説明

洗浄剤組成物

【課題】洗浄中の泡質に優れ、高い洗浄実感が得られ、すすぎ時のぬるつきが早く消え、ストップフィーリング性が強く、更に、乾燥後の肌の保湿感にも優れる洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】次の成分(A)、(B)及び(C):(A)ポリオキシエチレンの平均付加モル数が3.5以下で、アルキル基の炭素数が10〜18であるポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩1〜20質量%、(B)下記一般式(1)で示されるカチオン化ヒドロキシプロピルセルロース0.02〜10質量%、


(式中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立にカチオン化エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基を有する置換基を示し、nはアンヒドログルコースの平均重合度を示す20〜5000の数である。)(C)水、を含有する皮膚洗浄剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
顔や全身を清浄にするための皮膚洗浄剤に求められる諸性能の中で、温和な洗浄力、洗浄後のすすぎ時の感触として、ぬるつきが早く消えること、更に、摩擦抵抗のある感触(ストップフィーリング)があることが重要である。すすぎ時にぬるつきが早く消え、ストップフィーリングを強く感じさせると、さっぱりとした洗浄感を与えるので好ましい。
【0003】
従来、この分野では、汎用の界面活性剤であるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩を主剤とした皮膚洗浄剤組成物が良く知られている。ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩は、泡立ちが良好であるものの、すすぎ時にいつまでもヌルヌルした感触が続くという問題があった。特許文献1には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩と脂肪エーテルカルボキシレート界面活性剤を組み合わせた組成物が記載され、温和な洗浄力と良好な泡立ち性能を示しているが、やはり、すすぎ時にぬるつきが強く、さっぱりとした洗浄感が得られない上、洗浄後の肌感がしっとりせず、十分満足できるものではなかった。
【0004】
特許文献2には、特定の界面活性剤とカチオン性ポリマーを含有する洗浄剤組成物が記載されている。このようなカチオン性ポリマーは、毛髪洗浄剤においては、きしみ感を低減するためのコンディショニング剤として用いられ、すすぎ時の指通りを改善している。また、皮膚洗浄剤においても、肌をしっとりさせるコンディショニング剤として用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−190298号公報
【特許文献2】特開2005−306843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような洗浄剤組成物は、皮膚洗浄用途において、ぬるつきの原因となり、ぬるつきが長く続き、しかもすすぎ時のストップフィーリング性がなかなか発現せず、十分満足できるものではなかった。
本発明は、洗浄中の泡質に優れ、高い洗浄実感が得られ、すすぎ時のぬるつきが早く消え、ストップフィーリング性が強く、更に、乾燥後の肌の保湿感にも優れる洗浄剤組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、特定のポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩と特定のカチオン化ポリマーを組み合わせて用いれば、上記課題を解決した洗浄剤組成物が得られることを見出した。
【0008】
本発明は、次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)ポリオキシエチレンの平均付加モル数が3.5以下で、アルキル基の炭素数が10〜18であるポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩 1〜20質量%、
(B)下記一般式(1)で示されるカチオン化ヒドロキシプロピルセルロース 0.02〜10質量%、
【0009】
【化1】

【0010】
(式中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に下記一般式(2)又は(3)で表されるカチオン化エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基を有する置換基を示し、nはアンヒドログルコースの平均重合度を示す20〜5000の数である。カチオン化エチレンオキシ基の置換度は0.01〜3であり、プロピレンオキシ基の置換度は0.01〜5である。)
【0011】
【化2】

【0012】
(式中、Y1及びY2は、一方が水素原子であり、他方が下記一般式(4)で表されるカチオン性基を示し、POはプロピレンオキシ基を示す。pは一般式(2)中に含まれるカチオン化エチレンオキシ基(−CH(Y1)−CH(Y2)−O−)の数を示し、qはプロピレンオキシ基(−PO−)の数を示し、それぞれ0又は正の数である。p及びqのどちらもが0でない場合、カチオン化エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基の付加順序は問わず、更にp及び/又はqが2以上である場合は、ブロック結合又はランダム結合のいずれであってもよい。)
【0013】
【化3】

【0014】
(式中、R4、R5及びR6は、それぞれ独立に炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示し、X-はアニオン性基を示す。)
(C)水
を含有する洗浄剤組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の洗浄剤組成物は、洗浄中の泡がクリーミーで、洗浄実感に優れ、すすぎ時には、ぬるつきがすばやく消え、しかもすすぎ時のストップフィーリング性が強く、更に、乾燥後の肌の保湿感が得られるものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明で用いる成分(A)のポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩は、ポリオキシエチレンの平均付加モル数が3.5以下であり、アルキル基の炭素数が10〜18である次式で表されるものが好ましい。
【0017】
【化4】

【0018】
(式中、Rは炭素数10〜18のアルキル基又はアルケニル基を示し、nは平均で0.5〜3.5の数を示し、Xは、水素原子、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを示す)
【0019】
式中、Rとしては、炭素数12〜16のアルキル基が好ましい。また、エチレンオキシドの平均付加モル数は、0.5〜3.5が好ましく、更に1〜2.9が好ましい。
また、Xとしては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属;アンモニウム;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン由来のアンモニウム;アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸由来のカチオンなどが挙げられる。これらの中で、組成物の着色がし難い点からアルカリ金属塩、アンモニウム塩が好ましく、更にアルカリ金属塩が好ましい。
【0020】
成分(A)は、1種以上を用いることができ、全組成中に1〜20質量%、好ましくは1〜11質量%、更に好ましくは1.5〜6質量%含有される。この範囲内であれば、温度変化による粘度変化が少なく、泡量・泡質と、洗浄後の乾燥した肌がかさつき難いことが両立ができるので好ましい。
【0021】
本発明で用いられる成分(B)は、前記一般式(1)で表されるカチオン化ヒドロキシプロピルセルロースであり、アンヒドログルコース由来の主鎖を有し、かつカチオン化エチレンオキシ基の置換度が0.01〜3であり、プロピレンオキシ基の置換度が0.01〜5であるカチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(以下、「C−HPC」ともいう)である。
【0022】
(一般式(1)で表されるアンヒドログルコース由来の主鎖)
一般式(1)で表されるアンヒドログルコース由来の主鎖は、上記一般式(1)で表されるとおり、アンヒドログルコース由来の主鎖を有する。
【0023】
一般式(1)において、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に一般式(2)又は(3)で表される置換基であり、R1、R2及びR3は、同一であっても、異なっていてもよい。また、n個のR1、n個のR2、n個のR3は、それぞれ同一であっても、異なってもよい。
【0024】
また、本発明の皮膚洗浄剤組成物で洗浄した後のすすぎ時のストップフィーリング性、及び乾燥後の肌に保湿感を伴った良好なすべり感を付与する観点から、一般式(1)における平均重合度nは、20〜5000であり、100〜2000が好ましく、400〜1300がより好ましい。
なお、本発明において平均重合度とは、銅−アンモニア法により測定される粘度平均重合度をいい、具体的には実施例に記載の方法により算出される。
【0025】
(一般式(2)又は(3)で表される置換基)
一般式(1)におけるR1、R2、R3である一般式(2)又は(3)で表される置換基は、上記一般式(2)又は(3)で表されるとおり、カチオン化エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基を有する。
【0026】
一般式(2)又は(3)において、Y1及びY2は、一方が水素原子であり、他方が下記一般式(3)で表されるカチオン性基を示し、POはプロピレンオキシ基を示す。
pは一般式(2)中に含まれるカチオン化エチレンオキシ基(−CH(Y1)−CH(Y2)−O−)の数を示し、0又は正の数である。製造の容易さの観点から、pは0又は1であることが好ましい。
qは一般式(2)中に含まれるプロピレンオキシ基(−PO−)の数を示し、0又は正の数である。製造の容易さの観点から、qは0〜4の数であることが好ましく、0〜2の数であることがより好ましく、0又は1であることが更に好ましい。
C−HPC分子内に複数の一般式(2)又は(3)で表される置換基が存在する場合、該置換基間においてp、qの値はそれぞれ異なっていてもよい。
【0027】
pとqの合計は、製造の容易さの観点から、1〜5の数であることが好ましく、1〜4の数であることがより好ましく、1〜3の数であることがより好ましく、1又は2であることが更に好ましい。
p及びqのどちらもが0でない場合、前記カチオン化エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基の付加順序は問わないが、製造効率の観点から、一般式(3)に記載した順序であることが好ましい。
また、p及びqのどちらもが0でなく、かつp及び/又はqが2以上である場合は、ブロック結合又はランダム結合のいずれであってもよいが、製造の容易さの観点から、ブロック結合であることが好ましい。
n個のR1、n個のR2、n個のR3において、少なくとも1つは、一般式(2)又は(3)のpが0ではなく、また、少なくとも1つは、一般式(2)又は(3)のqが0ではない。
【0028】
(一般式(4)で表されるカチオン性基)
一般式(2)又は(3)におけるY1、Y2である一般式(4)で表されるカチオン性基は、上記一般式(4)で表される構造を有する。
【0029】
一般式(4)において、R4、R5及びR6は、それぞれ独立に炭素数1〜3の直鎖又は分岐のアルキル基であり、その具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基及びイソプロピル基が挙げられる。これらの中では、C−HPCの水溶性の観点から、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
一般式(4)において、X-は、アンモニウム基の対イオンであるアニオン性基を示す。X-はアニオン性基であれば限定されない。その具体例としては、アルキル硫酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、アルキル炭酸イオン、ハロゲン化物イオン等が挙げられる。これらの中では、製造の容易さの観点から、ハロゲン化物イオンが好ましい。ハロゲン化物イオンとしては、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン及びヨウ化物イオンが挙げられるが、C−HPCの水溶性及び化学的安定性の観点から、塩化物イオン、臭化物イオンが好ましく、塩化物イオンがより好ましい。
【0030】
一般式(1)で表されるC−HPCにおいて、洗浄時の泡立ちを高めるとともに、洗浄後のすすぎ時のぬるつきを早期に喪失させ、摩擦抵抗のある感触(ストップリーリング性)を強く感じさせ、更に、乾燥後の肌に保湿感を伴った良好な感触を得る観点から、カチオン化エチレンオキシ基の置換度は、0.01〜3であり0.1〜2.4が好ましく、0.18〜1がより好ましい。
本発明において、カチオン化エチレンオキシ基の置換度とは、セルロース主鎖を構成するアンヒドログルコース単位1モルあたりのC−HPCの分子中に存在するカチオン化エチレンオキシ基の平均モル数をいう。カチオン化エチレンオキシ基の置換度は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0031】
また、洗浄時の起泡性の高さ、及びすすぎ時の泡切れ、消泡性を付与する観点から、プロピレンオキシ基の置換度は、0.01〜5であり、0.2〜3が好ましく、1.1〜2.9がより好ましい。
本発明において、プロピレンオキシ基の置換度とは、セルロース主鎖を構成するアンヒドログルコース単位1モルあたりのC−HPC分子中に存在するプロピレンオキシ基の平均モル数をいう。プロピレンオキシ基の置換度は、後述の実施例に記載の方法により測定される。
【0032】
成分(C)のC−HPCは、例えば、以下の(1)〜(3)の製造方法により得ることができる。
(1)セルロースと大量の水及び大過剰のアルカリ金属水酸化物をスラリー状態で混合し、カチオン化剤及び酸化プロピレンと反応させる方法。
(2)塩化リチウムを含むジメシルアセトアミドを溶媒として用い、さらにアミン類やアルコラート触媒を添加してセルロースを溶解させ、カチオン化剤及び酸化プロピレンと反応させる方法。
(3)上記(1)や(2)のように、過剰の水や溶媒を用いず、粉末、ペレット状又はチップ状のセルロースと、カチオン化剤及び酸化プロピレンを塩基共存下に反応させる方法。
上記(1)〜(3)の製造方法において、カチオン化剤との反応、及び酸化プロピレンとの反応はどちらを先に行っても良く、同時に行っても良い。
これらの製造方法の中では、製造を容易さの観点から、上記(3)の製造方法が好まし
【0033】
成分(B)のC−HPCは、すすぎ時のストップフィーリング性の強さ、及び乾燥後の肌にしっとりした保湿感を与える観点から、全組成中に0.02〜10質量%、好ましくは0.2〜2質量%、更に好ましくは0.4〜1質量%含有される。
【0034】
本発明において、成分(A)及び(B)の質量割合は、洗浄後、泡の質とすすぎ時のぬるつきの低減、ストップフィーリングの強さ、浄後タオルで拭いた直後の肌は手が吸い付くようなしっとりした感触を与え、乾燥後の肌に自然なしっとり感を与える観点から、(B)/(A)=0.01〜2であることが好ましく、0.03〜1がより好ましく、0.07〜0.5が更に好ましい。
【0035】
成分(C)水は、各成分の残部をなし、全組成中に40〜95質量%含有するのが好ましい。
【0036】
本発明の洗浄剤組成物は、更に、成分(D)として、成分(A)以外のアニオン界面活性剤を含有することができる。成分(D)のアニオン界面活性剤は、洗浄時の泡量を増加させ、すすぎ時のぬるつきを低減し、ストップフィーリングを強くすることができる。
成分(D)のアニオン界面活性剤としては、通常の洗浄剤組成物に用いられるものであれば制限されず、例えば、アルキル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸塩、スルホコハク酸アルキルエステル塩、ポリオキシアルキレンスルホコハク酸アルキルエステル塩、α−オレフィンスルホン酸塩、脂肪酸塩、N−アシルアミノ酸塩、N−アシルアルキルタウリン塩等が挙げられる。
これらの中で、起泡性や洗浄性の観点から、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、脂肪酸塩、N−アシルアミノ酸塩、N−アシルアルキルタウリン塩が好ましく、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸塩、脂肪酸塩が更に好ましい。
【0037】
また、これら上記成分(D)の塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン塩;アルギニン、リジン等の塩基性アミノ酸塩などが挙げられる。これらの中で、組成物の着色がし難い点からアルカリ金属塩、アンモニウム塩が好ましく、更にアルカリ金属塩が好ましい。
【0038】
成分(D)は、1種以上を用いることができ、含有する場合には、全組成中に塩として、1〜30質量%含有するのが好ましく、2〜15質量%がより好ましく、3〜12質量%が更に好ましい。この範囲内であれば、泡立ち及び増泡性に優れ、成分(A)及び(B)との組み合わせでストップフィーリングを向上することができる。
【0039】
本発明の洗浄剤組成物は、更に、(E)塩を含有することができる。塩は、無機塩又は炭素数6以下の有機酸塩が好ましい。
無機塩としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属と、ハロゲン、硫酸、亜硫酸、燐酸等との塩が挙げられ、具体的には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、燐酸2水素ナトリウム、燐酸水素2ナトリウム等が挙げられる。また、有機酸塩としては、酢酸のほか、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、コハク酸等のヒドロキシ酸、多価酸とアルカリ金属等の塩などが挙げられる。
これらのうち、塩化ナトリウム、リンゴ酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウムが好ましい。
【0040】
成分(E)は、本発明の効果である起泡性や泡質を妨げない範囲で、1種以上を用いることができ、成分(E)を含有する場合は、全組成中に0.1〜6質量%、更に0.5〜3質量%含有するのが、成分(A)及び(B)、又は、成分(A)、(B)及び(D)により形成されるコンプレックスを溶解しやすくし、溶解状態のコンプレックスを多量に含有することができ、すすぎ過程での、コンプレックスの析出量を多くすることができるので好ましい。この結果、ストップフィーリング性が向上し、強いストップフィーリング性を付与することができる。
【0041】
本発明においては、成分(E)を含有する場合は、成分(A)、(B)、(D)及び(E)の質量割合が、(E)/((A)+(B)+(D))=0.02〜0.4、更には0.1〜0.3であるのが、洗浄後、乾いた肌に、しなやかな弾力感を付与するこができるので好ましい。
【0042】
本発明においては、更に、(F)次式で表される長鎖脂肪酸グリコールエステルを含有することができる。
11COO(CH2CH2O)m
〔式中、R11は炭素数11〜21のアルキル基又はアルケニル基を示し、Aは水素原子又はCOR12(R12は炭素数11〜21のアルキル基又はアルケニル基)を示し、mは1〜3の数を示す。〕
【0043】
長鎖脂肪酸グリコールエステルは、本発明の洗浄剤組成物中において、薄片状の結晶として存在する。
そして、洗浄後、すすぎ過程で、成分(A)及び(B)、又は、成分(A)、(B)及び(D)により形成されるコンプレックスとともに肌に吸着し、乾燥後、しっとりした感触を引き出すことができる。
成分(F)を含有する場合は、洗浄後の肌感触の観点から、全組成中に0.5〜3質量%含有するのが好ましく、1〜2.5質量%がより好ましく、1〜2質量%が更に好ましい。
【0044】
本発明の洗浄剤組成物は、更に、(G)アルキルポリグリコシド型非イオン界面活性剤及び/又はポリオキシエチレンアルキルエーテル型非イオン界面活性剤を含有することができる。これらは、洗浄時の泡量を多くすることができるものである。
アルキルポリグリコシドは、糖類と高級アルコールとから誘導される非イオン界面活性剤であり、例えば、次式で表されるものが挙げられる。
【0045】
R−O(CH2CH2O)m−Zx
(式中、Rは炭素数9〜20のアルキル基を示し、mは平均で0より大きく10以下の数を示し、Zは炭素数5又は6の糖残基を示し、xは平均で1〜5の数を示す)
【0046】
上記式中、Rは炭素数9〜15のアルキル基が好ましく、これらの混合物であっても良い。Zとしては、ペントース又はヘキソースが好ましく、中でもグルコースが最も好ましい。mは平均で0より大きく5以下の数が好ましく、xは平均で1〜3の数が好ましい。
【0047】
ポリオキシエチレンアルキルエーテル型非イオン界面活性剤としては、アルキル基が炭素数12〜22のものが好ましく、ポリオキシエチレン基が10〜30モル付加されたものが好ましい。具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンパルミチルエーテル、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンヘキシルデシルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテル等が挙げられる。
【0048】
また、ポリオキシエチレンアルキルエーテル型非イオン界面活性剤は、HLB10〜20、更にHLB13〜16のものが、より透明性に優れた洗浄剤組成物が得られるので好ましい。
なお、HLBとは、親水性−親油性のバランス(Hydropile Balance)を示す指標であり、本発明においては小田・寺村らによる次式を用いて算出した値を用いている。
【0049】
【数1】

【0050】
ポリオキシエチレンアルキルエーテル型非イオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン(21)ラウリルエーテル(エマルゲン121−G(HLB14)、花王社製)、ポリオキシエチレン(20)2−ヘキシルデシルエーテル(エマルゲン1620G(HLB14)、花王社製)、ポリオキシエチレン(20)オクチルドデシルエーテル(エマルゲン2020G(HLB13)、花王社製)、ポリオキシエチレン(16)ラウリルエーテル(エマルゲン116(HLB15.8)、花王社製)等が好適に用いられる。
成分(G)としては、洗浄後のタオルドライした後の肌感から、アルキルポリグリコシドが好ましい。
【0051】
成分(G)は、1種以上を用いることができ、洗浄剤組成物の泡量とすすぎ時の感触の点から、成分(G)を含有する場合は、全組成中に0.05〜10質量%含有するのが好ましく、0.2〜6質量%がより好ましく、0.5〜4質量%が更に好ましい。
【0052】
本発明の洗浄剤組成物は、更に、(H)両性界面活性剤を含有することができる。
成分(H)の両性界面活性剤としては、カルボベタイン、スルホベタイン、イミダゾリニウムベタイン、アミドベタイン等が挙げられ、すすぎ性を損なうことなく、泡立ちをより向上させることができる。具体的には、脂肪酸アミドプロピルベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタインなどが挙げられる。
成分(H)は、1種以上を用いることができ、成分(H)を含有する場合は、全組成中に0.1〜10質量%、更に0.5〜6質量%含有するのが、起泡性向上の点から好ましい。
【0053】
本発明の洗浄剤組成物は、更に、ポリオールを含有することができ、皮膚の水分保持性をより高めることができる。
かかるポリオールは、分子内に水酸基を2個以上有する多価アルコールであり、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール等のアルキレングリコール;ジプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール;グルコース、マルトース、マルチトース、蔗糖、フラクトース、キシリトール、ソルビトール、マルトトリオース、スレイトール等の糖アルコール;グリセリン、ポリグリセリン、エリスリトール、澱粉分解還元アルコール等が挙げられる。
ポリオールは、1種以上を用いることができ、含有する場合には、全組成中に0.1〜40質量%含有するのが好ましく、1〜20質量%含有するのがより好ましく、3〜10質量%含有するのが更に好ましい。
【0054】
本発明の洗浄剤組成物は、更に、通常の洗浄剤組成物に用いられる成分、例えば、油性成分、殺菌剤、抗炎症剤、防腐剤、キレート剤、スクラブ剤、香料、冷感剤、色素、紫外線吸収剤、酸化防止剤、植物エキスなどを含有することができる。
【0055】
本発明の洗浄剤組成物は、水に各成分を順次混合し、20〜70℃で十分攪拌し、溶解することにより、製造することができる。粉末状のポリマーを混合する際には、水にポリマーを分散させた後に、各成分を混合するのが好ましい。
【0056】
本発明の洗浄剤組成物は、ハンドソープ、ハンドウォッシュ、洗顔料、クレンジングフォーム、ボディソープ等のボディ用洗浄剤等の皮膚洗浄剤や、シャンプー等の毛髪洗浄剤として適用することができる。更に、ボディ用の皮膚洗浄剤組成物として好適である。
【実施例】
【0057】
以下の実施例において、各種物性の測定法は以下のとおりである。
【0058】
(1)パルプ及び粉末セルロースの水分含量の測定:
パルプ、粉末セルロースの水分量は、赤外線水分計(株式会社ケット科学研究所製、「FD−610」)を使用した。測定温度120℃で、30秒間の質量変化率が0.1%以下となる点を測定の終点とした。
【0059】
(2)パルプ及び粉末セルロースの結晶化度の算出:
株式会社リガク製「Rigaku RINT 2500VC X-RAY diffractometer」を用いて、以下の条件で測定した回折スペクトルのピーク強度から、下記計算式(1)に基づいて算出した。
X線源:Cu/Kα−radiation、管電圧:40kV、管電流:120mA
測定範囲:2θ=5〜45°
測定サンプル:面積320mm2×厚さ1mmのペレットを圧縮して作成
X線のスキャンスピード:10°/min
得られた結晶化度が負の値をとった場合は、全て結晶化度0%とした。
【0060】
【数2】

【0061】
(3)カチオン化ヒドロキシプロピルセルロース(C−HPC)の置換度の算出:
製造例で得られたC−HPCを透析膜(分画分子量1000)により精製後、水溶液を凍結乾燥して精製C−HPCを得た。得られた精製C−HPCの塩素含有量(%)を元素分析によって測定し、C−HPC中に含まれるカチオン性基の数と対イオンである塩化物イオンの数を同数であると近似して、下記計算式(2)から、C−HPC単位質量中に含まれるカチオン化エチレンオキシ基(−CH(Y1)−CH(Y2)O−)の量(a(モル/g))を求めた。
【0062】
【数3】

【0063】
分析対象がヒドロキシプロピルセルロースではなく精製C−HPCであることを除き、日本薬局方記載の「ヒドロキシプロピルセルロースの分析法」に従って、ヒドロキシプロポキシ基含有量(%)を測定した。下記計算式(3)から、ヒドロキシプロポキシ基含有量〔式量(OC3H6OH=75.09〕(bモル/g)を求めた。
【0064】
【数4】

【0065】
得られたa及びbと、下記計算式(4)及び(5)から、カチオン化エチレンオキシ基の置換度(k)及びプロピレンオキシ基の置換度(m)を算出した。
【0066】
【数5】

【0067】
(4)水可溶分率の算出:
試料(0.50g)を50mLスクリュー管に秤量し、イオン交換水49.5gを加えて、マグネチックスターラーで12時間撹拌して溶解させた。この溶液を50mL遠沈管に移し、3000rpm(2000×g)で20分間遠心分離を行った。上澄み液5mLを減圧乾燥(105℃、3時間)して固形分を求め、下記式により水可溶分率を算出した。
【0068】
【数6】

【0069】
(5)平均重合度の測定(銅アンモニア法):
(5−1)パルプ及び粉末セルロースの粘度平均重合度の測定;
(i)測定用溶液の調製;
メスフラスコ(100mL)に塩化第一銅0.5g、25%アンモニア水20〜30mLを加え、完全に溶解した後に、水酸化第二銅1.0g、及び25%アンモニア水を加えて標線の一寸手前までの量とした。これを30〜40分撹拌して、完全に溶解した。その後、精秤したセルロースを加え、標線まで上記アンモニア水を満たした。空気の入らないように密封し、12時間、マグネチックスターラーで撹拌して溶解し、測定用溶液を調製した。添加するセルロース量を20〜500mgの範囲で変えて、異なる濃度の測定用溶液を調製した。
【0070】
(ii)粘度平均重合度の測定;
上記(i)得られた測定用溶液(銅アンモニア溶液)をウベローデ粘度計に入れ、恒温槽(20±0.1℃)中で1時間静置した後、液の流下速度を測定した。種々のセルロース濃度(g/dL)の銅アンモニア溶液の流下時間(t(秒))とセルロース無添加の銅アンモニア水溶液の流下時間(t0(秒))から、下記式により、それぞれの濃度における還元粘度(ηsp/c)を下記式により求めた。
ηsp/c={(t−t0)/t0}/c
(c:セルロース濃度(g/dL)
【0071】
更に、還元粘度をc=0に外挿して固有粘度[η](dL/g)を求め、下記式により粘度平均重合度(DP)を求めた。
DP=2000×[η]
【0072】
(5−2)C−HPCの粘度平均重合度の測定;
(iii)測定溶液の調製;
精秤したセルロースの替わりに、精秤したC−HPCを用いた点を除き、上記(i)の測定溶液の調製と同様にして測定溶液を調製した。
【0073】
(iv)粘度平均重合度の測定;
測定溶液の濃度としてセルロース換算濃度(g/dL)を用いた点を除き、上記(ii)の粘度平均重合度の測定と同様にして測定した。
ここで、セルロース換算濃度(ccell)とは、測定溶液1dL中に含まれるセルロース骨格部分の質量(g)をいい、下記計算式(6)で定義する。
【0074】
【数7】

【0075】
〔プロピレンオキシ基(−PO−)の置換度〕
分析対象がヒドロキシプロピルセルロースではなく、上記透析膜による精製・凍結乾燥を行ったC−HPCであることを除き、日本薬局方記載のヒドロキシプロピルセルロースの分析法に従って、プロピレンオキシ基の置換度を算出した。
【0076】
製造例1(C−HPC(1)の製造)
(1)チップ化工程:
シート状木材パルプ(テンベック社製、平均重合度1770、結晶化度74%、水分含量8.5%)を、シートペレタイザー(ホーライ社製、製品名「SGG−220」)で処理してチップ状にした。
【0077】
(2)カチオン化剤を添加し、機械力による結晶化度低下処理を行う工程:
得られたチップ状パルプ2.1kgとグリシジルトリメチルアンモニウムクロリド(以下、「GMAC」ともいう。阪本薬品工業株式会社製、含水量20%、純度90%以上)1.2kg(AGU1モルあたり0.5モル)を袋中で混合した後、バッチ式振動ミル(中央化工機社製「FV−20」:容器全容積68.9L、ロッドとして、φ30mm、長さ590mm、断面形が円形のSUS304製ロッド114本、充填率70%)に投入した。振動数20Hz,全振幅8mm,温度30℃以下で12分間結晶化度低下処理を行ない、セルロースとGMACの粉末状混合物(水分含量22.3%対セルロース、粘度平均重合度1350、結晶化度68%)を得た。
【0078】
(3)塩基化合物を添加し、機械力による結晶化度低下処理を行う工程:
工程(2)で得られた粉末状混合物に、NaOH粉末0.284kg(AGU1モルあたり0.6モル)を添加し、前記バッチ式振動ミル中で振動数20Hz,全振幅8mm,温度50℃以下で20分間結晶化度低下処理を行ない、カチオン化セルロース(以下、「C−Cell」ともいう)とGMAC、NaOHの粉末状混合物を得た。さらにポリプロピレングリコール(和光純薬工業社製,商品名;「ポリプロピレングリコール ジオール型 平均分子量1000」(PPG1000);重量平均分子量1000)0.192kg(工程aで用いた原料セルロースに対して10質量%)をバッチ式振動ミルに投入し、振動数20Hz,全振幅8mm,温度50℃以下で120分間結晶化度低下処理を行ない、C−Cell、GMAC、NaOH、及びPPG1000の粉末状混合物:3.7kgを得た。
【0079】
(4)ヒドロキシプロピル化反応、中和工程:
工程(2)および工程(3)を複数バッチ繰り返して調製した粉末状混合物:10.0kgを75Lプロシェアミキサーに仕込み、内温56℃に昇温し、酸化プロピレン2.8kg(AGU1モルあたり1.5モル)を逐次滴下して、酸化プロピレンが消費され内圧が降下するまで反応を行なった。得られた反応終了品:12.6kgに対して、24%乳酸水溶液8.0kgを噴霧投入して、中和物:20.6kgを得た。
得られた中和物:15.2kgを65Lハイスピードミキサーに仕込み、内温70〜80℃で減圧乾燥することによって、乾燥品:10.0kgを得た。この乾燥品はピンミルで粉砕することにより粉末化して使用した。
生成物は、透析膜(分画分子量1000)により精製後、水溶液の凍結乾燥を行ない、精製C−HPC(1)を得た。精製品を用いて分析した結果、カチオン基、プロピレンオキシ基の置換度は、それぞれ0.22、および1.13と算出した。また、得られたC−HPC(1)の粘度平均重合度は693であった。
【0080】
製造例2(C−HPC(2)の製造)
(1)チップ化工程:
シート状木材パルプ〔テンベック社製、Biofloc HV+、平均重合度1481、結晶化度74%、水分含量4.6%〕をシートペレタイザー(ホーライ社製、「SGG−220」)で処理して3〜5mm角のチップ状にした。
【0081】
(2)アルカリセルロース化工程:
上記工程(1)で得られたチップ状パルプ100gと0.7mm粒状のNaOH23.6g(AGU1モルあたり1.0モル相当量)を、バッチ式振動ミル(中央化工機社製「MB−1」:容器全容積3.5L、ロッドとして、φ30mm、長さ218mm、断面形状が円形のSUS304製ロッド13本、充填率57%)に投入し、15分間粉砕処理(振動数20Hz、振幅8mm、温度30〜70℃)を行った。得られたセルロース・NaOH混合粉砕物を乳鉢に移し、水50gを噴霧にて添加し、20℃にて乳棒で5分間混合し、アルカリセルロースを得た(平均重合度:1175、結晶化度:28%)。
【0082】
(3)ヒドロキシプロピル化反応工程:
上記工程(2)で得られたアルカリセルロースを密閉反応装置(日東高圧社製、1.5Lオートクレーブ)に仕込み、窒素で反応容器内を置換した。次いで、撹拌しながら50℃に昇温、容器内の圧力が0.05MPa一定圧で酸化プロピレンを逐次投入して、7時間反応した。酸化プロピレンの合計投入量は102g(AGU1モルあたり3.0モル相当量)であった。
【0083】
(4)カチオン化反応工程:
上記工程(3)で得られた反応混合物30.0gを乳鉢にとり、65% 3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド水溶液(四日市合成社製)9.30g(AGU1モルあたり0.50モル相当量)を添加して、5分間混合後、150mLガラス瓶に移し、50℃、7時間反応させることで粗C−HPCを製造した。
この粗C−HPC粉末5.0gを採取して、乳酸で中和した。プロピレンオキシ基及びカチオン化エチレンオキシ基の置換度を求める目的で、中和物を透析膜(分画分子量1000)により精製後、水溶液の凍結乾燥を行い、精製C−HPC(2)を得た。
得られた精製品を分析した結果、カチオン基、プロピレンオキシ基の置換度は、それぞれ0.18、及び2.0と算出した。また、得られたC−HPC(2)の粘度平均重合度は693であった。
【0084】
製造例3(C−HPC(3)の製造)
(1)チップ化工程:
シート状木材パルプ〔テンベック社製、Biofloc HV+、平均重合度1604、α−セルロース含有量93.0%、結晶化度74%、水分含量7.0%〕をシートペレタイザー(ホーライ社製、「SGG−220」)で処理して、3〜5mm角のチップ状にした。
得られたチップ状パルプを、減圧乾燥器(アドバンテック東洋社製、商品名;VO−402)に投入し、105℃、20kPa、窒素流通下で2時間乾燥して、乾燥チップ状パルプ(平均重合度1604、α−セルロース含有量99.2%、結晶化度74%、水分含量0.8%)を得た。
【0085】
(2)アルカリセルロース化工程:
(工程1)
得られた乾燥チップ状パルプ920gを振動ロッドミル(中央化工機社製、商品名;FV―10、全容器量35L、ロッド径;30mm、使用ロッド数63本)に投入し、振幅8mm、20Hzにて、10〜40℃で10分間粉砕機処理を行って、セルロース含有原料(II)として、結晶化度を低下した粉末状のパルプ(平均重合度1198、結晶化度14%、水分含有量1.0%)920gを得た。
【0086】
(工程2)
上記(工程1)でセルロース含有原料(II)として得られた粉末状のパルプ460gを、混合機(マツボー社製、「レディゲミキサー」、容量5L)に投入し、主翼250rpm、チョッパー翼2500rpmで撹拌しながら、42.5%水酸化ナトリウム水溶液266.8g(原料(II)セルロースのAGU1モルあたり1.0モル相当量、及び原料(II)セルロースに対し33%の水)を1.5分間で噴霧添加した。噴霧後、内温を50℃に昇温し、3時間撹拌熟成を行って、アルカリセルロース混合物を得た。
【0087】
(3)ヒドロキシプロピル化反応工程:
(2)で得られたアルカリセルロース混合物720.5gを、上記レディゲミキサー内で、主翼50rpm、チョッパー翼400rpmで撹拌しながら50℃まで昇温し、その後、酸化プロピレン571.4g(アルカリセルロースのAGU1モルあたり3.5モル相当量)を3.5時間で滴下した。滴下終了後50℃で2時間熟成した。
【0088】
(4)カチオン化反応、中和工程:
上記ヒドロキシプロピル化で得られた反応混合物272.0gを混合機(深江パウテック社製、「ハイスピードミキサー」、容量2L)に投入し、内温を50℃に昇温し、、主翼337rpm、チョッパー翼1800rpmで撹拌しながら、65% 3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド水溶液(四日市合成社製)82.8g(ヒドロキシプロピル化で得られた反応混合物中のセルロース骨格を含む化合物のセルロース骨格を構成するAGU1モルあたり0.5モル相当量)を1.5分間で噴霧添加した。噴霧後、2時間撹拌熟成を行って、粗C−HPCを製造した。続いて29%乳酸水溶液を1.5分間で噴霧して、粗C−HPCの中和を行った。
この粗C−HPC粉末5.0gを採取して、プロピレンオキシ基及びカチオン化エチレンオキシ基の置換度を求める目的で、中和物を透析膜(分画分子量1000)により精製後、水溶液の凍結乾燥を行い、精製C−HPC(3)を得た。
得られた精製品を分析した結果、カチオン基、プロピレンオキシ基の置換度は、それぞれ0.11、および2.0と算出した。また、得られたC−HPC(3)の粘度平均重合度は743であった。
【0089】
製造例4(C−HPC(4)の製造)
(1)チップ化工程:
セルロースとして、シート状木材パルプ〔テンベック(Tembec)社製、粘度平均重合度1770、結晶化度74%、水分含量7.6%〕をシートペレタイザー(ホーライ社製、「SGG−220」)で処理してチップ状にした。
【0090】
(2)カチオン化剤を添加し、機械力による結晶化度低下処理を行う工程:
得られたチップ状パルプ108gに、グリシジルトリメチルアンモニウムクロリド(以下、「GMAC」ともいう。阪本薬品工業社製、含水量20%、純度90%以上)を23.4g〔セルロースのアンヒドログルコース単位モル(以下、「AGU」ともいう)あたり0.2モル〕乳鉢で混合した後、バッチ式振動ミル(中央化工機社製「MB−1」:容器全容積3.5L、ロッドとして、φ30mm、長さ218mm、断面形状が円形のSUS304製ロッド13本、充填率57%)に投入した。振動数20Hz,全振幅8mm,温度30℃以下で12分間結晶化度低下処理を行ない、セルロースとGMACの粉末状混合物131g(水分含量12.3%対セルロース、粘度平均重合度1350、結晶化度68%)を得た。
【0091】
(3)塩基化合物を添加し、機械力による結晶化度低下処理を行う工程:
(2)で得られた粉末状混合物131gに、24.7%水酸化ナトリウム水溶液20g(AGUあたり0.2モル)を乳鉢で混合した後、バッチ式振動ミル(中央化工機社製「MB−1」:容器全容積3.5L、ロッドとして、φ10mm、長さ218mm、断面形状が円形のSUS304製ロッド117本、充填率57%)に投入した。振動数20Hz、全振幅8mm、温度30℃以下で60分間結晶化度低下処理を行ない、C−CellとGMAC、水酸化ナトリウムの粉末状混合物151g(水分含量27.4%対セルロース、粘度平均重合度1330、結晶化度45%)を得た。この粉末状混合物から5gを採取し、酢酸で中和し、85%イソプロピルアルコール水溶液100mLで3回洗浄して、脱塩・精製を行った後、減圧乾燥することによって、精製カチオン化セルロース 4g(粘度平均重合度1330、結晶化度45%)を得た。
元素分析の結果からカチオン基の置換度は、0.1と算出した。また水可溶分率は31%であった。
【0092】
(4)ヒドロキシプロピル化反応、中和工程:
得られたカチオン化セルロース 100g(未中和・未精製品)を、還流管を取り付けた1Lニーダー(入江商会社製、PNV−1型)に仕込み、ニーダーのジャケット部を温水により70℃に加温して、窒素雰囲気下で酸化プロピレン141.9g(AGUあたり6モル、関東化学社製、特級試薬)を滴下して、酸化プロピレンが消費され還流が止むまで40時間反応を行なった。
生成物をニーダーから取り出し、薄褐色の粗C−HPC粉末240gを得た。この反応終了品から10.0gを採取して酢酸で中和し、薄褐色固体を得た。生成物を透析膜(分画分子量1000)により精製後、水溶液の凍結乾燥を行ない、精製C−HPC(4)を得た。
ヒドロキシプロピルセルロースの分析法による、プロピレンオキシ基〔分子量(C3H6O)=58.08〕含有量から、プロピレンオキシ基の置換度は2.9と算出した。また、得られたC−HPC(4)の水可溶分率は71%、粘度平均重合度は1,300であった。
【0093】
製造例5(C−HPC(5)の製造)
(1)乾燥粉末セルロースの調製:
粉末セルロース(日本製紙ケミカル社製、セルロースパウダーKCフロックW−400G、平均重合度191、結晶化度77%、水分含有量7.0%)を、50℃減圧下で12時間乾燥処理を行い、乾燥粉末セルロース(水分含量1.0%)を得た。
【0094】
(2)カチオン化工程(1):
得られた粉末セルロース100gに、GMAC60.8gを乳鉢で混合した後、製造例1に記載の振動ミルに投入した。12分間粉砕処理(振動数20Hz、振幅8mm、温度10〜40℃)を行い、セルロースとGMACの粉末状混合物を得た。
さらに振動ミル内に48%水酸化ナトリウム水溶液29.8gを投入した。再び前記振動ミルを用いて同様の粉砕条件で60分間粉砕処理を行い、カチオン化セルロースを得た。
【0095】
(3)ヒドロキシプロピル化工程:
上記工程で得られたカチオン化セルロース190gを入れたニーダーを70℃に昇温し、酸化プロピレン18.0gを撹拌しながら滴下して、酸化プロピレンが消費され還流が止むまで6時間反応を行った。
【0096】
(4)カチオン化反応(2):
反応終了混合物をニーダーから乳鉢に移して、GMAC87.5g(AGU 1モルあたり0.8モル相当量)を添加し、室温で10分間混合した。その後、ニーダーに戻して、攪拌しながら50℃で5時間反応を行って薄褐色の粗C−HPC粉末295gを得た。
得られた粗C−HPC粉末にGMAC87.5gを再度添加し、同様に50℃での反応までを行った。以上の操作を合計7回繰り返して行った(添加した酸化プロピレンの総量612.5g;AGU 1モルあたり5.3モル相当量)。この反応終了品から10.0gを採取して乳酸で中和し、薄褐色固体を得た。プロピレンオキシ基及びカチオン化エチレンオキシ基の置換度を求める目的で、生成物を透析膜(分画分子量1000)により精製後、水溶液の凍結乾燥を行い、精製C−HPC(5)を得た。
得られた精製C−HPC(5)のカチオン化エチレンオキシ基、プロピレンオキシ基の置換度は、それぞれ2.36、及び0.2と算出された。平均重合度は432であった。
【0097】
【表1】

【0098】
製造例6(ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテルカルボン酸ナトリウムの製造)
ラウリルアルコールを原料にEO反応させ、EO付加モル数3.05モルのアルキルエトキシレートを得た。
攪拌、温度調節機能及び酸素ガス導入管を取り付けたガラス製反応容器に、上記生成物90g(0.2モル)と、48%水酸化ナトリウム水溶液16.7g(水酸化ナトリウムとして0.2モル)、パラジウム−白金−ビスマス系触媒(活性炭にパラジウム4%、白金1%及びビスマス5%を担持、含水率50%)0.9g、水494.4gをそれぞれ仕込んだ。攪拌条件下、液温を70℃まで昇温し、酸素を27モル%(対生成AE/時間)の割合で吹き込みながら、反応温度70℃で3.5時間接触酸化反応を行った。
反応終了後、反応液から触媒を濾別し、アルキルエーテルカルボン酸Na塩の水溶液を得た。続いて、これを乾燥し粉末にした。これを、EC(A)とする。
【0099】
製造例7(ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテルカルボン酸ナトリウムの製造)
製造例6に倣い、ラウリルアルコールを原料にEO反応させ、EO付加モル数4.05モルのアルキルエトキシレートを得た。これを製造例6と同様、酸化反応を行い、得られたアルキルエーテルカルボン酸Na塩を乾燥し、粉末にした。これを、EC(B)とする。
【0100】
実施例1〜13、比較例1〜3
表2に示す組成の洗浄剤組成物を、以下の方法で製造した。得られた洗浄剤組成物について、泡立ちの早さ、泡質、洗浄時の泡量、すすぎ時のぬるつきの少なさ、すすぎ時のぬるつきの消え易さ、すすぎ終わり時のストップフィーリング性の強さ、タオルドライ直後の肌感及び乾燥後の肌感を評価した。結果を表2に併せて示す。
【0101】
(製造方法)
粉末状のC−HPCを20℃の水に分散させた後、各成分を順次混合し、十分攪拌して、溶解することにより、洗浄剤組成物を得た。
【0102】
(評価方法)
(1)泡立ちの早さ:
各洗浄剤組成物1gを手に取り、30℃の水道水で約5倍に希釈し、5秒間両手で軽く泡立てて、泡立ちの早さを評価した。評価は以下の基準で行い、専門パネラー5名の平均値で示した。
5;泡立ち(性)が非常に早いと感じた。
4;泡立ち(性)が早いと感じた。
3;泡立ち(性)が普通と感じた。
2;泡立ち(性)がやや遅いと感じた。
1;泡立ち(性)が遅いと感じた。
【0103】
(2)泡質(クリーミーさ):
各洗浄剤組成物1gを手に取り、30℃の水道水で約5倍に希釈し、20秒間両手で軽く泡立てて、泡質(クリーミーさ)を評価した。評価は以下の基準で行い、専門パネラー5名の平均値で示した。
5;きめ細かく、非常にクリーミーで良好な泡質と感じた。
4;クリーミーで良好な泡質と感じた。
3;ややクリーミーな泡質と感じた。
2;やや軽く粗い泡質と感じた。
1;軽く粗い泡質と感じた。
【0104】
(3)洗浄時の泡量:
各洗浄剤組成物を、水道水で、すすぎ後の泡切れを想定した高倍率(20倍)に希釈してサンプル水溶液とした。50mLの活栓つきの目盛り付きガラス円筒管(35mm×78mm)に、サンプル水溶液7.5mLを加えて栓をし、シェーカー(イワキ産業社製、型番万能シェーカーV-SX)を用いて、300(ストローク/分)の速度で30秒間振とうし、振とう直後の泡量(cm)を読み取った。
【0105】
(4)すすぎ時のぬるつきの少なさ:
各洗浄剤組成物1gを片方の手に取り、30℃の水道水で約5倍に希釈し、20秒間両手で軽く泡立てた後、泡を一方の手のひらに集め、もう一方の腕(肘から手首)を洗浄した。洗浄後、洗浄に用いた方の手に、2回12mLの水道水を取り、洗浄した腕にかけて泡を洗い流した。このときのぬるつきの強さを専門パネラー5名により評価した。評価は以下の基準で行い、専門パネラー5名の平均値で示した。
5;ぬるつきがほとんどなかった。
4;ややぬるつきがあった。
3;ぬるつきがあった。
2;ぬるつきがやや強かった。
1;ぬるつきが強かった。
【0106】
(5)すすぎ時のぬるつきの消え易さ:
各洗浄剤組成物1gを片方の手に取り、30℃の水道水で約5倍に希釈し、20秒間両手で軽く泡立てた後、泡を一方の手のひらに集め、もう一方の腕(肘から手首)を洗浄した。洗浄後、洗浄に用いた方の手に、2回12mlの水道水を取り、洗浄した腕にかけ泡を洗い流した。更に、流速100mL/分の水道水を腕にかけ、同時に1秒間に1回の割合で両前腕を擦り合せながらすすぎを行い、ストップフィーリングを感じるまでの擦り合わせた回数を測定した。測定結果を以下の評価基準に従ってランク分けを行い、専門パネラー5名の平均値で示した。
5;擦り合わせ回数が3回未満
4;擦り合わせ回数が3回以上6回未満。
3;擦り合わせ回数が6回以上9回未満。
2;擦り合わせ回数が9回以上12回未満。
1;擦り合わせ回数が12回以上。
【0107】
(6)すすぎ終わり時のストップフィーリングの強さ(全身洗浄評価):
専門パネラー10名が、各洗浄剤組成物を用いて全身を洗浄した。すすぎ終わり時のストップフィーリングの強さについて、強いと評価した人の人数を示した。
【0108】
(7)タオルドライ直後の肌感:
専門パネラー10名が、各洗浄剤組成物を用いて全身を洗浄した。タオルで拭いた直後、肌が手が吸い付くようなしっとりした感触について、腕の内側をもう一方の手のひらで評価した。肌に手が吸い付くようなしっとりした感触が強いと答えた人の人数を示した。
【0109】
(8)乾燥後の肌感(しなやかな弾力感):
専門パネラー10名が、各洗浄剤組成物を用いて全身を洗浄した。タオルドライ後10分経過後の肌について、しなやかな弾力感が強いと答えた人の人数を示した。
【0110】
(9)乾燥後の肌感(自然なしっとり感):
専門パネラー10名が、各洗浄剤組成物を用いて全身を洗浄した。タオルドライ後10分経過後の肌について、べたべたしない自然なしっとり感が強いと答えた人の人数を示した。
【0111】
【表2】

【0112】
実施例14〜22
表3に示す組成の洗浄剤組成物を、実施例1〜13と同様に製造した。
得られた洗浄剤組成物はいずれも、泡立ちが早く、泡質がきめ細かく、非常にクリーミーで良好であり、洗浄時の泡の増泡性に優れ、高い洗浄実感が得られ、すすぎ時にぬるつかず、すすぎ時のぬるつきが早く消え、ストップフィーリング性が強く、乾燥後には、しなやかな弾力感と、自然なしっとり感が得られるものであった。
【0113】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
本発明は、次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)ポリオキシエチレンの平均付加モル数が3.5以下で、アルキル基の炭素数が10〜18であるポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩 1〜20質量%、
(B)下記一般式(1)で示されるカチオン化ヒドロキシプロピルセルロース 0.02〜10質量%、
【化1】

(式中、R1、R2及びR3は、それぞれ独立に下記一般式(2)又は(3)で表されるカチオン化エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基を有する置換基を示し、nはアンヒドログルコースの平均重合度を示す20〜5000の数である。カチオン化エチレンオキシ基の置換度は0.01〜3であり、プロピレンオキシ基の置換度は0.01〜5である。)
【化2】

(式中、Y1及びY2は、一方が水素原子であり、他方が下記一般式(4)で表されるカチオン性基を示し、POはプロピレンオキシ基を示す。pは一般式(2)中に含まれるカチオン化エチレンオキシ基(−CH(Y1)−CH(Y2)−O−)の数を示し、qはプロピレンオキシ基(−PO−)の数を示し、それぞれ0又は正の数である。p及びqのどちらもが0でない場合、カチオン化エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基の付加順序は問わず、更にp及び/又はqが2以上である場合は、ブロック結合又はランダム結合のいずれであってもよい。)
【化3】

(式中、R4、R5及びR6は、それぞれ独立に炭素数1〜3の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を示し、X-はアニオン性基を示す。)
(C)水
を含有する洗浄剤組成物。
【請求項2】
成分(A)及び(B)の質量割合が、(B)/(A)=0.01〜2である請求項1項記載の洗浄剤組成物。
【請求項3】
更に、成分(D)として、成分(A)以外のアニオン界面活性剤を含有する請求項1又は2項記載の洗浄剤組成物。
【請求項4】
更に、(E)塩を含有する請求項1〜3のいずれか1項記載の洗浄剤組成物。
【請求項5】
更に、(F)次式
11COO(CH2CH2O)m
〔式中、R11は炭素数11〜21のアルキル基又はアルケニル基を示し、Aは水素原子又はCOR12(R12は炭素数11〜21のアルキル基又はアルケニル基)を示し、mは1〜3の数を示す。〕
で表される長鎖脂肪酸グリコールエステルを含有する請求項1〜4のいずれか1項記載の洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2012−232942(P2012−232942A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103055(P2011−103055)
【出願日】平成23年5月2日(2011.5.2)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】