説明

洗浄方法

【課題】研磨加工後の半導体基板から残渣を効率良く除去できる洗浄方法を提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態に係る洗浄方法は、回転するロールブラシにより半導体基板上の残渣を洗浄する洗浄方法であって、ロールブラシを7.35kPa以下の第1の圧力で半導体基板に押し当てて、半導体基板上の残渣を洗浄する第1の洗浄工程と、ロールブラシを7.35kPaよりも高い第2の圧力で半導体基板に押し当てて、半導体基板上の残渣を洗浄する第2の洗浄工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明に関する実施形態は、研磨加工後の半導体基板の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの微細化に伴い、半導体デバイスの製造には、種々の技術(例えば、新たな材料や加工方法)が導入されている。その中でも、CMP(化学機械研磨)は、層間絶縁膜(ILD:inter layer dielectric)の平坦化、埋め込み素子分離(STI:shallow trench isolation)、プラグ、埋め込み金属配線の形成等、半導体デバイスの製造に不可欠の技術となっている。
【0003】
CMPは、半導体デバイスの表面を研磨して平坦化する技術であり、この研磨の際にスラリーと呼ばれる研磨剤を使用する。CMPでは、研磨剤に含まれる成分が半導体基板表面に化学反応(例えば、酸化、水和、錯体形成)を引き起こし、この化学反応により半導体基板表面にできた層が研磨剤に含まれる研磨粒子により機械的に除去される。
【0004】
研磨終了後は、研磨面を含めた半導体基板全体が洗浄され、半導体基板に付着した研磨粒子等の残渣が除去される。これら残渣が半導体基板表面上に存在すると、この半導体基板上に形成されている半導体デバイスの配線の短絡等、様々な悪影響を引き起こす原因となる。このため、半導体基板表面上の残渣を洗浄する様々な方法が従来から提案されている。
【0005】
例えば、回転する2つのロールブラシにより半導体基板を挟み込むようにして洗浄する方法、小型のブラシ(ペンブラシ)で半導体基板を洗浄する方法、1MHz付近の超音波を使用して半導体基板を洗浄する方法(メガソニック洗浄)、純水と高圧ガス(N)とをノズル内で混合して半導体基板へ噴射し、純水の液滴が半導体基板表面に衝突した際に発生する衝撃波を利用して半導体基板を洗浄する方法(2流体ジェット洗浄)等が提案されている。
【0006】
また、CMP後の洗浄ではないが、回転する2つのロールブラシにより半導体基板を挟み込むようにして洗浄する方法において、第1の圧力でロールブラシを半導体基板に押し当てて洗浄した後、第1の圧力よりも低い第2の圧力でロールブラシを半導体基板に押し当てて洗浄する方法も提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−214282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の洗浄方法では、CMP後の半導体基板に付着した残渣を十分に除去できないという問題があった。
【0009】
本発明の実施形態は、かかる従来の問題を解消するためになされたもので、研磨加工後の半導体基板から残渣を効率良く除去できる洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施形態に係る洗浄方法は、回転するロールブラシにより半導体基板上の残渣を洗浄する洗浄方法であって、ロールブラシを7.35kPa以下の第1の圧力で半導体基板に押し当てて、半導体基板上の残渣を洗浄する第1の洗浄工程と、ロールブラシを7.35kPaよりも高い第2の圧力で半導体基板に押し当てて、半導体基板上の残渣を洗浄する第2の洗浄工程と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係る研磨装置の側面構成図である。
【図2】ロールブラシの正面構成図である。
【図3】洗浄メカニズムの説明図である。
【図4】実施形態に係る研磨装置の動作を示すフローチャートである。
【図5】実施例1の検査結果を示す図である。
【図6】実施例2の検査結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
(実施形態)
図1は、実施形態に係る研磨装置1の側面構成図である。図1に示すように、実施形態に係る研磨装置1は、搬送機構10、研磨機構20、洗浄機構30、乾燥機構40、薬液供給機構50、操作機構60、制御機構70を備える。以下、図1を参照して研磨装置1が備える各機構について説明する。
【0013】
(搬送機構10)
搬送機構10は、半導体基板(以下、ウェハWと称する)が収容された収容器2のドアを開閉するオープナー11と、研磨機構20、洗浄機構30及び乾燥機構40間でウェハWの搬送を行う搬送ロボット12とを備える。なお、収容器2は、研磨対象であるウェハWを収容する容器であり、例えば、FOUP(Front Opening Unified Pod)やSMIF(Standard of Mechanical Interface)Pod等である。
【0014】
(研磨機構20)
研磨機構20は、搬送ロボット12及びトップリング22との間でウェハWを受け渡すための台である受渡台21と、ウェハWを研磨するためのトップリング22(ヘッドとも称する)及びターンテーブル23(研磨テーブルとも称する)と、トップリング22を回転駆動するためのモータ24と、ターンテーブル23を回転駆動するためのモータ25と、ターンテーブル23上のパッド23aへ研磨剤を供給する研磨剤供給ノズル26と、パッド23aをドレスするドレス27とを備える。
【0015】
ウェハWを研磨機構20内へ搬送する際には、搬送ロボット12が受渡台21上に研磨面(半導体デバイスの形成面)を下向きにして載置したウェハWをトップリング22で受け取り、ウェハWを研磨機構20外へ搬送する際には、トップリング22が受渡台21上に載置したウェハWを搬送ロボット12で受け取ることによりウェハWの受け渡しを行う。
【0016】
トップリング22は、搬送ロボット12により研磨面を下に向けて受渡台21上に載置されたウェハWを受け取ると、後述するターンテーブル23上にウェハWを移送させた後、ウェハWの研磨面をターンテーブル23上のパッド23aに押し付けた状態でモータ24により回転駆動される。研磨剤供給ノズル26からは、薬液供給機構50から供給される研磨剤(スラリー)がパッド23a上に供給される。ドレス27は、パッド23a上を往復駆動し、パッド23aのコンディショニングを行う。
【0017】
(洗浄機構30)
洗浄機構30は、ウェハWを洗浄するロールブラシ31a,31bと、洗浄液(例えば、アンモニア水溶液等のアルカリ性液体)を供給する洗浄液供給ノズル32a、32bと、リンス用の純水を供給する純水供給ノズル33a,33bと、ウェハWの端部を把持するとともに自転してウェハWを回転させる把持手段34とを備える。ウェハWの洗浄の際には、洗浄液供給ノズル32a,32bから洗浄液が供給されるとともに把持手段34が自転してウェハWを回転させる。
【0018】
ロールブラシ31a,31bは後述する支持部材により回転駆動され、ウェハWを挟み込むようにしてウェハWを洗浄し、ウェハWに付着している研磨粒子等の残渣を除去する。ウェハWの洗浄後は、純水供給ノズル33a,33bから純水が供給されウェハWのリンスが行われる。なお、図1には、洗浄機構30をウェハWを水平方向に把持する方式(いわゆる横型)で図示しているが、ウェハWを垂直方向に把持する方式(いわゆる縦型)としてもよい。
【0019】
(ロールブラシ31a,31bの構成)
図2は、ロールブラシ31a,31bの正面構成図である。以下、図2を参照してロールブラシ31a,31bの構成について説明する。なお、ロールブラシ31a,31bは同一の構成であるため、以下の説明ではロールブラシ31aの構成についてのみ説明し、ロールブラシ31bの構成の説明は省略する。
【0020】
ロールブラシ31aは、筒状に形成され、外周面上に円筒形の突起aが複数列配置されているスポンジ状の多孔質体からなるブラシ体301aと、ブラシ体301aの長手方向に沿ってブラシ体301aに挿入された芯体302aと、芯体302aを支持するとともに芯体302aを回転駆動する支持部材303aと、支持部材303aに係合され、該支持部材303aを図2の上下方向(矢印の方向)に駆動するエアシリンダ304aとを備える。なお、ロールブラシ31aをウェハW表面へ押しつける力は、エアシリンダ304aへ供給する窒素(N)ガスもしくはCDA(Clean Dry Air)の圧力で制御される。
【0021】
支持部材303aにより芯体302aが回転させられると、芯体302aとともにブラシ体301aが回転する。次に、エアシリンダ304aによりブラシ体301aがウェハW表面(洗浄面)に押し当てられ、ウェハW表面上に付着した残渣が洗浄される。なお、先にブラシ体301aをウェハ表面に押し当てた後、ブラシ体301aを回転させるようにしてもよい。また、ウェハWの洗浄時には、図1に示す洗浄液供給ノズル32a,32bから洗浄液が供給される。なお、ブラシ体301aの一部のみがウェハW表面に接触することを防止するため、ロールブラシ31aの長手方向に沿って、ブラシ体301aの外周とウェハWの表面と略平行となるようにロールブラシ31aを取り付けることに留意が必要である。また、ブラシ体301aの形状は、種々のものを使用することが可能であり、例えば、外周面上に突起が形成されていないブラシ体を使用するようにしてもよい。
【0022】
(乾燥機構40)
乾燥機構40は、窒素ガスもしくはCDAをウェハWへ噴出する噴出ノズル41a,41bと、ウェハWの端部を把持するとともに自転してウェハWを回転させる把持手段42とを備える。乾燥機構40では、把持手段42によりウェハWを回転させた状態で、噴出ノズル41a,41bから窒素ガスもしくはCDAを噴出しウェハWを乾燥する。
【0023】
(薬液供給機構50)
薬液供給機構50は、研磨機構20へ供給する研磨剤を収容するタンク51と、このタンク51に収容された研磨剤を送出するポンプ52と、洗浄機構30へ供給する洗浄液を収容するタンク53と、このタンク53に収容された洗浄液を送出するポンプ54とを備える。
【0024】
(操作機構60)
操作機構60は、ユーザ(オペレータ)からの指示を受け付け、受け付けた指示を制御装置70へ入力する入力手段(例えば、キーボードやマウス)と、研磨装置1の操作に必要な情報を表示するディスプレイ(例えば、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube))を備える。
【0025】
(制御機構70)
制御機構70は、メモリ71、CPU(central processing unit)72、HDD(hard disk drive)73を備える。HDD73には、研磨装置1の動作プログラムやレシピと呼ばれるウェハWの処理条件(研磨条件や洗浄条件)等が記憶されている。
【0026】
各レシピは、研磨及び洗浄の項目から構成されており、研磨の項目では、ウェハWの研磨に必要なパラメータ、例えば、トップリング22の押圧(Pa)、トップリング22の回転数(回転/分)、ターンテーブル23の回転数(回転/分)、研磨剤の供給量(cc/分)、ドレス27の回転数(回転/分)等を設定できる。
【0027】
洗浄の項目では、洗浄機構30におけるウェハWの洗浄時間(秒)、ロールブラシ31a、31bの回転数(回転/分)、ロールブラシ31a、31bのウェハWへの押し付け圧(ニュートン)、洗浄液及び純水の供給量(cc/分)等の条件を設定できる。
【0028】
制御機構70は、操作機構60を介してユーザにより指定されたレシピもしくは図示しないホスト(host)により指定されたレシピでウェハWを研磨及び洗浄する。
【0029】
(洗浄メカニズム)
図3は、洗浄メカニズムの説明図である。以下、図3を参照して、ウェハWに付着した残渣を洗浄(除去)するメカニズムについて説明する。なお、ロールブラシ31a側及びロールブラシ31b側での洗浄メカニズムは同じであるため、以下の説明では、ロールブラシ31a側での洗浄メカニズムについてのみ説明し、ロールブラシ31b側での洗浄メカニズムの説明を省略する。また、図3に記載の符号Uは、ロールブラシ31aのブラシ体31aの最外周面の速度(Tip velocity)である。
【0030】
ウェハW表面に付着している残渣Sを除去する力Fd(以下、除去力Fdと称する)は、ロールブラシ301aとウェハWの回転によって作り出される洗浄液の流速uと、ロールブラシ301aとウェハW間の距離Lとに応じて発生すると考えられる(参考文献:Haedo Jeong et al., “Analysis of Particle Removal Mechanism Based on PVA Brush Dynamics”, ICPT2008)。
【0031】
すなわち、ロールブラシ31a及びウェハWの回転によって、洗浄液がロールブラシ31aとウェハWとの間に入り込むハイドロプレーン現象が引き起こされる。そして、ロールブラシ31aとウェハW間に生じた洗浄液の流れが残渣Sを押し流す力、すなわち除去力FdをウェハW表面上の残渣Sへ及ぼすと考えられる。
【0032】
ここで、除去力Fdは、以下の(1)式で表すことができる。
Fd=(π・Cd・ρ・d・u)/8・・・(1)
なお、(1)式中の各パラメータの意味は以下の通りである。
π:円周率
Cd:定数
ρ:洗浄液の密度
d:残渣Sの直径
u:洗浄液の流速
なお、上記(1)式を算出するにあたって、流速uの値をロールブラシ31aのブラシ体301aの外周面のウェハWに対する相対速度と近似した(洗浄液の流速uの値は、ロールブラシ31aとウェハW間の距離に依存しているため)。また、残渣Sの形状は球体であると近似した。
【0033】
上記(1)式からは、残渣Sのサイズ(直径d)が小さくなると洗浄液の流れによる残渣Sの除去力Fdが小さくなり、残渣Sのサイズが大きくなると洗浄液の流れによる残渣Sの除去力Fdが大きくなることがわかる。また、上記(1)式からは、洗浄液の流速uが遅くなると洗浄液の流れによる残渣Sの除去力Fdが小さくなり、洗浄液の流速uが速くなると洗浄液の流れによる残渣Sの除去力Fdが大きくなることがわかる。
【0034】
以上のことから、サイズの小さな残渣を除去するためには、洗浄液の流速uを速くすれば良いことがわかる。ここで、ロールブラシ31aとウェハWとの間に生じる洗浄液の流速は、ロールブラシ31aのブラシ体301aの最外周面が最も速く、ウェハW表面上が最も遅いことを考慮すると、洗浄液の流速uを速くするためには、以下の2通りの方法があることがわかる。
【0035】
1:ロールブラシ31aの単位時間当たりの回転数を多くする。
2:ロールブラシ31aのブラシ体301aの最外周面及びウェハW表面間の距離Lを短くする(すなわち、ロールブラシ31aをウェハWに押し付ける力を大きくする)。
【0036】
一方、(1)式によれば、サイズの大きな残渣Sは、洗浄液の流速uが遅くても、洗浄液の流れによる残渣Sの除去力Fdが大きいため、ロールブラシ31aをウェハWに押し付ける力は小さくても除去が可能である。逆に、サイズの大きな残渣Sを除去する場合には、ロールブラシ31aをウェハW表面に押し付ける力を大きくしてロールブラシ31aのブラシ体301aの最外周面とウェハW表面間の距離Lを短くすると、残渣Sの直径dが大きいために、いったん洗浄液により押し流された残渣Sが途中で引っかかってしまいウェハW外にまで排出されにくくなる。このため、サイズの大きな残渣Sを除去する場合は、ロールブラシ31aをウェハW表面に押し付ける力を大きくすると却って残渣Sを除去できない。
【0037】
以上のことから、ウェハWを以下のように2つのステップに分けて洗浄することにより、ウェハW表面上に付着した残渣を効率よく除去できることがわかる。
ステップ1:ロールブラシ31aを小さな力でウェハW表面に押し当てて洗浄し、サイズの大きな残渣Sを除去する。
ステップ2:ロールブラシ31aを1よりも大きな力でウェハW表面に押し当てて洗浄し、サイズの小さな残渣Sを除去する。
【0038】
なお、ステップ1の前に、ロールブラシ31aを大きな力でウェハW表面に押し当ててウェハWを洗浄し、ウェハW表面の膜に食い込んだり強固に付着したりしている残渣Sを引き剥がす処理を実施してもよい。
【0039】
図4は、実施形態に係る研磨装置1の動作を示すフローチャートである。以下、図1〜4を参照して、研磨装置1の動作について説明する。なお、研磨装置1は、制御機構70からの指示に基づいて動作する。
(ステップS101:設置工程)
搬送機械(例えば、RGV(Rail Guided Vehicle)やOHV(Over Head Vehicle))もしくはオペレータにより、収容器2がオープナー11にセットされると、オープナー11により収容器2のドアがオープンする。
【0040】
(ステップS102:搬送工程)
搬送機構10の搬送ロボット12は、収容器2に収容された研磨加工対象であるウェハWを搬出して、研磨機構20の受渡台21上に反転載置する。
【0041】
(ステップS103:研磨工程)
受渡台21に載置されたウェハWは、トップリング22で受け取られた後、ターンテーブル23上にウェハWを移送される。その後、薬液供給機構50のポンプ52が駆動されて研磨剤が供給されるとともに、ウェハWの研磨面(半導体デバイス形成面)をターンテーブル23上のパッド23aに押し付けた状態でターンテーブル23が回転駆動し、ウェハW表面が研磨加工される。
【0042】
(ステップS104:第1の洗浄工程(低圧))
研磨加工後、搬送ロボット12は、ウェハWを研磨機構20から洗浄機構30へウェハWを搬送する。洗浄機構30では、ウェハWが洗浄され、ウェハWに付着している残渣が除去される。具体的には、洗浄機構30に搬送されたウェハWは、把持手段34によりウェハWの端部が把持され、レシピに設定された回転数で回転する。また、ウェハWには、洗浄液供給ノズル32a,32bから洗浄液が供給される。その後、回転するロールブラシ31a,31bは、圧力が7.35kPa以下となるようにウェハWに押し当てられてウェハWが洗浄される。この第1の洗浄工程(低圧)では、ウェハW表面に付着している残渣の内、粒径の大きな残渣(粒径150nm以上)が主に取り除かれる。
【0043】
(ステップS105:第2の洗浄工程(高圧))
第1の洗浄工程終了後、ロールブラシ31a,31bは、圧力が7.35kPaよりも高くなるようにウェハWに押し当てられ、ウェハWが更に洗浄される。この第2の洗浄工程(高圧)では、第1の洗浄工程(低圧)で除去されなかった粒径の小さな残渣(粒径80nm以上150nm未満)が主に取り除かれる。このように、洗浄工程を第1,第2の洗浄工程から構成することで、ウェハWに付着している残渣が効率よく除去される。
【0044】
(ステップS106:リンス工程)
洗浄後は、薬液供給機構50のポンプ54が停止されて洗浄液の供給が停止するとともに、ロールブラシ31a,31bがウェハW表面から離れる。その後、純水供給ノズル33a,33bから純水が供給され、ウェハWがリンスされる。なお、リンス中は、ウェハWは把持手段34により回転されている。
【0045】
(ステップS107:乾燥工程)
リンス終了後、搬送ロボット12は、ウェハWを洗浄機構30から乾燥機構40へ搬送する。乾燥機構40では、ウェハWが乾燥される。具体的には、乾燥機構40に搬送されたウェハWは、把持手段42によりウェハWの端部が把持された状態で回転し、噴出ノズル41a,41bから窒素ガスもしくはCDAが噴出されウェハWが乾燥させられる。
【0046】
ウェハWの乾燥後、搬送ロボット12は、ウェハWを収容器2内へ収容し、オープナー11が収容器2のドアをクローズする。
【実施例】
【0047】
次に、実施形態に係る研磨装置1の具体的実施例及び検査結果について説明する。この実施例では、実施形態に係る研磨装置1を使用してロールブラシの押し付け力とウェハ表面上の残渣との関係(実施例1)、ロールブラシの最外周面での速度(以下、線速度と称する)とウェハ表面上の残渣との関係(実施例2)、及び洗浄工程を第1,第2のステップに分けてウェハを洗浄した際の残渣の変化(実施例3)について調べた。なお、各実施例に記載した圧力は、洗浄時におけるブラシ体とウェハとの接触面積(954mm)から換算している。
【0048】
(共通条件)
初めに、以下の実施例1〜3に共通する処理条件について説明する。
洗浄対象:表面上に酸化膜を550nm形成した直径300mmのウェハを使用。
研磨剤:シリカ(SiO)を研磨粒子として含む酸化膜用スラリーを使用。
研磨時間:30secとした(酸化膜を50nm程度研磨した)。
洗浄液:純水を使用。
ブラシ体:筒状に形成された外径φが60mmのものを使用。なお、外周面上には、円筒形の突起が複数列配置されており、材質はPVA(Polyvinyl Alcohol)である。
ウェハの洗浄後、純水でのリンス及びCDAでの乾燥を行った。
【0049】
(実施例1)
実施例1では、ロールブラシの押し付け力とウェハ表面上の残渣との関係を調べた。実施例1では、ロールブラシの押し付け力2N(圧力:2.1kPa)〜12N(圧力:12.6kPa)に変化させた際に、ウェハ表面上に残っている残渣のサイズ(直径)と個数とを、欠陥検査装置を用いて調べた。残渣の個数は、残渣のサイズが80nm以上及び150nm以上の2通りについて調べた。なお、圧力は、ロールブラシのブラシ体表面に複数配列された円筒形の突起のうちの一列がウェハW表面に接触しているものとして算出した。
【0050】
図5は、実施例1の検査結果を示す図である。図5の縦軸及び横軸は、ウェハ表面上に残っている残渣の個数及びロールブラシのウェハ表面への押し付け力をそれぞれ示している。また、図5中では、サイズが80nm以上の残渣の個数を実線で、サイズが150nm以上の残渣の個数を一点鎖線で示した。
【0051】
図5の結果からは、サイズが150nm以上の残渣については、ロールブラシの押し付け力が低い方が少なくなり、逆に、サイズが80nm以上の残渣については、ロールブラシの押し付け力が高い方が少なくなることがわかる。そして、この実施例1の結果は、図3を参照して説明した洗浄メカニズムの説明とも一致する。
【0052】
また、図5の結果からは、ロールブラシをウェハ表面に押し付ける力が7N(圧力:7.35kPa)以下になると、押し付ける力が低下するに伴い、サイズが150nm以上の残渣の個数が減少し、逆に、ロールブラシをウェハ表面に押し付ける力が7N(圧力:7.35kPa)を超えている場合、押し付ける力を変化させてもサイズが150nm以上の残渣の個数にほとんど変化がないことがわかる。以上のことから、ウェハを2つのステップに分けて洗浄する場合、ロールブラシをウェハ表面に押し付ける力の境を7N(圧力:7.35kPa)とすることが好ましいことがわかる。
【0053】
(実施例2)
実施例2では、ロールブラシの線速度とウェハ表面上の残渣との関係について調べた。実施例2では、ロールブラシの押し付け力が2N(圧力:2.1kPa)の場合及びロールブラシの押し付け力が12N(圧力:12.6kPa)のそれぞれについて、線速度を変化させた際に、ウェハ表面上に残っている残渣のサイズ(直径)と個数とを、欠陥検査装置を用いて調べた。残渣の個数は、残渣のサイズが80nm以上及び150nm以上の2通りについて調べた。なお、圧力は、ロールブラシのブラシ体表面に複数配列された円筒形の突起のうちの一列がウェハW表面に接触しているものとして算出した。
【0054】
図6は、実施例2の検査結果を示す図である。図6の縦軸及び横軸は、ウェハ表面上に残っている残渣の個数及びロールブラシの線速度をそれぞれ示している。また、図6中では、サイズが80nm以上でブラシの力が2N(圧力:2.1kPa)の残渣の個数を実線で、サイズが80nm以上でブラシの力が12N(圧力:12.6kPa)の残渣の個数を一点鎖線で、サイズが150nm以上でブラシの力が2N(圧力:2.1kPa)の残渣の個数を鎖線で、サイズが150nm以上でブラシの力が12N(圧力:12.6kPa)の残渣の個数を二点鎖線で示した。なお、ロールブラシの線速度は、ロールブラシの直径と回転数から算出した。
【0055】
図6の結果からは、サイズが80nm以上及び150nm以上の両方について、ロールブラシの線速度が速い方が残渣の個数が少ないことがわかる。また、ロールブラシの線速度が200mm/s以上になると、ロールブラシの線速度を速くしても残渣の個数がほとんど変化しないことがわかる。このため、ロールブラシの線速度が200mm/s以上であれば十分な洗浄効果を得ることができる。
【0056】
さらに、図6の結果からは、サイズが150nm以上の残渣については、押し付け力が低い場合(2N(圧力:2.1kPa))の方がロールブラシの押し付け力が高い場合(12N(圧力:12.6kPa))よりも一貫して少なく、サイズが80nm以上の残渣については、押し付け力が高い場合(12N(圧力:12.6kPa))の方がロールブラシの押し付け力が低い場合(2N(圧力:2.1kPa))よりも一貫して少ないことがわかる。そして、この実施例2の結果は、図3を参照して説明した洗浄メカニズムの説明及び図5に示す実施例1の結果とも一致する。
【0057】
(実施例3)
実施例3では、洗浄工程を以下の2ステップに分けてウェハを洗浄した際の残渣の変化について調べた。
ステップ1:ロールブラシをウェハ表面に押し付ける力を2N(圧力:2.1kPa)とし、かつ、ロールブラシの線速度を400〜600mm/sとしてウェハを洗浄。
ステップ2:ロールブラシをウェハ表面に押し付ける力を12N(圧力:12.6kPa)とし、かつ、ロールブラシの線速度を400〜600mm/sとしてウェハを洗浄。
【0058】
上記条件でウェハを洗浄後、ウェハ表面上に残っている残渣の個数を調べたところ、ウェハの洗浄中にロールブラシをウェハ表面に押し付ける力を7〜12Nの間で一定とし、ウェハ表面に押し付ける力を洗浄途中で変化させない従来の洗浄方法で洗浄した場合に比べて、サイズが150nm以上の残渣の個数が2/3に減少し、サイズが80nm以上の残渣の個数が1/2に減少した。
【0059】
さらに、上記ステップ1の前にロールブラシをウェハ表面に押し付ける力を12N以上とし、かつ、ロールブラシの線速度を400〜600mm/sとしてウェハを洗浄した後、上記ステップ1,2の条件で洗浄を実施した場合、サイズが150nm以上の残渣の個数が1/3に減少し、サイズが80nm以上の残渣の個数が1/3に減少した。これは、ロールブラシ31aを大きな力でウェハW表面に押し当てて洗浄することにより、ウェハW表面の膜に食い込んだり強固に付着したりしている残渣Sが引き剥がされるためと考えられる。
【0060】
なお、発明者らは、洗浄液として純水のかわりにアンモニア水溶液(pH10〜12)を使用してウェハ表面に付着した残渣を洗浄したが、純水を使用した場合との違いは認められなかった。
【0061】
以上のように、ロールブラシを7N以下の力でウェハ表面に押し当てて洗浄した後、ロールブラシを7N(圧力:7.35kPa)よりも高い力でウェハ表面に押し当てて洗浄することにより、ウェハ表面上に付着した残渣を効率よく除去できることがわかった。また、ロールブラシを7N(圧力:7.35kPa)以下の力でウェハに押し当てて洗浄する前に、ロールブラシを12N(圧力:12.6kPa)以上の力でウェハに押し当てて洗浄することにより残渣をさらに少なくできることがわかった。
【0062】
なお、各実施例では、サイズが80nm未満の残渣については調べていないが、これは、欠陥測定装置で測定できる残渣のサイズが80nm以上であることに起因する。サイズが未満の残渣は、スクラッチ等の疑似欠陥との見分けがつかず、残渣の数を正確にカウント出来ないためである。図3を参照して説明した洗浄メカニズムからは、洗浄を2段階に分けて行うことによりサイズが80nm未満の残渣についても効果的に除去されることが容易に推察される。また、各圧力についても、2N(圧力:2.1kPa)、7N(圧力:7.35kPa)、12N(圧力:12.6kPa)に厳密に限定されるものではなく、各圧力を中心値として±2N(2.1kPa)の範囲内であれば従来に比べて洗浄後の残渣数を低減できる傾向に変わりはない。
【0063】
(その他の実施形態)
なお、上記実施形態は例示であり発明の範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。例えば、半導体デバイスが形成されている表面側だけを、7N(圧力:7.35kPa)以下の力でロールブラシをウェハの表面に押し当てて洗浄した後、7Nよりも大きな力でロールブラシをウェハの表面に押し当てて洗浄するようにし、半導体デバイスが形成されている裏面側については、7(圧力:7.35kPa)〜12N(圧力:12.6kPa)の間で一定とし、ロールブラシをウェハ裏面に押し付ける力を洗浄途中で変化させないようにしてもよい。
【0064】
さらに、ロールブラシによるウェハの洗浄後に、小型のブラシ(ペンブラシ)やメガソニック洗浄、2流体ジェット洗浄等によりウェハを洗浄するように構成してもよい。また、乾燥機構40に純水を供給するノズルを備えるようにし、該乾燥機構40において、ウェハWをリンスするように構成してもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…研磨装置、2…収容器、10…搬送機構、11…オープナー、12…搬送ロボット、20…研磨機構、21…受渡台、22…トップリング(ヘッド)、23…ターンテーブル(研磨テーブル)、23a…パッド、24…モータ、25…モータ、26…研磨剤供給ノズル、27…ドレス、30…洗浄機構、31a,31b…ロールブラシ、32a、32b…洗浄液供給ノズル、33a,33b…純水供給ノズル、34…把持手段、40…乾燥機構、41a,41b…噴出ノズル、42…把持手段、50…薬液供給機構、51…タンク、52…液送ポンプ、60…操作機構、70…制御機構、71…メモリ、72…CPU(central processing unit)、73…HDD(hard disk drive)、301a,301b…ブラシ体、302a,302b…芯体、303a,303b…支持部材、304a,304b…エアシリンダ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転するロールブラシにより半導体基板上の残渣を洗浄する洗浄方法であって、
前記ロールブラシを7.35kPa以下の第1の圧力で前記半導体基板に押し当てて、前記半導体基板上の残渣を洗浄する第1の洗浄工程と、
前記ロールブラシを7.35kPaよりも高い第2の圧力で前記半導体基板に押し当てて、前記半導体基板上の残渣を洗浄する第2の洗浄工程と、
を有することを特徴とする洗浄方法。
【請求項2】
前記ロールブラシは、第1,第2のロールブラシから構成され、
前記第1,第2の洗浄工程は、前記第1,第2のロールブラシを夫々前記半導体基板の表面及び裏面に押し当てて、前記半導体基板上の残渣を洗浄することを特徴とする請求項1記載の洗浄方法。
【請求項3】
前記ロールブラシの最外周面の前記半導体基板表面に対する相対速度が200mm/s以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の洗浄方法。
【請求項4】
前記第1の圧力及び前記第2の圧力は、夫々2.1kPa及び12.6kPaであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1記載の洗浄方法。
【請求項5】
前記ロールブラシを7.35kPa以下の第1の圧力で前記半導体基板に押し当てて、前記半導体基板を洗浄する第1の洗浄工程の前に、前記ロールブラシを12.6kPa以上の第3の圧力で前記半導体基板に押し当てて、前記半導体基板を洗浄する工程をさらに有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の洗浄方法。
【請求項6】
前記ロールブラシを前記半導体基板表面に対して垂直方向に駆動するシリンダを有し、該シリンダにより、前記ロールブラシの前記半導体基板に押し当てる圧力を制御することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−138498(P2012−138498A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290528(P2010−290528)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(000000239)株式会社荏原製作所 (1,477)
【Fターム(参考)】