説明

洗浄インジケータ、関連する検査体及び洗浄プロセス検査方法

洗浄プロセスを検査するための洗浄インジケータは、洗浄プロセスの細分化された段階的評価を可能にする。このために、洗浄インジケータ(1)は、1つの共通な基板上に形成されていて洗浄プロセスの洗浄作用に依存してその特性を変化させる複数のインジケータエレメント(2,3,4,5,6)を備えている。この洗浄作用への依存性が個々のインジケータエレメント(2,3,4,5,6)について、それぞれ異ならせて、選択されている。更に、このために特に適した検査体が提供される。更に、達成された洗浄効果の細分化された決定及び検査を可能にする洗浄プロセスの検査方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄プロセスを検査するための洗浄インジケータに関する。更に本発明は、関連する検査体及び洗浄プロセスを検査するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
洗浄プロセス、特に研究所や病院で行なわれる機械による洗浄プロセス、は、例えば医療器具又は実験器具から、部分的には非常に頑固な汚れ及び付着物を除去するために役立っている。洗浄は、一般に、家庭における通常の自動食器洗い機に動作が似ている自動洗浄機内で行なわれる。これらの装置は洗浄・消毒装置(RDG)と呼ばれる。この装置は、場合によっては消毒ステップと組み合わされて、(予備洗浄、洗浄、消毒、すすぎ)による種々の洗浄経過を経る。再使用可能な医療器具及び実験器具、特に外科用器具、は、付加的に使用前に殺菌されなければならない。無菌用途の場合には、殺菌した道具、器具又は器材の使用が強制的に必要である。このために、洗浄プロセスの後に殺菌プロセスが続く。
【0003】
洗浄プロセスが成功したかどうかを判定するために、例えばいわゆるテスト用汚れを含んだ、インジケータが使用される。通常、これらのインジケータは、洗浄すべき装入物の汚れを模擬した適切な材料からなる膜から成り、耐水性の基板材料の上に塗布されている。通常の場合、これらの膜は着色されている。必要に応じて、塗膜に適した材料、例えば血液成分、蛋白質、多糖類(Polysaccharide)、多糖類(Polyzucker)、乳蛋白質が使用される。合成のテスト用汚れは、例えば特許文献1から、公知である。
【0004】
様々な汚れにより、洗浄プロセスの洗浄効果又は洗浄能力に様々な要求がなされる。それゆえ、洗浄プロセスの効率は、汚れの種類に依存する。洗浄効果は、この関連において、例えば、継続時間、温度、圧力、噴射状況、洗浄化学物質及びその他の洗浄パラメータの相互作用からもたらされる、統合された量として与えられる。
【0005】
この種のインジケータを使用する場合には、洗浄プロセスがインジケータ基板の視覚的なテストによって、インジケータ物質が完全に洗い流されたどうかがか確認される。今日市販されている洗浄インジケータは、洗浄過程中の条件及び到達された洗浄結果に関して、より正確な又は段階的なデータ表示が可能でない。なぜならば、従来は、いかなる基準設定もなかったからである。
【0006】
規格シリーズ「EN ISO 15883」は、洗浄及び殺菌というテーマを完全に一般的に扱っている。当然のことながら、これは具体的な検査方法を記載していない。技術情報「EN ISO 15883−5」には、約30個の様々な検査用汚れが一覧表に纏められている。しかし、この関連において洗浄プロセス中におけるこれらの塗膜の除去の困難度に関する記載はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許第0886778号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、細分化された再現可能な、洗浄プロセスの検査を可能にする洗浄インジケータを提供することにある。更に、そのために適した検査体が提供される。そのうえ、到達された洗浄結果を細分化して決定し検査することを可能にする、洗浄プロセスを評価又は検査するための方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
洗浄インジケータに関して、この課題は、本発明によれば、洗浄インジケータが、1つの共通な基板上に形成されている多数のインジケータエレメントを備え、これらのインジケータエレメントが洗浄プロセスの洗浄効果に依存してその特性を変化させ、その洗浄効果への依存性が個々のインジケータエレメントごとにそれぞれ異なって選択されていることによって解決される。これは、特に、個々のインジケータエレメントが様々な感度で洗浄プロセスの出力に反応することを意味する。
【0010】
本発明の有利な実施態様は従属請求項の対象である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、第1の表示を有する洗浄インジケータを示す平面図である。
【図2】図2は、第2の表示を有する図2による洗浄インジケータの平面図である。
【図3】図3は、図1及び図2による洗浄インジケータが使用されている検査体の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、洗浄プロセスがそれの洗浄能力によって特徴付けられるという考えから出発している。除去すべき汚れの特性や洗浄の徹底性に対する要求に、それぞれ、洗浄能力を適合させなければならない。一方では、汚れが実際に除去されることを保証し、他方では、洗浄能力に関して少ない要件のもとで、材料、エネルギ及び時間を効果的に節約すればよいというだけのことである。その際に、典型的には研究所及び病院で行なわれるような洗浄プロセスにおいては、洗浄能力に対する様々な要求を伴う様々な汚れが同時に生じて、これらが除去されなければならないことに留意すべきである。
【0013】
従って、実際の要件に対して洗浄能力を狙いどおりに適合させることを可能にするためには、或いは、洗浄プロセスの終了後にその結果を検査することを可能にするためには、達成された洗浄結果を定性的に表示するだけでなく、更にできるだけ簡単な方法でそれの定量化を可能にする効果的な検査方法が必要である。このような定量化は、できるだけ再現可能であって、恣意的な評価の余地がないようにしなければならない。今や明らかになったように、この要求は、これまでに知られている洗浄インジケータによれば、不十分にしか満たされない。市販のインジケータは、基準汚れを欠くゆえに、全く異なった特性を有し、従って洗浄プロセスの洗浄能力を検査する際に、異なっていて対比することができない結果を伝える。従って、達成された洗浄効果の細分化された段階的評価が、較正可能な基準測定の意味において不可能である。
【0014】
洗浄インジケータは、洗浄能力の段階的な表示及び評価に関する上述の欠点を回避するように、設計されなければならないという認識から出発して、洗浄インジケータが1つの基板上に形成された複数のインジケータエレメントを備え、これらのインジケータエレメントが同時に同じように洗浄プロセスに曝されて、重要な洗浄パラメータに対していわば異なった感度又は感受性で反応又は応答することを考慮しなければならない。その際に、インジケータエレメントの特性又は状態は、洗浄プロセスの洗浄効果に依存して変化する。この依存性、つまり重要な洗浄パラメータ又は全体の洗浄能力に関する感度が個々のインジケータエレメントについてそれぞれ異なって設計されていること−これは、例えば物理的又は化学的な構造パラメータの適切な変化により又はインジケータ物質の適切な材料選択により実現可能であるのだが−によって、これらのインジケータエレメントが同一の洗浄過程において異なった方法で及び/又は異なった強さで反応する。何個のインジケータが又はインジケータがどの程度、1つの洗浄プロセスにおいて、それらの特性を変化させたかに応じて、離散的評価様式でプロセスの洗浄能力を推定することができる。従って、洗浄能力に関して段階的な検証、即ち定量的に段階付けした検証、が可能になる。このような定量化に基づいて個別の洗浄プロセスを評価し、それらの洗浄プロセスの能力段階を適用事例に適合させることができる。従って、洗浄装入から洗浄装入までの1つのプロセスの洗浄能力の変化が認識可能である。異なった能力段階を用いた試験により、較正された参照データを得ることができ、これを後で、洗浄プロセスの評価又は試験に援用することができる。個々のインジケータエレメントの特性変化がそれぞれ異なった表示をもたらし、その表示が洗浄効果の評価のために利用される。
【0015】
好ましい実施態様においては、洗浄効果が予め与えられた目標値に達するや否や、インジケータエレメントがその特性を変化させる。個々のインジケータエレメントには、それぞれ異なる目標値が割り当てられている。多くの場合、洗浄効果が或る特定の目標値に到達し、それにより或る特定の閾値に到達したか又は上回ったか若しくは下回ったかどうかということに関心がある。従って、この実施態様においては、いわば、洗浄効果の定量化された検出が可能である。
【0016】
この場合、インジケータエレメントが、それらの目標値に関して順序よく並べられていて、例えば昇順又は降順で、前後に並べて又は上下に重ねて配置されているとよい。更に、必要に応じて、その他の配置も選ぶことができる。適切で且つ必要に応じて適合させられたインジケータエレメントの配置は、インジケータエレメントの観察による洗浄プロセスの迅速かつ有効な判断又は評価を可能にする。
【0017】
洗浄溶媒としては、水又は適切な化学的組成を有する洗浄溶液のような液体が使用可能である。しかし、必要に応じてその他の選択をすることもでき、それは、例えば洗浄溶媒が蒸気状態にある蒸気洗浄の場合である。
【0018】
特性の変化は、不可逆的な方法で行なわれるのが好ましい。かくして、洗浄経過の終了後に、確実に、インジケータエレメントの少なくとも1つに反応した予め設定された洗浄効果又は洗浄能力が、洗浄プロセス中に少なくとも一時的に到達されたことを検出できる。インジケータエレメントが、例えば、或る特定の洗浄能力の到達時に不可逆的に変化するように設計されていて、その洗浄プロセス中に少なくとも1つのインジケータエレメントが変化しなかった場合には、その洗浄プロセスの最大の洗浄効果が推定できる。
【0019】
インジケータエレメントの特性変化が色変化を含むとよい。インジケータエレメントの特性変化及びそれに伴う色変化が視覚的に認識可能であるならば、洗浄経過の終了後に洗浄インジケータを観察することによって僅かな費用で洗浄効果の評価を達成することができる。
【0020】
インジケータエレメントの特性変化は、洗浄プロセスにおいて使用される洗浄溶媒中でのインジケータエレメントの溶解を含んでいることが好ましい。これは、例えば、それらのインジケータエレメントの洗浄溶媒に対する可溶性が異なっていることを意味する。インジケータエレメントの溶解は、簡単な方法で確認することができる。特にインジケータエレメントが適切に配置されている場合には、洗浄能力の視覚的検査を迅速に行なうことができる。
【0021】
インジケータエレメントは、基板に対するそれぞれの化学的架橋又は付着性が異なっているとよい。この方法で、インジケータエレメントの異なる状態変化、例えば洗浄溶媒に対するインジケータエレメントの異なる溶解特性、を実現することができる。更に、それらのインジケータエレメントの塗布厚又は空間的寸法が互いに異なっているとよい。特に、インジケータエレメントが点又は縞の形で基板上に形成されているとよい。
【0022】
洗浄効果に関する細分化された検証は、インジケータエレメントを前後に並べて及び/又は上下に重ねて印刷して基板上に付着させた場合に達成することができる。基板上でのインジケータエレメントの横方向配置は、インジケータエレメントの特性及びそれに伴ってインジケータエレメントの表示に関して、全体を見通すことを可能にし、従って洗浄効果の迅速な検査を可能にする。インジケータエレメントが上下に重ねられて基板上に付着させられ、この方法でいわば束を形成している場合には、洗浄能力に関する検証が別の方法で達成される。インジケータエレメントを、例えば洗浄能力が低下していくように互いに重ねて付着させ、これらのインジケータエレメントが洗浄溶媒中で該当洗浄能力に到達した際に溶解するようにした場合には、洗浄プロセス後に基板上になおも存在するインジケータエレメントに基づいて洗浄能力を決定することができる。なおも残っているインジケータエレメントの膜厚は、いわば到達された洗浄能力の尺度として利用することができる。このとき、インジケータエレメントを前後に並べて又は上下に重ねて基板上に付着させた配置を組み合わせることが有利である。
【0023】
更に、インジケータエレメントを異なる順序で上下に重ねて基板上に付着させるのが有利であることが分かった。インジケータエレメントのこれらの束のそれぞれが、洗浄効果に対する異なった要求に対応し、それに応じて異なった表示をもたらす。例えば、1つの束において一番上に印刷されたインジケータエレメントが洗浄能力に対する最高の要求に対応する場合に、当該インジケータエレメントが溶解してその下にあるインジケータエレメントが溶解することができるためには、この洗浄能力が到達されなければならない。このようにして、その束が完全に溶解した際に、当該洗浄能力が到達されたことを確実に立証することができる。それぞれ異なる順序でインジケータエレメントが印刷されている共通基板上の複数のこのような束によって、確実な方法で、洗浄プロセスにおいて生じた洗浄効果を推定することができる。全ての束において全てのインジケータエレメントが溶解したならば、大きな信頼性でもって全ての所望の洗浄能力又は洗浄効果が達成されている。
【0024】
インジケータエレメントは、本発明によれば、1つの共通な基板上に形成されている。この形成は、標準的印刷法によって実行可能である。特に、オフセット印刷、フレキソ印刷又はスクリーン印刷が好適である。印刷方法での製造によって、複数の異なるインジケータエレメントを相前後して基板上に印刷することができ、それにより、洗浄インジケータの安価で簡単に再現可能な製造が可能となる。基板は、耐水性材料から成るのが有利であり、特に、それには、紙・プラスチック積層板、金属箔又は金属箔積層板が適している。
【0025】
インジケータエレメントが、2個から10個までの間、特に5個、のインジケータエレメントを備えているとよい。インジケータエレメントの個数は、需要と、洗浄経過及び実行される洗浄能力を決定すべき溶解性又は精度とに合わされる。
【0026】
検査体に関しては、検査体が洗浄溶媒のための障害物とそれに結合された検出器容積部とを備えることによって、前記課題が解決される。このときに、検出器容積部は、本発明による洗浄インジケータを収容する。
【0027】
検査体又は検査体システムは、有利には、洗浄プロセスの洗浄能力を検査するために使用される。この種の検査体システムの場合には、複雑な器具の比較的アクセスしにくい内部表面を適切なモデルによって模擬し、このモデルを用いて、洗浄処置の成果を比較的複雑な器具に関しても類似の方法で審査することができる。この種のシステムを使用する際に、生じた洗浄効果が検査体内に取り付けられた洗浄インジケータによって表示される場合には、−事情によっては適切に選択された確実性上積み分を勘案して−、洗浄すべき器具内において器具内部表面のアクセスしにくい個所でも洗浄溶媒との十分な接触が行なわれなければならないということから出発するのがよい。
【0028】
検査体が中空体として形成されているとよい。この場合に、検出器容積部及び障害物は、検査体の材料で囲まれている。洗浄インジケータは、外装の内部の検出器容積部内にある。障害物及び/又は検出器空間を管状部材として構成するならば、格別に有利であることが分かった。洗浄インジケータ−検出器ともみなし得るが−は、入口側で、洗浄溶媒のための入口端に開放保持された、適切な長さを有する管状体に結合されている。管状体又は中空体は、洗浄を予定している器具における内部表面に似せて構成した状況のモデルを形成する。
【0029】
検査体は、有利には、異なる断面積及び/又は容積を備えた複数の管状部を有する。これの動機付けは、通常の検査体の場合には、高い検出感度が、相応に大きな寸法を有する障害物によってしか、従って、まさにコンパクト性を犠牲にしてしか達成できないことにある。従って、コンパクトな構造のためには、検出器容積部への洗浄溶媒の導入装置が多段式に装備されるべきである。これらの段のそれぞれは、異なる断面積を有する。この場合に、断面積に応じて、圧力及び流速が変化する。従って、断面積が増加する場合、自動的に流速が低下し、それに伴って機械的な洗浄能力が低下する。従って、困難な洗浄条件を模擬することができる。
【0030】
中空の検査体がカラムクロマトグラフィにおいてしばしば使用されるような通流可能なバルク材を備えている場合には、バルク材が洗浄インジケータで覆われてもよい。バルク容積部における洗浄インジケータの検出は、バルク容積部を空にするか又は検査体の壁を透明にするかのいずれかによって達成することができる。検査体の障害物は、少なくとも2段に、場合によっては更に多段に、構成されており、このとき、それらの段は、寸法が、つまり特にそれぞれの容積及び/又は断面積が、互いに異なっている。検出器容積部に直接的に隣接している段は、処理を必要とする器具における特別にアクセスし難い内部表面へのアクセス性を模擬するために、使用されるとよい。
【0031】
一般に、検査体は、必要に応じて、頑丈な器具及び/又は中空体の特性を模擬し得るように形成されていることが好ましい。種々の検査体を使用することによって、様々な流動条件、噴射陰、RDGにおける装入部及び装入補助部の他の特徴的な影響を模擬することができる。
【0032】
方法に関しては、前記課題は、洗浄インジケータが、検査体内で又は検査体なしで洗浄プロセスに曝され、洗浄プロセスの終了後に、洗浄インジケータが評価ユニットに導入され、その評価ユニットが、洗浄プロセスによるインジケータエレメントの特性変化を、分析し、その分析データから洗浄プロセスにより達成された洗浄効果の特性値が導き出されることによって、解決される。
【0033】
更に、この特性値が評価ユニットに転送される。出力ユニットが、その特性値を所望のフォーマット又は適切な表示で出力する。この場合に、例えば数値及び/又は視聴覚信号の出力が可能である。その際に、出力はディスプレイ上で行なわれ、印刷プロセスを実行に移し、又は音声出力により行なわれる。
【0034】
方法の好ましい実施態様においては、洗浄プロセス後のそれぞれのインジケータエレメントの特性が、基準データに基づいて、洗浄プロセス前のインジケータエレメントの元の特性と比較される。その際に、基準データは、例えば記憶された呼び出し可能な形で存在する。更に、基準データが前段階において較正されているとよい。特に、較正された基準データを取り入れることによって、洗浄プロセスの定量的な段階分け及び評価が可能となる。
【0035】
この方法は、例えば、洗浄プロセス終了後に、評価ユニットによって、洗浄プロセスの際に特性が変化したインジケータエレメントの個数が決定されることによって行なわれる。この個数から、達成された洗浄効果を特徴づける特性値を形成することができる。洗浄プロセスの或る特定の条件のもとでのインジケータエレメントの挙動が既知であり、特に較正された基準データが存在する場合には、例えば、特性が変化したインジケータエレメントの個数を、較正によって既知である洗浄能力の領域上に描出することができる。
【0036】
評価ユニットにおけるインジケータエレメントの特性分析は、コンピュータ支援された方法によって実現することができる。インジケータエレメントが洗浄溶媒内で溶解するように設計されている場合には、パターン認識アルゴリズムによって、例えば明るい面と暗い面との識別によって、どのインジケータエレメントが溶解したかを決定することができる。インジケータエレメントが色変化をするように設計されている場合には、自動的な色認識によって、インジケータエレメントの状態を評価することができる。この場合に、光のUV又は赤外線領域における色変化は、これらの波長領域に対して設計されたセンサにより検出することができる。
【0037】
1つ又は複数の洗浄インジケータは、場合によっては適切な検査体と組み合わされて、評価ユニット及び、必要ならば、出力ユニットと共に、洗浄プロセスの洗浄能力を測定するための測定システムとして理解することができる。
【0038】
本発明により達成される利点は、特に、1つの共通な基板上で洗浄プロセスに対して異なって反応する多数のインジケータエレメントによって、洗浄能力に関する段階的な検証が可能にされることにある。それによって、洗浄プロセスを個別に要求に適合させ、物質的資源、エネルギ資源及び時間的資源を節約することができる。インジケータエレメントの特性変化の種々の可能性によって、本発明によれば、洗浄インジケータを柔軟に使用し、個々に検査出力に適合させることができる。それに加えて、検査体への洗浄インジケータの挿入により、異なった性質の器具に関して洗浄能力の分析が可能になる。
【0039】
図面に基づいて実施例を説明する。図面には非常に概略化された図が示されている。
【0040】
全ての図において同一の部分には同一の符号が付されている。
【0041】
図1に示された洗浄インジケータ1は、5個のインジケータエレメント2,3,4,5,6を備えている。これらのエレメントは共通な基板8の上に形成されている。この場合に洗浄インジケータ1は、それの元の特性、即ち洗浄プロセス前の特性を持ち、従ってそれの元の表示を有していなければならない。5個のインジケータエレメント2,3,4,5,6は、それらが洗浄プロセスにおいて使用される洗浄溶媒内で異なる溶解性を有するように設計されている。洗浄プロセスの洗浄効果がインジケータエレメント2,3,4,5,6に割り当てられた目標値に達した場合に、それぞれのインジケータエレメント2,3,4,5,6が完全に溶解することが予定されている。この例において、インジケータエレメント2,3,4,5,6は、洗浄効果に関する感度が左側から右側に向かって上昇するように基板8上に配置されている。必要に応じて他の配置可能性も考えられるし、それは好ましいことである。インジケータエレメント2,3,4,5,6は、或いは、例えば降順に配置してもよいし、あるいは前後に並べて配置する代わりに上下に重ねて配置してもよい。
【0042】
図2は、洗浄プロセス後の洗浄インジケータ1の有り得る表示を示している。インジケータエレメント2,3,4は、基板8から剥がれている。インジケータエレメント5,6は、まだ完全に存在している。従って、この例では、洗浄プロセス中において、インジケータエレメント4に割り当てられた目標値とインジケータエレメント5に割り当てられた目標値との間にある洗浄プロセスの1つ又は複数のパラメータが到達されなかったことを推定することができる。そのように構成されたインジケータエレメントの状態変化が事前にテスト洗浄プロセスにおいて較正されているならば、達成された洗浄効果に関して定量的にデータ化することができる。
【0043】
洗浄インジケータ1を収容すべく設計されている検査体10が図3に示されている。検査体10は、洗浄溶媒のための障害物12と流入端部14とを備え、この流入端部を通して洗浄溶媒が流入する。検出器容積部とも呼ばれる管状部16が洗浄インジケータ1を収容する。検査体10は、管状部16,18,20から構成されており、それらの断面積は、洗浄インジケータ1からの距離が増すにつれて増大する。もちろん、この種の3段構成に補足して、なおも他の段を直列接続してもよいし、又は1段又は2段構成が用意されてもよい。様々な部分の個数及び寸法の選択によって、様々な形態で洗浄プロセスの様々な条件及び器具の様々な特性を模擬し、テストすることができる。検査体は、同じ又は異なる構成の複数の洗浄インジケータを収容するように設計されていてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1 洗浄インジケータ
2,3,4,5,6 インジケータエレメント
10 検査体
12 障害物
14 流入端部
16 検出器容積部
18,20 管状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの共通な基板上に形成されていて洗浄プロセスの洗浄効果に依存して特性を変化させる複数のインジケータエレメント(2,3,4,5,6)を備え、この洗浄効果に関する感度が個々のインジケータエレメント(2,3,4,5,6)についてそれぞれ異ならせて選択されている洗浄プロセスを検査するための洗浄インジケータ(1)。
【請求項2】
洗浄効果が予め与えられた目標値に到達するや否やインジケータエレメント(2,3,4,5,6)がその特性を変化させ、個々のインジケータエレメント(2,3,4,5,6)にそれぞれ異なる目標値が割り当てられている請求項1記載の洗浄インジケータ(1)。
【請求項3】
インジケータエレメント(2,3,4,5,6)がそれらの目標値に関する順序で並べられている請求項2記載の洗浄インジケータ(1)。
【請求項4】
特性の変化が不可逆的である請求項1乃至3の1つに記載の洗浄インジケータ(1)。
【請求項5】
特性の変化が色変化を含み、視覚的に検知可能である請求項1乃至4の1つに記載の洗浄インジケータ(1)。
【請求項6】
特性の変化が、洗浄プロセスにおいて使用される洗浄溶媒中におけるそれぞれのインジケータエレメント(2,3,4,5,6)の溶解を含む請求項1乃至4の1つに記載の洗浄インジケータ(1)。
【請求項7】
インジケータエレメント(2,3,4,5,6)が基板に対して異なる付着性を有する請求項1乃至6の1つに記載の洗浄インジケータ(1)。
【請求項8】
インジケータエレメント(2,3,4,5,6)が異なる塗布厚を有する請求項1乃至7の1つに記載の洗浄インジケータ(1)。
【請求項9】
異なる特性を有するインジケータエレメント(2,3,4,5,6)が基板上に前後に並べて及び/又は上下に重ねて印刷されて配置されていて、それにより洗浄効果に関する細分化された検証を可能にする請求項1乃至8の1つに記載の洗浄インジケータ(1)。
【請求項10】
異なる特性を有するインジケータエレメント(2,3,4,5,6)が、洗浄効果への異なる要求が生じるように、基板上に異なる順序で上下に重ねて印刷されて配置されている請求項1乃至9の1つに記載の洗浄インジケータ(1)。
【請求項11】
インジケータエレメント(2,3,4,5,6)が、標準的印刷法、特にオフセット印刷、フレキソ印刷又はスクリーン印刷により、基板(8)上に塗布されている請求項1乃至10の1つに記載の洗浄インジケータ(1)。
【請求項12】
基板(8)がプラスチック、耐水性の紙・プラスチック積層体、金属箔又は金属箔積層体から成る請求項1乃至11の1つに記載の洗浄インジケータ(1)。
【請求項13】
2乃至10個のインジケータエレメント(2,3,4,5,6)を備えた請求項1乃至12の1つに記載の洗浄インジケータ(1)。
【請求項14】
請求項1乃至13の1つに記載の洗浄インジケータ(1)を収容する、洗浄プロセスの洗浄効果を検出するための検出器容積部を備えた検査体(10)。
【請求項15】
中空体として形成されている請求項14記載の検査体(10)。
【請求項16】
複数の管状部を有する請求項15記載の検査体(10)。
【請求項17】
通流可能なバルク材を備えている請求項15又は16記載の検査体(10)。
【請求項18】
洗浄インジケータ(1)が直接的にバルク材の上に設けられている請求項17記載の検査体(10)。
【請求項19】
検査体の開放及び洗浄インジケータ(1)の取り出しなしに検査結果が検出可能であるように検査体が透明材料から成る請求項15乃至18の1つに記載の検査体(10)。
【請求項20】
異なる断面積及び/又は容積を備えた複数の容積部分を有する請求項15乃至19の1つに記載の検査体(10)。
【請求項21】
濾過器状に形成されている請求項14記載の検査体(10)。
【請求項22】
列を含んでいる請求項14記載の検査体(10)。
【請求項23】
請求項1乃至13の1つに記載の洗浄インジケータ(1)が請求項14乃至22の1つに記載の検査体(10)内で又は検査体なしで洗浄プロセスに曝され、洗浄プロセスの終了後に洗浄インジケータ(1)が評価ユニットに導入され、その評価ユニットが洗浄プロセスによるインジケータエレメント(2,3,4,5,6)の特性変化を分析し、その分析データから洗浄プロセスにより達成された洗浄効果の特性値が導き出される洗浄プロセスを検査するための方法。
【請求項24】
洗浄プロセス後のそれぞれのインジケータエレメント(2,3,4,5,6)の特性が、記憶された及び/又は較正された基準データに基づいて、洗浄プロセス前のインジケータエレメント(2,3,4,5,6)の元の特性と比較される請求項23記載の方法。
【請求項25】
洗浄プロセス後に特性が変化したインジケータエレメント(2,3,4,5,6)の個数に依存して前記特性値が確定される請求項23又は24記載の方法。
【請求項26】
インジケータエレメント(2,3,4,5,6)の特性が色認識及び/又はパターン認識のためのコンピュータ支援方法により分析される請求項23乃至25の1つに記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−517007(P2012−517007A)
【公表日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548604(P2011−548604)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際出願番号】PCT/EP2010/000686
【国際公開番号】WO2010/089112
【国際公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【出願人】(511192171)
【Fターム(参考)】