洗浄方法及び処理装置
【課題】容器内部に付着した金属の錯体化の効率を向上させることができる洗浄方法及び処理装置を提供する。
【解決手段】容器内部にガスを供給し、容器内部に付着した金属を供給したガスと化合させ、金属及びガスが化合した金属化合物を気化させて該容器を洗浄する洗浄方法において、容器内部に酸化ガス又はハロゲン化ガスを供給して、容器内部に付着した金属に酸化処理又はハロゲン化処理を施す第一工程と、容器内部に錯体化ガスを供給して、酸化処理又はハロゲン化処理を施した金属に錯体化処理を施す第二工程とを備える。
【解決手段】容器内部にガスを供給し、容器内部に付着した金属を供給したガスと化合させ、金属及びガスが化合した金属化合物を気化させて該容器を洗浄する洗浄方法において、容器内部に酸化ガス又はハロゲン化ガスを供給して、容器内部に付着した金属に酸化処理又はハロゲン化処理を施す第一工程と、容器内部に錯体化ガスを供給して、酸化処理又はハロゲン化処理を施した金属に錯体化処理を施す第二工程とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理装置内部を洗浄する洗浄方法及び処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
処理装置の処理容器内部に付着した金属を洗浄する方法として、ドライ洗浄方法がある。例えば特許文献1には、酸化ガス又はハロゲン化ガスと錯体化ガスとを用いて蒸気圧の高い金属錯体を形成し、この金属錯体を気化させるドライ洗浄方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2519625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のドライ洗浄方法は、酸化ガス又はハロゲン化ガスと錯体化ガスとを高温下で同時に処理容器内部に流すため、酸化ガス又はハロゲン化ガスと錯体化ガスとが反応してしまい、金属の錯体化が十分進まない。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、容器内部に付着した金属の錯体化の効率を向上させることができる洗浄方法及び処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に係る洗浄方法は、容器内部にガスを供給し、該容器内部に付着した金属を供給したガスと化合させ、該金属及びガスが化合した金属化合物を気化させて該容器を洗浄する洗浄方法において、前記容器内部に酸化ガス又はハロゲン化ガスを供給して、容器内部に付着した金属に酸化処理又はハロゲン化処理を施す第一工程と、前記容器内部に錯体化ガスを供給して、酸化処理又はハロゲン化処理を施した金属に錯体化処理を施す第二工程とを備えることを特徴とする。
【0007】
本願に係る洗浄方法は、錯体化処理を施してなる金属錯体に気化の処理を施す第三工程を備えることを特徴とする。
【0008】
本願に係る洗浄方法は、前記第一工程又は第二工程における処理圧力を前記第三工程の処理圧力以上に設定することを特徴とする。
【0009】
本願に係る洗浄方法は、前記第一工程又は第二工程における処理温度を前記第三工程の処理温度以上に設定することを特徴とする。
【0010】
本願に係る洗浄方法は、前記第一工程及び第二工程を繰り返すことを特徴とする。
【0011】
本願に係る洗浄方法は、前記第一工程、第二工程及び第三工程を繰り返すことを特徴とする。
【0012】
本願に係る洗浄方法は、前記第一工程及び第二工程の間で、前記容器内部にパージガスを供給することを特徴とする。
【0013】
本願に係る洗浄方法は、前記第一工程又は第二工程の際、前記容器内部に水蒸気又はアルコールガスを供給することを特徴とする。
【0014】
本願に係る処理装置は、内部に収容した被処理体に金属成分を含む処理ガスを用いて処理を施す処理容器と、前記処理ガスの金属成分に含まれる金属が付着した処理容器内部に洗浄ガスを供給する洗浄ガス供給手段とを備え、前記処理容器内部に付着した金属を前記洗浄ガス供給手段が供給した洗浄ガスと化合させ、該金属及び洗浄ガスが化合した金属化合物を気化させて前記処理容器を洗浄する処理装置において、前記洗浄ガス供給手段は、前記処理容器内部に酸化ガス又はハロゲン化ガスを供給する第一ガス供給手段と、前記処理容器内部に錯体化ガスを供給する第二ガス供給手段とを含み、前記第一ガス供給手段が処理容器内部に酸化ガス又はハロゲン化ガスを供給した後、前記第二ガス供給手段が処理容器内部に錯体化ガスを供給するようにしてあることを特徴とする。
【0015】
本願に係る処理装置は、前記処理容器内部の圧力を制御する圧力制御手段を備え、該圧力制御手段は、前記第一ガス供給手段が酸化ガス又はハロゲン化ガスを供給する場合、又は前記第二ガス供給手段が錯体化ガスを供給する場合の処理容器内部の圧力を、前記錯体化ガスにより生成された金属錯体を気化させる場合の処理容器内部の圧力以上にするようにしてあることを特徴とする。
【0016】
本願に係る処理装置は、前記処理容器の温度を制御する温度制御手段を備え、該温度制御手段は、前記第一ガス供給手段が酸化ガス又はハロゲン化ガスを供給する場合、又は前記第二ガス供給手段が錯体化ガスを供給する場合の処理容器の温度を、前記錯体化ガスにより生成された金属錯体を気化させる場合の処理容器の温度以上にするようにしてあることを特徴とする。
【0017】
本願に係る洗浄方法にあっては、第一工程は、容器内部に酸化ガス又はハロゲン化ガスを供給し、容器内部に付着した金属を酸化又はハロゲン化する。第二工程は、容器内部に錯体化ガスを供給し、酸化又はハロゲン化した金属を錯体化する。
【0018】
本願に係る洗浄方法にあっては、第三工程は、第二工程により生成した金属錯体を気化させる。
【0019】
本願に係る洗浄方法にあっては、第一又は第二工程の圧力は、第三工程の圧力以上である。
【0020】
本願に係る洗浄方法にあっては、第一又は第二工程の温度は、第三工程の温度以上である。
【0021】
本願に係る洗浄方法にあっては、第一工程と第二工程とを繰り返す。
【0022】
本願に係る洗浄方法にあっては、第一工程と第二工程と第三工程とを繰り返す。
【0023】
本願に係る洗浄方法にあっては、第一及び第二工程の間で、容器内部にパージガスを供給する。
【0024】
本願に係る洗浄方法にあっては、第一又は第二工程の際に、容器内部に水蒸気又はアルコールガスを供給する。
【0025】
本願に係る処理装置にあっては、第一ガス供給手段は、処理容器内部に酸化ガス又はハロゲン化ガスを供給する。第二ガス供給手段は、処理容器内部に錯体化ガスを供給する。本願に係る処理装置は、第一ガス供給手段により処理容器に酸化ガス又はハロゲン化ガスを供給した後に、第二ガス供給手段により処理容器に錯体化ガスを供給する。
【0026】
本願に係る処理装置にあっては、第一ガス供給手段が酸化ガス又はハロゲン化ガスを処理容器に供給する場合、又は第二ガス供給手段が錯体化ガスを処理容器に供給する場合の処理容器内部の圧力が、錯体化ガスにより生成した金属錯体を気化させる場合の圧力以上になるように制御する。
【0027】
本願に係る処理装置にあっては、第一ガス供給手段が酸化ガス又はハロゲン化ガスを処理容器に供給する場合、又は第二ガス供給手段が錯体化ガスを処理容器に供給する場合の処理容器の温度が、錯体化ガスにより生成した金属錯体を気化させる場合の温度以上になるように制御する。
【発明の効果】
【0028】
容器内部に付着した金属の錯体化の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施の形態1に係る処理装置のブロック図である。
【図2】実施の形態1に係る処理容器の説明図である。
【図3】実施の形態1に係るコンピュータのブロック図である。
【図4】Hhfacの分解特性を示す説明図である。
【図5】実施の形態1に係る洗浄処理のタイムチャートの一例である。
【図6】実施の形態1に係る洗浄処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】実施の形態1に係る洗浄処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】実施の形態2に係る処理装置のブロック図である。
【図9】実施の形態2に係る処理容器の説明図である。
【図10】実施の形態2に係る洗浄処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】実施の形態2に係る洗浄処理の手順を示すフローチャートである。
【図12】実施の形態2に係る洗浄処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面を参照して具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0031】
実施の形態1
実施の形態1に係る処理装置は、例えば半導体ウエハ、プラスチック基板等を被処理体とする成膜装置、アニール装置、パターン形成装置、エッチング装置等である。
図1は、実施の形態1に係る処理装置1のブロック図である。
処理装置1は、酸化ハロゲン化ガス供給部2、パージガス供給部3、促進ガス供給部4、錯体化ガス供給部5、供給ガスライン6、排気部7、ベントライン8、処理容器9、コンピュータ10及び図示しない処理ガス供給部を含む。
なお、処理装置1は処理ガス供給部を含まなくてもよい。処理ガス供給部は、処理装置1が例えば成膜装置である場合、成膜用処理ガスを処理容器9に供給する構成部である。
【0032】
酸化ハロゲン化ガス供給部2は、処理容器9に金属を酸化又はハロゲン化するガスを供給する構成部である。酸化ハロゲン化ガス供給部2は、酸化ハロゲン化ガス供給ライン21、MFC(Mass Flow Controller)22、バルブ2A、2Bを含む。酸化ハロゲン化ガス供給ライン21の上流側端には、図示しない酸化ハロゲン化ガス供給源が接続されている。図1における酸化・ハロゲン化ガスとは、酸化ガス又はハロゲン化ガスの意味である。酸化ハロゲン化ガス供給ライン21は、酸化ハロゲン化ガス供給源から酸化ガス又はハロゲン化ガスを、供給ガスライン6に供給する。MFC22は、酸化ガス又はハロゲン化ガスの流量を制御する。バルブ2AはMFC22の上流側に、バルブ2BはMFC22の下流側に配置されており、酸化ハロゲン化ガス供給ライン21を開閉する。
【0033】
酸化ハロゲン化ガス供給源には、例えば酸素、空気、炭酸ガス等の酸化ガス又はフッ化塩素、フッ化水素等のハロゲン化ガスが貯留されている。実施の形態1では、酸化ハロゲン化ガス供給源には酸素又はフッ化水素が貯留されており、夫々酸化ハロゲン化ガス供給部2は処理容器9に酸素又はフッ化水素を供給する。
【0034】
パージガス供給部3は、処理容器9にパージガス、希釈ガス、キャリアガス等のガスを供給する構成部である。パージガス供給部3が処理容器9に供給するガスは、例えばヘリウム、アルゴン等の不活性ガス又は窒素等のガスである。実施の形態1では、パージガス供給部3は窒素ガスを処理容器9に供給する。
【0035】
パージガス供給部3は、パージガス供給ライン31、MFC32、バルブ3A、3Bを含む。パージガス供給ライン31の上流側端には、図示しないパージガス供給源が接続されている。パージガス供給ライン31は、パージガス供給源から窒素ガスを供給ガスライン6に供給する。MFC32は、窒素ガスの流量を制御する。バルブ3AはMFC32の上流側に、バルブ3BはMFC32の下流側に配置されており、パージガス供給ライン31を開閉する。
【0036】
促進ガス供給部4は、処理容器9に処理容器9内部の洗浄に係る反応を促進するガスを供給する構成部である。促進ガス供給部4が処理容器9に供給するガスは、例えば水蒸気又はアルコールである。実施の形態1では、促進ガス供給部4は水蒸気を処理容器9に供給する。
【0037】
促進ガス供給部4は、促進ガス供給ライン41、MFC42、促進ガス供給源43、バルブ4A、4Bを含む。促進ガス供給ライン41は、促進ガス供給源43から水蒸気を供給ガスライン6に供給する。MFC42は、水蒸気の流量を制御する。バルブ4AはMFC42の上流側に、バルブ4BはMFC42の下流側に配置されており、促進ガス供給ライン41を開閉する。
【0038】
促進ガス供給源43は、ヒータを備えており、その内部には水が貯留されている。促進ガス供給源43は、ヒータにより貯留された水を加熱し、気化した水蒸気を促進ガス供給ライン41に供給する。
なお、処理装置1は、促進ガス供給部4を含まなくてもよい。
【0039】
錯体化ガス供給部5は、処理容器9に錯体化ガスを供給する構成部である。錯体化ガス供給部5が処理容器9に供給する錯体化ガスは、例えばHhfac(ヘキサフルオロアセチルアセトン)、MeCp(メチルシクロペンタジエン)、HCp(シクロペンタジエン)、PF3 (トリフルオロフォスフィン)等である。実施の形態1では、錯体化ガス供給部5はHhfacを処理容器9に供給する。
【0040】
錯体化ガス供給部5は、パージガスライン51、錯体化ガス原料容器52、錯体化ガス供給ライン53、バルブ5A、5Bを含む。パージガスライン51は、図示しないパージガス供給源からパージガス、希釈ガス等を錯体化ガス原料容器52に供給する。パージガス供給源が錯体化ガス原料容器52に供給するガスは、例えばヘリウム、アルゴン等の不活性ガス又は窒素等のガスである。実施の形態1では、パージガス供給源が錯体化ガス原料容器52に供給するガスは、窒素である。また、錯体化ガスの蒸気圧が低い場合、パージガス供給源が錯体化ガス原料容器52に供給するガスは、錯体化ガス原料容器52に貯留された錯体化ガスの原料をバブリングする作用も有している。
【0041】
錯体化ガス原料容器52には、Hhfacが貯留されている。錯体化ガス供給ライン53は、錯体化ガス原料容器52からHhfacを供給ガスライン6に供給する。バルブ5Aはパージガスライン51を開閉し、バルブ5Bは錯体化ガス供給ライン53を開閉する。
【0042】
なお、酸化ハロゲン化ガス供給部2の酸化ハロゲン化ガス供給源、パージガス供給部3及び錯体化ガス供給部5のパージガス供給部、並びに促進ガス供給部4の促進ガス供給源43は、処理装置1に含まれなくてもよい。
【0043】
酸化ハロゲン化ガス供給ライン21、パージガス供給ライン31及び促進ガス供給ライン41の下流側端は合流し、供給ガスライン6に接続されている。供給ガスライン6の下流側端は処理容器9に接続されている。供給ガスライン6は、上流側のバルブ6A及び下流側のバルブ6Bにより開閉されるように構成されている。錯体化ガス供給ライン53の下流側端は、バルブ6A及びバルブ6Bの間の供給ガスライン6に接続されている。
【0044】
なお、酸化ハロゲン化ガス供給ライン21、パージガス供給ライン31、促進ガス供給ライン41、錯体化ガス供給ライン53及び供給ガスライン6を構成する配管の外周には、図示しないヒータが設けられている。この配管外周のヒータの加熱により、処理容器9に供給されるガスを加熱することが可能である。
【0045】
排気部7は、排気ガスライン71、圧力調整器72、ドライポンプ73、除害装置74、排気パージガス供給ライン75及びバルブ7A、7B、7Cを含む。バルブ7A及び7Bは、排気ガスライン71を開閉するバルブである。バルブ7Cは、排気パージガス供給ライン75を開閉するバルブである。排気ガスライン71の上流側端は、処理容器9に接続されている。排気ガスライン71の上流から下流へ向かって、バルブ7A、圧力調整器72、バルブ7B、ドライポンプ73、除害装置74の順に接続されている。
【0046】
排気パージガス供給ライン75は、排気ガスライン71にパージガス、希釈ガス、キャリアガス等のガスを供給する。排気パージガス供給ライン75の下流側端はバルブ7A及び圧力調整器72の間の排気ガスライン71に接続されている。排気パージガス供給ライン75の上流側端には、図示しないパージガス供給源が接続されている。このパージガス供給源が排気パージガス供給ライン75に供給するガスは、例えばヘリウム、アルゴン等の不活性ガス又は窒素等のガスである。実施の形態1では、パージガス供給源は窒素ガスを排気パージガス供給ライン75に供給する。
なお、排気部7のパージガス供給源は、処理装置1に含まれなくてもよい。
【0047】
圧力調整器72は、例えばAPC(Auto Pressure Controller)であり、ガスの流れ方を変えることにより処理容器9内部の圧力を設定された圧力に制御する。圧力調整器72への圧力の設定は、手動で行うこともできるし、コンピュータ10を介して行うこともできる。
圧力調整器72は、コンピュータ10と信号の送受信を行う。圧力調整器72は、コンピュータ10から設定圧力の信号を受信した場合、受信した信号に対応した圧力を制御対象の圧力に設定する。
なお、圧力調整器72による圧力制御と共に、MFC22、32、42による流量制御を併用して、処理容器9内部の圧力を制御してもよい。
【0048】
ドライポンプ73は、排気ガスライン71を介して処理容器9内部の雰囲気を排気する。ドライポンプ73は、真空ポンプの一例であり、例えばターボ分子ポンプであってもよい。
【0049】
除害装置74は、ドライポンプ73から排出された有害又は危険なガス成分を取り除く。そのため、除害装置74には有害又は危険なガス成分を吸着または分解するための薬剤の入った筒が収納されている。
【0050】
ベントライン8は、処理容器9に供給するガスを試験的に流すガスラインである。ベントライン8は、急にガスを処理容器に流す場合、安定していない流れが処理容器9に供給されることを防止するため、処理容器9をバイパスして上流側から下流側へ接続されている。具体的には、ベントライン8の上流側端は、供給ガスライン6のバルブ6A及び6Bの間に接続され、ベントライン8の下流側端は、排気ガスライン71のバルブ7A及び圧力調整器72の間に接続されている。
【0051】
ガスをベントライン8に流すためには、供給ガスライン6のバルブ6B及び排気ガスライン71の7Aを閉じ、ベントライン8のバルブ8Aを開く。一方、ガスを処理容器9に流すためには、供給ガスライン6のバルブ6B及び排気ガスライン71の7Aを開き、ベントライン8のバルブ8Aを閉じる。以下、ガスをベントライン8と処理容器9との間で選択的に流すために、上記の各バルブの開閉を行うことを、ベントライン8及び供給ガスライン6のバルブを切り替えると記す。
【0052】
処理容器9は、成膜装置、アニール装置等のチェンバに該当する。実施の形態1では、被処理体のウエハ上に薄膜を形成する枚葉式の抵抗加熱型CVD装置のチェンバを例に、処理容器9を説明する。なお、抵抗加熱型CVD装置は、枚葉式に限られるものではなく、バッチ式であってもよいことは勿論である。
図2は、実施の形態1に係る処理容器9の説明図である。
処理容器9は、略円柱状の形状をなし、側壁91、天井壁92、載置台93、底部支持板94及び電源装置95を含む。側壁91の上端に天井壁92が、側壁91の下端に底部支持板94が接合されている。載置台93は、処理容器9の中央に配設されている。
【0053】
側壁91は略円筒状をなし、例えばアルミニウム等から構成される。側壁91の内部にはウォールヒータ911が内装されており、ウォールヒータ911は側壁91を所望の温度、例えば常温から250℃まで昇温させることができる。側壁91には、排気口912、ウエハ挿入口913及びのぞき窓914が開口されている。排気口912は、処理容器9の下部に設けられており、排気部7の排気ガスライン71の上流側端と接続されている。ウエハ挿入口913は、処理容器9の天井近傍に設けられており、図示しない外部のロードロック室とゲートバルブを介して接続されている。図示しない搬送手段により、ウエハWはウエハ挿入口913を通じてロードロック室と処理容器9との間を搬送される。のぞき窓914は、ウエハ挿入口913と対向する側壁91に設けられている。のぞき窓914には、石英板が隙間なく嵌め込まれている。
【0054】
天井壁92は、略円盤状をなし、ヒンジ部921を介して側壁91上端と着脱自在に構成されている。天井壁92には、天井ヒータ922が内蔵されている。天井ヒータ922は、天井壁92を所望の温度、例えば常温から250℃まで昇温させることができる。天井壁92の中央には、供給ガスライン6の下流側端と接続される開口が形成されている。
この開口を取り巻く天井壁92の内面には、有底円筒状のシャワーヘッド923が気密に設けられている。シャワーヘッド923の底板には、ガス噴出口924が複数穿設されている。供給ガスライン6からシャワーヘッド923内に供給された成膜用処理ガス又はフッ化水素等の洗浄ガスは、ガス噴出口924を通じて、処理容器9内部の載置台93へ向けて均等に噴出される。
【0055】
載置台93は、載置台本体930、底板931及び支持体932を含む。円柱状の載置台本体930の上には、被処理体のウエハWが載置される。なお、載置台本体930の上部に、ウエハWを吸着、保持するための静電チャックを設けてもよい。
載置台本体930の下には、載置台本体930と同一半径を有する円柱状の底板931が配置されている。載置台本体930及び底板931は、底板931の下に位置する略円筒状の支持体932によって支持されている。
【0056】
底板931上面と接する載置台本体930の下部には、ステージヒータ933が設けられている。ステージヒータ933は、絶縁体の中に略帯状の発熱体、例えばタングステンワイヤ、カーボンワイヤ等を所定のパターン、例えば渦巻き状に埋設した構成からなる。ステージヒータ933は、所定の温度、例えば400℃から2000℃まで発熱して、載置台本体930上に載置したウエハWを所定の温度、例えば800℃に維持することができる。
【0057】
底板931の内部には、冷却水溜934が設けられている。冷却水パイプ935によって冷却水が冷却水溜934に供給されることにより、冷却水が冷却水溜934内を循環するように構成されている。
【0058】
載置台本体930内部には、温度センサ936の検知部937が埋め込まれており、温度センサ936が載置台本体930内部の温度を逐次検出するように構成されている。温度センサ936は、検出温度に対応する信号をコンピュータ10へ送信する。
【0059】
載置台本体930上部には、棒状のリフタピン938が形成されている。リフタピン938は、モータ駆動で上下に移動することにより、載置台本体930上面に載置するウエハWをリフトアップ又はリフトダウンさせる。
【0060】
底部支持板94は、側壁91の半径と略同一の外径及び支持体932の半径と略同一の内径を有す環状板である。底部支持板94は、側壁91下端部及び支持体932下端部と接合され、天井壁92と共に処理容器9内部を気密に密閉している。
【0061】
電源装置95は、処理容器9外部に設置されており、処理容器9内部に設置されたウォールヒータ911、天井ヒータ922及びステージヒータ933に夫々任意の電圧を印加する。電源装置95が各ヒータに印加する電圧は、手動で制御することもできるし、コンピュータ10で制御することもできる。処理容器9の温度は、電源装置95を介して制御される。
【0062】
コンピュータ10は、処理容器9内部の温度と圧力とを制御する。
なお、処理装置1は、コンピュータ10を含まなくてもよい。かかる場合、手動により処理容器9内部の温度と圧力とを制御する。
【0063】
図3は、実施の形態1に係るコンピュータ10のブロック図である。
コンピュータ10は、制御部110、ROM(Read Only Memory)120、RAM(Random Access Memory)130、通信部140、操作部150、表示部160、外部インタフェース170及びタイマ180を含む。
【0064】
ROM120の内部には、各種プログラムが記憶されている。
制御部110は、ROM120からプログラムを読み込み、各種処理を実行する。例えば、制御部110は、バルブ2A、2B等の各バルブの開閉を制御する。制御部110は、MFC22、32、42を制御する。制御部110は、温度センサ936からの信号に基づいて、電源装置95を制御することにより、側壁91、天井壁92及び載置台本体930の温度を所望の設定温度に制御する。また、制御部110は、圧力調整器72に圧力の設定をする。
【0065】
RAM130は、作業用の変数、入力値等を一時的に記録する。
通信部140は、処理装置1の各構成部から送信される信号又はデータを受信する。また、通信部140は、制御部110の命令を処理装置1の各構成部へ送信する。
【0066】
操作部150は、キーボード、マウス等の入力機器を含み、ユーザは操作部150を介してコンピュータ10を操作する。表示部160は、操作部150を介して入力された入力値、制御部110が実行した処理結果等を表示する。
【0067】
外部インタフェース170は、USB(Universal Serial Bus)メモリ、CD−ROM(Compact Disc-Read Only Memory)等の可搬型記録媒体1Aと情報のやり取りをするインタフェースである。また、外部インタフェース170はインターネット等の通信網Nに接続することができるインタフェースでもある。
タイマ180は、計時を信号として制御部110に送信する。
【0068】
実施の形態1に係る処理装置1を動作させるための各種プログラムは、外部インタフェース170に可搬型記録媒体1Aを読み取らせて、RAM130に記録してもよい。また、当該各種プログラムは、外部インタフェース170及びインターネット等の通信網Nを介して接続される他のサーバコンピュータ(図示せず)からダウンロードすることも可能である。
【0069】
ここで、実施の形態1に係る処理容器9内部に付着した金属を錯体化する反応例について説明する。実施の形態1で洗浄対象の金属は、例えばニッケル、コバルト、銅等である。ここでは、ニッケル及びコバルトを洗浄対象の金属とする。
【0070】
洗浄対象の金属が例えばニッケルである場合、ニッケルをフッ化水素ガスでハロゲン化する(化1)。
(化1)
Ni+2HF→NiF2 +H2 ↑
次に、生成した中間生成物のフッ化ニッケルをHhfacガスで錯体化する(化2)。
(化2)
NiF2+2Hhfac→Ni(hfac)2 ↑+2HF↑
【0071】
錯体化する中間生成物は、金属ハロゲン化物に限らず、金属酸化物であってもよい。洗浄対象の金属が例えばコバルトである場合、コバルトを酸素ガスで酸化する(化3)。
(化3)
3Co+2O2 →Co3 O4
生成した中間生成物の酸化コバルトをHhfacガスで錯体化する(化4)。
(化4)
Co3 O4 +8Hhfac→Co(2)(hfac)2 ↑+2Co(3)(hfac)3 ↑+4H2 O↑
【0072】
このように、実施の形態1に係る洗浄方法は、金属を2工程の化学反応により錯体化する。第一の工程は金属を錯体化しやすくするための中間生成物を生成する工程であり、第二の工程は中間生成物から金属錯体を生成する工程である。
以下、化1及び化3に係る処理を第一工程、化2及び化4に係る工程を第二工程と呼ぶ。
【0073】
第一及び第二工程は、温度及び圧力が高いほど反応速度が速くなる。しかし、温度が500℃を超えると、処理装置1に搭載された計器及び処理容器9に損傷を与えるため、第一及び第二工程は500℃以下で行われる。
【0074】
第二工程の温度は、錯体化ガスの分解温度よりも低くする。
図4は、Hhfacの分解特性を示す説明図である。縦軸はHhfacの分解率であり、横軸は温度である。図4からわかるように、Hhfacは400℃以上の場合、温度が高いほど急速に分解する。そこで、第二工程の温度は、400℃以下が好ましい。
一方、反応速度を担保するため、第一及び第二工程の温度は100℃以上であることが好ましい。
【0075】
第一及び第二工程の圧力は、例えば1Torr以上である。
【0076】
処理容器9内部の洗浄のために、第二工程で生成した金属錯体を気化させる。以下、この気化の工程を第三工程と呼ぶ。第二工程で生成した金属錯体は蒸気圧が高いため、第三工程の温度は、第一又は第二工程の温度以下の値に設定することができる。第三工程の温度は、例えば150℃〜200℃である。第三工程の圧力は、金属錯体の蒸気圧以下であり、第一又は第二工程の圧力以下である。
【0077】
なお、第二工程の圧力をかなり高圧にした場合、第三工程の圧力に変更するための減圧時間が長くなる。そのため、洗浄処理の能率に鑑み、第二工程の圧力は低めに設定することが好ましい。
また、十分な洗浄速度が確保できるのであれば、処理装置1の運用上、第一及び第二工程の温度及び圧力を夫々第三工程の温度及び圧力と同じにしてもよい。かかる場合、パーティクル低減、温度及び圧力の安定性等に資するからである。
【0078】
上記の各工程における温度及び圧力の条件は、一例に過ぎず、上記に限定されない。各工程における温度及び圧力の条件は、目的に応じて適宜好ましい条件を選択することができる。
【0079】
次に、実施の形態1に係る処理装置1の洗浄時の動作について説明する。
洗浄前の処理装置1内部には、被処理体のウエハWは搬出されている。また、洗浄前の処理装置1の各ガスラインのバルブは閉じられている。促進ガス供給部4の促進ガス供給源43の水は、ヒータにより水蒸気に気化している。
【0080】
コンピュータ10の制御部110は、排気ガスライン71のバルブ7Bを開き、ドライポンプ73による排気を開始する。制御部110は、ベントライン8及び供給ガスライン6のバルブを切り替え、ガスがベントライン8に流れるように設定する。
【0081】
制御部110は、圧力調整器72に第一工程の圧力を設定する。制御部110は、電源装置95を介して第一工程の温度を設定する。制御部110は、パージガス供給部3のバルブ3A、3B及び供給ガスライン6のバルブ6Aを開く。制御部110は、酸化ハロゲン化ガス供給部2のバルブ2A、2Bを開く。制御部110は、促進ガス供給部4のバルブ4A、4Bを開く。
【0082】
制御部110は、ガスが安定化した場合、ベントライン8及び供給ガスライン6のバルブを切り替え、ガスが処理容器9を流れるように設定する。制御部110は、タイマ180からの信号に基づき、第一工程の経過時間を計時する。
処理容器9内部に、酸素ガス又はフッ化水素ガスと、希釈ガスとしての窒素ガスと、促進ガスとしての水蒸気とからなる混合ガスが供給される。化1又は化3の反応により、処理容器9内部に夫々フッ化ニッケル又は酸化コバルトが生成する。
【0083】
制御部110は、タイマ180からの信号に基づいて、所定時間が経過したと判断した場合、酸化ハロゲン化ガス供給部2のバルブ2A、2Bを閉じる。同様に、制御部110は、促進ガス供給部4のバルブ4A、4Bを閉じる。
第一工程の後に、パージガス供給部3から窒素ガスのみを処理容器9に供給することにより、処理容器9内部をパージする。制御部110は、タイマ180からの信号に基づいて、所定時間経過したと判断した場合、第二工程に移行する。
制御部110は、ベントライン8及び供給ガスライン6のバルブを切り替え、ガスがベントライン8に流れるように設定する。
【0084】
制御部110は、圧力調整器72に第二工程の圧力を設定する。制御部110は、電源装置95を介して第二工程の温度を設定する。制御部110は、錯体化ガス供給部5のバルブ5A、5Bを開く。制御部110は、促進ガス供給部4のバルブ4A、4Bを開く。
【0085】
制御部110は、ガスが安定化した場合、ベントライン8及び供給ガスライン6のバルブを切り替え、ガスが処理容器9を流れるように設定する。制御部110は、タイマ180からの信号に基づき、第二工程の経過時間を計時する。
処理容器9内部に、Hhfacガスと、希釈ガスとしての窒素ガスと、促進ガスとしての水蒸気とからなる混合ガスが供給される。化2又は化4の反応により、処理容器9内部に夫々ニッケル錯体又はコバルト錯体が生成する。
【0086】
制御部110は、タイマ180からの信号に基づいて、所定時間が経過したと判断した場合、錯体化ガス供給部5のバルブ5A、5Bを閉じる。同様に、制御部110は、促進ガス供給部4のバルブ4A、4Bを閉じる。
制御部110は、タイマ180からの信号に基づいて、所定時間経過したと判断した場合、第三工程に移行する。
制御部110は、ベントライン8及び供給ガスライン6のバルブを切り替え、ガスがベントライン8に流れるように設定する。
【0087】
制御部110は、圧力調整器72に第三工程の圧力を設定する。制御部110は、電源装置95を介して第三工程の温度を設定する。第三工程の温度及び圧力は、夫々第一又は第二工程の温度及び圧力の値以下である。
【0088】
制御部110は、ガスが安定化した場合、ベントライン8及び供給ガスライン6のバルブを切り替え、ガスが処理容器9を流れるように設定する。制御部110は、タイマ180からの信号に基づき、第三工程の経過時間を計時する。
処理容器9内部のニッケル錯体又はコバルト錯体は気化し、パージガス供給部3からの窒素ガスによって排気部7へ移送される。
【0089】
制御部110は、タイマ180からの信号に基づいて、所定時間が経過したと判断した場合、ベントライン8及び供給ガスライン6のバルブを切り替え、ガスがベントライン8に流れるように設定する。
【0090】
制御部110は、上記の第一、第二及び第三工程を所定回数繰り返す。制御部110は、第一、第二及び第三工程を所定回数繰り返したと判断した場合、電源装置95からステージヒータ933等への給電を停止する。制御部110は、上流側から各バルブを閉じ、ドライポンプ73を停止させる。
【0091】
なお、上記では第一、第二及び第三工程を所定回数繰り返したが、第三工程を行わず、第二工程の圧力を低くして、第一及び第二工程を繰り返す形態であってもよい。第二工程で金属錯体を合成すると同時に、合成した金属錯体が気化する場合があるからである。
【0092】
図5は、実施の形態1に係る洗浄処理のタイムチャートの一例である。横軸は時間である。(1)、(2)及び(3)は、夫々第一、第二及び第三工程に対応する。図5Aは、処理容器9への酸化ガス又はハロゲン化ガスの供給の有無を示している。図5Bは、処理容器9への錯体化ガスの供給の有無を示している。図5Cは、処理容器9の内部圧力を定性的に示している。
【0093】
第一工程で、処理容器9に酸化ガス又はハロゲン化ガスが供給される。第二工程で、処理容器9に錯体化ガスが供給される。第三工程で、錯体化ガスが気化される。処理容器9の内部圧力については、第一又は第二工程の圧力は、第三工程の圧力以上である。
図5Cと類似のことが、第一又は第二工程と第三工程との温度についても言え、第一又は第二工程の温度は、第三工程の温度以上である。
【0094】
図6及び図7は、実施の形態1に係る洗浄処理の手順を示すフローチャートである。以下、制御部110による洗浄処理を説明するが、バルブ切り替え処理及びバルブ開閉処理については省略する。また、反応促進ガスの供給及び停止についても省略する。
【0095】
制御部110は、排気を開始する(ステップS101)。制御部110は、第一工程の温度を電源装置95に、第一工程の圧力を圧力調整器72に設定する(ステップS102)。制御部110は、処理容器9に酸化ガス又はハロゲン化ガスの供給を開始する(ステップS103)。制御部110は、第一工程の処理時間として所定時間が経過したか否か判断する(ステップS104)。制御部110は、第一工程の処理時間として所定時間が経過していないと判断した場合(ステップS104:NO)、ステップS104へ処理を戻す。制御部110は、第一工程の処理時間として所定時間が経過したと判断した場合(ステップS104:YES)、処理容器9への酸化ガス又はハロゲン化ガスの供給を停止する(ステップS105)。
【0096】
制御部110は、処理容器9にパージガスを所定時間供給する(ステップS106)。制御部110は、第二工程の温度を電源装置95に、第二工程の圧力を圧力調整器72に設定する(ステップS107)。制御部110は、処理容器9に錯体化ガスの供給を開始する(ステップS108)。制御部110は、第二工程の処理時間として所定時間が経過したか否か判断する(ステップS109)。制御部110は、第二工程の処理時間として所定時間が経過していないと判断した場合(ステップS109:NO)、ステップS109へ処理を戻す。制御部110は、第二工程の処理時間として所定時間が経過したと判断した場合(ステップS109:YES)、処理容器9への錯体化ガスの供給を停止する(ステップS110)。
【0097】
制御部110は、第三工程の温度を電源装置95に、第三工程の圧力を圧力調整器72に設定する(ステップS111)。制御部110は、処理容器9にキャリアガスの供給を開始する(ステップS112)。制御部110は、第三工程の処理時間として所定時間が経過したか否か判断する(ステップS113)。制御部110は、第三工程の処理時間として所定時間が経過していないと判断した場合(ステップS113:NO)、ステップS113へ処理を戻す。制御部110は、第三工程の処理時間として所定時間が経過したと判断した場合(ステップS113:YES)、処理容器9へのキャリアガスの供給を停止する(ステップS114)。
【0098】
制御部110は、上記の第一、第二及び第三工程を所定回数繰り返したか否か判断する(ステップS115)。制御部110は、第一、第二及び第三工程を所定回数繰り返していないと判断した場合(ステップS115:NO)、ステップS102へ処理を戻す。制御部110は、第一、第二及び第三工程を所定回数繰り返したと判断した場合(ステップS115:YES)、電源装置95への給電を停止する(ステップS116)。制御部110は、排気を停止する(ステップS117)。
【0099】
半導体ウエハ、プラスチック基板等の被処理体に成膜、エッチング、アニール等の処理を行う処理容器の内壁には、各処理に付随して、いたるところに金属膜の堆積、付着等が起こる。また、被処理体を載置する載置台、被処理体を保持する治具等にも金属膜の堆積、付着等が起こる。これら処理容器内部に堆積、付着した金属膜は剥離し、不要な金属としてウエハ等の上に形成した膜に取り込まれる。あるいは、これら処理容器内部に堆積、付着した金属膜はウエハ等の表面に付着する。このような金属汚染は、ウエハ等から構成されるデバイスの歩留り低下を招来する。そのため、治具等を含めて処理容器内部を適宜洗浄する必要がある。
【0100】
処理容器の洗浄方法として、処理容器の解体を伴わないドライ洗浄方法が主流である。例えば、処理容器内部の不要な金属をハロゲン化ガスと化合させて金属ハロゲン化物を生成し、この金属ハロゲン化物を気化及び除去する。しかし、ニッケル、コバルト、銅等の金属ハロゲン化物は引き合うクーロン力が強く、蒸気圧が低いので、これらの金属ハロゲン化物を気化して処理容器内部から除去するためには、高温処理が必要となる。例えば、フッ化ニッケルを気化する場合、1.0Torrの圧力では、1000℃以上に処理容器を加熱する必要がある。このような高温下に処理容器を置いた場合、処理装置に搭載された計器及び処理容器は破損する。処理装置のメンテナンスに鑑み、処理容器の加熱温度は500℃以下が好ましい。
【0101】
そこで、錯体化ガスを処理容器に供給し、不要な金属を金属ハロゲン化物よりも蒸気圧の高い金属錯体にして気化及び除去することが行われている。その際、金属の錯体化の反応速度を上げるために、金属は酸化ガス又はハロゲン化ガスにより、夫々酸化物又はハロゲン化物の中間生成物にされる。これらの中間生成物が錯体化ガスと反応し、金属錯体が生成する。その際、金属の酸化又はハロゲン化は、錯体化と同時に行われる。さらに、金属の錯体化と金属錯体の気化も同時に行われる。
【0102】
しかし、酸化ガス又はハロゲン化ガスを錯体化ガスと同時に処理容器に供給する場合、洗浄環境は高温(数百℃以上)であるため、錯体化ガスは酸化ガス又はハロゲン化ガスにより分解される。また、分解した錯体化ガスに由来する不要な生成物が処理容器内部に付着する。さらに、金属の錯体化をスムーズに行うには高圧が適しており、金属錯体を気化させる圧力は低圧が適していることから、金属の錯体化と金属錯体の気化とを同一圧力下で行う場合も、処理容器等の洗浄速度は低下する。処理容器等の洗浄速度の低下は、処理装置の稼働率の低下、ひいてはデバイス製造能率の低下につながる。
【0103】
実施の形態1に係る処理装置1によれば、処理容器9に酸化ガス又はハロゲン化ガスを錯体化ガスと同時には供給しない。そのため、実施の形態1に係る処理装置1は、錯体化ガスの分解を回避すると共に、分解した錯体化ガスに由来する不要な生成物を生成しない。従って、実施の形態1に係る処理装置1は、処理装置1内部に付着した金属の錯体化の効率を向上させることができる。また、実施の形態1に係る処理装置1は、錯体化ガスを分解しないので、処理容器9に供給する錯体化ガス消費量を低減することができる。
【0104】
実施の形態1に係る処理装置1によれば、処理容器9に酸化ガス又はハロゲン化ガスと、錯体化ガスとを工程ごとに分けて供給する。また、実施の形態1に係る処理装置1によれば、金属の錯体化と金属錯体の気化とを工程ごとに分けて行う。そのため、実施の形態1に係る処理装置1は、酸化又はハロゲン化に適した処理条件、錯体化に適した処理条件、金属錯体の気化に適した処理条件を夫々選択することができる。そのため例えば、錯体化ガスを供給する過程で、反応温度を錯体化ガスの分解温度以下に制御することができる。従って、実施の形態1に係る処理装置1は、各工程の処理条件を最適化することにより、処理容器9の内面、処理容器9内部の治具等に堆積又は付着した不要な金属を除去する速度を向上させることができる。
【0105】
実施の形態1に係る処理装置1によれば、金属を酸化又はハロゲン化する工程、金属を錯体化する工程、及び金属錯体を気化する工程を繰り返す。そのため、実施の形態1に係る処理装置1によれば、洗浄対象の金属の表面は処理前の初期状態を繰り返すので、洗浄に係る反応の低下を防ぐことができる。さらに、洗浄ガスが洗浄対象の金属の深くまで侵入できない場合でも、実施の形態1に係る処理装置1は、洗浄工程を繰り返すことにより、金属を完全に除去することができる。
なお、金属を錯体化する工程の圧力を低く設定することにより、金属を酸化又はハロゲン化する工程、及び金属を錯体化する工程を繰り返すだけで、金属を除去することができる場合がある。すなわち、金属の錯体化と、錯体化によって生じた金属錯体の気化とを同時に進行させることができる場合がある。
【0106】
実施の形態1に係る処理装置1によれば、金属を酸化又はハロゲン化する工程と、金属を錯体化する工程との間に、処理容器9にパージガスを供給する。錯体化ガスを処理容器9内部に供給する際に、酸化ガス又はハロゲン化ガスが残留していた場合、酸化ガス又はハロゲン化ガスが錯体化ガスを分解する。そのため、実施の形態1に係る処理装置1は、処理容器9をパージしてから錯体化ガスを供給することにより、錯体化ガス消費量を低減することができる。また、実施の形態1に係る処理装置1は、錯体化ガスの分解物に起因する不要な生成物が処理容器9内部に付着することを回避することができる。
【0107】
実施の形態1に係る処理装置1によれば、金属を酸化又はハロゲン化する工程と、金属を錯体化する工程とにおいて、処理容器9に水蒸気又はアルコールを供給する。水蒸気又はアルコールは、酸化、ハロゲン化及び錯体化を促進する作用があるため、金属を除去する速度が向上する。
【0108】
なお、実施の形態1に係る洗浄方法及び処理装置1は、成膜装置等で用いられるウエハW等の表面から金属を洗浄するためにも利用できることは勿論である。
【0109】
実施の形態2
実施の形態2は、金属をフッ化するために、金属を酸化してからフッ化する形態に関する。また、実施の形態2における処理装置は、枚葉式のランプ加熱型CVD装置である。
【0110】
図8は、実施の形態2に係る処理装置100のブロック図である。
以下、実施の形態2に係る処理装置100に関して、実施の形態1で説明した処理装置1と異なる部分について説明する。
処理装置100は、酸化ハロゲン化ガス供給部2及び促進ガス供給部4を含まず、酸化ガス供給部210及びフッ化ガス供給部220を含む。
【0111】
酸化ガス供給部210は、処理容器90に金属を酸化するガスを供給する構成部である。酸化ガス供給部210は、酸化ガス供給ライン211、MFC212、バルブ21A、21Bを含む。酸化ガス供給ライン211の上流側端には、図示しない酸化ガス供給源が接続されている。酸化ガス供給ライン211は、酸化ガス供給源から酸化ガスを供給ガスライン6に供給する。MFC212は、酸化ガスの流量を制御する。バルブ21AはMFC212の上流側に、バルブ21BはMFC212の下流側に配置されており、酸化ガス供給ライン211を開閉する。
【0112】
酸化ガス供給源には、例えば酸素、空気、炭酸ガス等の酸化ガスが貯留されている。実施の形態2では、酸化ガス供給源には酸素が貯留されており、酸化ガス供給部210は処理容器90に酸素を供給する。
【0113】
フッ化ガス供給部220は、処理容器90に金属をフッ化するガスを供給する構成部である。フッ化ガス供給部220は、フッ化ガス供給ライン221、MFC222、バルブ22A、22Bを含む。フッ化ガス供給ライン221の上流側端には、図示しないフッ化ガス供給源が接続されている。フッ化ガス供給ライン221は、フッ化ガス供給源からフッ化ガスを供給ガスライン6に供給する。MFC222は、フッ化ガスの流量を制御する。バルブ22AはMFC222の上流側に、バルブ22BはMFC222の下流側に配置されており、フッ化ガス供給ライン221を開閉する。
【0114】
フッ化ガス供給源には、例えばフッ化塩素、フッ化水素等のフッ化ガスが貯留されている。実施の形態2では、フッ化ガス供給源にはフッ化水素が貯留されており、フッ化ガス供給部220は処理容器90にフッ化水素を供給する。
【0115】
実施の形態2では、錯体化ガスはバブリングではなく、MFCで供給される。
錯体化ガス供給部5は、錯体化ガス供給源54、錯体化ガス供給ライン53、MFC55、バルブ5A、5Bを含む。錯体化ガス供給ライン53は、錯体化ガス供給源54から錯体化ガスを供給ガスライン6に供給する。MFC55は、錯体化ガスの流量を制御する。バルブ5AはMFC55の上流側に、バルブ5BはMFC55の下流側に配置されており、錯体化ガス供給ライン53を開閉する。
【0116】
実施の形態2では、被処理体のウエハW上に薄膜を形成する枚葉式のランプ加熱型CVD装置のチェンバを例に、処理容器90を説明する。
図9は、実施の形態2に係る処理容器90の説明図である。
処理容器90は、側壁91、天井壁92、載置台93、電源装置95及び加熱室96を含み、底部支持板94を含まない。
【0117】
側壁91の下部には、環状の突出部915が側壁91から処理容器90内部へ向かって突設されている。さらに、突出部915からは載置台93を支持する載置台支持枠916が設けられている。載置台93は円盤状をなし、載置台支持枠916の上に着設されている。
【0118】
載置台93の上に載置されるウエハWを保持するため、リング体939及び上下機構940が設けられている。リング体939は、接触部93A及び押さえリング93Bを含む。接触部93Aは、ウエハW上面の周縁部全体を上方から押さえる環状体である。押さえリング93Bは、接触部93Aと略同一の形状、サイズを有し、接触部93Aの上面に接着されている。上下機構940は、リング体939をモータ駆動で上下方向に移動させる構成部であり、突出部915に取り付けられている。上下機構940は、押さえリング93Bに着設されたアーム941を有す。アーム941は、リング体939を介して、下降する場合ウエハWを押さえ、上昇する場合ウエハWを開放する。
【0119】
加熱室96は、有底円筒状をなし、突出部915内側中空部の底部に取り付けられた透過窓961を介して、突出部915の下に配設されている。透過窓961は、例えば石英製である。加熱室96には、ウエハWを加熱する複数の加熱ランプ962が上下2枚の回転板963、964の所定位置に固定されている。回転板963、964は、回転軸965を介して回転機構966に接続されている。加熱室96側部の上部には、冷却エア導入口967が設けられている。冷却エア導入口967は、加熱室96上部に冷却エアを導入することにより、透過窓961及びその上の処理容器90内部の過熱を防止する。
【0120】
ここで、実施の形態2に係る、処理容器90内部に付着した金属を錯体化する反応例について説明する。実施の形態2で洗浄対象の金属は、例えばニッケル、コバルト、銅等である。ここでは、ニッケルを洗浄対象の金属とする。
【0121】
電源装置95は、処理容器90外部に設置されており、加熱室96内部に設置された加熱ランプ962及び処理容器90内部の各ヒータに夫々任意の電圧を印加する。電源装置95が加熱ランプ962及び各ヒータに印加する電圧は、手動で制御することもできるし、コンピュータ10で制御することもできる。処理容器90の温度は、電源装置95を介して制御される。
【0122】
ここで、実施の形態2に係る化学反応の一例について説明する。
ニッケルを酸素ガスで酸化する(化5)。
(化5)
2Ni+O2 →2NiO
次に、生成した中間生成物の酸化ニッケルをフッ化水素ガスでフッ化する(化6)
(化6)
NiO+2HF→NiF2 +H2 O↑
生成した中間生成物のフッ化ニッケルをHhfacガスで錯体化する(化7)。
(化7)
NiF2 +2Hhfac→Ni(hfac)2 ↑+2HF↑
【0123】
このように、実施の形態2に係るドライ洗浄方法は、金属を3工程の化学反応により錯体化する。第一の工程は金属酸化物の中間生成物を生成する工程であり、第二の工程は金属酸化物の中間生成物から金属フッ化物の中間生成物を生成する工程である。第三の工程は金属フッ化物の中間生成物から金属錯体を生成する工程である。
以下、化5に係る工程を第一工程、化6に係る工程を第二工程、化7に係る工程を第三工程と呼ぶ。また、金属錯体を気化する工程を第四工程と呼ぶ。
第一及び第二工程の温度は、例えば500℃である。
【0124】
フッ化金属を生成するにあたり、フッ化処理の前に金属を酸化して不動態化し、その後フッ化処理を行う。かかる場合、不動態酸化表面がフッ化の障害になることなく、逆に厚いフッ化層を形成することができる。
酸化処理を施してからフッ化処理を行ったフッ化膜の膜厚は、酸化処理を施さない場合に比べて約10倍である(特許第3094000号公報参照)。
【0125】
次に、実施の形態2に係る処理装置100の洗浄時の動作について説明する。
洗浄前の処理装置100の各ガスラインのバルブは閉じられている。また、洗浄前の処理装置100内部に被処理体のウエハWは載置されていない。
【0126】
コンピュータ10の制御部110は、排気ガスライン71のバルブ7Bを開き、ドライポンプ73による排気を開始する。制御部110は、ベントライン8及び供給ガスライン6のバルブを切り替え、ガスがベントライン8に流れるように設定する。
【0127】
制御部110は、圧力調整器72に第一工程の圧力を設定する。制御部110は、電源装置95を介して第一工程の温度を設定する。制御部110は、パージガス供給部3のバルブ3A、3B及び供給ガスライン6のバルブ6Aを開く。制御部110は、酸化ガス供給部210のバルブ21A、21Bを開く。
【0128】
制御部110は、ガスが安定化した場合、ベントライン8及び供給ガスライン6のバルブを切り替え、ガスが処理容器90を流れるように設定する。制御部110は、タイマ180からの信号に基づき、第一工程の経過時間を計時する。
処理容器90内部に、酸素ガス及び希釈ガスとしての窒素ガスからなる混合ガスが供給される。化5の反応により、処理容器90内部に酸化ニッケルが生成する。
【0129】
制御部110は、タイマ180からの信号に基づいて、所定時間が経過したと判断した場合、酸化ガス供給部210のバルブ21A、21Bを閉じる。
第一工程の後に、窒素ガスのみを処理容器90に供給することにより、処理容器90内部をパージする。制御部110は、タイマ180からの信号に基づいて、所定時間経過したと判断した場合、第二工程に移行する。
制御部110は、ベントライン8及び供給ガスライン6のバルブを切り替え、ガスがベントライン8に流れるように設定する。
【0130】
制御部110は、圧力調整器72に第二工程の圧力を設定する。制御部110は、電源装置95を介して第二工程の温度を設定する。制御部110は、フッ化ガス供給部220のバルブ22A、22Bを開く。
【0131】
制御部110は、ガスが安定化した場合、ベントライン8及び供給ガスライン6のバルブを切り替え、ガスが処理容器90を流れるように設定する。制御部110は、タイマ180からの信号に基づき、第二工程の経過時間を計時する。
処理容器90内部に、フッ化水素ガス及び希釈ガスとしての窒素ガスからなる混合ガスが供給される。化6の反応により、処理容器90内部にフッ化ニッケルが生成する。
【0132】
制御部110は、タイマ180からの信号に基づいて、所定時間が経過したと判断した場合、フッ化ガス供給部220のバルブ22A、22Bを閉じる。
第二工程の後に、窒素ガスのみを処理容器90に供給することにより、処理容器90内部をパージする。
制御部110は、タイマ180からの信号に基づいて、所定時間が経過したと判断した場合、第三工程に移行する。
制御部110は、ベントライン8及び供給ガスライン6のバルブを切り替え、ガスがベントライン8に流れるように設定する。
【0133】
制御部110は、圧力調整器72に第三工程の圧力を設定する。制御部110は、電源装置95を介して第三工程の温度を設定する。制御部110は、錯体化ガス供給部5のバルブ5A、5Bを開く。
【0134】
制御部110は、ガスが安定化した場合、ベントライン8及び供給ガスライン6のバルブを切り替え、ガスが処理容器90を流れるように設定する。制御部110は、タイマ180からの信号に基づき、第三工程の経過時間を計時する。
処理容器90内部に、Hhfacガス及び希釈ガスとしての窒素ガスからなる混合ガスが供給される。化7の反応により、処理容器90内部にニッケル錯体が生成する。
【0135】
制御部110は、タイマ180からの信号に基づいて、所定時間が経過したと判断した場合、錯体化ガス供給部5のバルブ5A、5Bを閉じ、第四工程に移行する。
制御部110は、ベントライン8及び供給ガスライン6のバルブを切り替え、ガスがベントライン8に流れるように設定する。
【0136】
制御部110は、圧力調整器72に第四工程の圧力を設定する。制御部110は、電源装置95を介して第四工程の温度を設定する。第四工程の温度及び圧力は、夫々第一、第二又は第三工程の温度及び圧力の値以下である。
【0137】
制御部110は、ガスが安定化した場合、ベントライン8及び供給ガスライン6のバルブを切り替え、ガスが処理容器90を流れるように設定する。制御部110は、タイマ180からの信号に基づき、第四工程の経過時間を計時する。
処理容器90内部のニッケル錯体は気化し、パージガス供給部3からの窒素ガスによって排気部7へ移送される。
【0138】
制御部110は、タイマ180からの信号に基づいて、所定時間が経過したと判断した場合、ベントライン8及び供給ガスライン6のバルブを切り替え、ガスがベントライン8に流れるように設定する。
【0139】
制御部110は、上記の第一、第二、第三及び第四工程を所定回数繰り返す。制御部110は、第一、第二、第三及び第四工程を所定回数繰り返したと判断した場合、電源装置95から加熱ランプ962等への給電を停止する。制御部110は、上流側から各バルブを閉じ、ドライポンプ73を停止させる。
【0140】
なお、第四工程を行わず、第三工程の圧力を低くして、第一、第二及び第三工程を繰り返す形態であってもよい。第三工程で金属錯体を合成すると同時に、合成した金属錯体が気化する場合があるからである。
【0141】
図10、図11及び図12は、実施の形態2に係る洗浄処理の手順を示すフローチャートである。以下、制御部110による洗浄処理を説明するが、バルブ切り替え処理及びバルブ開閉処理については省略する。
【0142】
制御部110は、排気を開始する(ステップS201)。制御部110は、第一工程の温度を電源装置95に、第一工程の圧力を圧力調整器72に設定する(ステップS202)。制御部110は、処理容器90に酸化ガスの供給を開始する(ステップS203)。制御部110は、第一工程の処理時間として所定時間が経過したか否か判断する(ステップS204)。制御部110は、第一工程の処理時間として所定時間が経過していないと判断した場合(ステップS204:NO)、ステップS204へ処理を戻す。制御部110は、第一工程の処理時間として所定時間が経過したと判断した場合(ステップS204:YES)、処理容器90への酸化ガスの供給を停止する(ステップS205)。
【0143】
制御部110は、処理容器90にパージガスを所定時間供給する(ステップS206)。制御部110は、第二工程の温度を電源装置95に、第二工程の圧力を圧力調整器72に設定する(ステップS207)。制御部110は、処理容器90にフッ化ガスの供給を開始する(ステップS208)。制御部110は、第二工程の処理時間として所定時間が経過したか否か判断する(ステップS209)。制御部110は、第二工程の処理時間として所定時間が経過していないと判断した場合(ステップS209:NO)、ステップS209へ処理を戻す。制御部110は、第二工程の処理時間として所定時間が経過したと判断した場合(ステップS209:YES)、処理容器90へのフッ化ガスの供給を停止する(ステップS210)。
【0144】
制御部110は、処理容器90にパージガスを所定時間供給する(ステップS211)。
制御部110は、第三工程の温度を電源装置95に、第三工程の圧力を圧力調整器72に設定する(ステップS212)。制御部110は、処理容器90に錯体化ガスの供給を開始する(ステップS213)。制御部110は、第三工程の処理時間として所定時間が経過したか否か判断する(ステップS214)。制御部110は、第三工程の処理時間として所定時間が経過していないと判断した場合(ステップS214:NO)、ステップS214へ処理を戻す。制御部110は、第三工程の処理時間として所定時間が経過したと判断した場合(ステップS214:YES)、処理容器90への錯体化ガスの供給を停止する(ステップS215)。
【0145】
制御部110は、第四工程の温度を電源装置95に、第四工程の圧力を圧力調整器72に設定する(ステップS216)。制御部110は、処理容器90にキャリアガスの供給を開始する(ステップS217)。制御部110は、第四工程の処理時間として所定時間が経過したか否か判断する(ステップS218)。制御部110は、第四工程の処理時間として所定時間が経過していないと判断した場合(ステップS218:NO)、ステップS218へ処理を戻す。制御部110は、第四工程の処理時間として所定時間が経過したと判断した場合(ステップS218:YES)、処理容器90へのキャリアガスの供給を停止する(ステップS219)。
【0146】
制御部110は、第一、第二、第三及び第四工程を所定回数繰り返したか否か判断する(ステップS220)。制御部110は、第一工程、第二工程及び第三工程を所定回数繰り返していないと判断した場合(ステップS220:NO)、ステップS202へ処理を戻す。制御部110は、第一、第二、第三及び第四工程を所定回数繰り返したと判断した場合(ステップS220:YES)、電源装置95への給電を停止する(ステップS221)。制御部110は、排気を停止する(ステップS222)。
【0147】
実施の形態2に係る処理装置100によれば、金属に対して酸化処理を施した後にフッ化処理を行う。これにより、酸素とフッ素の置換反応が起こって、厚いフッ化層が形成される。そのため、実施の形態2に係る処理装置100は、その後の錯体化ガスとの反応により生成する金属錯体の生成量を増加させることができ、処理容器90内部の洗浄速度をより速くすることができる。
【0148】
本実施の形態2は以上の如きであり、その他は実施の形態1と同様であるので、対応する部分には同一の参照番号を付してその詳細な説明を省略する。
【符号の説明】
【0149】
1 処理装置
2 酸化ハロゲン化ガス供給部
5 錯体化ガス供給部
9 処理容器
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理装置内部を洗浄する洗浄方法及び処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
処理装置の処理容器内部に付着した金属を洗浄する方法として、ドライ洗浄方法がある。例えば特許文献1には、酸化ガス又はハロゲン化ガスと錯体化ガスとを用いて蒸気圧の高い金属錯体を形成し、この金属錯体を気化させるドライ洗浄方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2519625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のドライ洗浄方法は、酸化ガス又はハロゲン化ガスと錯体化ガスとを高温下で同時に処理容器内部に流すため、酸化ガス又はハロゲン化ガスと錯体化ガスとが反応してしまい、金属の錯体化が十分進まない。
【0005】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであって、容器内部に付着した金属の錯体化の効率を向上させることができる洗浄方法及び処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願に係る洗浄方法は、容器内部にガスを供給し、該容器内部に付着した金属を供給したガスと化合させ、該金属及びガスが化合した金属化合物を気化させて該容器を洗浄する洗浄方法において、前記容器内部に酸化ガス又はハロゲン化ガスを供給して、容器内部に付着した金属に酸化処理又はハロゲン化処理を施す第一工程と、前記容器内部に錯体化ガスを供給して、酸化処理又はハロゲン化処理を施した金属に錯体化処理を施す第二工程とを備えることを特徴とする。
【0007】
本願に係る洗浄方法は、錯体化処理を施してなる金属錯体に気化の処理を施す第三工程を備えることを特徴とする。
【0008】
本願に係る洗浄方法は、前記第一工程又は第二工程における処理圧力を前記第三工程の処理圧力以上に設定することを特徴とする。
【0009】
本願に係る洗浄方法は、前記第一工程又は第二工程における処理温度を前記第三工程の処理温度以上に設定することを特徴とする。
【0010】
本願に係る洗浄方法は、前記第一工程及び第二工程を繰り返すことを特徴とする。
【0011】
本願に係る洗浄方法は、前記第一工程、第二工程及び第三工程を繰り返すことを特徴とする。
【0012】
本願に係る洗浄方法は、前記第一工程及び第二工程の間で、前記容器内部にパージガスを供給することを特徴とする。
【0013】
本願に係る洗浄方法は、前記第一工程又は第二工程の際、前記容器内部に水蒸気又はアルコールガスを供給することを特徴とする。
【0014】
本願に係る処理装置は、内部に収容した被処理体に金属成分を含む処理ガスを用いて処理を施す処理容器と、前記処理ガスの金属成分に含まれる金属が付着した処理容器内部に洗浄ガスを供給する洗浄ガス供給手段とを備え、前記処理容器内部に付着した金属を前記洗浄ガス供給手段が供給した洗浄ガスと化合させ、該金属及び洗浄ガスが化合した金属化合物を気化させて前記処理容器を洗浄する処理装置において、前記洗浄ガス供給手段は、前記処理容器内部に酸化ガス又はハロゲン化ガスを供給する第一ガス供給手段と、前記処理容器内部に錯体化ガスを供給する第二ガス供給手段とを含み、前記第一ガス供給手段が処理容器内部に酸化ガス又はハロゲン化ガスを供給した後、前記第二ガス供給手段が処理容器内部に錯体化ガスを供給するようにしてあることを特徴とする。
【0015】
本願に係る処理装置は、前記処理容器内部の圧力を制御する圧力制御手段を備え、該圧力制御手段は、前記第一ガス供給手段が酸化ガス又はハロゲン化ガスを供給する場合、又は前記第二ガス供給手段が錯体化ガスを供給する場合の処理容器内部の圧力を、前記錯体化ガスにより生成された金属錯体を気化させる場合の処理容器内部の圧力以上にするようにしてあることを特徴とする。
【0016】
本願に係る処理装置は、前記処理容器の温度を制御する温度制御手段を備え、該温度制御手段は、前記第一ガス供給手段が酸化ガス又はハロゲン化ガスを供給する場合、又は前記第二ガス供給手段が錯体化ガスを供給する場合の処理容器の温度を、前記錯体化ガスにより生成された金属錯体を気化させる場合の処理容器の温度以上にするようにしてあることを特徴とする。
【0017】
本願に係る洗浄方法にあっては、第一工程は、容器内部に酸化ガス又はハロゲン化ガスを供給し、容器内部に付着した金属を酸化又はハロゲン化する。第二工程は、容器内部に錯体化ガスを供給し、酸化又はハロゲン化した金属を錯体化する。
【0018】
本願に係る洗浄方法にあっては、第三工程は、第二工程により生成した金属錯体を気化させる。
【0019】
本願に係る洗浄方法にあっては、第一又は第二工程の圧力は、第三工程の圧力以上である。
【0020】
本願に係る洗浄方法にあっては、第一又は第二工程の温度は、第三工程の温度以上である。
【0021】
本願に係る洗浄方法にあっては、第一工程と第二工程とを繰り返す。
【0022】
本願に係る洗浄方法にあっては、第一工程と第二工程と第三工程とを繰り返す。
【0023】
本願に係る洗浄方法にあっては、第一及び第二工程の間で、容器内部にパージガスを供給する。
【0024】
本願に係る洗浄方法にあっては、第一又は第二工程の際に、容器内部に水蒸気又はアルコールガスを供給する。
【0025】
本願に係る処理装置にあっては、第一ガス供給手段は、処理容器内部に酸化ガス又はハロゲン化ガスを供給する。第二ガス供給手段は、処理容器内部に錯体化ガスを供給する。本願に係る処理装置は、第一ガス供給手段により処理容器に酸化ガス又はハロゲン化ガスを供給した後に、第二ガス供給手段により処理容器に錯体化ガスを供給する。
【0026】
本願に係る処理装置にあっては、第一ガス供給手段が酸化ガス又はハロゲン化ガスを処理容器に供給する場合、又は第二ガス供給手段が錯体化ガスを処理容器に供給する場合の処理容器内部の圧力が、錯体化ガスにより生成した金属錯体を気化させる場合の圧力以上になるように制御する。
【0027】
本願に係る処理装置にあっては、第一ガス供給手段が酸化ガス又はハロゲン化ガスを処理容器に供給する場合、又は第二ガス供給手段が錯体化ガスを処理容器に供給する場合の処理容器の温度が、錯体化ガスにより生成した金属錯体を気化させる場合の温度以上になるように制御する。
【発明の効果】
【0028】
容器内部に付着した金属の錯体化の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施の形態1に係る処理装置のブロック図である。
【図2】実施の形態1に係る処理容器の説明図である。
【図3】実施の形態1に係るコンピュータのブロック図である。
【図4】Hhfacの分解特性を示す説明図である。
【図5】実施の形態1に係る洗浄処理のタイムチャートの一例である。
【図6】実施の形態1に係る洗浄処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】実施の形態1に係る洗浄処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】実施の形態2に係る処理装置のブロック図である。
【図9】実施の形態2に係る処理容器の説明図である。
【図10】実施の形態2に係る洗浄処理の手順を示すフローチャートである。
【図11】実施の形態2に係る洗浄処理の手順を示すフローチャートである。
【図12】実施の形態2に係る洗浄処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面を参照して具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0031】
実施の形態1
実施の形態1に係る処理装置は、例えば半導体ウエハ、プラスチック基板等を被処理体とする成膜装置、アニール装置、パターン形成装置、エッチング装置等である。
図1は、実施の形態1に係る処理装置1のブロック図である。
処理装置1は、酸化ハロゲン化ガス供給部2、パージガス供給部3、促進ガス供給部4、錯体化ガス供給部5、供給ガスライン6、排気部7、ベントライン8、処理容器9、コンピュータ10及び図示しない処理ガス供給部を含む。
なお、処理装置1は処理ガス供給部を含まなくてもよい。処理ガス供給部は、処理装置1が例えば成膜装置である場合、成膜用処理ガスを処理容器9に供給する構成部である。
【0032】
酸化ハロゲン化ガス供給部2は、処理容器9に金属を酸化又はハロゲン化するガスを供給する構成部である。酸化ハロゲン化ガス供給部2は、酸化ハロゲン化ガス供給ライン21、MFC(Mass Flow Controller)22、バルブ2A、2Bを含む。酸化ハロゲン化ガス供給ライン21の上流側端には、図示しない酸化ハロゲン化ガス供給源が接続されている。図1における酸化・ハロゲン化ガスとは、酸化ガス又はハロゲン化ガスの意味である。酸化ハロゲン化ガス供給ライン21は、酸化ハロゲン化ガス供給源から酸化ガス又はハロゲン化ガスを、供給ガスライン6に供給する。MFC22は、酸化ガス又はハロゲン化ガスの流量を制御する。バルブ2AはMFC22の上流側に、バルブ2BはMFC22の下流側に配置されており、酸化ハロゲン化ガス供給ライン21を開閉する。
【0033】
酸化ハロゲン化ガス供給源には、例えば酸素、空気、炭酸ガス等の酸化ガス又はフッ化塩素、フッ化水素等のハロゲン化ガスが貯留されている。実施の形態1では、酸化ハロゲン化ガス供給源には酸素又はフッ化水素が貯留されており、夫々酸化ハロゲン化ガス供給部2は処理容器9に酸素又はフッ化水素を供給する。
【0034】
パージガス供給部3は、処理容器9にパージガス、希釈ガス、キャリアガス等のガスを供給する構成部である。パージガス供給部3が処理容器9に供給するガスは、例えばヘリウム、アルゴン等の不活性ガス又は窒素等のガスである。実施の形態1では、パージガス供給部3は窒素ガスを処理容器9に供給する。
【0035】
パージガス供給部3は、パージガス供給ライン31、MFC32、バルブ3A、3Bを含む。パージガス供給ライン31の上流側端には、図示しないパージガス供給源が接続されている。パージガス供給ライン31は、パージガス供給源から窒素ガスを供給ガスライン6に供給する。MFC32は、窒素ガスの流量を制御する。バルブ3AはMFC32の上流側に、バルブ3BはMFC32の下流側に配置されており、パージガス供給ライン31を開閉する。
【0036】
促進ガス供給部4は、処理容器9に処理容器9内部の洗浄に係る反応を促進するガスを供給する構成部である。促進ガス供給部4が処理容器9に供給するガスは、例えば水蒸気又はアルコールである。実施の形態1では、促進ガス供給部4は水蒸気を処理容器9に供給する。
【0037】
促進ガス供給部4は、促進ガス供給ライン41、MFC42、促進ガス供給源43、バルブ4A、4Bを含む。促進ガス供給ライン41は、促進ガス供給源43から水蒸気を供給ガスライン6に供給する。MFC42は、水蒸気の流量を制御する。バルブ4AはMFC42の上流側に、バルブ4BはMFC42の下流側に配置されており、促進ガス供給ライン41を開閉する。
【0038】
促進ガス供給源43は、ヒータを備えており、その内部には水が貯留されている。促進ガス供給源43は、ヒータにより貯留された水を加熱し、気化した水蒸気を促進ガス供給ライン41に供給する。
なお、処理装置1は、促進ガス供給部4を含まなくてもよい。
【0039】
錯体化ガス供給部5は、処理容器9に錯体化ガスを供給する構成部である。錯体化ガス供給部5が処理容器9に供給する錯体化ガスは、例えばHhfac(ヘキサフルオロアセチルアセトン)、MeCp(メチルシクロペンタジエン)、HCp(シクロペンタジエン)、PF3 (トリフルオロフォスフィン)等である。実施の形態1では、錯体化ガス供給部5はHhfacを処理容器9に供給する。
【0040】
錯体化ガス供給部5は、パージガスライン51、錯体化ガス原料容器52、錯体化ガス供給ライン53、バルブ5A、5Bを含む。パージガスライン51は、図示しないパージガス供給源からパージガス、希釈ガス等を錯体化ガス原料容器52に供給する。パージガス供給源が錯体化ガス原料容器52に供給するガスは、例えばヘリウム、アルゴン等の不活性ガス又は窒素等のガスである。実施の形態1では、パージガス供給源が錯体化ガス原料容器52に供給するガスは、窒素である。また、錯体化ガスの蒸気圧が低い場合、パージガス供給源が錯体化ガス原料容器52に供給するガスは、錯体化ガス原料容器52に貯留された錯体化ガスの原料をバブリングする作用も有している。
【0041】
錯体化ガス原料容器52には、Hhfacが貯留されている。錯体化ガス供給ライン53は、錯体化ガス原料容器52からHhfacを供給ガスライン6に供給する。バルブ5Aはパージガスライン51を開閉し、バルブ5Bは錯体化ガス供給ライン53を開閉する。
【0042】
なお、酸化ハロゲン化ガス供給部2の酸化ハロゲン化ガス供給源、パージガス供給部3及び錯体化ガス供給部5のパージガス供給部、並びに促進ガス供給部4の促進ガス供給源43は、処理装置1に含まれなくてもよい。
【0043】
酸化ハロゲン化ガス供給ライン21、パージガス供給ライン31及び促進ガス供給ライン41の下流側端は合流し、供給ガスライン6に接続されている。供給ガスライン6の下流側端は処理容器9に接続されている。供給ガスライン6は、上流側のバルブ6A及び下流側のバルブ6Bにより開閉されるように構成されている。錯体化ガス供給ライン53の下流側端は、バルブ6A及びバルブ6Bの間の供給ガスライン6に接続されている。
【0044】
なお、酸化ハロゲン化ガス供給ライン21、パージガス供給ライン31、促進ガス供給ライン41、錯体化ガス供給ライン53及び供給ガスライン6を構成する配管の外周には、図示しないヒータが設けられている。この配管外周のヒータの加熱により、処理容器9に供給されるガスを加熱することが可能である。
【0045】
排気部7は、排気ガスライン71、圧力調整器72、ドライポンプ73、除害装置74、排気パージガス供給ライン75及びバルブ7A、7B、7Cを含む。バルブ7A及び7Bは、排気ガスライン71を開閉するバルブである。バルブ7Cは、排気パージガス供給ライン75を開閉するバルブである。排気ガスライン71の上流側端は、処理容器9に接続されている。排気ガスライン71の上流から下流へ向かって、バルブ7A、圧力調整器72、バルブ7B、ドライポンプ73、除害装置74の順に接続されている。
【0046】
排気パージガス供給ライン75は、排気ガスライン71にパージガス、希釈ガス、キャリアガス等のガスを供給する。排気パージガス供給ライン75の下流側端はバルブ7A及び圧力調整器72の間の排気ガスライン71に接続されている。排気パージガス供給ライン75の上流側端には、図示しないパージガス供給源が接続されている。このパージガス供給源が排気パージガス供給ライン75に供給するガスは、例えばヘリウム、アルゴン等の不活性ガス又は窒素等のガスである。実施の形態1では、パージガス供給源は窒素ガスを排気パージガス供給ライン75に供給する。
なお、排気部7のパージガス供給源は、処理装置1に含まれなくてもよい。
【0047】
圧力調整器72は、例えばAPC(Auto Pressure Controller)であり、ガスの流れ方を変えることにより処理容器9内部の圧力を設定された圧力に制御する。圧力調整器72への圧力の設定は、手動で行うこともできるし、コンピュータ10を介して行うこともできる。
圧力調整器72は、コンピュータ10と信号の送受信を行う。圧力調整器72は、コンピュータ10から設定圧力の信号を受信した場合、受信した信号に対応した圧力を制御対象の圧力に設定する。
なお、圧力調整器72による圧力制御と共に、MFC22、32、42による流量制御を併用して、処理容器9内部の圧力を制御してもよい。
【0048】
ドライポンプ73は、排気ガスライン71を介して処理容器9内部の雰囲気を排気する。ドライポンプ73は、真空ポンプの一例であり、例えばターボ分子ポンプであってもよい。
【0049】
除害装置74は、ドライポンプ73から排出された有害又は危険なガス成分を取り除く。そのため、除害装置74には有害又は危険なガス成分を吸着または分解するための薬剤の入った筒が収納されている。
【0050】
ベントライン8は、処理容器9に供給するガスを試験的に流すガスラインである。ベントライン8は、急にガスを処理容器に流す場合、安定していない流れが処理容器9に供給されることを防止するため、処理容器9をバイパスして上流側から下流側へ接続されている。具体的には、ベントライン8の上流側端は、供給ガスライン6のバルブ6A及び6Bの間に接続され、ベントライン8の下流側端は、排気ガスライン71のバルブ7A及び圧力調整器72の間に接続されている。
【0051】
ガスをベントライン8に流すためには、供給ガスライン6のバルブ6B及び排気ガスライン71の7Aを閉じ、ベントライン8のバルブ8Aを開く。一方、ガスを処理容器9に流すためには、供給ガスライン6のバルブ6B及び排気ガスライン71の7Aを開き、ベントライン8のバルブ8Aを閉じる。以下、ガスをベントライン8と処理容器9との間で選択的に流すために、上記の各バルブの開閉を行うことを、ベントライン8及び供給ガスライン6のバルブを切り替えると記す。
【0052】
処理容器9は、成膜装置、アニール装置等のチェンバに該当する。実施の形態1では、被処理体のウエハ上に薄膜を形成する枚葉式の抵抗加熱型CVD装置のチェンバを例に、処理容器9を説明する。なお、抵抗加熱型CVD装置は、枚葉式に限られるものではなく、バッチ式であってもよいことは勿論である。
図2は、実施の形態1に係る処理容器9の説明図である。
処理容器9は、略円柱状の形状をなし、側壁91、天井壁92、載置台93、底部支持板94及び電源装置95を含む。側壁91の上端に天井壁92が、側壁91の下端に底部支持板94が接合されている。載置台93は、処理容器9の中央に配設されている。
【0053】
側壁91は略円筒状をなし、例えばアルミニウム等から構成される。側壁91の内部にはウォールヒータ911が内装されており、ウォールヒータ911は側壁91を所望の温度、例えば常温から250℃まで昇温させることができる。側壁91には、排気口912、ウエハ挿入口913及びのぞき窓914が開口されている。排気口912は、処理容器9の下部に設けられており、排気部7の排気ガスライン71の上流側端と接続されている。ウエハ挿入口913は、処理容器9の天井近傍に設けられており、図示しない外部のロードロック室とゲートバルブを介して接続されている。図示しない搬送手段により、ウエハWはウエハ挿入口913を通じてロードロック室と処理容器9との間を搬送される。のぞき窓914は、ウエハ挿入口913と対向する側壁91に設けられている。のぞき窓914には、石英板が隙間なく嵌め込まれている。
【0054】
天井壁92は、略円盤状をなし、ヒンジ部921を介して側壁91上端と着脱自在に構成されている。天井壁92には、天井ヒータ922が内蔵されている。天井ヒータ922は、天井壁92を所望の温度、例えば常温から250℃まで昇温させることができる。天井壁92の中央には、供給ガスライン6の下流側端と接続される開口が形成されている。
この開口を取り巻く天井壁92の内面には、有底円筒状のシャワーヘッド923が気密に設けられている。シャワーヘッド923の底板には、ガス噴出口924が複数穿設されている。供給ガスライン6からシャワーヘッド923内に供給された成膜用処理ガス又はフッ化水素等の洗浄ガスは、ガス噴出口924を通じて、処理容器9内部の載置台93へ向けて均等に噴出される。
【0055】
載置台93は、載置台本体930、底板931及び支持体932を含む。円柱状の載置台本体930の上には、被処理体のウエハWが載置される。なお、載置台本体930の上部に、ウエハWを吸着、保持するための静電チャックを設けてもよい。
載置台本体930の下には、載置台本体930と同一半径を有する円柱状の底板931が配置されている。載置台本体930及び底板931は、底板931の下に位置する略円筒状の支持体932によって支持されている。
【0056】
底板931上面と接する載置台本体930の下部には、ステージヒータ933が設けられている。ステージヒータ933は、絶縁体の中に略帯状の発熱体、例えばタングステンワイヤ、カーボンワイヤ等を所定のパターン、例えば渦巻き状に埋設した構成からなる。ステージヒータ933は、所定の温度、例えば400℃から2000℃まで発熱して、載置台本体930上に載置したウエハWを所定の温度、例えば800℃に維持することができる。
【0057】
底板931の内部には、冷却水溜934が設けられている。冷却水パイプ935によって冷却水が冷却水溜934に供給されることにより、冷却水が冷却水溜934内を循環するように構成されている。
【0058】
載置台本体930内部には、温度センサ936の検知部937が埋め込まれており、温度センサ936が載置台本体930内部の温度を逐次検出するように構成されている。温度センサ936は、検出温度に対応する信号をコンピュータ10へ送信する。
【0059】
載置台本体930上部には、棒状のリフタピン938が形成されている。リフタピン938は、モータ駆動で上下に移動することにより、載置台本体930上面に載置するウエハWをリフトアップ又はリフトダウンさせる。
【0060】
底部支持板94は、側壁91の半径と略同一の外径及び支持体932の半径と略同一の内径を有す環状板である。底部支持板94は、側壁91下端部及び支持体932下端部と接合され、天井壁92と共に処理容器9内部を気密に密閉している。
【0061】
電源装置95は、処理容器9外部に設置されており、処理容器9内部に設置されたウォールヒータ911、天井ヒータ922及びステージヒータ933に夫々任意の電圧を印加する。電源装置95が各ヒータに印加する電圧は、手動で制御することもできるし、コンピュータ10で制御することもできる。処理容器9の温度は、電源装置95を介して制御される。
【0062】
コンピュータ10は、処理容器9内部の温度と圧力とを制御する。
なお、処理装置1は、コンピュータ10を含まなくてもよい。かかる場合、手動により処理容器9内部の温度と圧力とを制御する。
【0063】
図3は、実施の形態1に係るコンピュータ10のブロック図である。
コンピュータ10は、制御部110、ROM(Read Only Memory)120、RAM(Random Access Memory)130、通信部140、操作部150、表示部160、外部インタフェース170及びタイマ180を含む。
【0064】
ROM120の内部には、各種プログラムが記憶されている。
制御部110は、ROM120からプログラムを読み込み、各種処理を実行する。例えば、制御部110は、バルブ2A、2B等の各バルブの開閉を制御する。制御部110は、MFC22、32、42を制御する。制御部110は、温度センサ936からの信号に基づいて、電源装置95を制御することにより、側壁91、天井壁92及び載置台本体930の温度を所望の設定温度に制御する。また、制御部110は、圧力調整器72に圧力の設定をする。
【0065】
RAM130は、作業用の変数、入力値等を一時的に記録する。
通信部140は、処理装置1の各構成部から送信される信号又はデータを受信する。また、通信部140は、制御部110の命令を処理装置1の各構成部へ送信する。
【0066】
操作部150は、キーボード、マウス等の入力機器を含み、ユーザは操作部150を介してコンピュータ10を操作する。表示部160は、操作部150を介して入力された入力値、制御部110が実行した処理結果等を表示する。
【0067】
外部インタフェース170は、USB(Universal Serial Bus)メモリ、CD−ROM(Compact Disc-Read Only Memory)等の可搬型記録媒体1Aと情報のやり取りをするインタフェースである。また、外部インタフェース170はインターネット等の通信網Nに接続することができるインタフェースでもある。
タイマ180は、計時を信号として制御部110に送信する。
【0068】
実施の形態1に係る処理装置1を動作させるための各種プログラムは、外部インタフェース170に可搬型記録媒体1Aを読み取らせて、RAM130に記録してもよい。また、当該各種プログラムは、外部インタフェース170及びインターネット等の通信網Nを介して接続される他のサーバコンピュータ(図示せず)からダウンロードすることも可能である。
【0069】
ここで、実施の形態1に係る処理容器9内部に付着した金属を錯体化する反応例について説明する。実施の形態1で洗浄対象の金属は、例えばニッケル、コバルト、銅等である。ここでは、ニッケル及びコバルトを洗浄対象の金属とする。
【0070】
洗浄対象の金属が例えばニッケルである場合、ニッケルをフッ化水素ガスでハロゲン化する(化1)。
(化1)
Ni+2HF→NiF2 +H2 ↑
次に、生成した中間生成物のフッ化ニッケルをHhfacガスで錯体化する(化2)。
(化2)
NiF2+2Hhfac→Ni(hfac)2 ↑+2HF↑
【0071】
錯体化する中間生成物は、金属ハロゲン化物に限らず、金属酸化物であってもよい。洗浄対象の金属が例えばコバルトである場合、コバルトを酸素ガスで酸化する(化3)。
(化3)
3Co+2O2 →Co3 O4
生成した中間生成物の酸化コバルトをHhfacガスで錯体化する(化4)。
(化4)
Co3 O4 +8Hhfac→Co(2)(hfac)2 ↑+2Co(3)(hfac)3 ↑+4H2 O↑
【0072】
このように、実施の形態1に係る洗浄方法は、金属を2工程の化学反応により錯体化する。第一の工程は金属を錯体化しやすくするための中間生成物を生成する工程であり、第二の工程は中間生成物から金属錯体を生成する工程である。
以下、化1及び化3に係る処理を第一工程、化2及び化4に係る工程を第二工程と呼ぶ。
【0073】
第一及び第二工程は、温度及び圧力が高いほど反応速度が速くなる。しかし、温度が500℃を超えると、処理装置1に搭載された計器及び処理容器9に損傷を与えるため、第一及び第二工程は500℃以下で行われる。
【0074】
第二工程の温度は、錯体化ガスの分解温度よりも低くする。
図4は、Hhfacの分解特性を示す説明図である。縦軸はHhfacの分解率であり、横軸は温度である。図4からわかるように、Hhfacは400℃以上の場合、温度が高いほど急速に分解する。そこで、第二工程の温度は、400℃以下が好ましい。
一方、反応速度を担保するため、第一及び第二工程の温度は100℃以上であることが好ましい。
【0075】
第一及び第二工程の圧力は、例えば1Torr以上である。
【0076】
処理容器9内部の洗浄のために、第二工程で生成した金属錯体を気化させる。以下、この気化の工程を第三工程と呼ぶ。第二工程で生成した金属錯体は蒸気圧が高いため、第三工程の温度は、第一又は第二工程の温度以下の値に設定することができる。第三工程の温度は、例えば150℃〜200℃である。第三工程の圧力は、金属錯体の蒸気圧以下であり、第一又は第二工程の圧力以下である。
【0077】
なお、第二工程の圧力をかなり高圧にした場合、第三工程の圧力に変更するための減圧時間が長くなる。そのため、洗浄処理の能率に鑑み、第二工程の圧力は低めに設定することが好ましい。
また、十分な洗浄速度が確保できるのであれば、処理装置1の運用上、第一及び第二工程の温度及び圧力を夫々第三工程の温度及び圧力と同じにしてもよい。かかる場合、パーティクル低減、温度及び圧力の安定性等に資するからである。
【0078】
上記の各工程における温度及び圧力の条件は、一例に過ぎず、上記に限定されない。各工程における温度及び圧力の条件は、目的に応じて適宜好ましい条件を選択することができる。
【0079】
次に、実施の形態1に係る処理装置1の洗浄時の動作について説明する。
洗浄前の処理装置1内部には、被処理体のウエハWは搬出されている。また、洗浄前の処理装置1の各ガスラインのバルブは閉じられている。促進ガス供給部4の促進ガス供給源43の水は、ヒータにより水蒸気に気化している。
【0080】
コンピュータ10の制御部110は、排気ガスライン71のバルブ7Bを開き、ドライポンプ73による排気を開始する。制御部110は、ベントライン8及び供給ガスライン6のバルブを切り替え、ガスがベントライン8に流れるように設定する。
【0081】
制御部110は、圧力調整器72に第一工程の圧力を設定する。制御部110は、電源装置95を介して第一工程の温度を設定する。制御部110は、パージガス供給部3のバルブ3A、3B及び供給ガスライン6のバルブ6Aを開く。制御部110は、酸化ハロゲン化ガス供給部2のバルブ2A、2Bを開く。制御部110は、促進ガス供給部4のバルブ4A、4Bを開く。
【0082】
制御部110は、ガスが安定化した場合、ベントライン8及び供給ガスライン6のバルブを切り替え、ガスが処理容器9を流れるように設定する。制御部110は、タイマ180からの信号に基づき、第一工程の経過時間を計時する。
処理容器9内部に、酸素ガス又はフッ化水素ガスと、希釈ガスとしての窒素ガスと、促進ガスとしての水蒸気とからなる混合ガスが供給される。化1又は化3の反応により、処理容器9内部に夫々フッ化ニッケル又は酸化コバルトが生成する。
【0083】
制御部110は、タイマ180からの信号に基づいて、所定時間が経過したと判断した場合、酸化ハロゲン化ガス供給部2のバルブ2A、2Bを閉じる。同様に、制御部110は、促進ガス供給部4のバルブ4A、4Bを閉じる。
第一工程の後に、パージガス供給部3から窒素ガスのみを処理容器9に供給することにより、処理容器9内部をパージする。制御部110は、タイマ180からの信号に基づいて、所定時間経過したと判断した場合、第二工程に移行する。
制御部110は、ベントライン8及び供給ガスライン6のバルブを切り替え、ガスがベントライン8に流れるように設定する。
【0084】
制御部110は、圧力調整器72に第二工程の圧力を設定する。制御部110は、電源装置95を介して第二工程の温度を設定する。制御部110は、錯体化ガス供給部5のバルブ5A、5Bを開く。制御部110は、促進ガス供給部4のバルブ4A、4Bを開く。
【0085】
制御部110は、ガスが安定化した場合、ベントライン8及び供給ガスライン6のバルブを切り替え、ガスが処理容器9を流れるように設定する。制御部110は、タイマ180からの信号に基づき、第二工程の経過時間を計時する。
処理容器9内部に、Hhfacガスと、希釈ガスとしての窒素ガスと、促進ガスとしての水蒸気とからなる混合ガスが供給される。化2又は化4の反応により、処理容器9内部に夫々ニッケル錯体又はコバルト錯体が生成する。
【0086】
制御部110は、タイマ180からの信号に基づいて、所定時間が経過したと判断した場合、錯体化ガス供給部5のバルブ5A、5Bを閉じる。同様に、制御部110は、促進ガス供給部4のバルブ4A、4Bを閉じる。
制御部110は、タイマ180からの信号に基づいて、所定時間経過したと判断した場合、第三工程に移行する。
制御部110は、ベントライン8及び供給ガスライン6のバルブを切り替え、ガスがベントライン8に流れるように設定する。
【0087】
制御部110は、圧力調整器72に第三工程の圧力を設定する。制御部110は、電源装置95を介して第三工程の温度を設定する。第三工程の温度及び圧力は、夫々第一又は第二工程の温度及び圧力の値以下である。
【0088】
制御部110は、ガスが安定化した場合、ベントライン8及び供給ガスライン6のバルブを切り替え、ガスが処理容器9を流れるように設定する。制御部110は、タイマ180からの信号に基づき、第三工程の経過時間を計時する。
処理容器9内部のニッケル錯体又はコバルト錯体は気化し、パージガス供給部3からの窒素ガスによって排気部7へ移送される。
【0089】
制御部110は、タイマ180からの信号に基づいて、所定時間が経過したと判断した場合、ベントライン8及び供給ガスライン6のバルブを切り替え、ガスがベントライン8に流れるように設定する。
【0090】
制御部110は、上記の第一、第二及び第三工程を所定回数繰り返す。制御部110は、第一、第二及び第三工程を所定回数繰り返したと判断した場合、電源装置95からステージヒータ933等への給電を停止する。制御部110は、上流側から各バルブを閉じ、ドライポンプ73を停止させる。
【0091】
なお、上記では第一、第二及び第三工程を所定回数繰り返したが、第三工程を行わず、第二工程の圧力を低くして、第一及び第二工程を繰り返す形態であってもよい。第二工程で金属錯体を合成すると同時に、合成した金属錯体が気化する場合があるからである。
【0092】
図5は、実施の形態1に係る洗浄処理のタイムチャートの一例である。横軸は時間である。(1)、(2)及び(3)は、夫々第一、第二及び第三工程に対応する。図5Aは、処理容器9への酸化ガス又はハロゲン化ガスの供給の有無を示している。図5Bは、処理容器9への錯体化ガスの供給の有無を示している。図5Cは、処理容器9の内部圧力を定性的に示している。
【0093】
第一工程で、処理容器9に酸化ガス又はハロゲン化ガスが供給される。第二工程で、処理容器9に錯体化ガスが供給される。第三工程で、錯体化ガスが気化される。処理容器9の内部圧力については、第一又は第二工程の圧力は、第三工程の圧力以上である。
図5Cと類似のことが、第一又は第二工程と第三工程との温度についても言え、第一又は第二工程の温度は、第三工程の温度以上である。
【0094】
図6及び図7は、実施の形態1に係る洗浄処理の手順を示すフローチャートである。以下、制御部110による洗浄処理を説明するが、バルブ切り替え処理及びバルブ開閉処理については省略する。また、反応促進ガスの供給及び停止についても省略する。
【0095】
制御部110は、排気を開始する(ステップS101)。制御部110は、第一工程の温度を電源装置95に、第一工程の圧力を圧力調整器72に設定する(ステップS102)。制御部110は、処理容器9に酸化ガス又はハロゲン化ガスの供給を開始する(ステップS103)。制御部110は、第一工程の処理時間として所定時間が経過したか否か判断する(ステップS104)。制御部110は、第一工程の処理時間として所定時間が経過していないと判断した場合(ステップS104:NO)、ステップS104へ処理を戻す。制御部110は、第一工程の処理時間として所定時間が経過したと判断した場合(ステップS104:YES)、処理容器9への酸化ガス又はハロゲン化ガスの供給を停止する(ステップS105)。
【0096】
制御部110は、処理容器9にパージガスを所定時間供給する(ステップS106)。制御部110は、第二工程の温度を電源装置95に、第二工程の圧力を圧力調整器72に設定する(ステップS107)。制御部110は、処理容器9に錯体化ガスの供給を開始する(ステップS108)。制御部110は、第二工程の処理時間として所定時間が経過したか否か判断する(ステップS109)。制御部110は、第二工程の処理時間として所定時間が経過していないと判断した場合(ステップS109:NO)、ステップS109へ処理を戻す。制御部110は、第二工程の処理時間として所定時間が経過したと判断した場合(ステップS109:YES)、処理容器9への錯体化ガスの供給を停止する(ステップS110)。
【0097】
制御部110は、第三工程の温度を電源装置95に、第三工程の圧力を圧力調整器72に設定する(ステップS111)。制御部110は、処理容器9にキャリアガスの供給を開始する(ステップS112)。制御部110は、第三工程の処理時間として所定時間が経過したか否か判断する(ステップS113)。制御部110は、第三工程の処理時間として所定時間が経過していないと判断した場合(ステップS113:NO)、ステップS113へ処理を戻す。制御部110は、第三工程の処理時間として所定時間が経過したと判断した場合(ステップS113:YES)、処理容器9へのキャリアガスの供給を停止する(ステップS114)。
【0098】
制御部110は、上記の第一、第二及び第三工程を所定回数繰り返したか否か判断する(ステップS115)。制御部110は、第一、第二及び第三工程を所定回数繰り返していないと判断した場合(ステップS115:NO)、ステップS102へ処理を戻す。制御部110は、第一、第二及び第三工程を所定回数繰り返したと判断した場合(ステップS115:YES)、電源装置95への給電を停止する(ステップS116)。制御部110は、排気を停止する(ステップS117)。
【0099】
半導体ウエハ、プラスチック基板等の被処理体に成膜、エッチング、アニール等の処理を行う処理容器の内壁には、各処理に付随して、いたるところに金属膜の堆積、付着等が起こる。また、被処理体を載置する載置台、被処理体を保持する治具等にも金属膜の堆積、付着等が起こる。これら処理容器内部に堆積、付着した金属膜は剥離し、不要な金属としてウエハ等の上に形成した膜に取り込まれる。あるいは、これら処理容器内部に堆積、付着した金属膜はウエハ等の表面に付着する。このような金属汚染は、ウエハ等から構成されるデバイスの歩留り低下を招来する。そのため、治具等を含めて処理容器内部を適宜洗浄する必要がある。
【0100】
処理容器の洗浄方法として、処理容器の解体を伴わないドライ洗浄方法が主流である。例えば、処理容器内部の不要な金属をハロゲン化ガスと化合させて金属ハロゲン化物を生成し、この金属ハロゲン化物を気化及び除去する。しかし、ニッケル、コバルト、銅等の金属ハロゲン化物は引き合うクーロン力が強く、蒸気圧が低いので、これらの金属ハロゲン化物を気化して処理容器内部から除去するためには、高温処理が必要となる。例えば、フッ化ニッケルを気化する場合、1.0Torrの圧力では、1000℃以上に処理容器を加熱する必要がある。このような高温下に処理容器を置いた場合、処理装置に搭載された計器及び処理容器は破損する。処理装置のメンテナンスに鑑み、処理容器の加熱温度は500℃以下が好ましい。
【0101】
そこで、錯体化ガスを処理容器に供給し、不要な金属を金属ハロゲン化物よりも蒸気圧の高い金属錯体にして気化及び除去することが行われている。その際、金属の錯体化の反応速度を上げるために、金属は酸化ガス又はハロゲン化ガスにより、夫々酸化物又はハロゲン化物の中間生成物にされる。これらの中間生成物が錯体化ガスと反応し、金属錯体が生成する。その際、金属の酸化又はハロゲン化は、錯体化と同時に行われる。さらに、金属の錯体化と金属錯体の気化も同時に行われる。
【0102】
しかし、酸化ガス又はハロゲン化ガスを錯体化ガスと同時に処理容器に供給する場合、洗浄環境は高温(数百℃以上)であるため、錯体化ガスは酸化ガス又はハロゲン化ガスにより分解される。また、分解した錯体化ガスに由来する不要な生成物が処理容器内部に付着する。さらに、金属の錯体化をスムーズに行うには高圧が適しており、金属錯体を気化させる圧力は低圧が適していることから、金属の錯体化と金属錯体の気化とを同一圧力下で行う場合も、処理容器等の洗浄速度は低下する。処理容器等の洗浄速度の低下は、処理装置の稼働率の低下、ひいてはデバイス製造能率の低下につながる。
【0103】
実施の形態1に係る処理装置1によれば、処理容器9に酸化ガス又はハロゲン化ガスを錯体化ガスと同時には供給しない。そのため、実施の形態1に係る処理装置1は、錯体化ガスの分解を回避すると共に、分解した錯体化ガスに由来する不要な生成物を生成しない。従って、実施の形態1に係る処理装置1は、処理装置1内部に付着した金属の錯体化の効率を向上させることができる。また、実施の形態1に係る処理装置1は、錯体化ガスを分解しないので、処理容器9に供給する錯体化ガス消費量を低減することができる。
【0104】
実施の形態1に係る処理装置1によれば、処理容器9に酸化ガス又はハロゲン化ガスと、錯体化ガスとを工程ごとに分けて供給する。また、実施の形態1に係る処理装置1によれば、金属の錯体化と金属錯体の気化とを工程ごとに分けて行う。そのため、実施の形態1に係る処理装置1は、酸化又はハロゲン化に適した処理条件、錯体化に適した処理条件、金属錯体の気化に適した処理条件を夫々選択することができる。そのため例えば、錯体化ガスを供給する過程で、反応温度を錯体化ガスの分解温度以下に制御することができる。従って、実施の形態1に係る処理装置1は、各工程の処理条件を最適化することにより、処理容器9の内面、処理容器9内部の治具等に堆積又は付着した不要な金属を除去する速度を向上させることができる。
【0105】
実施の形態1に係る処理装置1によれば、金属を酸化又はハロゲン化する工程、金属を錯体化する工程、及び金属錯体を気化する工程を繰り返す。そのため、実施の形態1に係る処理装置1によれば、洗浄対象の金属の表面は処理前の初期状態を繰り返すので、洗浄に係る反応の低下を防ぐことができる。さらに、洗浄ガスが洗浄対象の金属の深くまで侵入できない場合でも、実施の形態1に係る処理装置1は、洗浄工程を繰り返すことにより、金属を完全に除去することができる。
なお、金属を錯体化する工程の圧力を低く設定することにより、金属を酸化又はハロゲン化する工程、及び金属を錯体化する工程を繰り返すだけで、金属を除去することができる場合がある。すなわち、金属の錯体化と、錯体化によって生じた金属錯体の気化とを同時に進行させることができる場合がある。
【0106】
実施の形態1に係る処理装置1によれば、金属を酸化又はハロゲン化する工程と、金属を錯体化する工程との間に、処理容器9にパージガスを供給する。錯体化ガスを処理容器9内部に供給する際に、酸化ガス又はハロゲン化ガスが残留していた場合、酸化ガス又はハロゲン化ガスが錯体化ガスを分解する。そのため、実施の形態1に係る処理装置1は、処理容器9をパージしてから錯体化ガスを供給することにより、錯体化ガス消費量を低減することができる。また、実施の形態1に係る処理装置1は、錯体化ガスの分解物に起因する不要な生成物が処理容器9内部に付着することを回避することができる。
【0107】
実施の形態1に係る処理装置1によれば、金属を酸化又はハロゲン化する工程と、金属を錯体化する工程とにおいて、処理容器9に水蒸気又はアルコールを供給する。水蒸気又はアルコールは、酸化、ハロゲン化及び錯体化を促進する作用があるため、金属を除去する速度が向上する。
【0108】
なお、実施の形態1に係る洗浄方法及び処理装置1は、成膜装置等で用いられるウエハW等の表面から金属を洗浄するためにも利用できることは勿論である。
【0109】
実施の形態2
実施の形態2は、金属をフッ化するために、金属を酸化してからフッ化する形態に関する。また、実施の形態2における処理装置は、枚葉式のランプ加熱型CVD装置である。
【0110】
図8は、実施の形態2に係る処理装置100のブロック図である。
以下、実施の形態2に係る処理装置100に関して、実施の形態1で説明した処理装置1と異なる部分について説明する。
処理装置100は、酸化ハロゲン化ガス供給部2及び促進ガス供給部4を含まず、酸化ガス供給部210及びフッ化ガス供給部220を含む。
【0111】
酸化ガス供給部210は、処理容器90に金属を酸化するガスを供給する構成部である。酸化ガス供給部210は、酸化ガス供給ライン211、MFC212、バルブ21A、21Bを含む。酸化ガス供給ライン211の上流側端には、図示しない酸化ガス供給源が接続されている。酸化ガス供給ライン211は、酸化ガス供給源から酸化ガスを供給ガスライン6に供給する。MFC212は、酸化ガスの流量を制御する。バルブ21AはMFC212の上流側に、バルブ21BはMFC212の下流側に配置されており、酸化ガス供給ライン211を開閉する。
【0112】
酸化ガス供給源には、例えば酸素、空気、炭酸ガス等の酸化ガスが貯留されている。実施の形態2では、酸化ガス供給源には酸素が貯留されており、酸化ガス供給部210は処理容器90に酸素を供給する。
【0113】
フッ化ガス供給部220は、処理容器90に金属をフッ化するガスを供給する構成部である。フッ化ガス供給部220は、フッ化ガス供給ライン221、MFC222、バルブ22A、22Bを含む。フッ化ガス供給ライン221の上流側端には、図示しないフッ化ガス供給源が接続されている。フッ化ガス供給ライン221は、フッ化ガス供給源からフッ化ガスを供給ガスライン6に供給する。MFC222は、フッ化ガスの流量を制御する。バルブ22AはMFC222の上流側に、バルブ22BはMFC222の下流側に配置されており、フッ化ガス供給ライン221を開閉する。
【0114】
フッ化ガス供給源には、例えばフッ化塩素、フッ化水素等のフッ化ガスが貯留されている。実施の形態2では、フッ化ガス供給源にはフッ化水素が貯留されており、フッ化ガス供給部220は処理容器90にフッ化水素を供給する。
【0115】
実施の形態2では、錯体化ガスはバブリングではなく、MFCで供給される。
錯体化ガス供給部5は、錯体化ガス供給源54、錯体化ガス供給ライン53、MFC55、バルブ5A、5Bを含む。錯体化ガス供給ライン53は、錯体化ガス供給源54から錯体化ガスを供給ガスライン6に供給する。MFC55は、錯体化ガスの流量を制御する。バルブ5AはMFC55の上流側に、バルブ5BはMFC55の下流側に配置されており、錯体化ガス供給ライン53を開閉する。
【0116】
実施の形態2では、被処理体のウエハW上に薄膜を形成する枚葉式のランプ加熱型CVD装置のチェンバを例に、処理容器90を説明する。
図9は、実施の形態2に係る処理容器90の説明図である。
処理容器90は、側壁91、天井壁92、載置台93、電源装置95及び加熱室96を含み、底部支持板94を含まない。
【0117】
側壁91の下部には、環状の突出部915が側壁91から処理容器90内部へ向かって突設されている。さらに、突出部915からは載置台93を支持する載置台支持枠916が設けられている。載置台93は円盤状をなし、載置台支持枠916の上に着設されている。
【0118】
載置台93の上に載置されるウエハWを保持するため、リング体939及び上下機構940が設けられている。リング体939は、接触部93A及び押さえリング93Bを含む。接触部93Aは、ウエハW上面の周縁部全体を上方から押さえる環状体である。押さえリング93Bは、接触部93Aと略同一の形状、サイズを有し、接触部93Aの上面に接着されている。上下機構940は、リング体939をモータ駆動で上下方向に移動させる構成部であり、突出部915に取り付けられている。上下機構940は、押さえリング93Bに着設されたアーム941を有す。アーム941は、リング体939を介して、下降する場合ウエハWを押さえ、上昇する場合ウエハWを開放する。
【0119】
加熱室96は、有底円筒状をなし、突出部915内側中空部の底部に取り付けられた透過窓961を介して、突出部915の下に配設されている。透過窓961は、例えば石英製である。加熱室96には、ウエハWを加熱する複数の加熱ランプ962が上下2枚の回転板963、964の所定位置に固定されている。回転板963、964は、回転軸965を介して回転機構966に接続されている。加熱室96側部の上部には、冷却エア導入口967が設けられている。冷却エア導入口967は、加熱室96上部に冷却エアを導入することにより、透過窓961及びその上の処理容器90内部の過熱を防止する。
【0120】
ここで、実施の形態2に係る、処理容器90内部に付着した金属を錯体化する反応例について説明する。実施の形態2で洗浄対象の金属は、例えばニッケル、コバルト、銅等である。ここでは、ニッケルを洗浄対象の金属とする。
【0121】
電源装置95は、処理容器90外部に設置されており、加熱室96内部に設置された加熱ランプ962及び処理容器90内部の各ヒータに夫々任意の電圧を印加する。電源装置95が加熱ランプ962及び各ヒータに印加する電圧は、手動で制御することもできるし、コンピュータ10で制御することもできる。処理容器90の温度は、電源装置95を介して制御される。
【0122】
ここで、実施の形態2に係る化学反応の一例について説明する。
ニッケルを酸素ガスで酸化する(化5)。
(化5)
2Ni+O2 →2NiO
次に、生成した中間生成物の酸化ニッケルをフッ化水素ガスでフッ化する(化6)
(化6)
NiO+2HF→NiF2 +H2 O↑
生成した中間生成物のフッ化ニッケルをHhfacガスで錯体化する(化7)。
(化7)
NiF2 +2Hhfac→Ni(hfac)2 ↑+2HF↑
【0123】
このように、実施の形態2に係るドライ洗浄方法は、金属を3工程の化学反応により錯体化する。第一の工程は金属酸化物の中間生成物を生成する工程であり、第二の工程は金属酸化物の中間生成物から金属フッ化物の中間生成物を生成する工程である。第三の工程は金属フッ化物の中間生成物から金属錯体を生成する工程である。
以下、化5に係る工程を第一工程、化6に係る工程を第二工程、化7に係る工程を第三工程と呼ぶ。また、金属錯体を気化する工程を第四工程と呼ぶ。
第一及び第二工程の温度は、例えば500℃である。
【0124】
フッ化金属を生成するにあたり、フッ化処理の前に金属を酸化して不動態化し、その後フッ化処理を行う。かかる場合、不動態酸化表面がフッ化の障害になることなく、逆に厚いフッ化層を形成することができる。
酸化処理を施してからフッ化処理を行ったフッ化膜の膜厚は、酸化処理を施さない場合に比べて約10倍である(特許第3094000号公報参照)。
【0125】
次に、実施の形態2に係る処理装置100の洗浄時の動作について説明する。
洗浄前の処理装置100の各ガスラインのバルブは閉じられている。また、洗浄前の処理装置100内部に被処理体のウエハWは載置されていない。
【0126】
コンピュータ10の制御部110は、排気ガスライン71のバルブ7Bを開き、ドライポンプ73による排気を開始する。制御部110は、ベントライン8及び供給ガスライン6のバルブを切り替え、ガスがベントライン8に流れるように設定する。
【0127】
制御部110は、圧力調整器72に第一工程の圧力を設定する。制御部110は、電源装置95を介して第一工程の温度を設定する。制御部110は、パージガス供給部3のバルブ3A、3B及び供給ガスライン6のバルブ6Aを開く。制御部110は、酸化ガス供給部210のバルブ21A、21Bを開く。
【0128】
制御部110は、ガスが安定化した場合、ベントライン8及び供給ガスライン6のバルブを切り替え、ガスが処理容器90を流れるように設定する。制御部110は、タイマ180からの信号に基づき、第一工程の経過時間を計時する。
処理容器90内部に、酸素ガス及び希釈ガスとしての窒素ガスからなる混合ガスが供給される。化5の反応により、処理容器90内部に酸化ニッケルが生成する。
【0129】
制御部110は、タイマ180からの信号に基づいて、所定時間が経過したと判断した場合、酸化ガス供給部210のバルブ21A、21Bを閉じる。
第一工程の後に、窒素ガスのみを処理容器90に供給することにより、処理容器90内部をパージする。制御部110は、タイマ180からの信号に基づいて、所定時間経過したと判断した場合、第二工程に移行する。
制御部110は、ベントライン8及び供給ガスライン6のバルブを切り替え、ガスがベントライン8に流れるように設定する。
【0130】
制御部110は、圧力調整器72に第二工程の圧力を設定する。制御部110は、電源装置95を介して第二工程の温度を設定する。制御部110は、フッ化ガス供給部220のバルブ22A、22Bを開く。
【0131】
制御部110は、ガスが安定化した場合、ベントライン8及び供給ガスライン6のバルブを切り替え、ガスが処理容器90を流れるように設定する。制御部110は、タイマ180からの信号に基づき、第二工程の経過時間を計時する。
処理容器90内部に、フッ化水素ガス及び希釈ガスとしての窒素ガスからなる混合ガスが供給される。化6の反応により、処理容器90内部にフッ化ニッケルが生成する。
【0132】
制御部110は、タイマ180からの信号に基づいて、所定時間が経過したと判断した場合、フッ化ガス供給部220のバルブ22A、22Bを閉じる。
第二工程の後に、窒素ガスのみを処理容器90に供給することにより、処理容器90内部をパージする。
制御部110は、タイマ180からの信号に基づいて、所定時間が経過したと判断した場合、第三工程に移行する。
制御部110は、ベントライン8及び供給ガスライン6のバルブを切り替え、ガスがベントライン8に流れるように設定する。
【0133】
制御部110は、圧力調整器72に第三工程の圧力を設定する。制御部110は、電源装置95を介して第三工程の温度を設定する。制御部110は、錯体化ガス供給部5のバルブ5A、5Bを開く。
【0134】
制御部110は、ガスが安定化した場合、ベントライン8及び供給ガスライン6のバルブを切り替え、ガスが処理容器90を流れるように設定する。制御部110は、タイマ180からの信号に基づき、第三工程の経過時間を計時する。
処理容器90内部に、Hhfacガス及び希釈ガスとしての窒素ガスからなる混合ガスが供給される。化7の反応により、処理容器90内部にニッケル錯体が生成する。
【0135】
制御部110は、タイマ180からの信号に基づいて、所定時間が経過したと判断した場合、錯体化ガス供給部5のバルブ5A、5Bを閉じ、第四工程に移行する。
制御部110は、ベントライン8及び供給ガスライン6のバルブを切り替え、ガスがベントライン8に流れるように設定する。
【0136】
制御部110は、圧力調整器72に第四工程の圧力を設定する。制御部110は、電源装置95を介して第四工程の温度を設定する。第四工程の温度及び圧力は、夫々第一、第二又は第三工程の温度及び圧力の値以下である。
【0137】
制御部110は、ガスが安定化した場合、ベントライン8及び供給ガスライン6のバルブを切り替え、ガスが処理容器90を流れるように設定する。制御部110は、タイマ180からの信号に基づき、第四工程の経過時間を計時する。
処理容器90内部のニッケル錯体は気化し、パージガス供給部3からの窒素ガスによって排気部7へ移送される。
【0138】
制御部110は、タイマ180からの信号に基づいて、所定時間が経過したと判断した場合、ベントライン8及び供給ガスライン6のバルブを切り替え、ガスがベントライン8に流れるように設定する。
【0139】
制御部110は、上記の第一、第二、第三及び第四工程を所定回数繰り返す。制御部110は、第一、第二、第三及び第四工程を所定回数繰り返したと判断した場合、電源装置95から加熱ランプ962等への給電を停止する。制御部110は、上流側から各バルブを閉じ、ドライポンプ73を停止させる。
【0140】
なお、第四工程を行わず、第三工程の圧力を低くして、第一、第二及び第三工程を繰り返す形態であってもよい。第三工程で金属錯体を合成すると同時に、合成した金属錯体が気化する場合があるからである。
【0141】
図10、図11及び図12は、実施の形態2に係る洗浄処理の手順を示すフローチャートである。以下、制御部110による洗浄処理を説明するが、バルブ切り替え処理及びバルブ開閉処理については省略する。
【0142】
制御部110は、排気を開始する(ステップS201)。制御部110は、第一工程の温度を電源装置95に、第一工程の圧力を圧力調整器72に設定する(ステップS202)。制御部110は、処理容器90に酸化ガスの供給を開始する(ステップS203)。制御部110は、第一工程の処理時間として所定時間が経過したか否か判断する(ステップS204)。制御部110は、第一工程の処理時間として所定時間が経過していないと判断した場合(ステップS204:NO)、ステップS204へ処理を戻す。制御部110は、第一工程の処理時間として所定時間が経過したと判断した場合(ステップS204:YES)、処理容器90への酸化ガスの供給を停止する(ステップS205)。
【0143】
制御部110は、処理容器90にパージガスを所定時間供給する(ステップS206)。制御部110は、第二工程の温度を電源装置95に、第二工程の圧力を圧力調整器72に設定する(ステップS207)。制御部110は、処理容器90にフッ化ガスの供給を開始する(ステップS208)。制御部110は、第二工程の処理時間として所定時間が経過したか否か判断する(ステップS209)。制御部110は、第二工程の処理時間として所定時間が経過していないと判断した場合(ステップS209:NO)、ステップS209へ処理を戻す。制御部110は、第二工程の処理時間として所定時間が経過したと判断した場合(ステップS209:YES)、処理容器90へのフッ化ガスの供給を停止する(ステップS210)。
【0144】
制御部110は、処理容器90にパージガスを所定時間供給する(ステップS211)。
制御部110は、第三工程の温度を電源装置95に、第三工程の圧力を圧力調整器72に設定する(ステップS212)。制御部110は、処理容器90に錯体化ガスの供給を開始する(ステップS213)。制御部110は、第三工程の処理時間として所定時間が経過したか否か判断する(ステップS214)。制御部110は、第三工程の処理時間として所定時間が経過していないと判断した場合(ステップS214:NO)、ステップS214へ処理を戻す。制御部110は、第三工程の処理時間として所定時間が経過したと判断した場合(ステップS214:YES)、処理容器90への錯体化ガスの供給を停止する(ステップS215)。
【0145】
制御部110は、第四工程の温度を電源装置95に、第四工程の圧力を圧力調整器72に設定する(ステップS216)。制御部110は、処理容器90にキャリアガスの供給を開始する(ステップS217)。制御部110は、第四工程の処理時間として所定時間が経過したか否か判断する(ステップS218)。制御部110は、第四工程の処理時間として所定時間が経過していないと判断した場合(ステップS218:NO)、ステップS218へ処理を戻す。制御部110は、第四工程の処理時間として所定時間が経過したと判断した場合(ステップS218:YES)、処理容器90へのキャリアガスの供給を停止する(ステップS219)。
【0146】
制御部110は、第一、第二、第三及び第四工程を所定回数繰り返したか否か判断する(ステップS220)。制御部110は、第一工程、第二工程及び第三工程を所定回数繰り返していないと判断した場合(ステップS220:NO)、ステップS202へ処理を戻す。制御部110は、第一、第二、第三及び第四工程を所定回数繰り返したと判断した場合(ステップS220:YES)、電源装置95への給電を停止する(ステップS221)。制御部110は、排気を停止する(ステップS222)。
【0147】
実施の形態2に係る処理装置100によれば、金属に対して酸化処理を施した後にフッ化処理を行う。これにより、酸素とフッ素の置換反応が起こって、厚いフッ化層が形成される。そのため、実施の形態2に係る処理装置100は、その後の錯体化ガスとの反応により生成する金属錯体の生成量を増加させることができ、処理容器90内部の洗浄速度をより速くすることができる。
【0148】
本実施の形態2は以上の如きであり、その他は実施の形態1と同様であるので、対応する部分には同一の参照番号を付してその詳細な説明を省略する。
【符号の説明】
【0149】
1 処理装置
2 酸化ハロゲン化ガス供給部
5 錯体化ガス供給部
9 処理容器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内部にガスを供給し、該容器内部に付着した金属を供給したガスと化合させ、該金属及びガスが化合した金属化合物を気化させて該容器を洗浄する洗浄方法において、
前記容器内部に酸化ガス又はハロゲン化ガスを供給して、容器内部に付着した金属に酸化処理又はハロゲン化処理を施す第一工程と、
前記容器内部に錯体化ガスを供給して、酸化処理又はハロゲン化処理を施した金属に錯体化処理を施す第二工程と
を備えることを特徴とする洗浄方法。
【請求項2】
錯体化処理を施してなる金属錯体に気化の処理を施す第三工程
を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の洗浄方法。
【請求項3】
前記第一工程又は第二工程における処理圧力を前記第三工程の処理圧力以上に設定する
ことを特徴とする請求項2に記載の洗浄方法。
【請求項4】
前記第一工程又は第二工程における処理温度を前記第三工程の処理温度以上に設定する
ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の洗浄方法。
【請求項5】
前記第一工程及び第二工程を繰り返す
ことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の洗浄方法。
【請求項6】
前記第一工程、第二工程及び第三工程を繰り返す
ことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の洗浄方法。
【請求項7】
前記第一工程及び第二工程の間で、前記容器内部にパージガスを供給する
ことを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の洗浄方法。
【請求項8】
前記第一工程又は第二工程の際、前記容器内部に水蒸気又はアルコールガスを供給する
ことを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の洗浄方法。
【請求項9】
内部に収容した被処理体に金属成分を含む処理ガスを用いて処理を施す処理容器と、
前記処理ガスの金属成分に含まれる金属が付着した処理容器内部に洗浄ガスを供給する洗浄ガス供給手段と
を備え、
前記処理容器内部に付着した金属を前記洗浄ガス供給手段が供給した洗浄ガスと化合させ、該金属及び洗浄ガスが化合した金属化合物を気化させて前記処理容器を洗浄する処理装置において、
前記洗浄ガス供給手段は、
前記処理容器内部に酸化ガス又はハロゲン化ガスを供給する第一ガス供給手段と、
前記処理容器内部に錯体化ガスを供給する第二ガス供給手段と
を含み、
前記第一ガス供給手段が処理容器内部に酸化ガス又はハロゲン化ガスを供給した後、前記第二ガス供給手段が処理容器内部に錯体化ガスを供給するようにしてある
ことを特徴とする処理装置。
【請求項10】
前記処理容器内部の圧力を制御する圧力制御手段
を備え、
該圧力制御手段は、
前記第一ガス供給手段が酸化ガス又はハロゲン化ガスを供給する場合、又は前記第二ガス供給手段が錯体化ガスを供給する場合の処理容器内部の圧力を、前記錯体化ガスにより生成された金属錯体を気化させる場合の処理容器内部の圧力以上にするようにしてある
ことを特徴とする請求項9に記載の処理装置。
【請求項11】
前記処理容器の温度を制御する温度制御手段
を備え、
該温度制御手段は、
前記第一ガス供給手段が酸化ガス又はハロゲン化ガスを供給する場合、又は前記第二ガス供給手段が錯体化ガスを供給する場合の処理容器の温度を、前記錯体化ガスにより生成された金属錯体を気化させる場合の処理容器の温度以上にするようにしてある
ことを特徴とする請求項9に記載の処理装置。
【請求項1】
容器内部にガスを供給し、該容器内部に付着した金属を供給したガスと化合させ、該金属及びガスが化合した金属化合物を気化させて該容器を洗浄する洗浄方法において、
前記容器内部に酸化ガス又はハロゲン化ガスを供給して、容器内部に付着した金属に酸化処理又はハロゲン化処理を施す第一工程と、
前記容器内部に錯体化ガスを供給して、酸化処理又はハロゲン化処理を施した金属に錯体化処理を施す第二工程と
を備えることを特徴とする洗浄方法。
【請求項2】
錯体化処理を施してなる金属錯体に気化の処理を施す第三工程
を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の洗浄方法。
【請求項3】
前記第一工程又は第二工程における処理圧力を前記第三工程の処理圧力以上に設定する
ことを特徴とする請求項2に記載の洗浄方法。
【請求項4】
前記第一工程又は第二工程における処理温度を前記第三工程の処理温度以上に設定する
ことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の洗浄方法。
【請求項5】
前記第一工程及び第二工程を繰り返す
ことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の洗浄方法。
【請求項6】
前記第一工程、第二工程及び第三工程を繰り返す
ことを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の洗浄方法。
【請求項7】
前記第一工程及び第二工程の間で、前記容器内部にパージガスを供給する
ことを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の洗浄方法。
【請求項8】
前記第一工程又は第二工程の際、前記容器内部に水蒸気又はアルコールガスを供給する
ことを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の洗浄方法。
【請求項9】
内部に収容した被処理体に金属成分を含む処理ガスを用いて処理を施す処理容器と、
前記処理ガスの金属成分に含まれる金属が付着した処理容器内部に洗浄ガスを供給する洗浄ガス供給手段と
を備え、
前記処理容器内部に付着した金属を前記洗浄ガス供給手段が供給した洗浄ガスと化合させ、該金属及び洗浄ガスが化合した金属化合物を気化させて前記処理容器を洗浄する処理装置において、
前記洗浄ガス供給手段は、
前記処理容器内部に酸化ガス又はハロゲン化ガスを供給する第一ガス供給手段と、
前記処理容器内部に錯体化ガスを供給する第二ガス供給手段と
を含み、
前記第一ガス供給手段が処理容器内部に酸化ガス又はハロゲン化ガスを供給した後、前記第二ガス供給手段が処理容器内部に錯体化ガスを供給するようにしてある
ことを特徴とする処理装置。
【請求項10】
前記処理容器内部の圧力を制御する圧力制御手段
を備え、
該圧力制御手段は、
前記第一ガス供給手段が酸化ガス又はハロゲン化ガスを供給する場合、又は前記第二ガス供給手段が錯体化ガスを供給する場合の処理容器内部の圧力を、前記錯体化ガスにより生成された金属錯体を気化させる場合の処理容器内部の圧力以上にするようにしてある
ことを特徴とする請求項9に記載の処理装置。
【請求項11】
前記処理容器の温度を制御する温度制御手段
を備え、
該温度制御手段は、
前記第一ガス供給手段が酸化ガス又はハロゲン化ガスを供給する場合、又は前記第二ガス供給手段が錯体化ガスを供給する場合の処理容器の温度を、前記錯体化ガスにより生成された金属錯体を気化させる場合の処理容器の温度以上にするようにしてある
ことを特徴とする請求項9に記載の処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−190490(P2011−190490A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56228(P2010−56228)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【Fターム(参考)】
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