説明

洗体装置

【課題】身体に障害がある人や身体に柔軟性がなくなった老人などでも浴室やシャワー室内でほとんど他の人が介護せずに一人で簡単に身体を洗うことができるとともに、維持管理も容易な洗体装置を提供することを目的としている。
【解決手段】身体洗浄具を浴室またはシャワー室の壁面に沿って支持する身体洗浄具支持部と、この身体洗浄具支持部に支持された状態で身体洗浄具の洗浄面を身体の洗浄部に沿う方向に運動させる駆動手段とを備えることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室あるいはシャワー室に設けられ、容易に身体を洗浄することができる洗体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
浴室やシャワー室において、身体を洗う場合、塗布した石鹸やボディシャンプーが泡立ちやすく、また、洗い流す際の泡切れがよいことからボディタオルやスポンジタワシ等が用いられている(特許文献1参照)。
上記のように、ボディタオルやスポンジタワシなどは、従来のタオルに比べ非常に使い勝手のよいものであるが、手に障害がある人や身体に柔軟性がなくなった老人などは、一人で背中などを洗うことは非常に難しい。
【0003】
一方、手を使わなくても身体を洗うことができるようにした装置として、スポンジ片等を混ぜた石鹸水をポンプで循環させてシャワー状にして身体に振りかけて身体を洗浄するようにした洗体装置が提案されている(特許文献2参照)。
しかしながら、上記の洗体装置の場合、上方からスポンジ片等を混ぜた石鹸水をポンプで循環させてシャワー状にして振りかけるだけであるので、十分な洗浄効果が期待できないとともに、肩部分のみしかスポンジ片による摩擦洗浄効果を望めない。また、スポンジ片の回収等を行なわなければならず、装置が複雑であるとともに、維持管理も非常に面倒である。
【特許文献1】実開平7-189号公報
【特許文献2】実開平7-25891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みて、身体に障害がある人や身体に柔軟性がなくなった老人などでも浴室やシャワー室内でほとんど他の人が介護せずに一人で簡単に身体を洗うことができるとともに、維持管理も容易な洗体装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の洗体装置(以下、「請求項1の洗体装置」と記す)は、身体洗浄具を浴室またはシャワー室の壁面に沿って支持する身体洗浄具支持部と、この身体洗浄具支持部に支持された状態で身体洗浄具の洗浄面を身体の洗浄部に沿う方向に運動させる駆動手段とを備えることを特徴としている。
【0006】
本発明の請求項2に記載の洗体装置(以下、「請求項2の洗体装置」と記す)は、請求項1の洗体装置において、身体洗浄具支持部が身体洗浄具を着脱自在な身体洗浄具の固定手段を備えていることを特徴としている。
【0007】
本発明において、身体洗浄具の洗浄面を身体の洗浄部に沿う方向に運動させるとは、洗浄しようとする身体に洗浄面を押し当てた状態で、身体を動かさなくても、身体の別の位置に当たるように連続移動する運動を意味し、たとえば、円運動、楕円運動、8の字運動、上下運動、水平運動、これらの運動の組み合わせが挙げられる。
身体洗浄具としては、特に限定されないが、たとえば、タオル、スポンジたわし、ブラシ等が挙げられる。
【0008】
身体洗浄具支持部は、壁面に沿って上下動可能にし、高さを変更できるようにしても構わない。すなわち、上下方向に位置を変更可能にすれば、大人と子供など身長差のある使用者でも使用可能となる。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、請求項1の洗体装置は、身体洗浄具を、身体洗浄具の洗浄面を所定範囲内で移動可能に浴室またはシャワー室の壁面に沿って支持する身体洗浄具支持部と、前記洗浄面を所定範囲内で連続移動運動させる駆動装置とを備えるので、駆動装置を駆動すれば、身体洗浄具の洗浄面が連続移動運動する。したがって、身体洗浄具の洗浄面に身体の洗浄したい部分を押し当てれば、身体を動かさなくても洗浄面の移動範囲で身体を洗浄することができる。すなわち、もたれかかるだけで背中の洗浄ができ、手足を押しつける事でその他の身体の部位も洗浄できるのでリラックスして浴室入浴、洗浄ができる。そして、身体に障害があり、洗浄具を手で持ったりすることができない人でもほとんど介護なしに身体を洗浄することができる。
【0010】
また、請求項2の洗体装置は、身体洗浄具支持部が身体洗浄具を着脱自在な身体洗浄具の固定手段を備えているので、身体洗浄具の交換が自在であるとともに、身体洗浄具を身体洗浄具支持部から取り外して洗濯等が可能で身体洗浄具をより清潔に保つことができる。また、身体洗浄具支持部の清掃も容易となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1〜図8は、本発明にかかる洗体装置の1つの実施の形態をあらわしている。
【0012】
図1に示すように、この洗体装置1は、洗体機2と、電源ボックス3と、防水リモートコントロール盤(以下、「リモコン」とのみ記す)4とを備えている。
洗体機2は、身体洗浄具支持部2aと、駆動装置としての低圧DC防水モーター(以下、「モーター」とのみ記す)2bとを備えている。
【0013】
身体洗浄具支持部2aは、図1および図2に示すように、基台部21と、回転部22と、固定手段としてのタオル係止リング23とを備えている。
基台部21は、浴室Bの壁面Wに固定され、後述するモーター2bの駆動軸(図示せず)にギヤ等を介して連結された回転軸(図示せず)を回転部22方向に突き出すように備えている。
【0014】
回転部22は、表面がゴム弾性体や連続気泡発泡体等で形成された断面凸面状をしていて、基台部21から突き出た前述の回転軸が回転部22の裏面でその中心に固定されていて、回転軸の回転によって回転軸を中心にして一定方向に回転運動するようになっている。
【0015】
タオル係止リング23は、金属や合成樹脂によって形成され、回転部22の基台部21側の端部の外径と略同じ内径をしている。
すなわち、タオル係止リング23は、図2に示すように、回転部22に身体洗浄具としてのタオルTを被せた状態で、タオルTの周囲を回転部22との間に挟んだ状態で回転部22の基台部21側の端部に外嵌されることによってタオルTが回転体表面を覆った状態で固定でき、回転部22への嵌合を解除すれば、タオルTが回転体22から取り外せるようになっている。
なお、タオルTは、綿のタオルでも構わないし、合成樹脂製のタオルでも構わない。
【0016】
リモコン4は、図3に示すように、電源ボタン41と、モーター2bの低速高速切り替えボタン42とを備えている。
【0017】
電源ボックス3は、浴室Bの天井裏に設置されていて、図4に示すように、内部に洗体機専用漏電遮断器31と、低圧変換絶縁トランスを含む電源部32と、制御用ワンチップマイコン33と、PI/O(パラレルI/O)34と、モーター用直流ドライバー35と、過負荷検知A/Dコンバーター36とを備えていて、家庭用引き込み線からAC100Vが給電されるようになっている。
【0018】
洗体機専用漏電遮断器31は、7mA以上の漏電を検知すると、洗体機2への給電を停止するようになっている。
低圧変換絶縁トランスを含む電源部32は、AC100Vを低圧の直流にして、制御用ワンチップマイコン33と、PI/O34と、モーター用直流ドライバー35と、過負荷検知A/Dコンバーター36とにそれぞれ給電するようになっている。
【0019】
モーター用直流ドライバー35は、モーター2bと電気的に接続されている。
PI/O34は、信号線(図で鎖線で示す)を介してリモコン4、過負荷検知A/Dコンバーター36、モーター用直流ドライバー35、および、制御用ワンチップマイコン33にそれぞれ接続されている。
【0020】
つぎに、この洗体装置1の使用方法および動作について、詳しく説明する。
まず、図2に示すように、タオルTを回転体22に固定したのち、タオルTにボディシャンプー等の液体洗剤あるいは固形洗剤を塗布する。
次に、電源がOFFの状態でリモコン4の電源ボタン41が押されると、モーター2bが回転駆動する。すなわち、電源ボタン41が押されると、図5のフローチャートに示すように、制御用ワンチップマイコン33からの制御信号によってモーター2bが回転駆動し、回転体22が回転する。そして、回転開始から5分間経過すると、制御用ワンチップマイコン33からの制御信号によってモーター2bが停止するようになっている。また、過負荷検知A/Dコンバーター36によってモーター2bにかかる過負荷が所定以上あると検知されると、すなわち、モーター2bに一定以上のトルクがかかると、制御用ワンチップマイコン33からの制御信号によってモーター2bが停止するようになっている。
【0021】
一方、モーター2bの回転中にリモコン4の低速高速切り替えボタン42が押されると、図6のフローチャートに示すように、モーター2bが速い回転速度から遅い回転速度あるいは遅い回転速度から速い回転速度に切り替わるようになっている。
【0022】
この洗体装置1は、以上のように、回転体22の回転に伴ってタオルTが回転するようになっているので、図7に示すように、浴用椅子Cに座り、背中をタオルTに押し当てるようにすれば、背中のタオルTに当たっている部分が洗浄できる。また、図示していないが、浴用椅子Cに座った状態で横を向き、腕や肩の部分を押し当てれば、腕や肩の部分も洗浄できる。また、図8に示すように、立ち上がって、足の部分を押し当てれば足の部分も洗浄することができる。
すなわち、この洗体装置1によれば、タオルTをセットし、洗剤を噴霧または塗布する、あるいは、浴用椅子Cに座らせるなどの少しの介護で、手足の不自由な身体障害者やお年寄りでも自分自身で身体洗浄できる。また、マッサージ効果もあり、健常者であっても心地よく身体を洗浄することができる。
【0023】
また、この洗体装置1は、モーター2bによって回転体22を回転させるだけであるので、構造が簡単である。
しかも、この洗体装置1は、回転は安全を考えて直流低圧電圧のモーター2bを使用し、一定トルク以上の力がかかると自動停止する安全機構および7mAの漏電で停止する安全機構を設けたので安全性が高い。
【0024】
本発明は、上記の実施の形態に限定されない。たとえば、上記の実施の形態では、タオルTに液体洗剤あるいは固形洗剤を塗布するようになっていたが、液体洗剤の場合、洗剤の塗布の手間を省くために、図9に示すように、ポンプ(図示せず)付きの洗剤タンク5を壁面に取り付け、電源ボタン41が押されると同時に洗剤タンク5のポンプがたとえば5秒程度作動して、洗剤タンク5内の液体洗剤をノズル51から回転体22にセットされたタオルTに滴下できるようにしても構わない。また、図示していないが、回転体22内部側からタオルTに液体洗剤6を供給できるようにしても構わない。
【0025】
上記の実施の形態では、洗体機2の基台部21が壁面Wに固定されていたが、図10に示すように、壁面WにレールRを固定し、基台部21をこのレールRに沿って上下方向にスライド自在にするとともに、昇降スライドバー25を持って所望の高さまで洗体機2をスライドさせ、図示していない固定手段によって好みの高さ位置に固定できる構造としても構わない。
なお、このような構造とした場合、壁面の止水性を考慮すると、回転体22を回転させるモーター2bは、基台部21に内蔵させることが好ましい。また、固定手段としては、たとえば、基台部21に設けたねじを締めこむことによって、レールRの一部を挟持して固定し、ねじを緩めることによってレールRの挟持が解除されるような構造が挙げられる。
【0026】
さらに、上記のように上下にスライド可能とする構造においては、バネ等によって、洗体機2を常に上方に付勢しておき、軽い力で洗体機2をスライドできるようにしたり、昇降モーターを取り付けてリモコン操作によって洗体機2を昇降できるようにしても構わない。なお、昇降モーターを取り付けた場合、子供などの安全を考慮して不使用時に子供が洗体機2に触れることができないようにレールRの最上部まで上がるような構造としても構わない。また、小さな子供のいたずら事故防止でリモコン4にチャイルドロックスイッチを設けるようにしても構わない。
【0027】
上記の実施の形態では、回転部22を電動のモーター2bで回転させるようになっていたが、電動のモーター2bの代わりに、小型エアーコンプレッサーを使用してエアーツールによる回転としても良い。また、インパクトドライバのように振動を与えながら回転させるようにしても構わない。さらに、回転は正回転 逆回転を繰り返しても良い。回転洗浄の代わりに低速往復振動で洗浄する機構でもよい。この場合、垂直方向振動と水平方向振動が切替できるようにしてもよい。
【0028】
上記の実施の形態では、身体洗浄具がタオルであったが、タオルは市販のものでも専用のものでも構わない、また、タオルに代えて、ブラシやスポンジたわしでも構わない。
上記の実施の形態では、回転部22の回転速度が低速と高速の2段階切り替え式となっていたが、切り替えなしの定速でも構わないし、多段階あるいは無段階の切り替え式としても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明にかかる洗体装置の1つの実施の形態であって、その浴室への取り付け状態の浴室断面を模式的に説明する図である。
【図2】図1の洗体装置の回転体にタオルを装着する方法を説明する説明図である。
【図3】図1の洗体装置のリモコンの正面図である。
【図4】図1の洗体装置の配線を説明するブロック図である。
【図5】回転体の動きを説明するフローチャートである。
【図6】回転体の速度変換時の動きを説明するフローチャートである。
【図7】図1の洗体装置の背中を洗浄する使用例を説明する説明図である
【図8】図1の洗体装置の足の部分を洗浄する使用例を説明する説明図である
【図9】本発明にかかる洗体装置の他の実施の形態であって、その洗剤タンク部分の浴室断面を模式的に説明する図である。
【図10】本発明にかかる洗体装置の他の実施の形態であって、その洗体機部分の正面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 洗体装置
2 洗体機
2a 身体洗浄具支持部
2b モーター(駆動手段)
21 基台部
22 回転部
23 タオル係止リング
3 電源ボックス
4 リモコン
T タオル(身体洗浄具)
B 浴室
W 壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体洗浄具を浴室またはシャワー室の壁面に沿って支持する身体洗浄具支持部と、この身体洗浄具支持部に支持された状態で身体洗浄具の洗浄面を身体の洗浄部に沿う方向に運動させる駆動手段とを備えることを特徴とする洗体装置。
【請求項2】
身体洗浄具支持部が身体洗浄具を着脱自在な身体洗浄具の固定手段を備えている請求項1に記載の洗体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−125578(P2008−125578A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−311042(P2006−311042)
【出願日】平成18年11月17日(2006.11.17)
【出願人】(501362906)積水ホームテクノ株式会社 (89)
【Fターム(参考)】