説明

洗浄水タンクにおける手洗水用流路の接続構造

【課題】スペース上の制約がある場合でも適用可能なガイド手段を提供する。
【解決手段】洗浄水タンクTは、洗浄水を貯留するタンク本体10内に給水用流路20(他方の流路)を設け、タンク本体10の開口部11に取り付けられる蓋30に、蓋30の上面の手洗鉢31に臨む吐水用流路40(一方の流路)を設け、給水用流路20の接続端部24に、吐水用流路40の接続端部43を同軸状に雌雄嵌合して接続する。吐水用流路40に、接続端部24,43同士の接続過程において給水用流路20の外周面と対向する案内面56を有するガイド55を設けた。接続端部24,43同士が未接続の状態では、案内面56が、吐水側の接続端部43の軸線を延長した仮想延長軸線Lを挟んで反対側の空間に向かって露出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄水タンクにおける手洗水用流路の接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、洗浄水を貯留するタンク本体と、タンク本体内に設けられた給水用流路と、タンク本体の上面の開口部に取り付けられる蓋と、蓋の上面の手洗鉢に臨むように蓋に設けられた吐水用流路とを備える洗浄水タンクにおいて、給水用流路の上端部の接続端部に対し、吐水用流路の下端部の接続端部を雌雄嵌合により接続する技術が開示されている。
【0003】
この洗浄水タンクにおいては、タンク本体の開口部に蓋を取り付ける際に、タンク本体の開口部が覆われて吐水用流路側の接続端部と給水用流路側の接続端部を目視確認し難い、という事情がある。そのため、吐水用流路の接続端部と供給管の接続端部の接続作業を容易にするための手段として、吐水用流路の接続端部に、下方に向かって拡径するテーパ状のガイドが設けられている。双方の接続端部を接続する際には、このテーパ状のガイドにより、双方の接続端部が案内されて同心状に位置決めされるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−292458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
蓋の上面に手洗鉢を設けた洗浄水タンクにおいて、使用者の手洗い動作の利便性向上を図るためには、手洗鉢の奥行きを広く確保することが望ましく、これを実現するためには、手洗鉢の後方に配置されている吐水用流路を、できるだけ蓋の後端に近い位置に配置する必要がある。
【0006】
ところが、特許文献1の場合は、吐水用流路に設けたガイドが全周に亘って前後左右方向へテーパ状に拡がった形状をなしているので、吐水用流路を蓋の後端に近い位置に配置しようとすると、ガイドがタンク本体の後面壁と干渉してしまう虞がある。
【0007】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、スペース上の制約がある場合でも適用可能なガイド手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、洗浄水を貯留するタンク本体と、前記タンク本体内に設けられた給水用流路と、前記タンク本体の上面の開口部に取り付けられる蓋と、前記蓋の上面の手洗鉢に臨むように前記蓋に設けられた吐水用流路とを備える洗浄水タンクにおいて、前記給水用流路の接続端部に対し、前記吐水用流路の接続端部を同軸状に雌雄嵌合して構成される手洗水用流路の接続構造であって、前記吐水用流路と前記給水用流路のうちいずれか一方の流路側には、前記接続端部同士が接続された状態で他方の前記流路の外周面と対向する案内面を有するガイドが設けられ、前記接続端部同士が非接続の状態では、前記案内面が、前記一方の流路の前記接続端部の軸線を延長した仮想延長軸線を挟んで反対側の空間に向かって露出するようになっているところに特徴を有する。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記ガイドは、前記一方の流路側から前記仮想延長軸線に沿うように片持ち状に延出した形態であり、前記仮想延長軸線を挟んで前記ガイドと対向する位置には、前記一方の流路側から前記ガイドと概ね同じ方向へ片持ち状に延出した形態であって、前記一方の流路側からの延出寸法が前記ガイドよりも小さい規制部が設けられているところに特徴を有する。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のものにおいて、前記案内面は、前記仮想延長軸線と略平行をなしているところに特徴を有する。
【0011】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のものにおいて、前記一方の流路の前記接続端部の周面には、前記他方の流路の前記接続端部の周面との隙間を液密状にシールするパッキンが設けられており、前記他方の流路の前記接続端部の先端面は、その軸線に対し、前記案内面に背を向けるように傾斜しているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0012】
<請求項1の発明>
接続端部同士を接続する際には、まず、他方の流路の接続端部を案内面に対して径方向に当接させることにより、双方の接続端部を概ね同軸状に位置決めし、その後、他方の流路の接続端部を案内面に摺接させることによって、双方の接続端部を軸線方向に接近させればよい。本発明では、ガイドに対し、他方の流路の接続端部を径方向に接近させるようにしているので、ガイドをテーパ状に拡がった形状にする必要がない。したがって、本発明のガイドは、接続端部の軸線と交差する径方向においてスペース上の制約がある洗浄水タンクに対しても、適用することが可能である。
【0013】
<請求項2の発明>
案内面に摺接する他方の流路の接続端部は、一方の流路の接続端部に到達する前に、ガイドと規制部との間で径方向に挟まれた状態となるので、ガイド部に対して径方向に大きく離間することがない。これにより、接続端部同士は、接続を開始するまでのあいだ概ね同心状の位置関係に保たれるので、作業性がよい。
【0014】
<請求項3の発明>
案内面は、接続端部の仮想延長軸線と略平行をなしているので、テーパ状に拡がった形態のものに比べると、径方向においてガイドの配置に必要なスペースが小さくて済む。また、他方の流路の接続端部が案内面に引っ掛かる虞を軽減させることができる。
【0015】
<請求項4の発明>
接続端部同士が接続する際には、他方の流路の接続端部がパッキンに対して弾性変形させるように当接し、パッキンの弾性復元力に起因する接続抵抗が生じるため、この対策として、本発明では、他方の流路の接続端部の先端面を軸線に対して傾斜させた。この構成によれば、他方の流路の接続端部がパッキンに当接し始めたときには、接続端部の先端縁のうち周方向における一部のみがパッキンに当接することになり、パッキンにおいては、弾性変形させられるのが周方向における一部のみとなるので、パッキンの弾性変形に起因する接続抵抗が低減され、接続端部とパッキンとの嵌合が円滑に進む。
【0016】
また、他方の流路の接続端部の先端面は、その軸線に対し、案内面に背を向けるように傾斜している。この構成によれば、双方の接続端部を軸線方向に接近させる接続過程において、他方の流路の接続端部と案内面との対向開始のタイミングは、接続端部の先端面を案内面と対向する向きに傾斜させた場合に比べて早くなるので、ガイド機能に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態1において、吐水用流路の接続端部を給水用流路の接続端部に接続した状態をあらわす断面図
【図2】吐水用流路の接続端部と給水用流路の接続端部をガイドによって位置決めしている状態をあらわす断面図
【図3】吐水用流路の接続端部と給水用流路の接続端部をガイドによって位置決めしている状態をあらわす側面図
【図4】図1の部分拡大図
【図5】図2の部分拡大図
【図6】図4のX−X線断面図
【図7】図5のY−Y線断面図
【図8】案内部材の正面図
【図9】案内部材の断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1乃至図9を参照して説明する。本実施形態の洗浄水タンクTは、水洗タイプの便器に設けられたものであって、図1,2に示すように、洗浄水を貯留する貯留槽(図示省略)をカバーで覆って構成されるタンク本体10と、タンク本体10の内部に設けた給水用流路20(本発明の構成要件である他方の流路)と、タンク本体10のカバー上面の開口部11に取り付けられる蓋30と、蓋30に設けた吐水用流路40(本発明の構成要件である一方の流路)とを備えている。そして、給水用流路20の上端部(下流端)と吐水用流路40の下端部(上流端部)とを液密状に雌雄嵌合して接続することにより、後述する手洗鉢31に手洗水を供給するための手洗水用流路15が構成されている。この雌雄嵌合部分においては、給水用流路20が雄側の流路となり、吐水用流路40が雌側の流路となる。
【0019】
図1,2に示すように、給水用流路20は、タンク本体10のカバーの後壁部12に沿って配され、ポールタップ(図示省略)から延びて延出端部を上向きにした合成樹脂製の蛇腹管21と、蛇腹管21とは別体をなす合成樹脂製の給水管22とを液密状に接続して構成されている。給水管22には、軸線を上下両端部で屈曲させた形態の屈曲部23が形成されている。屈曲部23の上下両端では、軸線が上下方向(鉛直方向)を向いているが、屈曲部23のうち上下両端部の間の領域では、軸線が下端から上端に向かって後方へ傾いた斜め方向を向いている。給水管22のうち屈曲部23よりも上方の部分(屈曲部23の上端に同軸状に連なる部分)は、軸線をほぼ鉛直方向に向けた円筒形の給水側接続端部24(本発明の構成要件である給水用流路の接続端部)となっている。給水側接続端部24の先端面24S(上端面)は、その軸線方向(上下方向)及び水平方向の両方向に対して傾いた楕円状の平面からなる。この傾斜した先端面24Sは、前後方向においては、前方(後壁部12とは反対の方向であって、図1〜5における左方)に面している。
【0020】
図1,2,4に示すように、給水管22のうち屈曲部23の下端に同軸状に連なって給水側接続端部24よりも前方に位置する下端部25は、蛇腹管21の上端部に接続されている。この給水管22の下端部25は、タンク本体10の後壁部12から突出したブラケット13に嵌合されることで、タンク本体10に対して移動規制された状態で保持されている。図3に示すように、タンク本体10に取り付けられた給水側接続端部24の上端部は、タンク本体10の上面よりも上方へ突出しており、側方や前方から給水側接続端部24の位置を目視確認することが可能となっている。
【0021】
図1,2に示すように、蓋30は、その上面を広い範囲に亘って凹ませた形態の手洗鉢31を有している。手洗鉢31の外周縁は、前縁部と、前縁部よりも高い後縁部と、前端から後端に向かって高くなるように傾斜した左右両側縁部とによって構成されている。手洗鉢31の底部には、蓋30の下面に開口する排水孔32が形成されている。蓋30の内部には、手洗鉢31を構成する後壁部の内部を切欠した形態の収容空間33が形成されている。収容空間33は、蓋30の底面に開放されているとともに、手洗鉢31の後縁部の上面に接続用連通口34として開口されている。
【0022】
図1,2に示すように、吐水用流路40は、吐水管41と、吐水管41とは別体の部品である中空のヘッドキャップ44とを液密状に接続して構成されている。吐水管41は、軸線を鉛直方向(上下方向)に向けた状態で収容空間33内に収容され、係止具35により蓋30に対して上下方向、左右方向及び前後方向への移動を規制された状態に固定されている。吐水管41の上端の接続用筒部42は、手洗鉢31の後縁部上面の接続用連通口34に対し、斜め上前方へ突出した状態で嵌合されている。この接続用筒部42には、ヘッドキャップ44の下端の接続口45が外嵌されて液密状に固着されている。ヘッドキャップ44は、その下端部から上端部に向かって斜め上前方に延出した形態であり、ヘッドキャップ44の上端部には、その下面に開口して手洗鉢31に臨む吐水口46が形成されている。
【0023】
図1,2,4〜7に示すように、吐水管41のうち、下端側の部分は、給水側接続端部24との接続を行うための円筒形をなす吐水側接続端部43(本発明の構成要件である吐水管の接続端部)となっている。吐水側接続端部43(吐水管41)の下端は、収容空間33の下端縁よりも上方に位置しているので、前後方向及び左右方向(側方)から蓋30を見たときに、吐水管41のうち吐水側接続端部43は、その全体が蓋30の内部に隠れて目視確認できない状態となっている。また、図4,6に示すように、吐水側接続端部43の内径は、給水側接続端部24の外径よりも大きい寸法とされている。図4〜7に示すように、吐水側接続端部43の下端部には、リング状をなすパッキン47が装着されている。パッキン47の最小内径は、給水側接続端部24の外径よりも小さい寸法とされている。図6,7に示すように、吐水側接続端部43には、その下端部の外周を左右に張り出した形態の一対の張出部48が形成されている。張出部48には、その下面に開口する雌ネジ孔49が形成されている。
【0024】
蓋30をタンク本体10の開口部11に取り付ける際には、タンク本体10から上方へ突出している給水側接続端部24の位置を目視確認しながら、蓋30を下降させることにより、吐水側接続端部43を給水側接続端部24に接続する。このとき、吐水側接続端部43の位置は目視確認できないため、双方の接続端部24,43の接続作業を円滑にするための手段として、ガイド55を備えた案内部材50が設けられている。
【0025】
案内部材50は、合成樹脂製の単一部品であり、図4〜9に示すように、基部51と、ガイド55と、規制部57とを有している。基部51の左右両端部には、上下方向に貫通するビス孔53を有する一対の取付部52が形成されている。また、基部51のうち左右両取付部52の間の位置には、上下方向に貫通する円形の挿通孔54が形成されている。挿通孔54の内径は、給水側接続端部24の外径よりも大きく、吐水側接続端部43の内径とほぼ同じ寸法とされている。かかる案内部材50は、図6,7に示すように、基部51をパッキンの下面及び外周面に当接させ、挿通孔54を吐水側接続端部43と同心状に位置決めした状態で、ビス孔53に下から差し込んだビス60を吐水側接続端部43の雌ネジ孔49にねじ込むことにより、吐水側接続端部43に固定されている。つまり、案内部材50は、パッキン47を介して吐水用流路40に組み付けられ(支持され)、パッキン47は、案内部材50と吐水側接続端部43との間で上下に挟まれた状態で固定されている。
【0026】
図4〜9に示すように、ガイド55は、基部51の下面から下方へ片持ち状に延出(突出)した形態であり、このガイド55の突出方向は、吐水側接続端部43の軸線を下方へ延長させた仮想延長軸線L(図5を参照)と平行な方向であり、給水側接続端部24に対する吐水側接続端部43の接続方向と平行な方向である。ガイド55は、仮想延長軸線Lと直角(つまり、水平)な投影面上において、吐水側接続端部43と同心の連続した1つの円弧からなり、挿通孔54の孔縁よりも少し外側の位置において挿通孔54と同心状に配されている。また、周方向におけるガイド55の形成領域は、180°よりも少し狭い角度範囲とされている。
【0027】
ガイド55は、前後方向においては、挿通孔54(吐水側接続端部43)の軸線(仮想延長軸線L)よりも後側に配されている。したがって、ガイド55の内面(つまり、吐水側接続端部43と同心状に凹んでいる面)は、前方に面する案内面56となっている。案内面56は、曲面(円弧面)であるが、仮想延長軸線Lに対しては平行をなしている。案内面56の曲率半径は、挿通孔54の内径の曲率半径及び給水側接続端部24の外周面の曲率半径よりも大きい寸法とされている。ガイド55の下端面(延出端面)は、吐水側接続端部43の軸線と直角な水平な平面である。そして、図3に示すように、ガイド55の下端部は、前後方向及び左右方向から見たときに、蓋30の下端よりも少し下方に突出して目視確認できるようになっている。
【0028】
規制部57は、ガイド55と同じく、基部51の下面から下方へ片持ち状に延出(突出)した形態であり、この規制部57の突出方向はガイド55の突出方向と平行である。規制部57は、仮想延長軸線Lと直角(つまり、水平)な投影面上において、吐水側接続端部43と同心の連続した1つの円弧からなり、挿通孔54の孔縁よりも少し外側の位置において挿通孔54及びガイド55と同心状に配されている。周方向における規制部57の形成領域は、180°よりも少し狭い角度範囲とされている。したがって、図5,9に示すように、上記ガイド55の周方向における両端縁と、規制部57の周方向における両端縁との間にはスリット59が存在している。また、規制部57の下端面(延出端面)は、吐水側接続端部43の軸線と直角な水平な平面である。
【0029】
また、規制部57の基部51からの突出寸法は、ガイド55の突出寸法よりも小さい。つまり、規制部57の下端はガイド55の下端よりも上方に位置する。したがって、前後方向及び左右方向から蓋30を見たときに、規制部57は、その全体が蓋30の内部に隠れて目視できない状態となっている。また、図5に示すように、上下方向(両接続端部24,43の接続方向と平行な方向)において、規制部57の下端と案内面56(ガイド55)の下端との高低差Ha(寸法差)は、給水側接続端部24の先端面24Sの高さ寸法Hb(即ち、先端面24Sの上端と下端との高低差)とほぼ同じとされている。このようにガイド55と規制部57は突出寸法が相違しているので、接続端部24,43同士が未接続の状態では、案内面56のうち規制部57よりも下方の下端側領域が、仮想延長軸線Lを挟んで反対側の前方空間に向かって露出した状態となる。
【0030】
規制部57は、前後方向においては、挿通孔54(吐水側接続端部43)の軸線(仮想延長軸線L)よりも前側に配されている。つまり、規制部57とガイド55は、吐水側接続端部43の軸線(仮想延長軸線L)を挟んで前後反対側に位置しており、換言すると仮想延長軸線Lを挟んで前後に対向する位置関係となっている。また、規制部57の内面(つまり、吐水側接続端部43と同心状に凹んでいる面)は、前方に面する規制面58となっている。規制面58は、曲面(円弧面)であるが、仮想延長軸線Lに対しては平行をなしている。規制面58の曲率半径は、案内面56と同じ寸法である。
【0031】
次に、本実施形態の作用を説明する。蓋30をタンク本体10に取り付ける際に、作業者は、水平方向から見てガイド55の下端部と給水側接続端部24の位置関係を目視確認し、図3,5,7に示すように、ガイド55の下端部と給水側接続端部24の上端部とがほぼ同じ高さになるまで蓋30を下降させ、ガイド55(案内面56)の下端部を、給水側接続端部24の上端部に対して後方から対向させながら接近させ、当接状態とする。この当接作用により、吐水側接続端部43が給水側接続端部24に対して概ね同軸状の位置関係となる。また、給水側接続端部24の傾斜した先端面24Sは、案内面56に背を向けるように前方に面している。
【0032】
この後、給水側接続端部24にガイド55の案内面56を摺接させながら蓋30を下降させる。すると、案内面56の案内作用により、吐水側接続端部43が給水側接続端部24に対して概ね同軸状に位置関係を保ちながら接近する。そして、給水側接続端部24の上端部が、ガイド55と規制部57とで囲まれた円形の保持空間内に入り込み、給水側接続端部24の上端が吐水側接続端部43の下端の開口に嵌入し始める。
【0033】
この状態では、給水側接続端部24が、ガイド55と規制部57とによりほぼ全周に亘って包囲されるので、作業者の手が水平方向にずれても、給水側接続端部24の上端部が案内面56や規制面58に対して水平方向(つまり、吐水側接続端部43が給水側接続端部24に対して軸線をずらす方向)へ大きく移動する虞がない。したがって、給水側接続端部24の上端部は、確実に吐水側接続端部43の内部に進入することになる。
【0034】
給水側接続端部24が吐水側接続端部43内に進入する際には、給水側接続端部24の外周がパッキン47に当接してパッキン47を拡径状に弾性変形させるため、パッキン47の弾性復元力に起因する接続抵抗が生じことになる。この接続抵抗は、給水側接続端部24に対して吐水側接続端部43の軸ずれを生じさせる原因となる。しかし、本実施形態では、給水側接続端部24の先端面24Sを軸線に対して傾斜させているので、給水側接続端部24がパッキン47に当接し始めたときには、給水側接続端部24の先端縁のうち周方向における一部のみがパッキン47に当接することになる。これにより、パッキン47においては、弾性変形させられるのが周方向における一部のみとなるので、パッキン47の弾性変形に起因する接続抵抗が低減され、給水側接続端部24とパッキン47との嵌合が円滑に進む。そして、図1,4,6に示すように、蓋30がタンク本体10に取り付けられると、給水側接続端部24と吐水側接続端部43との液密状の雌雄嵌合による接続が完了し、手洗水用流路15が構成される。
【0035】
上述のように本実施形態では、吐水用流路40側に、接続端部24,43同士の接続過程において給水側接続端部24の外周面と対向する案内面56が形成されたガイド55を設け、接続端部24,43同士が未接続の状態では、案内面56が、吐水側接続端部43の軸線を延長した仮想延長軸線Lを挟んで反対側の前方空間に向かって露出する構成となっている。
【0036】
この構成によれば、ガイド55に対し、給水側接続端部24を径方向に接近させることができるので、ガイド55をテーパ状に拡がった形状にする必要がない。したがって、本実施形態のガイド55は、給水側接続端部24及び吐水側接続端部43の軸線と交差する径方向(水平方向)においてスペース上の制約がある洗浄水タンクTに対しても、適用することが可能である。
【0037】
また、案内面56は、吐水側接続端部43の仮想延長軸線Lと略平行をなしているので、テーパ状に拡がった形態のものに比べると、径方向(水平方向)においてガイド55の配置に必要なスペースが小さくて済む。また、給水側接続端部24が案内面56に引っ掛かる虞を軽減させることもできる。
【0038】
また、給水側接続端部24の先端面24Sは、その軸線に対し、案内面56と同じく前方を向くように傾斜しているので、給水側接続端部24が案内面56によって案内されている状態では、案内面56に背を向けることになる。この構成によれば、双方の接続端部24,43を軸線方向に接近させる接続過程において、給水側接続端部24と案内面56との対向開始のタイミングは、給水側接続端部の先端面を案内面56と対向する向きに傾斜させた場合に比べて早くなるので、案内機能に優れている。
【0039】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では、吐水用流路が雌側の流路であり、給水用流路が雄側の流路である場合について説明したが、本発明は、吐水用流路側が雄側の流路であり、給水用流路が雌側の流路である場合にも適用できる。
(2)上記実施形態では、ガイドを吐水用流路側に設けたが、ガイドを給水用流路側に設けてもよい。この場合、吐水用流路は、雌側の流路に限らず、雄側の流路であってもよい。つまり、ガイドは、雌側の流路と雄側の流路のいずれの流路にも設けることが可能である。
(3)上記実施形態では、ガイドを他方の流路(給水用流路)に対して後方から対向するように配置したが、ガイドは、他方の流路に対し側方かから対向するように配置してもよい。この場合、ガイドは、左右いずれか一方のみに配置してもよく、左右両方に配置してもよい。
(4)上記実施形態では、ガイドを、パッキンを介して吐水用流路に組み付けた(支持した)が、ガイドは、吐水用流路にではなく、蓋に組み付けられ(支持され)ていてもよい。また、ガイドを給水用流路側に設ける場合、ガイドは、給水用流路とタンク本体のいずれに組み付けられ(支持され)ていてもよい。
(5)上記実施形態では、ガイドを、一方の流路(吐水用流路)の接続端部の先端(下端)から更に先端側(下方)へ片持ち状に延出する形態としたが、ガイドを、接続端部の先端に対し先端側に離間した位置に配置し、接続端部の軸線方向において接続端部の先端とガイドとの間にスペースが介在するようにしてもよい。この場合、ガイドは、ブラケット等を介して蓋に支持すればよい。
(6)上記実施形態では、接続端部の周方向において連続する単一のガイドを設けたが、これに替えて、複数のガイドを周方向に間隔を空けて並ぶように配置してもよい。
(7)上記実施形態では、ガイドの下端面(延出端面)を、接続端部の軸線と直角な水平な面としたが、ガイドの下端面は、接続端部の軸線に対して斜め方向の面としてもよい。
(8)上記実施形態では、案内面の曲率半径を、給水用流路の接続端部の外周面の曲率半径よりも大きい寸法としたが、案内面の曲率半径は、給水用流路の接続端部の外周面の曲率半径とほぼ同じ寸法であってもよい。
(9)上記実施形態では、接続端部の周方向における案内面の形成領域を、180°よりも少し狭い範囲としたが、周方向における案内面の形成領域は、実施形態より狭い範囲(概ね180°〜120°)であってもよく、実施形態より広い角度範囲(概ね、180°〜約200°)であってもよい。この案内面の形成領域は、接続端部の外周の曲率半径と案内面の曲率半径とに基づいて、適宜に設定することが好ましい。
(10)上記実施形態では、ガイドを接続端部の軸線と直角に切断したときの案内面の断面形状を、接続端部と同心の円弧形としたが、案内面の断面形状は、楕円形の一部、長円形の一部、台形等、円弧形以外の形状であってもよい。
(11)上記実施形態では、案内面を接続端部の仮想延長軸線と略平行な曲面としたが、案内面は、接続端部の仮想延長軸線に対して斜めをなしていてもよい。この場合、仮想延長軸線に対する案内面の傾斜角度は、省スペース化、及び他方の流路の接続端部の案内面との引っ掛かりを回避するという観点から、できるだけ小さい角度であることが好ましい。
(12)上記実施形態では、規制部の下端面(延出端面)を、接続端部の軸線と直角な水平な面としたが、規制部の下端面は、接続端部の軸線に対して斜め方向の面としてもよい。この場合、規制部の下端面とガイドの下端面は、共通の1つの傾斜した平面の一部を構成するような位置関係であってもよく、互いに平行な2つの平面の一部を構成するような位置関係であってもよく、互いに傾斜角度の異なる2つの平面の一部を構成するような位置関係であってもよい。
(13)上記実施形態では、ガイドの周方向における両端縁と、規制部の周方向における両端縁との間にスリットを設けたが、ガイドと規制部とが周方向において連なった形態であってもよい。
(14)上記実施形態では、接続端部の仮想延長軸線を挟んでガイドと対向する規制部を設け、接続端部同士が非接続の状態では、案内面のうち延出端部側の領域のみが仮想延長軸線を挟んで反対側の空間に向かって露出するようにしたが、このような規制部を設けず、案内面の全領域が、接続端部の仮想延長軸線を挟んで反対側の空間に向かって露出するようにしてもよい。
(15)上記実施形態では、上下方向において、規制部の下端と案内面の下端との高低差(寸法差)を、給水側接続端部の先端面の高さ寸法(先端面の上端と下端との高低差)とほぼ同じとしたが、規制部と案内面の高低差は、給水側接続端部の先端面の高さ寸法より大きくてもよく、小さくてもよい。
(16)上記実施形態では、パッキンを吐水用流路側に設けたが、パッキンは、給水用流路側に設けてもよい。
(17)上記実施形態では、パッキンを雌側の流路(吐水用流路)の内周に設けたが、パッキンは雄側の流路の外周に設けてもよい。この場合、ガイドや規制部を雄側の流路に設ける構成とすれば、パッキンの一部だけでもガイドで保護することが可能となる。
(18)上記実施形態では、他方の(つまり、ガイドが設けられていない)流路(給水用流路)の接続端部の先端面を、その軸線に対し、案内面によって案内されるときに仮想延長軸線を挟んで案内面とは反対の方向に面するように傾斜させたが、他方の流路の接続端部の先端面は、案内面側に面するように傾斜した形態としてもよく、軸線と直角な面としてもよい。
【符号の説明】
【0040】
L…仮想延長軸線
T…洗浄水タンク
10…タンク本体
11…タンク本体の開口部
15…手洗水用流路
20…給水用流路(他方の流路)
24…給水側接続端部(給水用流路の接続端部)
24S…給水側接続端部の先端面(他方の流路の接続端部の先端面)
30…蓋
31…手洗鉢
40…吐水用流路(一方の流路)
43…吐水側接続端部(吐水用流路の接続端部)
47…パッキン
55…ガイド
56…案内面
57…規制部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄水を貯留するタンク本体と、
前記タンク本体内に設けられた給水用流路と、
前記タンク本体の上面の開口部に取り付けられる蓋と、
前記蓋の上面の手洗鉢に臨むように前記蓋に設けられた吐水用流路とを備える洗浄水タンクにおいて、
前記給水用流路の接続端部に対し、前記吐水用流路の接続端部を同軸状に雌雄嵌合して構成される手洗水用流路の接続構造であって、
前記吐水用流路と前記給水用流路のうちいずれか一方の流路側には、前記接続端部同士の接続過程において他方の前記流路の前記接続端部の外周面と対向する案内面を有するガイドが設けられ、
前記接続端部同士が未接続の状態では、前記案内面が、前記一方の流路の前記接続端部の軸線を延長した仮想延長軸線を挟んで反対側の空間に向かって露出するようになっていることを特徴とする洗浄水タンクにおける手洗水用流路の接続構造。
【請求項2】
前記ガイドは、前記一方の流路側から前記仮想延長軸線に沿うように片持ち状に延出した形態であり、
前記仮想延長軸線を挟んで前記ガイドと対向する位置には、前記一方の流路側から前記ガイドと概ね同じ方向へ片持ち状に延出した形態であって、前記一方の流路側からの延出寸法が前記ガイドよりも小さい規制部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の洗浄水タンクにおける手洗水用流路の接続構造。
【請求項3】
前記案内面は、前記仮想延長軸線と略平行をなしていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の洗浄水タンクにおける手洗水用流路の接続構造。
【請求項4】
前記一方の流路の前記接続端部の周面には、前記他方の流路の前記接続端部の周面との隙間を液密状にシールするパッキンが設けられており、
前記他方の流路の前記接続端部の先端面は、その軸線に対し、前記案内面に背を向けるように傾斜していることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の洗浄水タンクにおける手洗水用流路の接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−87469(P2012−87469A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232572(P2010−232572)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】