説明

洗浄剤組成物

【課題】脂肪酸石鹸などの界面活性剤を主成分とする洗浄剤組成物において、泡質改善性を改善する水溶性高分子の分散性を向上させる配合手法を提供する。
【解決手段】水溶性高分子を他の易分散性粒子とともに造粒し、溶融石鹸液中に均一に分散させる。主剤となる脂肪酸石鹸部と、水溶性高分子と易分散性粒子とを混合・造粒した造粒物とを含み、前記造粒物は脂肪酸石鹸部に均一分散させていることを特徴とする。易分散性粒子は、ポリエチレン粉、タルク、エチルセルロースを含むことが好適である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗浄剤組成物、特に水溶性高分子の配合手法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる洗浄剤組成物は、脂肪酸石鹸などの界面活性剤を主成分として形成され、その他の保湿成分等を含めると水分の配合量は通常、50%以下となることが多い。
【0003】
一方、人体を対象とした洗浄剤組成物では、その使用感も大きな商品価値となっており、泡質、泡量、泡硬さ、泡持ち等に関し数多くの検討が行われている。さらに、弾力性、曳糸性のある泡も極めて良質の泡と認識されるが、前記各種の検討によっても泡質の改善は未だ不十分なものであった。
【0004】
その一因として、水溶性高分子の配合の難しさが挙げられる。すなわち、各種水溶性高分子を泡質改善剤として洗浄剤に配合する技術が公知であるが、水溶性高分子を直接溶融石鹸液に添加しても、いわゆる「ダマ」となってしまう。また、水溶性高分子は通常、増粘能が高いため、予め少量の水に溶解させて溶融石鹸液に添加しようとしても高粘度のゲル状となり、いずれにしても均一に溶融石鹸液に分散させることは極めて困難であった。
【0005】
そのため、従来においても泡質改善のため、各種水溶性高分子の配合が検討されてきた(特許文献1)が、泡質の改善、あるいは洗浄後の肌のツッパリ感の低減に十分な量を均一に配合することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3970861号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記従来技術に鑑みなされたものであり、その解決すべき課題は水溶性高分子を溶融石鹸液中に均一に分散させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、水溶性高分子を溶融洗浄剤に添加する手法について検討を進めた結果、水溶性高分子を他の易分散性粒子とともに造粒し、その造粒物を溶融石鹸液中に添加することにより、比較的大量の水溶性高分子が均一に分散可能となることを見いだした。
【0009】
すなわち、本発明にかかる洗浄剤組成物は、
主剤となる脂肪酸石鹸部と、
水溶性高分子と、脂肪酸石鹸部への易分散性粒子とを混合・造粒して得た造粒物と、
を含み、前記造粒物は脂肪酸石鹸部に均一分散させていることを特徴とする。
【0010】
また、前記造粒物の易分散性粒子は、ポリエチレン末、タルク、エチルセルロース、亜鉛華、ヒドロキシアパタイトのいずれかを含むことが好適である。
また、前記造粒物の水溶性高分子は、ポリアクリル酸ナトリウム、塩化ジメチルアリルアンモニウム/アクリルアミド共重合体、高重合ポリエチレングリコール、カルボキシビニルポリマー、フコイダンのいずれかを含むことが好適である。
【0011】
また、前記造粒物中、水溶性高分子は3〜15質量%配合されていることが好適である。
さらに、本発明にかかる洗浄剤組成物が固形石鹸である場合、結晶セルロースを含有することが、好適である
【0012】
以下、本発明の各構成について詳述する。
[脂肪酸石鹸部]
本発明の洗浄剤組成物で主成分として使用される脂肪酸塩における脂肪酸としては、炭素原子数が好ましくは8〜20、より好ましくは12〜18の、飽和または不飽和の脂肪酸が挙げられ、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。具体例としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、イソステアリン酸等や、それらの混合物である牛脂脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸等が挙げられる。
【0013】
脂肪酸の対イオンとしては、ナトリウム、カリウム、エタノールアミン等が例示される。
【0014】
本発明の洗浄剤組成物における、脂肪酸塩の含有量は特に制限されないが、透明固形石鹸とする場合には20〜50質量%、特に30〜40質量%であることが好ましい。この含有量が20質量%未満であると、透明性が低下したり、凝固点が低くなるため、長期保存すると表面が溶融して、商品価値を損なうおそれがある。逆に、50質量%を超えると、やはり透明性が低下したり、使用後につっぱり感が生じるおそれがある。
また、ラウリン酸石鹸とオレイン酸石鹸の合計量は全組成物中20質量%以下であることが好ましい。
【0015】
また、洗浄剤組成物を固形とする場合には、その塩を構成するナトリウムとカリウムとのモル比(ナトリウム/カリウム比)が、100/0(即ち、脂肪酸ナトリウム)〜70/30、特に90/10〜80/20であることが好ましい。このナトリウム/カリウム比が70/30を超えてカリウムの割合が多くなると、凝固点が低くなるため、長期保存すると表面が溶融して、商品価値を損なうおそれがある。また、硬度が低下したり、使用時の溶け減りが大きくなったり、高温多湿の条件下で発汗が生じたり、使用途中に表面が白濁化するおそれがある。
【0016】
[造粒物]
本発明において特徴的な造粒物は、水溶性高分子と易分散性粒子とを含む。
水溶性高分子としては、
ポリアクリル酸ナトリウム、塩化ジメチルアリルアンモニウム/アクリルアミド共重合体、塩化ジメチルアリルアンモニウム/アクリルアミド/アクリル酸共重合体等のアクリル系高分子、
カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン等のビニル系高分子、
高重合ポリエチレングリコールなどのポリエチレングリコール系高分子、
メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カチオン化セルロースなどのセルロース系高分子、
フコイダン、カラギナン、アルギン酸ナトリウム、寒天等の海藻由来物、キサンタンガム、アラビアゴム、ジェランガム、プルラン、マルメロ、ヒアルロン酸ナトリウム、ポリグルタミン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0017】
これらの中で、特に曳糸性を有し弾力性のある泡質を得ることのできるポリアクリル酸ナトリウム、塩化ジメチルアリルアンモニウム/アクリルアミド共重合体、高重合度ポリエチレングリコール、カルボキシビニルポリマー、フコイダンが好ましい。
【0018】
これらの水溶性高分子は、水に溶解した際に粘度が低ければ本発明の造粒物としなくても溶融石鹸液中に均一に分散させることが可能であるため、1%水溶液にした場合に、25℃で粘度が100mPa・S以上である場合に特に有効である。
【0019】
また、本発明において好適に用いられる易分散性粒子としては、脂肪酸溶融液への分散性の観点から、特にポリエチレン末、タルク、エチルセルロース、亜鉛華、ヒドロキシアパタイトなどが好適に例示される。
【0020】
なお、造粒方法は特に限定されないが、造粒物は少なくとも洗浄剤使用時に水溶性高分子が溶出し得る状態であることが必要である。このため、たとえば各粉末をヘンシェルミキサーなどで混合し、エタノールなどで湿潤させた後に、オンレータ等の造粒装置で造粒することが好適である。
【0021】
この際、造粒物中の水溶性高分子配合量は3〜15質量%であることが好ましい。3質量%以下では相対的に水溶性高分子の含有量が少ないため、造粒物を大量に配合する必要を生じ、一方、15質量%以上とすると造粒適性が低下する場合がある。
【0022】
[糖・ポリオール部]
本発明において、透明石鹸を得る際に好適に用いられる糖・ポリオールとしては、マルチトール、ソルビトール、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、砂糖、ピロリドンカルボン酸、ピロリドンカルボン酸ナトリウム、ヒアルロン酸、ポリオキシエチレンアルキルグルコシドエーテル等が例示され、組成物中20〜60質量%配合することが好適である。
特に、透明性とともに良好な使用性を得るため、糖・ポリオール部中、糖及び糖アルコールと、ポリオールの比は、40〜60:60〜40であることが好ましい。
【0023】
[結晶セルロース部]
本発明の洗浄剤組成物を固形石鹸として用いる場合、石鹸の使用時の膨潤、溶け崩れ防止剤として、結晶セルロース末、海面 粉末、シリカ末、アロエジル、カオリン、スメクトン、ゼオライト、ラポナイトなどの吸水性粉末を配合することが、望ましい。特に吸水性が高く、膨潤、溶け崩れ防止効果が高い結晶セルロースが好適である。配合量は1〜10であることが、望ましい。
【0024】
[両性界面活性剤]
本発明において、透明石鹸を得る際に好適に用いられる透明石鹸は、以下の両性界面活性剤を非脂肪酸石鹸系界面活性剤として含むことが好適である。
本発明の透明石鹸で使用され得る両性界面活性剤としては、下記化学式(A)〜(C)で表される両性界面活性剤が挙げられる。
【0025】
【化1】

【0026】
[式中、R1は、炭素原子数7〜21のアルキル基またはアルケニル基を表し、nおよびmは、同一または相異なって、1〜3の整数を表し、Zは、水素原子または(CH2pCOOY(ここで、pは1〜3の整数であり、Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属または有機アミンである。)を表す。]、
【0027】
【化2】

【0028】
[式中、R2は、炭素原子数7〜21のアルキル基またはアルケニル基を表し、R3およびR4は、同一または相異なって、低級アルキル基を表し、Aは、低級アルキレン基を表す。]、および
【0029】
【化3】

【0030】
[式中、R5は、炭素原子数8〜22のアルキル基またはアルケニル基を表し、R6およびR7は、同一または相異なって、低級アルキル基を表す。]。
【0031】
化学式(A)において、R1の「炭素原子数7〜21のアルキル基」は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、炭素原子数は好ましくは7〜17である。また、R1の「炭素原子数7〜21のアルケニル基」は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、炭素原子数は好ましくは7〜17である。また、Yの「アルカリ金属」としては、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、「アルカリ土類金属」としては、カルシウム、マグネシウム等が挙げられ、「有機アミン」としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0032】
化学式(A)で表される両性界面活性剤の具体例としては、イミダゾリニウムベタイン型、例えば、2−ウンデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン(ラウリン酸より合成されたもの、以下、便宜上「ラウロイルイミダゾリニウムベタイン」ともいう)、2−ヘプタデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン(ステアリン酸より合成されたもの)、ヤシ油脂肪酸より合成された2−アルキルまたはアルケニル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン(R1がC7〜C17の混合物、以下、便宜上、「ココイルイミダゾリニウムベタイン」ともいう)等が挙げられる。
【0033】
化学式(B)において、R2の「炭素原子数7〜21のアルキル基」および「炭素原子数7〜21のアルケニル基」は、化学式(A)のR1と同様である。また、R3、R4の「低級アルキル基」は、直鎖状または分岐鎖状の、好ましくは炭素原子数が1〜3のアルキル基である。さらに、Aの「低級アルキレン基」は、直鎖状または分岐鎖状の、好ましくは炭素原子数が3〜5のアルキレン基である。
【0034】
化学式(B)で表される両性界面活性剤(アミドアルキルベタイン型)の具体例としては、アミドプロピルベタイン型、例えば、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン(R2がC7〜C17の混合物)等が挙げられる。
【0035】
化学式(C)において、R5の「炭素原子数8〜22のアルキル基」は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、炭素原子数は好ましくは8〜18である。また、R5の「炭素原子数8〜22のアルケニル基」は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、炭素原子数は好ましくは8〜18である。さらに、R6、R7の「低級アルキル基」は、化学式(B)のR3、R4と同様である。
【0036】
化学式(C)で表される両性界面活性剤(アルキルベタイン型)の具体例としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸より合成されたアルキルまたはアルケニルジメチルアミノ酢酸ベタイン(R5がC8〜C18の混合物)等が挙げられる。
【0037】
本発明においては、上記化学式(A)〜(C)で表される両性界面活性剤からなる群より少なくとも1つが選択されて使用可能である。複数使用する場合、上記化学式(A)で表される両性界面活性剤を複数使用しても、上記化学式(B)で表される両性界面活性剤を複数使用しても、上記化学式(C)で表される両性界面活性剤を複数使用してもよい。
【0038】
上記の両性界面活性剤の中でも、上記化学式(A)で表される両性界面活性剤のうちのイミダゾリニウムベタイン型、特にココイルイミダゾリニウムベタインが特に好適に使用される。
【0039】
本発明の透明石鹸においては、上記の両性界面活性剤を配合することにより、脂肪酸石鹸(脂肪酸ナトリウムまたは脂肪酸のナトリウム/カリウムの混合塩)と両性界面活性剤が複合塩を形成し、硬度が向上する等の作用が発揮される。
【0040】
本発明の透明石鹸における上記の両性界面活性剤の含有量は、2〜10質量%、特に4〜8質量%が好ましい。この含有量が2質量%未満であると、凝固点が低くなるため、長期保存すると表面が溶融して、商品価値を損なうおそれがある。また、硬度が低下するおそれがある。逆に、10質量%を超えると、使用後にベタツキ感を生じ、また、長期保存すると表面が褐色に変質して商品価値を損なうおそれがある。
【0041】
[ヒドロキシアルキルエーテルカルボン酸塩型界面活性剤]
本発明にかかる石鹸にはヒドロキシアルキルエーテルカルボン酸塩型界面活性剤を添加することが好適であり、泡立ちの改善が認められる。
本発明において好適なヒドロキシアルキルエーテルカルボン酸塩型界面活性剤は下記構造(D)を有する。
【0042】
【化4】

【0043】
(式中、Rは炭素原子数4〜34の飽和又は不飽和の炭化水素基を表し;X、Xのいずれか一方は−CHCOOMを表し、他方は水素原子を表し;Mは水素原子、アルカリ金属類、アルカリ土類金属類、アンモニウム、低級アルカノールアミンカチオン、低級アルキルアミンカチオン、又は塩基性アミノ酸カチオンを表す。)
【0044】
式中、Rは芳香族炭化水素、直鎖状又は分岐状脂肪族炭化水素のいずれでもよいが、脂肪族炭化水素、特にアルキル基、アルケニル基が好ましい。例えば、ブチル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、ドコシル基、2−エチルヘキシル基、2−ヘキシルデシル基、2−オクチルウンデシル基、2−デシルテトラデシル基、2−ウンデシルヘキサデシル基、デセニル基、ドデセニル基、テトラデセニル基、ヘキサデセニル基等が好ましい例として挙げられ、中でもデシル基、ドデシル基が界面活性能力の面で優れている。
【0045】
また、式中、X、Xのいずれか一方は−CHCOOMで表されるが、Mとしては、水素原子、リチウム、カリウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、アンモニウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0046】
具体的には、上記(A)ヒドロキシアルキルエーテルカルボン酸塩型界面活性剤のうち、ドデカン−1,2−ジオールのいずれかのOH基のHが−CHCOONaで置換されたドデカン−1,2−ジオール・酢酸エーテルナトリウムが本発明で最も好ましい。
なお、本発明においてヒドロキシアルキルエーテルカルボン酸塩型界面活性剤は、泡立ちを改善する観点から0.5〜10質量%、好ましくは0.7〜5質量%配合することができる。
【0047】
[ノニオン界面活性剤]
本発明を透明石鹸に適用する場合には、好適に用いられる非脂肪酸石鹸系界面活性剤として、さらにノニオン界面活性剤を配合してもよい。使用され得るノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(以下、POEともいう)硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン2−オクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、プロピレンオキシドエチレンオキシド共重合ブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ジイソステアリン酸ポリエチレングリコール、アルキルグルコシド、ポリオキシエチレン変性シリコン(例えば、ポリオキシエチレンアルキル変性ジメチルシリコン)、ポリオキシエチレングリセリンモノステアレート、ポリオキシエチレンアルキルグルコシド等が挙げられる。
【0048】
これらは、単独で使用してもよいし、2つ以上を混合して使用してもよい。上記のノニオン界面活性剤の中でも、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、プロピレンオキシドエチレンオキシド共重合ブロックポリマーが好適に使用できる。
【0049】
本発明の透明石鹸においては、ノニオン界面活性剤を配合することにより、脂肪酸石鹸由来の刺激性低下作用が発揮される。
【0050】
本発明の透明石鹸におけるノニオン界面活性剤の含有量は、2〜15質量%、特に6〜12質量%が好ましい。この含有量が2質量%未満であると、使用後につっぱり感が生じるおそれがある。逆に、15質量%を超えると、凝固点が低くなるため、長期保存すると表面が溶融して、商品価値を損なうおそれがある。さらに、使用後にベタツキ感が生じるおそれがある。
【0051】
[キレート剤]
また、本発明にかかる洗浄剤組成物に、エデト酸3ナトリウム2水和物等のキレート剤を添加することが好適である。
【0052】
また、本発明において好適に用いられるキレート剤としては、ヒドロキシエタンジホスホン酸及びその塩が挙げられ、さらに好ましくは、ヒドロキシエタンジホスホン酸である。配合量としては、0.001〜1.0質量%であり、さらに好ましくは0.1〜0.5質量%である。ヒドロキシエタンジホスホン酸及びその塩の配合量が0.001質量%より少ない場合は、キレート効果が不十分となり、経時で黄変等の不都合を生じ、1.0質量%より多いと皮膚への刺激が強くなり、好ましくない。
【0053】
[その他]
本発明に配合され得る他の添加剤としては、上記した作用を損なわない範囲内で、次のような成分を任意に配合することができる。この任意成分としては、トリクロロカルバニリド、ヒノキチオール等の殺菌剤;油分;香料;色素;紫外線吸収剤;酸化防止剤;グリチルリチン酸ジカリウム、オオバコエキス、レシチン、サポニン、アロエ、オオバク、カミツレ等の天然抽出物;非イオン性、カチオン性あるいはアニオン性の水溶性高分子;乳酸エステル等の使用性向上剤等である。
【0054】
[水分]
本発明においては、造粒物の配合対象となる洗浄剤組成物は、水溶性高分子を直接に添加することが困難な組成物を前提としており、水分量は組成物中50質量%以下、特に30%以下である場合に、顕著に効果が発揮される。
【0055】
本発明の洗浄剤組成物の製造方法は特に限定されないが、固形石鹸とする際には各成分の混合物に枠練り法、機械練り法等の一般的な方法を適用することができる。
【発明の効果】
【0056】
以上説明したように本発明にかかる石鹸によれば、水溶性高分子を易分散性粒子とともに造粒して添加することとしたので、均一性と使用感、泡質の改善を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
本発明者らは水溶性高分子の洗浄剤組成物への配合適性を検討するため、次のような基本処方を用いて検討を行った。なお、配合量は質量%で示す。
【0058】
まず、本発明者らは、下記石鹸部、および糖・ポリオール部、水溶性高分子およびその他からなる基本処方の石鹸を用いて透明石鹸の製造を試みた。
【0059】
基本処方1
脂肪酸石鹸部 30.0%
ラウリン酸 20部
ミリスチン酸 40部
パルミチン酸 10部
ステアリン酸 20部
イソステアリン酸 5部
水酸化ナトリウムで中和
糖・ポリオール部 39.0%
ソルビトール 15部
ショ糖 14部
グリセリン 10部
その他 11.1%
エデト酸塩 0.1部
ラウリルグリコール酢酸塩 5部
POE(30)硬化ヒマシ油 5部
香料 1部
水溶性高分子 0.5%
イオン交換水 残部

【0060】
まず、本発明者らは、基本処方1において、各種水溶性高分子を直接添加して透明石鹸を製造し、評価を行った。
その結果を表1に示す。
【0061】
表1
試験例 1−1 1−2 1−3 1−4 1−5
水溶性高分子
ポリアクリル酸ナトリウム 0.5 − − − −
塩化ジメチルアリルアンモニウム
/アクリルアミド共重合体 − 0.5 − − −
高重合度ポリエチレングリコール − − 0.5 − −
フコイダン − − − 0.5 −
評価
透明性 × △ × × ◎
均一性 × △ × × ◎
泡質(弾力性) ◎ ◎ ◎ ◎ ×
しっとり感 ◎ ◎ ◎ ◎ △
泡立ち ◎ ◎ ◎ ◎ △

【0062】
なお、表1に示す試験例において、石鹸の製造は定法に従い、水溶性高分子は適当量のイオン交換水に予備溶解させた後に溶融石鹸液に添加した。
前記表1より明らかなように、水溶性高分子を加えない試験例1−5に比較し、水溶性高分子を0.5%加えた試験例1−1〜1−4においては、泡質、しっとり感、泡立ちの各評価において、優れたものとなったが、一方で透明性、均一性が低下する。これは、水溶性高分子が均一に分散しないことに起因するものである。
そこで本発明者らは、表2の造粒物を形成し、該造粒物を溶融石鹸液に添加することにより、石鹸の製造を行った。
【0063】
表2
A B C D E
ポリエチレン末 60 60 60 60 60
タルク 25 25 25 25 25
エチルセルロース 5 5 5 5 5
水溶性高分子
ポリアクリル酸ナトリウム 10 − − − −
塩化ジメチルアリルアンモニウム
/アクリルアミド共重合体 − 10 − − −
高重合度ポリエチレングリコール − − 10 − −
フコイダン − − − 10 −
カルボキシビニルポリマー − − − − 10

【0064】
なお、上記組成A〜Dをヘンシャルミキサーを用いて均一に混合粉砕後、95%エタノールを粉末100部に対して20部添加・混合し、オシレーターを用いて20メッシュにて押し出し、乾燥後、24メッシュにて整粒した。そして、篩を用いて20メッシュを通過し、60メッシュを通過しない粒子を得た。
これらの造粒物A〜Dを、水溶性高分子が試験例1−1〜1−4と同一になるように配合した試験例1−6〜1−9を調製し、評価を行った。
結果を次の表3に示す。
【0065】
表3
試験例 1−6 1−7 1−8 1−9 1−10
造粒物
A 5 − − − −
B − 5 − − −
C − − 5 − −
D − − − 5 −
E − − − − 5
評価
透明性 ○ ○ ○ ○ ○
均一性 ○ ○ ○ ○ ○
泡質(弾力性) ◎ ◎ ◎ ◎ ◎
しっとり感 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎
泡立ち ◎ ◎ ◎ ◎ ◎

【0066】
上記表3より、試験例1−6〜1−10のいずれも、タルク等の配合に伴い試験例1−5と比較すれば若干透明性が低下したが、均一性は良好であり、且つ前記試験例1−1〜1−4と比較すると、透明性の大幅な改善が認められた。

次に本発明者らはペースト状石鹸処方についても、造粒物の添加効果を確認した。
【0067】
基本処方2
脂肪酸石鹸部 25.0%
ラウリン酸 23部
ミリスチン酸 57部
ステアリン酸 20部
水酸化カリウムで中和
両性、ノニオン界面活性剤 7.0%
アシルメチルタウリン塩 5.0部
脂肪酸モノグリセリル 2.0部
糖・ポリオール部 35.0%
グリセリン 20.0部
ソルビトール 5.0部
PEG1500 10.0部
水溶性高分子 0.5%
その他 0.3%
香料 0.2部
エデト酸塩 0.1部
イオン交換水 残部

結果を表4、表5に示す。
【0068】
表4
試験例 2−1 2−2 2−3 2−4 2−5
水溶性高分子
ポリアクリル酸ナトリウム 0.5 − − − −
塩化ジメチルアリルアンモニウム
/アクリルアミド共重合体 − 0.5 − − −
高重合度ポリエチレングリコール − − 0.5 − −
フコイダン − − − 0.5 −
評価
均一性 △ △ × × ◎
泡質(弾力性) ◎ ◎ ◎ ◎ △
しっとり感 ◎ ◎ ◎ ◎ △
泡立ち ◎ ◎ ◎ ◎ △
【0069】
表5
試験例 2−6 2−7 2−8 2−9 2−10
造粒物
A 5 − − − −
B − 5 − − −
C − − 5 − −
D − − − 5 −
E − − − − 5
評価
均一性 ○ ○ ○ ○ ○
泡質(弾力性) ◎ ◎ ◎ ◎ ◎
しっとり感 ◎ ◎ ◎ ◎ ◎
泡立ち ◎ ◎ ◎ ◎ ◎

【0070】
基本処方2の系においては、粘度が低いだけに水溶性高分子を直接添加した系においても均一性が若干よくなる傾向にはあったが、前記基本処方1と同様、造粒物を添加した系では均一性の大幅な改善が認められた。
以下、本発明にかかる洗浄剤組成物の具体的組成について説明する。
【0071】
組成例1:固形石鹸
ラウリン酸 5.0
ミリスチン酸 10.0
パルミチン酸 5.0
ステアリン酸 5.0
ダイナマイトグリセリン 14.1
シリコンKF−6011 5.0
ポリエチレングリコール1500 2.0
95%エタノール 6.0
エチドロン酸4Na 0.05
EDTA−3Na 0.05
水酸化カリウム 1.23
水酸化ナトリウム 3.03
ラウリルグリコール酢酸Na 9.7
塩化ナトリウム 0.5
ショ糖・ソルビトール 10.3
イミダゾリニウムベタイン 6.1
マーコート100 0.5
PEG−60水添ヒマシ油 2.6
結晶セルロース 5.0
BHT 0.05
イオン交換水
香料 2.0
造粒物 5.0
【0072】
なお、造粒物は以下の組成である。
タルク 21.0
エチルセルロース 2.5
ポリアクリル酸Na 10.0
ポリエチレン 66.5


【特許請求の範囲】
【請求項1】
主剤となる脂肪酸石鹸部と、
水溶性高分子と、脂肪酸石鹸部への易分散性粒子とを混合・造粒した造粒物と、
を含み、前記造粒物は脂肪酸石鹸部に均一分散させていることを特徴とする洗浄剤組成物。
【請求項2】
請求項1記載の組成物において、前記造粒物の易分散性粒子は、ポリエチレン末、タルク、エチルセルロースのいずれかを含むことを特徴とする洗浄剤組成物。
【請求項3】
請求項1又は2は際の組成物において、前記造粒物の水溶性高分子は、ポリアクリル酸ナトリウム、塩化ジメチルアリルアンモニウム/アクリルアミド共重合体、高重合ポリエチレングリコール、カルボキシビニルポリマー、フコイダンのいずれかを含むことを特徴とする洗浄剤組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の組成物において、水溶性高分子は、造粒物中3〜15質量%配合されていることを特徴とする洗浄剤組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の組成物において、該組成物は固形石鹸であり、かつ結晶セルロースを含むことを特徴とする洗浄剤組成物。

【公開番号】特開2013−1860(P2013−1860A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136112(P2011−136112)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(593170702)株式会社ピーアンドピーエフ (27)
【Fターム(参考)】