説明

洗浄方法

【課題】毛穴に形成される硬い固形状の汚れ、特に角栓の除去効果に優れ、手間を要しない皮膚の洗浄方法を提供すること。
【解決手段】次の(A)、(B)の工程を含む皮膚の洗浄方法であって、(A)水溶性溶媒、界面活性剤、及び水を含み、連続相が水相からなる剤を皮膚になじませる工程、(B)連続相が油相からなる剤を皮膚になじませる工程で、(A)の工程の後、(B)の工程を行う皮膚の洗浄方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
女性の肌悩みで上位を占めるものの一つとして、毛穴の目立ちが挙げられる。この原因としては、毛穴に形成される汚れ(柔らかいバター状の汚れから、硬い固形状の汚れ(たとえば角栓))に起因するところが大きい。これらの毛穴の汚れは、皮膚表面の汚れに比べて除去しにくい。しかし、毛穴の汚れを放置することは、毛穴の目立ちのみならず、にきびや種々の肌トラブルを引き起こす。したがって、毛穴の汚れを除去することは、美容上および肌の健康上好ましいことである。
従来、毛穴に形成される硬い固形状の汚れ、特に角栓を除去する方法としては、シート剤を肌に貼り付けたり、パック剤を塗布した後、シート剤、パック剤を剥がす方法が提案されている(特許文献1,2参照)。
また、角栓を除去する方法として、所定の粘度の油分を有する化粧料を用いて、皮膚をマッサージする方法が提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−194325号公報
【特許文献2】特開平8−109119号公報
【特許文献3】特開2002−241260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の方法では、以下のような課題が生じている。
特許文献1や特許文献2では、シート剤を皮膚に貼付、あるいはパック剤で毛穴を包み込んで、これらに毛穴の汚れである角栓を吸着させた後、シート剤やパック剤を剥離して、同時に角栓も除去する。この方法では、シート剤やパック剤を、肌に貼り付けた後、剥離前に乾燥させる必要があるなど、面倒であった。
また、特許文献3に記載された方法は、主基剤の油分が角栓を溶解する効果を利用したものであり、ある程度の角栓除去効果はあるものの根本的に角栓を取り去るには十分満足できるものではなかった。
【0005】
本発明は、毛穴に形成される硬い固形状の汚れ、特に角栓の除去効果に優れ、手間を要しない皮膚の洗浄方法を提供するものである。
【0006】
本発明者は、
(A)水溶性溶媒、界面活性剤、及び水を含み、連続相が水相からなる剤で皮膚を洗浄する工程の後、
(B)連続相が油相からなる剤で皮膚を洗浄する工程で皮膚を洗浄することで、
毛穴に形成される硬い固形状の汚れ、特に角栓の除去効果に優れ、手間を要しない皮膚の洗浄方法を得ることができることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、
(A)水溶性溶媒、界面活性剤、及び水を含み、連続相が水相からなる剤を皮膚になじませる工程、
(B)連続相が油相からなる剤を皮膚になじませる工程を含み、
(A)の工程の後、(B)の工程を行う皮膚の洗浄方法を提供するものである。
また、本発明は、
(A)水溶性溶媒、界面活性剤、及び水を含み、連続相が水相からなる剤を皮膚になじませる工程と、
(C)油剤、界面活性剤、水溶性溶媒、及び水を含み、油相および水相それぞれが連続相となった等方性1液相からなる剤を皮膚になじませる工程と、
(B)連続相が油相からなる剤を皮膚になじませる工程を含み、
(A)の工程の後、(C)の工程を行い、その後、(B)の工程を行う皮膚の洗浄方法を提供するものである。
さらに、本発明は、(A)油剤、水酸基を1ないし2含有し、炭素数2〜6である化合物、界面活性剤、及び水を含み、連続相が水相からなるO/W型エマルジョンの剤を皮膚になじませる工程と、
(C)前記剤から、水分を蒸散させ、油相および水相それぞれが連続相となった等方性1液相に相変化させ、等方性1液相からなる剤を皮膚になじませる工程と、
(B)さらに、等方性1液相からなる前記剤から、水分を蒸散させ、連続相を油相に相変化させ、連続相が油相からなる剤を皮膚になじませる工程を含む皮膚の洗浄方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、毛穴に形成される硬い固形状の汚れ、特に角栓の除去効果に優れ、手間を要しない皮膚の洗浄方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第三実施形態のクレンジング組成物の相状態図である。
【図2】第三実施形態のクレンジング組成物の相状態図である。
【図3】第三実施形態のクレンジング組成物の相状態図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態として3つの方法がある。
(第一実施形態)
第一実施形態にかかる洗浄方法は、
工程(A):水溶性溶媒、界面活性剤、及び水を含み、連続相が水相からなる剤を皮膚になじませる(洗浄する)工程、
工程(B):連続相が油相からなる剤を皮膚になじませる(洗浄する)工程を含み、
(A)の工程の後、(B)の工程を行うことで、皮膚の汚れを洗浄する洗浄方法である。
【0011】
本発明における第一実施形態は、初め、連続相が水相である剤で皮膚上に塗布して、皮膚になじませ、(工程(A))、次に、連続相が油相である剤を皮膚上に塗布して、皮膚になじませる(工程(B))方法である。この方法によれば、毛穴に形成される硬い固形状の汚れ、特に角栓を溶解する効果に優れ、角栓除去効果が高まる。
【0012】
(工程(A))
本発明の工程(A)は、水溶性溶媒(成分(a))、界面活性剤(成分(b))、及び水(成分(c))を含み、連続相が水相からなる剤を皮膚に塗布し、前記剤と皮膚の汚れとをなじませる工程である。
本発明の工程(A)に用いる成分(a)の化合物は、水溶性溶媒であり、炭素数2以上、6以下の1価又は2価のアルコール、炭素数2以上、35以下のポリエチレングリコール類、ポリプロピレングリコール類のいずれかが好ましい。洗浄性の高さの観点から、具体的には、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等の炭素数2以上、6以下の一価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、イソプレングリコール等の炭素数2以上、6以下であり、水酸基を2つ有するグリコール類、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコールアルキルエーテル類があげられる。
ポリエチレングリコール類又はポリプロピレングリコール類としては、分子量1000以下のポリエチレングリコール類、ポリプロピレングリコール類を用いることができ、例えばジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリオキシプロピレン(9)ジグリセリル等が挙げられる。これらのうち、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、特に、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテルが、油性汚れ及び水溶性汚れに対する洗浄性能が良好であるので好ましい。
なかでも、毛穴へのなじみやすさの観点から、炭素数2以上、6以下のグリコール類が好ましく、特に、炭素数3以上、6以下のグリコール類が好ましい。たとえば、1,3−ブチレングリコール、イソプレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールは角栓の除去性能に優れている。
【0013】
成分(a)として、化合物を1種類以上を用いることができ、油性汚れ及び水溶性汚れに対する洗浄性の観点から、全組成中に10質量%以上、好ましくは15質量%以上、更には18質量%以上、使用感の観点から、50質量%以下、特に40質量%以下含有することが好ましい。
【0014】
成分(b)は、界面活性剤であり、非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤を用いることができる。
【0015】
なかでも、洗浄性の観点から、成分(b)は、非イオン界面活性剤が好ましく、1種の非イオン界面活性剤又は2種以上の非イオン界面活性剤からなる混合界面活性剤で構成され、前記1種の非イオン界面活性剤又は前記混合界面活性剤のHLBが10以上、18以下である。
成分(b)の混合界面活性剤のHLBを10以上、18以下とすることで、洗浄剤組成物を、可溶化系、又はO/W型エマルジョンとすることができる。
【0016】
ここで、HLB(親水性−親油性のバランス〈Hydrophilic-Lypophilic Balance〉)は、界面活性剤の全分子量に占める親水基部分の分子量を示すものであり、ポリオキシエチレン系非イオン界面活性剤については、グリフィン(Griffin)の式により求められるものである。
なお、2種以上の非イオン界面活性剤から構成される混合界面活性剤のHLBは、次のようにして求められる。
非イオン界面活性剤が複数ある場合、各非イオン界面活性剤のHLB値をその配合比率に基づいて相加算平均したものである。
混合HLB=Σ(HLBx×Wx)/ΣWx
HLBxは、非イオン界面活性剤XのHLB値を示す。
Wxは、HLBxの値を有する非イオン界面活性剤Xの重量(g)を示す。
【0017】
本発明に用いる成分(b)の非イオン界面活性剤は、例えば、油性汚れに対する洗浄性の観点から、炭素数8〜22の脂肪酸エステル又は、炭素数8〜22の高級アルコールのエーテルからなることが好ましく、親水性の官能基としては、水酸基、エチレンオキサイド基を有するものが好ましい。
具体的には、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル、ポリアルキルグリセリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、(ポリ)アルキルグリセリルエーテル、等が挙げられる。
【0018】
なかでも、洗浄性の観点からポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、(ポリ)アルキルグリセリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシドが優れている。
特に、油性汚れに対する洗浄性の面で、ジグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、(ポリ)アルキルグリセリルエーテル、アルキルポリグルコシドが好ましい。
【0019】
なかでも、角栓汚れに対する洗浄性の高さ、みずみずしい使用感の観点から、モノオレイン酸ジグリセリン(HLB7)、モノイソステアリン酸ジグリセリン(HLB8)、ポリオキシエチレン(8)グリセリルモノイソステアレート(HLB9)、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット(HLB11)、ポリオキシエチレン(7)ヤシ油脂肪酸グリセリン(HLB13)、モノラウリン酸(12)ポリエチレングリコール(HLB14)、炭素数8〜16のアルキルグルコシド(HLB17)、2−エチルヘキシルグリセリルエーテル(HLB7)が好ましく、1種又は2種以上混合させて使用することができる。
【0020】
これらの成分(b)は、安定性をより高める目的で、HLBが高い非イオン界面活性剤とHLBが低い非イオン界面活性剤を2種以上組み合わせて用いることが好ましい。
つまり、混合した2種以上の非イオン界面活性剤の最も高いHLBと最も低いHLBの差が5以上ある組み合わせにすることが良く、特に7以上であることで、洗浄剤組成物の安定性を高めることに優れている。
【0021】
成分(b)の含有量は、油性汚れ及び水溶性汚れに対する洗浄性の観点から、全組成中、1質量%以上であることが好ましく、さらには、5質量%以上であることが好ましい。また、使用感の観点から、成分(b)の含有量は全組成中、50質量%以下、さらには、40質量%以下、更には32質量%以下であることが好ましい。
【0022】
本発明に用いる成分(c)の水は、残部をなし全組成中に20〜70質量%含有されることが好ましい。更には30〜60質量%、38〜56質量%含有されることが好ましい。
【0023】
なお、この洗浄剤には、通常用いられる成分、例えば、油剤、増粘剤、殺菌剤、保湿剤、湿潤剤、着色剤、防腐剤、感触向上剤、香料、酸化防止剤、各種の抽出液等を、適宜含有させることができる。
【0024】
このようにすることで、連続相が水相の剤型としては、外相が水相であれば良く、具体的には、可溶化系、O/W型エマルジョン等を用いることができる。
【0025】
(工程(B))
本発明の工程(B)は、連続相が油相からなる剤を皮膚に塗布し皮膚の汚れとをなじませる工程である。
連続相が油相からなる剤は、成分(d)として、油剤を含むことが好ましい。
本発明の工程(B)に用いる成分(d)の油剤は、常温で液状であり、30℃における粘度が30mPa・s以下のものが好ましい。ここで、粘度は、BM型粘度計(トキメック社製、測定条件:ローターNo.1、60rpm、30℃)により測定するものである。
このような粘度の低い油剤は、細かな部分への浸透性が高く、汚れの溶解性も高いため、毛穴に形成される硬い固形状の汚れ、特に角栓などの汚れに対して優れた洗浄力を有する。特に、油っぽさを緩和して、適度な使用感にする観点から成分(d)の30℃における粘度が、10mPa・s以下の低粘度のものが、強い油性感を伴わず、使用感も良好である。
【0026】
かかる油剤としては、通常化粧料に使用される液状油を用いることができ、例えば、流動パラフィン、流動イソパラフィン、水添ポリイソブテン、スクワラン等の炭化水素油;イソステアリン酸コレステリルエステル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、イソステアリン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクタデシル、2−エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、トリ(2−エチルヘキサン酸)グリセリン、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリン等のエステル油;アルキル−1,3−ジメチルブチルエーテル、ノニルフェニルエーテル等のエーテル油;デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等のメチルシクロポリシロキサン、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン油;オリーブ油等の動植物油;テルペン油などを用いることができる。
【0027】
なかでも分子量300以下の油剤は洗浄力が高く好ましい。具体的には、軽質流動イソパラフィン、水添ポリイソブテン等の炭化水素油、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル等のエステル油、オクタメチルトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等のシリコーン油が挙げられる。特に、炭素数8〜18の分岐の炭化水素油が好ましく、イソドデカンが好ましい。
【0028】
また、成分(d)の油剤は、炭化水素油、エステル油、シリコーン油等の混合物で形成されても良い。尚、この場合は、角栓に対する溶解性の観点から、イソパラフィンを成分(d)中30%以上を含有することが好ましい。尚、匂いの観点から炭素数8〜9の炭化水素を含まない方が好ましい。
【0029】
炭化水素油としては、商品名でマルカゾールR(丸善石油化学社)、IPソルベント1620、2028(以上、出光石油化学社)、アイソパーL、アイソパーH(以上、エクソン化学社)、アイソゾール300、400(以上、新日本石油化学社)等が挙げられ、イソドデカンを高純度に含む点から、マルカゾールRが特に好適に用いられる。
【0030】
成分(d)の油剤は、洗浄力の観点から、全組成中に50質量%以上、100質量%以下含まれる。なかでも、70質量%以上、99質量%以下含有することが好ましい。このようにすることで、すばやく、優れた洗浄力を持つことができる。
【0031】
なお、この洗浄剤には、通常用いられる成分、例えば、洗い流し性を付与する目的で非イオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤を、又、水溶性溶剤、増粘剤、殺菌剤、保湿剤、湿潤剤、着色剤、防腐剤、感触向上剤、香料、酸化防止剤、各種の抽出液、水等を、適宜含有させることができる。
【0032】
連続相が油相の剤型としては、外相が油相であれば良く、具体的には、オイル系、W/O型エマルジョン、オイルと界面活性剤混合物等を用いることができる。
【0033】
本発明における第一実施形態は、初め、連続相が水相である剤を皮膚になじませると(工程(A))、毛穴周りの汚れと皮膚からの代謝物を膨潤することができ、それにより表層の汚れが除去しやすくなる。次に、連続相が油相である剤を皮膚になじませる工程(工程(B))で、毛穴内部のより固体状の皮脂が成分(d)によって溶解され、毛穴に形成される硬い固形状の汚れ、特に角栓を溶解する効果に優れ、肌に刺激性が少なく、角栓除去効果が高まるものである。
【0034】
(A)の工程後、水で肌を洗浄してから(B)の工程を実施してもよいが、工程(A)の剤が肌に付着した状態ですぐに、(B)の工程を実施することが好ましい。このようにすることで、確実に毛穴の汚れを除去することができる。
ここで、従来の技術水準について説明する。従来は、皮膚を洗浄する場合において、はじめに、肌に油剤を塗布し、メイキャップ等と油剤とをなじませる。その後、油剤を水で洗浄して油剤を肌から除去した後、連続相が水相で構成される洗浄剤で肌を再度洗浄する。
メイキャップ等の脂を含む汚れと、連続相が水相で構成される洗浄剤とは比較的なじみにくいので、あらかじめ、油剤でメイキャップ等を浮かせて洗浄させることが有効であると考えられている。この場合には、メイキャップ等を除去することはできるものの、毛穴の汚れまでも除去することは難しい。
これに対し、本発明者は、従来の洗浄方法とは逆の手順で肌を洗浄する、すなわち、あらかじめ、連続相が水相で構成される剤で肌を洗浄し、その後、連続相が油相で構成される剤で肌を洗浄することで、毛穴内部の皮脂を溶解して毛穴に形成される硬い固形状の汚れ、特に角栓を確実に除去することができることを見出した。あらかじめ連続相が水相で構成される剤を使用することで、毛穴周りなどの表層の汚れが除去しやすくなり、連続相が油相である洗浄剤が毛穴のより内部に作用できる状況にでき、毛穴内部の汚れが確実に除去できるのであると考えられる。
さらに本実施形態では、各工程において、剤(洗浄液)を皮膚になじませているため、従来のシートやパックを使用する方法に比べ、刺激性が少なくなるとともに、シートやパックを乾燥させるための手間を省くことができる。
(B)の工程後は、(D)水を添加し、前記剤を皮膚から除去する工程を行う。この結果、角栓とともに洗浄剤も肌から除去される。(A)の工程で使用した剤、(B)の工程で使用した剤は、肌から除去され、肌内部に浸透することはない。
【0035】
(第二実施形態)
次に、本発明の第二実施形態について説明する。
本実施形態の皮膚の洗浄方法は、
(A)水溶性溶媒、界面活性剤、及び水を含み、連続相が水相からなる剤を皮膚になじませる(洗浄する)工程、
(C)油剤、界面活性剤、水溶性溶媒、及び水を含み、油相および水相それぞれが連続相となった等方性1液相からなる剤を皮膚になじませる(洗浄する)工程、
(B)連続相が油相からなる剤を皮膚になじませる(洗浄する)工程を含み
(A)の工程の後、(C)の工程を行い、その後、(B)の工程を行うことで、皮膚の汚れを洗浄する方法である。
【0036】
本発明における第二実施形態は、初め、連続相が水相である剤を皮膚になじませ、次に、等方性1液相である剤を皮膚になじませ、連続相が油相である剤を皮膚になじませる方法で、毛穴に形成される硬い固形状の汚れ、特に角栓を溶解する効果に優れ、角栓除去効果が高まるものである。
【0037】
(A)の工程、(B)の工程で使用する剤(洗浄液)は、第一実施形態と同様のものを使用することができる。
【0038】
本発明の工程(C)で使用する剤(洗浄液)は、油剤、界面活性剤、水溶性溶媒、及び水を含み、等方性1液相で構成されているものである。等方性1液相は、一般的にミセル溶液も含まれるが、ここで言う等方性1液相とは、水相・油相の片方、もしくは、双方が可溶化された状態である。この双方が可溶化され、水相、油相それぞれが連続相となり、光学的に等方性の透明または半透明の液相をバイコンティニュアス相と呼ぶ。双方が可溶化された等方性1液相からなる剤(洗浄液)は、濡れ性が高く、毛穴に形成される硬い固形状の汚れ、特に角栓にすばやくなじみ、角栓を溶解する効果を高めることができる。
たとえば、特開2004−217640号公報、特開2008−184413号公報、特開2008−184414号公報に開示された洗浄剤組成物を使用することができる。
【0039】
たとえば、
(e)油剤3〜80質量%、(f)親水性非イオン界面活性剤1〜45質量%、(g)親油性親媒性物質1〜45質量%、(h)水溶性溶媒3〜80質量%、(i)水3〜80質量%含有し、バイコンティニュアス相で構成される洗浄剤組成物を使用することができる。
【0040】
成分(e)の油剤としては、液状油を用いることができ、例えば流動パラフィン、流動イソパラフィン、スクワラン等の炭化水素油;イソステアリン酸コレステリルエステル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、イソステアリン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクタデシル、2−エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、トリ(2−エチルヘキサン酸)グリセリン、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリン等のエステル油;アルキル−1,3−ジメチルブチルエーテル、ノニルフェニルエーテル等のエーテル油;デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等のメチルシクロポリシロキサン、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン油;オリーブ油等の動植物油;テルペン油などを用いることができる。
更には、25℃における粘度が30mPa・s以下のものが好ましい。なお、粘度は、BM型粘度計(トキメック社製、測定条件:ローターNo.1、60rpm)により測定したものである。
【0041】
これらのうち、流動パラフィン、流動イソパラフィン、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、イソステアリン酸イソプロピル、2−エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリン、アルキル−1,3−ジメチルブチルエーテル、デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサンが好ましく、特に、流動イソパラフィン、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリン、アルキル−1,3−ジメチルブチルエーテル、デカメチルシクロペンタシロキサンが好ましく、更には、流動イソパラフィンが好ましい。流動イソパラフィンとしては、特に、水添ポリイソブテンが好ましく、イソブテンの重合度が3から6であるものが、油性汚れに対する洗浄性能の点でより好ましい。
【0042】
成分(e)は、2種以上を用いることもでき、全組成中に3〜80質量%、好ましくは5〜65質量%、更には7〜56質量%、更には14〜16質量%含有される。3質量%以上とすることで油性汚れに対する洗浄作用を十分なものとし、さらに、すすぎ性も良好なものとすることができる、80質量%以下とすることで、水溶性汚れに対する洗浄作用が良好となる。
【0043】
成分(f)の親水性非イオン界面活性剤としては、HLBが8を超えるものが好ましく、特にHLB9以上20以下のものが好ましい。より具体的にはHLB11〜17である。ここで、HLBは、界面活性剤の全分子量に占める親水基部分の分子量を示すものであり、ポリオキシエチレン系非イオン界面活性剤については、グリフィン(Griffin)の式により求められるものである。
【0044】
具体的には、ポリエチレングリコール(12)モノラウリン酸エステル等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール(20)オクチルドデシルエーテル等のポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコール(20)ノニルフェニルエーテル等のポリエチレングリコールアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール(50)ヒマシ油等のポリエチレングリコールヒマシ油誘導体、ポリエチレングリコール(60)硬化ヒマシ油モノイソラウレート等のポリエチレングリコール硬化ヒマシ油誘導体、ポリエチレングリコール(20)ソルビタンモノステアリン酸エステル等のポリエチレングリコール系界面活性剤、モノオレイン酸ジグリセリン等のポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(8)グリセリルモノイソステアレート等のポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリン2−エチルへキシルエーテル等のポリグリセリンアルキルエーテル、ショ糖ステアリン酸エステル等のショ糖脂肪酸エステル、アルキルグルコシド等が挙げられる。更に、これらのうち、疎水基の炭素数が8以上、特に12以上のものが、すすぎ性が良好なので好ましい。
【0045】
成分(f)は、1種、又は2種以上を用いることもでき、全組成中に1〜45質量%、好ましくは1〜40質量%、さらには9〜24質量%含有される。1質量%以上とすることで、すすぎ性が良好となり、45質量%以下とすることで、洗浄作用を良好なものとすることができる。
【0046】
成分(g)の親油性両親媒性物質としては、HLB8以下の非イオン界面活性剤、炭素数8〜25の脂肪アルコール、炭素数8〜25の脂肪酸、炭素数8〜25のアルキル基を有するモノアルキルリン酸が好ましい。これらは、疎水基の炭素数が8以上、特に12以上であるのが、洗浄性能が良好であるので好ましい。
【0047】
HLB8以下の非イオン界面活性剤としては、例えばエチレングリコールモノステアリン酸エステル等のエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール(2)モノステアリン酸エステル等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール(5)デシルペンタデシルエーテル等のポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコール(5)硬化ヒマシ油モノイソラウレート等のポリエチレングリコール硬化ヒマシ油誘導体等のポリエチレングリコール系界面活性剤;プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリプロピレングリコール脂肪酸エステル、プロピレングリコールアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテルの酸化エチレン誘導体等のプロピレングリコール系界面活性剤;グリセリンモノイソステアリン酸エステル等のグリセリン脂肪酸エステル;グリセリンモノイソステアリルエーテル等のグリセリンアルキルエーテル;ソルビタンモノステアリン酸エステル等のソルビタン脂肪酸エステル;脂肪酸アルカノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド等の脂肪酸ジアルカノールアミド等が挙げられる。これらのうち、HLB6以下のものが、油性汚れ及び水溶性汚れに対する洗浄性能が良好であるので好ましい。
【0048】
脂肪アルコールとしては、炭素数8〜25、好ましくは炭素数12〜22の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の炭化水素基を有し、1価又は多価アルコールのいずれでも良く、例えばオクタノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、イソミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、イソパルミチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ベへニルアルコール、オレイルアルコール、リノレイルアルコール、リノレニルアルコール等が挙げられる。これらのうち、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、イソミリスチルアルコール、イソパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、特に、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、イソステアリルアルコールが、油性汚れ及び水溶性汚れに対する洗浄性能が良好であるので好ましい。
【0049】
脂肪酸としては、炭素数8〜25、好ましくは炭素数12〜22の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和のいずれでも良く、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、イソミリスチン酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられる。これらのうち、ラウリン酸、ミリスチン酸、イソミリスチン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、特に、ラウリン酸、ミリスチン酸、イソステアリン酸が、油性汚れ及び水溶性汚れに対する洗浄性能が良好であるので好ましい。
【0050】
モノアルキルリン酸としては、炭素数8〜25、好ましくは炭素数12〜22の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を有するもので、例えばモノラウリルリン酸、モノミリスチルリン酸、モノパルミチルリン酸、モノステアリルリン酸、モノベヘニルリン酸、モノイソステアリルリン酸、モノ2−ヘキシルデシルリン酸等が挙げられる。これらのうち、モノラウリルリン酸、モノミリスチルリン酸、モノ2−ヘキシルデシルリン酸、特に、モノラウリルリン酸、モノミリスチルリン酸が、洗浄性能が良好であるので好ましい。
【0051】
成分(g)は、2種以上を用いることもでき、全組成中に1〜45質量%、好ましくは1〜40質量%含有される。1質量%以上とすることで、洗浄作用及びすすぎ性が良好となり、45質量%以下とすることで、洗浄作用及びすすぎ性が良好となる。
【0052】
また、本発明で用いる成分(f)の親水性非イオン界面活性剤、及び成分(g)の親油性両親媒性物質は、これらの重量比(f)/(g)の値が0.5〜8であることが、すすぎ性、洗浄性能が良いので好ましい。
【0053】
本発明で用いる成分(h)の水溶性溶媒としては、炭素数1〜6の1価又は多価のアルコール、ポリエチレングリコール類、ポリプロピレングリコール類、糖類、水溶性脂肪酸が好ましい。
成分(h)は、成分(f)の親水性非イオン性界面活性剤、および成分(g)の親油性両親媒性物質の親水性を高くすることができるものが好ましい。成分(f)親水性非イオン性界面活性剤、及び成分(g)親油性両親媒性物質の親水性を高くすることができる性質とは、成分(h)を添加することによって、非イオン性界面活性剤の曇り点(曇点)を上げる性質などのことを意味し、鷺谷ら、油化学、第33巻、第3号、p.156−161(1984)等に記載されているものである。
【0054】
炭素数1〜6の1価アルコールとしては、例えばエタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等が挙げられ、多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ソルビット等が挙げられる。これらのうち、1価アルコールとしては、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、特に、エタノールが;多価アルコールとしては、プロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、特に、イソプレングリコール、ヘキシレングリコールが、油性汚れ及び水溶性汚れに対する洗浄性能が良好であるので好ましい。
【0055】
ポリエチレングリコール類又はポリプロピレングリコール類としては、分子量1000以下のポリエチレングリコール類、分子量200以下のポリプロピレングリコール類を用いることができ、例えばジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。これらのうち、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、特に、ジプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテルが、油性汚れ及び水溶性汚れに対する洗浄性能が良好であるので好ましい。
【0056】
糖類としては、例えばエリスリトール、ペンタエリスリトール、メチルグルコシド、エチルグルコシド、ポリオキシエチレンメチルグルコシド、ポリオキシプロピレンメチルグルコシド等が挙げられ、特にアルキル鎖の炭素数2以下のアルキルグルコシドが好ましい。これらのうち、メチルグルコシド、エチルグルコシド、ポリオキシエチレンメチルグルコシド、ポリオキシプロピレンメチルグルコシド、特に、ポリオキシエチレンメチルグルコシド、ポリオキシプロピレンメチルグルコシドが、油性汚れ及び水溶性汚れに対する洗浄性能が良好であるので好ましい。
【0057】
水溶性脂肪酸としては、炭素数1〜6のもので、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸等が挙げられ、特に酢酸、プロピオン酸、更にはプロピオン酸が、油性汚れ及び水溶性汚れに対する洗浄性能が良好であるので好ましい。
【0058】
成分(h)は、2種以上を用いることもでき、全組成中に3〜80質量%、好ましくは5〜70質量%、更には10〜50質量%含有される。3質量%以上とすることで、油性汚れに対する洗浄作用が良好となり、80質量%以下とすることで、油性汚れに対する洗浄性能が良好となる。
【0059】
また、成分(h)と、成分(f)の親水性非イオン界面活性剤及び成分(g)の親油性両親媒性物質の合計量との重量比(h)/((f)+(g))の値が1以上であることが、洗浄性能が良好であるので好ましい。
【0060】
成分(i)の水は、残部をなし全組成中に3〜80質量%、好ましくは5〜75質量%、更には10〜65質量%含有される。3質量%以上とすることで、水溶性汚れに対する洗浄作用が良好となり、80質量%以下とすることで、油性汚れに対する洗浄作用が良好となる。
【0061】
なお、前述の等方性1液相である剤は、上述したものに限定されるものではない。
【0062】
(A)の工程後、水で肌を洗浄してから(C)の工程を実施してもよいが、(A)の剤が肌に付着した状態ですぐに、(C)の工程を実施するのが好ましい。この後、水で肌を洗浄してから(B)の工程を実施してもよいが、(C)の剤が肌に付着した状態ですぐに、(B)の工程を実施することが好ましい。このようにすることで、確実に毛穴の汚れを除去することができる。
【0063】
第二実施形態では、
初め、工程(A):連続相が水相である洗浄剤を皮膚になじませる。
連続相が水相である洗浄剤は、毛穴周りの汚れと皮膚からの代謝物を膨潤させ、表層の汚れを除去する。
次に、工程(C):油相および水相それぞれが連続相となった等方性1液相である洗浄剤を皮膚になじませる。
濡れ性が高く、肌に良くなじみ、細かい部分にまで剤が浸透する。これにより、洗浄剤は、表層の汚れが除去されたところから、浸透し、毛穴のより深いところまで作用することができる。
次に、工程(B):連続相が油相である洗浄剤を皮膚になじませる。
この洗浄剤は、毛穴内部のより固体状の皮脂が成分(d)によって溶解される。毛穴に形成される硬い固形状の汚れ、特に角栓を溶解する効果に優れ、肌に刺激性が少なく、さらに角栓除去効果が高まるものである。
【0064】
(B)の工程後は、(D)水を添加し、前記剤を皮膚から除去する工程を行う。この結果、角栓とともに洗浄剤も肌から除去される。(A)の工程で使用した剤、(C)の工程で使用した剤、(B)の工程で使用した剤は、肌から除去され、肌内部に浸透することはない。
また本実施形態では、各工程において、剤(洗浄液)を皮膚になじませており、従来のシートやパックを使用する方法に比べ、剤を乾燥させる必要がないので簡便である。
【0065】
なお、各工程間の間隔(例えば、工程(A)を行なった後、工程(C)を行なうまでの間隔)は、先の工程により行なった行為から肌が乾燥する前までに行なうことが好ましい。より具体的には、先の工程を行なった後、1時間以内、更には30分以内、更には10分以内に行なうことが好ましく、先の工程を行なった後、直に次ぎの工程を行なうことが好ましい。
【0066】
(第三実施形態)
本実施形態の皮膚の洗浄方法は、
(A)非イオン界面活性剤(成分(j))、油剤(成分(k))、水酸基を1ないし2含有し、炭素数2〜6である化合物(成分(l))、特定の水溶性ポリマー(成分(m))及び水(成分(n))を含み、連続相が水相からなるO/W型エマルジョンの洗浄剤を皮膚になじませ、
(C)その後、前記洗浄剤から、水分を蒸散させ、連続相を等方性1液相に相変化させ、油相および水相それぞれが連続相となった等方性1液相からなる洗浄剤を皮膚になじませ、
(B)さらに、等方性1液相からなる洗浄剤から、水分を蒸散させ、連続相を油相に相変化させ、連続相が油相からなる洗浄剤を皮膚になじませることで、皮膚の汚れを洗浄する洗浄方法である。
【0067】
以下、本実施形態について説明する。
本実施形態では、
成分(j)は、非イオン界面活性剤であり、1種の非イオン界面活性剤又は2種以上の非イオン界面活性剤からなる混合界面活性剤で構成され、前記1種の非イオン界面活性剤又は前記混合界面活性剤のHLBが10以上、15以下である。
成分(j)の1種の非イオン界面活性剤又は混合界面活性剤のHLBを10以上、15以下とすることで、洗浄剤組成物をO/W型エマルジョンとすることができる。
【0068】
ここで、HLB(親水性−親油性のバランス〈Hydrophilic-Lypophilic Balance〉)は、第一実施形態で述べた方法で算出される。
【0069】
本発明に用いる成分(j)の非イオン界面活性剤は、上記の条件を満たすものであれば、特に限定されず、例えば、炭素数8〜22の脂肪酸エステル又は、炭素数8〜22の高級アルコールのエーテルからなり、親水性の官能基としては、水酸基、エチレンオキサイド基を有するものである。
具体的には、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油脂肪酸エステル、ポリアルキルグリセリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、(ポリ)アルキルグリセリルエーテル、等が挙げられる。
【0070】
なかでも、洗浄性の観点からポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、(ポリ)アルキルグリセリルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ショ糖脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシドが優れている。
特に、油性汚れに対する洗浄性の面で、ジグリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、(ポリ)アルキルグリセリルエーテル、アルキルポリグルコシドが好ましい。
【0071】
なかでも、成分(j)〜(n)でつくる等方性1液相の構築に寄与し、角栓汚れに対する洗浄性の高さ、みずみずしい使用感の観点から、モノイソステアリン酸ジグリセリン(HLB8)、ポリオキシエチレン(8)グリセリルモノイソステアレート(HLB9)、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット(HLB11)、ポリオキシエチレン(7)ヤシ油脂肪酸グリセリン(HLB13)、モノラウリン酸(12)ポリエチレングリコール(HLB14)、炭素数8〜16のアルキルグルコシド(HLB17)、2−エチルヘキシルグリセリルエーテル(HLB7)、モノオレイン酸ジグリセリン、イソステアリルグリセリルエーテルが好ましく、1種又は2種以上混合させて使用することができる。
【0072】
これらの成分(j)は、安定性をより高める目的で、HLBが高い非イオン界面活性剤とHLBが低い非イオン界面活性剤を2種以上組み合わせて用いることが好ましい。
つまり、混合した2種以上の非イオン界面活性剤の最も高いHLBと最も低いHLBの差が5以上ある組み合わせにすることが良く、特に7以上であることで、洗浄剤組成物の安定性を高めることに優れている。
【0073】
成分(j)の含有量は、全組成中、5質量%以上、50質量%以下である。このようにすることで、後述する特定の相状態をとることができる。
また、成分(j)の含有量は、5質量%以上、更には10質量%以上、好ましくは、16質量%以上である。このようにすることで、肌とのなじみが良好で角栓を含む毛穴汚れを浮き上がらせることができる。また、成分(j)の含有量は、全組成中、50質量%以下である。なかでも、成分(j)の含有量が、40質量%以下、特に33質量%以下であることが好ましい。このようにすることで、残留感なくすっきりと洗い流すことができる。
【0074】
(成分(k))
本発明で用いる成分(k)の油剤は、常温で液状であり、30℃における粘度が15mPa・s以下である。ここで、粘度は、BM型粘度計(トキメック社製、測定条件:ローターNo.1、60rpm、30℃)により測定するものである。
このような粘度の低い油剤は、毛穴に詰まった角栓周りへのなじみが高く、汚れの溶解性が高いため、毛穴に形成される硬い固形状の汚れ、特に角栓などの汚れに対して優れた洗浄力を有する。更に、強い油性感を伴わず、使用感も良好である。
油っぽさを緩和して、適度な使用感にする観点から、成分(k)の30℃における粘度が、10mPa・s以下の低粘度のものが好ましい。
【0075】
かかる油剤としては、通常化粧料に使用される液状油の中で、上記条件を満たすものを用いることができる。例えば、流動パラフィン、流動イソパラフィン、水添ポリイソブテン、スクワラン、イソドデカン等の炭化水素油;イソステアリン酸コレステリルエステル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、イソステアリン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクタデシル、2−エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、トリ(2−エチルヘキサン酸)グリセリン、トリ(カプリル酸・カプリン酸)グリセリン等のエステル油;アルキル−1,3−ジメチルブチルエーテル、ノニルフェニルエーテル等のエーテル油;デカメチルシクロペンタシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等のメチルシクロポリシロキサン、メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン油;オリーブ油等の動植物油;テルペン油などを用いることができる。
【0076】
なかでも分子量300以下の油剤は洗浄力が高く好ましい。具体的には、軽質流動イソパラフィン、水添ポリイソブテン等の炭化水素油、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル等のエステル油、オクタメチルトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン等のシリコーン油が挙げられる。特に、炭素数8〜18の分岐の炭化水素油が好ましく、イソドデカンが好ましい。
【0077】
また、成分(k)の油剤は、炭化水素油、エステル油、シリコーン油等の混合物で形成されても良い。尚、この場合は、イソパラフィンを成分(k)中30質量%以上、好ましくは42質量%以上を含有することが好ましい。尚、匂いの観点から炭素数8〜9の炭化水素を含まない方が好ましい。
【0078】
炭化水素油としては、商品名でマルカゾールR(丸善石油化学社)、IPソルベント1620、2028(以上、出光石油化学社)、アイソパーL、アイソパーH(以上、エクソン化学社)、アイソゾール300、400(以上、新日本石油化学社)等が挙げられ、イソドデカンを高純度に含む点から、マルカゾールRが特に好適に用いられる。
【0079】
成分(k)の油剤は、全組成中に8質量%以上、更には10質量%以上、39質量%以下、更には30質量%以下含まれる。なかでも、15質量%以上、24質量%以下含有することが好ましい。このようにすることで、十分な洗浄力を持ったまま、残留感なくすっきりと洗い流すことができる。
【0080】
本発明に用いる成分(l)の化合物は、炭素数2以上、6以下であり、水酸基を1または2を有する化合物である。これは、成分(j)〜(n)でつくるO/W型エマルジョン、並びに等方性1液相の構築に寄与する。洗浄性の高さの観点から、具体的には、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール等の炭素数2以上、6以下の一価アルコール;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、イソプレングリコール等の炭素数2以上、6以下のグリコール類、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエチレングリコールアルキルエーテル類が挙げられる。
なかでも、グリコール類、例えば、1,3−ブチレングリコール、イソプレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールは安定領域の広い等方性1液相の構築に優れている。
【0081】
成分(l)として、化合物を1種類以上を用いることができ、全組成中に10質量%以上含有することが十分な洗浄力を実現する観点から好ましい。また、全組成中に50質量%以下、さらに40質量%以下、特に30質量%以下、更には20質量%以下含有するのが使用感の観点から好ましい。さらに、成分(l)の含有量を10質量%以上、50質量%以下とすることで、後述する特定の相状態をとることができる。
【0082】
本発明に用いる成分(m)は、(メタ)アクリル酸由来の構成単位を含む水溶性ポリマー、又はアクリロイルメチルタウレート・ビニルピロリドン共重合体から選ばれる1種又は2種以上の成分を組み合わせて用いることができる。
(メタ)アクリル酸由来の構成単位を含む水溶性ポリマーとしては、例えば、アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体であり、アクリル酸とアルキル(C10〜30)メタクリル酸エステルの架橋型共重合体で、市販品としては例えば、PEMULEN TR−1、PEMULEN TR−2、カーボポールETD2020(Lubrizol Advanced Materials社製)等が挙げられる。
成分(m)の(メタ)アクリル酸由来の構成単位を含む水溶性ポリマーは、アルカリ剤を用いて(メタ)アクリル酸単位の全部または一部を中和することが好ましい。中和するアルカリ剤としては通常化粧料に配合可能なアルカリ剤であれば特に限定はされず、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等を使用することができる。アルカリ剤は1種又は2種以上を組み合わせて使用することができ、全組成中に0.01質量%以上、5質量%以下を配合し、系のpHを5.5〜9、特に6〜8に調整するのが好ましい。
【0083】
成分(m)のアクリロイルメチルタウレート・ビニルピロリドン共重合体としては、市販品としては例えば、アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/VPコポリマーで、Aristoflex AVC(クラリアント社製)等が挙げられ、全組成中に0.01質量%以上、5質量%以下を配合し、系のpHを4〜8.5、特に5〜7に調整するのが好ましい。
【0084】
成分(m)の(メタ)アクリル酸をモノマーの構成単位として含む水溶性ポリマー、又はアクロイルメチルタウレート・ビニルピロリドン共重合体は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、成分(m)としては、O/W乳化組成物をつくる観点から、アクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体が特に好ましい。
【0085】
成分(m)は、成分(j)(k)(l)(n)でつくる等方性1液相において、成分(m)が入ることで連続相を水相としたO/W型エマルジョンの領域を形成する。洗浄剤の剤型がO/W型エマルジョンであることが、毛穴周りの汚れと皮膚からの代謝物を膨潤させることができ、それにより表層の汚れが除去しやすくなり、角栓除去効果が高まるものである。
成分(m)の含有量は、全組成中に0.01質量%以上、5質量%以下であることが好ましい。なかでも、0.2質量%以上、4質量%以下、更には3質量%以下とすることで、角栓除去効果が高く、安定したO/W型エマルジョン、並びに等方性1液相の構築に寄与している点で優れている。
【0086】
本発明に用いる成分(n)の水は、全組成中に10質量%以上、52質量%以下含有される。特に20質量%以上、50質量%以下、さらに、40質量%以下含有されることが好ましい。このようにすることで、O/W型エマルジョン、並びに等方性1液相の構築に寄与しており、油性感なく、洗い流すことができる。
【0087】
(成分(j)〜(n))の構成する相)
本発明における洗浄剤組成物は、O/W型エマルジョンである。成分(j)、(k)、(l)、(n)の四成分系の相状態図で説明する(図1参照)。この相状態図は、水分の減少に伴い、O/W型エマルジョンエリア、隣り合った等方性1液相エリア・油相エリアの3つの領域が出現する。この3つの相で洗浄することが、毛穴に形成される硬い固形状の汚れ、特に角栓を溶解する効果に優れ、角栓除去効果が高まるものである。
【0088】
本発明では、洗浄剤組成物を肌に塗布した最初の状態は、O/W型エマルジョンであり、連続相が水相からなるO/W型の状態を皮膚になじませることで、毛穴周りの汚れと皮膚からの代謝物を膨潤させ、表層の汚れが容易に除去できる。その後、必要に応じてさらに、マッサージを行う。この間に、洗浄剤組成物から水分が蒸発し、連続相が水相および油相からなる等方性1液相に変化する。さらに、マッサージをつづけていると、さらに水分が蒸発し、等方性1液相から油相に変化し、連続相が油相の状態を皮膚になじませることとなる。
【0089】
その後、使用者が、水で肌をすすぐと、洗浄剤組成物は、油相、等方性1液相、O/W型エマルジョンの順に相変化し、肌から容易に除去され、肌に吸収されることはない。
【0090】
このように、成分(j)、(k)、(l)、(n)の四成分系の相状態図に、O/W型エマルジョン、等方性1液相、油相の3つの領域が出現するには、成分(j)と成分(k)の重量比を(j)/(k)=3/7〜3/1にすることで、初めのO/W型エマルジョンエリア、並びに水分蒸発後の等方性1液相エリアが出現する。なかでも、(j)/(k)=1/1〜7/3にすることで、十分な角栓の洗浄力を持ったまま、残留感なくすっきりと洗い流すことができる。(j)/(k)を3/1以下とすることで、O/W型エマルジョンを形成することができ、(j)/(k)を3/7以上とすることで、O/W型エマルジョンが形成されやすくなると同時に等方性1液相を経て油相に相変化させることができる。
【0091】
さらに、洗浄剤組成物は、成分(l)と成分(n)の重量比を(l)/(n)=1/5〜5/1にすることで、安定領域の広いO/W型エマルジョンエリア、並びに水分蒸発後の等方性1液相エリアが得られる。特に、1/4〜2/1、更には1/2〜2/1であることが、十分な角栓の洗浄力を実現することができる。(l)/(n)を5/1以下とすることで、O/W型エマルジョンが形成されやすくでき、(l)/(n)を1/5以上とすることで、O/W型エマルジョンから等方性1液相、油相に相変化させやすくすることができる。
【0092】
以上の作用により、本実施形態の洗浄剤組成物は、毛穴に形成される硬い固形状の汚れ、特に角栓の除去効果に優れたものとなる。また、本実施形態の洗浄剤組成物は、肌に塗布して使用し、使用後は肌を水で洗浄するだけでよいので、簡便に使用できる。また、肌を剤で洗浄するため、刺激性が少ない。さらに、本実施形態の洗浄剤組成物は、O/W型エマルジョンであり、連続相が水相であるため、洗い上がりの肌感触が良好となる。
【0093】
次に、本発明の第三実施形態の洗浄剤組成物の作用効果について、図1を参照して説明する。
図1は、本発明の洗浄剤組成物の三成分系の相状態図であり、相変化の様子を示す。図1は、成分(l)として、1,3−ブチレングリコールを使用し、水と、成分(l)との重量比を3:1とした場合の図である。成分(m)は、アクリル酸・メタクリル酸アルキル(C10-30)共重合体(Lubrizol Advanced Materials社製 PEMULEN TR−1)であり、0.9質量%とした。さらに成分(j)はモノイソステアリン酸ジグリセリン(HLB8)(日清オイリオグループ社製 コスモール 41V)、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット(HLB11)(花王社製 レオドール 430)、モノラウリン酸(12)ポリエチレングリコール(HLB14)(花王社製 エマノーン1112HG)、アルキル(C8-16)グルコシド(HLB17)(40質量%水溶液)(花王社製 マイドール 10)を使用し、重量比を10:6:22:15とした場合である。
この組成物は、O/W型エマルジョンであり、を皮膚になじませ肌をマッサージすることで、等方性1液相(バイコンティニュアス相)に変わり、さらにマッサージしていくと、相変化を起こし、油相が形成される。毛穴内部のより固体状の皮脂が成分(k)によって溶解され、毛穴に詰まった角栓を除去することができるのである。この図1に示した組成物では、角栓を除去する効果が高い。
【0094】
なお、図1に示した相状態図は、成分(l)として、1,3−ブチレングリコールを使用したものであるが、たとえば、図2に示すように、1,3−ブチレングリコールにかえて他の成分(l)を使用した場合であっても、同様の相状態図を描くことができ、同様の作用効果がある。
図2(a)は、成分(l)として、ジエチレングリコール使用した場合の相状態図、図2(b)は、成分(l)としてジプロピレングリコールを使用した場合の相状態図である。水と、成分(l)との重量比は、3:1であり、成分(m)は、0.9質量%とした。
【0095】
さらに、図3(a)〜(c)には、水と、成分(l)との重量比を変えた相状態図を示す。これらからも、同様の相状態図を描くことができ、同様の作用効果があることがわかる。
図3(a)は、成分(l)として1,3−ブチレングリコールを使用し、水と、成分(l)との重量比は、3:1であり、成分(m)は、0.5質量%とした場合の相状態図である。
また、図3(b)は、成分(l)として、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールを使用し、水と、成分(l)との重量比は、1:1であり、成分(m)は、0.5質量%とした場合の相状態図である。
図3(b)の点線の丸で囲んだ部分は、後述する実施例21の組成物の相変化を示している。
図3(c)は、成分(l)として、ジプロピレングリコール、1,3−ブチレングリコールを使用し、水と、成分(l)との重量比は、2:3であり、成分(m)は、0.5質量%とした場合の相状態図である。
図3(c)の点線の丸で囲んだ部分は、後述する実施例22の組成物の相変化を示している。
【0096】
角栓の皮膚最表面に露出している頭部分は、毛穴周りの汚れと皮膚からの代謝物が複雑に絡み合っている。この部分の汚れは、他の皮膚表面の汚れに比べて除去しにくく、角栓を除去する際の妨げとなる。また、毛穴内部に存在する角栓の胴体部分は、毛穴内部の皮脂と皮膚からの代謝物によって硬い固形状になっており、剤が毛穴に入りにくいため除去しにくい。本実施形態で使用した洗浄剤組成物は、洗浄する際にO/W相、等方性1液相(バイコンティニュアス相)、油相の順に相変化することにより、角栓の頭部と胴体部の汚れの除去に適した相で順に洗浄できるため、従来の肌にシート等を貼るタイプのものでしか除去できなかった硬い固形状の毛穴汚れ、特に角栓を洗顔で簡便に除去できる。さらに、水で肌をすすぐと、洗浄剤組成物は、油相、等方性1液相(バイコンティニュアス相)、O/W相の順に相変化し、最終的に連続相が水相となり肌から除去されるため、洗い上がりの肌感触が良好となる。
【0097】
(その他成分)
なお、本発明で使用する洗浄剤組成物には、更に洗浄剤に通常用いられる成分、増粘剤、殺菌剤、保湿剤、高粘度の油剤、湿潤剤、着色剤、防腐剤、感触向上剤、香料、酸化防止剤、各種の抽出液等を、適宜含有させることができる。
【0098】
なお、本実施形態で使用した洗浄剤組成物は、安定した等方性1液相の構築の観点からイオン性界面活性剤を多く含まないことがよく、1.0%未満であることが好ましい。さらには、0.1%以下であることが好ましく、特には含まないことが好ましい。
【0099】
本発明で使用する洗浄剤組成物は、洗顔料、メイク落とし、ボディー洗浄料、マッサージ剤、角栓除去剤として使用でき、特に洗顔料、角栓除去剤として使用することが好ましく、さらに、角栓除去剤として使用することが好ましい。
【0100】
本発明の皮膚の洗浄方法は、使用部位として、角栓詰まりがある毛穴を有する皮膚に用いることができる。例として、全身、全顔、額から鼻にかけての周囲(Tゾーン)、等の気になる毛穴部分に用いることができる。角栓除去によって、毛穴目立ちの改善、ざらつきの改善、べたつきの改善、ニキビ予防の効果が期待できる。
【0101】
また、第三実施形態で使用した洗浄剤組成物は、炭素数が2以上、6以下であり、水酸基が1または2である化合物(成分(l))と、特定の水溶性ポリマー(成分(m))、及び水(成分(n))を均一に混合し、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ剤を添加して中和し、その後、非イオン界面活性剤(成分(j))、油剤(成分(k))を添加することで得られる。常温で固体の原料を含む場合については加熱溶融又は他の成分に溶解した後に、全成分を均一に混合することより製造することができる。
【実施例】
【0102】
次に、本発明の実施例について説明する。
【0103】
(評価方法)
角栓除去効果:
健常パネル5名を用いて後述する実施例、比較例に従い小鼻を洗浄する試験を行い、洗浄前後の小鼻に存在する角栓数をそれぞれ計測した。
次に、(式1)により角栓除去率を求め評価した。
角栓除去率=100−(使用後小鼻上1cm2中に存在する角栓数)/(使用前小鼻上1cm2中に存在する角栓数)×100(式1)
A:角栓除去率が40%以上
B:角栓除去率が30%以上40%未満
C:角栓除去率が10%以上30%未満
D:角栓除去率が10%未満
【0104】
表1〜3に示す洗浄剤をそれぞれ作成した(洗浄剤(A)−1〜(A)−5、(B)−1〜(B)−3、(C)−1〜(C)−6)。洗浄剤(A)−1〜(A)−5は、連続相が水相からなる剤であり、洗浄剤B−1〜B−3は、連続相が油相からなる剤である。洗浄剤(C)−1〜(C)−6は、連続相が等方性1液相(バイコンティニュアス相)からなる剤である。これらの相の状態は、外観の観察、光学偏光顕微鏡による観察、相状態図の作成、NMRによる自己拡散係数の測定等により確認した。
なお、室温で固体の成分のある場合、あるいは室温での混合によってゲル状成分を生成する場合には、溶解させるために、攪拌しながら70〜75℃で加熱した。十分に溶解させた後に、室温に戻して、洗浄剤を得た。
【0105】
(実施例1)
はじめに、洗浄剤(A)−1を1g鼻部分のみに塗布し、15秒間よくなじませた。なお、「なじませる」とは、剤を指でよく伸ばし、もみこんだり、すりこむ行為をいう。ただし、剤が皮膚に吸収されることはない。以下同様である。(A)−1の剤が肌に付着した状態で、次に、洗浄剤(B)−1を1g鼻部分のみに塗布し、15秒間よくなじませ、その後、水で1分すすいだ(表4参照)。
【0106】
(実施例2)
はじめに、洗浄剤(A)−2を1g鼻部分のみに塗布し、15秒間よくなじませた。A−2の剤が肌に付着した状態で、次に、洗浄剤(B)−2を1g鼻部分のみに塗布し、15秒間よくなじませ、その後、水で1分すすいだ(表4参照)。
【0107】
(実施例3)
はじめに、洗浄剤(A)−3を1g鼻部分のみに塗布し、15秒間よくなじませた。(A)−3の剤が肌に付着した状態で、次に、洗浄剤(B)−3を1g鼻部分のみに塗布し、15秒間よくなじませ、その後、水で1分すすいだ(表4参照)。
(実施例4)
はじめに、洗浄剤(A)−1、1gを鼻部分のみに塗布し、10秒間よくなじませた。(A)−1の剤が肌に付着した状態で、洗浄剤(C)−1、1gを鼻部分のみに塗布し、10秒間よくなじませ(A)−1、(C)−1の剤が肌に付着した状態で、さらに、洗浄剤(B)−1、1gを鼻部分のみに塗布し、10秒間よくなじませ、その後、水で1分すすいだ(表4参照)。
【0108】
(実施例5)
はじめに、洗浄剤(A)−1、1gを鼻部分のみに塗布し、10秒間よくなじませた。(A)−1の剤が肌に付着した状態で、洗浄剤(C)−1、1gを鼻部分のみに塗布し、10秒間よくなじませ、(A)−1、(C)−1の剤が肌に付着した状態で、さらに、洗浄剤(B)−2、1gを鼻部分のみに塗布し、10秒間よくなじませ、その後、水で1分すすいだ(表4参照)。
【0109】
(実施例6)
はじめに、洗浄剤(A)−2、1gを鼻部分のみに塗布し、10秒間よくなじませた。(A)−2の剤が肌に付着した状態で、洗浄剤(C)−2、1gを鼻部分のみに塗布し、10秒間よくなじませた。その後、(A)−2、(C)−2の剤が肌に付着した状態で、さらに、洗浄剤(B)−2、1gを鼻部分のみに塗布し、10秒間よくなじませ、その後、水で1分すすいだ(表4参照)。
【0110】
(実施例7)
はじめに、洗浄剤(A)−3、1gを鼻部分のみに塗布し、10秒間よくなじませた。(A)−3の剤が肌に付着した状態で、洗浄剤(C)−3、1gを鼻部分のみに塗布し、10秒間よくなじませた。(A)−3、(C)−3の剤が肌に付着した状態で、さらに、洗浄剤(B)−3、1gを鼻部分のみに塗布し、10秒間よくなじませ、その後、水で1分すすいだ(表4参照)。
【0111】
(実施例8)
はじめに、洗浄剤(A)−4、1gを鼻部分のみに塗布し、10秒間よくなじませた。(A)−4の剤が肌に付着した状態で、次に、洗浄剤(C)−3、1gを鼻部分のみに塗布し、10秒間よくなじませた。(A)−4、(C)−3の剤が肌に付着した状態で、洗浄剤(B)−3、1gを鼻部分のみに塗布し、10秒間よくなじませ、その後、水で1分すすいだ(表4参照)。
【0112】
(実施例9)
はじめに、洗浄剤(A)−4、1gを鼻部分のみに塗布し、10秒間よくなじませた。(A)−4の剤が肌に付着した状態で、次に、洗浄剤(C)−4、1gを鼻部分のみに塗布し、10秒間よくなじませた。(A)−4、(C)−4の剤が肌に付着した状態で、洗浄剤(B)−2、1gを鼻部分のみに塗布し、10秒間よくなじませ、その後、水で1分すすいだ。
【0113】
(実施例10)
はじめに、洗浄剤(A)−4、1gを鼻部分のみに塗布し、10秒間よくなじませた。(A)−4の剤が肌に付着した状態で、次に、洗浄剤(C)−5、1gを鼻部分のみに塗布し、10秒間よくなじませた。(A)−4、(C)−5の剤が肌に付着した状態で、洗浄剤(B)−2、1gを鼻部分のみに塗布し、10秒間よくなじませ、その後、水で1分すすいだ。
【0114】
(実施例11)
はじめに、洗浄剤(A)−5、1gを鼻部分のみに塗布し、10秒間よくなじませた。(A)−5の剤が肌に付着した状態で、次に、洗浄剤(C)−6、1gを鼻部分のみに塗布し、10秒間よくなじませた。(A)−5、(C)−6の剤が肌に付着した状態で、洗浄剤(B)−3、1gを鼻部分のみに塗布し、10秒間よくなじませ、その後、水で1分すすいだ。
【0115】
(実施例12〜実施例31,32)
表5、表6(実施例32に該当)に示す洗浄剤を作成した。
成分(l)、(m)、(n)に必要に応じて保湿剤(ソルビトール、グリセリン)さらには、必要に応じてポリプロピレングリコール、水添ポリイソブテンを加え、攪拌して全成分を均一に混合した。そして、この混合物に水酸化カリウムを添加して中和した。ついで、成分(j)、(k)、香料を均一に分散させることにより洗浄剤組成物を得た。
この洗浄剤は、O/W型エマルジョンである。相の状態は、外観の観察、光学偏光顕微鏡による観察、相状態図の作成、NMRによる自己拡散係数の測定等により確認した。なお、表2,3、表5、表6中に記載された粘度の値は、BM型粘度計(トキメック社製、測定条件:ローターNo.1、60rpm、30℃)により測定したものである。
作成した洗浄剤1gを鼻部分のみに塗布し、30秒間マッサージを行い、その後、水で1分すすいだ。
実施例21において作成した剤が相変化する様子を図3(b)に示し、実施例22において作成した剤が相変化する様子を図3(c)に示す。
図3(b)、(c)によれば、連続相が水相からなるO/W型の剤を皮膚に塗布すると、この剤から、水分が蒸発して、等方性一液相(バイコンティニュアス相)からなる前記剤となることがわかる。そして、さらに、等方一液相からなる前記剤から、水分が蒸散すると、連続相が油相に相変化し、連続相が油相からなる前記剤となることがわかる。実施例12〜32の他の剤も、連続相が水相からなるO/W型の剤を皮膚に塗布すると、この剤から、水分が蒸発して、等方性一液相(バイコンティニュアス相)からなる剤となり、そして、等方一液相からなる前記剤から、水分が蒸散すると、連続相が油相に相変化し、連続相が油相からなる剤となる。
【0116】
(比較例1)
洗浄剤(A)−3、1gを鼻部分のみに塗布し、30秒間よくなじませ、その後、水で1分すすいだ(表7参照)。
【0117】
(比較例2)
洗浄剤(A)−4、1gを鼻部分のみに塗布し、30秒間よくなじませ、その後、水で1分すすいだ(表7参照)。
【0118】
(比較例3)
洗浄剤(C)−2、1gを鼻部分のみに塗布し、30秒間よくなじませ、その後、水で1分すすいだ(表7参照)。
【0119】
(比較例4)
洗浄剤(C)−3、1gを鼻部分のみに塗布し、30秒間よくなじませ、その後、水で1分すすいだ(表7参照)。
【0120】
(比較例5)
洗浄剤B−2、1gを鼻部分のみに塗布し、30秒間よくなじませ、その後、水で1分すすいだ(表7参照)。
【0121】
(比較例6)
洗浄剤(B)−3、1gを鼻部分のみに塗布し、30秒間よくなじませ、その後、水で1分すすいだ(表7参照)。
【0122】
(比較例7)
洗浄剤(B)−1、1gを鼻部分のみに塗布し、15秒間よくなじませ、(B)−1の剤が肌に付着した状態で、次に、洗浄剤(A)−1、1gを鼻部分のみに塗布し、15秒間よくなじませ、その後、水で1分すすいだ(表8参照)。
なお、表2、3、5、6の粘度は、BM型粘度計(トキメック社製、測定条件:ローターNo.1、60rpm、30℃)により測定したものである。
【0123】
【表1】

【0124】
【表2】

【0125】
【表3】

【0126】
【表4】

【0127】
【表5】


【0128】
【表6】

【0129】
【表7】

【0130】
【表8】

【0131】
表4から、実施例1〜8では、角栓除去効果に優れていることがわかる。また、実施例9〜11においても、優れた角栓除去効果が得られた。
また、表5,6から、実施例12〜32においても、角栓除去効果に優れていることがわかる。
また、いずれも剤を塗布してよくなじませ、洗浄する方法であるので、刺激性が低いものであることがわかる。また、実施例1〜32の方法は、パック等を乾燥させる必要がないので手間もかからない。
一方、表7,8から、比較例1〜7では、角栓除去効果が劣ることがわかる。
なお、実施例12〜31で作製した洗浄剤組成物に関しては、以下のようにして洗いあがりの肌感触についても評価した。
女性評価パネル8名にて、洗い上がりの肌感触について以下の基準で官能評価し、8名の合計点を求めた。その結果を表5に併せて示す。
3:しっとりとうるおった肌になったと感じた。
2:ややべたつきがある、もしくはやや肌がかさかさすると感じた。
1:べたつきが多い、もしくは肌がかさかさになったと感じた。
実施例12〜31で作製した洗浄剤組成物を使用した場合には、洗い上がりの肌感が良好であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)水溶性溶媒、界面活性剤、及び水を含み、連続相が水相からなる剤を皮膚になじませる工程と、
(B)連続相が油相からなる剤を皮膚になじませる工程を含み、
(A)の工程の後、(B)の工程を行う皮膚の洗浄方法。
【請求項2】
(A)水溶性溶媒、界面活性剤、及び水を含み、連続相が水相からなる剤を皮膚になじませる工程と、
(C)油剤、界面活性剤、水溶性溶媒、及び水を含み、油相および水相それぞれが連続相となった等方性1液相からなる剤を皮膚になじませる工程と、
(B)連続相が油相からなる剤を皮膚になじませる工程を含み、
(A)の工程の後、(C)の工程を行い、その後、(B)の工程を行う皮膚の洗浄方法。
【請求項3】
(A)油剤、水酸基を1ないし2含有し、炭素数2〜6である化合物、界面活性剤、及び水を含み、連続相が水相からなるO/W型エマルジョンの剤を皮膚になじませる工程と、
(C)前記剤から、水分を蒸散させ、油相および水相それぞれが連続相となった等方性1液相に相変化させ、前記等方性1液相からなる剤を皮膚になじませる工程と、
(B)さらに、等方性1液相からなる前記剤から、水分を蒸散させ、連続相を油相に相変化させ、連続相が油相からなる剤を皮膚になじませる工程と、を含む皮膚の洗浄方法。
【請求項4】
前記(B)を皮膚になじませた後に、(D)水を添加し、前記剤を皮膚から除去する工程を含む請求項1乃至3のいずれかに記載の皮膚の洗浄方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の皮膚の洗浄方法は、皮膚の角栓を除去する洗浄方法である皮膚の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−12057(P2011−12057A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126214(P2010−126214)
【出願日】平成22年6月1日(2010.6.1)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】