洗浄ブラシ用毛材および洗浄ブラシ
【課題】従来の丸断面毛材に比べ、毛材に洗浄液が含みやすいと共に、毛材が中空形状であり、且つ柔軟である為、被洗浄面に対して押圧が低くても高い洗浄性能を有する洗浄ブラシ用毛材および洗浄用ブラシを提供する。
【解決手段】熱可塑性エラストマー製モノフィラメントのカットブリッスルからなる洗浄ブラシ用毛材であって、前記モノフィラメントの断面は、複数の単位形状を環状に連結してなるとともに、中心に中空部を有する異形中空断面であることを特徴とする洗浄ブラシ用毛材、およびこの洗浄ブラシ用毛材を毛材の少なくとも一部に使用した洗浄ブラシ。
【解決手段】熱可塑性エラストマー製モノフィラメントのカットブリッスルからなる洗浄ブラシ用毛材であって、前記モノフィラメントの断面は、複数の単位形状を環状に連結してなるとともに、中心に中空部を有する異形中空断面であることを特徴とする洗浄ブラシ用毛材、およびこの洗浄ブラシ用毛材を毛材の少なくとも一部に使用した洗浄ブラシ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、洗浄ブラシ用毛材および洗浄ブラシに関するものであり、さらに詳しくは、フラットパネルディスプレイ（以下、ＦＰＤと称す）や半導体の基盤などの洗浄工程、特に精密機器洗浄工程で使用される洗浄ブラシ用毛材および洗浄ブラシに関するものである。
【背景技術】
【０００２】
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイに代表されるＦＰＤや各種半導体の製造においては、基盤の精密洗浄が不可欠であり、その洗浄精度が製品の性能や不良率に大きく影響する。特にＦＰＤは近年大型化が進み、その長大な基盤全体を高精度に洗浄する新たな技術が求められている。
【０００３】
従来から、ＦＰＤ用基盤の洗浄には、合成樹脂製毛材を植毛したロールブラシを回転させ、流水中でこのロールブラシをＦＰＤ表面に押し当てて物理的に汚れを除去する方法が採用されている。しかし、この方法ではロールブラシを押圧して洗浄するため、毛材全体が湾曲して毛材側面で摩擦洗浄することになるが、その結果、ＦＰＤの平面部分の汚れは除去されるものの、細部には異物が残留しやすいという欠点があった。
【０００４】
これに対して、毛材の先端をテーパー形状にしたブラシ（例えば、特許文献１参照）が提案されている。このブラシは、毛先が細く、毛先が基盤の細部まで入り込みやすいことから、洗浄効率が向上するといった特徴を持っている。しかしながら、近年のＦＰＤ基盤はブラシの押圧による歪みを抑制する目的で押圧力を下げる必要があるため、これに伴って、毛材の先端をテーパー形状にしたブラシを使用した場合には、被洗浄面の細部に汚れが残留したり、洗浄時間が長くかかったりするなどの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００５】
【特許文献１】特開２００３−３４９号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
本発明の目的は、洗浄ブラシ、特に精密洗浄ブラシに使用した場合、細部にわたり被洗浄面の汚れを落とすことができるとともに、洗浄ブラシの押圧が低くても高い洗浄性能が得られる洗浄ブラシ用毛材およびこの毛材を使用した洗浄ブラシを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
上記の目的を達成するため本発明によれば、熱可塑性エラストマー製モノフィラメントのカットブリッスルからなる洗浄ブラシ用毛材であって、前記モノフィラメントの断面は、その外周周縁に複数の単位形状が環状に連結してなるとともに、中心に中空部を有する異形中空断面であることを特徴とする洗浄ブラシ用毛材が提供される。
【０００８】
なお、本発明の洗浄ブラシ用毛材においては、前記中空異形断面の単位形状の数が４〜１０の範囲にあることが好ましい条件として挙げられ、これを満たすことにより更に優れた効果を得ることができる。
【０００９】
また、本発明の洗浄ブラシは、上記の洗浄ブラシ用毛材を毛材の少なくとも一部に使用したことを特徴とし、従来の洗浄ブラシよりも高い清掃性能を有するものである。
【発明の効果】
【００１０】
本発明によれば、以下に説明するとおり、毛材を構成するモノフィラメントが熱可塑性エラストマーからなる異形中空断面形状であるため、従来の丸断面毛材やテーパー毛材に比べ、ブラシの押圧が低くても高い洗浄性能が得られる。本発明の洗浄ブラシ用毛材を使用した洗浄ブラシは、特にＦＰＤや各種半導体の基盤の製造工程などの高精度な洗浄が要求される精密洗浄分野にとって極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【００１１】
【図１】本発明の化粧ブラシ用毛材の一例を示す拡大模式図である。
【図２】（ａ）、（ｂ）、（ｃ）は本発明の洗浄ブラシ用毛材を構成する合成樹脂モノフィラメントの一例を示す断面図である。
【図３】（ａ）、（ｂ）は従来の洗浄ブラシ用毛材を構成する合成樹脂モノフィラメントの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１２】
以下、本発明の洗浄用ブラシ毛材について、図面に従って具体的に説明する。
図１および図２（ａ）、（ｂ）および（ｃ）は、本発明の洗浄ブラシ用毛材の一例を示した拡大模式図と断面図である。尚、図における符号１は洗浄ブラシ用毛材或いはブリッスルを示す。
【００１３】
ここで、図１および図２（ａ）に示した実施例は、後述する熱可塑性エラストマー樹脂から構成され、断面の外周周縁に複数の単位形状２ａ〜２ｄを環状に４個連結してなり、その断面中心に中空部３を有する異形断面形状の合成樹脂モノフィラメントからなるブリッスルを素材とする洗浄用ブラシ毛材１を示すものである。
【００１４】
つまり、本発明の洗浄ブラシ用毛材１は毛材断面の中心に中空部３を有するため、この中空部３に洗浄液を含有しやすく、持続的な洗浄効果があるばかりか、毛材断面の外周周縁に複数の単位形状が連続形成されており、且つ熱可塑性エラストマーから構成されているために毛材がフレキシブルに変形し、被洗浄面に対し毛材が面接触する面積が従来の毛材に比べて広くなるため、被洗浄面の洗浄性に優れた効果を発揮する洗浄ブラシ用毛材の実現が可能となるのである。
【００１５】
なお、上記条件を満たせば、洗浄液の含み具合と離脱性能にも優れた効果が得られるが、モノフィラメントの断面において単位形状が環状に連結する数については、洗浄液の含み具合と離脱性能とのバランスが良くなることから４〜１０の範囲であることが好ましく、更には５〜８であることがより好ましい。
【００１６】
図２（ｂ）は単位形状２ａ〜２ｆが６個環状に連結、また図２（ｃ）は、同じく単位形状２ａ〜２ｈが８個環状に連結していると共に、断面中心に中空部３を備えたものであるが、この場合にも図１および図２（ａ）と同様の効果を得ることができる。
【００１７】
一方、単位形状の数が上記の範囲未満や範囲を超える場合は、洗浄液の含み具合と離脱性能が劣り、目的とする洗浄効果が得られなくなる。
【００１８】
また、図３（ａ）のように、単位形状２ａ〜２ｃが並列に連結した断面形状の場合は、断面形状が扁平であるため、毛材が変形せず、毛材が点接触で洗浄したり、全ての毛材が一定の条件で洗浄したりすることができない。さらに、図３（ｂ）のように、単位形状２ａ〜２ｆが６個環状に連結しているものの、断面中心に中空部を有さない断面形状の場合は、中空部が無いことで、洗浄時に毛材が変形せず、満足した洗浄効果が得られない。
ここで、本発明の洗浄ブラシ用毛材の外径は、洗浄ブラシの種類に応じて適宜選択することができるが、洗浄ブラシに要求される洗浄性能を考慮すると０．０３〜０．３０ｍｍの範囲であることが好ましく、更には０．０５〜０．１０ｍｍの範囲であることがより好ましい。
【００１９】
また、本発明の洗浄ブラシ用毛材に使用する熱可塑性エラストマー樹脂については特に限定はしないが、例えばポリエステル系エラストマーやポリアミド系エラストマー等を用いることができる。
【００２０】
ここで、ポリエステル系エラストマーとしてはハードセグメントとしてポリエステルを用い、ソフトセグメントとして脂肪族ポリエーテル、ポリエステルを用いたものを指し、また、ポリアミド系エラストマーとしてはハードセグメントとしてナイロンオリゴマーを用い、ソフトセグメントとしてポリオール、ポリエステルを用いたものを指す。
また、本発明の洗浄ブラシ用毛材を構成するモノフィラメントには、使用中の変・退色を防止または毛材の耐久性を向上させる目的で、本発明の目的を阻害しない範囲で各種の添加剤、例えば、可塑剤、酸化防止剤、艶消し剤、消臭剤、消泡剤、整色剤、難燃剤、糸磨耗低減剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶核剤、着色顔料、静電剤、抗菌剤などを単独もしくは併用して含有していても構わない。
【００２１】
本発明の洗浄ブラシ用毛材には、フィラメントの帯電によるまとわり付きや絡まり、あるいはホコリの付着を防止する目的で、帯電防止剤を表面付与したものでもよい。
本発明の洗浄ブラシ用毛材には、毛材の植毛性を向上させるため、シリコーン系などの公知の界面活性剤をフィラメント表面に付与しても良い。
【００２２】
次に、本発明の洗浄ブラシ用毛材の製造方法について説明するが、以下に説明する製造方法は、本発明の洗浄ブラシを得る為の一例に過ぎず、全てこの方法に限定されるものではない。
【００２３】
まず、本発明の洗浄ブラシ用毛材１となるモノフィラメントは、合成樹脂チップを公知の溶融紡糸機に供給した後、所望断面形状を有する紡糸口金孔から押し出すが、例えば図２（ａ）の断面形状を得る方法としては、各単位形状２ａ〜２ｄを形成する吐出孔を単独で環状配置させたもので押し出した後に合糸して融着したものを冷却・固化する方法が採られる。その後、必要に応じて加熱延伸・弛緩熱処理を施したものを巻き取る。
【００２４】
以上、説明したとおり、本発明の洗浄ブラシ毛材は、ブラシの押圧が低くても高い洗浄性能が得られる為、本発明の洗浄ブラシ用毛材を使用した洗浄ブラシは、特にＦＰＤや各種半導体の基盤の製造工程などの高精度な洗浄が要求される精密洗浄分野にとってその実用性は極めて高い。
【実施例】
【００２５】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、本発明の洗浄ブラシの評価方法については、実施例および比較例で得られた洗浄ブラシ用毛材を植毛したチャンネル型ロールブラシ（直径１０ｍｍ、長さ５００ｍｍ）を使用した。
【００２６】
また、実施例におけるブラシの評価方法は次の通りである。
【００２７】
〔洗浄性評価〕
ロールブラシを洗浄装置に取り付け、実際に純水をかけながら液晶パネル用ガラス基盤（４００ｍｍ×４００ｍｍ）を洗浄し、光学顕微鏡を用いて洗浄後の異物付着数を計測した。なお、洗浄時のロールブラシの回転数は２００ｒｐｍ、ガラス基盤の移動速度は１．０ｃｍ／秒、ロールブラシのガラス基盤への押し付け量は１．０ｍｍと２．０ｍｍの２段階とした。
【００２８】
〔実施例１、２、３〕
ポリエステル系エラストマー樹脂（東レデュポン（株）社製、ハイトレル４０４７）を使用し、エクストルーダー型紡糸機にて２７０℃に加熱溶融させた樹脂を、表１に示した断面に対応したノズルから押し出し、合糸、冷却、続いて延伸し、さらに乾熱雰囲気中で弛緩熱処理を施し、外接円が０．１００ｍｍの異形断面モノフィラメントを束状に巻き取った。次に、所定の長さに切断して洗浄ブラシ用毛材を得た。
さらに、得られた毛材をチャンネルに植毛して洗浄ブラシを作成した。評価結果を表１に示す。
【００２９】
〔実施例４〕
ナイロン系エラストマー樹脂（アルケマ（株）社製 ＰＥＢＡＸ ６３３Ｓ）を用いて、エクストルーダー型紡糸機にて２００℃に加熱溶融させた樹脂を、表１に示した断面に対応したノズルから押し出し、合糸、冷却、続いて延伸し、さらに乾熱雰囲気中で弛緩熱処理を施し、外接円が０．１８０ｍｍの異形断面モノフィラメントを束状に巻き取った。次に、所定の長さに切断して洗浄ブラシ用毛材を得た。
さらに、得られた毛材をチャンネルに植毛して洗浄ブラシを作成した。評価結果を表１に示す。
【００３０】
〔比較例１〕
実施例１において、ノズル孔の形状を変えて、表１に示す断面形状の単位形状を並列に３個連結（長径０．２ｍｍ、短径０．０６ｍｍ）し、ノズルから押し出した後、合糸せずに冷却したこと以外は実施例１と同様の方法で洗浄ブラシを作成した。評価結果を表１
に示す。
【００３１】
〔比較例２、３〕
比較例１において、ノズル孔の形状を変えて表１に示す断面形状の６葉断面、丸断面に変更したこと以外は、比較例１と同様の方法で洗浄ブラシを作成した。評価結果を表１に示す。
【００３２】
〔比較例４〕
実施例１において、使用する樹脂をナイロン６１０樹脂（東レ（株）社製Ｍ２００１）に変更したこと以外は実施例１と同様の方法で洗浄ブラシを作成した。評価結果を表１に示す。
【００３３】
【表１】
【００３４】
表１の結果から、実施例１〜４に示した本発明の洗浄ブラシ用毛材は、単位形状を並列に３個連結しただけの形状（比較例１）、６葉断面（中空部が無い）形状（比較例２）、および丸断面形状（比較例３）、樹脂がナイロン６１０の中空多葉断面形状（比較例４）との比較から明らかなように、細部に渡り被洗浄面の汚れを落とすことが出来るとともに、洗浄ブラシの押圧が低くても高い洗浄性能が得られるものであった。
【産業上の利用可能性】
【００３５】
以上、説明したとおり、本発明の洗浄ブラシ用毛材は、毛材に中空部があることにより、洗浄液の保持性および、被研磨面への洗浄液の供給性にも優れ、且つ、フレキシブルに変形するため、従来の洗浄用ブラシ毛材に比べて洗浄性能が極めて高い。そして本発明の洗浄ブラシ用毛材を少なくとも一部に使用した洗浄ブラシは洗浄特性を十分発揮し、その実用性は極めて高い。
【符号の説明】
【００３６】
１・・・洗浄ブラシ用毛材
２ａ〜２ｈ・・・単位形状
３・・・中空部
【技術分野】
【０００１】
本発明は、洗浄ブラシ用毛材および洗浄ブラシに関するものであり、さらに詳しくは、フラットパネルディスプレイ（以下、ＦＰＤと称す）や半導体の基盤などの洗浄工程、特に精密機器洗浄工程で使用される洗浄ブラシ用毛材および洗浄ブラシに関するものである。
【背景技術】
【０００２】
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイに代表されるＦＰＤや各種半導体の製造においては、基盤の精密洗浄が不可欠であり、その洗浄精度が製品の性能や不良率に大きく影響する。特にＦＰＤは近年大型化が進み、その長大な基盤全体を高精度に洗浄する新たな技術が求められている。
【０００３】
従来から、ＦＰＤ用基盤の洗浄には、合成樹脂製毛材を植毛したロールブラシを回転させ、流水中でこのロールブラシをＦＰＤ表面に押し当てて物理的に汚れを除去する方法が採用されている。しかし、この方法ではロールブラシを押圧して洗浄するため、毛材全体が湾曲して毛材側面で摩擦洗浄することになるが、その結果、ＦＰＤの平面部分の汚れは除去されるものの、細部には異物が残留しやすいという欠点があった。
【０００４】
これに対して、毛材の先端をテーパー形状にしたブラシ（例えば、特許文献１参照）が提案されている。このブラシは、毛先が細く、毛先が基盤の細部まで入り込みやすいことから、洗浄効率が向上するといった特徴を持っている。しかしながら、近年のＦＰＤ基盤はブラシの押圧による歪みを抑制する目的で押圧力を下げる必要があるため、これに伴って、毛材の先端をテーパー形状にしたブラシを使用した場合には、被洗浄面の細部に汚れが残留したり、洗浄時間が長くかかったりするなどの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【０００５】
【特許文献１】特開２００３−３４９号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００６】
本発明の目的は、洗浄ブラシ、特に精密洗浄ブラシに使用した場合、細部にわたり被洗浄面の汚れを落とすことができるとともに、洗浄ブラシの押圧が低くても高い洗浄性能が得られる洗浄ブラシ用毛材およびこの毛材を使用した洗浄ブラシを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【０００７】
上記の目的を達成するため本発明によれば、熱可塑性エラストマー製モノフィラメントのカットブリッスルからなる洗浄ブラシ用毛材であって、前記モノフィラメントの断面は、その外周周縁に複数の単位形状が環状に連結してなるとともに、中心に中空部を有する異形中空断面であることを特徴とする洗浄ブラシ用毛材が提供される。
【０００８】
なお、本発明の洗浄ブラシ用毛材においては、前記中空異形断面の単位形状の数が４〜１０の範囲にあることが好ましい条件として挙げられ、これを満たすことにより更に優れた効果を得ることができる。
【０００９】
また、本発明の洗浄ブラシは、上記の洗浄ブラシ用毛材を毛材の少なくとも一部に使用したことを特徴とし、従来の洗浄ブラシよりも高い清掃性能を有するものである。
【発明の効果】
【００１０】
本発明によれば、以下に説明するとおり、毛材を構成するモノフィラメントが熱可塑性エラストマーからなる異形中空断面形状であるため、従来の丸断面毛材やテーパー毛材に比べ、ブラシの押圧が低くても高い洗浄性能が得られる。本発明の洗浄ブラシ用毛材を使用した洗浄ブラシは、特にＦＰＤや各種半導体の基盤の製造工程などの高精度な洗浄が要求される精密洗浄分野にとって極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【００１１】
【図１】本発明の化粧ブラシ用毛材の一例を示す拡大模式図である。
【図２】（ａ）、（ｂ）、（ｃ）は本発明の洗浄ブラシ用毛材を構成する合成樹脂モノフィラメントの一例を示す断面図である。
【図３】（ａ）、（ｂ）は従来の洗浄ブラシ用毛材を構成する合成樹脂モノフィラメントの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１２】
以下、本発明の洗浄用ブラシ毛材について、図面に従って具体的に説明する。
図１および図２（ａ）、（ｂ）および（ｃ）は、本発明の洗浄ブラシ用毛材の一例を示した拡大模式図と断面図である。尚、図における符号１は洗浄ブラシ用毛材或いはブリッスルを示す。
【００１３】
ここで、図１および図２（ａ）に示した実施例は、後述する熱可塑性エラストマー樹脂から構成され、断面の外周周縁に複数の単位形状２ａ〜２ｄを環状に４個連結してなり、その断面中心に中空部３を有する異形断面形状の合成樹脂モノフィラメントからなるブリッスルを素材とする洗浄用ブラシ毛材１を示すものである。
【００１４】
つまり、本発明の洗浄ブラシ用毛材１は毛材断面の中心に中空部３を有するため、この中空部３に洗浄液を含有しやすく、持続的な洗浄効果があるばかりか、毛材断面の外周周縁に複数の単位形状が連続形成されており、且つ熱可塑性エラストマーから構成されているために毛材がフレキシブルに変形し、被洗浄面に対し毛材が面接触する面積が従来の毛材に比べて広くなるため、被洗浄面の洗浄性に優れた効果を発揮する洗浄ブラシ用毛材の実現が可能となるのである。
【００１５】
なお、上記条件を満たせば、洗浄液の含み具合と離脱性能にも優れた効果が得られるが、モノフィラメントの断面において単位形状が環状に連結する数については、洗浄液の含み具合と離脱性能とのバランスが良くなることから４〜１０の範囲であることが好ましく、更には５〜８であることがより好ましい。
【００１６】
図２（ｂ）は単位形状２ａ〜２ｆが６個環状に連結、また図２（ｃ）は、同じく単位形状２ａ〜２ｈが８個環状に連結していると共に、断面中心に中空部３を備えたものであるが、この場合にも図１および図２（ａ）と同様の効果を得ることができる。
【００１７】
一方、単位形状の数が上記の範囲未満や範囲を超える場合は、洗浄液の含み具合と離脱性能が劣り、目的とする洗浄効果が得られなくなる。
【００１８】
また、図３（ａ）のように、単位形状２ａ〜２ｃが並列に連結した断面形状の場合は、断面形状が扁平であるため、毛材が変形せず、毛材が点接触で洗浄したり、全ての毛材が一定の条件で洗浄したりすることができない。さらに、図３（ｂ）のように、単位形状２ａ〜２ｆが６個環状に連結しているものの、断面中心に中空部を有さない断面形状の場合は、中空部が無いことで、洗浄時に毛材が変形せず、満足した洗浄効果が得られない。
ここで、本発明の洗浄ブラシ用毛材の外径は、洗浄ブラシの種類に応じて適宜選択することができるが、洗浄ブラシに要求される洗浄性能を考慮すると０．０３〜０．３０ｍｍの範囲であることが好ましく、更には０．０５〜０．１０ｍｍの範囲であることがより好ましい。
【００１９】
また、本発明の洗浄ブラシ用毛材に使用する熱可塑性エラストマー樹脂については特に限定はしないが、例えばポリエステル系エラストマーやポリアミド系エラストマー等を用いることができる。
【００２０】
ここで、ポリエステル系エラストマーとしてはハードセグメントとしてポリエステルを用い、ソフトセグメントとして脂肪族ポリエーテル、ポリエステルを用いたものを指し、また、ポリアミド系エラストマーとしてはハードセグメントとしてナイロンオリゴマーを用い、ソフトセグメントとしてポリオール、ポリエステルを用いたものを指す。
また、本発明の洗浄ブラシ用毛材を構成するモノフィラメントには、使用中の変・退色を防止または毛材の耐久性を向上させる目的で、本発明の目的を阻害しない範囲で各種の添加剤、例えば、可塑剤、酸化防止剤、艶消し剤、消臭剤、消泡剤、整色剤、難燃剤、糸磨耗低減剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶核剤、着色顔料、静電剤、抗菌剤などを単独もしくは併用して含有していても構わない。
【００２１】
本発明の洗浄ブラシ用毛材には、フィラメントの帯電によるまとわり付きや絡まり、あるいはホコリの付着を防止する目的で、帯電防止剤を表面付与したものでもよい。
本発明の洗浄ブラシ用毛材には、毛材の植毛性を向上させるため、シリコーン系などの公知の界面活性剤をフィラメント表面に付与しても良い。
【００２２】
次に、本発明の洗浄ブラシ用毛材の製造方法について説明するが、以下に説明する製造方法は、本発明の洗浄ブラシを得る為の一例に過ぎず、全てこの方法に限定されるものではない。
【００２３】
まず、本発明の洗浄ブラシ用毛材１となるモノフィラメントは、合成樹脂チップを公知の溶融紡糸機に供給した後、所望断面形状を有する紡糸口金孔から押し出すが、例えば図２（ａ）の断面形状を得る方法としては、各単位形状２ａ〜２ｄを形成する吐出孔を単独で環状配置させたもので押し出した後に合糸して融着したものを冷却・固化する方法が採られる。その後、必要に応じて加熱延伸・弛緩熱処理を施したものを巻き取る。
【００２４】
以上、説明したとおり、本発明の洗浄ブラシ毛材は、ブラシの押圧が低くても高い洗浄性能が得られる為、本発明の洗浄ブラシ用毛材を使用した洗浄ブラシは、特にＦＰＤや各種半導体の基盤の製造工程などの高精度な洗浄が要求される精密洗浄分野にとってその実用性は極めて高い。
【実施例】
【００２５】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、本発明の洗浄ブラシの評価方法については、実施例および比較例で得られた洗浄ブラシ用毛材を植毛したチャンネル型ロールブラシ（直径１０ｍｍ、長さ５００ｍｍ）を使用した。
【００２６】
また、実施例におけるブラシの評価方法は次の通りである。
【００２７】
〔洗浄性評価〕
ロールブラシを洗浄装置に取り付け、実際に純水をかけながら液晶パネル用ガラス基盤（４００ｍｍ×４００ｍｍ）を洗浄し、光学顕微鏡を用いて洗浄後の異物付着数を計測した。なお、洗浄時のロールブラシの回転数は２００ｒｐｍ、ガラス基盤の移動速度は１．０ｃｍ／秒、ロールブラシのガラス基盤への押し付け量は１．０ｍｍと２．０ｍｍの２段階とした。
【００２８】
〔実施例１、２、３〕
ポリエステル系エラストマー樹脂（東レデュポン（株）社製、ハイトレル４０４７）を使用し、エクストルーダー型紡糸機にて２７０℃に加熱溶融させた樹脂を、表１に示した断面に対応したノズルから押し出し、合糸、冷却、続いて延伸し、さらに乾熱雰囲気中で弛緩熱処理を施し、外接円が０．１００ｍｍの異形断面モノフィラメントを束状に巻き取った。次に、所定の長さに切断して洗浄ブラシ用毛材を得た。
さらに、得られた毛材をチャンネルに植毛して洗浄ブラシを作成した。評価結果を表１に示す。
【００２９】
〔実施例４〕
ナイロン系エラストマー樹脂（アルケマ（株）社製 ＰＥＢＡＸ ６３３Ｓ）を用いて、エクストルーダー型紡糸機にて２００℃に加熱溶融させた樹脂を、表１に示した断面に対応したノズルから押し出し、合糸、冷却、続いて延伸し、さらに乾熱雰囲気中で弛緩熱処理を施し、外接円が０．１８０ｍｍの異形断面モノフィラメントを束状に巻き取った。次に、所定の長さに切断して洗浄ブラシ用毛材を得た。
さらに、得られた毛材をチャンネルに植毛して洗浄ブラシを作成した。評価結果を表１に示す。
【００３０】
〔比較例１〕
実施例１において、ノズル孔の形状を変えて、表１に示す断面形状の単位形状を並列に３個連結（長径０．２ｍｍ、短径０．０６ｍｍ）し、ノズルから押し出した後、合糸せずに冷却したこと以外は実施例１と同様の方法で洗浄ブラシを作成した。評価結果を表１
に示す。
【００３１】
〔比較例２、３〕
比較例１において、ノズル孔の形状を変えて表１に示す断面形状の６葉断面、丸断面に変更したこと以外は、比較例１と同様の方法で洗浄ブラシを作成した。評価結果を表１に示す。
【００３２】
〔比較例４〕
実施例１において、使用する樹脂をナイロン６１０樹脂（東レ（株）社製Ｍ２００１）に変更したこと以外は実施例１と同様の方法で洗浄ブラシを作成した。評価結果を表１に示す。
【００３３】
【表１】
【００３４】
表１の結果から、実施例１〜４に示した本発明の洗浄ブラシ用毛材は、単位形状を並列に３個連結しただけの形状（比較例１）、６葉断面（中空部が無い）形状（比較例２）、および丸断面形状（比較例３）、樹脂がナイロン６１０の中空多葉断面形状（比較例４）との比較から明らかなように、細部に渡り被洗浄面の汚れを落とすことが出来るとともに、洗浄ブラシの押圧が低くても高い洗浄性能が得られるものであった。
【産業上の利用可能性】
【００３５】
以上、説明したとおり、本発明の洗浄ブラシ用毛材は、毛材に中空部があることにより、洗浄液の保持性および、被研磨面への洗浄液の供給性にも優れ、且つ、フレキシブルに変形するため、従来の洗浄用ブラシ毛材に比べて洗浄性能が極めて高い。そして本発明の洗浄ブラシ用毛材を少なくとも一部に使用した洗浄ブラシは洗浄特性を十分発揮し、その実用性は極めて高い。
【符号の説明】
【００３６】
１・・・洗浄ブラシ用毛材
２ａ〜２ｈ・・・単位形状
３・・・中空部
【特許請求の範囲】
【請求項１】
熱可塑性エラストマー製モノフィラメントのカットブリッスルからなる洗浄ブラシ用毛材であって、前記モノフィラメントの断面は、その外周周縁に複数の単位形状が環状に連結してなるとともに、中心に中空部を有する異形中空断面であることを特徴とする洗浄ブラシ用毛材。
【請求項２】
前記中空異形断面の単位形状の数が４〜１０の範囲にあることを特徴とする請求項１に記載の洗浄ブラシ用毛材。
【請求項３】
請求項１または２に記載の洗浄ブラシ用毛材を毛材の少なくとも一部に使用したことを特徴とする洗浄ブラシ。
【請求項１】
熱可塑性エラストマー製モノフィラメントのカットブリッスルからなる洗浄ブラシ用毛材であって、前記モノフィラメントの断面は、その外周周縁に複数の単位形状が環状に連結してなるとともに、中心に中空部を有する異形中空断面であることを特徴とする洗浄ブラシ用毛材。
【請求項２】
前記中空異形断面の単位形状の数が４〜１０の範囲にあることを特徴とする請求項１に記載の洗浄ブラシ用毛材。
【請求項３】
請求項１または２に記載の洗浄ブラシ用毛材を毛材の少なくとも一部に使用したことを特徴とする洗浄ブラシ。
【図１】
【図２】
【図３】
【図２】
【図３】
【公開番号】特開２０１１−２０４８１８（Ｐ２０１１−２０４８１８Ａ）
【公開日】平成２３年１０月１３日（２０１１．１０．１３）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２０１０−６９１９２（Ｐ２０１０−６９１９２）
【出願日】平成２２年３月２５日（２０１０．３．２５）
【出願人】（０００２１９２８８）東レ・モノフィラメント株式会社 (239)
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成２３年１０月１３日（２０１１．１０．１３）
【国際特許分類】
【出願日】平成２２年３月２５日（２０１０．３．２５）
【出願人】（０００２１９２８８）東レ・モノフィラメント株式会社 (239)
【Ｆターム（参考）】
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