説明

洗浄方法および洗浄装置

【課題】内部に形成された狭隘部を洗浄対象部位に含む被洗浄ワークを対象として、十分な洗浄性能を確保することが可能な洗浄方法および洗浄装置を提供する。
【解決手段】ノズル部品5を第1の洗浄液3および第2の洗浄液11によって2段階で順次洗浄する洗浄方法において、ワーク浸漬部2にて第2の洗浄液11の沸点温度よりも高い余熱温度に加熱された第1の洗浄液3にノズル部品5を浸漬して異物を粗除去するとともに、被洗浄面の表面温度を第2の洗浄液11の沸点温度よりも高い温度に昇温させ、ノズル部品5をワーク浸漬部2から引き上げて液切りすることにより、被洗浄面に付着した異物を第1の洗浄液3の液滴によって捕集する。この後、噴射洗浄機構6において洗浄対象部位に対して第2の洗浄液11を噴射し、異物を捕集した液滴を第2の洗浄液11が気化した蒸気の流れによって移動させて、洗浄対象部位から排除する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内部に狭隘部位を有する被洗浄ワークを洗浄する洗浄方法および洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車部品などの機械部品の製造工程では、機械加工の後にバリや切り粉、油分など、加工過程において付着した異物を除去するための洗浄が行われる。このような機械部品の洗浄方法として、従来より水系や炭化水素系などの洗浄液に被洗浄ワークを浸漬した状態で超音波振動を作用させて異物を除去する超音波洗浄が広く用いられている。この超音波洗浄では、溝や内部孔などの狭隘部位に対しては洗浄効果が不十分であり、さらにこれらの狭隘部位には洗浄液が残留しやすいことから、このような狭隘部位を有する機械部品を対象とした各種の洗浄装置が用いられるようになっている(例えば特許文献1,2参照)。
【0003】
特許文献1に示す例は減圧洗浄装置であり、減圧によって洗浄液の沸点が急激に低下して生じる突沸現象を利用して、袋穴などの狭窄部の異物を除去するようにしている。また特許文献2に示す例においては、袋穴の内部に細長い円筒体からなるノズルを挿入し、ノズルの軸線に対して垂直または斜め方向から気液混合洗浄液を噴射して、袋穴内部を洗浄するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−269750号公報
【特許文献2】特開2000−70878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで近年、洗浄対象となる機械部品は機能高度化によってより精密度が向上し、これらの精密部品を対象とする洗浄方式においては、従来と比較して格段の洗浄性能が求められるようになっている。例えば、ディーゼルエンジンの燃料噴射系に用いられるノズル部品では、排ガス対策や燃費向上の要請から噴射圧力が高圧化した結果、ノズル孔径は従来と比較して微細化しており、洗浄工程においては極めて微細な残渣まで除去することが要求されるようになっている。しかしながらこのような微細なノズル孔はノズル部品の内部に加工されていることから、従来の洗浄方式では洗浄作用を有効に洗浄対象部位に及ぼすことが困難で、必要とされる十分な洗浄性能を確保することができなかった。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、上述のノズル部品など、内部に形成された狭隘部を洗浄対象部位に含む被洗浄ワークを対象として、十分な洗浄性能を確保することが可能な洗浄方法および洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の洗浄方法は、内部に形成された狭隘部を洗浄対象部位に含み異物が前記洗浄対象部位に付着した状態の被洗浄ワークを、第1の洗浄液および前記第1の洗浄液の沸点温度よりも低い沸点温度を有する第2の洗浄液によって2段階で順次洗浄する洗浄方法であって、前記第2の洗浄液の沸点温度よりも高い温度に加熱された前記第1の洗浄液に前記被洗浄ワークを浸漬することにより、前記洗浄対象部位に付着した状態の異物を粗除去するとともに、前記洗浄対象部位の被洗浄面の表面温度を前記第2の洗浄液の沸点温度よりも高い温度に昇温させるワーク浸漬工程と、前記ワーク浸漬工程後に前記洗浄対象部位から前記第1の洗浄液を液切りして粗除去することにより、前記被洗浄面に付着して残留した前記異物を前記被洗浄面に残留した第1の洗浄液の液滴によって捕集する液切り・異物捕集工程と、前記液切り・異物捕集工程後に、前記洗浄対象部位に対して前記第2の洗浄液を供給し、前記被洗浄面に接触したこの第2の洗浄液を蒸発気化させる第2の洗浄液供給工程と、前記異物を捕集した液滴を前記第2の洗浄液が気化した蒸気の流れによって移動させることにより、前記洗浄対象部位から排除する液滴移動工程とを含む。
【0008】
本発明の洗浄装置は、内部に形成された狭隘部を洗浄対象部位に含み固形異物が前記洗浄対象部位に付着した状態の被洗浄ワークを第1の洗浄液および前記第1の洗浄液の沸点温度よりも低い沸点温度を有する第2の洗浄液によって2段階で順次洗浄する洗浄装置であって、前記第2の洗浄液の沸点温度よりも高い温度に加熱された前記第1の洗浄液に前記被洗浄ワークを浸漬することにより、前記洗浄対象部位に付着した状態の異物を粗除去するとともに、前記洗浄対象部位の被洗浄面の表面温度を前記第2の洗浄液の沸点温度よりも高い温度に昇温させるワーク浸漬部と、前記ワーク浸漬部から取り出された前記被洗浄ワークの前記洗浄対象部位から前記第1の洗浄液を液切りして粗除去することにより、前記被洗浄面に付着して残留した前記異物を前記被洗浄面に残留した第1の洗浄液の液滴によって捕集する液切り・異物捕集部と、前記洗浄対象部位に対して前記第2の洗浄液を供給する第2の洗浄液供給手段と、この第2の洗浄液供給手段を制御する制御部とを備え、前記異物を捕集した液滴を前記供給された第2の洗浄液が前記被洗浄面に接触して蒸発気化した蒸気の流れによって移動させることにより、前記洗浄対象部位から排除する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被洗浄ワークを第1の洗浄液および第1の洗浄液の沸点温度よりも低い沸点温度を有する第2の洗浄液によって2段階で順次洗浄する洗浄方法において、第2の洗浄液の沸点温度よりも高い温度に加熱された第1の洗浄液に被洗浄ワークを浸漬して異物を粗除去するとともに被洗浄面の表面温度を第2の洗浄液の沸点温度よりも高い温度に昇温させ、第1の洗浄液を液切りして被洗浄面に付着した異物を第1の洗浄液の液滴によって捕集した後に、洗浄対象部位に対して供給された第2の洗浄液が気化した蒸気の流れによって液滴を移動させる洗浄方式を採用することにより、内部に形成された狭隘部を洗浄対象部位に含む被洗浄ワークを対象として、十分な洗浄性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施の形態の洗浄装置の構成説明図
【図2】本発明の一実施の形態の洗浄方法における被洗浄ワークの断面図
【図3】本発明の一実施の形態の洗浄装置に用いられる洗浄チャンバーの断面図
【図4】本発明の一実施の形態の洗浄装置に用いられる洗浄液供給用のノズルユニットの構造説明図
【図5】本発明の一実施の形態の洗浄方法の工程説明図
【図6】本発明の一実施の形態の洗浄方法の工程説明図
【図7】本発明の一実施の形態の洗浄方法の工程説明図
【図8】本発明の一実施の形態の洗浄方法の工程説明図
【図9】本発明の一実施の形態の洗浄方法を示すタイムチャート
【図10】本発明の一実施の形態の洗浄装置に用いられる洗浄ノズルの構造説明図
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。まず図1を参照して、本発明の洗浄装置の構成を説明する。この洗浄装置は、内部に形成された狭隘部を洗浄対象部位に含み、固形異物が洗浄対象部位に付着した状態の被洗浄ワークを、沸点温度が異なる2種類の洗浄液、すなわち浸漬による粗洗浄のための第1の洗浄液および噴射による仕上げ洗浄のための第2の洗浄液によって、2段階で順次洗浄する機能を有するものである。本実施の形態においては、第2の洗浄液として、第1の洗浄液の沸点温度よりも低い沸点温度を有するものを用い、仕上げ洗浄において第2の洗浄液を蒸発気化させるようにしている。
【0012】
図1において洗浄装置1は、第1の洗浄液3に被洗浄ワークであるノズル部品5を浸漬して粗洗浄を行うワーク浸漬部2、ノズル部品5に対して第2の洗浄液11を噴射して仕上げ洗浄を行う噴射洗浄機構6および噴射洗浄機構6において使用される第2の洗浄液11を供給する洗浄液供給部10を備えた構成となっている。ワーク浸漬部2は、第1の洗浄液3を収容する浸漬槽2aおよび浸漬槽2a内の第1の洗浄液3を所定温度に加熱する加熱装置2bを備えており、加熱装置2bは制御部18によって制御される。ここでは、第1の洗浄液3は加熱装置2bによって第2の洗浄液11の沸点温度よりも高い温度に設定される予熱温度まで加熱される。
【0013】
すなわち、ワーク浸漬部2は、第2の洗浄液の沸点温度よりも高い温度に加熱された第1の洗浄液3に、被洗浄ワークであるノズル部品5を浸漬することにより、ノズル部品5の洗浄対象部位に付着した状態の異物(図5〜図8参照)を粗除去するとともに、洗浄対象部位の被洗浄面の表面温度を第2の洗浄液11の沸点温度よりも高い温度に昇温させる機能を有している。
【0014】
ここで、第1の洗浄液3および第2の洗浄液11について説明する。前述のように、第1の洗浄液3は異物を粗除去する目的で使用されることから、被洗浄ワークへの異物の付着態様に応じて必要とされる洗浄能力を有していることが求められる。例えば、異物が部品加工過程において使用された切削油などの油脂によって付着しているような場合には、油脂を溶解する性質を有するものが選定される。そしてさらに、使用される第2の洗浄液11との組み合わせにおいて、第2の洗浄液11よりも沸点温度が高いことが必要とされる。このような第1の洗浄液3、第2の洗浄液11の組み合わせとしては、例えば第1の洗浄液3として、炭化水素系洗浄液もしくはグリコールエーテル系洗浄液を用い、第2の洗浄液11として、沸点温度が低く蒸発潜熱が小さいHFE(ハイドロフルオロエーテル)などのフッ素系の洗浄液を用いることができる。
【0015】
洗浄装置1は、搬送駆動機構4aによって移動するワーククランプ部4を備えており、ワーク供給部(図示省略)によって供給されるノズル部品5をワーククランプ部4によって縦姿勢で保持し、浸漬槽2a内の第1の洗浄液3に対して昇降(矢印a)させることにより、第1の洗浄液3によるノズル部品5の粗洗浄が行われる。ワーク浸漬部2による粗洗浄は、ワーククランプ部4によってノズル部品5を第1の洗浄液3の液中で揺動させる揺動洗浄や超音波洗浄などによって行われる。
【0016】
粗洗浄後のノズル部品5は、ワーククランプ部4に保持された状態で搬送駆動機構4aによって噴射洗浄機構6に搬送される(矢印b)。噴射洗浄機構6は、内部にノズル部品5を収容して洗浄処理を行う処理室6cが形成された洗浄チャンバ6aを主体としており、処理室6cの上部は蓋開閉機構9によって駆動される蓋部材6bによって開閉自在となっている。ノズル部品5は蓋部材6bを開放した状態で、ワーククランプ部4によって処理室6c内に搬入される。搬送駆動機構4aおよび蓋開閉機構9の動作は、制御部18によって制御される。
【0017】
処理室6c内には、ノズル部品5に対してそれぞれ下方および側方から洗浄液を供給するためのノズルユニット7、8が配設されている。ノズルユニット7は下方からノズル部品5に設けられたニードル孔5g(図2参照)に向けて洗浄液を噴射する単一の洗浄ノズル7a(液噴射ノズル)を備えており、ノズルユニット8にはノズル部品5の外表面に側方から洗浄液を噴射するための複数の洗浄ノズル8aが装着されている。処理室6c内においてノズル部品5の洗浄対象部位に対して第2の洗浄液11を供給することにより、後述する仕上げ洗浄処理が行われる。
【0018】
洗浄液供給部10は、洗浄チャンバ6aの下方に配設されて洗浄処理に使用される第2の洗浄液11を収容する洗浄液タンク10aを備えており、洗浄液タンク10a内の第2の洗浄液11は、洗浄液供給管路12を介して噴射洗浄機構6に供給される。洗浄液供給管路12には、洗浄液供給ポンプ13、フィルタ14が介設されており、洗浄液タンク10aから吸引され洗浄液供給ポンプ13によって圧送された第2の洗浄液11はフィルタ14によって濾過される。
【0019】
濾過によって固形異物が分離された第2の洗浄液11は、洗浄液供給管路12から分岐した液供給管12a、12bを経由し、液供給バルブユニット15を介してノズルユニット7、8に送給される。液供給バルブユニット15は開閉バルブ15a、15bを備えており、液供給バルブユニット15を制御部18によって制御することにより、ノズルユニット7、8への洗浄液の供給を個別にオンオフすることができる。
【0020】
ノズルユニット7はエアオペレート機構を内蔵しており、ノズルユニット7にはエア供給源19から供給される制御操作用のエアは、エア供給バルブユニット16を介してエア配管19a、19bによってノズルユニット7に供給される。液供給管12aを介してノズルユニット7に洗浄液を供給した状態でエア供給バルブユニット16を制御部18によって制御することにより、洗浄ノズル7aからの第2の洗浄液11の噴射を高速でオンオフすることができるようになっている。ノズル部品5に対して供給され、洗浄処理に使用された後の第2の洗浄液11は、洗浄チャンバ6aの下部に設けられた液回収部6dを介して洗浄液タンク10a内に回収される。
【0021】
洗浄チャンバ6aの上方には処理室6cの内部を加熱するためのハロゲンランプ17が配設されている。蓋部材6bを開放した状態でドライバ17aによってハロゲンランプ17を作動させることにより、処理室6c内にはハロゲン光が照射され、これにより処理室6cの内部が加熱され、ノズル部品5が昇温する。本実施の形態においては、制御部18によってドライバ17aを制御することにより、ノズル部品5の洗浄対象部位の表面温度が、使用される第2の洗浄液11の沸点温度より高く保持されるように、加熱条件を設定する。
【0022】
ここで図2を参照して、ノズル部品5の詳細構造を説明する。ノズル部品5はディーゼルエンジンの燃料噴射系に用いられるDDL型のインジェクションノズルである。ノズル部品5は、それぞれ径寸法の異なる3つの円筒部5a、5b、5cを有する段付形状となっており、円筒部5a、5b、5cの内部には、円筒部5aの端面に開口した開孔5eおよび開孔5eから内部に連通して形成された空隙部5f、ニードル孔5gなどの狭隘部が設けられている。
【0023】
ニードル孔5gの端部は円筒部5cの先端に設けられた突部5dまで到達しており、ニードル孔5gには燃料噴射を制御するノズルニードルが嵌合し、突部5dにはニードル孔5gと連通して外部へ開孔した噴射孔5iが設けられている。ノズル部品5は、コモンレールシステムの燃料噴射系に用いられるものであり、噴射圧力が高いことから、噴射孔5iは内径が100μm程度の微細孔となっている。また円筒部5aの端面と空隙部5fの間には、燃料供給用の細孔5hが設けられている。
【0024】
このようなノズル部品5を対象とした洗浄においては、開孔5eから奥部の空隙部5f、ニードル孔5gを主な洗浄対象部位とし、被洗浄面であるニードル孔5gの内表面5jに付着した極めて微細な異物を完全に除去することが求められる。本実施の形態においては、前工程で脱脂や粗異物除去を目的とした粗洗浄工程が行われ所定の予熱温度まで加熱されたノズル部品5を対象として、上述の第2の洗浄液11による洗浄処理が仕上げ洗浄として行われる。すなわち洗浄装置1は、内部に形成された狭隘部を洗浄対象部位に含む被洗浄ワークとしてのノズル部品5を、洗浄液によって高い洗浄品質で洗浄する用途に用いられるものである。
【0025】
次に図3を参照して、噴射洗浄機構6の構造を説明する。洗浄チャンバ6aは上部が開口し下部が円錐状に絞られた円筒形状の部材であり、上方の開口部は蓋部材6bによって開閉される。図1に示す蓋開閉機構9の構成例を説明する。蓋部材6bの中央には軸部材9dが結合されており、軸部材9dは連結部材9cを介してエアアクチュエータ9aのロッド9bに連結されている。エアアクチュエータ9aを昇降駆動することにより連結部材9cが昇降し(矢印c)、これにより蓋部材6bが洗浄チャンバ6aから昇降する。蓋部材6bが上昇した状態でエアアクチュエータ9aを回転駆動することにより、連結部材9cがロッド9bの軸廻りに回転し(矢印d)、これにより蓋部材6bは洗浄チャンバ6aの上方から水平方向に離脱し、処理室6cが開放された状態となる。蓋部材6bの上面には複数の蓋クランプ機構9eが設けられており、蓋部材6bが洗浄チャンバ6aの上面に装着された状態で蓋クランプ機構9eを作動させることにより、蓋部材6bは洗浄チャンバ6aの本体にクランプされ、処理室6cの上方が閉塞される。
【0026】
処理室6c内においてノズル部品5を保持するワーク保持機構20について説明する。洗浄チャンバ6aの一方側の側面にはベアリングを内蔵した軸受けブロック21が固着されており、軸受けブロック21は洗浄チャンバ6aを貫通して水平姿勢で配設された回転軸22を回転自在に支持する。回転軸22には同軸の駆動ロッド23が相互に回転自在にまた水平方向に摺動自在に挿通している。回転軸22が処理室6c内に突出した一端部にはクランプ機構24が結合されており、クランプ機構24にはノズル部品5を側面からクランプして把持するためのクランプ部材25が装着されている。
【0027】
回転軸22にはプーリ26が結合されており、プーリ26とモータ29の回転軸29aに結合されたプーリ28にはベルト27が調帯されている。モータ29を駆動することにより回転軸22が回転し(矢印e)、これにより、クランプ部材25によって把持されたノズル部品5が垂直面内で回動する。このノズル部品5の回動は、ノズル部品5を水平面と所定の傾斜角(ここでは90°)をなす傾斜面内で移動させることにより、ノズル部品5の洗浄対象部位であるニードル孔5gを傾斜姿勢にするために行われる。
【0028】
回転軸22を挿通して設けられた駆動ロッド23の一端部はクランプ機構24に結合されており、駆動ロッド23の他端部は回転接手31を介してシリンダ30のロッド30aに結合されている。シリンダ30を駆動することにより駆動ロッド23が往復動し(矢印f)、これによりクランプ機構24が駆動されて、2つのクランプ部材25がノズル部品5をクランプして把持するための開閉動作を行う。
【0029】
洗浄処理は、ノズル部品5がクランプ部材25によってクランプされた状態で行われる。この洗浄処理において、第2の洗浄液11はノズル部品5に対して下方からノズルユニット7の洗浄ノズル7aによって噴射され、側方からノズルユニット8の洗浄ノズル8aによって噴射される。このとき、洗浄ノズル7aは、ニードル孔5g内に第2の洗浄液11が供給されるよう、ノズル部品5における開孔5eの位置に対応して配置され、洗浄ノズル8aはノズル部品5の側面における洗浄対象部位の位置に応じて配置される。
【0030】
この洗浄処理においては、前工程で予め余熱温度まで加熱されたノズル部品5を対象とし、ニードル孔5gの内部の内表面5jなど加熱された被洗浄面に第2の洗浄液11を供給して接触させ、この第2の洗浄液11と被洗浄面との接触によって第2の洗浄液11を蒸発気化させる。そして発生した蒸気を被洗浄面に沿って流動させ、被洗浄面に付着した異物を捕集した液滴を洗浄対象部位であるニードル孔5gの内部から蒸気によって液滴ごと除去するようにしている。本実施の形態においては、後述するように、第2の洗浄液11を被洗浄面に供給するための噴射をノズルユニット7によって予め設定された所定のインターバルで間歇的に行うようにしている。これにより、異物を捕集した液滴のニードル孔5gからの排出が、後続して噴射される第2の洗浄液11によって阻害されることを防止することができる。
【0031】
上記構成において、ワーク保持機構20は少なくとも洗浄対象部位の被洗浄面の表面温度が第2の洗浄液11の沸点温度以上に加熱された被洗浄ワークであるノズル部品5を保持する保持手段となっている。そして前述の洗浄液供給部10および以下に説明するノズルユニット7は、この保持手段に保持された被洗浄ワークであるノズル部品5の洗浄対象部位に対して第2の洗浄液11を予め設定された噴射インターバル毎に間歇的に噴射して供給する第2の洗浄液供給手段となっている。この第2の洗浄液供給手段は、制御部18によって制御される。
【0032】
ここで図4を参照して、ノズルユニット7の構造および機能を説明する。前述のように、ここでは第2の洗浄液11の噴射を予め設定された噴射インターバル毎に間歇的に行うことから、噴射動作のタイミングを任意に制御可能なエアオペレート機構を備えたノズルユニット7を採用している。本実施の形態においては、ノズルユニット7に対してエア供給バルブユニット16から出力される操作エアを制御部18によって制御することにより、洗浄ノズル7aから第2の洗浄液11が噴射される噴射継続時間および噴射インターバルを、洗浄対象に応じて適宜設定するようにしている。
【0033】
図4(a)に示すように、ノズルユニット7は略円筒形状の本体部7bから洗浄ノズル7aを延出させた構成となっており、本体部7bの側面には洗浄液供給用の液供給管12aおよびパイロットエア供給用のエア配管19a、19bが接続されている。洗浄ノズル7aの先端部に開孔したノズル孔7cは、本体部7bの内部に設けられた内部摺動孔7eと連通しており、ノズル孔7cと内部摺動孔7eとの境界部は、以下に説明するバルブプランジャ32によって開閉されるバルブシート7dとなっている。内部摺動孔7eは内径が内部摺動孔7eよりも大きいエア駆動摺動孔7fと連通しており、内部摺動孔7e、エア駆動摺動孔7fには、バルブプランジャ32がスライド自在に装着されている。
【0034】
バルブプランジャ32は、先端部にバルブシート7dと接離するシール部32bが設けられたバルブシャフト32aに、内部摺動孔7eに嵌合してスライドするスライドガイド32cおよびエア駆動摺動孔7fに嵌合してスライドするピストン32dを一体に設けた構成となっている。ピストン32dはスプリング33によって常に矢印f方向、すなわちシール部32bをバルブシート7dに押しつける方向に付勢されている。
【0035】
内部摺動孔7eには液供給管12aが接続されており、液供給管12aから第2の洗浄液11を供給することにより(矢印h)、内部摺動孔7e内には第2の洗浄液11が流入する。ピストン32dが嵌合した状態においてエア駆動摺動孔7fは第1気室7g、第2気室7hに仕切られ、第1気室7g、第2気室7hにはそれぞれエア配管19a、19bが接続されている。図4(a)に示す状態においては、スプリング33の付勢力によってシール部32bがバルブシート7dに押しつけられることにより、内部摺動孔7eの内部とノズル孔7cとは遮断されており、液供給管12aから供給された第2の洗浄液11はノズル孔7cから噴射されない。
【0036】
第2の洗浄液11を噴射する場合には、エア供給バルブユニット16(図1)を作動させて、図4(b)に示すように、エア配管19aから操作エアを供給して(矢印j)第1気室7g内を加圧する。これによりピストン32dがスプリング33の付勢力に抗して押圧され、バルブプランジャ32が矢印i方向にスライドしてシール部32bがバルブシート7dから離隔する。これにより、液供給管12aから供給される第2の洗浄液11は内部摺動孔7e、ノズル孔7cを介して洗浄ノズル7aの先端部から噴射される(矢印m)。噴射を停止する場合には、エア供給バルブユニット16を作動させて、エア配管19bから操作エアを供給する(矢印k)ことにより速やかに図4(a)に示す状態に戻り、ノズル孔7cからの第2の洗浄液11の噴射が停止する。
【0037】
次に図5〜図9を参照して、洗浄装置1を用いてノズル部品5を第1の洗浄液3および第2の洗浄液11によって2段階で順次洗浄する洗浄方法について説明する。なお図5〜図8においては、ノズル部品5においてニードル孔5gのみを示して、その他の部分の詳細の図示を省略している。ノズル部品5の洗浄処理においては、まず図5(a)に示すように、ノズル部品5を保持したワーククランプ部4をワーク浸漬部2に移動させ、浸漬槽2a内の第1の洗浄液3に対して下降させてノズル部品5を第1の洗浄液3に浸漬した状態で、ノズル部品5を上下動させる(矢印n)。
【0038】
図5(b)は、粗洗浄処理の前のノズル部品5の断面を示しており、被洗浄面である内表面5jには、サイズが大きく除去が容易な異物38や、除去が困難な微細異物38aが付着している。なお、請求項記載における「異物」は、異物38および微細異物38aを含む概念であるが、異物38と微細異物38aとはサイズ的に区分されるものではなく、微細異物38aは微細であるが故に除去が困難で粗洗浄において除去されずに残留したものを意味している。
【0039】
ノズル部品5を第1の洗浄液3に浸漬する粗洗浄により、図5(c)に示すように、サイズが大きい異物38が内表面5jから除去され、ニードル孔5g内には単なる浸漬洗浄では除去が困難な微細異物38aが残留している。この浸漬洗浄においては、第1の洗浄液3は予め所定温度(第2の洗浄液11の沸点温度よりも高い温度)に設定されるノズル部品5の予熱温度まで加熱されていることから、この洗浄過程において、ニードル孔5g内の内表面5jの温度は予熱温度まで昇温する。
【0040】
すなわちワーク浸漬部2による浸漬洗浄においては、第2の洗浄液11の沸点温度よりも高い温度に加熱された第1の洗浄液3にノズル部品5を浸漬することにより、洗浄対象部位に付着した状態の異物38を粗除去するとともに、洗浄対象部位の被洗浄面の表面温度を第2の洗浄液11の沸点温度よりも高い温度に昇温させる(ワーク浸漬工程)。
【0041】
この後、図6(a)に示すように、ワーククランプ部4を上昇させることにより(矢印p)、ノズル部品5を第1の洗浄液3から引き上げて所定時間保持する。これにより、ノズル部品5の外面やニードル孔5gの内表面5jに付着した第1の洗浄液3が落下して液切りが行われる。このときの液切りは液滴の粗除去であり、図6(b)に示すように、ニードル孔5g内の内表面5jには微細な液滴3*が残留する。このとき、第1の洗浄液3は内表面5jにおいて表面張力によって凝集し、微細異物38aが付着した部位においては、第1の洗浄液3が微細異物38aを包み込んで捕集することにより、内部に微細異物38aを含んだ異物液滴3aが形成される。
【0042】
すなわちここでは、ワーク浸漬工程後に洗浄対象部位であるニードル孔5gから第1の洗浄液3を液切りして粗除去することにより、被洗浄面5jに付着して残留した微細異物38aを、被洗浄面5jに残留した第1の洗浄液3の液滴によって捕集する(液切り・異物捕集工程)。そして洗浄装置1の構成において、ノズル部品5を第1の洗浄液3から引き上げて保持するワーククランプ部4および搬送駆動機構4aは、ワーク浸漬部2から取り出されたノズル部品5の洗浄対象部位から第1の洗浄液3を液切りして粗除去することにより、被洗浄面に付着した微細異物38aを被洗浄面に残留した第1の洗浄液3の液滴によって捕集する液切り・異物捕集部としての機能を有している。
【0043】
この後、ノズル部品5は噴射洗浄機構6へ搬送される。すなわちワーククランプ部4を噴射洗浄機構6へ移動させて、処理室6c内に下降させ、ノズル部品5をクランプ部材25によってクランプする。これにより、図7の各図に示すように、ノズル部品5はノズルユニット7の上方に位置する。図7(a)は、洗浄ノズル7aによって開孔5eに対して第2の洗浄液11を噴射により供給した状態を示している。この第2の洗浄液11の噴射により、ニードル孔5g内には液滴11が進入し、被洗浄面である内表面5jに接触し、さらにニードル孔5gの奥部まで到達する。すなわち本実施の形態においては、洗浄対象部位に含まれる狭隘部は、被洗浄ワークであるノズル部品5の表面に開孔した止まり穴であるニードル孔5gの内部であり、ニードル孔5g外部から開孔5eを介して被洗浄面へ第2の洗浄液11を噴射して供給するようにしている。
【0044】
このように第2の洗浄液11が供給された状態において、ノズル部品5は予め加熱されて内表面5jの表面温度は第2の洗浄液11の沸点温度よりも高い温度となっていることから、第2の洗浄液11は内表面5jに接触することによって蒸発気化して蒸気11aとなる。すなわちここでは、液切り・異物捕集工程後に、洗浄対象部位に対して第2の洗浄液11を供給し、被洗浄面に接触したこの第2の洗浄液11を蒸発気化させる(第2の洗浄液供給工程)。
【0045】
そして第2の洗浄液11が継続的に供給されて蒸発気化する蒸気11aの量が増大することにより、ニードル孔5g内において凹部から開孔5eに向かう蒸気11aの流れが発生し、液滴3*や異物液滴3aはこの蒸気11aの流動により開孔5eに向かって移動する。すなわちここでは、微細異物38aを捕集した異物液滴3aを、第2の洗浄液11が気化した蒸気11aの流れによって移動させることにより、洗浄対象部位から排除する(液滴移動工程)。
【0046】
そして図7(c)に示すように、このようにして微細異物38aを捕集した異物液滴3aが開孔5eから外部に排出されることにより、内表面5jに付着した状態で残留した微細異物38aはニードル孔5gから除去される。この異物液滴3aの排出は、第2の洗浄液11が蒸発気化した蒸気11aの流れによる流動と共に、ノズル部品5を垂直面内で回動させてニードル孔5gを下向きにして異物液滴3aを重力によって落下流動させることによって行われる。
【0047】
図8は、被洗浄ワークであるノズル部品5の加工工程において、切削剤などに油脂成分を含むものが使用された場合における洗浄の状態を示している。すなわちこの場合には、図8(a)に示すように、異物38や微細異物38aはいずれもニードル孔5g内において油脂39によって内表面5jに付着している。このような場合には、第1の洗浄液3として油脂を溶解する性質を有する洗浄剤を使用する。そしてこのような第1の洗浄液3を用いた粗洗浄により、図8(b)に示すように、油脂39が第1の洗浄液3によって溶解することにより、除去が容易な異物38が洗浄対象部位から除去される。この結果図8(c)に示すように、ニードル孔5g内部の洗浄対象部位には、除去が困難な微細異物38aのみが付着して残留する。
【0048】
そして第1の洗浄液3からノズル部品5を引き上げて液切りを行った後には、図6(b)に示す状態と同様に、微細異物38aが第1の洗浄液3によって捕集された異物液滴3aがニードル孔5g内部の洗浄対象部位に付着残留した状態となる。この場合においても、図7に示す第2の洗浄液供給工程を実行することにより、異物38aを捕集した液滴3aを、第2の洗浄液11が気化した蒸気11aの流れによって洗浄対象部位から排除することができる。
【0049】
本実施の形態では、第2の洗浄液供給工程において、第2の洗浄液11のニードル孔5g内への噴射を間歇的に複数回行うようにしていることから、図7に示す工程が複数回反復される。図9は、このような形態で行われる異物除去工程の構成をタイムチャートの形で示したものである。すなわち本実施の形態における第2の洗浄液供給工程は、ノズルユニット7によって第2の洗浄液11を予め設定された噴射継続時間T1だけ噴射する都度、図7(a)〜図7(c)の工程を実行する単位工程1,2,・・により構成される。
【0050】
単位工程1,2・・においては、図9に示すように、洗浄対象部位に対して第2の洗浄液11を予め設定された噴射インターバルT2毎に複数回噴射して供給する洗浄液間歇噴射工程A1,A2・・(図7(a))と、被洗浄面に接触した第2の洗浄液11が蒸発気化することにより蒸気11aがニードル孔5gの奥部から開孔5eに向かって流動する状態を発生させる蒸気流動状態形成工程B1,B2・・(図7(b))と、微細異物38aを捕集した異物液滴3aを第2の洗浄液11が気化した蒸気11aの流れによって移動させることにより洗浄対象部位から排除する液滴移動工程C1,C2・・(図7(c))とが実行される。なお洗浄液間歇噴射工程、蒸気流動状態形成工程および液滴移動工程は、時間的に画然と区分されるものではなく、第2の洗浄液11の噴射を起点として、後続する複数の工程が部分的に同時並行して進行するものである。
【0051】
ここで、洗浄液間歇噴射工程Aにおける噴射インターバルT2は、先行して供給された第2の洗浄液11についての蒸気流動状態形成工程および液滴移動工程が完了した後に、後続して供給される第2の洗浄液11が噴射されるように設定される。すなわち、図9に示すように、単位工程1における最終の工程である液滴移動工程C1が完了した後に、単位工程2の洗浄液間歇噴射工程A2が開始されるように、噴射インターバルT2が設定される。
【0052】
そしてこのようにして設定された噴射インターバルT2に基づいて、制御部18が液供給バルブユニット15,エア供給バルブユニット16を制御することにより、上述の異物除去工程が実行される。これにより、異物38を捕集した液滴11aの排出が後続して供給される第2の洗浄液11によって阻害されることがなく、ニードル孔5gなどの止まり穴(例えば直径4mm、深さ40mm程度)を対象として、良好な洗浄結果を確保することができる。噴射継続時間T1としては、0.03秒〜0.1秒、噴射インターバルT2としては、0.1秒〜0.5秒程度が望ましい。そして単位工程の反復サイクル数は、3回程度に設定される。
【0053】
なお本実施の形態に示すノズル部品5のように、洗浄対象部位としての止まり穴であるニードル孔5gが1つのみである場合には、予めニードル孔5gの開孔5eが下向きになるようにセットすれば、ノズル部品5を回動させる必要はない。これに対し、洗浄対象部位としての止り穴が異なる方向に複数設けられた被洗浄ワークを対象とする場合には、これらの止り穴の開孔が順次下向きとなるように被洗浄ワークを回動させる。この被洗浄ワークの移動の形態としては、洗浄対象部位を傾斜姿勢にすることが可能な形態であれば、垂直面内での回動以外にも傾斜面内での回動や、水平軸廻りの揺動など、各種の動作パターンを選定することができる。
【0054】
また上記実施の形態においては、ノズル部品5を前工程において予め所定の処理温度まで加熱しておき、さらにハロゲンランプ17によってハロゲン光を照射してさらにノズル部品5を加熱することにより、ノズル部品5を第2の洗浄液11の沸点温度よりも高い温度に保持するようにしているが、上述の異物除去工程においてクランプ部材25に把持されて保持されたノズル部品5に加熱手段によって熱を供給して加熱し、少なくともニードル孔5gの内表面5jを第2の洗浄液11の沸点温度よりも高い温度に保持するようにしてもよい。この加熱手段としては、ノズル部品5に直接接触して保持するクランプ部材25を介して、電気ヒータなどの熱源からの熱をノズル部品5に伝達する方法を用いることができる。
【0055】
なおノズル部品5のニードル孔5gの内部を洗浄対象とする場合のように、洗浄対象の狭隘部が被洗浄ワークの表面に開孔した止まり穴の内部であるような場合には、図10に示すようなノズルユニットを用いることができる。ここで示すノズルユニットは、図4に示すノズルユニット7に、液滴吸引用部材34を付加した構成の洗浄ノズルとなっている。液滴吸引用部材34は開孔5eに対向して近接する位置に設けられた吸引用開口34aを備えており、吸引用開口34aは吸引路34bを介して吸引装置35に接続されている。吸引装置35としては、エダクタなど液体を吸引可能なものがもちいられ、吸引装置35を駆動することにより吸引用開口34aから吸引する。洗浄ノズル7aから液滴11aを吐出しながらニードル孔5gの内部を洗浄する際に吸引装置35を駆動することにより、ニードル孔5g内を洗浄した後に開孔5eから排出される液滴11aは、吸引用開口34aから周囲の空気と共に吸引される。
【0056】
すなわち、洗浄ノズル7aに設けられた吸引用開口34aおよび吸引装置35は、ノズル部品5の表面におけるニードル孔5gの開孔5eに近接して設けられ、ニードル孔5gの洗浄に用いられて開孔5eから排出される洗浄液を吸引して除去する洗浄液吸引手段となっている。このような洗浄液吸引手段を備えることにより、開孔5eから排出される異物を含んだ液滴11aがノズル部品5の外面に再付着して汚染することが防止される。
【0057】
また上述例においては、被洗浄ワークがディーゼルエンジンの燃料噴射系に用いられるDDL型のノズル部品5である場合を示したが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、洗浄対象部位となる狭隘部を有するものであれば、より複雑な形状を有する部品であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の洗浄方法および洗浄装置は、内部に形成された狭隘部を洗浄対象部位に含む被洗浄ワークを対象として、十分な洗浄性能を確保することができるという特徴を有し、自動車部品などの精密加工部品の洗浄の用途に有用である。
【符号の説明】
【0059】
1 洗浄装置
2 ワーク浸漬部
3 第1の洗浄液
4 ワーククランプ部
5 ノズル部品
5g ニードル孔
5j 内表面
6 噴射洗浄機構
7、8 ノズルユニット
10 洗浄液供給部
11 第2の洗浄液
11a 蒸気
38 異物
38a 微細異物
39 油脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に形成された狭隘部を洗浄対象部位に含み異物が前記洗浄対象部位に付着した状態の被洗浄ワークを、第1の洗浄液および前記第1の洗浄液の沸点温度よりも低い沸点温度を有する第2の洗浄液によって2段階で順次洗浄する洗浄方法であって、
前記第2の洗浄液の沸点温度よりも高い温度に加熱された前記第1の洗浄液に前記被洗浄ワークを浸漬することにより、前記洗浄対象部位に付着した状態の異物を粗除去するとともに、前記洗浄対象部位の被洗浄面の表面温度を前記第2の洗浄液の沸点温度よりも高い温度に昇温させるワーク浸漬工程と、
前記ワーク浸漬工程後に前記洗浄対象部位から前記第1の洗浄液を液切りして粗除去することにより、前記被洗浄面に付着して残留した前記異物を前記被洗浄面に残留した第1の洗浄液の液滴によって捕集する液切り・異物捕集工程と、
前記液切り・異物捕集工程後に、前記洗浄対象部位に対して前記第2の洗浄液を供給し、前記被洗浄面に接触したこの第2の洗浄液を蒸発気化させる第2の洗浄液供給工程と、
前記異物を捕集した液滴を、前記第2の洗浄液が気化した蒸気の流れによって移動させることにより、前記洗浄対象部位から排除する液滴移動工程とを含むことを特徴とする洗浄方法。
【請求項2】
前記第2の洗浄液供給工程において、前記洗浄対象部位に対して前記第2の洗浄液を予め設定された噴射インターバル毎に複数回噴射して供給し、先行して供給された第2の洗浄液についての前記液滴移動工程が完了した後に、後続して供給される前記第2の洗浄液が噴射されるように、前記噴射インターバルを設定することを特徴とする請求項1記載の洗浄方法。
【請求項3】
前記狭隘部は前記被洗浄ワークの表面に開孔した止まり穴の内部であり、前記止まり穴の外部から前記被洗浄面へ前記第2の洗浄液を噴射して供給することを特徴とする請求項1または2記載の洗浄方法。
【請求項4】
前記洗浄対象部位の洗浄に用いられて前記開孔から排出される第2の洗浄液をこの開孔に近接して設けられた洗浄液吸引手段によって吸引して除去することを特徴とする請求項3記載の洗浄方法。
【請求項5】
前記異物は油脂によって前記洗浄対象部位に付着しており、前記第1の洗浄液として前記油脂を溶解する性質を有する洗浄剤を使用することを特徴とする請求1乃至4のいずれかに記載の洗浄方法。
【請求項6】
内部に形成された狭隘部を洗浄対象部位に含み固形異物が前記洗浄対象部位に付着した状態の被洗浄ワークを第1の洗浄液および前記第1の洗浄液の沸点温度よりも低い沸点温度を有する第2の洗浄液によって2段階で順次洗浄する洗浄装置であって、
前記第2の洗浄液の沸点温度よりも高い温度に加熱された前記第1の洗浄液に前記被洗浄ワークを浸漬することにより、前記洗浄対象部位に付着した状態の異物を粗除去するとともに、前記洗浄対象部位の被洗浄面の表面温度を前記第2の洗浄液の沸点温度よりも高い温度に昇温させるワーク浸漬部と、
前記ワーク浸漬部から取り出された前記被洗浄ワークの前記洗浄対象部位から前記第1の洗浄液を液切りして粗除去することにより、前記被洗浄面に付着して残留した前記異物を前記被洗浄面に残留した第1の洗浄液の液滴によって捕集する液切り・異物捕集部と、
前記洗浄対象部位に対して前記第2の洗浄液を供給する第2の洗浄液供給手段と、この第2の洗浄液供給手段を制御する制御部とを備え、
前記異物を捕集した液滴を、前記供給された第2の洗浄液が前記被洗浄面に接触して蒸発気化した蒸気の流れによって移動させることにより、前記洗浄対象部位から排除することを特徴とする洗浄装置。
【請求項7】
前記制御部が前記第2の洗浄液供給手段を制御することにより、前記洗浄対象部位に対して前記第2の洗浄液を予め設定された噴射インターバル毎に複数回噴射して供給し、先行して供給された第2の洗浄液についての前記液滴の移動が完了した後に、後続して供給される前記第2の洗浄液が噴射されるように、前記噴射インターバルを設定することを特徴とする請求項6記載の洗浄装置。
【請求項8】
前記狭隘部は前記被洗浄ワークの表面に開孔した止まり穴の内部であり、前記止まり穴の外部から前記被洗浄面へ前記第2の洗浄液を噴射して供給する液噴射ノズルを備えたことを特徴とする請求項6または7記載の洗浄装置。
【請求項9】
前記被洗浄ワークの表面における前記止まり穴の開孔に近接して設けられ、前記洗浄対象部位の洗浄に用いられて前記開孔から排出される前記第2の洗浄液を吸引して除去する洗浄液吸引手段を備えたことを特徴とする請求項8記載の洗浄装置。
【請求項10】
前記異物は油脂によって前記洗浄対象部位に付着しており、前記第1の洗浄液として前記油脂を溶解する性質を有する洗浄剤を使用することを特徴とする請求項6乃至9のいずれかに記載の洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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