説明

洗浄タンク装置及び水洗式便器

【課題】大型化せず、便器洗浄を良好に行なうことができる洗浄タンク装置及び水洗式便器を提供する。
【解決手段】洗浄タンク装置10は、洗浄タンク本体20と、洗浄タンク本体20内に洗浄水を供給するボールタップ30と、便器排水路3内の空気を吸引する吸気装置40とを備えている。吸気装置40は、吸気室41と接続管部42とを具備している。吸気室41は、連通口41Cが貫設され、洗浄タンク本体20内を区画した側面部41Aと、この側面部41Aの上端に連結された上面部41Bとにより形成されている。接続管部42は、上下方向に延びた筒状であり、上面部41Bを貫通して設けられ、上端開口が吸気路6を介して便器排水路3に連通する吸気口42Aを形成し、下端開口が吸気室41内における洗浄水の最高水位より下方に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗浄タンク装置及び水洗式便器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に従来の洗浄タンク装置が開示されている。この洗浄タンク装置は、洗浄タンク本体と、給水装置と、便器排水路内の空気を吸引する吸気装置とを備えている。洗浄タンク本体は、開閉弁により開閉可能な排水口を有し、便器本体の洗浄に利用される洗浄水を貯留可能である。洗浄タンク本体の排水口は、便鉢及び便鉢の下流側に連通する便器排水路を有する便器本体に連通されている。給水装置は洗浄タンク本体内に洗浄水を供給可能である。吸気装置は、洗浄タンク本体内に配置され、上端が閉鎖され下端が開口したブースと、ブース内であって洗浄タンク本体内の最高水位より上方まで延びた吸気路とから構成されている。吸気路は便器排水路に連通されている。
【0003】
この洗浄タンク装置では、排水口の開閉弁を開弁し、便器洗浄を開始すると、洗浄タンク本体内に貯留された洗浄水が排水口から便器本体に流出する。これにより、洗浄タンク本体内の洗浄水の水位は低下する。この際、吸気装置のブース内では、吸気路を介して便器排水路内の空気が吸引されて、洗浄水の水位が低下する。つまり、ブース内の洗浄水の水位の低下にしたがって吸気装置は便器排水路内の空気を吸引する。便器洗浄の際に吸気装置が便器排水路内の空気を吸引することによって、便器排水路内にサイホン作用を確実に発生させ、そのサイホン作用を促進させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−42217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来の洗浄タンク装置では、便器洗浄が開始されてから所定量の洗浄水が洗浄タンク本体の排水口から便器本体へ流出し、排水口の開閉弁が閉弁されるまでの間、ブース内の洗浄水の水位は略一定の速度で低下する。つまり、この吸気装置は便器洗浄の開始と同時に便器排水路内の空気の吸引を開始する。このため、洗浄タンク本体内から流出した洗浄水により便器排水路内へ洗浄水が流入する前から吸気装置は便器排水路内の空気を吸引することになる。便器排水路内にサイホン作用を発生させるためには、便器排水路内に所定流量の洗浄水が流入する状態でなければならず、それ以前に便器排水路内の空気を吸引してもサイホン作用の発生に寄与するものではない。
【0006】
また、便器排水路内にサイホン作用を確実に発生させるためには、サイホン作用の発生時に吸気装置によって便器排水路内の空気を勢い良く吸引することが望ましい。この吸気装置において空気を勢い良く吸引するためにはブースの容量を大きくしなければならない。このため、便器排水路内の空気を勢い良く吸引しようとすれば洗浄タンク本体が大型化してしまうおそれがある。
【0007】
また、この吸気装置では、便器洗浄の開始から終了までの間、便器排水路内の空気は略一定の強さで吸引される。このため、便器排水路内にサイホン作用を確実に発生させるために吸気装置のブースの容量を大きくして便器排水路内の空気を勢い良く吸引する場合には、便器洗浄の後半においても吸気装置が便器排水路内の空気を勢い良く吸引することになる。便器洗浄の後半において便器排水路内に流入する洗浄水の流量が減少した状態で便器排水路内の空気を勢い良く吸引しすぎると、便器排水路内の洗浄水が不足し、サイホン作用が早期に終了するおそれがある。この場合、便器本体からの汚物等の排出が不十分になるおそれがある。
【0008】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、大型化せず、便器洗浄を良好に行なうことができる洗浄タンク装置及び水洗式便器を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の洗浄タンク装置は、便鉢及び便鉢の下流側に連通する便器排水路を備えた便器本体を洗浄する洗浄水を貯留し、開閉弁により開閉可能な排水口を有した洗浄タンク本体と、洗浄タンク本体内に洗浄水を供給する給水装置と、便器排水路内の空気を吸引する吸気装置とを備えた浄タンク装置であって、
前記吸気装置は、連通口が貫設され、前記洗浄タンク本体内を区画した側面部と、この側面部の上端に連結された上面部とにより形成された吸気室と、
吸気室の上面部に上端開口を上方に開口させて設けられ、この上端開口が吸気路を介して前記便器排水路に連通する吸気口を形成し、下端開口が吸気室内における洗浄水の最高水位より下方に位置した上下方向に延びた筒状の接続管部とを具備していることを特徴とする。
【0010】
この洗浄タンク装置では、洗浄タンク本体の排水口の開閉弁が開弁され、便器洗浄が開始されると、洗浄タンク本体内に貯留された洗浄水が排水口から便器本体へ流出し、側面部により吸気室と区画されて洗浄タンク本体内に形成された貯水室内の洗浄水の水位が低下し始める。これにより、貯水室内と吸気室内とは水頭差が生じる。この水頭差によって吸気室は便器排水路内の空気の吸引を開始する。
【0011】
便器洗浄が開始され、上述したように便器排水路内の空気の吸引が開始されると、先ず、接続管部内の洗浄水の水位が低下する。接続管部内の洗浄水の水位が低下する際には、接続管部より外側の吸気室内の洗浄水の水位が高いため、それにより生じる水圧によって接続管部内に空気が流入することが抑制される。つまり、接続管部内の洗浄水の水位はゆっくりと低下する。
【0012】
接続管部内の洗浄水が排出され、接続管部の下端開口から接続管部より外側の吸気室内に空気が流入すると、吸気室内の洗浄水の水位が低下し始める。接続管部より外側の吸気室内の洗浄水の水位が接続管部の下端開口に近づくにしたがって水圧の影響が小さくなるため、吸気装置の空気の吸引量が徐々に増加する。つまり、接続管部より外側の吸気室内の洗浄水の水位の低下も徐々に早くなる。
【0013】
接続管部より外側の吸気室内の洗浄水の水位が接続管部の下端開口の高さに低下した時には、貯水室内の洗浄水の水位はかなり低下している。このため、吸気室内と貯水室内とは大きな水頭差が生じている。この水頭差により吸気室内の洗浄水の水位は急激に低下する。これにより、この吸気装置は便器排水路の空気を勢い良く吸引する。このように、この洗浄タンク装置では、吸気装置を大型化しなくても、便器排水路から空気を勢い良く吸引することができる。
【0014】
また、便器洗浄が開始されてから吸気装置が勢い良く便器排水路内の空気を吸引するまでにタイムラグを設けることができる。このため、吸気装置が便器排水路内の空気を勢い良く吸引する時点において洗浄タンク本体内から便器本体へ流出した洗浄水により、便器排水路内に所定流量の洗浄水が流入している状態にすることができる。つまり、便器排水路内に所定量の洗浄水が流入している状態で吸気装置が便器排水路内の空気を吸引するため、便器排水路内にサイホン作用を確実に発生させることができる。
【0015】
また、吸気装置が勢い良く便器排水路内の空気を吸引し始めた後、時間の経過とともに吸気室内の洗浄水の水位と貯水室内の洗浄水の水位との高低差は小さくなるため、吸気装置の吸引流量も徐々に小さくなる。このため、便器洗浄の後半において、吸気装置の吸引流量が大きすぎることが原因でサ便器排水路内のサイホン作用が終了してしまうことを防止し、サイホン作用を継続させることができる。
【0016】
また、この吸気装置では、所定量の洗浄水が洗浄タンク本体の排水口から便器本体へ流出し、排水口の開閉弁が閉弁されるまで、便器排水路内の空気を吸引し続ける。このように、サイホン作用が発生している間、吸気装置は便器排水路内の空気を吸引し続け、便器排水路内の空気を少なくしている。これにより、便器排水路内の洗浄水の流れが空気の残留により邪魔され難く、便器排水路内の汚物等の搬送を良好に行なうことができる。
【0017】
したがって、本発明の洗浄タンク装置は、大型化せず、便器洗浄を良好に行なうことができる。
【0018】
前記吸気室の上面部には空気孔が貫設され、空気孔には吸気室内に空気を流入させず、かつ吸気室内の空気が流出可能な逆止弁が接続され得る。この場合、洗浄タンク本体の排水口が開閉弁により閉鎖され、給水装置から洗浄水が供給される際、吸気室内に洗浄水を良好に流入させることができる。このため、洗浄タンク装置を便器洗浄の待機状態に復帰させることができる。
【0019】
前記吸気室は、前記連通口より上方の内部に設けられ、開口部が貫設された内壁部により上部室と下部室とに区画され、
吸気室内には、上部室内に配置されたシール部と、下部室内に配置されたフロート部と、シール部とフロート部を連結し、前記開口部を挿通した連結部とから形成され、開口部を開閉する開閉部材が収納され、
前記吸気室内の洗浄水の水位が低下し、開閉部材が下降すると前記シール部が前記開口部を閉鎖し得る。この場合、寒冷地等において洗浄タンク本体の水抜きを行った場合、便器排水路に連通する開口部を閉鎖することができる。このため、便器排水路から臭気の逆流等を防止することができる。
【0020】
本発明の水洗式便器は、便鉢及び便鉢の下流側に連通する便器排水路を備えた便器本体と、上記の洗浄タンク装置とを具備し、
前記便器排水路に吸気路を介して前記吸気口が連通され、前記便鉢の上部開口の内周縁に設けられたリム通水路に前記排水口が連通されていることを特徴とする。この水洗式便器では、上述したように、洗浄タンク装置が大型化せず、便器洗浄を良好に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施例の水洗式便器を示す概略図である。
【図2】実施例の吸気装置において、便器洗浄前の状態を示す断面図である。
【図3】実施例の吸気装置において、接続管部の水位が低下し始めた状態を示す断面図である。
【図4】実施例の吸気装置において、接続管部の洗浄水が排出された状態を示す断面図である。
【図5】実施例の吸気装置において、吸気室内の水位が低下し始めた状態を示す断面図である。
【図6】実施例の吸気装置において、接続管部の下端開口より吸気室内の水位が低下した状態を示す断面図である。
【図7】実施例の吸気装置において、吸気室内の水位が貯水室内と水位と同じになった状態を示す断面図である。
【図8】実施例の吸気装置において、水抜き時の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の洗浄タンク装置及び水洗式便器を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。
【0023】
<実施例>
実施例の水洗式便器は、図1に示すように、便器本体1と便器本体1の後部上面に載置された洗浄タンク装置10とを具備している。便器本体1は便鉢2及び便鉢2の下流側に連通する便器排水路3を備えている。また、便鉢2の上部開口の内周縁にはリム通水路4が設けられている。
【0024】
洗浄タンク装置10は、洗浄タンク本体20、給水装置であるボールタップ30及び吸気装置40を備えている。洗浄タンク本体20は、便器本体1を洗浄する洗浄水を貯留し、開閉弁であるフロート弁21により開閉可能な排水口22を有している。排水口22は、洗浄タンク本体20内であって、後述する貯水室25側の底部に貫設されている。フロート弁21は玉鎖23を介して図示しない洗浄ハンドルに連結されている。排水口22は洗浄水路5を介してリム通水路4に連通されている。便器洗浄の際、用便者等が洗浄ハンドルを操作することにより、フロート弁21が玉鎖23によって引き上げられる。これにより、洗浄タンク本体20内に貯留された洗浄水を排水口22からリム通水路4に流出させることができる。洗浄タンク本体20は、排水口22より下方の洗浄水路5に連通されたオーバーフロー管24を有している。オーバーフロー管24は、後述する貯水室25内であって、その最高水位LA1よりも上方に立ち上げられている。
【0025】
ボールタップ30は、この水洗式便器が設置されるトイレルームに引き出された給水管に接続された吐水管31と、吐水管31に設けられた開閉弁32とを有している。吐水管31は洗浄タンク本体20内に形成された後述する貯水室25内に直接的に洗浄水を吐水可能に設けられている。開閉弁32は、洗浄タンク本体20内であって、貯水室25内の洗浄水の水位の変化にしたがって昇降する浮玉33により開閉駆動される。つまり、浮玉33が下降すると開閉弁32が開弁され、吐水管31から洗浄タンク本体20内の貯水室25内に洗浄水が直接的に吐水される。また、開閉弁32は、貯水室25内の洗浄水の水位が最高水位LA1まで上昇すると、浮玉33の上昇により閉弁する。
【0026】
吸気装置40は、図1〜図8に示すように、吸気室41と接続管部42とを具備している。
【0027】
吸気室41は、洗浄タンク本体20内を区画し、上下方向に延びる円筒状の側面部41Aと、この側面部41Aの上端に連結された上面部41Bとにより形成されている。上面部41Bは洗浄タンク本体20内の洗浄水の最高水位(後述する貯水室25の最高水位LA1及び吸気室41内の最高水位LB1)より僅かに上方に配置されている。側面部41Aの下端部には連通口41Cが横方向を向いて貫設されている。洗浄タンク本体20内には吸気室41と区画された貯水室25が形成されている。吸気室41と貯水室25とは連通口41Cを介して連通されている。
【0028】
接続管部42は上下方向に延びた円筒状であり、上面部41Bを貫通して設けられている。接続管部42の上端開口は、吸気路6を介して便器排水路3に連通する吸気口42Aを形成している。また、接続管部42の下端開口は、吸気室41内における洗浄水の最高水位LB1より下方に位置している。
【0029】
上面部41Bには空気孔43が貫設されている。空気孔43には吸気室41内に空気を流入させず、かつ吸気室41内の空気が流出可能な逆止弁43Vが接続されている。
【0030】
吸気室41は、連通口41Cより上方の内部に設けられた内壁部44により上部室41Uと下部室41Dとに区画されている。内壁部44には円形状の開口部44Aが貫設されている。上部室41Uと下部室41Dは開口部44Aを介して連通されている。
【0031】
吸気室41内には開口部44Aを開閉する開閉部材45が収納されている。開閉部材45は、上部室41U内に配置されたシール部45Aと、下部室41D内に配置された円柱形上のフロート部45Bと、シール部45Aとフロート部45Bとを連結し、開口部44Aを挿通した棒状の連結部45Cとから形成されている。シール部45Aは円盤形状であり、下面に貼着されたシール材45Sを有している。また、シール部45Aの径は開口部44Aの径よりも大きく形成されている。
【0032】
次に、このように構成された水洗式便器の便器洗浄工程を説明する。
【0033】
便器洗浄を開始する前は、図1及び図2に示すように、洗浄タンク本体20内には所定量の洗浄水が貯水されている。つまり、貯水室25内には最高水位LA1まで洗浄水が貯水され、吸気室41内(接続管部42内も含む)には最高水位LB1まで洗浄水が貯水されている。また、開閉部材45は、シール部45Aの上面が上面部41Bの下面に当接した状態に上昇している。このため、開口部44Aは開放されている。
【0034】
用便者等により洗浄ハンドルが操作され、便器洗浄が開始されると、フロート弁21が玉鎖23を介して引き上げられ、排水口22が開放される。すると、貯水室25内の洗浄水が排水口22からリム通水路4に流出する。この際、貯水室25内の洗浄水の水位は、図3及び図4に示すように、急激に低下し始める。これにより、貯水室25内と吸気室41内とは水頭差が生じる。この水頭差によって吸気室41は便器排水路3内の空気を吸気路6を介して吸引し始める。
【0035】
吸気室41が便器排水路3内の空気を吸引し始めると、先ず、接続管部42内の洗浄水の水位が低下する。接続管部42内の洗浄水の水位が低下する際には、接続管部42より外側の吸気室41内は密閉状態であるため最高水位LB1のままである。このため、それにより生じる水圧によって、接続管部42内に空気が流入することが抑制される。つまり、接続管部42内の洗浄水の水位はゆっくりと低下し、吸気装置40の便器排水路3内の空気の吸引流量は僅かである。
【0036】
接続管部42内の洗浄水が排出され、接続管部42の下端開口から接続管部42より外側の吸気室41内に空気が流入すると、図5に示すように、接続管部42より外側の吸気室41内の洗浄水の水位が低下し始める。接続管部42の外側の吸気室41内の洗浄水の水位が接続管部42の下端開口に近づくにしたがって、水圧の影響が小さくなるため、吸気装置40の空気の吸引流量が徐々に増加する。つまり、接続管部42の外側の吸気室41内の洗浄水の水位の低下も徐々に早くなる。
【0037】
接続管部42より外側の吸気室41内の洗浄水の水位が接続管部42の下端開口の高さに低下した時には、図6に示すように、貯水室25内の洗浄水の水位はかなり低下している。このため、吸気室41内と貯水室25内とは大きな水頭差が生じている。この水頭差により吸気室41内の洗浄水の水位は急激に低下し、図7に示すように、貯水室25内の洗浄水の水位と同じ高さになる。この過程において、吸気装置40は吸気路6を介して便器排水路3内の空気を勢い良く吸引する。このように、この洗浄タンク装置10では、吸気装置40を大型化しなくても、便器排水路3内の空気を勢い良く吸引することができる。
【0038】
また、便器洗浄が開始されてから吸気装置40が便器排水路3内の空気を勢い良く吸引するまでにタイムラグが設けられる。このため、吸気装置40が便器排水路3内の空気を勢い良く吸引する時点において、洗浄タンク本体20の貯水室25内から便器本体1のリム通水路4に流出した洗浄水により、便器排水路3内に所定量の洗浄水が流入している状態にすることができる。つまり、便器排水路3内に所定流量の洗浄水が流入している状態で吸気装置40が便器排水路3内の空気を勢い良く吸引するため、便器排水路3内にサイホン作用を確実に発生させることができる。
【0039】
また、接続管部42より外側の吸気室41内の洗浄水の水位が接続管部42の下端開口の高さに低下した後、時間の経過とともに吸気室41内の洗浄水の水位と貯水室25内の洗浄水の水位との高低差は小さくなるため、吸気装置40の吸引流量も徐々に小さくなる。このため、便器洗浄の後半において、吸気装置40の吸引流量が大きすぎることが原因で便器排水路3内のサイホン作用が終了してしまうことを防止し、サイホン作用を継続させることができる。
【0040】
吸気室41内及び貯水室25内の洗浄水の水位が同じ高さになった後も、吸気室41内及び貯水室25内の洗浄水が排水口22からリム通水路4に流出し続ける。吸気室41及び貯水室25内の洗浄水の水位が連通口41Cの上端より下方に低下してしまう直前にフロート弁21が排水口22を閉鎖する。これにより、吸気装置40は便器排水路3内の空気の吸引を終了する。また、便器排水路3内への洗浄水の供給が減少するため便器排水路3内のサイホン作用は終了する。また、開閉部材45は吸気室41内の洗浄水の低下に伴って下降しているが、開口部44Aを閉鎖する位置まで下降しておらず、開口部44Aは開放されている。このように、この吸気装置40では、所定量の洗浄水が洗浄タンク本体20の排水口22からリム通水路4に流出し、排水口22がフロート弁21により閉鎖されるまで、便器排水路3内の空気を吸引し続ける。このため、サイホン作用が発生している間、吸気装置40は便器排水路3内の空気を吸引し続け、便器排水路3内の空気を少なくしている。これにより、便器排水路3内の洗浄水の流れが空気の残留により邪魔され難く、便器排水路3内の汚物の搬送を良好に行なうことができる。
【0041】
したがって、実施例の水洗式便器は、大型化せず、便器洗浄を良好に行なうことができる。
【0042】
フロート弁21が排水口22を閉鎖した後も、ボールタップ30の吐水管31から貯水室25内に直接的に洗浄水が吐水される。吸気装置40の開口部44A開放されているため、連通口41Cを介して吸気室41内にも洗浄水は流入する。この際、上面部41Bに設けられた空気孔43から吸気室41内の空気が外部に流出するため、貯水室25内の洗浄水の水位の増加と同様に吸気室41内に洗浄水の水位は増加する。開閉部材45は吸気室41内の洗浄水の水位の上昇に伴って上昇する。貯水室25内が最高水位LA1となり、吸気室41内が最高水位LB1となると、ボールタップ30の開閉弁32が閉弁される。また、フロート弁21が排水口22を閉鎖してからボールタップ30の開閉弁32が閉弁されるまでの間、ボールタップ30から分岐された図示しない給水路、オーバーフロー管24及び洗浄水路5を介してリム通水路4に洗浄水が供給され、便鉢2内に水封が形成される。このように、便器洗浄が終了するとともに、図1及び図2に示すように、便器洗浄の開始前の状態に水洗式便器を待機させることができる。
【0043】
この水洗式便器において、洗浄タンク本体20の水抜きを行った場合、図8に示すように、洗浄タンク本体20内の洗浄水が殆んど排出され、開閉部材45が下降して、開閉部材45のシール部45Aが開口部44Aを閉鎖する。このため、洗浄タンク本体20の水抜き時に便器排水路3から臭気の逆流等を防止することができる。
【0044】
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)実施例では、接続管部が上面部を貫通し、その上端開口が上面部より上方に位置して設けられていたが、接続管部の上端開口が上面部に設けられ、接続管部が吸気室内に垂下するように設けられていてもよい。
(2)実施例では、吸気室が洗浄タンク本体とは別体であって円筒状の側面部により形成されていたが、吸気室は洗浄タンク本体と一体に形成されていてもよい。また、吸気室の側面部は円筒状でなくてもよい。
(3)実施例では、吸気室内に開口部を有する内壁部を設け、その開口部を開閉する開閉部材が収納されていたが、吸気室に内壁部及び開閉部材を備えなくてもよい。
(4)実施例では、逆止弁が接続された空気孔を吸気室に貫設したが、吸気室に空気孔を貫設しなくてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は洗浄タンク装置を有する水洗式便器に利用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1…便器本体
2…便鉢
3…便器排水路
6…吸気路
10…洗浄タンク装置
20…洗浄タンク本体
21…フロート弁(開閉弁)
22…排水口
30…ボールタップ(給水装置)
40…吸気装置
41…吸気室
41A…側面部
41B…上面部
41C…連通口
41U…上部室
41D…下部室
42…接続管部
42A…吸気口
43…空気孔
43V…逆止弁
44…内壁部
44A…開口部
45…開閉部材
41A…シール部
41B…フロート部
41C…連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便鉢及び便鉢の下流側に連通する便器排水路を備えた便器本体を洗浄する洗浄水を貯留し、開閉弁により開閉可能な排水口を有した洗浄タンク本体と、洗浄タンク本体内に洗浄水を供給する給水装置と、便器排水路内の空気を吸引する吸気装置とを備えた洗浄タンク装置であって、
前記吸気装置は、連通口が貫設され、前記洗浄タンク本体内を区画した側面部と、この側面部の上端に連結された上面部とにより形成された吸気室と、
吸気室の上面部に上端開口を上方に開口させて設けられ、この上端開口が吸気路を介して前記便器排水路に連通する吸気口を形成し、下端開口が吸気室内における洗浄水の最高水位より下方に位置した上下方向に延びた筒状の接続管部とを具備していることを特徴とする洗浄タンク装置。
【請求項2】
前記吸気室の上面部には空気孔が貫設され、空気孔には吸気室内に空気を流入させず、かつ吸気室内の空気が排出可能な逆止弁が接続されていることを特徴とする請求項1記載の洗浄タンク装置。
【請求項3】
前記吸気室は、前記連通口より上方の内部に設けられ、開口部が貫設された内壁部により上部室と下部室とに区画され、
吸気室内には、上部室内に配置されたシール部と、下部室内に配置されたフロート部と、シール部とフロート部とを連結し、前記開口部を挿通した連結部とから形成され、開口部を開閉する開閉部材が収納され、
前記吸気室内の洗浄水の水位が低下し、開閉部材が下降すると前記シール部が前記開口部を閉鎖することを特徴とする請求項1又は2記載の洗浄タンク装置。
【請求項4】
便鉢及び便鉢の下流側に連通する便器排水路を備えた便器本体と、請求項1乃至3のいずれか1項記載の洗浄タンク装置とを具備し、
前記便器排水路に吸気路を介して前記吸気口が連通され、前記弁鉢の上部開口の内周縁に設けられたリム通水路に前記排水口が連通されていることを特徴とする水洗式便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−99288(P2011−99288A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−255922(P2009−255922)
【出願日】平成21年11月9日(2009.11.9)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】