説明

洗浄乾燥剤およびそれを用いた基板の洗浄乾燥方法

【課題】極めて微細且つ高精度パターンを洗浄乾燥するための、フッ素イオンを遊離せず、且つ引火点を持たない洗浄乾燥剤、および基板の洗浄乾燥方法を提供する。
【解決手段】本発明の洗浄乾燥剤は、一般式(1)


で表される含フッ素3級アルコールまたは一般式(2)


で表される含フッ素3級ジオールを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス表面、金属表面等の無機部材を洗浄するための洗浄乾燥剤および洗浄乾燥方法に関する。特に、半導体シリコンウェハ、フォトマスク、光ディスクまたは液晶ディスプレイ用ガラス基板等の基板洗浄のための洗浄乾燥剤、およびそれを用いた基板の洗浄乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス等の集積回路は著しく微細化してきており、半導体デバイスにフォトリソグラフィー等で集積回路を作製するために使用するフォトマスクの描画パターン、また、液晶ディスプレイ用のブラックマトリックス(BM)基板のパターンも微細化してきている。以下、回路パターンまたは画素パターン等が基板上に形成された、描画パターンおよびその転写パターンを単にパターンという。
【0003】
半導体デバイスまたはフォトマスクに、極微細なパターンを形成するためには、例えば、シリコンウェハまたはガラス基板等の素板の汚れおよび研磨粉の除去、その後、Cr膜等を形成した金属薄膜付き基板からの汚れの除去、フォトリソグラフィーにおけるレジスト、現像液またはエッチング液等の工程残渣の除去、これら工程における環境からの異物、例えば装置および人からの発塵等の除去を目的として、洗浄が必要である。さらに、洗浄終了時は基板が乾いていることが好ましく、乾きジミのないことが重要である。
【0004】
デバイス上の微細構造が微細化すればするほどに、洗浄方法にさらなる進歩が求められる。例えば、パーティクルを除去した後のイオン交換水または純水(以下、単に水ということがある)を使用した洗浄では、洗浄後の水切りが悪いと、残留した洗剤による洗剤ジミ、および基板表面のシリカが純水に溶解乾燥することにより生じるウォーターマーク等の乾きジミが発生し、また純水の表面張力により微細構造が壊れる等の問題が生じる懸念があり、集積度を高めた半導体ウェハ等の高アスペクト比のパターンを洗浄し難いという問題があった。
【0005】
有機溶剤を用いる前記基板の洗浄乾燥方法として、イソプロピルアルコール(2−プロパノール、以下、IPAと略する)蒸気による洗浄乾燥方法(以下、IPAベーパ洗浄と略することがある)が知られている。IPAベーパ洗浄は、IPAを加熱して発生したIPA蒸気が還流する槽内(以下、IPAベーパ槽と略することがある)に基板をホルダーごと入れ、IPAを基板表面に凝縮させて基板表面の異物または汚れを洗い流し、IPAベーパ槽内から引き上げつつ乾燥させる洗浄乾燥方法であり、温純水槽引き上げ乾燥および温純水すすぎ後のエアーノズルまたはエアーナイフによるエアーブローによる空気吹き付け乾燥に比べ、洗剤ジミおよびウォーターマークの乾きジミの発生が少ない。また、前段が洗剤槽、すすぎ槽等を有する水系洗浄の場合、最終段の純水槽から出た直後の基板をIPAベーパ槽に移すことで、水とIPAを速やかに置換することができ、乾きジミを防止する乾燥方法として好適に採用されている。
【0006】
しかしながら、IPAベーパ洗浄は、可燃性のIPAを使うこと、IPAベーパ槽が大きくなりすぎると、IPAベーパ槽内におけるIPAの還流が困難となるため、メーター角を超える世代の液晶ガラス基板の洗浄乾燥方法には不向きであること等の問題があった。
【0007】
例えば、特許文献1には、有機溶剤の蒸気の純水への溶解を防止してパーティクルの転写を抑制することができる基板処理装置が開示され、基板表面の純水と置換するためにIPA蒸気が用いられている。いずれにしても、可燃性の有機溶媒を用いる洗浄乾燥方法は、洗浄装置の防火対策および防爆設備化の必要性があるという問題がある。
【0008】
また、特許文献2に、前記問題を解決するために、IPAの代わりに不燃性の1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(以下、HFIPと略する)を水切り剤として用いた基板乾燥装置が開示されている。HFIPは難燃性の含フッ素アルコールであり、中程度の酸解離定数(pKa)を有し、高い洗浄効果も期待される。
【0009】
可燃性の有機溶剤を用いない洗浄方法には、液体状態または超臨界状態の二酸化炭素を基板に接触させる方法、超臨界ハイドロフルオロカーボンを基板に接触させる方法がある。
【0010】
例えば、液体状態または超臨界状態の二酸化炭素による方法は、二酸化炭素の表面張力が低く、基板の極微細なパターン構造を洗浄する効果があり、水系洗浄の代替として提案される。しかしながら、液体状態または超臨界状態の二酸化炭素を高価な圧力装置で得なければならず、工業的には使い難く、有効な洗浄方法とは言えない。
【0011】
一方、超臨界ハイドロフルオロカーボンによる方法は、超臨界ハイドロフルオロカーボンの表面張力は低く洗浄効果が期待でき、ハイドロフルオロカーボン類(以下、HFC’sと略することがある)は、クロロフルオロカーボン類(以下、CFCと略することがある)に比較してオゾン層を破壊し難く環境により優しい代替フロンであるが、こと基板洗浄に関しては、それほどの効果のないことが知られている。例えば、Leblancは、「それら(HFC類)は塩素を含有しないが、その高い蒸気圧と低い溶解性により不十分な洗浄剤となっている。」と非特許文献1に記載している。このことは、非特許文献2に記載のように、「(HFC類は)他の溶媒の担体として、およびすすぎ剤として有用であるが、(溶解力の指針である)カウリブタノール数が約10であり、それ自体では関係する大抵の汚れについての溶解力は殆ど又は全くない。」とコメントするKanegsbergによって支持されている。
【0012】
非特許文献1および非特許文献2、液化二酸化炭素、超臨界二酸化炭素、液化ハイドロフルオロカーボンまたは超臨界ハイドロフルオロカーボンのみを用い洗浄を行ったとしてもそれ自体に汚れの溶解性はなく、基板洗浄等を行う場合、汚れに対して溶解性の高い溶剤とともに用いる必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2002−252201号公報
【特許文献2】特開2009−212445号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】The Evolution of Cleaning Solvents, Precision Cleaning, May, 1997, p.14
【非特許文献2】Precision Cleaning Without Ozone Depleting Chemicals", Chemistry & Industry, October, 1996, p. 788
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
基板洗浄における洗浄効果を高めるためには、通常、−20℃以上での洗浄が必要であり、温度が高くなる毎に洗浄力が増し、基板の乾燥が容易となる。しかしながら、高温、150℃におけるHFIPの安定性を試したところ、フッ化物イオンが発生することがわかった。このことは、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノールのOH基が結合する炭素は、電子吸引性のトリフルオロメチル基2つと結合しており、当該炭素に結合した水素は、ハイドロカーボン系の水素と比較すると高い酸性度を有していると推測され、以下の反応により、β炭素に結合したフッ素と協奏的に脱離するためであると考えられた。
【化1】

【0016】
最終的に、HFIPはジフルオロビニルエーテルとなる。尚、本発明において、フッ化物イオンとは、フッ素原子が電子を1つ得て単独でイオン化した陰イオン(F)のことをいう。
【0017】
フッ化物イオンはシリル(Si)−酸素結合を開裂することが知られており、シリコン基板を侵し、シリコン基板からシリコンが剥がれダストとなる、また剥がれたシリコンのダストが基板に付着することで微細構造の欠陥の要因になり得ることから、HFIPを半導体ウェハ、フォトマスク用または液晶表示装置用ガラス基板等に使用するシリコンウェハおよびガラス基板の洗浄乾燥剤としては使用し難いという問題があった。
【0018】
また、シリコンウェハの洗浄において、アンモニア等のアルカリ雰囲気下にてシリコンウェハを純水洗浄した後に乾燥させる方法があり、表面張力を低下させる助剤を添加するとシリコンウェハ上の高アスペクト比のパターンを崩壊し難くすることが知られている。 当該助剤として、HFIPを使用すると、以下に示すように、HFIPがアンモニアと反応し、錯体を形成し、その後、水素原子が脱離することがフッ化物イオン発生の原因となると考えられた。
【化2】

【0019】
HFIP等の含フッ素2級アルコールは、−20℃以上では、分極したOH部位および不安定な水素原子を含むことによりフッ化物イオンが発生し易く、シリコンウェハ、マスク用ガラス基板または液晶用ガラス基板の洗浄乾燥工程に使用し難いという問題があった。
【0020】
本発明は、上記課題を解決し、洗浄能力が高く、洗浄時にフッ化物イオンの発生がない不燃性の洗浄乾燥剤、およびそれを用いた、乾きジミの発生しない基板の洗浄乾燥方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
含フッ素3級アルコールまたは含フッ素3級ジオールは、−20℃以上の洗浄温度において、フッ化物イオンを発生し難い。含フッ素3級アルコールまたは含フッ素3級ジオールを含む洗浄乾燥剤およびそれを用いた基板の洗浄乾燥方法において、問題は解決された。
【0022】
即ち、HFIPにおいて、水酸基が直接結合した炭素原子に直接、水素原子が結合していなければ、フッ化物イオンの発生はなくなると思われた。そこで、本発明者らは、含フッ素3級アルコールの150℃での安定性を確認したところ、長時間にわたりフッ化物イオンの発生が見られないことがわかった。通常、フッ素化合物はフッ素の含有率が大きいと、具体的にはフッ素の含有が40質量%以上では不燃性であることが知られており、殆どの含フッ素3級アルコールは不燃性である。
【0023】
含フッ素2級アルコールであるHFIPに比較して、このように含フッ素3級アルコールおよび含フッ素3級ジオールは、フッ化物イオン発生の発生がなく、シリコンウェハおよびガラス基板の汚れまたは異物除去に対し優れた洗浄効果を示した。
【0024】
また、純水で表面がぬれた状態の基板と接触させることで、容易に基板上の水と置換し、乾きジミのない乾燥基板が得られた。
【0025】
即ち、本発明は以下の発明1〜8により構成される。
【0026】
[発明1]
一般式(1):
【化3】

【0027】
(式中、R〜Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜7の直鎖状アルキル基、または炭素数3〜7の環状アルキル基であり、当該アルキル基中の水素原子の一部または全てがフッ素原子で置換されている。)
で表される含フッ素3級アルコール、または一般式(2):
【化4】

【0028】
(式中、R〜Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜7の直鎖状アルキル基、または炭素数3〜7の環状アルキル基であり、当該アルキル基中の水素原子の一部または全てがフッ素原子で置換されている。)
で表される含フッ素3級ジオールを含む、洗浄乾燥剤。
【0029】
[発明2]
〜Rのうち、少なくとも1つ以上がトリフルオロメチル基であり、R〜Rのうち、少なくとも2つ以上がトリフルオロメチル基である発明1の洗浄乾燥剤。
【0030】
[発明3]
さらに、純水、二酸化炭素、アルコール、ニトリル、ケトン、アミド、スルホキシド、エーテル、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、炭化水素および芳香族炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を加えてなる、発明1または発明2の洗浄乾燥剤。
【0031】
[発明4]
発明1〜3の洗浄乾燥剤が、イオン交換樹脂と接触、または塩基性水溶液と混合した後に蒸留したものである、洗浄乾燥剤。
【0032】
[発明5]
一般式(1):
【化5】

【0033】
(式中、R〜Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜7の直鎖状アルキル基、または炭素数3〜7の環状アルキル基であり、当該アルキル基中の水素原子の一部または全てがフッ素原子で置換されている。)
で表される含フッ素3級アルコール、または一般式(2):
【化6】

【0034】
(式中、R〜Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜7の直鎖状アルキル基、または炭素数3〜7の環状アルキル基であり、当該アルキル基中の水素原子の一部または全てがフッ素原子で置換されている。)
で表される含フッ素3級ジオールに、基板を接触させて、−20℃以上、200℃以下の温度下で基板の洗浄および乾燥を行う、基板の洗浄乾燥方法。
【0035】
[発明6]
前記一般式(1)で表される含フッ素3級アルコールまたは前記一般式(2)で示される含フッ素3級ジオールに、純水、二酸化炭素、アルコール、ニトリル、ケトン、アミド、スルホキシド、エーテル、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、炭化水素および芳香族炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を加えた後、基板と接触させる、発明5の方法。
【0036】
[発明7]
前記一般式(1)で表される含フッ素3級アルコールまたは一般式(2)で示される含フッ素3級ジオールをイオン交換樹脂と接触、または塩基性水溶液と混合した後に蒸留した後、基板と接触させる、発明5または6の方法。
【0037】
[発明8]
前記一般式(1)で表される含フッ素3級アルコールまたは一般式(2)で示される含フッ素3級ジオールを、イオン交換樹脂と接触、または塩基性水溶液と混合した後に蒸留し、純水、二酸化炭素、アルコール、ニトリル、ケトン、アミド、スルホキシド、エーテル、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、炭化水素および芳香族炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を加えた後、基板と接触させる、発明5または6の方法。
【発明の効果】
【0038】
本発明の洗浄乾燥剤は、特定の含フッ素3級アルコールまたは含フッ素3級ジオールを含み、フッ素含有率、40質量%以上では不燃性であり、表面にパターンを形成した物を含む半導体シリコンウェハ、フォトマスク、光ディスクまたは液晶ディスプレイ用ガラス基板等の洗浄乾燥剤として好適に使用される。また、−20℃以上の温度下でも、フッ化物イオンが発生しない。
【0039】
また本発明の基板の洗浄乾燥方法に用いる、特定の含フッ素3級アルコールまたは含フッ素3級ジオールは、水で塗れた状態の基板の表面の水との置換が容易であり、洗浄工程の最終段とすることで、洗浄後に乾きジミのない乾燥した基板を提供できる。本発明の基板の洗浄乾燥方法は、Cr成膜等の金属薄膜形成工程、レジスト塗布工程等の工程の直前における基板の乾燥に好適に使用される。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の洗浄乾燥剤およびそれを用いた基板の洗浄乾燥方法に使用する含フッ素アルコール、含フッ素3級ジオール、その他化合物、洗浄乾燥方法について順を追って説明する。
【0041】
1. 含フッ素3級アルコール
本発明の洗浄乾燥剤およびそれを用いた基板の洗浄乾燥方法に用いる含フッ素3級アルコールは、一般式(1):
【化7】

【0042】
(式中、R〜Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜7の直鎖状アルキル基、または炭素数3〜7の環状アルキル基であり、当該アルキル基中の水素原子の一部または全てがフッ素原子で置換されている。)
で表される。
【0043】
当該含フッ素3級アルコールは、OH基が結合した炭素に水素が結合していないことにより、塩基性条件下にてもフッ化物イオンの発生を抑制できる。
【0044】
当該含フッ素3級アルコールが不燃性を有するには、一般式(1)で表される含フッ素3級アルコールにおいて、フッ素の含有は40質量%以上であることが好ましい。
【0045】
具体的には、一般式(1)において、R〜Rの全てがトリフロオロメチル基である1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−トリフルオロメチル−2−プロパノール(別名、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−(トリフルオロメチル)プロパン−2−オール、以下PFTBと呼ぶことがある)、またはR〜R中で1つがメチル基であり、他の2つがトリフルオロメチル基である、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチルプロパン−2−オール(以下、HFTBと呼ぶことがある)を挙げられ、本発明の洗浄乾燥剤、およびそれを用いた基板の洗浄乾燥方法に好適に使用される。
【0046】
2.含フッ素3級ジオール
本発明の洗浄乾燥剤およびそれを用いた基板の洗浄乾燥方法に用いる含フッ素3級ジオールは、一般式(2):
【化8】

【0047】
(式中、R〜Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜7の直鎖状アルキル基、または炭素数3〜7の環状アルキル基であり、当該アルキル基中の水素原子の一部または全てがフッ素原子で置換されている。)
で表される。
【0048】
当該含フッ素3級ジオールは、OH基が結合した炭素に水素が結合していないことにより、塩基性条件下にてもフッ化物イオンの発生を抑制できる。
【0049】
当該含フッ素3級アルコールが不燃性を有するには、一般式(2)で表される願フッ素級ジオールにおいて、フッ素の含有が40%以上であることが好ましい。
【0050】
具体的には、一般式(2)において、R〜Rの全てがトリフロオロメチル基である1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2,3−ビス(トリフルオロメチル)−2,3−ブタンジオール(以下、PFPiと呼ぶことがある)が挙げられ、本発明の洗浄乾燥剤およびそれを用いた基板の洗浄乾燥方法に好適に使用される。
【0051】
3.フッ化物イオンの除去
含フッ素アルコールはその合成において、フッ素原子を含まないアルコールをフッ素化している場合、フッ化物イオンを含有している虞があり、本発明において、含フッ素3級アルコールまたは含フッ素3級ジオールが、コンタミ(contamination)としてフッ化物イオンを含む場合、フッ化物イオンがシリコンウェハまたはガラス基板を浸すこととなるので、本発明の洗浄乾燥剤およびそれを用いた基板の洗浄乾燥方法に使用する前にフッ化物イオンを除去しておくことが好ましい。
【0052】
本発明者らが、フッ化物イオンの除去方法について鋭意検討したところ、含フッ素3級アルコールまたは含フッ素3級ジオール中にフッ化物イオンが存在したとしても、フッ化物イオンをイオン交換樹脂に吸着させること、または塩基性水溶液と中和反応させて塩にすることで、除去が可能であった。塩基性水溶液としては具体的には、重曹水(炭酸水素ナトリウム、NaHCO水溶液)が挙げられ、重曹水で含フッ素3級アルコールまたは含フッ素3級ジオールを数回洗浄した後で蒸留することを数回繰り返すことが好ましく、その際、含フッ素3級アルコールまたは含フッ素3級ジオールを洗浄助剤、乾燥助剤としての溶剤と混合した後に蒸留水やイオン交換水で洗浄して蒸留することが好ましい。
【0053】
4.他の化合物の添加
本発明の洗浄乾燥剤およびそれを用いた基板の洗浄乾燥方法に用いる、含フッ素3級アルコールおよび含フッ素3級ジオールはともに分極した化合物であり、また、フッ素―炭素結合を有する化合物は親油性であることから、基板に付着するイオン性を含む水性の汚れおよび油性の汚れの除去ともに有効である。さらに、粘性または融点を調整する、洗浄能力をさらに向上させる、イオン性の汚れおよび油性の汚れを溶解するまたは、洗浄後の速乾性を得るため乾燥速度を調整する助剤として、含フッ素3級アルコールおよび含フッ素3級ジオール以外の他の化合物を添加剤として加えてもよい。
【0054】
このような化合物としては、純水、二酸化炭素、アルコール、ニトリル、アミド、スルホキシド、エーテル、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、炭化水素または芳香族炭化水素が挙げられ、これらの化合物は、含フッ素3級アルコールまたは含フッ素3級ジオールに単独で添加しても、混合して加えてもよい。
【0055】
具体的には、アルコールは、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノールまたはエチレングリコールが挙げられ、ニトリルは、アセトニトリル、またはベンゾニトリル、ケトンは、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチル−iso−プロピルケトン、メチル−n−ブチルケトンまたはメチル−iso−ブチルケトンが挙げられ、アミドは、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、またはN,N−ジメチルイミダゾリジノンが挙げられ、スルホキシドは、ジメチルスルホキシドが挙げられ、エーテルは、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、またはテトラヒドロフランが挙げられ、ハイドロフルオロカーボンは、ISO817:2005で定められた冷媒番号で表して、HFC−23、HFC−32、HFC−125、HFC−134a、HFC−143a、HFC−152a、HFC−227ea、HFC−236fa、HFC−245fa、HFC−365mfc、HFC−43−10meeまたはHFC−447efが挙げられ、ハイドロフルオロエーテルは、ISO817:2005で定められた冷媒番号で表して、HFE−245mc、HFE−143m、HFE−254pc、HFE−347pc−f、HFE−55−10mec−fc、HFE−7100、HFE−7200、HFE−7300またはHFE−7600が挙げられ、芳香族系炭化水素は、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、パーフルオロベンゼン、炭化水素は、ブタン、ペンタン、ヘキサンまたはヘプタンが挙げられ、これら化合物より選ばれる少なくとも1種の化合物を用いることが好ましい。
【0056】
これらの化合物のうち、消防法上の危険物に属する可燃性化合物の含有が高いことは、難燃性の洗浄乾燥剤を得るという本発明の趣旨に反するため好ましくない。そのため、添加剤として使用する化合物が消防法上の危険物に属する可燃性である場合の添加量は、本発明の洗浄乾燥剤およびそれを用いた基板の洗浄乾燥方法における含フッ素3級アルコールまたは含フッ素3級ジオールを基準として、0.1質量%以上、200質量%以下が好ましく、さらに好ましくは0.5質量%以上、50質量%以下である。具体的には、含フッ素3級アルコールまたは含フッ素3級ジオール1gに対して、好ましくは0.001g以上、2g以下、さらに好ましくは0.005g以上、0.5g以下加える。添加量が0.1質量%未満であると、前述の添加効果が得られなく、200質量%(2倍)を超えると引火点が低下し、可燃性となり好ましくない。
【0057】
ハイドロフルオロカーボンおよびハイドロフルオロエーテルはフッ素の含有効果により引火点がない物が多く、あったとしても高く、消防法上の危険物に属さないことが多い。消防法上の危険物に属さないハイドロフルオロカーボン系化合物またはハイドロフルオロエーテル化合物の添加量は、本発明の洗浄乾燥剤および洗浄方法において任意であるが、含フッ素3級アルコールまたは含フッ素3級ジオールを基準として、0.1質量%以上、1000質量%以下が好ましく、さらに好ましくは0.5質量%以上、500質量%以下である。具体的には、含フッ素3級アルコールまたは含フッ素3級ジオール1gに対して、0.001g以上、10g以下、さらに好ましくは0.005g以上、5g以下加える。添加量が0.1質量%未満であると、前述の添加効果が得られなく、1000質量%(10倍)を超えると、含フッ素3級アルコールまたは含フッ素3級ジオールを含むことによる洗浄性能が劣化する。
【0058】
上記以外の化合物、即ち、純水および二酸化炭素は、いずれも引火点を有しておらず、前記目的で任意の割合で混合することができる。混合できる水および二酸化炭素の量は、各々の含フッ素3級アルコールまたは含フッ素3級ジオール化合物に対して固有の量であるが、含フッ素3級アルコールまたは含フッ素3級ジオールを基準として、0.1質量%以上、10000質量%以下が好ましく、さらに好ましくは0.5質量%以上、1000質量%以下である。具体的には、含フッ素3級アルコールまたは含フッ素3級ジオール1gに対して、0.001g以上、100g以下、さらに好ましくは0.005g以上、1g以下加える。添加量が0.1質量%未満であると、前述の添加効果が得られなく、10000質量%(100倍)を超えると、含フッ素3級アルコールまたは含フッ素3級ジオールを含むことによる洗浄性能が劣化する。
【0059】
5.基板の洗浄乾燥方法
本発明の洗浄乾燥剤を用いて基板を洗浄乾燥する際の温度は、本発明の洗浄乾燥剤に含まれる含フッ素3級アルコールまたは含フッ素3級ジオールが固化しない範囲の温度であればよく、さらに前述の添加剤を加えることで固化しないように調整することが可能である。洗浄効果は、洗浄温度が高いほど向上するが、本発明の洗浄乾燥剤の組成物における沸点を超える温度で洗浄する場合は、還流槽等の装置より洗浄乾燥剤が外部へ流出しないように考慮して上限を決めることが好ましい。好ましい洗浄温度は、−20℃以上、200℃以下であり、より好ましくは、30℃以上、150以下である。洗浄温度が、−20℃未満では洗浄効果が少なく、洗浄後の基板は塗れた状態であり汚れ付着および洗浄ジミが発生する可能性があり実用的とは言い難く、200℃を超える場合は、還流槽等の装置より洗浄乾燥剤が外部へ流出しやすく、密閉槽とすると装置の圧力上昇が問題となる。洗浄乾燥は、上記温度範囲内で一定の温度で行ってもよく、上記温度範囲内の低い温度で洗浄を行った後、それより高い温度で基板を乾燥させてもよい。
【0060】
本発明の基板の洗浄乾燥方法において、洗浄効果を向上させ、また乾燥において、水と含フッ素3級アルコールもしくは含フッ素3級ジオールの置換を容易とするためには、これらを気相−液相の臨界にある超臨界流体とすることが好ましい。一般的に、含フッ素3級アルコールもしくは含フッ素3級ジオールを含む洗浄乾燥剤または乾燥に使う組成物を超臨界流体とするための温度および圧力は、高温高圧が必要であり、当業者であれば容易に決めることができる。詳しくは、超臨界流体とは、物質の気相−液相間の相転移が起こりうる温度および圧力の範囲の限界を示す相図上の点である、臨界点以上の温度・圧力下においた物質の状態のことをいう。
【0061】
洗浄乾燥装置は、前述のように開放系または密閉系の装置、いずれも使用できるが、洗浄温度が洗浄乾燥剤の沸点を超える場合は、洗浄乾燥剤の還流が可能な開放系装置、あるいは密閉系の装置を使用することが望ましい。洗浄または乾燥時の温度が洗浄乾燥剤の組成物の沸点を超えない場合は、開放系および密閉系のいずれを使用してもよい。
【0062】
本発明の洗浄乾燥剤およびそれを用いた基板の洗浄乾燥方法において、使用後の洗浄乾燥剤は、所定の手法により廃棄することも可能であるが、蒸留により、汚れ・異物等の汚染物質を除去した後、再度洗浄乾燥剤として洗浄乾燥に使用してもよい。再使用する際に、沸点の異なる添加剤を用いている場合は、洗浄乾燥剤の組成を再度調整することを目的として、洗浄乾燥剤が含む含フッ素3級アルコール、含フッ素3級ジオールまたは添加物のいずれか不足したものを回収物に添加し、再度洗浄乾燥剤とすることができる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例により本発明の洗浄乾燥剤およびそれを用いた基板の洗浄乾燥方法の具体例を示し、IPA等用いた従来の洗浄乾燥に対しての、本発明の洗浄乾燥剤およびそれを用いた基板の洗浄乾燥方法について、洗浄乾燥剤の難燃性および洗浄乾燥性能の優位性を示す。尚、洗浄乾燥剤が含む組成物の純度は、ガスクロマトグラフィーにより測定し、その他の化合物に対する面積%で示した。尚、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0064】
初めに、実施例1〜3および比較例1に示すとおり、各洗浄乾燥剤の調製を行った。尚、フッ素イオントラップ剤には市販のもの(商品名、ハロゲンキラー、ブイテック株式会社製)を使用した。ハロゲンキラーはMgxAly(OH)z・X・nHO(Xは陰イオン根)の化学式で表されるものが高い陰イオン吸着交換能を有し、中でハロゲンイオンを効率良く除去するとされる。
【0065】
[実施例1]
市販のフッ素イオントラップ剤(商品名、ハロゲンキラー、ブイテック株式会社製)3gおよび含フッ素3級アルコールである1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−(トリフルオロメチル)プロパン−2−オール、(以下、PFTBと略する)300gに添加し、10℃以下で純水30gを添加した。室温(20℃)で30分攪拌後に精密蒸留を行い、ガスクロマトグラフィーにおける純度99.9面積%以上、収量267gで回収した。回収したPFTBは無色透明の液体であった。イオンクロマトグラフィーでフッ化物イオンの含有を測定したところ、10ppb以下であることを確認した。
【0066】
[実施例2]
PFTBの替わりに、PTFBと同じく含フッ素3級アルコールである、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチルプロパン−2−オール(以下、HFTBと略する)300gを用いて、実施例1と同様の手順で操作を行い、ガスクロマトグラフィーにおける純度が99.9面積%以上、収量244gで回収した。回収したHFTBは無色透明の液体であった。イオンクロマトグラフィーでフッ化物イオン含有を確認したところ、10ppb以下であることを確認した。
【0067】
[実施例3]
PFTBの替わりに、含フッ素3級ジオールである、1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2,3−ビス(トリフルオロメチル)ブタン−2,3−ジオール(以下、PFPiと略する)300gを用いて、実施例1と同様の手順で操作を行い、ガスクロマトグラフィーにおける純度が99.9面積%以上、収量220gで回収した。回収したPFPiは無色透明の液体であった。イオンクロマトグラフィーでフッ化物イオン含有を確認したところ、10ppb以下であることを確認した。
【0068】
[比較例1]
PFTBの替わりに、含フッ素2級アルコールである、HFIP(1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール)300gを用いて、実施例1と同様の手順で操作を行い、ガスクロマトグラフィーにおける純度が99.9面積%以上、収量280gで回収した。回収したHFIPは無色透明の液体であった。イオンクロマトグラフィーでフッ化物イオン含有量を確認したところ60ppbが含まれることを確認した。
【0069】
上記各実施例および比較例に用いたPFTB、HFTB、PFPi、HFIPの構造式を以下に示す。
【化9】

【0070】
次いで、精密蒸留後の、含フッ素3級アルコールであるPFTB(実施例1)およびHFTB(実施例2)、含フッ素3級ジオールであるPFPi(実施例3)ならびに含フッ素2級アルコールであるHFIP(比較例1)、各々30mLを、50mLのステンレス製オートクレーブに入れ、密封した後にオイルバスで150℃に加温下、48時間加熱した。室温まで冷却した後に蓋を開けて内容物5mLを取り出し、さらに残りを150℃、48時間加熱し、加熱後に室温(20℃)まで冷却し、蓋を開けて内容物を取り出した。得られた内容物に関してイオンクロマトグラフィーでフッ化物イオンの含有量を測定した。内容物の着色状況とともに、表1に耐熱性の評価結果を示す。
【表1】

【0071】
表1に示したフッ化物イオンの含有量の測定結果は、α位がすべて炭素置換基で結合され炭素−水素結合がない含フッ素3級アルコール(PFTB、HFTB)および含フッ素3級ジオール(PFPi)は、150℃で連続的に加熱してもフッ化物イオンを遊離しないことを示していた。具体的には、表1の実施例1〜3に示すように、PFTBは、48時間、15ppb、96時間、20ppbであった。HFTBは48時間、30ppb、96時間、46ppbであった。PFPiは、48時間、18ppb、96時間、21ppbであった。48時間経過後は着色が見られず、96時間経過後は、HFTBのみが僅かに黄色く着色した程度であり、高い耐熱性を示した。
【0072】
比較して、α位炭素に水素−炭素結合およびβ位炭素にフッ素−炭素結合を有する含フッ素2級アルコールであるHFIPは、150℃で連続的に加熱することにより、フッ化物イオンを遊離する。表1の比較例1に示すように、48時間、220ppb、96時間397ppbであった。また、48時間経過後に黄色く着色し、96時間経過後は褐色に着色していた。洗浄乾燥剤が、フッ化物イオンを数百ppbのオーダーで含有すると、高アスペクト比のパターン微細構造を有するシリコンウェハ表面にダメージを与えることがわかった。
【0073】
表1に示した結果より、含フッ素3級アルコール(PFTB、HFTB)および含フッ素3級ジオール(PFPi)のフッ素の含有は、150℃で96時間、連続的に加熱しても最大46ppb(HFTB)であり、シリコンウェハの洗浄および乾燥工程において当該発明の含フッ素3級アルコールおよび含フッ素3級ジオールを含む洗浄乾燥剤およびそれを用いた洗浄乾燥方法を使用することが有効であることがわかった。
【0074】
[参考例]
前述のフッ素イオントラップ剤(商品名、ハロゲンキラー、ブイテック株式会社製)を加えずに、PFTB、300gに純水100gを添加して、攪拌後に二層分離した下層を分液ロートを用いて取り出し、精密蒸留を行ったところ、ガスクロマトグラフィー純度99.9面積%以上、収率275gで回収することができた。イオンクロマトグラフィーでフッ化物イオン含有量を確認したところ500ppbの含量であることを確認した。
【0075】
すなわち含フッ素アルコールを純水で洗浄する手法ではフッ化物イオンを除去するのは困難であることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の洗浄乾燥剤およびそれを用いた基板の洗浄乾燥方法は、半導体用シリコンウェハ、液晶表示装置用、フォトマスク用および光ディスク用ガラス基板等の洗浄−乾燥工程に好適に用いられる。
【0077】
また近年、構造の微細化が進む半導体デバイスのリソグラフィーによる製造工程において、レジスト成膜、エッチング、レジスト剥離などの各工程における、洗浄−乾燥後のパターン倒れを防止するために、超臨界流体、または界面活性剤が添加された洗浄液による洗浄乾燥方法が検討されている。本発明の洗浄乾燥剤およびそれを用いた基板の洗浄乾燥方法は、洗浄乾燥に用いる洗浄乾燥剤を超臨界流体とすることが可能であり、好適に使用される。
【0078】
また、半導体デバイス製造における、めっき工程は配線の要であり、本発明の基板の洗浄乾燥方法は、半導体デバイスのメッキにおける洗浄乾燥において有効である。
【0079】
本発明の洗浄乾燥剤およびそれを用いた基板の洗浄乾燥方法は、金属薄膜、金属酸化物膜、および複合膜製造における、無機化合物の蒸着、堆積、電気めっき、化学めっきにおいては、これらの前工程または後工程である洗浄および乾燥において有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):
【化1】

(式中、R〜Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜7の直鎖状アルキル基、または炭素数3〜7の環状アルキル基であり、当該アルキル基中の水素原子の一部または全てがフッ素原子で置換されている。)
で表される含フッ素3級アルコール、または一般式(2):
【化2】

(式(2)中、R〜Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜7の直鎖状アルキル基、または炭素数3〜7の環状アルキル基であり、当該アルキル基中の水素原子の一部または全てがフッ素原子で置換されている。)
で表される含フッ素3級ジオールを含む、洗浄乾燥剤。
【請求項2】
〜Rのうち、少なくとも1つ以上がトリフルオロメチル基であり、R〜Rのうち、少なくとも2つ以上がトリフルオロメチル基である請求項1の洗浄乾燥剤。
【請求項3】
さらに、純水、二酸化炭素、アルコール、ニトリル、ケトン、アミド、スルホキシド、エーテル、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、炭化水素および芳香族炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を加えてなる、請求項1または請求項2に記載の洗浄乾燥剤。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の洗浄乾燥剤が、イオン交換樹脂と接触、または塩基性水溶液と混合した後に蒸留したものである、洗浄乾燥剤。
【請求項5】
一般式(1):
【化3】

(式中、R〜Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜7の直鎖状アルキル基、または炭素数3〜7の環状アルキル基であり、当該アルキル基中の水素原子の一部または全てがフッ素原子で置換されている。)
で表される含フッ素3級アルコール、または一般式(2):
【化4】

(式(2)中、R〜Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜7の直鎖状アルキル基、または炭素数3〜7の環状アルキル基であり、当該アルキル基中の水素原子の一部または全てがフッ素原子で置換されている。)
で表される含フッ素3級ジオールに、基板を接触させて、−20℃以上、200℃以下の温度下で基板の洗浄および乾燥を行う、基板の洗浄乾燥方法。
【請求項6】
前記一般式(1)で表される含フッ素3級アルコールまたは前記一般式(2)で示される含フッ素3級ジオールに、純水、二酸化炭素、アルコール、ニトリル、ケトン、アミド、スルホキシド、エーテル、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、炭化水素および芳香族炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を加えた後、基板と接触させる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記一般式(1)で表される含フッ素3級アルコールまたは一般式(2)で示される含フッ素3級ジオールをイオン交換樹脂と接触、または塩基性水溶液と混合した後に蒸留した後、基板と接触させる、請求項5または請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記一般式(1)で表される含フッ素3級アルコールまたは一般式(2)で示される含フッ素3級ジオールをイオン交換樹脂と接触、または塩基性水溶液と混合した後に蒸留し、純水、二酸化炭素、アルコール、ニトリル、ケトン、アミド、スルホキシド、エーテル、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、炭化水素および芳香族炭化水素からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を加えた後、基板と接触させる、請求項5または請求項6に記載の方法。

【公開番号】特開2013−98303(P2013−98303A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238825(P2011−238825)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000002200)セントラル硝子株式会社 (1,198)
【Fターム(参考)】