説明

洗浄剤組成物

【課題】ガラス基板の表面を清浄するために使用される、洗浄剤組成物に関し、より具体的には、フラットパネル・ディスプレイの分野に適用される、高濃度の洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】(A)0.1〜20重量部の量のアルカリ金属ヒドロキシル化合物;(B)0.1〜30重量部の量の、以下の式(I)で表される非イオン性界面活性剤:


式中、R1は水素またはメチルであり;R2は水素またはメチルであり;nは0〜10の整数であり;および、mは4〜20の整数である;(C)0.1〜10重量部の量のアニオン性界面活性剤;(D)0.1〜20重量部の量のキレート剤;(E)0.1〜20重量部の量の添加剤;および(F)洗浄剤組成物100重量部に対する、残部の量の水を含む、洗浄剤組成物が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス基板の表面を清浄するために使用される、洗浄剤組成物に関し、より具体的には、フラットパネル・ディスプレイの分野に適用される、高濃度の洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイテレビまたはプラズマテレビは、代表的なフラットパネル・ディスプレイである。パネルの大きさの極大化または小型化が進むにつれて、製造工程中、パネル表面の清浄度に対する要求が、より一層重要になる。フラットパネル・ディスプレイの通常の製造において、ガラス基板の表面清浄度は、以下の工程の収率に影響し得る。故に、ガラス基板表面の清浄度が洗浄剤によって増し、安定化することは、重要なポイントであろう。従って、基板表面から油性の汚染物質や粒子を充分に洗い流すことの必要性は、より一層重要になる。
【0003】
最近開発された洗浄剤組成物は、例えば、日本特開平7-305093号および日本公開特許公報第2001-181699号に開示されたものである。しかし、現在の洗浄剤が短時間にガラス基板を清浄する高性能を有しなければいけないことを考えると、上記の引例に開示されたそれらの洗浄剤組成物により提供される清浄性能は、なお容認されるものではない。
【0004】
塩基性洗浄剤に適用される塩基性化合物は、一般に、無機および有機塩基の2種類に分類される。通常の無機塩基の中では、NaOH、KOH、Na2CO3、およびNaHCO3が例示される。通常の有機塩基の中では、水酸化テトラメチルアンモニウムまたはアルカノールアミン類が例示される。前記の塩基性化合物は全て、洗浄剤に広く使用されている。
【0005】
一般的に使用されるガラス基板の洗浄方法は、超音波洗浄、回転式洗浄、揺動洗浄、ブラシ洗浄等の、知られている洗浄方法および技術でよい。
【0006】
塩基性洗浄剤の昨今の傾向において、洗浄性能を増強するため、塩基性化合物に加えて界面活性剤も使用される。現在、産業界で一般的に使用される、優れた洗浄性能を有する非イオン性界面活性剤は、アルキレンオキシド系界面活性剤である。最も強力な洗浄性能を提供するため、一つのアルキレンオキシド系界面活性剤に加えて、多数のアルキレンオキシド系界面活性剤を含有する混合物もまた使用される。この混合物は、操作中の泡の形成を殆どなくし、卓越した洗浄性および混合物の最小限の表面残留などを達成するため、種々のモル数および、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシド等の種々の種類のアルキレンオキシドを含有し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】日本特開平7-305093号
【特許文献2】日本公開特許公報第2001-181699号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般的に、ガラス基板の表面汚染物質により、フォトレジストのコーティングは影響されやすい。その結果、フォトレジストは基板への接着が悪くなるか、現像工程の間、パターン製造に不十分に影響し、収率が低くなる。従って、上記した問題を克服できる洗浄剤組成物が早急に必要である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明において、以下の式(I)の界面活性剤を洗浄剤組成物に添加することにより、ガラス基板の表面汚染を改善することができ、従って、ガラス基板の安定な表面品質が得られ、その結果、製法収率が向上する。
【化1】

【0010】
式(I)において、R1は水素またはメチルであり;R2は水素またはメチルであり;nは0〜10の整数であり、mは4〜20の整数である。
【0011】
上述の問題を克服し、上記の課題を達成するため、本発明は、ガラス基板の表面の清浄に使用される、洗浄剤組成物を提供する。洗浄剤組成物は:(A)アルカリ金属ヒドロキシル化合物、(B)以下の式(I)で表される非イオン性界面活性剤、(C)アニオン性界面活性剤、(D)キレート剤、(E)添加剤、および(F)水を含有する。洗浄剤組成物は、ガラス基板の表面清浄に使用され、操作の間、泡の形成が殆どなく、卓越した洗浄性、最小限の表面残留などを与え得る。最も重要なことは、洗浄剤組成物がガラス基板の表面の清浄度を向上し得ることである。
【0012】
本発明の洗浄剤組成物は、本書で使用される以下の式(I)で表される非イオン性界面活性剤を含有する。
【化2】

【0013】
式(I)において、R1は水素またはメチルであり;R2は水素またはメチルであり;nは0〜10の整数であり、mは4〜20の整数である。
【0014】
本発明の洗浄剤組成物に使用されるアルカリ金属ヒドロキシル化合物は、あらゆる一般に知られている塩基性化合物であり得る。無機塩基製化合物の中で、アルカリ金属がLi、K、Na等であるアルカリ金属ヒドロキシル化合物が好ましい。より好ましくは、使用されるアルカリ金属ヒドロキシル化合物は、NaOH、KOHおよびそれらの組み合わせよりなる群から選択される少なくとも一つである。
【0015】
本発明の洗浄剤組成物に使用されるアニオン性界面活性剤は、好ましくは、
【化3】

式中、m1およびn1は両者とも整数であり、m1+n1=10〜14である;
【化4】

式中、R=C1〜C12アルキル基である;
および、それらの組み合わせよりなる群から選択される、少なくとも一つである。言い換えると、本発明に使用されるアニオン性界面活性剤は、好ましくは、第二級アルカンスルホネート(SAS)、ドデシルジフェニルエーテルスルホン酸二ナトリウム、およびそれらの組み合わせよりなる群から選択される少なくとも一つである。
【0016】
本発明の洗浄剤組成物に使用されるキレート剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)またはその塩であり得るが、最も好ましくは、EDTA二ナトリウム(EDTA−2Na)およびEDTA四ナトリウム(EDTA−4Na)等のナトリウム塩であり;ニトロ三酢酸(NTA)またはその塩であり得るが、最も好ましくは、NTA三ナトリウム等のナトリウム塩であり;または、2以上のヒドロキシル基を含有する塩化合物等の他のものであり得る。洗浄剤組成物の製品安定性および洗浄性能を高めることを考慮すれば、本発明の洗浄剤組成物が非イオン性界面活性剤を含有するので、本発明の洗浄剤組成物に使用される添加剤は、好ましくは、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、キシレンスルホン酸ナトリウム、またはそれらの組み合わせである。一般的に、p−トルエンスルホン酸塩またはキシレンスルホン酸ナトリウムを非イオン性界面活性剤を含有する洗浄剤組成物に混入する場合、p−トルエンスルホン酸塩またはキシレンスルホン酸ナトリウムの混入により、洗浄剤組成物は、操作の間、曇り点が上かり、水溶性を増し、非イオン性界面活性剤の残留物が最少化し得る。従って、洗浄剤組成物の洗浄性能が向上する。最も好ましくは、p−トルエンスルホン酸塩を使用し得る。
【発明を実施するための形態】
【0017】
ここで、本発明に関する洗浄剤組成物を詳細に記述する。
【0018】
本発明の洗浄剤組成物の総量100重量部に対して、塩基性化合物は、好ましくは、0.1〜20重量部の量を使用する。洗浄剤組成物のpHは9〜14の範囲である。
【0019】
本発明の洗浄剤組成物の総量100重量部に対して、以下の式(I)で表される非イオン性界面活性剤は、好ましくは、0.1〜30重量部の量を使用する。非イオン性界面活性剤の量が0.1重量部未満の場合、洗浄剤組成物の洗浄性能は充分ではない。しかし、非イオン性界面活性剤の量が30重量部を超える場合は、塩基性化合物の溶解性が低下して、深刻な発泡が起こりがちである。
【0020】
本発明の洗浄剤組成物の総量100重量部に対して、以下の式(I)で表されるアニオン性界面活性剤は、好ましくは、0.1〜10重量部の量を使用する。アニオン性界面活性剤の量が0.1重量部未満の場合、洗浄剤組成物の洗浄性能は充分ではない。しかし、アニオン性界面活性剤の量が10重量部を超える場合は、塩基性化合物の溶解性が低下して、深刻な発泡が起こりがちである。
【0021】
本発明の洗浄剤組成物の総量100重量部に対して、キレート剤は、好ましくは、0.1〜20重量部の量を使用する。キレート剤の量が0.1重量部未満の場合、洗浄剤組成物の洗浄性能は充分ではない。しかし、キレート剤の量が20重量部を超える場合は、キレート剤の溶解性が低下しがちである。
【0022】
本発明の洗浄剤組成物の総量100重量部に対して、添加剤は、好ましくは、0.1〜20重量部の量を使用する。添加剤の量が0.1重量部未満の場合、洗浄剤組成物の性能は充分ではない。しかし、キレート剤の量が20重量部を超える場合は、非生産的である。
【0023】
本発明の洗浄剤組成物の総量100重量部に対して、残余の重量部は、上述の成分に加えて、水である。水は、注水(pour water)、脱イオン水、または蒸留水等の、一般用途の水である。
【0024】
本発明の洗浄剤組成物は、高濃度の洗浄剤であり、要すれば、一般的には生産ラインにおいて、洗浄剤組成物の5〜100重量倍の注水で希釈し得る。
【実施例】
【0025】
以下、好ましい態様を詳細に表して、本発明を具体的に説明するが、本発明において特許請求された範囲を限定するものと解釈されない。
【0026】
[高濃度洗浄剤組成物の配合]
実施例1
本実施例では、表1に従って、アルカリ金属ヒドロキシル化合物(KOH)、非イオン性界面活性剤(CPE−212)、アニオン性界面活性剤(SAS60)、キレート剤(EDTA−4Na)、および添加剤(p−TsONa)を使用し、さらに純水を加えて、総量100gの高濃度の洗浄剤組成物を形成した。
【0027】
実施例2
本実施例では、表1に従って、アルカリ金属ヒドロキシル化合物(KOH)、非イオン性界面活性剤(CPE−212)、アニオン性界面活性剤(SS−H)、キレート剤(EDTA−4Na)、および添加剤(p−TsONa)を使用し、さらに純水を加えて、総量100gの高濃度の洗浄剤組成物を形成した。
【0028】
比較例1
本比較例では、非イオン性界面活性剤を加えなかったこと以外は、成分およびそれらの量は全て、実施例1と同様であった。
【0029】
比較例2
本比較例では、非イオン性界面活性剤を使用しなかったこと以外は、成分およびそれらの量は全て、実施例2と同様であった。
【0030】
比較例3
本比較例では、非イオン性界面活性剤としてDSP−213を使用し、他の成分およびそれらの量は実施例1と同様であった。
【0031】
【表1】

【0032】
上記の表1において、非イオン性界面活性剤、CPE−212は、
【化5】

と表され;非イオン性界面活性剤、DSP−213は、
【化6】

と表され;アニオン性界面活性剤、ホスタプア(Hostapur)SAS60(クラリアント(Clariant))は、
【化7】

と表され、式中、m1およびn1は両者とも整数であり、m1+n1=10〜14であり;アニオン性界面活性剤、ペレックス(Pelex)SS−H(花王)は、
【化8】

と表され、式中、R=C1〜C12アルキル基であり;EDTA−4Naは、
【化9】

と表され;および、p−TsONa(p−トルエンスルホン酸ナトリウム)は、
【化10】

と表される。
【0033】
[洗浄剤組成物の希釈剤の配合]
980gの注水に、表1に挙げた洗浄剤組成物20gを加え、総量1000gの洗浄剤溶液を形成した。言い換えると、洗浄剤組成物を、洗浄剤組成物の49重量倍の水で希釈した。続いて、得られた洗浄剤溶液をELSスピンディベロッパー(ELS706SA)に入れて基板を洗浄し、洗浄したガラス基板は、通常のフラットパネル・ディスプレイ(100×100mm)に使用する無アルカリガラス基板であった。
【0034】
洗浄装置は、ELSスピンディベロッパーである。
装置名:ELSスピンディベロッパー − ELS706SA
操作概要:ELS−706SA半自動ディベロッパーで、次のものを含む、以下の工程を実施した:ガラス基板の手動配置、スピン段階の開始、洗浄剤溶液の自動ファン吐出し、DIWの自動ファン吐出し、およびスピンによる乾燥。
【0035】

【0036】
[洗浄性能の評価]
ガラス基板表面に付着した種々の油性汚染物質の中で、人為的汚染物質、即ち指紋(皮脂)、および運搬装置からの一般的汚染物質、即ち機械油(グリース)を、清浄する基板上に準備した。これらの基板を使用して、油性汚染物質に対する洗浄剤組成物の洗浄性能を評価した。
光学顕微鏡(200×、10*20×)を使用して、評価を行った。
【0037】
[測定および計算]
● ガラス上の粉塵除去率(%)=
[(清浄するガラス上の粉塵粒子数)−(清浄したガラス上の粉塵粒子数)]/(清浄するガラス上の粉塵粒子数)×100%
● ガラス上の指紋除去率(%)=
[(清浄するガラス上の指紋数)−(清浄したガラス上の指紋数)]/(清浄するガラス上の指紋数)×100%
● ガラス上の機械油除去率(%)=
[(清浄するガラス上の機械油面積)−(清浄したガラス上の機械油面積)]/(清浄するガラス上の機械油面積)×100%
【0038】
接触角計測器を使用して、清浄したガラスの接触角を測定した。上記の計算および測定結果を以下の表2に挙げる。
【0039】
【表2】

【0040】
表2に従って、本発明の洗浄剤組成物は、清浄した基板上の汚染物質を最少限にすることができ、従って、優れた洗浄性能を示し得る。
【0041】
結果として、目的、手段、性能、技術、および研究計画について、本発明の特徴は、従来技術と全く異なる。しかし、上記の実施例は、説明のためのみに用いられ、以下に特許請求した通りの本発明の範囲を制限するものと解釈すべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)0.1〜20重量部の量のアルカリ金属ヒドロキシル化合物;
(B)0.1〜30重量部の量の、以下の式(I)で表される非イオン性界面活性剤:
【化1】

式中、R1は水素またはメチルであり;R2は水素またはメチルであり;nは0〜10の整数であり;および、mは4〜20の整数である;
(C)0.1〜10重量部の量のアニオン性界面活性剤;
(D)0.1〜20重量部の量のキレート剤;
(E)0.1〜20重量部の量の添加剤;および
(F)洗浄剤組成物100重量部に対する、残部の量の水
を含む、洗浄剤組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の洗浄剤組成物であって、アルカリ金属ヒドロキシル化合物が、NaOH、KOH、およびそれらの組み合わせよりなる群から選択される少なくとも一つである、洗浄剤組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の洗浄剤組成物であって、アニオン性界面活性剤が、
【化2】

式中、m1およびn1は両者とも整数であり、m1+n1=10〜14である、
【化3】

式中、R=C1〜C12アルキル基である、
および、それらの組み合わせよりなる群から選択される、少なくとも一つである、洗浄剤組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の洗浄剤組成物であって、キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸塩、ニトロ三酢酸、ニトロ三酢酸塩、およびそれらの組み合わせよりなる群から選択される、少なくとも一つである、洗浄剤組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の洗浄剤組成物であって、キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸塩、ニトロ三酢酸塩、およびそれらの組み合わせよりなる群から選択される、少なくとも一つである、洗浄剤組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の洗浄剤組成物であって、添加剤が、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、キシレンスルホン酸ナトリウム、およびそれらの組み合わせよりなる群から選択される、洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2012−82286(P2012−82286A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−228438(P2010−228438)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(598062332)エバーライト ユーエスエー、インク (13)
【Fターム(参考)】