説明

洗浄剤組成物

【課題】極めて優れた洗浄力を有し、バイコンティニュアスミクロエマルション相を有する洗浄剤組成物を提供すること。
【解決手段】下記成分(A)(B)(C)(D)(E)を含有する洗浄剤組成物であって、該洗浄剤組成物が25℃においてバイコンティニュアスミクロエマルション相であることを特徴とする洗浄剤組成物。
(A)両性界面活性剤
(B)アニオン界面活性剤
(C)炭素数8〜18のモノ脂肪酸アミド誘導体及び/又はモノ脂肪酸グリコールエステル誘導体
(D)分子内に2個以上の水酸基を有する水溶性アルコール
(E)水

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗浄剤組成物に属する。さらに詳しくは、皮膚や毛髪の洗浄に適するものであって、優れた洗浄力を有し、泡立ちが良く、皮膚に対する刺激が少なく、しかもさっぱりと洗い流せる洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、洗浄剤は、その洗浄メカニズムの違いから、界面活性剤型洗浄剤と溶剤型洗浄剤に大別される。
【0003】
そして、皮膚及び毛髪用の各種洗浄剤には、乳化、分散、可溶化作用を利用した界面活性剤型洗浄剤が用いられてきた。
【0004】
界面活性剤型洗浄剤とは、界面活性剤の吸着などにより油汚れを基剤から脱離する、いわゆるローリングアップと呼ばれる汚れの除去により洗浄効果が得られる洗浄剤である。界面活性剤型洗浄剤は、大量に界面活性剤を使用した場合には身体への影響(安全性)が懸念されるため、少量の界面活性剤によっても高い洗浄力を有する洗浄剤が求められている。
一方、溶剤型洗浄剤とは、油などの溶剤を主成分とし、油汚れなどを溶解して基剤から脱離することにより洗浄効果が得られる洗浄剤である。油系の溶剤が主成分であることから、環境破壊や毒性、引火性、匂い、コストなどといった課題もある。
【0005】
これに対して、特許文献1及び特許文献2には、界面活性剤型でありながら優れた洗浄性能を有する洗浄剤組成物として、モノ脂肪酸グリセリン系のノニオン活性剤を使用したバイコンティニュアスミクロエマルション構造の洗浄剤組成物が記載されている。
しかしながら、この洗浄剤組成物は本発明の洗浄剤組成物と比較すると、洗浄力が必ずしも十分でない。
【0006】
また、特許文献3及び特許文献4には、モノ脂肪酸グリセリン系のノニオン活性剤を使用したラメラ構造の洗浄剤組成物が記載されている。
しかしながら、この洗浄剤組成物は本発明の洗浄剤組成物と比較すると、洗浄力が必ずしも十分でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007-077302号公報
【特許文献2】特開2007-320884号公報
【特許文献3】特開2007-077303号公報
【特許文献4】特開2007-161736号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、上述の観点に鑑み、モノ脂肪酸グリセリン系のノニオン活性剤を使用するのではなく、モノ脂肪酸アミド誘導体とモノ脂肪酸グリコールエステルに着目し、これらに、両性界面活性剤とアニオン界面活性剤と分子内に2個以上の水酸基を有する水溶性アルコールとを配合してバイコンティニュアスミクロエマルション相に調製すると、極めて優れた洗浄力を有する洗浄剤組成物が容易に得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の目的は、広い組成および温度範囲でバイコンティニュアスミクロエマルション相を示し、極めて優れた洗浄力を有する洗浄剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は、下記成分(A)(B)(C)(D)(E)を含有する洗浄剤組成物であって、該洗浄剤組成物が25℃においてバイコンティニュアスミクロエマルション相であることを特徴とする洗浄剤組成物を提供するものである。
(A)両性界面活性剤
(B)アニオン界面活性剤
(C)炭素数8〜18のモノ脂肪酸アミド誘導体及び/又はモノ脂肪酸グリコールエステル誘導体
(D)分子内に2個以上の水酸基を有する水溶性アルコール
(E)水
【0011】
また、本発明は、成分(A)と成分(B)との質量比が2:8〜9:1の範囲であることを特徴とする上記の洗浄剤組成物を提供するものである。
【0012】
さらに、本発明は、成分(D)の分子内に2個以上の水酸基を有する水溶性アルコールが、低級アルコール、多価アルコール及びそのエチレングリコール付加体、プロピレンオキシド付加体からなる群から選択される1種又は2種以上であることを特徴とする上記の洗浄剤組成物を提供するものである。
【0013】
また、本発明は、成分(D)の分子内に2個以上の水酸基を有する水溶性アルコールが、エチレングリコール、プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの2価アルコールからなる群から選択される1種または2種以上を含有することを特徴とする上記の洗浄剤組成物を提供するものである。
【0014】
さらに、本発明は、洗浄剤組成物が、皮膚または毛髪洗浄料であることを特徴とする上記の洗浄剤組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の洗浄剤組成物は下記の優れた効果を有している。
(1)広い温度領域で安定に均一透明一相(バイコンティニュアスミクロエマルション相)を示す。
(2)広い組成範囲で安定に均一透明一相(バイコンティニュアスミクロエマルション相)を示す。
(3)洗浄力に極めて優れている。泡立ちにも優れているので、特にシャンプー等の毛髪洗浄料として優れている。
(4)バイコンティニュアスミクロエマルション相を構成するので、皮膚に対する刺激が少ない。
(5)バイコンティニュアスミクロエマルション相を構成するので、洗い流し過程及び洗浄後にさっぱり感を感じることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は両性界面活性剤とアニオン性界面活性剤の混合比を変えたときのデカンに対する界面張力測定例である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<(A)両性界面活性剤>
本発明に用いる成分(A)の両性界面活性剤は、カチオン性官能基及びアニオン性官能基を少なくとも1つずつ有し、溶液が酸性のときにはカチオン性、アルカリ性のときにはアニオン性となり、等電点付近では非イオン界面活性剤に近い性質を有している。
両性界面活性剤は、アニオン基の種類により、カルボン酸型、硫酸エステル型、スルホン酸型およびリン酸エステル型に分類される。本発明に好ましくはカルボン酸型、硫酸エステル型およびスルホン酸型である。カルボン酸型はさらにアミノ酸型とベタイン型に分類される。特に好ましくはベタイン型である。具体的には、イミダゾリニウムベタイン、アルキルベタイン、アミドベタインが挙げられる。
さらに具体的化合物としては、2−ウンデシル−N,N,N−(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)−2−イミダゾリンナトリウム、2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩、2−ヘプタデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、2−アルキル(C8〜18)−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。
成分(A)の両性界面活性剤は一種又は二種以上が配合される。
【0018】
<(B)アニオン界面活性剤>
本発明に用いる成分(B)のアニオン界面活性剤は、脂肪酸石鹸、長鎖アシルスルホン酸塩、N−アシルグルタミン酸塩、アルキルエーテル酢酸等のカルボン酸塩型、α−オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸等のスルホン酸型、高級アルコール硫酸エステル塩等の硫酸エステル塩型、リン酸エステル塩型等に分類される。好ましくは、カルボン酸塩型、スルホン酸型および硫酸エステル塩型であり、特に好ましくは硫酸エステル塩型である。具体的には、アルキルエトキシサルフェート塩が挙げられる。
さらに具体的化合物としては、N−ラウロイル−N−メチルタウリン塩、N−ミリストイル−N−メチルタウリン塩、N−パルミトイル−N−メチルタウリン塩、N−ステアロイル−N−メチルタウリン塩、N−ココイル−N−メチルタウリン塩、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸トリエチルアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸モノエタノールアミン、ラウリル硫酸ジエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ココイル硫酸アンモニウム、ココイル硫酸ナトリウム、ココイル硫酸カリウム、ココイル硫酸モノエタノールアミン、ラウレス硫酸アンモニウム(=POEラウリル硫酸アンモニウム)、ラウレス硫酸トリエチルアミン(=POEラウリル硫酸トリエチルアミン)、ラウレス硫酸トリエタノールアミン(=POEラウリル硫酸トリエタノールアミン)、ラウレス硫酸モノエタノールアミン(=POEラウリル硫酸モノエタノールアミン)、ラウレス硫酸ジエタノールアミン(=POEラウリル硫酸ジエタノールアミン)、ラウレス硫酸ナトリウム(=POEラウリル硫酸ナトリウム)、ラウレス硫酸カリウム(=POEラウリル硫酸カリウム)、トリデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウロイル硫酸アンモニウム、ラウロイル硫酸ナトリウム、ラウロイル硫酸カリウム、ラウロイル硫酸トリエタノールアミン、ラウロイル硫酸モノエタノールアミン、ポリオキシエチレン(2モル)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸メチルタウリンナトリウム等が挙げられる。
成分(B)のアニオン界面活性剤は一種又は二種以上が配合される。
【0019】
成分(A)の両性界面活性剤及び成分(B)のアニオン界面活性剤は、水溶液中で混合された場合に、油に対する界面張力が低下することが知られている。界面張力は特に油分の洗浄に対し重要な要因であり、油分との界面張力が低い溶液中で油汚れが自発的に球状になり基剤から脱離する、いわゆるローリングアップと呼ばれる汚れの除去過程は公知のものである。
成分(A)または成分(B)の片方のみ用いた場合には、バイコンティニュアスミクロエマルション相が得られないか、あるいは、得られた場合であってもその生成領域が狭く、実質上の使用にあたって安定性を十分に満たすことができない場合がある。
【0020】
成分(A)の両性界面活性剤と成分(B)のアニオン界面活性剤の望ましい混合比は、2:8〜9:1である。この範囲をはずれた場合には、界面張力の低下が充分でなく、洗浄効果が十分でない場合がある。特に好ましい混合比は、4:6〜8:2の混合比である。
【0021】
本発明においては、成分(A)の両性界面活性剤と成分(B)のアニオン界面活性剤は混合した状態で配合するが、水溶液中で混合することで両者の静電的相互作用により複合体が生じ、目や皮膚に対する刺激が大きく減少する。
【0022】
<(C)モノ脂肪酸アミド誘導体及び/又はモノ脂肪酸グリコールエステル>
本発明に用いる炭素数8〜18のモノ脂肪酸アミド誘導体としては、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアマイド(炭素数8〜18);ヤシ油脂肪酸ジエタノールアマイド(炭素数8〜18);ヤシ油脂肪酸N−メチルモノエタノールアマイド(炭素数8〜18);ラウリン酸イソプロパノールアミド(炭素数12)、オレイン酸ジエタノールアマイド(炭素数18)等のアルカノールアマイドが好ましい。成分(C)のモノ脂肪酸アミド誘導体は一種又は二種以上が配合される。なお、炭素数8〜18とはモノ脂肪酸部分の炭素数が8〜18を意味している。
また、本発明に用いる炭素数8〜18のモノ脂肪酸グリコールエステルとしては、ラウリン酸ジエチレングリコール(炭素数12)、ラウリン酸プロピレングリコール(炭素数12)、モノオレイン酸エチレングリコール(炭素数18)、ジステアリン酸エチレングリコール(炭素数18)等のアルキレングリコール脂肪酸エステル類が好ましい。成分(C)のモノ脂肪酸グリコールエステルは一種又は二種以上が配合される。なお、炭素数8〜18とはモノ脂肪酸部分の炭素数が8〜18を意味している。
【0023】
成分(C)のモノ脂肪酸アミド誘導体又はモノ脂肪酸グリコールエステルは、いずれか一方の成分が配合されていれば良く、それぞれ単独で配合することも可能である。また、両者を併合して配合することも好ましい。
【0024】
<(D)分子内に2個以上の水酸基を有する水溶性アルコール>
本発明に用いる成分(D)の分子内に2個以上の水酸基を有する水溶性アルコールは、低級アルコール、多価アルコール及びそのエチレングリコール付加体、プロピレンオキシド付加体からなる群から選択される1種又は2種以上である。具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ソルビタン、ソルビトールグルコース、マルチトール、サッカロース、トレハロース、フルクトースなど、およびそれらのエチレンオキシド付加体、プロピレンオキシド付加体等の誘導体、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールからなる群から選択される1種または2種以上であることが好ましい。
【0025】
さらに、上記の成分(D)としては、特に、エチレングリコール、プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールのような水溶性2価アルコールからなる群から選択される1種または2種以上を含有することが好ましい。
【0026】
本発明の洗浄剤組成物は、上記の成分(A)〜(D)と、成分(E)の水を含有し、25℃においてバイコンティニュアスミクロエマルション相となっているものである。
バイコンティニュアスミクロエマルション相は、界面活性剤が無限に会合した溶液のことであり、水および油の両方が連続であり、光学的に等方性の透明低粘度の溶液を意味する。ミドルフェーズマイクロエマルション相、バイコンティニュアス相、スポンジ相、L3相、D相などとも称され、本発明において、優れた洗浄効果を与える。
本発明の組成においては、成分(C)と成分(D)の濃度を変化させることにより、さまざまな組成範囲(領域)でバイコンティニュアスミクロエマルション相を得ることができる。
【0027】
本発明における各成分の濃度範囲(配合量)は、バイコンティニュアスミクロエマルション相が形成される限り任意であるが、成分(A)及び成分(B)の配合量は、それぞれ、洗浄剤組成物全量に対して、1〜30質量%、好ましくは5〜30質量%、さらに好ましくは5〜10質量%である。
成分(C)の配合量は、洗浄剤組成物全量に対して、1〜40質量%、好ましくは5〜30質量%、さらに好ましくは5〜20質量%である。
成分(D)の配合量は、洗浄剤組成物全量に対して、1〜60質量%、好ましくは5〜40質量%、さらに好ましくは、5〜20質量%である。
成分(E)の配合量は残余となるが、洗浄剤組成物全量に対して10〜70質量%程度が配合される。
【0028】
本発明の洗浄剤組成物は、上記必須成分(A)(B)(C)(D)と成分(E)の水とを混合し、必要に応じて洗浄料若しくは化粧料に配合されるその他の成分を本発明の効果を損なわない範囲で適宜添加し、目的とする剤型に応じて常法により製造される。
特に塩化ナトリウム、塩化カリウムを配合することが好ましい。これらは、入手しやすく、安価であり、親水性の界面活性剤であるアニオン/両性界面活性剤複合系の親水性−親油性バランスを、塩析の効果により釣り合わせる、即ちやや親油性方向に変化させる効果があり、その結果として、成分(C)のモノ脂肪酸アミド誘導体及び/又はモノ脂肪酸グリコールエステルの配合量を減じることができる望ましい添加剤である。
【0029】
本発明のバイコンティニュアスミクロエマルション相である洗浄剤組成物は、具体的には下記のステップにより製造出来る。
(1):成分(A)と成分(B)の混合比を変えて、混合比が異なる両性/アニオン界面活性剤混合物を調製し、それぞれに成分(E)を添加する。この界面活性剤水溶液をサンプルとする。
(2):各サンプルの各界面活性剤水溶液の界面張力を測定して、界面張力が低い値を示す成分(A)と成分(B)の混合範囲を決定する(見出す)。この混合範囲とは、最も界面張力が低下した混合比を中心とし、その両側±1程度の範囲である。
界面張力測定例を図1に示す。図1は、成分(A)両性界面活性剤に2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、成分(B)アニオン界面活性剤にポリオキシエチレン(2モル)ラウリルエーテル硫酸ナトリウムを用い、デカンに対する界面張力を測定したものである。図1より、成分(A)と成分(B)の混合比が6:4〜8:2が界面張力の低い混合範囲であることが分かるので、この混合比が決定される。
(3):(2)で求めた成分(A)と成分(B)の混合比の両性/アニオン界面活性剤混合水溶液に対し、比較的強い攪拌力を加えながら、この界面活性剤混合水溶液に、成分(C)及び他の油溶性添加剤を徐々に添加し、攪拌・混合する。このとき、外観は等方性であっても異方性であってもよい。
(4):(3)に対し、比較的強い攪拌力を加えながら、成分(D)の水溶性アルコール及び他の水溶性添加剤を徐々に添加し、攪拌・混合し、外観が等方性一相を示す成分(D)の添加濃度を決定する。すなわち、外観が等方性を示した時点で成分(D)の添加を止める。
(5):上記の工程で製造した組成物がバイコンティニュアスミクロエマルション相であることを確認する。バイコンティニュアスミクロエマルション相であるかどうかは、例えば以下のステップにより確認できる。
(6):(4)までの工程で得られた最終洗浄剤料組成物を、ねじ口試験管(サンプル管)に入れ、激しく振とうし、25℃の恒温水槽中に静置、または遠心分離する。目視にて、組成物溶液が1相になっていることを確認する。「1相である状態」とは溶液全体が透明で均一であることを指す(ファーストデターミンステップ)。
(7):その後、ねじ口試験管を軽く振ることでこのサンプルの粘度を目視で確認する(セカンドデターミンステップ)。
(8):さらに、洗浄剤組成物溶液を、偏光板2枚を90度の位相差で組み合わせた間に保持し、光の透過性を確認する(サードデターミンステップ)。
(9):ファーストデターミンステップで均一透明1相であり、セカンドデターミンステップでサンプルが低粘度であり、サードデターミンステップで光の透過がない場合、バイコンティニュアスミクロエマルション相か、若しくは、ミセル相か逆ミセル相のいずれかの可能性があると考えられる。バイコンティニュアスミクロエマルション相か、若しくはミセル相か逆ミセル相かを同定するためには、組成物溶液の電気伝導度を測定する。バイコンティニュアスミクロエマルション相溶液の電気伝導度は同じ系で生成するミセル水溶液の値の約2/3であることが知られている。また、逆ミセル油溶液は電気伝導性を持たない。同じ系で生成するミセル水溶液を調製する場合、成分(C)であるモノグリセリン誘導体及び/またはジグリセリン誘導体を抜去すれば例外なく生成する。
本発明で用いる(A)成分および(B)成分は、イオン性であり親水性が高いため、成分(A)、成分(B)および成分(E)の水で構成される溶液はミセル水溶液であることは自明である。
すなわち、以上のステップにより確認できれば、本発明における洗浄剤組成物がバイコンティニュアスミクロエマルション相であることが確認できる。
【0030】
なお、本発明の要件であるバイコンティニュアスミクロエマルション相は熱力学的な平衡状態であり、添加順序に関わらず生成する。したがって、どのような添加順序でも製造することが可能である。しかしながら、最も速やかに平衡状態に到達させるためには、水、界面活性剤、塩など水溶性の物質を混合し、界面張力が十分に低下した水溶液を調製した後、成分(C)のモノ脂肪酸アミド誘導体及び/又はモノ脂肪酸グリコールエステルを撹拌しながら徐添することが望ましい。
【0031】
成分(A)〜(E)を含有する洗浄剤組成物が、バイコンティニュアスミクロエマルション相であるかどうかは、(1)外観による判定、(2)相平衡図の作成、(3)電気伝導度測定、(4)NMRによる自己拡散係数の測定、(5)フリーズフラクチャー法を用いて調製したレプリカの電子顕微鏡観察等により決定できる。いずれの方法により決定してもよい。
(1)外観による判定では、バイコンティニュアスミクロエマルション相は透明な低粘度1相領域であり光学的には等方性である。光学的異方性のある液晶相との区別は偏光板2枚を90度の位相差で組み合わせた間にサンプルを保持し、光の透過がないことを確認することで可能である。バイコンティニュアスミクロエマルション相と他の等方性1相領域であるミセル水溶液、逆ミセル油溶液との区別には、さらに(2)〜(5)の方法が有効である。
(2)相平衡図の作成では、水/油性成分/界面活性剤(油性成分にはコサーファクタントの界面活性助剤を含む)で構成される3成分系の相平衡図を作成すると、等方性透明低粘度1相領域で、かつ水および油頂点のいずれからも連続する領域でない等の特長を有していることで同定可能であるが、この特長は構成される系(成分)によって異なる。
(3)電気伝導度測定では、バイコンティニュアスミクロエマルション相の伝導度は同じ系で得られるミセル水溶液相の約2/3の値をとることが知られている。
(4)NMRによる自己拡散係数測定は、LindmanらによりJ. Colloid Interface Sci. 1981, 83, 569等に詳しく記載されている方法である。
(5)フリーズフラクチャー法を用いて調製した相サンプルの電子顕微鏡観察によれば、バイコンティニュアスミクロエマルション相の水および油の両方が連続となった像を得ることが可能である。この像によれば水あるいは油が連続のミセル水溶液相で得られる球状の会合体像との区別が容易である。この方法については、今栄らによる文献Colloid polym. Sci.1994, 272, 604に詳しく記載されている。
【0032】
本発明の洗浄剤組成物は、従来のバイコンティニュアスミクロエマルション相と比較すると刺激が極めて小さく、さらに極めて優れた洗浄力を有するので、皮膚または毛髪洗浄料として好ましく利用される。特に起泡性に優れているためシャンプー等の毛髪洗浄料として特に好ましく利用される。
一方、ガラス用洗浄剤、セラミックス用洗浄剤、プラスチック用洗浄剤、コンタクトレンズ用洗浄剤、食器用洗浄剤、容器用洗浄剤、工業用洗浄剤としても使用できる。
【実施例】
【0033】
次に実施例により本発明をさらに具体的に詳細に説明する。なお、本発明はこれに限定されるものではない。配合量は質量%を表わす。先ず、実施例の評価方法を以下に説明する。
【0034】
<会合状態:バイコンティニュアスミクロエマルション相の可否>
本発明の洗浄剤組成物の会合状態を評価した。評価方法は[0031]の(1)に記載した外観での評価方法と(3)の電気伝導度での評価方法によりバイコンティニュアスミクロエマルション相の可否を判断した。
「バイコンティニュアスミクロエマルション相の可否」の判定基準
○:バイコンティニュアスミクロエマルション相一相の会合状態を取っている
×:バイコンティニュアスミクロエマルション相一相の会合状態を取っていない
【0035】
<洗浄力・起泡力>
本発明の洗浄剤組成物の洗浄効果を確認するため、以下の洗浄・起泡効果テストを行った。
「洗浄力及び起泡力の効果の評価法」
毛髪ストランド2.5gにヘアワックス1gを塗布し、室温で1晩乾燥させた。この毛髪ストランドを水で濡らし、洗浄剤組成物0.5gを使用して1分間洗浄を行った(このときに起泡効果を判定した)。その後、毛髪ストランドを乾燥させヘアワックスの落ちを判定した。
「洗浄力の効果」の判定基準
◎:ヘアワックスが完全に落ちていると感じた
○:ヘアワックスが落ちていると感じた
△:ヘアワックスが少し残っているように感じた
×:ヘアワックスが残っているように感じた
「起泡力の効果」の判定基準
◎:泡立ちが非常に良いと感じた
○:泡立ちが良いと感じた
△:泡立ちがやや悪いと感じた
×:泡立ちが悪いと感じた
【0036】
表1及び表2に示す組成にて常法により洗浄剤組成物(シャンプー)を製造し、上記の評価を行った。
【0037】
【表1】

【0038】
「表1」の結果より、成分(C)モノ脂肪酸アミド誘導体及び/又はモノ脂肪酸グリコールエステルを含有する実施例1〜5の洗浄剤組成物は、バイコンティニュアスミクロエマルション相一相を示し、洗浄力が高く、起泡力に優れた洗浄剤であることがわかる。
一方、成分(C)モノ脂肪酸アミド誘導体及び/又はモノ脂肪酸グリコールエステルが配合されておらず、その代わりに特許文献1及び特許文献2のモノ脂肪酸グリセリン系のノニオン活性剤を配合した比較例1〜2は、バイコンティニュアスミクロエマルション相一相を示すが、洗浄力及び起泡力は十分でない。
【0039】
【表2】

【0040】
「表2」の結果より、成分(C)モノ脂肪酸アミド誘導体及び/又はモノ脂肪酸グリコールエステルを含有する実施例6〜9の洗浄剤組成物は、バイコンティニュアスミクロエマルション相一相を示し、洗浄力が高く、起泡力に優れた洗浄剤であることがわかる。
一方、成分(C)モノ脂肪酸アミド誘導体及び/又はモノ脂肪酸グリコールエステルを配合していない比較例3は、バイコンティニュアスミクロエマルション相一相が得られず、洗浄力及び起泡力に劣る。
【0041】
【表3】

【0042】
「表3」の結果より、(A)両性界面活性剤と(B)アニオン界面活性剤の比率を9:1、5:5、2:8に変え成分(C)モノ脂肪酸アミド誘導体及び/又はモノ脂肪酸グリコールエステルを含有する実施例10〜12の洗浄剤組成物は、バイコンティニュアスミクロエマルション相一相を示し、洗浄力が高く、起泡力に優れた洗浄剤であることがわかる。
【0043】
以下に本発明のその他の実施例を挙げる。いずれも、バイコンティニュアスミクロエマルション相一相構造であり、洗浄力に優れた洗浄剤組成物である。また、気泡力もあり、皮膚に対する刺激が少なく、洗浄剤の洗い流し過程及び洗浄後にさっぱり感を感じることができる洗浄剤組成物(シャンプー)である。
【0044】
「実施例13 シャンプー」
配合成分 質量%
(A)ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン 10
(B)ポリオキシエチレン(2モル)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム 12
(C)ヤシ油脂肪酸N−メチルモノエタノールアマイド(炭素数12〜18)20
(D)1,3−ブチレングリコール 30
(E)イオン交換水 残余
【0045】
「実施例14 シャンプー」
配合成分 質量%
(A)ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン 12
(B)ポリオキシエチレン(2モル)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム 10
(C)ヤシ油脂肪酸N−メチルモノエタノールアマイド(炭素数12〜18)10
(C)ラウリン酸プロピレングリコール(炭素数12) 2
(D)プロピレングリコール 20
(E)イオン交換水 残余
【0046】
「実施例15 シャンプー」
配合成分 質量%
(A)ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン 10.5
(B)ポリオキシエチレン(2モル)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム 10.5
(C)ヤシ油脂肪酸N−メチルモノエタノールアマイド(炭素数12〜18)15
(D)ジプロピレングリコール 20
(D)イソプロピレングリコール 10
(E)イオン交換水 残余
【0047】
「実施例16 シャンプー」
配合成分 質量%
(A)ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン 10.5
(B)ポリオキシエチレン(2モル)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム 10.5
(C)ヤシ油脂肪酸N−メチルモノエタノールアマイド(炭素数12〜18)15
(C)ステアリン酸プロピレングリコール(炭素数18) 2
(D)ジプロピレングリコール 30
(E)イオン交換水 残余
【0048】
「実施例17 シャンプー」
配合成分 質量%
(A)ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン 10.5
(B)ポリオキシエチレン(2モル)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム 10.5
(C)ヤシ油脂肪酸N−メチルモノエタノールアマイド(炭素数12〜18)15
(C)カプリル酸プロピレングリコール(炭素数8) 5
(D)ジプロピレングリコール 30
(E)イオン交換水 残余
【0049】
「実施例18 シャンプー」
配合成分 質量%
(A)ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン 10.5
(B)ポリオキシエチレン(2モル)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム 10.5
(C)ヤシ油脂肪酸N−メチルモノエタノールアマイド(炭素数12〜18)10
(C)オレイン酸ジエタノールアマイド(炭素数18) 2
(C)ラウリン酸プロピレングリコール(炭素数12) 2
(D)ジプロピレングリコール 30
(E)イオン交換水 残余
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明によれば、極めて優れた洗浄力を有し、皮膚に対する刺激が少なく、しかもさっぱりと洗い流せる洗浄剤組成物を容易に提供できる。本発明の洗浄剤組成物は、特に起泡性に優れているためシャンプーなどの毛髪洗浄料としての利用可能性に優れている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)(B)(C)(D)(E)を含有する洗浄剤組成物であって、該洗浄剤組成物が25℃においてバイコンティニュアスミクロエマルション相であることを特徴とする洗浄剤組成物。
(A)両性界面活性剤
(B)アニオン界面活性剤
(C)炭素数8〜18のモノ脂肪酸アミド誘導体及び/又はモノ脂肪酸グリコールエステル誘導体
(D)分子内に2個以上の水酸基を有する水溶性アルコール
(E)水
【請求項2】
成分(A)と成分(B)との質量比が2:8〜9:1の範囲であることを特徴とする請求項1記載の洗浄剤組成物。
【請求項3】
成分(D)の分子内に2個以上の水酸基を有する水溶性アルコールが、低級アルコール、多価アルコール及びそのエチレングリコール付加体、プロピレンオキシド付加体からなる群から選択される1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の洗浄剤組成物。
【請求項4】
成分(D)の分子内に2個以上の水酸基を有する水溶性アルコールが、エチレングリコール、プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどの2価アルコールからなる群から選択される1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
【請求項5】
洗浄剤組成物が、皮膚または毛髪洗浄料であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の洗浄剤組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2012−1597(P2012−1597A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−136171(P2010−136171)
【出願日】平成22年6月15日(2010.6.15)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】