説明

洗浄ブラシ用毛材および洗浄ブラシ

【課題】従来の洗浄ブラシ用毛材に比べて洗浄対象物上に付着した汚れ、異物を満遍なく除去することができると共に、清掃により除去された異物などがタフト内およびタフト間に付着し難い特性に優れた洗浄用ブラシ毛材、およびこの洗浄用ブラシ毛材を少なくとも一部に使用した洗浄ブラシを提供する。
【解決手段】芯部にポリアミド樹脂、鞘部に反応性基を有する変性エチレンテトラフルオロエチレン共重合樹脂を用い、直径が0.05mm〜1.0mmであって、芯部/鞘部の断面積比率が10/90〜40/60の範囲にある芯鞘複合モノフィラメントからなることを特徴とする洗浄ブラシ用毛材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板、液晶基板、磁気ディスク等の精密機械洗浄処理に使用するのに適した洗浄ブラシ用毛材およびこの洗浄ブラシ用毛材を少なくとも一部に使用した洗浄ブラシに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、洗浄ブラシ用毛材としては、合成樹脂製毛材が多用されてきたが、合成樹脂製毛材は容易に加工することができる反面、ブラシに加工した後で毛の長さを揃える必要があるため、切断加工をした毛材の長さに誤差が生じ、洗浄対象物の破損、キズ発生、汚れ再付着などの問題を招くことがあった。
【0003】
この問題解決のため、これまでにも様々な手法がなされ、例えば、回転する円盤状の研磨板に毛材を植毛したブラシの毛先を押しつけ加工する方法で得られるブラシ(例えば、特許文献1参照)が知られている。この毛先加工毛材を植毛したブラシは、加工された部位に削れカスが残り、このブラシを使用した場合には、削れカスが洗浄対象物である基板上に付着したり、基板上にスリキズ(スクラッチ)が生じたりすることがあり、このスリキズによって基板上の配線の断線等を招くという問題があった。
【0004】
また、合成繊維を用いた洗浄用ブラシにおいて、毛先を溶解処理し、テーパー形状にしたブラシ(例えば、特許文献2参照)が知られている。この毛先テーパー加工毛材が植毛されたブラシは、洗浄時に基板に与える衝撃を少なくするという利点があるが、基板上に付着した汚れなどを上から撫でる状態となるために、洗浄ブラシとして十分な性能を有するものではなかった。
【0005】
つまり、従来技術による合成樹脂製毛材では、洗浄ブラシ用毛材とした場合に基板に付着した汚れ、異物を除去できるものではないため、洗浄ブラシとして十分に性能を発揮せず、これらの特性を全て満足する洗浄ブラシ用毛材の実現が強く求められているのが実状であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平4−096709号公報
【特許文献2】特開2003−000349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、従来の合成樹脂製洗浄ブラシ用毛材に比べ、洗浄対象物上に付着した汚れ、異物を満遍なく除去することができると共に、清掃により除去された異物などがタフト内およびタフト間に付着し難い洗浄ブラシ用毛材、およびこの洗浄ブラシ用毛材を少なくとも一部に使用した洗浄ブラシを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため本発明によれば、芯部にポリアミド樹脂、鞘部に反応性基を有する変性エチレンテトラフルオロエチレン共重合樹脂を用い、直径が0.05mm〜1.0mmであって、芯部/鞘部の断面積比率が10/90〜40/60の範囲にある芯鞘複合モノフィラメントからなることを特徴とする洗浄ブラシ用毛材が提供される。
【0009】
なお、本発明の洗浄ブラシ用毛材においては、
前記芯鞘複合モノフィラメントを後述する布粘着ガムテープ貼付剥離法により測定した布粘着ガムテープ剥離応力値から算出したガムピッチ防汚指数が90以下であること、
前記鞘部が抗菌剤を含有すること、
がいずれも好ましい条件として挙げられ、これらの条件を満たした場合には、さらに優れた性能を発揮する。
【0010】
また、本発明の洗浄用ブラシは、前記洗浄ブラシ用毛材を少なくとも一部に使用したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の洗浄ブラシ用毛材は、洗浄対象物上に付着した汚れ、異物を満遍なく除去することができると共に、清掃により除去された異物などがタフト内およびタフト間に付着し難いという優れた特性を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の洗浄ブラシ用毛材について説明する。
【0013】
本発明の洗浄ブラシ用毛材は、二重芯鞘構造を有する芯鞘複合モノフィラメントからなる洗浄ブラシ用毛材であって、この芯鞘複合モノフィラメントの鞘部が反応性基を有する変性エチレンテトラフルオロエチレン共重合樹脂(以下、EFEPと呼ぶ)からなり、芯部がポリアミド系樹脂からなることを特徴とするものである。
【0014】
本発明の洗浄ブラシ用毛材の鞘部は、水との接触角が大きいフッ素系樹脂(EFEP)で構成されることから撥水性に優れ、且つEFEPはポリアミド系樹脂との接着性の良い反応基を有するため芯部との接着性が優れている。
【0015】
本発明の洗浄ブラシ用毛材の芯部を構成するポリアミド系樹脂の具体例としては、ポリアミド6(以下、N6とする)、ポリアミド66(以下、N66とする)、ポリアミド6/66(以下、N6/66とする)、ポリアミド6/10(以下、N6/10とする)、ポリアミド6/12(以下、N6/12とする)、ポリアミド11(以下、N11とする)、およびポリアミド12(以下、N12とする)などが挙げられ、なかでもN6/10またはN6/12が好ましく使用される。
【0016】
本発明の洗浄ブラシ用毛材を構成する芯鞘複合モノフィラメントの芯部/鞘部の断面積比率は、10/90〜40/60、好ましくは20/80〜30/70の範囲にあることが重要な要件である。
【0017】
ここで、芯部と鞘部の断面積比率が上記の範囲内から外れる場合には、目的とする洗浄ブラシ用毛材の特性の発現が認められなくなるばかりか、紡糸性が困難な傾向となるため好ましくない。
【0018】
さらには、洗浄ブラシ用毛材に形成されている断面形状については、円形以外にも非円形状、例えば、四角形、六角形などの多角形、または、六葉形、八葉形などの多葉形などが挙げられる。
【0019】
本発明の芯鞘複合モノフィラメントからなる洗浄ブラシ用毛材の直径は、その用途に応じて選択することができ、通常は0.05〜1.0mm、特に0.07〜0.7mmの範囲に設定することが、洗浄ブラシ用毛材としての毛腰、洗浄ブラシとしての洗浄効果などの点から好ましい。
【0020】
本発明の芯鞘複合モノフィラメントからなる洗浄ブラシ用毛材には、清掃により除去された異物が付着し難くいという特性を有するが、除去された異物が剥がれやすくなるという特性を付加するためには、後述する布粘着ガムテープ貼付剥離法による布粘着ガムテープ剥離応力試験方法において求めたガムピッチ防汚指数(ポリアミド系樹脂N6/12で鞘部を形成した芯鞘複合モノフィラメントを100とした時)が90以下であることが好ましい。このガムピッチ防汚指数は小さいほど清掃により除去された異物に対して優れた防汚性を有していることを示し、ガムピッチ防汚指数が90を超える値では清掃により除去された異物に対する防汚性が不十分となりやすい。
【0021】
本発明の洗浄ブラシ用毛材の鞘部を構成するEFEPには、タフト内およびタフト間に付着し難い撥水性と共に雑菌などの繁殖を防ぐために、抗菌剤を含有することが好ましい。抗菌剤の具体例としては、銀、銅、亜鉛化合物などの金属イオンが挙げられ、特に銀イオンを使用した場合には優れた抗菌性を得ることができる。
【0022】
なお、本発明の目的を阻害しない範囲であれば、上記のEFEPおよびポリアミド系樹脂には、耐熱剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、可塑剤、酸化防止剤、染料および顔料などの慣用の各種添加剤を任意に含有することができる。
【0023】
次に、本発明の洗浄ブラシ用毛材の製造方法について説明する。
【0024】
まず、本発明の洗浄ブラシ用毛材となる芯鞘複合モノフィラメントは、例えば、EFEPおよびポリアミド系樹脂のほか、必要に応じて各種添加剤を所定量分散混合した後、公知の複合用溶融紡糸機に供給し、溶融押出し、冷却、および延伸工程を経て、単糸を集束して所望の長さに切断することにより、束状の集束体(ブリッスル束)を作製する。
【0025】
上記の製造方法により得られた洗浄ブラシ用毛材を使用した本発明の洗浄ブラシは、公知の方法にて製造することができ、製造方法については特に限定されない。
【0026】
以上、説明したとおり、本発明の洗浄ブラシ用毛材は、洗浄対象物上に付着した汚れ、異物を満遍なく除去することができると共に、清掃により除去された異物などがタフト内およびタフト間に付着し難いという優れた特性を有しており、さらには、毛材に抗菌性を付与することによって、雑菌が発生しにくい洗浄用ブラシ毛材とすることもできるため、その実用性が極めて高い。
【実施例】
【0027】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に何ら限定されるものではない。なお、本発明の洗浄ブラシ用毛材の評価方法については、次の通り行った。
【0028】
すなわち、実施例に示す洗浄ブラシ用毛材を厚さ0.5mm、幅約15mmの金属製チャンネルプレート(ブラシ基台)上に、洗浄ブラシ用毛材の中間点がチャンネルプレートの長さ方向の中心軸上に乗り、且つチャンネルプレートの長さ方向に対し垂直になるよう洗浄ブラシ用毛材を並べていく。その後、並べられた洗浄ブラシ用毛材の上に、チャンネルプレートと同じ長さで、直径約1mmの金属線をチャンネルプレートの長さ方向の中心軸に合わせて乗せ、チャンネルプレートの長さ方向の中心軸を対称軸としてチャンネルプレートを折り曲げることによって、洗浄ブラシ用毛材がチャンネルプレートと金属線で狭固され、且つ洗浄ブラシ用毛材がその中心点で折り曲げられた状態のチャンネルブラシが得られる。
【0029】
その後、さらにこのチャンネルブラシの一端を金属シャフト表面に溶接等で固定し、金属シャフト表面上を螺旋状に巻き付けていくことにより、下記に示す実施例および比較例に使用される直径60mm、幅20mmのロールブラシが得られる。
【0030】
得られたロールブラシにて、以下の方法で性能評価を行った。
【0031】
また、二重芯鞘構造を有する複合モノフィラメントからなる洗浄ブラシ用毛材の防汚性を評価方法については、芯鞘複合モノフィラメントによる布粘着ガムテープ貼付剥離法による布粘着ガムテープ剥離応力試験方法にて実施した。
〔ロールブラシへの汚れ残存数〕
製作したロールブラシを液晶基板上に接触させて、加温した純水を噴霧しながら500rpmで回転し、液晶基板を洗浄した。ロールブラシ内の幅100mmを光学顕微鏡もしくは走査型電子顕微鏡にて行い、状態確認をした。なお、判定基準は以下の3段階とし、判定基準Bを超える値では効果が得られないものとして、判定基準Aを目標と設定した。
【0032】
A・・ブラシ内の異物および汚れの数が0〜15の範囲にある、
B・・ブラシ内の異物および汚れの数が15〜50の範囲にある、
C・・ブラシ内の異物および汚れの数が50以上であった。
【0033】
〔洗浄ブラシ用毛材の抗菌性確認〕
本発明の洗浄ブラシ用毛材をJIS−L−1902の大腸菌による抗菌性試験を行い、静菌活性値を算出した。
【0034】
なお、判定基準は以下の2段階とした。
【0035】
○・・静菌活性値が2.2以上である、
×・・静菌活性値が2.1以下であった。
〔芯鞘複合モノフィラメントの防汚性〕
(布粘着ガムテープ貼付剥離法による布粘着ガムテープ剥離応力測定試験方法(以下、布粘着ガムテープ剥離試験という))
(1)厚さ150〜250μm、横幅30mm、縦長さ120mmの反応基を有する変性エチレンテトラフルオロエチレン共重合樹脂製2軸延伸フィルムを2枚用意し、個々のフィルムの30mm幅の一端同士を重ならないように合わせて、この合わせ面に、片面に粘着剤の塗布された25mm×25mmサイズの布粘着テープを、前記2枚のフィルムの両端に渡るように貼付することにより、接合部で縦方向に繋ぎ合わされた見かけの縦長さ約240mm、横巾10mmのフィルムを作製する。
(2)前記の2枚が繋ぎ合わされたフィルムの前記布粘着テープの貼付されていない面のどちらか半分(1枚のフィルム)に、横巾10mm、縦長さ120mmの両面粘着テープ(日東電工(株)製品、No.523または同等品)を、前記フィルムと前記両面粘着テープの横巾方向のセンター(中央)を合わせて長手方向に揃えて貼付する。
(3)長さ約200mmに切断した芯鞘複合モノフィラメント試料を、前記両面粘着テープを貼付したフィルムの粘着テープ上に、前記フィルムの長手方向と平行に隙間無く貼付し、前記両面粘着テープの長手方向からはみ出している前記芯鞘複合モノフィラメントの余端を鋏で切除し、芯鞘複合モノフィラメント試料貼付フィルムを得る。
(4)平坦な硝子板(厚さ約8mm、縦約250mm、横約80mm)の上に前記芯鞘複合モノフィラメント試料貼付フィルムを乗せ、芯鞘複合モノフィラメント貼付面を上向き、かつ芯鞘複合モノフィラメント面が左側になるようにしてから、横巾10mm、縦長さ150mmに切断した片面に粘着剤が塗布された布粘着テープ(ニチバン(株)製、ダンボール包装用強粘着テープ[LS]No.101Nまたは同等品)を、該布粘着テープの長手方向左端を前記芯鞘複合モノフィラメント試料貼付フィルムの芯鞘複合モノフィラメント面左端と合わせて、前記芯鞘複合モノフィラメント上に前記布粘着テープを仮貼付する。次いで、前記芯鞘複合モノフィラメント面右端に約30mm残っている前記布粘着テープを、前記フィルム面にしっかりと貼付する。
(5)前記芯鞘複合モノフィラメント貼付フィルムを裏返して、前記(1)で2枚のフィルムを繋ぎ合わせるために貼付した前記布粘着テープを取り除く。
(6)前記芯鞘複合モノフィラメント貼付フィルムの芯鞘複合モノフィラメント貼付面を上向きにし、芯鞘複合モノフィラメント貼付部分が硝子板上に完全に乗るようにセットして、前記芯鞘複合モノフィラメントの表面に仮貼付されている前記布粘着テープ上に重量1.43Kg、巾50mm、直径86mmのゴムローラーを、前記布粘着テープを重ねたフィルムの右長手方向から片道走行させ、前記布粘着テープを前記芯鞘複合モノフィラメント試料に貼付して剥離応力測定用試料を作製する。
(7)前記剥離応力測定用試料の2枚のフィルムの接合部を支点にして、前記布粘着テープの貼付面が内側になるように山折りし、次いで山折りの支点部から芯鞘複合モノフィラメント上に貼付されている前記布粘着テープを長さ約10mm剥がし、露出した芯鞘複合モノフィラメント貼付フィルム端部を、引張試験機((株)オリエンテック製テンシロン/UTM−III−100)の上チャックの中央部にセットし、一方の芯鞘複合モノフィラメントの貼付されていない前記フィルムの下端(山折りの裾部)を、前記引張試験機の下チャックの中央部にセットして、引張速度100mm/分、チャートスピード100mm/分の条件で剥離応力を測定し、剥離応力の高い山と剥離応力の低い谷とが交互に連なった剥離応力チャートを得る。
(8)得られた剥離応力チャートの最初の剥離応力の高い山から約20mm後の剥離応力の高い山を始点として、一個一個の交互の山と谷各40点の剥離応力を読み取り、その平均値をもって剥離応力とし、この測定をn=10で行い、その平均値を布粘着性ガムテープ剥離応力とする。
【0036】
なお、上記した布粘着ガムテープ剥離試験を採用することによって、ブラシすることなく本発明の芯鞘複合モノフィラメントを構成素材とするブラシの防汚性を定量的に相対評価する事が可能で、布粘着ガムテープ剥離応力が低いほどガムピッチ汚れに対する防汚性が優れることを表す。また、通常比較サンプル(比較例2とする)となる布粘着ガムテープ剥離応力値をガムテープ防汚指数100とし、ガムピッチ防汚指数が90を超える値では効果が得られないものとして、90未満を目標と設定した。なお、下記式(1)によりガムピッチ防汚指数を算出した。
【0037】
ガムピッチ防汚指数=試験剥離応力値/比較サンプル剥離応力値×100・・・(1)
〔実施例1〕
芯部構成樹脂としてポリアミド樹脂N610(東レ(株)製M2001)、鞘部構成樹脂として反応性基を有する変性エチレンテトラフルオロエチレン共重合樹脂(ダイキン工業(株)製 RP−5000)に金属銀セラミック抗菌剤((株)サンギ製アパサイダー(登録商標)AW)をブレンドした混合原料を用い、これらを複合溶融紡糸機に供給し、芯部が鞘部内に内在したノズルから、芯部断面積比率20%、鞘部断面積比率80%にて溶融押出し、直ちに30℃の水中で冷却し、続いて55℃の温水、さらに100℃の乾熱下で4.1倍に延伸した後、乾熱雰囲気中で弛緩熱処理を行った。このようにして得られた直径0.100mmの円形芯鞘複合モノフィラメントを束状に巻き取った。
【0038】
次に、巻き取られた束状の芯鞘複合モノフィラメントの周囲に紙テープを巻いて直径43mmの毛束とし、さらに30mmの長さに切断し、カットブリッスルからなる洗浄ブラシ用毛材を得た。
【0039】
得られた洗浄ブラシ用毛材を使用して洗浄ブラシを作製し、特性の評価を実施した結果を表1に示した。
【0040】
〔実施例2〕
実施例1において、芯部断面積比率を35%、鞘部断面積比率を75%にそれぞれ変更した以外は、同様の方法で洗浄ブラシ用毛材を作製した。
【0041】
得られた洗浄ブラシ用毛材を使用して洗浄ブラシを作製し、特性の評価を実施した結果を表1に示した。
【0042】
〔実施例3〕
実施例1において、芯部構成樹脂をポリアミド樹脂N612(宇部興産(株)製7034T)に、芯部断面積比率を20%に、鞘部断面積比率を80%に、それぞれ変更した以外は、同様の方法で洗浄ブラシ用毛材を作製した。
【0043】
得られた洗浄ブラシ用毛材を使用して洗浄ブラシを作製し、特性の評価を実施した結果を表1に示した。
【0044】
〔実施例4〕
実施例1において、抗菌剤を含有させない以外は、同様の方法で洗浄ブラシ用毛材を作製した。
【0045】
得られた洗浄ブラシ用毛材を使用して洗浄ブラシを作製し、特性の評価を実施した結果を表1に示した。
【0046】
〔比較例1〕
実施例1において、芯部断面積比率を50%、鞘部断面積比率を50%にそれぞれ変更した以外は、同様の方法で洗浄ブラシ用毛材を作製した。
【0047】
得られた洗浄ブラシ用毛材を使用して洗浄ブラシを作製し、特性の評価を実施した結果を表1に示した。
【0048】
〔比較例2〕
実施例1において、芯部断面積比率を30%に、鞘部構成樹脂を四フッ化エチレンと六フッ化プロピレン共重合体(三井・デュポンフロロケミカル(株)製TE9494、以下、FEPとする)に金属銀セラミック抗菌剤((株)サンギ製アパサイダーAW)をブレンドした混合原料に、鞘部断面積比率を70%に、それぞれ変更以外は、同様の方法で洗浄ブラシ用毛材を作製した。
【0049】
得られた洗浄ブラシ用毛材を使用して洗浄ブラシを作製し、特性の評価を実施した結果を表1に示した。
【0050】
〔比較例3〕
比較例2において、芯部構成樹脂を反応性基を有する変性エチレンテトラフルオロエチレン共重合樹脂(ダイキン工業(株)製 RP−5000)に、鞘部構成樹脂をポリアミド樹脂N610(東レ(株)製M2001)に、それぞれ変更した以外は、同様の方法で洗浄ブラシ用毛材を作製した。
【0051】
得られた洗浄ブラシ用毛材を使用して洗浄ブラシを作製し、特性の評価を実施した結果を表1に示した。
【0052】
〔比較例4〕
実施例1において、芯部断面積比率を100%に変更した以外は、同様の方法で洗浄ブラシ用毛材を作製した。
【0053】
得られた洗浄ブラシ用毛材を使用して洗浄ブラシを作製し、特性の評価を実施した結果を表1に示した。
【0054】
【表1】

【0055】
表1の結果からは、実施例1〜3に示した本発明の洗浄ブラシ用毛材を使用した洗浄ブラシは、洗浄対象物上に付着した汚れ、異物を満遍なく除去することが出来ると共に、ガムピッチ指数が良好であること、さらには、清掃により除去された異物などがタフト内およびタフト間に付着し難いという特性に優れ、毛材が抗菌性を有することから洗浄ブラシに雑菌が発生しにくい特性をも有しており、その実用性は極めて高いものであった。
【0056】
また、実施例4に示した本発明の洗浄ブラシ用毛材を使用した洗浄ブラシは、毛材に抗菌剤を含有しないことから、雑菌が発生する以外は実施例1〜3と同等の特性を有しているものであった。
【0057】
これに対して、本発明の条件を満足しない洗浄ブラシ用毛材を使用した洗浄ブラシは、清掃性は良好なものの、タフト内およびタフト間に除去された異物が混在するか、或いは抗菌性能に欠けるなど、洗浄ブラシとしての要求特性を満足していないことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上説明したとおり、本発明の洗浄ブラシ用毛材は、洗浄対象物上に付着した汚れ、異物を満遍なく除去することができると共に、清掃により除去された異物などがタフト内およびタフト間に付着し難いという優れた特性を有し、さらには、毛材が抗菌性を有することから洗浄ブラシに雑菌が発生しにくいという特性をも併せ持つことから、その実用性が極めて高い。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯部にポリアミド樹脂、鞘部に反応性基を有する変性エチレンテトラフルオロエチレン共重合樹脂を用い、直径が0.05mm〜1.0mmであって、芯部/鞘部の断面積比率が10/90〜40/60の範囲にある芯鞘複合モノフィラメントからなることを特徴とする洗浄ブラシ用毛材。
【請求項2】
前記芯鞘複合モノフィラメントを布粘着ガムテープ貼付剥離法により測定した布粘着ガムテープ剥離応力値から下記式(1)にしたがって算出した、ガムピッチ防汚指数が90以下であることを特徴とする請求項1に記載の洗浄ブラシ用毛材。
ガムピッチ防汚指数=試験剥離応力値/比較サンプル応力値×100・・(1)
【請求項3】
前記鞘部が抗菌剤を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の洗浄ブラシ用毛材。
【請求項4】
請求項1〜3記載の洗浄ブラシ用毛材を少なくとも一部に使用したことを特徴とする洗浄ブラシ。

【公開番号】特開2013−99413(P2013−99413A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−244488(P2011−244488)
【出願日】平成23年11月8日(2011.11.8)
【出願人】(000219288)東レ・モノフィラメント株式会社 (239)
【Fターム(参考)】