説明

洗浄タンク装置

【課題】所定量の洗浄水が排出し終わる前に排水口が閉塞されることを防止する。
【解決手段】洗浄タンク装置Aは、底部に排水口11が設けられた洗浄タンク10と、洗浄タンク10内に設けられて排水口11を開閉する弁体13と、弁体13と一体的に昇降する昇降部材14と、昇降部材14の上昇に伴って貯留水を流入させるともに昇降部材14の下降に伴って貯留水を流出させる貯水部15と、貯水部15内への貯留水の流入量よりも貯水部15からの貯留水の流出量を少なくする流量制御手段16と、昇降部材14と一体的に上昇可能であり、洗浄タンク10内の洗浄水から浮力を受けるフロート17とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄タンク装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、底部に排水口を有する洗浄タンクと、洗浄タンクとの間で洗浄水を流通させる貯水部と、昇降に伴って貯水部内の容積を増減させる昇降部材と、昇降部材に連結されて排水口を開閉する弁体と、昇降部材を上昇させることにより弁体を持ち上げて排水口を開弁させる操作手段と、貯水部内から洗浄タンク内への洗浄水の流出量を絞る流量制御手段とを備えた洗浄タンク装置が開示されている。
【0003】
排水口が弁体で閉塞された状態で、操作手段を操作して昇降部材を上昇させると、排水口が開放されて洗浄タンク内の洗浄水が排出されるとともに、貯水部内の容積が増大して洗浄タンク内の洗浄水が貯水部内に流入する。そして、洗浄タンク内の洗浄水の水位が所定高さまで低下すると、昇降部材と弁体が下降するのに伴って貯水部内の洗浄水が流出する。このとき、貯水部からの排水流量が流量制御手段で絞られているので、昇降部材と弁体の下降速度は遅く、弁体が下降を始めてから排水口を閉塞するまでに要する時間が長く確保される。この遅延機構により、所定量の洗浄水が排出し終わるまで、排水口が開放状態に保たれるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−212997号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の洗浄タンク装置では、操作手段を操作したときに昇降部材が持ち上げられる高さは、操作の仕方によってバラツキを生じることがあり、昇降部材の高さが不十分であった場合には、貯水部内に貯留される洗浄水の量が不十分となる。この貯水部に貯留される洗浄水の量は、弁体が下降を開始してから排水口を閉塞するまでの所要時間に概ね比例する。そのため、特許文献1のものでは、昇降部材の上昇高さが不十分である場合には、弁体が排水口を閉塞するタイミングを遅らせるための遅延機構が十分に機能せず、所定量の洗浄水が排出し終わる前に、排水口が閉塞されてしまう虞があった。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、所定量の洗浄水が排出し終わる前に排水口が閉塞されるのを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、洗浄水を貯留する洗浄タンクと、前記洗浄タンクの底部に設けられた排水口と、前記洗浄タンク内に設けられ、前記排水口を開閉する弁体と、前記弁体と一体的に昇降する昇降部材と、前記昇降部材の上昇に伴って貯留水を流入させるともに、前記昇降部材の下降に伴って貯留水を流出させる貯水部と、前記貯水部内への貯留水の流入量よりも前記貯水部からの貯留水の流出量を少なくする流量制御手段と、前記昇降部材と一体的に上昇可能であり、前記洗浄タンク内の洗浄水から浮力を受けるフロートとを備えているところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記流量制御手段は、貯留水の前記貯水部への流入を許容し、且つ前記貯水部からの貯留水の流出を規制する逆止弁を備えているところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のものにおいて、前記流量制御手段が前記昇降部材に一体的に組み付けられているところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のものにおいて、前記流量制御手段は、前記貯水部内の貯留水を流出させる連通孔と、前記連通孔の開口面積を増減させる開度調節部材とを備えて構成されているところに特徴を有する。
【0010】
請求項5の発明は、請求項4に記載のものにおいて、前記開度調節部材は、前記連通孔が貫通して形成されている円筒形の壁部内に回転可能に取り付けられ、前記開度調節部材には、前記開度調節手段の外周面に開口するとともに前記貯水部内に連通した形態の切欠部と、前記流量制御手段を構成する逆止弁の弁口とが形成され、前記開度調節部材の周方向における位置を変えて前記切欠部と前記連通孔との対向面積を変化させることで、前記連通孔の開口面積が調節されるようになっているところに特徴を有する。
【0011】
請求項6の発明は、請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のものにおいて、前記洗浄タンク内には、上下方向に延びるガイド部材が設けられ、前記弁体が、前記昇降部材に対して相対変位を規制された状態に組み付けられており、前記昇降部材には、前記ガイド部材に対して相対的に上下動可能に嵌合されるスライダが設けられているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0012】
<請求項1の発明>
排水口が弁体で閉塞された状態で、昇降部材が持ち上げられると、弁体の上昇により排水口が開放されて洗浄タンク内の洗浄水が排出されるとともに、昇降部材がフロートと一体的に上昇するのに伴って貯水部内に貯留水が流入する。このとき、フロートは洗浄水からの浮力を受けているので、昇降部材と弁体は所定高さまで確実に上昇し、貯水部内には、所定量の貯留水が確実に貯留される。したがって、貯留水の流出及び昇降部材と弁体の下降が開始した後は、所定の遅延時間が経過するまでは、弁体が排水口を閉塞することはない。
【0013】
本発明によれば、昇降部材を持ち上げるための操作が不十分であっても、フロートが受ける浮力によって昇降部材と弁体を所定の高さまで確実に上昇させることができるので、弁体が排水口を閉塞するタイミングを遅らせるための遅延機構が十分に機能する。したがって、所定量の洗浄水が排出し終わる前に排水口が閉塞されてしまうのを確実に防止することができる。
【0014】
<請求項2の発明>
昇降部材と弁体が上昇するときには逆止弁が開弁するので、上昇速度が速く、昇降部材と弁体は確実に所定高さに到達することができる。
【0015】
<請求項3の発明>
流量制御手段が、昇降部材を介して弁体及びフロートと一体化されているので、これらの部材を他の部材に組み付ける際の作業が容易である。
【0016】
<請求項4の発明>
開度調節部材によって連通孔の開口面積を増減することにより、貯留水の流出量が増減するので、昇降部材と弁体の下降速度を調節することができる。
【0017】
<請求項5の発明>
開度調節部材が逆止弁の構成部材を兼ねているので、部品点数を少なくすることができる。
【0018】
<請求項6の発明>
昇降部材と弁体は、昇降する際にスライダとガイド部材との嵌合によって、傾きを規制される。これにより、弁体は、排水口を正しい姿勢で閉塞することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態1の洗浄タンク装置の外観斜視図
【図2】排水口が閉塞されている状態をあらわす断面図
【図3】昇降部材と弁体とフロートが上昇している状態をあらわす断面図
【図4】図3の部分拡大図
【図5】昇降部材と弁体とフロートが下降している状態をあらわす断面図
【図6】図5の部分拡大図
【図7】流量制御手段の分解斜視図
【図8】連通孔が全開の状態をあらわす拡大側面図
【図9】連通孔が半開の状態をあらわす拡大側面図
【図10】連通孔が全閉の状態をあらわす拡大側面図
【図11】実施形態2の洗浄タンク装置において排水口が閉塞されている状態をあらわす断面図
【図12】昇降部材と弁体とフロートが上昇している状態をあらわす断面図
【図13】昇降部材と弁体とフロートが下降している状態をあらわす断面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1〜図10を参照して説明する。本実施形態1の洗浄タンク装置Aは、図1,2,3,5に示すように、便鉢(図示省略)に供給するための洗浄水を貯留する洗浄タンク10と、洗浄タンク10の底部に設けられた排水口11と、排水口11の開閉動作を制御するアウトレットバルブ12とを備えている。アウトレットバルブ12は、洗浄タンク10内に設けられて排水口11を開閉する弁体13と、弁体13と一体的に昇降する昇降部材14と、昇降部材14の上昇に伴って洗浄水(本発明の構成要件である貯留水)を流入させるともに、昇降部材14の下降に伴って洗浄水を流出させる貯水部15と、貯水部15内への洗浄水の流入量よりも貯水部15からの洗浄水の流出量を少なくする流量制御手段16と、昇降部材14と一体的に上昇可能であって洗浄タンク10内の洗浄水から浮力を受けるフロート17とを備えている。
【0021】
図2,3,5に示すように、洗浄タンク10の底壁部を上下に貫通する貫通孔18には、バルブ台座19がねじ込みにより取り付けられている。バルブ台座19は、軸線を上下方向に向けて外周に雄ネジ部が形成された筒状取付部20と、筒状取付部20の中心部に配置されて梁部を介して筒状取付部20に支持された支持部21とを備えている。筒状取付部20の中空内は、便鉢のリム通水部(図示省略)に連通する排水孔22となっており、排水孔22の上面側の開口部が排水口11となっている。筒状取付部20には、その外周から突出する筒状受け部23が形成されている。筒状受け部23には、軸線を上下方向に向けた円筒状をなすオーバーフロー管24(本発明の構成要件であるガイド部材)の下端部が固定され、オーバーフロー管24は筒状受け部23を介して排水孔22と連通されている。
【0022】
アウトレットバルブ12を構成する貯水部15は、支持部21に固定して外嵌されて軸線を上下方向に向けたピストン25と、昇降部材14のシリンダ部26とを備えて構成されている。昇降部材14は、軸線を上下方向に向けてピストン25に液密状に且つ昇降可能に外嵌された円筒状のシリンダ部26と、シリンダ部26の外周における下端部よりも少し上方の位置から同心円盤状に水平に張り出した上下一対のフランジ部27とを一体に形成したものである。貯水部15のうちピストン25の上端面とシリンダ部26の内周面とによって囲まれた空間は、洗浄水を貯留するための貯水空間28となっている。貯水空間28は、その上端部に配置された流量制御手段16を介して洗浄タンク10内における洗浄水の貯留空間と連通している。この貯水空間28の容積は、昇降部材14の上昇に伴って増大し、昇降部材14の下降に伴って減少するようになっている。
【0023】
上下一対のフランジ部27の間には、中心孔を有する水平な円盤状をなす弁体13が取り付けられており、この弁体13と昇降部材14が一体となって昇降するようになっている。昇降部材14と弁体13が最下端位置まで下降すると、弁体13が排水口11を閉塞するようになっている。また、弁体13が上昇すると、排水口11が開放されるようになっている。
【0024】
シリンダ部26には、弁体13と同じく中心孔を有する水平な円盤状をなして上側のフランジ部27の上面に載置されるように配された下プレート29と、軸線を上下方向に向けた肉厚の円筒形をなして下プレート29の上面に載置されるように配されたフロート17と、下プレート29と同じく中心孔を有する水平な円盤状をなしてフロート17の上面に載置されるように配された上プレート30とが外嵌されている。これらの下プレート29、フロート17及び上プレート30は、昇降部材14及び弁体13と一体となって昇降するようになっている。
【0025】
上プレート30には、その外周から径方向外方へ突出した形態の円筒形をなすスライダ31が一体に形成されている。スライダ31は、軸線を上下方向に向けた円筒形をなしていて、オーバーフロー管24に対して上下方向の移動を可能に嵌合されている。このスライダ31とオーバーフロー管24の嵌合により、昇降部材14と弁体13は、姿勢を傾けることなく昇降できるように案内される。シリンダ部26の上端部には、玉鎖を介して操作レバー(図示省略)に連結されており、操作レバーを操作すると、昇降部材14が持ち上げられるようになっている。
【0026】
図4,6に示すように、流量制御手段16は、洗浄タンク10内の洗浄水が貯水部15内(貯水空間28)に流入するのを許容するが、貯水部15内の洗浄水が洗浄タンク10外へ流出するのを規制する逆止弁32と、洗浄タンク10内と貯水部15内との間の洗浄水の流動を許容する連通孔33と、連通孔33の開口面積を変更するための開度調節部材34とを備えている。
【0027】
逆止弁32は、シリンダ部26の上端部に下動不能に内嵌した受け部材35と、受け部材35の上面に載置した円形の平板状をなすパッキン36と、開度調節部材34の中心を上下方向に貫通する弁口37とを備えて構成されている。受け部材35には、その外周縁部を切欠した形態であって周方向に間隔を空けた複数の第1連通部38と、第1連通部38に連通するとともに第1連通部38よりも内側に配置された複数の第2連通部39とが形成されている。第1連通部38と第2連通部39は、受け部材35を上下方向に貫通している。パッキン36の外径は、シリンダ部26の内径及び受け部材35の最大外径よりも小さい。
【0028】
開度調節部材34は、受け部材35よりも上方の位置においてシリンダ部26の上端部に内嵌されている。図7〜10に示すように、開度調節部材34の外周には一対の突起40が形成され、この両突起40はシリンダ部26に形成した周方向のガイド溝41に嵌合されている。開度調節部材34は、突起40をガイド溝41に沿って移動させることにより、シリンダ部26に対して周方向へ所定角度だけ移動(回転)し得るようになっている。ガイド溝41に形成したストッパ42に突起40を係止させることにより、開度調節部材34は、全開位置(図8を参照)と半開位置(図9を参照)と全閉位置(図10を参照)のうちいずれかの位置に保持される。
【0029】
図4,6に示すように、開度調節部材34の下面と受け部材35の上面との間には、弁口37が開口する弁室43が形成され、弁室43内にパッキン36が収容されている。弁室43の上下寸法は、パッキン36の厚さ寸法よりも大きい寸法に設定されており、パッキン36は、受け部材35と開度調節部材34との間で上下移動し得るようになっている。図4に示すように、パッキン36が下降して受け部材35の上面に載置されている状態では、弁口37が開放されているとともに、パッキン36の外周とシリンダ部26の内周との間には、第1連通部38と連通する隙間が空いている。また、図6に示すように、パッキン36が上昇すると、このパッキン36によって弁口37が閉塞されるようになっている。
【0030】
連通孔33は、シリンダ部26の内周から外周へ貫通するように形成されている。上下方向における連通孔33の位置は、弁室43よりも少し上方の位置、即ち開度調節部材34の外周面と対向する高さである。図4,6〜10に示すように、開度調節部材34には、その外周面(即ち、シリンダ部26の内周面と対向する面)と下端面(即ち、弁室43に臨む面)とに開口する切欠部44が形成されている。開度調節部材34を周方向に移動させることにより、周方向における切欠部44と連通孔33との位置関係を変更することができる。
【0031】
即ち、図8に示すように、回動調節部材が全開位置にあるときには、切欠部44が連通孔33の全領域と対応するので、連通孔33と切欠部44を通過する洗浄水の流量が最大となる。図9に示すように、開度調節部材34が半開位置にあるときには、連通孔33の開口領域のうち半分だけが切欠部44と対応するので、連通孔33と切欠部44を通過する洗浄水の流量は全開位置に比べて少なくなる。図10に示すように、開度調節部材34が全閉位置にあるときには、連通孔33の開口領域の全範囲が開度調節部材34の外周面で塞がれる。したがって、切欠部44と連通孔33は、開度調節部材34の外周面とシリンダ部26の内周面との間の狭い隙間を介して連通する状態となるので、洗浄水の流量が最小となる。
【0032】
次に、本実施形態の作用を説明する。洗浄タンク10内に所定量の洗浄水が貯留されている状態では、図2に示すように、洗浄水の水圧により弁体13が排水口11を閉塞する。この状態で、操作レバーの操作により昇降部材14が持ち上げられると、図3に示すように、弁体13が昇降部材14と一体に上昇するので、排水口11が開放されて洗浄タンク10内の洗浄水が便鉢側へ排出される。また、昇降部材14の上昇に伴って貯水空間28の容積が増大していくのであるが、この間、逆止弁32では、図4に示すように、パッキン36が受け部材35に載置されて弁口37を開放することにより、開弁状態が保たれるので、この開放された弁口37を通して洗浄タンク10内の洗浄水が速やかに弁室43内に流入する。同時に、連通孔33と切欠部44を順に通る経路によっても洗浄水が弁室43内に流入する。そして、弁室43内に流入した洗浄水は、パッキン36の外周とシリンダ部26の内周との隙間、及び第1連通部38を順に通って貯水空間28内に流入する。
【0033】
この後、洗浄タンク10内の洗浄水の水位が所定高さまで低下すると、図5に示すように、昇降部材14と弁体13が下降を開始し、昇降部材14の下降に伴って貯水空間28内の洗浄水が洗浄タンク10側へ流出する。このとき、図6に示すように、逆止弁32のパッキン36が、貯水空間28内の水圧によりシリンダ部26に対して相対的に上昇して弁口37を閉塞するので、洗浄水の流出経路は、第1連通部38及び第2連通部39と、弁室43と、切欠部44と、連通孔33を順に通る経路となる。
【0034】
ここで、連通孔33と切欠部44の流路は、弁口37に比べて狭小とされているので、洗浄水の流出量(流量)は、昇降部材14の上昇に伴って貯水空間28内に流入する洗浄水の流量よりも少なくなっている。このように、貯水部15内から外部への排水流量が流量制御手段16で絞られているので、昇降部材14と弁体13の下降速度は遅く、弁体13が下降を始めてから排水口11を閉塞するまでに要する時間が長く確保される。この遅延機構により、所定量の洗浄水が洗浄タンク10外へ排出し終わるまでは、排水口11が開放状態に保たれる。
【0035】
昇降部材14が上昇する過程では、フロート17が昇降部材14と一体となって上昇するのであるが、このフロート17は洗浄水から浮力を受けているので、操作レバーの操作が不十分であって操作レバーから昇降部材14に作用する引き上げ力が不足していても、フロート17に作用している浮力によって、昇降部材14は所定の高さまで確実に上昇する。したがって、貯水部15内には、所定量の洗浄水が確実に貯留される。この貯水部15に貯留される洗浄水の量は、弁体13が下降を開始してから排水口11を閉塞するまでの所要時間に概ね比例するので、弁体13が下降を始めてから排水口11を閉塞するまでに要する時間が十分に長く確保される。
【0036】
本実施形態によれば、昇降部材14を持ち上げるための操作が不十分であっても、フロート17が受ける浮力によって昇降部材14と弁体13を所定の高さまで確実に上昇させることができるので、弁体13が排水口11を閉塞するタイミングを遅らせるための遅延機構が十分に機能する。したがって、貯留水の流出及び昇降部材14と弁体13の下降が開始した後は、所定の遅延時間が経過するまでは、弁体13が排水口11を閉塞することはないのであり、所定量の洗浄水が洗浄タンク10外へ排出し終わる前に排水口11が閉塞されてしまうのを確実に防止することができる。
【0037】
また、流量制御手段16が昇降部材14に一体的に組み付けられ、昇降部材14が弁体13とフロート17に一体的に組み付けられているので、これらの部材をピストン25に組み付ける際の作業が容易となっている。
【0038】
また、流量制御手段16は、貯水部15内の洗浄水を流出させる連通孔33と、連通孔33の開口面積を増減させる開度調節部材34とを備えていて、連通孔33を通過する洗浄水の流量を調節することができるようになっているので、洗浄タンク10における洗浄水の排出流量等に応じて、弁体13の下降速度を好適に調節することができる。
【0039】
また、開度調節部材34は、連通孔33が貫通して形成されている円筒形のシリンダ部26(壁部)内に回転可能に取り付けられ、開度調節部材34には、開度調節部材34の外周面に開口するとともに貯水部15内に連通した形態の切欠部44と、流量制御手段16を構成する逆止弁32の弁口37とが形成されている。この構成によれば、開度調節部材34の周方向における位置を変えて切欠部44と連通孔33との対向面積を変化させることによって、連通孔33の開口面積を調節することができる。また、開度調節部材34は逆止弁32の構成部材を兼ねているので、開度調節部材が逆止弁32の構成部材を兼ねていない形態のものに比べると、部品点数が少なくなっている。
【0040】
また、洗浄タンク10内には上下方向に延びるガイド部材としてオーバーフロー管24を設け、昇降部材14には、オーバーフロー管24に対して相対的に上下動可能に嵌合されるスライダ31を設けている。この構成によれば、昇降部材14と弁体13は、昇降する際にスライダ31とオーバーフロー管24との嵌合によって、傾きを規制される。これにより、弁体13は、排水口11を正しい姿勢で確実に閉塞することができる。
【0041】
<実施形態2>
次に、本発明を具体化した実施形態2を図11〜図13を参照して説明する。本実施形態2の洗浄タンク装置Bは、便鉢(図示省略)に供給するための洗浄水を貯留する洗浄タンク50と、洗浄タンク50の底部に設けられた排水口51と、排水口51の開閉動作を制御するアウトレットバルブ52とを備えている。アウトレットバルブ52は、洗浄タンク50内に設けられて排水口51を開閉する弁体53と、弁体53と一体的に昇降する昇降部材54と、昇降部材54の上昇に伴って洗浄タンク50内の洗浄水(本発明の構成要件である貯留水)を流入させるともに昇降部材54の下降に伴って洗浄水を流出させる貯水部55と、貯水部55内への洗浄水の流入量よりも貯水部55からの洗浄水の流出量を少なくする流量制御手段56と、昇降部材54と一体的に上昇可能であって洗浄タンク50内の洗浄水から浮力を受けるフロート57とを備えている。
【0042】
洗浄タンク50の底壁部を上下に貫通する貫通孔58には、バルブ台座59がねじ込みにより取り付けられている。バルブ台座59は、軸線を上下方向に向けて外周に雄ネジ部が形成された筒状取付部60と、筒状取付部60の中心部に配置されて梁部を介して筒状取付部60に支持された第1筒部61とを備えている。筒状取付部60の中空内は、排水孔62となっており、排水孔62の上面側の開口部が排水口51となっている。第1筒部61は軸線を上下方向に向けた円筒形をなし、その上端部は開放され、下端部は封止されている。第1筒部61の上端部には、上下両端面が開放された円筒形をなすピストン63の下端部が、第1筒部61と同軸状に固着されている。第1筒部61のうち排水口51よりも下方の位置には、軸線を水平に向けた円筒形をなす第2筒部64の一方の端部が固着されている。第2筒部64内と第1筒部61内は連通している。
【0043】
アウトレットバルブ52を構成する貯水部55は、第1筒部61と、第2筒部64と、ピストン63と、昇降部材54のシリンダ部65とを備えて構成されている。昇降部材54は、軸線を上下方向に向けた円筒形をなし、上端が閉塞されているとともに下端が開放されたたシリンダ部65と、シリンダ部65の外周における下端部から水平に張り出した円形のフランジ部66と、フランジ部66の外周縁から上方へ立ち上がる外筒部67とを一体に形成したものである。シリンダ部65は、ピストン63に対して同軸状に且つ昇降可能に外嵌されている。また、シリンダ部65の上端部には、玉鎖を介して操作レバー(図示省略)に連結されており、操作レバーを操作すると、昇降部材54が持ち上げられるようになっている。
【0044】
貯水部55のうち、シリンダ部65の上面を閉塞する上壁部と、シリンダ部65の内周面と、第1筒部61の内周面と、第1筒部61の下面を閉塞する下壁部と、第2筒部64の内周面と、流量制御手段56とによって囲まれた空間は、洗浄水を貯留するための貯水空間68となっている。貯水空間68は、第2筒部64の他方の端部に設けた流量制御手段56を介して、洗浄タンク50内における洗浄水の貯留空間と連通している。この貯水空間68の容積は、昇降部材54の上昇に伴って増大し、昇降部材54の下降に伴って減少する。
【0045】
流量制御手段56は、第2筒部64の他方(第1筒部61とは反対側)の端部に設けられている。流量制御手段56は、逆止弁69と連通孔70とを備えて構成されている。逆止弁69は弁口71とパッキン72と備えて構成されている。弁口71は第2筒部64の他方の端面に開放され、洗浄タンク50内に臨んでいる。パッキン72は、第2筒部64の弁室73内に収容されて弁口71を開閉するようになっている。連通孔70は、第2筒部64の他方の端部に形成され、パッキン72(弁室73)を挟んで弁口71とは反対側に配置されている。連通孔70は、第2筒部64の内部から外部(洗浄タンク50内)へ下向きに開口されていて、第2筒部64内に洗浄タンク50内とを常時、連通させている。
【0046】
弁体53は、中心孔を有する水平な円盤状をなし、昇降部材54の下端部に対してフランジ部66の下面に密着するように固定されている。昇降部材54と弁体53が最下端位置まで下降すると、弁体53が排水口51を閉塞するようになっている。また、弁体53が上昇すると、排水口51が開放されるようになっている。また、フロート57は、軸線を上下方向に向けた肉厚の円筒形をなし、昇降部材54のシリンダ部65とフランジ部66と外筒部67によって囲まれた空間内に嵌合されている。これにより、フロート57が、昇降部材54及び一体となって昇降するようになっている。
【0047】
次に、本実施形態の作用を説明する。洗浄タンク50内に所定量の洗浄水が貯留されている状態では、図11に示すように、洗浄水の水圧により弁体53が排水口51を閉塞する。この状態で、操作レバーの操作により昇降部材54が持ち上げられると、図12に示すように、弁体53が昇降部材54と一体に上昇するので、排水口51が開放されて洗浄タンク50内の洗浄水が便鉢側へ排出される。また、昇降部材54の上昇に伴って貯水空間68の容積が増大していくのであるが、この間、逆止弁69では、パッキン72が弁口71から離間する方向へ移動して弁口71を開放することにより、開弁状態が保たれるので、この開放された弁口71を通して洗浄タンク50内の洗浄水が速やかに貯水空間68内に流入する。同時に、連通孔70を通ることによっても、洗浄水が貯水空間68内に流入する。
【0048】
この後、洗浄タンク50内の洗浄水の水位が所定高さまで低下すると、図13に示すように、昇降部材54と弁体53が下降を開始し、昇降部材54の下降に伴って貯水空間68内の洗浄水が洗浄タンク50側へ流出する。このとき、逆止弁69のパッキン72が、貯水空間68内の水圧により移動して弁口71を閉塞するので、洗浄水の流出経路は連通孔70だけとなる。ここで、連通孔70の流路は、弁口71に比べて狭小とされているので、洗浄水の流出量(流量)は、昇降部材54の上昇に伴って貯水空間68内に流入する洗浄水の流量よりも少なくなっている。このように、貯水部55内から外部への排水流量が流量制御手段56で絞られているので、昇降部材54と弁体53の下降速度は遅く、弁体53が下降を始めてから排水口51を閉塞するまでに要する時間が長く確保される。この遅延機構により、所定量の洗浄水が洗浄タンク50外へ排出し終わるまでは、排水口51が開放状態に保たれる。
【0049】
昇降部材54が上昇する過程では、フロート57が昇降部材54と一体となって上昇するのであるが、このフロート57は洗浄水から浮力を受けているので、操作レバーの操作が不十分であって昇降部材54に作用する引き上げ力が不足していても、フロート57に作用している浮力によって、昇降部材54は所定の高さまで確実に上昇する。したがって、貯水部55内には、所定量の洗浄水が確実に貯留される。この貯水部55に貯留される洗浄水の量は、弁体53が下降を開始してから排水口51を閉塞するまでの所要時間に概ね比例するので、弁体53が下降を始めてから排水口51を閉塞するまでに要する時間が十分に長く確保される。
【0050】
本実施形態によれば、昇降部材54を持ち上げるための操作が不十分であっても、フロート57が受ける浮力によって昇降部材54と弁体53を所定の高さまで確実に上昇させることができるので、弁体53が排水口51を閉塞するタイミングを遅らせるための遅延機構が十分に機能する。したがって、洗浄水の流出及び昇降部材54と弁体53の下降が開始した後は、所定の遅延時間が経過するまでは、弁体53が排水口51を閉塞することはないのであり、所定量の洗浄水が洗浄タンク50外へ排出し終わる前に排水口51が閉塞されてしまうのを確実に防止することができる。
【0051】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態1,2では、昇降部材と弁体を相対変位不能な形態に組み付けたが、昇降部材と弁体は鎖等の可撓性を有する連結部材を介して連結してもよい。
(2)上記実施形態1,2では、昇降部材とフロートを相対変位不能な形態に組み付けたが、昇降部材とフロートは鎖等の可撓性を有する連結部材を介して連結してもよい。
(3)上記実施形態1,2では、洗浄タンクに昇降不能に固定して設けたピストンに、昇降部材のシリンダ部を外嵌させる形態としたが、洗浄タンクに昇降不能に固定して設けたシリンダ内に、昇降部材のピストン部を内嵌させる形態としてもよい。
【0052】
(4)上記実施形態1では、連通孔の開口面積を開度調節部材で調節するようにしたが、開度調節部材を設けず、連通孔の開口面積を調節できないようにしてもよい。
(5)上記実施形態1では、開度調節部材が逆止弁の構成部材を兼ねるようにしたが、開度調節部材は、逆止弁を構成しない専用の部材でもよい。
(6)実施形態1の、流量制御手段として連通孔の開口面積を開度調節部材で調節する構成は、実施形態2に適用してもよい。
(7)上記実施形態1では、オーバーフロー管をガイド部材として利用したが、オーバーフロー管とは別に専用のガイド部材を設けてもよい。
(8)上記実施形態1では、弁体の姿勢の傾きを防止するためのガイド部材を設けたが、このようなガイド部材を設けない形態としてもよい。
(9)実施形態1の弁体の傾き防止手段(ガイド部材とスライダ)は、実施形態2に適用することができる。
(10)上記実施形態2では、洗浄タンク内の洗浄水を貯水部内に流入させるようにしたが、上水から供給される水を、洗浄タンクを介さずに、直接、貯水部内に流入させてもよい。この場合、貯水部から流出させた貯留水は、便鉢へ供給すればよい。
【符号の説明】
【0053】
A…洗浄タンク装置
10…洗浄タンク
11…排水口
13…弁体
14…昇降部材
15…貯水部
16…流量制御手段
17…フロート
24…オーバーフロー管(ガイド部材)
31…スライダ
32…逆止弁
33…連通孔
34…開度調節部材
37…弁口
44…切欠部
B…洗浄タンク装置
50…洗浄タンク
51…排水口
53…弁体
54…昇降部材
55…貯水部
56…流量制御手段
57…フロート
69…逆止弁
70…連通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水を貯留する洗浄タンクと、
前記洗浄タンクの底部に設けられた排水口と、
前記洗浄タンク内に設けられ、前記排水口を開閉する弁体と、
前記弁体と一体的に昇降する昇降部材と、
前記昇降部材の上昇に伴って貯留水を流入させるともに、前記昇降部材の下降に伴って貯留水を流出させる貯水部と、
前記貯水部内への貯留水の流入量よりも前記貯水部からの貯留水の流出量を少なくする流量制御手段と、
前記昇降部材と一体的に上昇可能であり、前記洗浄タンク内の洗浄水から浮力を受けるフロートとを備えていることを特徴とする洗浄タンク装置。
【請求項2】
前記流量制御手段は、貯留水の前記貯水部への流入を許容し、且つ前記貯水部からの貯留水の流出を規制する逆止弁を備えていることを特徴とする請求項1記載の洗浄タンク装置。
【請求項3】
前記流量制御手段が前記昇降部材に一体的に組み付けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の洗浄タンク装置。
【請求項4】
前記流量制御手段は、前記貯水部内の貯留水を流出させる連通孔と、前記連通孔の開口面積を増減させる開度調節部材とを備えて構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の洗浄タンク装置。
【請求項5】
前記開度調節部材は、前記連通孔が貫通して形成されている円筒形の壁部内に回転可能に取り付けられ、
前記開度調節部材には、前記開度調節手段の外周面に開口するとともに前記貯水部内に連通した形態の切欠部と、前記流量制御手段を構成する逆止弁の弁口とが形成され、
前記開度調節部材の周方向における位置を変えて前記切欠部と前記連通孔との対向面積を変化させることで、前記連通孔の開口面積が調節されるようになっていることを特徴とする請求項4記載の洗浄タンク装置。
【請求項6】
前記洗浄タンク内には、上下方向に延びるガイド部材が設けられ、
前記弁体が、前記昇降部材に対して相対変位を規制された状態に組み付けられており、
前記昇降部材には、前記ガイド部材に対して相対的に上下動可能に嵌合されるスライダが設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の洗浄タンク装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2012−177235(P2012−177235A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39958(P2011−39958)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】