚、図13では、流出抑止部として、突起41と凹状ポケット42との両方を備えているが、図14に示すように、突起41のみで液状化した余剰の樹脂が浴室内側に流出することを抑止するようにしても良いし、図示しないが、凹状ポケット42のみで液状化した余剰の樹脂が浴室内側に流出することを抑止するようにしても良い。尚、突起41にも熱が発生し、最終的に溶けたとしても、優先溶解部41よりは後に溶解するものであるため、優先溶解部41が溶けて液状化した樹脂の流れを堰き止める機能は発揮されることとなる。また、突起41は優先溶解部41に比べて体積の小さいものであるため、突起41が溶けても外観を悪化させるようなバリが発生することは抑止できる。
【0032】
また、本実施形態においては、床面部材3の内側(排水口11寄り)の端部裏面に排水ピット部材4の上端を接合している(図5、図6参照)。こうした場合には、排水トラップ6上にトラップカバー7を載置した状態において、浴室内にいる使用者からは排水ピット部Tが見えなくなるので排水ピット部Tやその周辺部の意匠性の向上を図ることができる。しかも、こうした場合には床面部材3と排水ピット部材4の継ぎ目が洗い場床1の上面に露出しないため、当該床上面を流れる排水性の向上を図ることもできる。
【0033】
基材5は、床面部材3の下部に配置され、洗い場床1の床面部1aの上に加わる荷重を支える部材であり、特に図示していないが浴室壁パネル、天井パネル、風呂椅子、洗面器などの静荷重や使用者の動荷重を受けても撓んだり破損したりしない十分な強度を備えている。基材5は、具体的には発泡材からなる洗い場床パン、洗い場床パンの下部に配置される板状架台、板状架台の下部に配置されるフレーム状架台などを含む。また、基材5と表面材2との間にクッション材400を介在させてもよい(図7参照)。本実施形態で例示する基材5の板状架台には、作業口51、排水用の開口52を備えており、例えば四隅を基材支持脚53で支持されている(図3参照)。
【0034】
また、洗い場床パンは、浴室外に湯水を漏出させない防水性を備えていることが好ましいが、当該洗い場床パンの表面全体を表面材2で覆う構成の本実施形態の場合には、基材5が十分な防水性を備えていなくても足りる。したがって、洗い場床パンの材質としては、一般的に使用されているFRP等の熱硬化性樹脂の他、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂に補強を施したもの、さらには例えば発泡材のような防水性の低い基材を使用することが可能である。
【0035】
排水トラップ6は、排水ピット部材4の底部に形成された排水口11に取り付けられている(図3等参照)。排水トラップ6には、浴槽排水管61を介して浴槽排水口62が接続される(図3参照)。また、この排水トラップ6には排水を下水側に流すための排水管12が接続される(図5、図6参照)。
【0036】
トラップカバー7は、排水ピット部材4の上部を覆い隠すカバーである(図2,図3等参照)。このトラップカバー7は、排水ピット部材4の上に着脱自在な状態で載置されている。トラップカバー7の形状は特に限定されるものではないが、本実施形態では四辺が下側に折り曲げられた形態の壁部71を有するトラップカバー7を用いている(図5等参照)。
【0037】
また、建築床100上には、浴槽200等を支持する架台300が設置されている(図1参照)。架台300は、例えば柱状の金属材(鋼材)を縦横に組み合わせて構成され、浴槽水を溜めた状態で且つ入浴者が存在している状態の浴槽荷重を支えるのに十分な強度および耐久性を有する。
【0038】
ここで、本実施形態においては、排水トラップ6を、排水口11に対して締付フランジ13を介して固定している(図7、図9参照)。さらに、本実施形態では、洗い場床パンを、この締付フランジ13と排水トラップ6との上下方向の間には介在させないようにして、高い止水性が要求される部分の一つであるフランジ締め付け部(締付フランジ13によって締め付けられる部分)に多くの部材が積み重ならないようにし、当該締め付け部の止水性を向上させることとしている(図9参照)。
【0039】
接合部保護手段8は、トラップカバー7から排水ピット部材4に加わる力が床面部材3と排水ピット部材4との接合部(図5等において符号Cで示す)に伝わることを抑止するものである。このような接合部保護手段8の具体例は特に限定されるものではないが、本実施形態では、受け止め部81、接地部82、伝達部83を有する構成の接合部保護手段8を採用している(図5等参照)。
【0040】
受け止め部81は、排水ピット部材4の真下に配置され、該排水ピット部材4を受け止める部位として形成されている。例えば本実施形態では、洗い場床パンの排水口11周りの一部を内側に鍔のように突出させ、該突出部分を受け止め部81として機能させている(図5参照)。この受け止め部81には、壁部71を介して荷重Pが作用する。なお、ここでいう荷重Pとは、トラップカバー7の重量によるものの他、使用者や水の重量が加わった場合に作用するものも含む。
【0041】
接地部82は、排水ピット部材4の真下空間から離間した位置に設けられ、建築床100上に接地される部位として形成されている。例えば本実施形態では、洗い場床パンと建築床100との間に配置したいわば支(つっか)え棒のごとき部材を接地部82として機能させている(図5参照)。また、一般的な洗い場床1においては、排水ピット部材4の真下の空間に排水トラップ6や該排水トラップ6と接続される排水管12が配置されていることを考慮し(図3、図5等参照)、本実施形態では接地部82を排水ピット部材4の真下空間から離間した位置に設けることにより、接地部82が排水管12等と干渉することを回避して施工性の向上を図っている。
【0042】
伝達部83は、排水トラップ6および排水管12と干渉することなく受け止め部81で受けた力を接地部82に伝達する部位として形成されている。例えば本実施形態では、基材5における排水口11の周囲部分を、受け止め部81で受けた力を接地部82に伝達する部位として機能させている(図5等参照)。
【0043】
なお、上述の接地部82は、荷重Pを建築床100に逃がして接合部Cの剥がれや破損を抑止しうるものであればその個数や配置は特に限定されないが、例えば図6等に示すように板状架台の開口52、排水ピット部材4の外枠、排水口11さらにはトラップカバー7が矩形に形成されている場合には、これら接地部82を少なくとも四隅に配置することが好ましい。こうすることで、荷重Pをより均等に伝達して建築床100に逃がすことが可能となる。なお、図5等においては断面の切り口を特に定めていない。排水口11等が矩形であり、切り口が対角線に沿っているのであれば、図5等では対角の接地部82(のみ)を図示していることになる。
【0044】
ここまで説明したように、本実施形態の洗い場床1によれば、洗い場床パンの上に表面材2を設けていることから、外観意匠性や防水性の低い材質(例えば発泡床パン)を採用することが可能である。すなわち、従来のFRP製防水パンのような材料を用いずとも防水を備えた洗い場床1を構築することが可能となるため、他の製法により洗い場床1を成形することが可能になる等、洗い場床パンの材料や製法の選択肢が広がり、基材設計の自由度が大きくなる。
【0045】
また、本実施形態では、洗い場床1の表面材2を構成する床面部材3と排水ピット部材4とを別々に成形しているので(図4等参照)、床面部1aと排水ピット部Tとを当初から一体成形する製法ないし製品に比べ、床面部材3(およびこれによって構成される床面部1a)の設計自由度も大きくなる。したがって、表面材2の意匠設計の自由度を向上させることもできる。
【0046】
さらに、本実施形態では、別々に成形した床面部材3と排水ピット部材4とを接合するに際し、接合部保護手段8を設けているため、排水ピット部材4に加わる力(トラップカバー7の上に加わる使用者の荷重など)が、床面部材3と排水ピット部材4との接合部Cに伝わることを抑止し、当該接合部Cに無理な負荷がかからないようにすることが可能である。このため、床面部材3と排水ピット部材4とを接合して一体化した表面材2(当初から一体成形されたものではない表面材2)においても、接合部Cが剥がれたり破損したりするのを抑止し、漏水に繋がる可能性を長期にわたって極力排除することが可能である。
【0047】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、本実施形態では、トラップカバー7から排水ピット部材4に加わる力が床面部材3と排水ピット部材4との接合部Cに伝わることを抑止する接合部保護手段8の一形態を示したが(図5参照)、かかる形態は好適な一例にすぎない。
【0048】
以下、本発明の第2の実施形態として接合部保護手段8の他の例を示す(図10参照)。本実施形態では、接合部保護手段8の受け止め部81および伝達部83をフレーム状架台に形成している。こうした場合には、本発明にかかる洗い場床1において必須であるフレーム状架台の一部(例えば、開口52寄りに一体的に形成された段部)を、受け止め機能や伝達機能を発揮する部材として有効的に活用することができるので、洗い場床1の全体構成の簡略化につながる。さらに、本実施形態では、フレーム状架台を支持する支持脚(基材支持脚53)を接地部82として用いる(図10参照)。
【0049】
続いて、本発明の第3の実施形態として接合部保護手段8の他の例を示す(図11参照)。本実施形態では、排水ピット部材4のトラップカバー(カバー部材)7が載置される載置部(図11中において符号41で示す)の真下となる位置に受け止め部81を設けている。図11に示すように、この場合の受け止め部81は排水トラップ6の一部であってもよい。ここで、仮に受け止め部81が載置部41の真下に位置していないとすれば、そのぶん荷重位置と支持位置とがオフセットした状態(水平方向へずれた状態)となるから、排水ピット部材4自体に相当程度の剛性(変形を抑えつつ荷重を受け止めるだけの剛性)が必要になって設計自由度が小さくならざるを得ない。これに対し、本実施形態によればそのようなことを回避し、排水ピット部材4自体の剛性が高くない場合においても接合部Cに負荷がかかることを極力抑止することができる。
【0050】
また、上述のように、受け止め部81と伝達部83とが排水トラップ6に形成されている場合、排水トラップ6の底部から垂下形成され、建築床100上に接地されたトラップ支持脚を接地部82として用いることができる(図11参照)。このように排水ピット部材4の下部に配置された接地部82は、トラップカバー7から排水ピット部材4に加わる荷重Pを建築床100に伝達する。本発明において排水トラップ6は必須であり、当該必須の構成を利用して接合部保護手段8を構築することとすれば、洗い場床1の全体構成の簡略化を図ることができる。また、このような接合部保護手段8を用いることにより、排水ピット部材4の下方の浴室外空間(デッドスペース)を利用しつつ、排水ピット部材4に加わる力が接合部Cに伝わらないよう逃がすことが可能となる。
【0051】
引き続き、本発明の第4の実施形態として接合部保護手段8のさらに別の例を示す。上述した実施形態では、トラップカバー7から受ける荷重Pは基材5と排水トラップ6のいずれか一方のみに受け止められ伝達されていたが、本実施形態では排水トラップ6で受け止めた荷重Pを基材5を介して接地部82に伝達するようにしている(図12)。このような構成においては、排水トラップ6の一部と基材5とが直接または間接的に結合していることが好ましい。本実施形態では、排水トラップ6に水平方向に延在した鍔状のフランジ部63を形成しており、ビス等の締結手段64によって該フランジ部63を基材5の裏面に締結している(図12参照)。これによれば、基材5の開口52寄りの部分に段部などを形成することなく、尚かつ排水トラップ6の底部にトラップ支持脚(接地部)を設けることなく、接合部保護手段8を構築することができる。
【符号の説明】
【0052】
1:洗い場床
1a:床面部
2:表面材
3:床面部材
4:排水ピット部材
5:基材
6:排水トラップ
7:トラップカバー(カバー部材)
8:接合部保護手段
10:浴室ユニット
11:排水口
12:排水管
13:締付フランジ
41:優先溶解部
42:凹状ポケット
43:突起
81:受け止め部
82:接地部
83:伝達部
100:建築床
C:接合部
T:排水ピット部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室ユニットに組み込まれる洗い場床パンの上に積層される洗い場床用表面材であって、
上面に凹凸形状が形成され、洗い場床の床面部を構成する床面部材と、洗い場床の排水ピット部を構成する排水ピット部材とから構成されており、
前記床面部材の端部裏面に前記排水ピット部材の上端を熱融着によって接合一体化されており、
前記排水ピット部材における前記床面部材との接合部には、熱融着によって優先的に溶ける優先溶解部が一部のみに設けられていることを特徴とする洗い場床用表面材。
【請求項2】
前記優先溶解部は、前記接合部の両端部の中間位置に設けられていることを特徴とする請求項1記載の洗い場床用表面材。
【請求項3】
前記優先溶解部は、当該接合部全体に対して前記床面部材の裏面側に突出した突起であることを特徴とする請求項1または2記載の洗い場床用表面材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2012−207408(P2012−207408A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72664(P2011−72664)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】