説明

洗浄剤用高分子ビルダーの製造方法

【課題】高濃度の界面活性剤を含有する液体洗浄剤にも安定に配合可能で、溶液の色や匂いにも優れた高分子ビルダーを安定に製造する方法を提供する。
【解決手段】重合開始剤の存在下、液体反応媒体中で、一般式(I)で表される特定の不飽和カルボン酸系モノマー(I)と一般式(II)で表される特定のアリルエーテル系モノマー(II)とを重合反応させて洗浄剤用高分子ビルダーを製造するにあたり、重合開始剤として、過硫酸塩をモノマー(I)及びモノマー(II)の総モル数に対して1〜10モル%使用し、液体反応媒体として、全液体反応媒体中低級アルコールを15重量%以上含む液体反応媒体を使用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄剤用高分子ビルダーの製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境に対する意識が高まっており、環境に対し負荷の少ない洗浄剤の登場が渇望されている。従来の洗浄剤より洗浄成分濃度が高い、いわゆる濃縮タイプの洗浄剤は、洗浄剤自身のサイズを小さくし、容器樹脂量・輸送費・使用後のゴミの削減等、環境に対する負荷を低減させるのに非常に有効であると考えられる。
【0003】
しかしながら、このような界面活性剤濃厚系の液体洗浄剤組成物は、組成物自体の保存安定性に加えて、ビルダー成分が安定配合しにくいという課題がある。例えばポリアクリル酸系ポリマーは、泥の分散性、再汚染防止に優れることが知られているが、一般に界面活性剤水溶液には安定配合しにくくなり、更には保存により、白濁や相分離などの分離や、基材が溶液中で固体として析出してくる場合がある。
【0004】
また、従来よりビルダーの製造に関しては、ビルダーとして適した分子量の範囲に調整するため、重合時に連鎖移動剤を使用する方法が知られているが、連鎖移動剤としてよく用いられる硫黄元素を含む化合物は、重合後のポリマー溶液中に残留して特有の臭いを発するため、それを配合した洗浄剤の香りを損ねるという課題がある。
【0005】
特許文献1〜4には、2種類以上のモノマーを重合させることによる、洗剤ビルダーとして使用できる(メタ)アクリル酸系共重合体の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−208375号公報
【特許文献2】特開2004−238521号公報
【特許文献3】特開2004−75977号公報
【特許文献4】特開2008−88446号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1〜4では、実質的に過硫酸塩及び重亜硫酸塩を重合開始剤として使用しているため、亜硫酸ガスが発生し不純物の原因となる。また、特許文献1〜4の実施例では、液体反応溶媒として水を用いた場合の効果しか示されていない。特許文献1〜4では、多様な単量体を製造原料として使用できることが記載されているが、ポリエチレングリコールアリルエーテルのようなアリルエーテル系の単量体では、液体反応溶媒として水を用いた場合には、ゲル化が甚だしく、目的とする反応物を得ることができないことが判明した。これらから、特許文献1〜4の技術では、高濃度の界面活性剤を含有する液体洗浄剤にも安定に配合可能で、溶液の色や匂いにも優れた高分子ビルダーを安定に製造することは困難である。
【0008】
本発明の課題は、特に、液体洗浄剤、とりわけ高濃度の界面活性剤を含有する液体洗浄剤にも安定に配合可能で、溶液の色や匂いにも優れた高分子ビルダーを安定に製造する方法を提供すること、及びそのようにして得られる高分子ビルダーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、重合開始剤の存在下、液体反応媒体中で、下記一般式(I)で表されるモノマー[以下、モノマー(I)という]と下記一般式(II)で表されるモノマー[以下、モノマー(II)という]とを重合反応させて洗浄剤用高分子ビルダーを製造するにあたり、
重合開始剤として、過硫酸塩をモノマー(I)及びモノマー(II)の総モル数に対して1〜10モル%使用し、
液体反応媒体として、全液体反応媒体中低級アルコールを15重量%以上含む液体反応媒体を使用する、
洗浄剤用高分子ビルダーの製造方法に関する。
【0010】
【化1】

【0011】
[式中、R1は水素原子又は−COOMを表し、R2は水素原子又はメチル基を表し、Mは各々独立して、水素原子、1価金属、2価金属(1/2原子)、アンモニウム基、又は置換アンモニウム基を表す。]
【0012】
【化2】

【0013】
[式中、R3は水素原子又はメチル基を表し、Aは1種類以上の炭素数2〜3のアルキレン基を表し、Xは水素原子、メチル基、フェニル基又はベンジル基を表し、nは平均付加モル数であり、10〜100の数を表す。]
【0014】
また、本発明は、上記本発明の製造方法で得られる、液体洗浄剤用高分子ビルダーに関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、液体洗浄剤、とりわけ高濃度(例えば、50重量%以上)の界面活性剤を含有する液体洗浄剤にも安定に配合可能で、溶液の色や匂いでも優れた高分子ビルダーを安定に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の製造方法により、高濃度(例えば、50重量%以上)の界面活性剤を含有する液体洗浄剤にも安定に配合可能な高分子ビルダーが得られるのは、使用する重合開始剤量を制御することにより、重合開始剤から副生する無機塩の含量が制御されているためであると推察される。また、重合開始剤の使用量を制御すると共に、液体反応媒体として、特定量の低級アルコールを用いることにより、硫黄臭の原因となる連鎖移動剤を使用せずに最適な分子量範囲に制御可能となることから、ポリマー溶液の色や匂いも優れたものになると考えられる。さらに低級アルコールは、重合により得られた高分子ビルダーを安定に溶解させることができるため、重合反応を安定に進行させることができる。
【0017】
モノマー(I)において、R1は水素原子又は−COOMを表し、R2は水素原子又はメチル基を表す。Mは各々独立して、水素原子、1価金属、2価金属(1/2原子)、アンモニウム基、又は置換アンモニウム基を表し、水素原子、1価金属、置換アンモニウムが好ましい。
【0018】
モノマー(I)の具体的な例としては、未中和の酸型(すなわち、式(I)中のMが水素原子)で用いる場合、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸を挙げることができ、好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、さらに好ましくはアクリル酸である。また、1価もしくは2価の金属、アンモニウム基、又は有機アミン基の塩を用いることもできる。中和する塩として、リチウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンを挙げることができ、ナトリウム、アンモニウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンが好ましい。なお、重合に使用するモノマーの中和度の範囲は、0〜0.5が好ましく、0〜0.2がより好ましく、0〜0.1が更に好ましく、0が特に好ましい。
【0019】
モノマー(II)において、R3は水素原子又はメチル基を表す。Aは1種類以上の炭素数2〜3のアルキレン基を表し、炭素数2のアルキレン基が好ましい。Xは水素原子、メチル基、フェニル基又はベンジル基を表すが、水素原子、メチル基が好ましく、水素原子が更に好ましい。nは平均付加モル数であり、10〜100の数を表すが、液体洗浄剤への配合安定性の観点から、15〜80の数が好ましく、19〜35の数がより好ましい。
【0020】
モノマー(II)の具体例としては、ポリエチレングリコールアリルエーテル、メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル、ポリ(エチレングリコール/プロピレングリコール)アリルエーテル、メトキシポリ(エチレングリコール/プロピレングリコール)アリルエーテルを挙げることができ、好ましくはポリエチレングリコールアリルエーテル、メトキシポリエチレングリコールアリルエーテル、更に好ましくはポリエチレングリコールアリルエーテルである。エチレングリコールとプロピレングリコールの配列は、ランダム、ブロック、交互のいずれでもよい。
【0021】
モノマー(I)由来の構成単位(I)とモノマー(II)由来の構成単位(II)の配列は、ランダム、ブロック、交互のいずれでもよいが、ランダム又は交互が好ましい。
【0022】
本発明では、重合開始剤として過硫酸塩を使用する。例えば、過硫酸ナトリウム(ペルオキソ二硫酸ナトリウム)、過硫酸カリウム(ペルオキソ二硫酸カリウム)、過硫酸アンモニウム(ペルオキソ二硫酸アンモニウム)等が挙げられ、これらを単独でも、2種類以上組み合わせでもよい。中でも、過硫酸ナトリウムが好ましい。
【0023】
重合開始剤としての過硫酸塩の添加量は、モノマー(I)及びモノマー(II)の総モル数に対する重合開始剤の総モル数の割合として、1〜10モル%であり、1.25〜5モル%が好ましく、1.5〜4モルがより好ましく、1.5〜3.5モル%が更に好ましく、2〜3モル%が更により好ましい。重合開始剤である過硫酸塩の添加量を、1モル%以上とすることにより、重量開始剤量の不足により生成ポリマーの重量平均分子量が目的の範囲より高くなり、性能が低下することを抑制することができる。また、過硫酸塩の添加量を10モル%以下とすることにより、過硫酸塩から副生する無機塩の量が増加し、性能が低下することを抑制することができる。なお、重合開始剤中、過硫酸塩の割合は50〜100重量%、更に70〜100重量%が好ましく、特に100重量%、すなわち重合開始剤が過硫酸塩のみであることが好ましい。
【0024】
本発明では、液体反応溶媒として、全液体反応媒体中低級アルコールを15重量%以上含む液体反応媒体を使用する。液体反応媒体中の低級アルコール濃度は、重合反応中に変動してもよいが、重合反応の期間(開始から完了まで)を通じて15重量%以上を維持することが好ましい。液体反応媒体は、液状の溶媒、分散媒あるいは分散溶媒である。低級アルコールを含む液体反応媒体を用いることで、重合中に生成したポリマーが不溶化したり、場合によってはゲル化したりすることを防ぎ、高い重合濃度でも円滑に重合を行うことができる。本発明において、「全液体反応媒体」とは、重合反応が完了するまでに反応系に取り込まれる液体反応溶媒の全ての意味であり、その量は、例えば、仕込み時の液体反応媒体、滴下等により反応系に添加される液体反応媒体など、重合反応が完了するまでに反応系に取り込まれる液体反応溶媒の総和である。
【0025】
低級アルコールとしては、炭素数1〜4のものが好ましく、炭素数1〜4の1価アルコール、炭素数1〜4の多価アルコールが挙げられる。1価アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられる。多価アルコールとしては、炭素数1〜4の2価アルコールが好ましく、エチレンジオール、1,2−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール等が挙げられる。低級アルコールは、1,2−プロパンジオールが好ましい。
【0026】
更に、本発明は、液体反応媒体が水を含むことが好ましい。重合中に生成したポリマーが不溶化したり、場合によってはゲル化したりすることを防ぎ、高い重合濃度でも円滑に重合を行うことができる観点から、水と低級アルコールとの重量比が、水:低級アルコール=15:85〜80:20であることが好ましく、25:75〜65:35であることがより好ましく、25:75〜60:40であることが更に好ましく、25:75〜55:45であることが更により好ましい。また、液体反応媒体中、低級アルコールと水の合計の割合は、50〜100重量%、更に70〜100重量%が好ましく、特に100重量%、すなわち液体反応媒体が低級アルコールと水のみであることが好ましい。これらの量比は、全液体反応媒体としての量に基づく。
【0027】
本発明において、液体反応媒体は、全液体反応媒体の量として、モノマー(I)及びモノマー(II)の合計量100重量部に対して、25〜1000重量部の割合で用いられることが好ましい。
【0028】
本発明の製造方法では、連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤は、必要に応じて公知のものを使用できるが、生成するポリマー溶液の色や匂いの点で使用しないのが好ましい。本発明では、液体反応媒体として、特定量用いる低級アルコールが連鎖移動剤の機能も併せて担うことができるため、連鎖移動剤を使用せずに製造することができる。
【0029】
本発明では、重合反応の方法は、液体反応媒体として、特定量の低級アルコールを含む溶媒を用いるものであれば、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、沈殿重合、分散重合などいずれの方法でもよいが、溶液重合が好ましい。好ましい実施形態の一つは、低級アルコールを含む液体反応媒体、モノマー(I)及びモノマー(II)を予め仕込んだ反応容器に、モノマー(I)、モノマー(II)及び重合開始剤としての過硫酸塩を滴下する方法である。この方法による場合、各成分の滴下時間は、通常は60〜420分であり、好ましくは120〜240分である。モノマー(I)及びモノマー(II)は一部又は全量を反応液中に予め仕込まれてもよい。各成分によって、滴下時間が異なっていてもよい。
【0030】
重合温度は、50〜150℃が好ましく、60〜120℃がより好ましく、70〜100℃が更に好ましく、80〜90℃が特に好ましい。重合温度は、使用する重合開始剤の分解温度により適宜調節される。本発明では、反応容器にモノマー(I)、モノマー(II)、低級アルコールを含む液体反応媒体を予め仕込んでから、重合反応が終了するまで反応液を前記範囲の温度とすることが好ましい。
【0031】
重合反応に用いる、モノマー(I)とモノマー(II)との比率は、モノマー(I):モノマー(II)=10:90〜60:40(重量比)であることが好ましく、より好ましくは12:88〜50:50、さらに好ましくは15:85〜30:70である。
【0032】
<高分子ビルダー>
本発明の製造方法により得られる高分子ビルダーは、モノマー(I)由来の構成単位(I)及びモノマー(II)由来の構成単位(II)を含有し、構成単位(I)と構成単位(II)の重量比が、構成単位(I):構成単位(II)で好ましくは10:90〜60:40、より好ましくは12:88〜50:50、さらに好ましくは15:85〜30:70の高分子化合物である。
【0033】
本発明の製造方法により得られた高分子化合物は、必要に応じて、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、等のアルカリ金属水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウムなどのアルカリ炭酸塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン、等で中和し、本発明の高分子ビルダーとしてもよい。
【0034】
本発明の製造方法により得られた高分子ビルダーは、耐加水分解性に優れている。高温保存条件でも加水分解しにくく、性能、配合の安定性に優れている。また、溶液の色、匂いにも優れている。
【0035】
本発明の製造方法により得られた高分子ビルダーは、洗浄剤の剤形態に特に限定されることなく、例えば粉末洗浄剤、液体洗浄剤などに配合することができる。特に、本発明の衣料洗浄剤用高分子ビルダーは、界面活性剤、中でも非イオン界面活性剤との相溶性に優れ、液体洗浄剤用として優れたものである。界面活性剤との相溶性に優れることにより、液体洗浄剤に配合したとき、その組成物の透明性が良好であり、高濃縮の液体洗浄剤組成物とすることができる。
【0036】
本発明に係る高分子化合物の重量平均分子量は、高硬度での泥汚れに対する洗浄力、及び衣料用液体洗浄剤への溶解性を向上させる観点から、好ましくは5,000〜50,000、より好ましくは10,000〜40,000、更に好ましくは15,000〜30,000の範囲内である。この重量平均分子量は、実施例に記載する条件のGPC(ゲルパーミエションクロマトグラフィー法)により測定されたものである。
【0037】
本発明の製造方法により得られた高分子ビルダーは、衣料洗浄剤、好ましくは衣料用液体洗浄剤に配合される。この高分子ビルダーを含有する衣料用洗浄剤の一例として、本発明の高分子ビルダーを0.1〜10重量%、非イオン界面活性剤を20〜70重量%、陰イオン界面活性剤を5〜20重量%、溶剤を1〜30重量%、水を5〜50重量%含有する衣料用液体洗浄剤(好ましくは非イオン界面活性剤と陰イオン界面活性剤の合計が50重量%以上)が挙げられる。
【実施例】
【0038】
以下の合成例及び比較合成例で得られた高分子化合物〔合成ポリマー(1)〜(6)及び比較合成ポリマー(1)、(3)、(4)〕の重量平均分子量は下記条件のGPC(ゲルパーミエションクロマトグラフィー法)により測定した。
【0039】
<重量平均分子量測定(GPC分析)>
カラム:TOSOH社製 TSKgel α−M 2本
検出器:RIカラム温度:40℃
溶離液:60mmol/L H3PO4、50mmol/L LiBr/DMF
標準物質:ポリエチレングリコール
【0040】
また、以下の合成例及び比較合成例で得られた高分子化合物中の残存モノマー量は下記条件の1H NMRにより測定した。
<残存モノマー量測定(1H NMR分析)>
測定装置:400MHz 1H NMR(Varian 製)
測定条件:D2O(0.05wt%3−トリメチルシリル−2,2,3,3−テトラデューテロプロピオン酸ナトリウム含有)でポリマー濃度10%に希釈し測定。
【0041】
[実施例1:合成ポリマー(1)の合成]
アクリル酸/ポリエチレングリコール(エチレンオキシド平均付加モル数25)アリルエーテル=25/75(重量比)共重合体〔合成ポリマー(1)〕を以下のように、重合開始剤添加量2.6モル%(対単量体の総モル数)、液体反応媒体が1,2−プロパンジオール:水=50:50(重量比)である条件で合成した。
【0042】
温度計、撹拌機、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応器に、1,2−プロパンジオール(和光純薬工業(株)製)295g、イオン交換水192g、80%アクリル酸水溶液(東亞合成化学(株)製)6.3g(アクリル酸全重量基準の5%)、ポリエチレングリコール(エチレンオキシド平均付加モル数25)アリルエーテル150.0g(ポリエチレングリコールアリルエーテル全重量基準の50%)を入れ、窒素雰囲気下で混合し、85℃まで昇温した。そこへ、80%アクリル酸水溶液62.5g、イオン交換水37.5g及びポリエチレングリコール(エチレンオキシド平均付加モル数25)アリルエーテル150.0gを混合した液(アクリル酸:ポリエチレングリコールアリルエーテル=25:75(重量比))と、過硫酸ナトリウム(和光純薬工業(株)製)5.29g及びイオン交換水21.2gを混合した液とを、別々に75分かけて滴下した。滴下終了後、80%アクリル酸水溶液56.3gと、過硫酸ソーダ4.8g及びイオン交換水19.1gを混合した液とを、別々に135分かけて滴下した。滴下終了後、3時間85℃で撹拌を続けた。室温に戻し、合成ポリマー(1)を含有する溶液1000g(ポリマー濃度:40重量%)を得た。得られた合成ポリマー(1)のGPC測定の結果、重量平均分子量は2.1万(ポリエチレングリコール換算)であった。また、1H−NMR測定の結果、得られた溶液中に残存するアクリル酸は、溶液中の濃度として検出限界以下、同様にポリエチレングリコールアリルエーテルは1.6重量%であった。
【0043】
合成ポリマー(1)の溶液の色は無色透明であり、匂いは軽い溶剤臭はあるが、チオ化合物由来の特異臭は無かった。
【0044】
[実施例2:合成ポリマー(2)の合成]
アクリル酸/ポリエチレングリコール(エチレンオキシド平均付加モル数21)アリルエーテル=28/72(重量比)共重合体〔合成ポリマー(2)〕を以下のように合成した。
【0045】
温度計、撹拌機、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応器に、1,2−プロパンジオール(和光純薬工業(株)製)206g、イオン交換水126g、80%アクリル酸水溶液(東亞合成化学(株)製)5.2g(アクリル酸全重量基準の5%)、ポリエチレングリコール(エチレンオキシド平均付加モル数21)アリルエーテル100.8g(ポリエチレングリコールアリルエーテル全重量基準の50%)を入れ、窒素雰囲気下で混合し、85℃まで昇温した。そこへ、80%アクリル酸水溶液49g、イオン交換水25g及びポリエチレングリコール(エチレンオキシド平均付加モル数21)アリルエーテル100.8gを混合した液(アクリル酸:ポリエチレングリコールアリルエーテル=28:72(重量比))と、過硫酸ソーダ(和光純薬工業(株)製)3.7g及びイオン交換水18.6gを混合した液とを、別々に84分かけて滴下した。滴下終了後、80%アクリル酸水溶液43.9gと、過硫酸ソーダ3.3g及びイオン交換水16.7gを混合した液とを、別々に153分かけて滴下した。滴下終了後、3時間85℃で撹拌を続けた。室温に戻し、合成ポリマー(2)を含有する溶液700g(ポリマー濃度:40重量%)を得た。得られた合成ポリマー(2)のGPC測定の結果、重量平均分子量は2.1万(ポリエチレングリコール換算)であった。また、1H−NMR測定の結果、得られた溶液中に残存するアクリル酸は、溶液中の濃度として検出限界以下、同様にポリエチレングリコールアリルエーテルは1.2重量%であった。
【0046】
合成ポリマー(2)の溶液の色は無色透明であり、匂いは軽い溶剤臭はあるが、チオ化合物由来の特異臭は無かった。
【0047】
[実施例3:合成ポリマー(3)の合成]
液体反応媒体が1,2−プロパンジオール:水=70:30(重量比)である以外は、実施例1と同様にして、アクリル酸/ポリエチレングリコール(エチレンオキシド平均付加モル数25)アリルエーテル=25/75(重量比)共重合体〔合成ポリマー(3)〕を合成した。
【0048】
得られた合成ポリマー(3)のGPC測定の結果、重量平均分子量は1.5万(ポリエチレングリコール換算)であった。また、1H−NMR測定の結果、得られた溶液中に残存するアクリル酸は、溶液中の濃度として検出限界以下、同様にポリエチレングリコールアリルエーテルは1.2重量%であった。
【0049】
合成ポリマー(3)の溶液の色は無色透明であり、匂いは軽い溶剤臭はあるが、チオ化合物由来の特異臭は無かった。
【0050】
[実施例4:合成ポリマー(4)の合成]
液体反応媒体が1,2−プロパンジオール:水=80:20(重量比)である以外は、実施例1と同様にして、アクリル酸/ポリエチレングリコール(エチレンオキシド平均付加モル数25)アリルエーテル=25/75(重量比)共重合体〔合成ポリマー(4)〕を合成した。
【0051】
得られた合成ポリマー(4)のGPC測定の結果、重量平均分子量は1.3万(ポリエチレングリコール換算)であった。また、1H−NMR測定の結果、得られた溶液中に残存するアクリル酸は、溶液中の濃度として検出限界以下、同様にポリエチレングリコールアリルエーテルは0.9重量%であった。
【0052】
合成ポリマー(4)の溶液の色は無色透明であり、匂いは軽い溶剤臭はあるが、チオ化合物由来の特異臭は無かった。
【0053】
[実施例5:合成ポリマー(5)の合成]
液体反応媒体が1,2−プロパンジオール:水=30:70(重量比)である以外は、実施例1と同様にして、アクリル酸/ポリエチレングリコール(エチレンオキシド平均付加モル数25)アリルエーテル=25/75(重量比)共重合体〔比較合成ポリマー(5)〕を合成した。
【0054】
得られた合成ポリマー(5)のGPC測定の結果、重量平均分子量は4.1万(ポリエチレングリコール換算)であった。また、1H−NMR測定の結果、得られた溶液中に残存するアクリル酸は、溶液中の濃度として検出限界以下、同様にポリエチレングリコールアリルエーテルは1.2重量%であった。
【0055】
合成ポリマー(5)の溶液の色は無色透明であり、匂いは軽い溶剤臭はあるが、チオ化合物由来の特異臭は無かった。
【0056】
[実施例6:合成ポリマー(6)の合成]
添加する重合開始剤量を4.5モル%(対単量体の総モル数)とした以外は、実施例1と同様にして、アクリル酸/ポリエチレングリコール(エチレンオキシド平均付加モル数25)アリルエーテル=25/75(重量比)共重合体〔合成ポリマー(6)〕を合成した。
【0057】
得られた合成ポリマー(6)のGPC測定の結果、重量平均分子量は1.8万(ポリエチレングリコール換算)であった。また、1H−NMR測定の結果、得られた溶液中に残存するアクリル酸は、溶液中の濃度として検出限界以下、同様にポリエチレングリコールアリルエーテルも検出限界以下であった。
【0058】
合成ポリマー(6)の溶液の色は無色透明であり、匂いは軽い溶剤臭はあるが、チオ化合物由来の特異臭は無かった。
【0059】
[比較例1:比較合成ポリマー(1)の合成]
添加する重合開始剤量を0.3モル%(対単量体の総モル数)とした以外は、実施例1と同様にして、アクリル酸/ポリエチレングリコール(エチレンオキシド平均付加モル数25)アリルエーテル=25/75(重量比)共重合体〔比較合成ポリマー(1)〕を合成した。
【0060】
得られた比較合成ポリマー(1)のGPC測定の結果、重量平均分子量は5.1万(ポリエチレングリコール換算)であった。また、1H−NMR測定の結果、得られた溶液中に残存するアクリル酸は、溶液中の濃度として0.2重量%、同様にポリエチレングリコールアリルエーテルは8.8重量%であった。
【0061】
比較合成ポリマー(1)の溶液の色は無色透明であり、匂いは軽い溶剤臭はあるが、チオ化合物由来の特異臭は無かった。
【0062】
[比較例2:比較合成ポリマー(2)の合成]
アクリル酸/ポリエチレングリコール(エチレンオキシド平均付加モル数25)アリルエーテル=25/75(重量比)共重合体を、反応液体媒体として水のみを用いて合成しようとしたが、生成したポリマーがゲル化し反応を継続することができず、目的とする共重合体は得られなかった。
【0063】
[比較例3:比較合成ポリマー(3)の合成]
液体反応媒体が1,2−プロパンジオール:水=10:90(重量比)である以外は、実施例1と同様にして、アクリル酸/ポリエチレングリコール(エチレンオキシド平均付加モル数25)アリルエーテル=25/75(重量比)共重合体〔比較合成ポリマー(3)〕を合成した。
【0064】
得られた比較合成ポリマー(3)のGPC測定の結果、重量平均分子量は35.4万(ポリエチレングリコール換算)であった。また、1H−NMR測定の結果、得られた溶液中に残存するアクリル酸は、溶液中の濃度として検出限界以下、同様にポリエチレングリコールアリルエーテルは1.8重量%であった。
【0065】
比較合成ポリマー(3)の溶液の色は無色透明であり、匂いは軽い溶剤臭はあるが、チオ化合物由来の特異臭は無かった。
【0066】
[比較例4:比較合成ポリマー(4)の合成]
アクリル酸/ポリエチレングリコール(エチレンオキシド平均付加モル数25)アリルエーテル=25/75(重量比)共重合体を以下の条件で合成した。
【0067】
温度計、撹拌機、窒素導入管、還流冷却器を備えたガラス製反応器に、イオン交換水129.9gを入れ、窒素雰囲気下で混合し、90℃まで昇温した。そこへ、80%アクリル酸水溶液125g、48%苛性ソーダ水溶液5.8g、イオン交換水200g、ポリエチレングリコール(エチレンオキシド平均付加モル数25)アリルエーテル300g、15%過硫酸ソーダ(和光純薬工業(株)製)水溶液58.0g(対単量体総モル数で2.2モル%)及び35%重亜硫酸ソーダ(和光純薬工業(株)製)水溶液49.7g(対単量体総モル数で10.2モル%)を滴下した〔アクリル酸:ポリエチレングリコールアリルエーテル=25:75(重量比)〕。それぞれの滴下時間は、80%アクリル酸水溶液、48%苛性ソーダ水溶液、35%重亜硫酸ソーダ水溶液を180分間、ポリエチレングリコールアリルエーテル、イオン交換水を120分間、15%過硫酸ソーダ水溶液を210分間とした。また、それぞれの滴下時間の間、各成分の滴下速度は一定とし、連続的に滴下した。滴下終了後、30分間90℃で撹拌を続けた。室温に戻し、比較合成ポリマー(4)を含有する溶液868.3g(ポリマー濃度:46.1重量%)を得た。得られた比較合成ポリマー(4)のGPC測定の結果、重量平均分子量は1.3万(ポリエチレングリコール換算)であった。また、1H−NMR測定の結果、得られた溶液中に残存するアクリル酸は、溶液中の濃度として0.3重量%、同様にポリエチレングリコールアリルエーテルは11.8重量%であった。比較合成ポリマー(4)の合成時、重合開始剤として使用した重亜硫酸ソーダに由来する亜硫酸ガスが反応装置の排気口から確認された。また、比較合成ポリマー(4)の溶液の色は白濁しており、軽い刺激臭があった。
【0068】
以下の表1に、実施例1〜6及び比較例1〜4の合成条件及び合成ポリマーの分子量等を示す。
【0069】
【表1】

【0070】
*1 仕込み時の重量比
*2 単量体の総モル数に対するモル%
*3 1,2−プロパンジオール
【0071】
<参考例1〜6、比較参考例1〜3>
上記で得られた合成ポリマー(1)〜(6)及び比較合成ポリマー(1)、(3)、(4)を用い、以下のように液体洗浄剤組成物への溶解性の評価を行った。
【0072】
[I]溶解性の評価
(I−1)
合成ポリマー(1)〜(6)及び比較合成ポリマー(1)、(3)、(4)の溶液に、2−アミノエタノール(和光純薬(株)製)を加えて完全中和し、ポリマー濃度20重量%となるようイオン交換水で調整する。
【0073】
(I−2)
上記(I−1)で調製した中和型ポリマーの20重量%溶液と表2に記載の成分とを用いて液体洗浄剤組成物を調製した。表2の成分を混合、脱泡し、25℃下で30分間静置して液体洗浄剤組成物を得た後、UV測定機器(島津製作所製 UV 2550、1cmセル、波長660nm)にて、透過率を測定した。評価結果を表3に示す。透過率が高いほど、透明性、均一性(配合成分の溶解性)に優れた組成物であると判定できる。なお、表2中の仕込量の数値は、固形分あるいは有効分換算の重量(g)である。
【0074】
【表2】

【0075】
*4:ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(エマルゲンLS−110、花王(株)製)
*5:直鎖アルキル(炭素数12〜14)ベンゼンスルホン酸
*6:和光純薬(株)製
*7:和光純薬(株)製
*8:有効分の仕込量が表中の値となるように、合成ポリマー(1)〜(6)、比較合成ポリマー(1)、(3)、(4)の溶液を使用した。
【0076】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合開始剤の存在下、液体反応媒体中で、下記一般式(I)で表されるモノマー[以下、モノマー(I)という]と下記一般式(II)で表されるモノマー[以下、モノマー(II)という]とを重合反応させて洗浄剤用高分子ビルダーを製造するにあたり、
重合開始剤として、過硫酸塩をモノマー(I)及びモノマー(II)の総モル数に対して1〜10モル%使用し、
液体反応媒体として、全液体反応媒体中低級アルコールを15重量%以上含む液体反応媒体を使用する、
洗浄剤用高分子ビルダーの製造方法。
【化1】


[式中、R1は水素原子又は−COOMを表し、R2は水素原子又はメチル基を表し、Mは各々独立して、水素原子、1価金属、2価金属(1/2原子)、アンモニウム基、又は置換アンモニウム基を表す。]
【化2】


[式中、R3は水素原子又はメチル基を表し、Aは1種類以上の炭素数2〜3のアルキレン基を表し、Xは水素原子、メチル基、フェニル基又はベンジル基を表し、nは平均付加モル数であり、10〜100の数を表す。]
【請求項2】
更に、液体反応媒体が水を含み、水と低級アルコールとの比率が、水:低級アルコール=15:85〜80:20(重量比)である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
低級アルコールが、炭素数1〜4の2価アルコールである、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
重合反応に用いる、モノマー(I)とモノマー(II)との比率が、モノマー(I):モノマー(II)=10:90〜60:40(重量比)である、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
洗浄剤用高分子ビルダーが、モノマー(I)由来の構造単位(I)及びモノマー(II)由来の構造単位(II)を、構造単位(I):構造単位(II)=10:90〜60:40(重量比)で含有する高分子化合物である、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法で得られる、液体洗浄剤用高分子ビルダー。

【公開番号】特開2011−173938(P2011−173938A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36852(P2010−36852)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】