説明

洗浄剤および洗浄方法

【課題】本発明は糠の除去ができる洗浄剤と黄変がなく、ふっくら美味しい米飯を得る洗浄剤と濯ぎ剤に関する組成物および方法を提供することを課題とする。更には、上記組成物及び方法によって得られる米飯、焼飯等食品の提供を課題とする。
【解決手段】米糠を洗浄する洗浄工程と、黄変を脱色する二工程からなる洗米方法を発見し発明を完成した。生物由来焼成カルシウムを洗浄剤組成物に特定し、黄変防止剤として広く使用される亜硫酸ナトリウムなど化学物質を一切使用することなく、食品または食品添加物からなる任意の酸性物質を適用し、不快臭/不快味/黄変のないふっくらと美味しい米飯焼飯食品を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗浄と濯ぎ工程からなる洗米方法及洗米剤組成物と食品に関する。
本発明洗米剤に適用する洗浄剤は生物由来焼成カルシウムに特定されたものであって、その際に生じる黄変現象を濯ぎ剤によって復元する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
精米機で精白された米粒には、物理的強度が及ばない米粒表面微細溝に付着した糠が残存しており、そのまま炊飯すれば糠臭い米飯が炊き上がるので、無洗米が提供されている。
【0003】
無洗米の製造方法としては精米に水を加え、混合撹拌した後、乾燥する湿式製造方法、精米したものをアルコールで洗浄処理する湿式製造方法、精米をブラッシュ又はフェルトなどで米の表面を研磨し、糠を除去する乾式製造方法が提案されている。
【0004】
しかし、糠の完全除去は困難であるばかりか栄養成分が流失し、またこれらの流出物を河川等に放出する場合には河川水質の汚濁の原因となるので、大量に炊飯加工する施設では汚水処理施設が法的に義務付けられている。
【0005】
米飯に限らず食品類の変色は食味、商品価値を著しく低下させる。例えば、野菜や果物、えびやかになどの甲殻類の変色が大きな問題となっている。これらの変色は遊離するチロシンなどフェノール化合物がチロシナーゼ酵素の活性関与によって、キノン体に酸化され、さらにメラニンへと重合することによって変色が引き起こされる。これらの変色を防止するために、えび、かになどでは亜硫酸ナトリウムなどの化学合成品を主成分とした製剤を使用している。
【0006】
また野菜、果物などにおいては、次亜塩素酸ナトリウム溶液での処理によって、漂白しているのが現状である。食品の褐変防止剤として最も多く使用されている亜硫酸ナトリウムであっても焼成カルシウムによって洗浄、黄変した洗浄米の黄変防止及び脱色効果は全く認められず、酸成分からなる濯ぎ剤を発見して本発明を完成した。使用されている変色防止剤のほとんどのものは化学合成品が主成分であり、これらは食品衛生法の食品添加物等規格基準によって認可されている。しかし、食品への残留問題、変異原性問題、風味に与える影響など多くの問題点がある。近年、消費者の食品に対する安全・安心の要望と化学合成品の排除、つまりは天然物由来の変色防止剤の使用が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−23615号公報
【特許文献2】特開2000−139434号公報
【特許文献3】特開2000−333598号公報
【特許文献4】特公平5−30422号公報
【特許文献5】特開2000−42430号公報
【特許文献6】特開2000−354773号公報
【特許文献7】特開平7−171426号公報
【特許文献8】特公昭61−26337号公報
【特許文献9】国際公開番号W02004/060077号公報
【特許文献10】特許公開2008−35854号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】日本食品工業学会誌第41巻第2号1994年2月135〜140
【非特許文献2】厚生労働省、国民栄養調査1992,2000
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
以上に鑑み、より安全に黄変を防ぐ方法が提案されている。例えば、天然物由来の食品用黄変防止剤として、特許文献1魚類白子の抽出物(特開2000−23615号公報)特許文献2クロレラ等藻類の抽出物(特開2000−139434号公報)特許文献3コーヒー豆の抽出物(特開2000−333598号公報)特許文献4麹酸(特公平5−30422号公報)を有効成分とする方法が提案されている。しかしながら、これらの変色防止技術によっては、本発明洗浄剤によって生じた精米の黄変を元の色相に復元する効果は亜硫酸ナトリウム同様認められなかった。
【0010】
糠のない無洗米はそのまま炊飯できるが、現実は炊飯時に水を入れ混ぜると糠による濁りが発生し炊き置きした米飯は糠臭がし、喫食に耐えるものではなかった。無洗米を製造するには、玄米のアリウロン層(糊粉層)を完全に除去し尽くす必要がある。しかし、アリウロン層自体は洗米機械力によって破壊され、その一部は糠として除去されるが、アリウロン層に含まれる油脂やタンパク質や糖質などから成る粘度の極めて高い半液体状の混合物の一部が精米の米粒表面に付着しており、除去することは困難であった。このような現実から完全な無洗米の提供は行われていないのが現状である。米糠除去を目的とする無洗米の製造方法は多数公知であり、代表的な製法として、例えば特許文献5(特開2000−42430号公報)特許文献6(特開2000−354773号公報)に記載された、加水仕上げ法、特殊仕上げ法、乾式仕上げ法が知られている。しかしながら、糠除去が不十分なため、二段方式や複数台連座方式が必要となり、機械装置も大型化し、コストも高くなる欠点がある。また、米粒に機械力、衝撃を加えるため、胴割れ米/砕米が増加し炊飯時に破損部から旨み成分が流失し食味を低下させる欠点があった。さらに、処理中の米温度が高温のため、品質の酸化劣敗を生じるなどの欠点がある。
【0011】
以上、いずれの無洗米製造方法においても、満足される食味を備えた米飯供給に有効な手段が確立されていない現状である。例えば、老舗の料亭、旅館、コンビニおにぎり等米飯食品提供の企業においては、無洗米の糠除去を目的とする、洗米方法を独自に開発し、その美味しさを競っているのが現状である。その方法とは、多量の水で繰り返し研ぐ方法が一般的であるが、特種な添加剤およびそれに付随する作業手順等、独自ノウハウに依存しているのが現状である。
【0012】
近年、弁当工場及び飲食店対象の米飯専門の給食センター等が増加し、無洗米を使用しているが、一度に多量の洗米作業を必要とし、人力ではなく高価な機械設備により洗米作業が行なわれている。このような洗米操作には、多量の水が必要となり、河川へのBOD、COD等の負荷を与えるため、法規制が導入されている。これらの洗米に要するが高額な設備投資、工数増が米飯食品のコストアップの一因となっている。
【0013】
そこで過大な機械力に依存しない、洗米方法が提案されている。例えば特許文献7(特許公開平7−171426号公報)に記載された方法が知られている。すなわち、界面活性剤を使用し米糠を洗浄する方法である。界面活性剤として、飽和直鎖脂肪酸から成る多価アルコール脂肪酸エステルを有効成分とする洗米剤組成物および洗米方法が提案されている。しかしながら、近年、消費者の食品に対する安全・安心の要望が強く、食品衛生法の食品添加物等規格基準によって認可された界面活性剤とは言え、残留の問題、風味に与える影響などの問題点があるため広く普及していない現状である。
【0014】
また、特許文献8(特公昭61−26337号公報)によれば、55〜60℃の熱エタノールにより糠臭の原因となる糠油を除去する方法が開示されている。しかし、この方法では、エタノールを15秒間接触させた後、乾燥してエタノールを除去することが必須条件であるため、高額の設備投資が必要な上、アルコール臭が残り易く、熱エタノール引火の危険性を伴うという欠点があった。
【0015】
特許文献9(国際公開番号W02004/060077号公報)によれば食品の不快味及び/又は不快臭の低減剤としてα,α−トレハロースの糖質誘導体を含有せしめる方法が開示されている。しかしながら、洗米剤として使用した場合、不快味及び/又は不快臭の低減効果は認められるが、糠の除去には効果がないものであった。また焼成カルシウムによる黄変を防止できないため本発明に利用できない技術である。
【0016】
特許文献10(特許公開2008−35854号公報)によれば焼成カルシウム使用によるによる野菜類の洗浄方法が開示されているが、精白米の洗浄に関しては全く開示されていない。焼成カルシウムを洗米剤に適用し炊飯した結果、糠が除去され美味しい米飯を得ることができる一方、黄変を伴うため洗米剤として到底供し得ないものであった。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は請求項1記載の生物由来焼成カルシウムである米の洗浄剤である。請求項2は生物由来焼成カルシウムである洗浄剤を用いて洗浄し、更に濯ぎをすることを特徴とする洗米方法である。請求項3は濯ぎが酸を主成分とする濯ぎ剤を加えて濯ぎをすることを特徴とする請求項2記載の洗米方法である。上記の如く精白米に付着した糠を完全に除去する有効な方法は無く、その手段が待たれている現状である。本発明は無洗米であっても一般の精白米であっても、糠の除去が十分にでき、炊飯後及び炊き置き状態において、不快臭/不快味/黄変がない、ふっくら美味しい米飯を得るための洗米と濯ぎに関する組成物および方法を提供することを課題とする。更には、上記組成物及び方法によって得られる食品の提供を課題とする。本発明者らは、焼成カルシウムを使用した野菜、果実、魚類、牛肉,豚肉等食品の洗浄・除菌・鮮度保持に関する研究を長年重ねてきたが、前述した状況の下では白米の黄変が解決し得ず、洗米剤としての用途を断念していた。しかしながら、鋭意研究の結果、黄変現象の解明とその脱色方法を発見し本発明を完成するに到った。米粒子の表面は糠(主成分=油脂)によって覆われているため、米粒子への水の浸透が妨げられ、精白米の吸水量が不十分なため、ふっくら炊きあがらず、食味として粘りのない、ぱさつきと、黄変を生じやすく、さらには不快臭を伴うため、喫食には適さないものであった。
【0018】
そこで、糠成分について研究の結果、糠の主成分である油脂はアルカリ成分によって洗浄するのが最も簡単且つ有効な手段と考えた。糠を洗浄するアルカリ成分として、生物由来焼成カルシウムの他、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、燐酸水素二ナトリウム、燐酸三ナトリウム、燐酸水素二カリウム、燐酸三カリウム、燐酸水素二アンモニウム、ポリ燐酸ナトリウム、ポリ燐酸カリウム、酸化カルシウム、燐酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、等が有効であった。これらのアルカリ剤は、単独で使用してもよく、また、混合物として使用してもよい。中でも、生物由来焼成カルシウムは食品添加物(栄養強化剤)であることから、好適に使用できる。貝殻を焼成して得られた貝殻カルシウムや卵殻を焼成して得られた卵殻カルシウム、ウニ殻に由来するウニ殻カルシウム等などが好適に使用できる。
【0019】
焼成カルシウムは既存添加物として厚生省告示・既存添加物・第120号・187に告示される酸化カルシウムであって、その水和物(水酸化カルシウム)も好適に使用できる。ここで、生物由来焼成カルシウムとして好適なものは例えば特許文献5(特許公開2008−35854号公報)などで公知の物であれば特に制限されず、ホタテや牡蠣等の貝殻を焼成して得られる酸化カルシウムまたはその水和物である水酸化カルシウムが好適に使用できる。また、焼成カルシウムは非特許文献1(日本食品工業学会誌第41号第2号1994年2月135〜140)によって公知の通り栄養強化剤の目的で使用されるものであって、抗菌力にも優れた食品用洗剤である。また、非特許文献2(厚生労働省、国民栄養調査1992,2000)によれば国民のカルシウム摂取量不足が報告され摂取ニーズが高まっている。以上から焼成カルシウムによる黄変を防ぐ方法の発見が重要と考えた。すなわち、黄変を濯ぎ工程で脱色可能とすれば、大きな機械力を必要とせず糠が簡単に完全にアルカリ除去でき、美味しく、カルシウム補給可能な洗米剤の提供が可能になると考えた。
【0020】
米糠はリノール酸などの不飽和脂肪酸を主たる構成成分とする油脂であり、焼成カルシウムのアルカリ作用によって親水化され、簡単に遊離・洗浄・除去できることを発見した。このアルカリ剤で洗米した米飯は不快臭と不快味がなく水分をたっぷり吸収し粘りのあるふっくらとした食感を呈する事から糠が完全に除去されたことは明らかである。一方、糠が除去されているにも関わらず、黄変するという致命的な欠陥を有していた。このような実態から、焼成カルシウムは野菜、果実、魚類、牛肉,豚肉等食品の洗浄剤・除菌剤・鮮度保持剤として広く普及しているにも関わらず、精白米の洗浄剤としては全く適用〜普及していないのが現状である。以上から、黄変現象は糠が原因で起こるものでないことを発見した。また、焼成カルシウムを、他のアルカリ剤に代替した場合も同様な黄変現象を示した。
【0021】
糠が完全に除去され糠臭さがなく、ふっくら美味しい米飯が提供できるにもかかわらず、致命的ともいえる黄色い焚きあがりとなる。この黄変メカニズムを解明すれば脱色方法が解明できると考え研究を重ねた。穀物や野菜類等の共通成分として、ポリフェノールが存在することは公知である。ポリフェノールは空気中の酸素と接触するとポリフェノールオキシダーゼの働きにより酸化されて黄変・黒変・褐変物質を生成することが知られている。また、タンニンやカテキンのように、低分子単量体の重合により黒変・褐変物質を生じることも公知である。これらの変色は酸化や酵素活性によるものであり抗酸化剤やチロシナーゼ酵素阻害剤による解決策が提案されている。
【0022】
しかしながら、焼成カルシウム洗浄による黄変現象は、前記とは全く異なる現象であることを解明し、黄変現象を解消する濯ぎ剤組成物を発見し本発明を完成した。すなわち、ポリフェノールや糠の油分が黄変するのではなく、精白米粒子中の色素成分であるフラボノイドが配糖体として存在する事を見出し、このフラボノイドが水素イオン濃度の違いによって無色〜黄色に変化し黄変する現象を発見した。すなわち、フラボノイドはアルカリ領域においては分子構造がカルコンとなるため黄色を呈する。一方、中性または弱酸領域ではフラボノイドはフラバノン構造を取り無色を呈する。従って焼成カルシウムで黄変した洗米は酸性物質により元の水素イオン濃度(pH)に戻せば確実に脱色できる事を発見し本発明を完成した。精白米をアルカリ成分により処理することで生じる黄変現象は他にも例示することができる。例えば、アルカリイオン水で洗米すると黄色く変色するが、この現象も同じ原理によっている。また、ラーメンに、かんすい剤としてアルカリ剤(焼成カルシウム、炭酸ナトリウム等)が使用され、麺が黄色くなる現象がある。すなわち、小麦粉のグルテンに含まれるフラボノイドが弱酸性〜中性では無色のフラバン構造からアルカリ領域に転換され黄色のカルコン構造に変化する。また、おにぎりに塩を加えた場合、黄変することがあるが同じ原則に従っている。すなわち、塩に含まれる塩化マグネシウムのアルカリ性がフラボノイドと反応し、カルコン構造に変化するため黄変する。
【0023】
以上述べたフラボノイドの水素イオン濃度による呈色反応は可逆的であってコントロールが自由にできるとの仮説を立て種々検証実験を重ねた。すなわち、焼成カルシウムによって、アルカリ性となった洗米状態(黄変)を、元の弱酸性に戻せば、元に復元(脱色)できるはずと考え、種々の酸成分を添加し検討した結果、いずれのアルカリ洗浄剤で黄変した白米もいずれの酸成濯ぎ剤を使用しても確実に元の色に復元できる事を確認した。すなわち、焼成カルシウムによって洗米することで発生する黄変現象はいかなる酸成分によっても脱色される。言うまでもないがこれの現象は変色を防止するものではなく、黄変したものを元の色に復元(脱色)するものである。
【0024】
本発明の濯ぎ剤として適用できるに酸成分としては、塩酸、硫酸、硝酸,リン酸、スルファミン酸等の無機酸や、酢酸、スルホン酸、アジピン酸、フマール酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、酪酸、等の有機酸やレモン、オレンジ、グレープフルーツ等の果汁や硫酸アルミニウムカリウム、硫酸アルミニウムアンモニウム等の強酸の塩類を使用することができる。特に好ましい濯ぎ剤酸成分としては食品、または食品添加物であるレモン汁等の果汁、食酢、クエン酸、リンゴ酸、ミョウウバンを上げることができる。有機酸は光学異性体を含む。例えば食品添加物であるリンゴ酸は、光学活性であるd−、l−又はdl−体等の異性体も使用することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明洗米剤を使用して洗米した白米は周囲に付着した糠がほぼ完全に除去れるため、水分の吸水率が向上し、炊き上がった米飯は不快臭/不快味/黄変がない、ふっくら美味しい米飯を提供する効果を奏する。
【0026】
焼成カルシウムを洗浄剤として洗浄すると精白米のフラボノイド成分の分子構造がフラボノンに変わり黄変するが、本発明濯ぎ剤によって生じたフラボノン構造からカルコン構造に転換し黄変のない米飯を提供する効果を奏する。
【0027】
本発明の洗米剤組成物においては優れた除菌作用を示すので、精白米のかび、細菌等をも除去し米飯食品の保存効果を高めることができる。よって、ソルビン酸カリウムなど保存料の添加を排除または軽減した米飯を提供する効果を奏する。
【0028】
本発明の洗米剤を使用して洗米した米飯は表1に示す通り、栄養価を損傷することなくカルシウム量を2.3mg/100gから8.7mg/100g(3.8倍)に増強した米飯を提供する効果を奏する。単位は脂質、たんぱく質はg/100g 他はmg/100gで表す。これは日本食品分析センター報告書No306080290他の報告書による。
【0029】
【表1】

【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明洗米剤は糠を除去する洗浄剤と黄変を脱色する濯ぎ剤とを必須成分とする。洗米方法は、洗浄と濯ぎの連続した2工程からなる。洗浄工程は精白米に付着する糠を洗浄剤で洗浄し洗浄液(研ぎ汁)を水に置換する。引き続き、行う濯ぎ工程は、洗浄剤によって黄変した精白米を脱色するため濯ぎ剤を添加し濯げばよい。濯ぎの後の水洗は濯ぎ剤成分の
食味への影響にもよるが必ずしも必要でない。このようにして糠が取り除かれ、変色、異臭のないふっくら美味しくカルシウムに富む食品を提供する。
【0031】
本発明の洗浄剤としては、焼成カルシウムが好適に使用できる。生物由来焼成カルシウムが特に好適である。洗浄剤は精米を研ぐ水に0.05〜0.5%の濃度範囲で使用するのが好ましく、この範囲より濃度が低いと糠の除去が不十分となり米飯の食味が悪くなる。また、この範囲を超えて使用しても食味向上効果は得られない。精白米と水の割合は特に制限されないが精白米と水とを等容量程度で使用するのが好ましく、洗浄後水洗によって遊離した糠を除去する。
【0032】
本発明の濯ぎ剤に適用される物質としては、特に限定されないがクエン酸、リンゴ酸や食酢等が安全面より好適に使用できる。また、レモンやオレンジ、グレープフルーツ等の果汁が好適に使用できる。濯ぎ剤の使用量も特に限定されないが、精米を洗浄剤によって研いだ後、黄色く変色した精米を元の色相に復元するに必要最小量であればよい。例えばクエン酸の場合、精白米100部(重量)に対して0.2〜0.6部(重量)の範囲で使用するのが好適である。濯ぎ後の水洗は必ずしも必要でなく、そのまま炊飯しても、水洗してから炊飯しても米飯の黄変、糠臭、食感に影響はなかった。以上記載した酸性物質の塩類、例えばクエン酸ナトリウムなどはいずれも効果が認められず本発明に使用できない。また、食品の褐変防止剤として最も広く使用される亜硫酸ナトリウムは、本発明濯ぎ剤による変色防止メカニズムとは異なるものであり効果が認められず本発明に使用できない。
【0033】
本発明に係る精米の洗浄処理としての処理時間は1〜3分、処理温度は、5〜40℃、pHは、9〜13が好適である。また、本発明の食品は、無洗米、御飯、焼飯に関する。本発明の洗米剤には、食味向上を目的に米の乾燥防止剤などとして澱粉及び澱粉誘導体、セルローズ及びセルローズ誘導体、タンパク及びタンパク誘導体、多糖類及び多糖類誘導体等の食品添加物を併用することができる。
【実施例】
【0034】
表2について実施例1〜5、比較例1〜3として、本発明について説明するが、これらの実施例は何ら本発明を限定するものではない。
【0035】
30日経過した精米540CCに0.2%焼成カルシウム水溶液を540CC加え、一般的な方法で米を洗った。即ち、緩く2〜3分攪拌した後、米を沈め、研ぎ水を捨て、再び全体を覆う水を加えた。このようにして得た洗浄米は黄色く変色する。黄変した洗浄米を実施例1〜5、比較例1〜3に示す濯ぎ剤によって濯ぎ、黄変防止効果を調べた。同時に米飯の黄変防止効果も表2に示す。また、濯ぎ後の黄変防止効果については表1に示した。濯ぎ剤による脱色効果は目視判定とし、写真に記録し保管した。表2及び表1から、本発明実施例1〜5による高度な黄変防止効果が確認された。
【0036】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0037】
以上から明らかなとおり、洗米において洗浄剤として生物由来焼成カルシウムを必須とし、黄変防止剤として広く使用される亜硫酸ナトリウムなど化学物質等を一切使用することなく、食品または食品添加物からなる任意の酸性物質を適用し、不快臭/不快味/黄変のないふっくらと美味しい米飯を提供できる。従って本発明洗米方法によれば、無洗米において、満足される食味を備えた米飯供給に有効な手段が確立されていない現状から精米企業はもちろん、学校・レストラン・病院・ホテル・給食センター等米飯食品提供企業に極めて有益である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物由来焼成カルシウムを有することを特徴とする、穀物または野菜、果物の洗浄剤。
【請求項2】
生物由来焼成カルシウムを有する洗浄剤を用いて、穀物または野菜、果物を洗浄し、更に酸を含有する濯ぎ剤を水に加えて濯ぎをすることを特徴とする洗浄方法。
【請求項3】
濯ぎ剤の酸は有機酸、無機酸、酸を含有する果汁、又は、ミョウバンから選ばれた1種または2種以上であることを特徴とする請求項2記載の洗浄方法。

【公開番号】特開2012−193274(P2012−193274A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−58107(P2011−58107)
【出願日】平成23年3月16日(2011.3.16)
【出願人】(309018870)有限会社オブジィー (5)
【Fターム(参考)】