洗浄乾燥装置
【課題】 高圧蒸気を用いて被洗浄物を洗浄し且つ該被洗浄物の乾燥を行う洗浄乾燥装置を提供する。
【解決手段】 所定の軸を中心に被洗浄物を回転可能に支持するステージユニットと、被洗浄物に対して飽和蒸気を吹き付け可能なノズル部と、ステージユニット及びノズル部を収容する筐体と、筐体から洗浄により生じた物質を排出するための排気系と接続される排気管と、飽和蒸気を生成する飽和蒸気発生ユニットと、を有しステージユニットは飽和蒸気の吹き付け時の低速回転モードと、被洗浄物を乾燥させるための高速回転モードとを有する。
【解決手段】 所定の軸を中心に被洗浄物を回転可能に支持するステージユニットと、被洗浄物に対して飽和蒸気を吹き付け可能なノズル部と、ステージユニット及びノズル部を収容する筐体と、筐体から洗浄により生じた物質を排出するための排気系と接続される排気管と、飽和蒸気を生成する飽和蒸気発生ユニットと、を有しステージユニットは飽和蒸気の吹き付け時の低速回転モードと、被洗浄物を乾燥させるための高速回転モードとを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型電子部品等の製造工程において、当該電子部品に付着する所謂コンタミ、フラックス等を洗浄し且つ該電子部品を乾燥する洗浄乾燥装置に関する。より詳細には、高圧の蒸気を用いて当該電子部品の洗浄を実施し、洗浄後に連続的に乾燥工程を実行する洗浄乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の製造工程は、種々の工程において該電子部品に付着する物質を洗浄除去する所謂洗浄工程を含んでいる。従来、このような洗浄工程においては、IPA(イソプロピルアルコール)等の有機溶剤、界面活性剤と溶剤の混合液、純水、等を洗浄液として用い、更に超音波レベルの周波数の振動を付与して洗浄効率を高めた所謂超音波洗浄法により行われていた(特許文献1及び2参照)。ところが、周知のように電子部品の外形寸法は小型化の一途を辿り、洗浄により除去すべき除去対象物もより小さなものへと変遷してきている。このため、従来の超音波洗浄法では対応しきれない狭い空隙に侵入した異物、或いは微小の所謂コンタミと称呼される物質の効率的な除去を可能とする洗浄方法の開発、導入が求められている。
【0003】
ここで、半導体ウエハ等に設けられる微細な空隙である所謂トレンチの洗浄法として、例えば特許文献3〜5に開示される洗浄方法が知られている。これら洗浄方法では、密閉空間内に被洗浄物であるウエハ等を設置し、該被洗浄物に対して純水からなる蒸気を吹付けて被洗浄物の表面洗浄を行っている。当該洗浄方法では、洗浄液たる蒸気が気体状であることからトレンチ等の内部に容易に侵入し、且つトレンチの内壁表面の濡れ性を高める効果が得られる。このため、通常の液体の吹き付け、或いは液体への浸漬の場合と異なり、トレンチ等の内壁表面に対して洗浄液が容易に付着し、当該内壁表面に対する好適な洗浄結果が得られる。また、以上の技術の他に、本出願人は、微小領域に高圧蒸気を吹き付け、該微小領域を拡大させることによって被洗浄対象物の洗浄を行う洗浄装置を提案している(特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−345174号公報
【特許文献2】特開2007−021362号公報
【特許文献3】特開平01−189127号公報
【特許文献4】特開平04−315429号公報
【特許文献5】特開平04−370931号公報
【特許文献6】特開2011−031148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
引用文献6に開示される装置によれば、被洗浄対称物上の種々の位置に対しても蒸気吹き付けを行うことが可能となる。また、少量の蒸気の吹き付けを行いつつ且つ吹き付け位置或いは吹き付け方向を適宜変更可能とすることによって、高圧蒸気の吹き付けのみによって種々の被洗浄物の洗浄を行うことも可能となる。しかしながら、実際の洗浄工程においてはその後に被洗浄物の乾燥を行うことが必要であり、この洗浄-乾燥の2工程の間で被洗浄物状に新たなコンタミが付着することを防止する必要がある。また、洗浄工程において適切な蒸気を供給できない場合には、このコンタミの再付着が生じる確率が高くなる恐れもある。
【0006】
本発明は以上の状況に鑑みて為されたものであって、洗浄時において適切な蒸気の提供を容易とすると共に、洗浄-乾燥の工程をタイムラグ無く実施でき、コンタミの再付着を好適に防止可能な洗浄乾燥装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る洗浄乾燥装置は、所定の軸を中心に被洗浄物を回転可能に支持するステージユニットと、ステージユニットに支持された被洗浄物に対して洗浄流体を吹き付け可能なノズル部と、ステージユニット及びノズル部を収容する筐体と、筐体から洗浄により生じた物質を排出するための排気系と接続される排気管と、を有しステージユニットは洗浄流体の吹き付け時の低速回転モードと被洗浄物を乾燥させるための高速回転モードとを有し、洗浄流体は飽和蒸気であって、飽和蒸気を生成する飽和蒸気発生ユニットを更に有することを特徴としている。
【0008】
なお、上述した洗浄乾燥装置において、飽和蒸気発生ユニットは、流体の流入口と流出口とを有する流体通路を有し、流体通路を通過する流体を加熱する加熱源と、流体通路と加熱源とを内部に包含するヒータケースと、ヒータケース内に充填されて加熱源の発する熱を流体通路に伝達する熱伝導小片と、を有し、熱伝導小片は、ヒータケースの内部の加熱源と流体通路とを覆うように充填されることが好ましい。
【0009】
また、この場合、熱伝導小片は所定の充填密度にて充填され、ヒータケースの内部に空隙を形成することがより好ましい。更に飽和蒸気発生ユニットは、ヒータケースの内部に配置されてヒータケースの内部温度を測定する温度測定手段と、ヒータケースを覆ってヒータケースの保温を為す断熱材と、を更に有し、流体通路は管状の部材を螺旋状に成型して得られたものであることがより好ましい。
【0010】
また、上述した洗浄乾燥装置においては、ノズル部は複数のノズルを有し、複数のノズルは各々異なる角度にて被洗浄物の洗浄面に対して洗浄流体を吹き付け可能であることが好ましい。この場合、ノズル部は、被洗浄物の洗浄面に対して垂直に洗浄流体を吹き付け可能な噴出軸を有したノズルを有することがより好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高温高圧の2種の流体を適宜且つ容易に洗浄装置に提供することで、洗浄に際して適切な飽和蒸気の提供が可能となり、且つ洗浄-乾燥の工程を単一の装置にてタイムラグをなくして実施することが可能となる。即ち、構成の簡易な洗浄装置でありながら適切な蒸気の提供が可能であることから洗浄能力が高く、且つ乾燥も好適に実施可能な洗浄乾燥装置の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】本発明の一態様である洗浄装置の第一の実施形態について、その構成を模式的に示す図であって、洗浄工程を行っている状態を示す図である。
【図1B】本発明の一態様である洗浄装置の第一の実施形態について、その構成を模式的に示す図であって、乾燥工程を行っている状態を示す図である。
【図2】飽和蒸気の供給ユニットの構成を模式的に示す図である。
【図3A】図1A及び図1Bに示す洗浄装置において蒸気を提供する流体加熱ユニットについて、主要部の構成を模式的に示す図であって、当該ユニットを上方から見た際の構造を模式的に示す図である。
【図3B】図3Aに示す流体加熱装置を図3Aに示す矢印3B方向から見た際の構造を模式的に示す図である。
【図4】図3Aに示す流体加熱装置の内部の構造を模式的に示す図である。
【図5A】図1に示す洗浄装置に用いられるマルチノズルの概略構成を模式的に示す図である。
【図5B】図1に示す洗浄装置に用いられるマルチノズルの概略構成を模式的に示す図である。
【図6A】図5A及び図5に示すマルチノズルを用いた場合の効果を説明する図である。
【図6B】図5A及び図5に示すマルチノズルを用いた場合の効果を説明する図である。
【図6C】図5A及び図5に示すマルチノズルを用いた場合の効果を説明する図である。
【図6D】図5A及び図5に示すマルチノズルを用いた場合の効果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照して本発明の一実施形態について述べる。図1A及び図1Bは本発明の一実施形態に係る洗浄乾燥装置の概略構成を示す図であって、図1Aは洗浄工程を実行した際の状態を、図1Bは乾燥構成を実行した際の状態を各々示している。当該洗浄乾燥装置200は、下部筐体31、上部筐体33、ノズルユニット40、及びステージユニット60を有する。下部筐体31は内部にステージユニット60を収容し、内部空間の気体を所謂ブロア吸引により排気可能となるように該内部空間に対して複数の排気管35が接続されている。下部筐体31と上部筐体33とにより、ノズルユニット40及びステージユニット60を収容する筐体が構成される。排気管35は各々排気系に接続されており、下部筐体31及び上部筐体33により形成される空間内部の気体、或いは洗浄により生じた物質を該空間より排出するために用いられる。
【0014】
ステージユニット60は、回転台61、クランプユニット63、回転軸65、及びモータ67を有する。回転台61は、クランプユニット63により被洗浄物70を固定、支持する。回転軸65は、一方の端部において、回転台61が被洗浄物70を支持する側とは逆の側より該回転台61を支持する。回転軸65の他方の端部はモータ67に接続されており、モータ67の回転に応じて該該点軸65は回転台61及び該回転台61に固定された被洗浄物70を回転させる。なお、モータ67は低速回転モード及び高速回転モードの二つの回転モードを有し、洗浄時では被洗浄物70を低速回転させる低速回転モードを、乾燥時では被洗浄物の高速回転させる高速回転モードが実行される。高速回転から受ける遠心力により被洗浄物70に付着したコンタミ等は洗浄液と共に被洗浄物70上より除去され、更にこれら洗浄液体等は排気管35を介して下部筐体31内(及び上部筐体33により構成される閉鎖空間)より除去される。
【0015】
ノズルユニット40は、ノズル部41、ノズルアーム43、アーム回転軸45、アーム伸縮機構47、及びアーム回転モータ49を有する。ノズル部41は、後述する飽和蒸気供給ユニット100より供給される飽和蒸気を放出可能となっている。ノズルアーム43は、ノズル部41が被洗浄物70に被洗浄面に向けて飽和蒸気を放出可能となる姿勢で、該ノズル部41を支持する。ノズルアーム43はアーム伸縮機構47を介してアーム回転軸45の一方の端部に支持されており、アーム伸縮機構47によってアーム延在方向の位置について作動位置と待機位置との二位置間での位置変更が可能とされている。アーム回転軸45の他方の端部はアーム回転モータ49と連結されており、該アーム回転モータ49によってアーム回転軸45を中心とするノズル部41の所謂θ位置の移動が為される。
【0016】
図1Aは、ノズル部41が作動位置に配置されて被洗浄物の洗浄工程を実施している状態を示す。被洗浄物70はクランプユニット63によって回転台61に固定されており、この状態でモータ67が低速回転モードにより回転台61を低速回転させる。アーム伸縮機構47はノズルアーム43を伸ばしてノズル部41を被洗浄物70の所定位置であるコンタミ除去作業の開始位置と対向させており、アーム回転モータ49は可動を停止してノズル部41のθ位置の駆動を停止している。この状態でノズル部41から被洗浄物70の表面に向けて飽和蒸気が吹き付けられ、該飽和蒸気による被洗浄物70表面の洗浄操作が行われる。回転台61の回転とノズル部41のθ駆動とによって洗浄操作が被洗浄物70の全域に及んで被洗浄物70表面の洗浄が終了した段階で、飽和蒸気の噴出しの停止-洗浄操作の終了に至る。
【0017】
洗浄工程終了後、ノズルアーム43の収縮によるノズル部41の被洗浄物70との対向位置からの退避が行われる。その際、必要に応じてアーム回転モータ49によるノズル部41のθ位置の変更の操作も行われる。続いて、高速回転モードでモータ67による回転台61の高速回転が行われ、被洗浄物70の所謂スピン乾燥が行われる。スピン乾燥の操作により被洗浄部30表面から取り除かれたコンタミ、洗浄液等は、排気管35を介して不図示の排気系により装置内部から除去される。本発明において排気管35は単なる管として示されているが、当該管には不図示のブロア等が排気系として配され、コンタミ、洗浄液等の強制的且つ迅速な排除を可能としている。
【0018】
続いて、ノズル部41に対して飽和蒸気を供給する構成について説明する。なお、本実施形態では純水を基とする飽和蒸気を洗浄流体に用いることで洗浄を効果的に行い、且つ飽和蒸気から被洗浄物70に与えられる高い熱量を利用してスピン乾燥のみで微細トレンチ等でも従来得ることが困難であった好適な乾燥状態を得ている。しかし洗浄流体として、有機溶剤、気体等の種々の物質を使用することも可能である。ノズル部41に対する高温高圧の蒸気の供給は、蒸気供給経路23により為される。蒸気供給経路23は、下流においてノズル部41と接続されており、上流において二流体ノズル25と流体加熱装置100とからなる飽和蒸気発生ユニット29と接続されている。また、二流体ノズル25に対しては、純水源22及び高圧空気源24より、純水及び高圧の所謂圧空(圧縮空気)が供給される。二流体ノズル25においてはこれら純水と圧空とが混合され、更に当該混合により得られた流体を流体加熱装置100によって加熱することにより、高温高圧の蒸気を発生させている。飽和蒸気発生ユニット29によって生成された蒸気は、蒸気供給経路23を介してノズル部41に送られる。
【0019】
ここで、例えば被洗浄物70が軟質材からなり、過度の圧力を付加して蒸気を吹付けた場合に、当該被洗浄物70に対して何等かのダメージを与える恐れがある場合が考えられる。このような場合、ワーク30にダメージを与えることなく十分な洗浄効果を得るために、吹き付ける蒸気の吹き付け圧(供給圧力)及び温度の最適化を行う必要がある。通常、供給圧力の制御は、二流体ノズル25に供給される圧空の圧力と、流体加熱装置100による流体の加熱の程度を調節することによって行われる。しかし、この供給圧と加熱温度との変化は、高圧蒸気発生ユニット29により生成された蒸気を含んだ気体の体積或いは飽和蒸気圧等を考慮して行う必要がある。このため、実際の圧力制御は非常に複雑なパラメータを考慮する必要があり、事実上圧力固定による洗浄しか現状では為し得ていない。また、上記の温度に関しても、単に粒体加熱装置100の加熱温度を制御するだけでは圧力の変動も伴うことから、蒸気温度の制御も同時に困難であった。
【0020】
本実施形態においては、このようなノズル部41に対して供給される蒸気の圧力及び温度の制御を行うために、バイパス経路26を配置することとしている。バイパス経路26には、バイパス弁27が配置されている。当該バイパス経路26を介して蒸気供給経路23から適当な量の蒸気を分離してこれを外部空間に排出することにより、ノズル部41に供給する蒸気の圧力を機械的に制御可能としている。即ち、バイパス経路26は、蒸気供給経路23に供給された蒸気の一部をノズル部41以外に流してノズルに至る蒸気の流量或いは圧力を減ずる役割を有する。また、バイパス弁27の開度を調節することによって、バイパス経路26より排除される蒸気流量を制御し、蒸気供給経路23内の圧力、即ちノズル部41に対する供給圧を調整することも可能となる。更に、蒸気温度の制御に関しても、圧力と分離して制御することが可能となり、適宜最適温度にあわせた蒸気を得ることが可能となる。
【0021】
ここで、本発明において洗浄用の流体をして好適に用いられる飽和蒸気について説明する。本発明では、例えば水と水蒸気のように同じ物質の液体と蒸気とが熱平行にある流体を飽和蒸気として定義する。当該状態では液相及び気相の水が共存しており、水が蒸発する速度と凝集する速度とが同じにある。通常この様な飽和蒸気の圧力を飽和蒸気圧と称呼し、Pa(パスカル)等の気圧の単位によって示される。飽和蒸気は、潜熱加熱による高速且つ均一な加熱が可能であること、圧力と温度とを一時的に設定可能であること、また熱伝達率が高いこと等による熱源としての利用に優れている。本発明では、このような液相及び気相が混合されている飽和蒸気を洗浄液として用いることとして述べるが、装置としては飽和蒸気に限定されず、被洗浄物の条件によっては過熱蒸気や沸騰水による洗浄を行っても良い。
【0022】
次に、図2に示された流体加熱装置100の詳細について図3A、図3B及び図4を用いて説明する。図3Aは、本発明の一実施形態である流体加熱装置について、これを上方から見た際の構造を模式的に示し、図3Bは当該流体加熱装置を図3Aに示す矢印3B方向から見た際の構造を模式的に示している。また、図4は、図3Aに示す流体加熱装置を内部の構造を模式的に示す図である。
【0023】
本実施形態の流体加熱装置100は、カートリッジヒータ3、熱電対5、流体通路7、ヒータケース9、熱伝導小片11、ケース受け13、外装15、及び断熱材17を有する。外装15は、薄板から構成された例えば直方体形状を有し、他の諸構成を内部に包含可能な内部空間を有して当該流体加熱装置100の外形状を規定する。ヒータケース9は、円柱或いは中空部9aを有する円筒形状を有している。より詳細には、本実施形態において、該ヒータケース9は、該円柱形状の延在軸に垂直な断面において、中央部に先の中空部9aに対応する空間となる領域が存在し、且つ後述する他の部材を包含可能な厚さを有して該中空部の周りに存在する環状のケース内部9bなる内部空間を規定する。
【0024】
該ヒータケース9は、ケース受け13を介して外装15の内部空間内の所定位置に支持される。断熱材17が外装15の内面とヒータケース9外面との間に配置され、ヒータケース9から外装15への熱の伝達を防止する。また、先のケース受け13についても、ヒータケース9と外装15との熱伝達を防止するように断熱性を有する部材から構成されている。以上の構成により、ヒータケース9及びその内部の保温と、外装15の不必要な加熱の防止とを達成している。
【0025】
ヒータケース9における前述したケース内部9b内には、カートリッジヒータ3、熱電対5、流体通路7、及び熱伝導小片11が配置される。流体通路7は、例えば金属管を螺旋状に周回するように成型されて得られた部材から構成され、金属管の両端部が加熱される液体等の流入口7a及び流出口7bとして機能してその内部を該液体等が流れる。該流体通路7は、ヒータケース9の中空部9aを巻き回して、流入口7a及び流出口7bを除いた大部分或いは主要部分がケース内部9b内に包含される。カートリッジヒータ3及び熱電対5は、各々が接触せず且つ更に流体通路7とも接触しない位置となるように、ケース内部9b内に入れられている。なお、カートリッジヒータ3は、ヒータケース9のケース内部9bを均等に加熱するために、該ヒータケース9の延在軸を中心に4本以上等配に配置されることが望ましい。
【0026】
熱伝導小片11としては、例えば径及び長さが1mm以下の円柱形からなる金属小片が用いられる。該熱伝導小片11は、ケース内部9b内のカートリッジヒータ3、熱電対5及び流体通路7の間に形成される空間に対して、所定の密度、或いは所定の状態にて充填される。ここで所定の密度とは、例えば流体加熱装置100に対して振動が与えられた際に、熱伝導小片11の少なくとも一部分が移動可能な密度を定義する。また、所定の状態とは、ケース内部9b内の少なくともカートリッジヒータ3及び流体通路7が、ケース内部9b内に充填された熱伝導小片11によって覆われてケース内部9b内に所定の大きさの余剰空間を形成した状態を定義する。
【0027】
加熱源であるカートリッジヒータ3により供給される熱は、この熱伝導小片11を介して流体通路7に伝達される。なお、カートリッジヒータ3が熱媒体としての熱伝導小片11に熱を伝えることによって、当該熱伝導小片11は熱膨張する。しかし、前述した所定の密度或いは所定の状態を維持することにより、この熱膨張は熱伝導小片11の移動を可能とする空隙等に吸収される。なお、前述した所定の密度は、熱伝導小片11が熱膨張した際の熱膨張量を吸収可能な充填密度と考えても良い。このような所定の密度を維持して熱伝導小片11を熱媒体として用いることにより、特許文献2等で問題視される充填部材の熱膨張を考慮した設計を行う必要がなくなり、装置設計及び作成の容易化と製造コストの削減とを達成することが可能となる。
【0028】
なお、熱伝導小片11について、上述した実施形態では円柱形からなる金属小片を用いた場合を例示したが、本発明は当該形態或いは材料に限定されない。例えば、熱伝導性の良い銅或いは銅系の合金、更には熱伝導性と耐食性とを両立させたアルミ系の合金等、適時選択することが可能である。また、形状に関しても円柱形のみに限定されず、球形状等の種々の形状が適用可能であり、大きさに関しても例えば大きさが異なる金属小片を加え、充填密度の向上、小片同士の接点増加を図り、これらを介しての熱伝導効率の向上を図ることとしても良い。
【0029】
なお、上述した形態では、取り扱いの容易さ、ケース内部9bへの装填の容易さ、及び熱伝導小片11の略均等な加熱が可能であること等から、加熱源としてカートリッジヒータ3を用いることとしている。しかし、ケース内部9bに存在する熱伝導小片11の凡そを均等に加熱可能であれば、その他公知の種々の形態からなる加熱源を用いることも可能である。また、液体の加熱領域の増大と構成のコンパクト化の観点から流体通路7を螺旋状にされた金属管からなる形態を例示しているが、流体の粘度や熱容量、更には熱伝導小片11の形状、充填量等を勘案してその他の形態、或いは材料から構成しても良い。更にケース内部9bの温度の測定には熱電対5を用いることとしているが、用いる流体の加熱温度に応じて当該熱電対5を公知の種々の温度測定手段と置き換えることも可能である。
【0030】
また、本発明ではヒータケース9のケース内部9bは空気(大気)によって満たされていることとしているが、ここを所定の特性を有した気体或いは液体等の熱媒体によって満たす、或いはこのような熱媒体が所定の濃度以上となるように流入出(パージ)することとしても良い。例えば、ヒータケース9に対して窒素等の不活性な気体の供給を可能な構成とし、ケース内部9bに存在する空隙を該窒素によってパージすることにより、酸素濃度を抑制して熱伝導小片11に生じ得る表面酸化等を抑制することが可能となる。例えば該熱伝導小片11に表面酸化が生じた場合にはその酸化膜によって熱伝導効率が変化する恐れがある。窒素等を導入することにより、表面酸化が抑制され、これによって生じ得る熱伝導効率の経時変化の抑制が可能となる。なお、空隙の充填には気体より熱の伝達効率で優れる液体の使用も可能であるが、熱伝導小片11の膨張量を吸収可能な気体を使用することがより好ましい。
【0031】
また、流体通路7に付随する流入口7a及び流出口7bは、装置構成の容易さを勘案して、本実施形態では円筒形状のヒータケース9の両端面に配置することとしている。しかし、本発明の態様はこれに限定されず、例えば流入口7a及び流出口7bの直前まで液体の加熱を可能とするように、これらを円筒形状の端面ではなく外周面に配置することとしても良い。また、当該流体加熱装置100を組み込む例えば後述する高圧蒸気洗浄装置の構成に応じて、その配置を適宜変更することとしても良い。ヒータケース9については、流体通路7の適切な長さと、カートリッジヒータ3及び熱伝導小片11の使用量の適切化の観点から前述した形状としている。しかし、流体通路7の形態に応じてヒータケース9の形態も種々変更が可能である。
【0032】
次に、ノズル部41の形態について述べる。本実施形態では、単一の流体の噴出し口からなるノズルではなく、図5A及び図5Bに外観を示すように複数の噴出し口を有するノズル部41を用いている。図5Aはノズルアーム43の延在方向(X軸方向)におけるノズル部41の外側から該ノズル部41を見た場合の概略構成を示し、図5Bはノズルアーム43の延在方向と該ノズルアーム43から被洗浄物70表面にいたる方向(Z軸方向)とが形成する平面に垂直な方向(Y軸方向)から見た場合の概略構成を示す。
【0033】
ノズル部41は、マニホールド41a、傾斜ノズル41b、及び垂直ノズル41cを有する。マニホールド41aは、蒸気供給経路23から供給された飽和蒸気を2方向に分ける経路分岐部として機能し、連通される傾斜ノズル41b及び垂直ノズル41cに対して各々飽和蒸気を供給する。傾斜ノズル41bは、被洗浄物70の表面、或いは延在方向に対して被洗浄物70の回転中心を内角として傾斜角度α1にて交錯する方向で、被洗浄物70に対する飽和蒸気の吹き出しを可能としている。垂直ノズル41cは、被洗浄物70の表面、或いは延在方向に対して垂直な方向で、被洗浄物70に対する飽和蒸気の吹き出しを可能としている。また、被洗浄物70上の傾斜ノズル41bからの飽和蒸気の噴出し中心と、垂直ノズル41cからの飽和蒸気の噴出し中心とは、被洗浄物70の回転方向Vに沿って垂直ノズル41c側の噴出し中心がオフセット量dだけ前方側に位置するようにずらされている。
【0034】
当該ノズル部41による洗浄のメカニズムについて、ノズル部41と被洗浄物30とを模式化してその工程を示す図6A〜図6Dを参照して詳述する。本実施形態におけるノズル部41は、被洗浄物70の表面全域にコンタミ71が存在する場合の洗浄を想定している。図6Aに示すように、まず被洗浄物70の表面に対して垂直ノズル41cより飽和蒸気を略垂直にあてる。その際飽和蒸気の流速がコンタミ71の垂直方向に対して大きいことから、飽和蒸気から大きな衝撃力、吹き付け圧力が得られコンタミ71の部分的除去が効果的に為される(図6B)。
【0035】
この段階から被洗浄物70が回転し、続いてコンタミ71の部分剥離した部分に対して傾斜ノズル41bから噴出す飽和蒸気が吹き付けられる状態となる。その際、飽和蒸気から加えられる熱による膨張等により、部分剥離の周辺で被洗浄物70とコンタミ71との間に飽和蒸気が進入可能な隙間が生じる(図6C)。図6A〜図6Dに示すようにこの隙間、被洗浄物70−コンタミ71界面に飽和蒸気が侵入し、これらの付着力を低下させ、部分的な剥離をより効果的に拡大させる。被洗浄物70の回転及びノズル部41の位置の移動によりこの剥離の拡大を被洗浄物70の表面全域に拡大させる。その結果、図6Dに示すように被洗浄物70に付着したコンタミ71の洗浄が行われる。
【0036】
なお、上述した実施形態では、各々異なる角度で被洗浄物70の表面に飽和蒸気を吹き付け可能な傾斜ノズル41bと垂直ノズル41cとを有することとしている。しかし、本発明では、コンタミ剥離のきっかけを促す垂直ノズル41cと、該垂直ノズル41cとは異なる角度で被洗浄物70の表面に飽和蒸気を吹き付けて剥離部分を拡大する傾斜ノズル41bと、各々同等の作用を有する複数のノズルを有していれば、その数は2つに限定されない。剥離部分の拡大に寄与するのであれば、更に異なる角度のノズルを付加することとしても良い。
【0037】
本発明では、飽和蒸気を用いることによって被洗浄物70に十分に熱が伝えられ状況で、熱を放出することなく連続的にスピン乾燥の工程にいたることを可能とし、スピン乾燥と洗浄液の揮発とによって例えば微細トレンチ等においても所謂乾きムラを生じさせずに乾燥を終了させ得るという格別の効果を得ている。しかし、例えば洗浄流体として有機溶剤等を用い、該有機溶剤をリンスする必要がある場合、上及び下部筐体からなる空間内にリンス用の機構を配することとしても良い。この場合、ノズルユニット40と同様の構成からなるリンス用ユニットを配することが好ましい。以上の構成の付加により、より多様な被洗浄物或いはコンタミに対しても対処することが可能となる。
【0038】
以上の構成からなる洗浄乾燥装置200を用いることによって被洗浄物70からのコンタミ71の効果的な除去、及び連続したその後の乾燥が実行可能となる。従って、洗浄-乾燥の工程をタイムラグ無く実施でき、コンタミの再付着を好適に防止可能な洗浄乾燥装置200の提供が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
上述したように、本発明に係る洗浄乾燥装置は、簡易な構造を有することから装置の構築が容易且つ廉価であり、飽和蒸気を洗浄用の媒体として用いることにより、例えば微細電子部品である磁気ヘッドコアにおける切削液等の残渣等、微細な空間に嵌まり込んで従来の洗浄方法では除去困難な汚染物も好適に除去し、当該部品の乾燥を行うことが可能である。従って、単に微細電子部品の洗浄乾燥装置としての態様のみならず、洗浄困難な領域を有する複雑な形状を有する被洗浄物、更には所謂軟質の材料からなる被洗浄物の洗浄乾燥装置としても適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
3:カートリッジヒータ、 5:熱電対、 7:流体通路、 7a:流入口、 7b:流出口、 9:ヒータケース、 9a:中空部、 9b:ケース内部、 11熱伝導小片、 13:ケース受け、 15:外装、 17:断熱材、 21:ノズル、 22:純水源、 23:蒸気供給経路、 24:高圧空気源、 25:二流体ノズル、 26:バイパス経路、 27:バイパス弁、 29:飽和蒸気発生ユニット、 31:下部筐体、 33:上部筐体、 35:排気管、 40:ノズルユニット、 41:ノズル部、 41a:マニホールド、 41b:傾斜ノズル、 41c:垂直ノズル、 43:ノズルアーム、 45:アーム回転軸、 47:アーム伸縮機構、 49:アーム回転モータ、 60:ステージユニット、 61:回転台、 63:クランプユニット、 65:回転軸、 67:モータ、 70:被洗浄物、 71:コンタミ、 100:流体加熱装置、 200:洗浄乾燥装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型電子部品等の製造工程において、当該電子部品に付着する所謂コンタミ、フラックス等を洗浄し且つ該電子部品を乾燥する洗浄乾燥装置に関する。より詳細には、高圧の蒸気を用いて当該電子部品の洗浄を実施し、洗浄後に連続的に乾燥工程を実行する洗浄乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の製造工程は、種々の工程において該電子部品に付着する物質を洗浄除去する所謂洗浄工程を含んでいる。従来、このような洗浄工程においては、IPA(イソプロピルアルコール)等の有機溶剤、界面活性剤と溶剤の混合液、純水、等を洗浄液として用い、更に超音波レベルの周波数の振動を付与して洗浄効率を高めた所謂超音波洗浄法により行われていた(特許文献1及び2参照)。ところが、周知のように電子部品の外形寸法は小型化の一途を辿り、洗浄により除去すべき除去対象物もより小さなものへと変遷してきている。このため、従来の超音波洗浄法では対応しきれない狭い空隙に侵入した異物、或いは微小の所謂コンタミと称呼される物質の効率的な除去を可能とする洗浄方法の開発、導入が求められている。
【0003】
ここで、半導体ウエハ等に設けられる微細な空隙である所謂トレンチの洗浄法として、例えば特許文献3〜5に開示される洗浄方法が知られている。これら洗浄方法では、密閉空間内に被洗浄物であるウエハ等を設置し、該被洗浄物に対して純水からなる蒸気を吹付けて被洗浄物の表面洗浄を行っている。当該洗浄方法では、洗浄液たる蒸気が気体状であることからトレンチ等の内部に容易に侵入し、且つトレンチの内壁表面の濡れ性を高める効果が得られる。このため、通常の液体の吹き付け、或いは液体への浸漬の場合と異なり、トレンチ等の内壁表面に対して洗浄液が容易に付着し、当該内壁表面に対する好適な洗浄結果が得られる。また、以上の技術の他に、本出願人は、微小領域に高圧蒸気を吹き付け、該微小領域を拡大させることによって被洗浄対象物の洗浄を行う洗浄装置を提案している(特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−345174号公報
【特許文献2】特開2007−021362号公報
【特許文献3】特開平01−189127号公報
【特許文献4】特開平04−315429号公報
【特許文献5】特開平04−370931号公報
【特許文献6】特開2011−031148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
引用文献6に開示される装置によれば、被洗浄対称物上の種々の位置に対しても蒸気吹き付けを行うことが可能となる。また、少量の蒸気の吹き付けを行いつつ且つ吹き付け位置或いは吹き付け方向を適宜変更可能とすることによって、高圧蒸気の吹き付けのみによって種々の被洗浄物の洗浄を行うことも可能となる。しかしながら、実際の洗浄工程においてはその後に被洗浄物の乾燥を行うことが必要であり、この洗浄-乾燥の2工程の間で被洗浄物状に新たなコンタミが付着することを防止する必要がある。また、洗浄工程において適切な蒸気を供給できない場合には、このコンタミの再付着が生じる確率が高くなる恐れもある。
【0006】
本発明は以上の状況に鑑みて為されたものであって、洗浄時において適切な蒸気の提供を容易とすると共に、洗浄-乾燥の工程をタイムラグ無く実施でき、コンタミの再付着を好適に防止可能な洗浄乾燥装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る洗浄乾燥装置は、所定の軸を中心に被洗浄物を回転可能に支持するステージユニットと、ステージユニットに支持された被洗浄物に対して洗浄流体を吹き付け可能なノズル部と、ステージユニット及びノズル部を収容する筐体と、筐体から洗浄により生じた物質を排出するための排気系と接続される排気管と、を有しステージユニットは洗浄流体の吹き付け時の低速回転モードと被洗浄物を乾燥させるための高速回転モードとを有し、洗浄流体は飽和蒸気であって、飽和蒸気を生成する飽和蒸気発生ユニットを更に有することを特徴としている。
【0008】
なお、上述した洗浄乾燥装置において、飽和蒸気発生ユニットは、流体の流入口と流出口とを有する流体通路を有し、流体通路を通過する流体を加熱する加熱源と、流体通路と加熱源とを内部に包含するヒータケースと、ヒータケース内に充填されて加熱源の発する熱を流体通路に伝達する熱伝導小片と、を有し、熱伝導小片は、ヒータケースの内部の加熱源と流体通路とを覆うように充填されることが好ましい。
【0009】
また、この場合、熱伝導小片は所定の充填密度にて充填され、ヒータケースの内部に空隙を形成することがより好ましい。更に飽和蒸気発生ユニットは、ヒータケースの内部に配置されてヒータケースの内部温度を測定する温度測定手段と、ヒータケースを覆ってヒータケースの保温を為す断熱材と、を更に有し、流体通路は管状の部材を螺旋状に成型して得られたものであることがより好ましい。
【0010】
また、上述した洗浄乾燥装置においては、ノズル部は複数のノズルを有し、複数のノズルは各々異なる角度にて被洗浄物の洗浄面に対して洗浄流体を吹き付け可能であることが好ましい。この場合、ノズル部は、被洗浄物の洗浄面に対して垂直に洗浄流体を吹き付け可能な噴出軸を有したノズルを有することがより好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、高温高圧の2種の流体を適宜且つ容易に洗浄装置に提供することで、洗浄に際して適切な飽和蒸気の提供が可能となり、且つ洗浄-乾燥の工程を単一の装置にてタイムラグをなくして実施することが可能となる。即ち、構成の簡易な洗浄装置でありながら適切な蒸気の提供が可能であることから洗浄能力が高く、且つ乾燥も好適に実施可能な洗浄乾燥装置の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1A】本発明の一態様である洗浄装置の第一の実施形態について、その構成を模式的に示す図であって、洗浄工程を行っている状態を示す図である。
【図1B】本発明の一態様である洗浄装置の第一の実施形態について、その構成を模式的に示す図であって、乾燥工程を行っている状態を示す図である。
【図2】飽和蒸気の供給ユニットの構成を模式的に示す図である。
【図3A】図1A及び図1Bに示す洗浄装置において蒸気を提供する流体加熱ユニットについて、主要部の構成を模式的に示す図であって、当該ユニットを上方から見た際の構造を模式的に示す図である。
【図3B】図3Aに示す流体加熱装置を図3Aに示す矢印3B方向から見た際の構造を模式的に示す図である。
【図4】図3Aに示す流体加熱装置の内部の構造を模式的に示す図である。
【図5A】図1に示す洗浄装置に用いられるマルチノズルの概略構成を模式的に示す図である。
【図5B】図1に示す洗浄装置に用いられるマルチノズルの概略構成を模式的に示す図である。
【図6A】図5A及び図5に示すマルチノズルを用いた場合の効果を説明する図である。
【図6B】図5A及び図5に示すマルチノズルを用いた場合の効果を説明する図である。
【図6C】図5A及び図5に示すマルチノズルを用いた場合の効果を説明する図である。
【図6D】図5A及び図5に示すマルチノズルを用いた場合の効果を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、図面を参照して本発明の一実施形態について述べる。図1A及び図1Bは本発明の一実施形態に係る洗浄乾燥装置の概略構成を示す図であって、図1Aは洗浄工程を実行した際の状態を、図1Bは乾燥構成を実行した際の状態を各々示している。当該洗浄乾燥装置200は、下部筐体31、上部筐体33、ノズルユニット40、及びステージユニット60を有する。下部筐体31は内部にステージユニット60を収容し、内部空間の気体を所謂ブロア吸引により排気可能となるように該内部空間に対して複数の排気管35が接続されている。下部筐体31と上部筐体33とにより、ノズルユニット40及びステージユニット60を収容する筐体が構成される。排気管35は各々排気系に接続されており、下部筐体31及び上部筐体33により形成される空間内部の気体、或いは洗浄により生じた物質を該空間より排出するために用いられる。
【0014】
ステージユニット60は、回転台61、クランプユニット63、回転軸65、及びモータ67を有する。回転台61は、クランプユニット63により被洗浄物70を固定、支持する。回転軸65は、一方の端部において、回転台61が被洗浄物70を支持する側とは逆の側より該回転台61を支持する。回転軸65の他方の端部はモータ67に接続されており、モータ67の回転に応じて該該点軸65は回転台61及び該回転台61に固定された被洗浄物70を回転させる。なお、モータ67は低速回転モード及び高速回転モードの二つの回転モードを有し、洗浄時では被洗浄物70を低速回転させる低速回転モードを、乾燥時では被洗浄物の高速回転させる高速回転モードが実行される。高速回転から受ける遠心力により被洗浄物70に付着したコンタミ等は洗浄液と共に被洗浄物70上より除去され、更にこれら洗浄液体等は排気管35を介して下部筐体31内(及び上部筐体33により構成される閉鎖空間)より除去される。
【0015】
ノズルユニット40は、ノズル部41、ノズルアーム43、アーム回転軸45、アーム伸縮機構47、及びアーム回転モータ49を有する。ノズル部41は、後述する飽和蒸気供給ユニット100より供給される飽和蒸気を放出可能となっている。ノズルアーム43は、ノズル部41が被洗浄物70に被洗浄面に向けて飽和蒸気を放出可能となる姿勢で、該ノズル部41を支持する。ノズルアーム43はアーム伸縮機構47を介してアーム回転軸45の一方の端部に支持されており、アーム伸縮機構47によってアーム延在方向の位置について作動位置と待機位置との二位置間での位置変更が可能とされている。アーム回転軸45の他方の端部はアーム回転モータ49と連結されており、該アーム回転モータ49によってアーム回転軸45を中心とするノズル部41の所謂θ位置の移動が為される。
【0016】
図1Aは、ノズル部41が作動位置に配置されて被洗浄物の洗浄工程を実施している状態を示す。被洗浄物70はクランプユニット63によって回転台61に固定されており、この状態でモータ67が低速回転モードにより回転台61を低速回転させる。アーム伸縮機構47はノズルアーム43を伸ばしてノズル部41を被洗浄物70の所定位置であるコンタミ除去作業の開始位置と対向させており、アーム回転モータ49は可動を停止してノズル部41のθ位置の駆動を停止している。この状態でノズル部41から被洗浄物70の表面に向けて飽和蒸気が吹き付けられ、該飽和蒸気による被洗浄物70表面の洗浄操作が行われる。回転台61の回転とノズル部41のθ駆動とによって洗浄操作が被洗浄物70の全域に及んで被洗浄物70表面の洗浄が終了した段階で、飽和蒸気の噴出しの停止-洗浄操作の終了に至る。
【0017】
洗浄工程終了後、ノズルアーム43の収縮によるノズル部41の被洗浄物70との対向位置からの退避が行われる。その際、必要に応じてアーム回転モータ49によるノズル部41のθ位置の変更の操作も行われる。続いて、高速回転モードでモータ67による回転台61の高速回転が行われ、被洗浄物70の所謂スピン乾燥が行われる。スピン乾燥の操作により被洗浄部30表面から取り除かれたコンタミ、洗浄液等は、排気管35を介して不図示の排気系により装置内部から除去される。本発明において排気管35は単なる管として示されているが、当該管には不図示のブロア等が排気系として配され、コンタミ、洗浄液等の強制的且つ迅速な排除を可能としている。
【0018】
続いて、ノズル部41に対して飽和蒸気を供給する構成について説明する。なお、本実施形態では純水を基とする飽和蒸気を洗浄流体に用いることで洗浄を効果的に行い、且つ飽和蒸気から被洗浄物70に与えられる高い熱量を利用してスピン乾燥のみで微細トレンチ等でも従来得ることが困難であった好適な乾燥状態を得ている。しかし洗浄流体として、有機溶剤、気体等の種々の物質を使用することも可能である。ノズル部41に対する高温高圧の蒸気の供給は、蒸気供給経路23により為される。蒸気供給経路23は、下流においてノズル部41と接続されており、上流において二流体ノズル25と流体加熱装置100とからなる飽和蒸気発生ユニット29と接続されている。また、二流体ノズル25に対しては、純水源22及び高圧空気源24より、純水及び高圧の所謂圧空(圧縮空気)が供給される。二流体ノズル25においてはこれら純水と圧空とが混合され、更に当該混合により得られた流体を流体加熱装置100によって加熱することにより、高温高圧の蒸気を発生させている。飽和蒸気発生ユニット29によって生成された蒸気は、蒸気供給経路23を介してノズル部41に送られる。
【0019】
ここで、例えば被洗浄物70が軟質材からなり、過度の圧力を付加して蒸気を吹付けた場合に、当該被洗浄物70に対して何等かのダメージを与える恐れがある場合が考えられる。このような場合、ワーク30にダメージを与えることなく十分な洗浄効果を得るために、吹き付ける蒸気の吹き付け圧(供給圧力)及び温度の最適化を行う必要がある。通常、供給圧力の制御は、二流体ノズル25に供給される圧空の圧力と、流体加熱装置100による流体の加熱の程度を調節することによって行われる。しかし、この供給圧と加熱温度との変化は、高圧蒸気発生ユニット29により生成された蒸気を含んだ気体の体積或いは飽和蒸気圧等を考慮して行う必要がある。このため、実際の圧力制御は非常に複雑なパラメータを考慮する必要があり、事実上圧力固定による洗浄しか現状では為し得ていない。また、上記の温度に関しても、単に粒体加熱装置100の加熱温度を制御するだけでは圧力の変動も伴うことから、蒸気温度の制御も同時に困難であった。
【0020】
本実施形態においては、このようなノズル部41に対して供給される蒸気の圧力及び温度の制御を行うために、バイパス経路26を配置することとしている。バイパス経路26には、バイパス弁27が配置されている。当該バイパス経路26を介して蒸気供給経路23から適当な量の蒸気を分離してこれを外部空間に排出することにより、ノズル部41に供給する蒸気の圧力を機械的に制御可能としている。即ち、バイパス経路26は、蒸気供給経路23に供給された蒸気の一部をノズル部41以外に流してノズルに至る蒸気の流量或いは圧力を減ずる役割を有する。また、バイパス弁27の開度を調節することによって、バイパス経路26より排除される蒸気流量を制御し、蒸気供給経路23内の圧力、即ちノズル部41に対する供給圧を調整することも可能となる。更に、蒸気温度の制御に関しても、圧力と分離して制御することが可能となり、適宜最適温度にあわせた蒸気を得ることが可能となる。
【0021】
ここで、本発明において洗浄用の流体をして好適に用いられる飽和蒸気について説明する。本発明では、例えば水と水蒸気のように同じ物質の液体と蒸気とが熱平行にある流体を飽和蒸気として定義する。当該状態では液相及び気相の水が共存しており、水が蒸発する速度と凝集する速度とが同じにある。通常この様な飽和蒸気の圧力を飽和蒸気圧と称呼し、Pa(パスカル)等の気圧の単位によって示される。飽和蒸気は、潜熱加熱による高速且つ均一な加熱が可能であること、圧力と温度とを一時的に設定可能であること、また熱伝達率が高いこと等による熱源としての利用に優れている。本発明では、このような液相及び気相が混合されている飽和蒸気を洗浄液として用いることとして述べるが、装置としては飽和蒸気に限定されず、被洗浄物の条件によっては過熱蒸気や沸騰水による洗浄を行っても良い。
【0022】
次に、図2に示された流体加熱装置100の詳細について図3A、図3B及び図4を用いて説明する。図3Aは、本発明の一実施形態である流体加熱装置について、これを上方から見た際の構造を模式的に示し、図3Bは当該流体加熱装置を図3Aに示す矢印3B方向から見た際の構造を模式的に示している。また、図4は、図3Aに示す流体加熱装置を内部の構造を模式的に示す図である。
【0023】
本実施形態の流体加熱装置100は、カートリッジヒータ3、熱電対5、流体通路7、ヒータケース9、熱伝導小片11、ケース受け13、外装15、及び断熱材17を有する。外装15は、薄板から構成された例えば直方体形状を有し、他の諸構成を内部に包含可能な内部空間を有して当該流体加熱装置100の外形状を規定する。ヒータケース9は、円柱或いは中空部9aを有する円筒形状を有している。より詳細には、本実施形態において、該ヒータケース9は、該円柱形状の延在軸に垂直な断面において、中央部に先の中空部9aに対応する空間となる領域が存在し、且つ後述する他の部材を包含可能な厚さを有して該中空部の周りに存在する環状のケース内部9bなる内部空間を規定する。
【0024】
該ヒータケース9は、ケース受け13を介して外装15の内部空間内の所定位置に支持される。断熱材17が外装15の内面とヒータケース9外面との間に配置され、ヒータケース9から外装15への熱の伝達を防止する。また、先のケース受け13についても、ヒータケース9と外装15との熱伝達を防止するように断熱性を有する部材から構成されている。以上の構成により、ヒータケース9及びその内部の保温と、外装15の不必要な加熱の防止とを達成している。
【0025】
ヒータケース9における前述したケース内部9b内には、カートリッジヒータ3、熱電対5、流体通路7、及び熱伝導小片11が配置される。流体通路7は、例えば金属管を螺旋状に周回するように成型されて得られた部材から構成され、金属管の両端部が加熱される液体等の流入口7a及び流出口7bとして機能してその内部を該液体等が流れる。該流体通路7は、ヒータケース9の中空部9aを巻き回して、流入口7a及び流出口7bを除いた大部分或いは主要部分がケース内部9b内に包含される。カートリッジヒータ3及び熱電対5は、各々が接触せず且つ更に流体通路7とも接触しない位置となるように、ケース内部9b内に入れられている。なお、カートリッジヒータ3は、ヒータケース9のケース内部9bを均等に加熱するために、該ヒータケース9の延在軸を中心に4本以上等配に配置されることが望ましい。
【0026】
熱伝導小片11としては、例えば径及び長さが1mm以下の円柱形からなる金属小片が用いられる。該熱伝導小片11は、ケース内部9b内のカートリッジヒータ3、熱電対5及び流体通路7の間に形成される空間に対して、所定の密度、或いは所定の状態にて充填される。ここで所定の密度とは、例えば流体加熱装置100に対して振動が与えられた際に、熱伝導小片11の少なくとも一部分が移動可能な密度を定義する。また、所定の状態とは、ケース内部9b内の少なくともカートリッジヒータ3及び流体通路7が、ケース内部9b内に充填された熱伝導小片11によって覆われてケース内部9b内に所定の大きさの余剰空間を形成した状態を定義する。
【0027】
加熱源であるカートリッジヒータ3により供給される熱は、この熱伝導小片11を介して流体通路7に伝達される。なお、カートリッジヒータ3が熱媒体としての熱伝導小片11に熱を伝えることによって、当該熱伝導小片11は熱膨張する。しかし、前述した所定の密度或いは所定の状態を維持することにより、この熱膨張は熱伝導小片11の移動を可能とする空隙等に吸収される。なお、前述した所定の密度は、熱伝導小片11が熱膨張した際の熱膨張量を吸収可能な充填密度と考えても良い。このような所定の密度を維持して熱伝導小片11を熱媒体として用いることにより、特許文献2等で問題視される充填部材の熱膨張を考慮した設計を行う必要がなくなり、装置設計及び作成の容易化と製造コストの削減とを達成することが可能となる。
【0028】
なお、熱伝導小片11について、上述した実施形態では円柱形からなる金属小片を用いた場合を例示したが、本発明は当該形態或いは材料に限定されない。例えば、熱伝導性の良い銅或いは銅系の合金、更には熱伝導性と耐食性とを両立させたアルミ系の合金等、適時選択することが可能である。また、形状に関しても円柱形のみに限定されず、球形状等の種々の形状が適用可能であり、大きさに関しても例えば大きさが異なる金属小片を加え、充填密度の向上、小片同士の接点増加を図り、これらを介しての熱伝導効率の向上を図ることとしても良い。
【0029】
なお、上述した形態では、取り扱いの容易さ、ケース内部9bへの装填の容易さ、及び熱伝導小片11の略均等な加熱が可能であること等から、加熱源としてカートリッジヒータ3を用いることとしている。しかし、ケース内部9bに存在する熱伝導小片11の凡そを均等に加熱可能であれば、その他公知の種々の形態からなる加熱源を用いることも可能である。また、液体の加熱領域の増大と構成のコンパクト化の観点から流体通路7を螺旋状にされた金属管からなる形態を例示しているが、流体の粘度や熱容量、更には熱伝導小片11の形状、充填量等を勘案してその他の形態、或いは材料から構成しても良い。更にケース内部9bの温度の測定には熱電対5を用いることとしているが、用いる流体の加熱温度に応じて当該熱電対5を公知の種々の温度測定手段と置き換えることも可能である。
【0030】
また、本発明ではヒータケース9のケース内部9bは空気(大気)によって満たされていることとしているが、ここを所定の特性を有した気体或いは液体等の熱媒体によって満たす、或いはこのような熱媒体が所定の濃度以上となるように流入出(パージ)することとしても良い。例えば、ヒータケース9に対して窒素等の不活性な気体の供給を可能な構成とし、ケース内部9bに存在する空隙を該窒素によってパージすることにより、酸素濃度を抑制して熱伝導小片11に生じ得る表面酸化等を抑制することが可能となる。例えば該熱伝導小片11に表面酸化が生じた場合にはその酸化膜によって熱伝導効率が変化する恐れがある。窒素等を導入することにより、表面酸化が抑制され、これによって生じ得る熱伝導効率の経時変化の抑制が可能となる。なお、空隙の充填には気体より熱の伝達効率で優れる液体の使用も可能であるが、熱伝導小片11の膨張量を吸収可能な気体を使用することがより好ましい。
【0031】
また、流体通路7に付随する流入口7a及び流出口7bは、装置構成の容易さを勘案して、本実施形態では円筒形状のヒータケース9の両端面に配置することとしている。しかし、本発明の態様はこれに限定されず、例えば流入口7a及び流出口7bの直前まで液体の加熱を可能とするように、これらを円筒形状の端面ではなく外周面に配置することとしても良い。また、当該流体加熱装置100を組み込む例えば後述する高圧蒸気洗浄装置の構成に応じて、その配置を適宜変更することとしても良い。ヒータケース9については、流体通路7の適切な長さと、カートリッジヒータ3及び熱伝導小片11の使用量の適切化の観点から前述した形状としている。しかし、流体通路7の形態に応じてヒータケース9の形態も種々変更が可能である。
【0032】
次に、ノズル部41の形態について述べる。本実施形態では、単一の流体の噴出し口からなるノズルではなく、図5A及び図5Bに外観を示すように複数の噴出し口を有するノズル部41を用いている。図5Aはノズルアーム43の延在方向(X軸方向)におけるノズル部41の外側から該ノズル部41を見た場合の概略構成を示し、図5Bはノズルアーム43の延在方向と該ノズルアーム43から被洗浄物70表面にいたる方向(Z軸方向)とが形成する平面に垂直な方向(Y軸方向)から見た場合の概略構成を示す。
【0033】
ノズル部41は、マニホールド41a、傾斜ノズル41b、及び垂直ノズル41cを有する。マニホールド41aは、蒸気供給経路23から供給された飽和蒸気を2方向に分ける経路分岐部として機能し、連通される傾斜ノズル41b及び垂直ノズル41cに対して各々飽和蒸気を供給する。傾斜ノズル41bは、被洗浄物70の表面、或いは延在方向に対して被洗浄物70の回転中心を内角として傾斜角度α1にて交錯する方向で、被洗浄物70に対する飽和蒸気の吹き出しを可能としている。垂直ノズル41cは、被洗浄物70の表面、或いは延在方向に対して垂直な方向で、被洗浄物70に対する飽和蒸気の吹き出しを可能としている。また、被洗浄物70上の傾斜ノズル41bからの飽和蒸気の噴出し中心と、垂直ノズル41cからの飽和蒸気の噴出し中心とは、被洗浄物70の回転方向Vに沿って垂直ノズル41c側の噴出し中心がオフセット量dだけ前方側に位置するようにずらされている。
【0034】
当該ノズル部41による洗浄のメカニズムについて、ノズル部41と被洗浄物30とを模式化してその工程を示す図6A〜図6Dを参照して詳述する。本実施形態におけるノズル部41は、被洗浄物70の表面全域にコンタミ71が存在する場合の洗浄を想定している。図6Aに示すように、まず被洗浄物70の表面に対して垂直ノズル41cより飽和蒸気を略垂直にあてる。その際飽和蒸気の流速がコンタミ71の垂直方向に対して大きいことから、飽和蒸気から大きな衝撃力、吹き付け圧力が得られコンタミ71の部分的除去が効果的に為される(図6B)。
【0035】
この段階から被洗浄物70が回転し、続いてコンタミ71の部分剥離した部分に対して傾斜ノズル41bから噴出す飽和蒸気が吹き付けられる状態となる。その際、飽和蒸気から加えられる熱による膨張等により、部分剥離の周辺で被洗浄物70とコンタミ71との間に飽和蒸気が進入可能な隙間が生じる(図6C)。図6A〜図6Dに示すようにこの隙間、被洗浄物70−コンタミ71界面に飽和蒸気が侵入し、これらの付着力を低下させ、部分的な剥離をより効果的に拡大させる。被洗浄物70の回転及びノズル部41の位置の移動によりこの剥離の拡大を被洗浄物70の表面全域に拡大させる。その結果、図6Dに示すように被洗浄物70に付着したコンタミ71の洗浄が行われる。
【0036】
なお、上述した実施形態では、各々異なる角度で被洗浄物70の表面に飽和蒸気を吹き付け可能な傾斜ノズル41bと垂直ノズル41cとを有することとしている。しかし、本発明では、コンタミ剥離のきっかけを促す垂直ノズル41cと、該垂直ノズル41cとは異なる角度で被洗浄物70の表面に飽和蒸気を吹き付けて剥離部分を拡大する傾斜ノズル41bと、各々同等の作用を有する複数のノズルを有していれば、その数は2つに限定されない。剥離部分の拡大に寄与するのであれば、更に異なる角度のノズルを付加することとしても良い。
【0037】
本発明では、飽和蒸気を用いることによって被洗浄物70に十分に熱が伝えられ状況で、熱を放出することなく連続的にスピン乾燥の工程にいたることを可能とし、スピン乾燥と洗浄液の揮発とによって例えば微細トレンチ等においても所謂乾きムラを生じさせずに乾燥を終了させ得るという格別の効果を得ている。しかし、例えば洗浄流体として有機溶剤等を用い、該有機溶剤をリンスする必要がある場合、上及び下部筐体からなる空間内にリンス用の機構を配することとしても良い。この場合、ノズルユニット40と同様の構成からなるリンス用ユニットを配することが好ましい。以上の構成の付加により、より多様な被洗浄物或いはコンタミに対しても対処することが可能となる。
【0038】
以上の構成からなる洗浄乾燥装置200を用いることによって被洗浄物70からのコンタミ71の効果的な除去、及び連続したその後の乾燥が実行可能となる。従って、洗浄-乾燥の工程をタイムラグ無く実施でき、コンタミの再付着を好適に防止可能な洗浄乾燥装置200の提供が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
上述したように、本発明に係る洗浄乾燥装置は、簡易な構造を有することから装置の構築が容易且つ廉価であり、飽和蒸気を洗浄用の媒体として用いることにより、例えば微細電子部品である磁気ヘッドコアにおける切削液等の残渣等、微細な空間に嵌まり込んで従来の洗浄方法では除去困難な汚染物も好適に除去し、当該部品の乾燥を行うことが可能である。従って、単に微細電子部品の洗浄乾燥装置としての態様のみならず、洗浄困難な領域を有する複雑な形状を有する被洗浄物、更には所謂軟質の材料からなる被洗浄物の洗浄乾燥装置としても適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
3:カートリッジヒータ、 5:熱電対、 7:流体通路、 7a:流入口、 7b:流出口、 9:ヒータケース、 9a:中空部、 9b:ケース内部、 11熱伝導小片、 13:ケース受け、 15:外装、 17:断熱材、 21:ノズル、 22:純水源、 23:蒸気供給経路、 24:高圧空気源、 25:二流体ノズル、 26:バイパス経路、 27:バイパス弁、 29:飽和蒸気発生ユニット、 31:下部筐体、 33:上部筐体、 35:排気管、 40:ノズルユニット、 41:ノズル部、 41a:マニホールド、 41b:傾斜ノズル、 41c:垂直ノズル、 43:ノズルアーム、 45:アーム回転軸、 47:アーム伸縮機構、 49:アーム回転モータ、 60:ステージユニット、 61:回転台、 63:クランプユニット、 65:回転軸、 67:モータ、 70:被洗浄物、 71:コンタミ、 100:流体加熱装置、 200:洗浄乾燥装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の軸を中心に被洗浄物を回転可能に支持するステージユニットと、
前記ステージユニットに支持された前記被洗浄物に対して洗浄流体を吹き付け可能なノズル部と、
前記ステージユニット及び前記ノズル部を収容する筐体と、
前記筐体から洗浄により生じた物質を排出するための排気系と接続される排気管と、を有し
前記ステージユニットは前記洗浄流体の吹き付け時の低速回転モードと、前記被洗浄物を乾燥させるための高速回転モードとを有し、
前記洗浄流体は飽和蒸気であって、前記飽和蒸気を生成する飽和蒸気発生ユニットを更に有することを特徴とする洗浄乾燥装置。
【請求項2】
前記飽和蒸気発生ユニットは、流体の流入口と流出口とを有する流体通路を有し、前記流体通路を通過する流体を加熱する加熱源と、
前記流体通路と前記加熱源とを内部に包含するヒータケースと、
前記ヒータケース内に充填されて前記加熱源の発する熱を前記流体通路に伝達する熱伝導小片と、を有し、
前記熱伝導小片は、前記ヒータケースの内部の前記加熱源と前記流体通路とを覆うように充填されることを特徴とする請求項1に記載の洗浄乾燥装置。
【請求項3】
前記熱伝導小片は所定の充填密度にて充填され、前記ヒータケースの内部に空隙を形成することを特徴とする請求項2に記載の洗浄乾燥装置。
【請求項4】
前記ヒータケースの内部に配置されて前記ヒータケースの内部温度を測定する温度測定手段と、
前記ヒータケースを覆って前記ヒータケースの保温を為す断熱材と、を更に有し、
前記流体通路は管状の部材を螺旋状に成型して得られたものであること、を特徴とする請求項2又は3の何れか一項に記載の洗浄乾燥装置。
【請求項5】
前記ノズル部は複数のノズルを有し、前記複数のノズルは各々異なる角度にて前記被洗浄物の洗浄面に対して前記洗浄流体を吹き付け可能であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の洗浄乾燥装置。
【請求項6】
前記ノズル部は、前記被洗浄物の洗浄面に対して垂直に前記洗浄流体を吹き付け可能な噴出軸を有したノズルを有することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の洗浄乾燥装置。
【請求項1】
所定の軸を中心に被洗浄物を回転可能に支持するステージユニットと、
前記ステージユニットに支持された前記被洗浄物に対して洗浄流体を吹き付け可能なノズル部と、
前記ステージユニット及び前記ノズル部を収容する筐体と、
前記筐体から洗浄により生じた物質を排出するための排気系と接続される排気管と、を有し
前記ステージユニットは前記洗浄流体の吹き付け時の低速回転モードと、前記被洗浄物を乾燥させるための高速回転モードとを有し、
前記洗浄流体は飽和蒸気であって、前記飽和蒸気を生成する飽和蒸気発生ユニットを更に有することを特徴とする洗浄乾燥装置。
【請求項2】
前記飽和蒸気発生ユニットは、流体の流入口と流出口とを有する流体通路を有し、前記流体通路を通過する流体を加熱する加熱源と、
前記流体通路と前記加熱源とを内部に包含するヒータケースと、
前記ヒータケース内に充填されて前記加熱源の発する熱を前記流体通路に伝達する熱伝導小片と、を有し、
前記熱伝導小片は、前記ヒータケースの内部の前記加熱源と前記流体通路とを覆うように充填されることを特徴とする請求項1に記載の洗浄乾燥装置。
【請求項3】
前記熱伝導小片は所定の充填密度にて充填され、前記ヒータケースの内部に空隙を形成することを特徴とする請求項2に記載の洗浄乾燥装置。
【請求項4】
前記ヒータケースの内部に配置されて前記ヒータケースの内部温度を測定する温度測定手段と、
前記ヒータケースを覆って前記ヒータケースの保温を為す断熱材と、を更に有し、
前記流体通路は管状の部材を螺旋状に成型して得られたものであること、を特徴とする請求項2又は3の何れか一項に記載の洗浄乾燥装置。
【請求項5】
前記ノズル部は複数のノズルを有し、前記複数のノズルは各々異なる角度にて前記被洗浄物の洗浄面に対して前記洗浄流体を吹き付け可能であることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の洗浄乾燥装置。
【請求項6】
前記ノズル部は、前記被洗浄物の洗浄面に対して垂直に前記洗浄流体を吹き付け可能な噴出軸を有したノズルを有することを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項に記載の洗浄乾燥装置。
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図1B】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【公開番号】特開2013−55292(P2013−55292A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−193916(P2011−193916)
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月6日(2011.9.6)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
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