説明

洗浄方法と洗浄装置

【課題】洗浄液の使用量を少なくしながら、被洗浄物の微細な隙間から窪みまで綺麗に洗浄する。
【解決手段】洗浄方法は、洗浄液Wを超音波振動させてミストMとし、このミストMを被洗浄物Hの表面に供給して被洗浄物Hを洗浄する。
洗浄装置は、洗浄液Wを超音波振動させてミストMに霧化する超音波霧化機1と、この超音波霧化機1で霧化されたミストMを被洗浄物Hの表面に供給する供給部5とを備える。超音波霧化機1は、洗浄液Wを入れる超音波霧化室4と、この超音波霧化室4の洗浄液Wを超音波振動させてミストMに霧化する超音波振動子2と、超音波振動子2に高周波電力を供給する超音波電源3とを備える。洗浄装置は、超音波霧化機1で霧化されたミストMを供給部5から被洗浄物Hの表面に供給して、被洗浄物Hを洗浄する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物の洗浄方法と洗浄装置に関し、とくに半導体の洗浄に適している洗浄方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体は洗浄液に浸漬され、あるいは洗浄液を噴射して洗浄される。洗浄液は、汚れを溶解して除去する溶媒が使用される。洗浄液の溶媒は気化しやすく、気化した洗浄液が作業環境を悪くする原因となる。したがって、洗浄液の使用量を少なくして作業環境を向上できる。少量の洗浄液で洗浄する方法として、洗浄液をノズルから霧状に噴射して、これを被洗浄物の表面に噴射する方法が開発されている。(特許文献1ないし4参照)
【特許文献1】特開2006−41065号公報
【特許文献2】特開2005−349301号公報
【特許文献3】特開2004−335838号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これらの公報に記載される洗浄方法は、洗浄液の使用量を少なくできる特徴はあるが、被洗浄物の表面全体を綺麗に洗浄できないという欠点がある。とくに、半導体集積回路等の微細な隙間や空隙を綺麗に洗浄できない欠点がある。霧状の洗浄液を被洗浄物表面の狭い隙間や窪みに効果的に進入させることができないからである。
【0004】
本発明は、さらにこの欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、洗浄液の使用量を少なくしながら、被洗浄物の微細な隙間から窪みまで綺麗に洗浄できる洗浄方法と洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の洗浄方法は、前述の目的を達成するために以下の構成を備える。
洗浄方法は、洗浄液Wを超音波振動させてミストMとし、このミストMを被洗浄物Hの表面に供給して被洗浄物Hを洗浄する。
【0006】
本発明の洗浄方法は、洗浄液Wを超音波振動させてミストMとし、このミストMに搬送気体を供給し、この搬送気体を介してミストMを被洗浄物Hの表面に吹き付けて被洗浄物Hを洗浄することができる。さらに、本発明の洗浄方法は、搬送気体の風量を、洗浄液Wを超音波振動させる超音波振動子2の入力電力1Wに対して1リットル/分以上とすることができる。
【0007】
本発明の洗浄方法は、洗浄液Wを超音波振動させてミストMとし、このミストMに含まれる大粒のミストをデミスタ38で除去して被洗浄物Hの表面に供給することができる。さらに、本発明の洗浄方法は、洗浄液Wを揮発性の液体とすることができる。
【0008】
本発明の洗浄装置は、前述の目的を達成するために以下の構成を備える。
洗浄装置は、洗浄液Wを超音波振動させてミストMに霧化する超音波霧化機1と、この超音波霧化機1で霧化されたミストMを被洗浄物Hの表面に供給する供給部5とを備える。超音波霧化機1は、洗浄液Wを入れる超音波霧化室4と、この超音波霧化室4の洗浄液Wを超音波振動させてミストMに霧化する超音波振動子2と、超音波振動子2に高周波電力を供給する超音波電源3とを備える。洗浄装置は、超音波霧化機1で霧化されたミストMを供給部5から被洗浄物Hの表面に供給して、被洗浄物Hを洗浄する。
【0009】
本発明の洗浄装置は、超音波霧化室4に搬送気体を強制送風する気体供給源8を備えることができる。本発明の洗浄装置は、気体供給源8が、超音波振動子2の入力電力1Wに対して、1リットル/分以上の風量で超音波霧化室4に搬送気体を強制送風することができる。また、本発明の洗浄装置は、気体供給源8が、超音波霧化室4に送風する搬送気体の風量を変化させる風量変化機構37を有することができる。さらに、本発明の洗浄装置は、搬送気体を空気とすることができる。さらにまた、本発明の洗浄装置は、ミストMを含む搬送気体の通路に、大粒のミストを除去するデミスタ38を設けることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の洗浄方法と洗浄装置は、被洗浄物を洗浄液に浸漬し、あるいは洗浄液を直接に被洗浄物の表面にかける従来の方法に比較して、洗浄液の使用量を少なくして洗浄環境を改善しながら、被洗浄物の微細な隙間や窪みも綺麗に洗浄できる特徴がある。それは、本発明が、洗浄液を超音波振動してミストとすることで、ナノサイズの極微細な粒子として被洗浄物の表面に供給するからである。ナノサイズの極微細な粒子となった洗浄液は、被洗浄物の表面にある微細な隙間や窪みにもスムーズに進入して、汚れを綺麗に洗浄する。さらに、洗浄液をナノサイズの極微細な粒子とすることによって、少量の洗浄液で膨大な数の洗浄液粒子が得られ、これらが被洗浄物の表面に供給され、微細な隙間や窪みにも進入して、くまなく綺麗に洗浄する。このため、使用する洗浄液量を少なく制限しながら、被洗浄物を綺麗に洗浄できるという、極めて優れた特徴を実現する。
【0011】
また、本発明の請求項2の洗浄方法と請求項7の洗浄装置は、洗浄液を超音波振動させてミストとし、このミストを搬送気体で被洗浄物の表面に吹き付けて洗浄するので、洗浄液の微細粒子を被洗浄物の表面に勢いよく衝突させて、汚れを綺麗に除去できる。また、洗浄液の微細粒子に溶解された汚れを、搬送気体で吹き飛ばして綺麗にできる特徴もある。
【0012】
また、本発明の請求項3の洗浄方法と請求項8の洗浄装置は、多量の搬送気体でもって、洗浄液を効率よく極微細な粒子として、被洗浄物を綺麗に洗浄できる。それは、洗浄液がミストに霧化される効率を、搬送気体の供給量を多くして向上でき、また、搬送気体を多くして、洗浄液をより微細なミストにできるからである。
【0013】
さらに、本発明の請求項4の洗浄方法と請求項11の洗浄装置は、超音波振動して得られるミストから、大粒のものをデミスタで除去して被洗浄物の表面に供給するので、微細なミストの洗浄液でもって被洗浄物の微細な隙間等を効果的に洗浄できる特徴がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための洗浄方法と洗浄装置を例示するものであって、本発明は洗浄方法と洗浄装置を以下のものに特定しない。
【0015】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0016】
本発明の洗浄方法と洗浄装置は、洗浄液を超音波振動させてミストに霧化する。霧化された洗浄液を被洗浄物の表面に供給し、ミストの洗浄液で被洗浄物の表面を洗浄する。本発明は、洗浄液を微細なミストの状態で被洗浄物の表面に供給して、被洗浄物表面の微細な隙間から窪みまで綺麗に洗浄する。洗浄液のミストは、粒径を小さくして狭い隙間や窪みに進入できる。洗浄液を噴霧して洗浄される半導体集積回路等は、高密度化するために、ミクロンサイズよりもさらに小さい寸法で加工されている。高密度な集積回路は、ミクロンサイズよりもさらに狭い隙間や窪みがあり、ここを綺麗に洗浄することが要求される。本発明の洗浄方法と装置は、このような微細な隙間や窪みも綺麗に洗浄するために、洗浄液を超音波振動で霧化してナノサイズの微細な粒子とする。
【0017】
超音波振動で霧化される洗浄液ミストは、洗浄液の種類、ミストに供給する風量、洗浄液の温度、超音波振動子の振動周波数で粒径をコントロールできる。洗浄液は、種類によりミストの粒径が変化する。たとえば、30℃のエチルアルコールを超音波振動させて得られるミストの粒径は1nmとなり、30℃の水を超音波振動して得られるミストの粒径は100nmとなる。また、洗浄液をエチルアルコール水溶液とすると、洗浄液の温度と供給する風量によって、ミストの粒径は、100nmと1nmに変化する。たとえば、20モル%のエチルアルコール水溶液の温度を20℃とすると、ミストの粒径は1nmとなり、温度を20℃から50℃にすると、ミストは粒径が1nmのものと100nmのものが混在した状態となる。従って、エチルアルコール水溶液は、温度を高くして、粒径を大きくできる。さらにこのエチルアルコール水溶液の温度を30℃とし、風量を15リットル/分とすると、ミストは粒径が1nmのものと100nmのものが混在する状態となる。この状態から風量を50リットル/分まで増加すると、ミストの粒径は1nmとなり、100nmのものはなくなる。したがって、風量を多くしてミストの粒径を小さくできる。だたし、以上の試験において、超音波振動子の入力電力は10W、振動周波数は2.4MHzである。超音波振動子の振動周波数を変更してミストの粒径をコントロールすることもできる。この場合、振動周波数を高くして、ミストを粒径を小さくできる。
【0018】
以上の方法で洗浄液をミストに霧化する洗浄装置を図1に示す。この図の洗浄装置は、洗浄液Wを超音波振動させてミストMに霧化する超音波霧化機1と、この超音波霧化機1で霧化されたミストMを被洗浄物Hに供給する供給部5とを備える。
【0019】
超音波霧化機1は、洗浄液Wを供給している閉鎖構造の超音波霧化室4と、この超音波霧化室4の洗浄液Wを超音波振動させてミストMに霧化する複数の超音波振動子2と、各々の超音波振動子2の上方に配設している筒体6と、超音波振動子2に接続している超音波電源3を備える。
【0020】
図1の洗浄装置は、超音波霧化室4と供給部5を別々に離して、連結ダクト7で連結している。この洗浄装置は、超音波霧化室4で霧化された洗浄液WのミストMを、供給部5から被洗浄物Hに供給する。
【0021】
超音波霧化室4は、所定のレベルに洗浄液Wを蓄えている。洗浄液Wを一定の液面レベルで保持するように、洗浄液Wを供給している。図の装置は、超音波霧化室4に、ポンプ10を介して洗浄液Wを蓄えている原液槽11を連結し、原液槽11から洗浄液Wを供給して液面レベルを一定に保持している。
【0022】
図の装置は、超音波霧化室4に筒体6を配設している。筒体6は、各々の超音波振動子2の上方に配設されて、超音波振動子2で超音波振動される洗浄液Wを効率よくミストMに霧化させる。筒体6は、上端に噴霧口12を開口している筒状としている。筒体6は、内部に洗浄液Wを充填し、筒体6内の洗浄液Wに、噴霧口12に向かって超音波振動を与えて、噴霧口12からミストMに霧化して飛散する。図の超音波振動子2は、上方に超音波を放射する。したがって、筒体6は、超音波振動子2の上方に、垂直な姿勢で配設している。図の筒体6は、上端に向かって次第に細くなる円錐ホーンである。ただし、筒体は、内面の形状をエクスポーネンシャルカーブとするエクスポーネンシャルホーンとすることもできる。円錐ホーンやエクスポーネンシャルホーンの筒体6は、内部に効率よく超音波振動を伝達させて、洗浄液Wを能率よくミストMに霧化できる特徴がある。ただ、本発明は、筒体を、円筒形状、楕円筒状、多角筒状とするとすることもできる。
【0023】
筒体6の下端開口部の内形は、超音波振動を効率よく内部に伝達できるように、超音波振動子2の外形より小さく、あるいは大きくして、超音波振動される液柱Pが内面に沿って上昇するようにする。たとえば、筒体6の下端の開口部の内径は、超音波振動子2の外径の50〜150%、好ましくは60〜100%とする。
【0024】
さらに、筒体6の高さと噴霧口12の大きさは、筒体6の内部に沿って、いいかえると筒体6の内面と液柱Pとの間に気層ができないように、超音波振動による液柱Pが筒体6の内部に沿って上昇し、噴霧口12の近傍でミストMとなって飛散するように設計される。ただ、液柱Pが噴霧口12から突出するように、いいかえると筒体6を液柱Pよりも低くすることもできる。したがって、筒体6の高さと噴霧口12の大きさは、超音波振動子2の大きさ、出力、周波数等によって最適値に設計される。
【0025】
図1の筒体6は、下端を洗浄液Wの液面よりも下方に、噴霧口12を液面よりも上方に配設する。この筒体6は、液面よりも下方の超音波振動を内部に案内し、液面から上方にある噴霧口12から洗浄液WをミストMとして飛散させる。図の筒体6は、超音波振動子2から上方に離して配設している。ただ、筒体は、図示しないが、底部に超音波振動子を配設して、超音波振動子で筒体の下端の開口部を閉塞することもできる。下端を超音波振動子で閉塞する筒体は、内部に洗浄液を供給する流入口を開口して、この流入口から筒体の内部に洗浄液を供給する。
【0026】
さらに、筒体6は、図2に示すように、噴霧口12から霧化されるミストMに搬送気体を供給する噴気口14を開口して、この噴気口14を気体供給源8に連結している。気体供給源8から供給される搬送気体は噴気口14からミストMに供給され、噴霧口12から噴霧されるミストMは搬送気体中に霧化される。この状態で霧化されたミストMを含む搬送気体は被洗浄物Hの表面に噴霧されて、被洗浄物Hを洗浄する。搬送気体は空気である。ただし、搬送気体は空気に特定せず、洗浄液を霧化できる全ての気体、たとえば窒素や炭酸ガス等の全ての気体とすることもできる。図の装置は、気体供給源8を送風機8Aとして、搬送気体を空気としている。気体供給源8の送風機8Aは、空気を吸入して、ミストMに搬送気体の空気を供給する。閉鎖構造の超音波霧化室4は、送風機8Aから供給される空気を連結ダクト7に排気して、連結ダクト7で供給部5に送風する。したがって、閉鎖構造の超音波霧化室4に送風機8Aで搬送気体を強制送風する装置は、連結ダクト7に搬送気体を強制送風する送風機などを設けることなく、超音波霧化室4から供給部5に搬送気体を送風できる。ただ、連結ダクトに送風機(図示せず)を連結し、この送風機で超音波霧化室から供給部に搬送気体を強制送風することもできる。
【0027】
気体供給源8が超音波霧化室4に供給する搬送気体の風量は、霧化されるミストMの粒径に影響を与える。搬送気体の風量を多くすると、ミストMの粒径は小さくなる。搬送気体は、ミストMの霧化量が多くなると多くする必要がある。ミストMの霧化量は、超音波振動子2の入力電力を大きくして増加する。したがって、搬送気体の風量は、超音波振動子2の入力電力に比例して大きくする必要がある。このことから、気体供給源8がミストMに供給する搬送気体の風量は、超音波振動子2の入力電力1Wに対して、1リットル/分以上、好ましくは、1.5W以上、さらに好ましくは3W以上とする。
【0028】
図の気体供給源8は、超音波霧化室4に送風する搬送気体の風量を変化させる風量変化機構37を備えている。図に示す風量変化機構37は、送風機8Aの運転を制御するインバータ37Aである。この風量変化機構37は、インバータ37Aで送風機8Aのファンの回転数を制御して、超音波霧化室4に供給する搬送気体の風量を調整する。ただ、風量変化機構は、図の鎖線で示すように、ダンパー37Bとして、送風機8Aの排出側に配設することもできる。このダンパー37Bは、搬送気体を通過させる開口面積を調整して、超音波霧化室4に供給する搬送気体の風量を調整する。
【0029】
図2の筒体6は、壁面を二重構造として平面の内部にダクト15を設けている。ダクト15は、筒体6の上端に開口している噴気口14に連結している。ダクト15に供給される搬送気体は、噴気口14から排出される。噴気口14は、筒体6上端の周囲に、スリット状に開口されている。スリット状の噴気口14は、搬送気体をリング状に排気する。リング状に排気される搬送気体の内側にミストMが放出される。この構造の筒体6は、ミストMを新鮮な搬送気体の内側に噴霧する。このため、洗浄液Wを効率よくミストMに霧化できる。ミストMが洗浄液濃度の低い搬送気体中に霧化されるからである。
【0030】
図2の筒体6は、連結ダクト16に脱着できるように連結している。連結ダクト16には、図示しないが、複数の筒体を連結している。図2の筒体6は、下端の外周に雄ネジ17を設け、連結ダクト16には筒体6の雄ネジ17をねじ込む雌ネジ穴18を設けている。筒体6は、雄ネジ17を雌ネジ穴18の雌ネジにねじ込んで、連結ダクト16に連結される。連結ダクト16は、内部に搬送気体の供給ダクト19を設けている。筒体6は、連結ダクト16に連結される状態で、ダクト15の入口を連結ダクト16の供給ダクト19に連結して、連結ダクト16の供給ダクト19から筒体6のダクト15に搬送気体が供給される。図2の筒体6は、雄ネジ17の上方と底面とに、リング溝を設けて、ここにOリング20、21を入れている。Oリング20、21は、筒体6を連結ダクト16に連結する状態で、雌ネジ穴18の内面に密着して、連結ダクト16と筒体6との連結部の気体漏れを阻止する。すなわち、筒体6を気密な状態で連結ダクト16に連結する。
【0031】
以上の超音波霧化機1は、超音波振動子2を超音波振動させて、洗浄液WをミストMとして筒体6の噴霧口12から飛散させる。洗浄液Wは、筒体6の内部で超音波振動され、噴霧口12からミストMとして飛散される。図の超音波霧化機1は、超音波振動子2を上向きに配設している。超音波振動子2は、底から筒体6の内部に向かって上向きに超音波を放射して、洗浄液Wを超音波振動させ、洗浄液Wを筒体6の内部で押し上げて、噴霧口12からミストMとして飛散させる。超音波振動子2は、垂直方向に超音波を放射する。
【0032】
以上のように、筒体6を備える分離装置は、超音波霧化室4の洗浄液Wを効率よくミストMに霧化できる特長がある。ただ、本発明の分離装置は、必ずしも筒体を設ける必要はない。筒体のない分離装置は、超音波霧化室において、超音波振動子で洗浄液を超音波振動させて、液面に発生する液柱の表面からミストに霧化することができる。
【0033】
図1の超音波霧化機1は、複数の超音波振動子2と、これ等の超音波振動子2を超音波振動させる超音波電源3とを備える。超音波振動子2は、筒体6の下方に固定される。図に示す超音波霧化機1は、複数の超音波振動子2を備える。このように複数の超音波振動子2を備える超音波霧化機1は、多量の洗浄液Wを効率よくミストMに霧化できる特長がある。ただ、超音波霧化機は、ひとつの超音波振動子を備えて、単一の超音波振動子で洗浄液をミストに霧化することもできる。超音波霧化室に設ける超音波振動子の数は、求められる霧化量に応じて種々に変更される。
【0034】
超音波霧化室4で霧化された洗浄液WのミストMは、供給部5に供給される。ミストMを供給部5に移送するために、図の装置は、供給部5を連結ダクト7で超音波霧化室4に連結している。
【0035】
さらに、図1の装置は、筒体6の噴霧口12から飛散するミストMを効率よく回収して連結ダクト7に供給させるために、筒体6の噴霧口12の上方に、ミストMの吸入部9を設けている。図に示す吸入部9は、円筒状のパイプで、筒体6の上方に垂直の姿勢で配置している。筒状のパイプである吸入部9は、下端を筒体6の上部に配置して、上端を超音波霧化室4の上方に延長している。図に示す吸入部9は、筒体6の上端縁に位置して、円筒状パイプの下端縁を配置している。ただ、吸入部は、下端部を筒体の上部にラップする状態で配置することも、あるいは、下端縁を筒体の上端縁から離して配置することもできる。さらに、吸入部9の下端の開口部は、筒体6の噴霧口12よりも広い開口面積としており、筒体6の上端から飛散されるミストMを漏れなく回収できるようにしている。吸入部9は上端を、超音波霧化室4の上部に連結しており、この連結部を連結ダクト7に連結して、吸入部9で回収されたミストMを連結ダクト7に移送するようにしている。ただ、吸入部は、必ずしも設ける必要はない。
【0036】
さらに、図1の装置は、超音波霧化室4の上面に、排出口1Aを開口して、ここに連結ダクト7を連結している。さらに、図の超音波霧化室4は、排出口1Aに、霧化された大粒の水粒子を除去するデミスタ38を設けている。この装置は、超音波霧化室4から排出される大粒のミストをデミスタ38で除去して供給部5に供給するので、供給部5に供給されるミストの平均粒径を小さくできる。このため、供給部5には、微細なミストのみを供給して、微細なミストの洗浄液で被洗浄物Hを効果的に洗浄できる。図の装置は、排出口1Aにデミスタ38を設けて大きなミストを除去しているが、デミスタに代わって、大きなミストを分離する機構、たとえば大きなミストを表面に結露させて分離する分離機構等を、超音波霧化室と供給部との間に設けることもできる。
【0037】
供給部55は、霧化されたミストMを被洗浄物Hに吹き付けて、被洗浄物Hの表面を洗浄する。図1の供給部5は被洗浄物HにミストMを噴射するノズル5Aである。ノズル5Aは、ミストMを含む搬送気体を被洗浄物Hの表面に噴射して、被洗浄物Hを洗浄する。
【実施例】
【0038】
図に示す装置を使用して、以下のようにして洗浄液Wのエチルアルコールを霧化できる。洗浄液Wであるエチルアルコールを超音波霧化室に供給する。超音波振動子の入力電力を10W、振動周波数を2.4MHzの超音波振動子で超音波振動して、洗浄液WをミストMに霧化する。洗浄液Wの温度を30℃、超音波霧化室に供給する搬送気体を空気として、その風量を10リットル/分とする。洗浄液WミストMの平均粒径は、1nmとなる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の一実施例にかかる洗浄装置の概略構成図である。
【図2】図1に示す洗浄装置の筒体を示す断面正面図である。
【符号の説明】
【0040】
1…超音波霧化機 1A…排出口
2…超音波振動子
3…超音波電源
4…超音波霧化室
5…供給部 5A…ノズル
6…筒体
7…連結ダクト
8…気体供給源 8A…送風機
9…吸入部
10…ポンプ
11…原液槽
12…噴霧口
14…噴気口
15…ダクト
16…連結ダクト
17…雄ネジ
18…雌ネジ穴
19…供給ダクト
20…Oリング
21…Oリング
37…風量変化機構 37A…インバータ
37B…ダンパー
38…デミスタ
H…被洗浄物
P…液柱
M…ミスト
W…洗浄液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄液(W)を超音波振動させてミスト(M)とし、このミスト(M)を被洗浄物(H)の表面に供給して被洗浄物(H)を洗浄することを特徴とする洗浄方法。
【請求項2】
洗浄液(W)を超音波振動させてミスト(M)とし、このミスト(M)に搬送気体を供給し、この搬送気体を介してミスト(M)を被洗浄物(H)の表面に吹き付けて被洗浄物(H)を洗浄する請求項1に記載される洗浄方法。
【請求項3】
搬送気体の風量が、洗浄液(W)を超音波振動させる超音波振動子(2)の入力電力1Wに対して1リットル/分以上である請求項2に記載される洗浄方法。
【請求項4】
洗浄液(W)を超音波振動させてミスト(M)とし、このミスト(M)に含まれる大粒のミストをデミスタ(38)で除去して被洗浄物(H)の表面に供給する請求項1に記載される洗浄方法。
【請求項5】
洗浄液(W)が揮発性の液体である請求項1に記載される洗浄方法。
【請求項6】
洗浄液(W)を超音波振動させてミスト(M)に霧化する超音波霧化機(1)と、この超音波霧化機(1)で霧化されたミスト(M)を被洗浄物(H)の表面に供給する供給部(5)とを備え、超音波霧化機(1)は、洗浄液(W)を入れる超音波霧化室(4)と、この超音波霧化室(4)の洗浄液(W)を超音波振動させてミスト(M)に霧化する超音波振動子(2)と、超音波振動子(2)に高周波電力を供給する超音波電源(3)とを備え、
超音波霧化機(1)で霧化されたミスト(M)を供給部(5)が被洗浄物(H)の表面に供給して、被洗浄物(H)を洗浄する洗浄装置。
【請求項7】
超音波霧化室(4)に搬送気体を強制送風する気体供給源(8)を備える請求項6に記載される洗浄装置。
【請求項8】
気体供給源(8)が、超音波振動子(2)の入力電力1Wに対して、1リットル/分以上の風量で超音波霧化室(4)に搬送気体を強制送風する請求項7に記載される洗浄装置。
【請求項9】
気体供給源(8)が、超音波霧化室(4)に送風する搬送気体の風量を変化させる風量変化機構(37)を有する請求項7に記載される洗浄装置。
【請求項10】
搬送気体が空気である請求項7に記載される洗浄装置。
【請求項11】
ミスト(M)を含む搬送気体の通路に、大粒のミストを除去するデミスタ(38)を設けている請求項7に記載される洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−324359(P2007−324359A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−152595(P2006−152595)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【出願人】(503268143)超音波醸造所有限会社 (20)
【Fターム(参考)】