説明

洗浄水タンク装置、及び、それを備えた水洗大便器

【課題】便器の洗浄を開始する際に、洗浄水タンクの洗浄水の漏水が発生していたとしても、便器の洗浄に要する洗浄水量を最低限確保することができ、洗浄水を無制限に漏水させてしまうことを防ぐことができる洗浄水タンク装置を提供する。
【解決手段】本発明の洗浄水タンク装置18は、洗浄水タンク20と、給水装置24と、排水弁38と、この排水弁を上昇させる駆動装置40と、洗浄水タンク内の洗浄水の止水水位WL1を検出する水位センサ28と、コントローラ21と、を有し、洗浄開始信号の受信後に水位センサが洗浄水タンク内の洗浄水の止水水位を検出している場合には、排水口を開放し、便器の洗浄を実行する通常洗浄モードと、洗浄開始信号の受信後に水位センサが止水水位を検出していない場合には、駆動装置を作動させることなく洗浄水タンクに洗浄水を給水するように給水装置を制御した後、便器の洗浄を実行する異常洗浄モードと、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄水タンク装置、及び、それを備えた水洗大便器に係り、特に、便器本体を洗浄する洗浄水を貯水する洗浄水タンク装置、及び、それを備えた水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、便器を洗浄する洗浄水が貯水する洗浄水タンク装置において、洗浄水タンクの満水水位等の所定水位をフロートスイッチの電気信号で検出するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このようなフロートスイッチは、例えば、洗浄水タンク内の洗浄水の止水水位(満水水位)を検出するとON状態となり、洗浄水の給水が停止され、水位が止水水位よりも低下するとOFF状態となり、洗浄水タンク内へ洗浄水が給水されようになっている。
また、上述した従来の洗浄水タンク装置においては、使用されていない状態においても、排水弁の止水不良等による漏水対策としてフロートスイッチを常時作動させ、漏水により水位が低下した状態ではフロートスイッチがOFF状態となり、洗浄水タンク内へ洗浄水を給水し、その後水位が満水水位となると、フロートスイッチがON状態となり、洗浄水の給水を停止する操作が繰り返えされることにより、このような現象を見た使用者にも異常が知らされるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−2075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の洗浄水タンク装置においては、例えば、排水弁の止水不良等による漏水対策を行った結果、使用者が漏水の異常に気付くまで、漏水により水位が低下した状態ではフロートスイッチがOFF状態となる。そして、洗浄水タンク内へ洗浄水が給水され、再び満水水位となると、フロートスイッチがON状態となり、洗浄水の給水が停止されるという給水又は停止操作が自動的に繰り返えされる。この結果、洗浄水タンクから無制限に洗浄水が漏水することになり、使用者が異常に気付くまでに時間がかかると、洗浄水を多量に漏水させてしまうという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、便器の洗浄を開始する際に、洗浄水タンクの洗浄水の漏水が発生していたとしても、便器の洗浄に要する洗浄水タンク内の洗浄水量を最低限確保することができると共に、異常状態であることを使用者に容易に認知させることができ、洗浄水タンクの洗浄水を無制限に漏水させてしまうことを防ぐことができる洗浄水タンク装置、及び、それを備えた水洗大便器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、便器を洗浄する洗浄水を貯水する洗浄水タンク装置であって、底面に排水口が形成された洗浄水タンクと、この洗浄水タンクに洗浄水を給水する給水手段と、上記洗浄水タンクの排水口を開閉する排水弁と、この排水弁を上昇させて排水口から洗浄水を便器に供給する排水弁駆動手段と、上記洗浄水タンク内の上方に設けられ上記洗浄水タンク内の洗浄水の止水水位を検出する水位検出手段と、洗浄開始信号に基づいて上記排水口から便器へ供給するように上記排水弁駆動手段の作動を制御する制御手段と、を有し、上記制御手段は、上記洗浄開始信号の受信後に上記水位検出手段が上記洗浄水タンク内の洗浄水の止水水位を検出している場合には、上記排水弁駆動手段を駆動することにより上記排水弁を上昇させて上記排水口を開放し、上記便器へ洗浄水を供給して便器の洗浄を実行する通常洗浄モードと、上記洗浄開始信号の受信後に上記水位検出手段が上記洗浄水タンク内の洗浄水の止水水位を検出していない場合には、上記排水弁駆動手段を作動させることなく上記洗浄水タンクに洗浄水を給水するように上記給水手段を制御した後、上記便器の洗浄を実行する異常洗浄モードと、を備えていることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、制御手段が洗浄開始信号の受信する前の便器の洗浄が行われていない状態においては、例えば、排水弁による排水口の止水不良等によって洗浄水タンクから便器への洗浄水の漏水による異常が発生していたとしても、水位検出手段、排水弁駆動手段及び給水手段が作動することなく、洗浄水タンク内に予め貯水されている有限の洗浄水量のみが漏水されることになる。したがって、洗浄水タンクの洗浄水の漏水について、洗浄水タンク内に予め貯水されている有限の洗浄水量に止めることができ、漏水を最小限に抑えることができる。また、このような漏水による異常が発生し、便器洗浄前の洗浄水タンク内の水位が止水水位よりも低下している状態で制御手段が洗浄開始信号を受信したとしても、水位検出手段が洗浄水タンク内の洗浄水の止水水位を検出しないため、通常洗浄モードとは異なる異常洗浄モードを実行し、排水弁駆動手段を作動させることなく洗浄水タンクに洗浄水を給水するように給水手段を制御する。この結果、便器の洗浄に要する洗浄水タンク内の洗浄水量を最低限確保した上で、その後の便器の洗浄を確実に行うことができる。また、制御手段が洗浄開始信号を受信後、水位検出手段が洗浄水タンク内の洗浄水の止水水位を検出しない場合には、一般的な便器の洗浄では、排水弁駆動手段が作動して排水口が開放されて便器の洗浄が行われてしまう代わりに、異常洗浄モードを実行することにより、排水弁駆動手段が作動せずに給水手段による給水が行われる異常状態であることを使用者に容易に認知させることができる。したがって、洗浄水タンクの洗浄水を無制限に漏水させてしまうことを防ぐことができる。
【0007】
本発明において、好ましくは、上記制御手段の異常洗浄モードは、上記洗浄開始信号の受信後に上記水位検出手段が上記洗浄水タンク内の洗浄水の止水水位を検出していない場合には、上記排水弁駆動手段を作動させることなく上記給水手段を作動して所定時間給水を行った後、上記給水手段を停止して上記便器の洗浄を実行する。
このように構成された本発明においては、制御手段が洗浄開始信号を受信したとしても、水位検出手段が洗浄水タンク内の洗浄水の止水水位を検出していない場合には、異常洗浄モードを実行することにより、排水弁駆動手段を作動させることなく給水手段を作動して所定時間給水を行った後、給水手段を停止するため、便器の洗浄を開始する際に、洗浄水タンクの洗浄水の漏水が発生していたとしても、便器の洗浄に要する洗浄水タンク内の洗浄水量を最低限確保することができ、また、異常洗浄モードによって給水が所定時間で行われた後に停止することにより、洗浄水タンクの洗浄水を無制限に漏水させてしまうことを防ぐことができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、上記水位検出手段はフロートスイッチである。
このように構成された本発明においては、水位検出手段がフロートスイッチであるため、低コストで洗浄水タンク内の止水水位を検出することができると共に、洗浄水タンクの洗浄水が漏水している場合でも、無制限に漏水させてしまうことを防ぐことができる。
【0009】
また、本発明は、洗浄水タンク装置を備えた水洗大便器である。
このように構成された本発明においては、便器の洗浄を開始する際に、洗浄水タンクの洗浄水の漏水が発生していたとしても、便器の洗浄に要する洗浄水タンク内の洗浄水量を最低限確保することができ、洗浄水タンクの洗浄水を無制限に漏水させてしまうことを防ぐことができる水洗大便器を提供することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の、洗浄水タンク装置、及び、それを備えた水洗大便器によれば、便器の洗浄を開始する際に、洗浄水タンクの洗浄水の漏水が発生していたとしても、便器の洗浄に要する洗浄水タンク内の洗浄水量を最低限確保することができると共に、異常状態であることを使用者に容易に認知させることができ、洗浄水タンクの洗浄水を無制限に漏水させてしまうことを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置が適用された水洗大便器を示す側面断面図である。
【図2】図1に示す水洗大便器から洗浄水タンク装置を取り外した状態の便器本体を示す平面図である。
【図3】図1に示す水洗大便器の便器本体及び洗浄水タンク装置を示す部分正面図である。
【図4】本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の内部を示す平面図である。
【図5】図4のV−V線に沿って見た断面図である。
【図6】図4のVI−VI線に沿って見た断面図である。
【図7】本発明の一実施形態による一連の洗浄動作の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面により、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置を説明する。
まず、図1〜図3により、本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置が適用された水洗便器を説明する。
図1は本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置が適用された水洗大便器を示す側面断面図であり、図2は図1に示す水洗大便器から洗浄水タンク装置を取り外した状態の便器本体を示す平面図であり、図3は図1に示す水洗大便器の便器本体及び洗浄水タンク装置を示す部分正面図である。
【0013】
図1〜図3に示すように、符号1は洗い落し式の水洗大便器を示し、この洗い落し式の水洗大便器1は、便器本体2を備え、この便器本体2の上部の前方側には、ボウル部4が形成され、後方側の上部には導水路6が、導水路6の下方にはボウル部4と連通する排水トラップ管路8が、それぞれ形成されている。
【0014】
便器本体2のボウル部4の上縁部内側にはオーバーハング形状のリム10が形成され、さらに、このリム10の一部には、導水路6から供給される洗浄水を吐水する第1吐水口12が形成され、第1吐水口12から吐水された洗浄水は、旋回しながら下降してボウル部4を洗浄するようになっている。
【0015】
排水トラップ管路8の近傍で且つボウル部4の下方には、一点鎖線で溜水面W0が示された溜水部14が形成されている。この溜水部14の下方には、上述した排水トラップ管路8の入口8aが開口し、この入口8aから上昇路8bが後方に延びている。この上昇路8bには下降路8cが連続し、下降路8cの下端は排水ソケット(図示せず)を介して床下の排出管(図示せず)に接続されている。
【0016】
また、ボウル部4の中心下部の溜水面W0の上方位置には、導水路6から供給される洗浄水を吐水する第2吐水口16が形成され、この第2吐水口16から吐水される洗浄水が溜水部14の溜水を上下方向に旋回させる旋回流を生じさせるようになっている。
【0017】
さらに、便器本体2の導水路6の上方には、便器本体2に供給する洗浄水を貯水する洗浄水タンク装置18が設けられている。この洗浄水タンク装置18は、洗浄水タンク20を備え、この洗浄水タンク20の底部には、上下方向に延びる排水口22が形成され、この排水口22の下端は便器本体2の導水路6と連通し、洗浄水タンク20内の洗浄水が排水口22から便器本体2の導水路6に排水されるようになっている。
【0018】
つぎに、図4〜図6により、洗浄水タンク装置18について説明する。図4は本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置の内部を示す平面図であり、図5は図4のV−V線に沿って見た断面図であり、図6は図4の洗浄水タンク装置の内部を便器正面から見た部分断面図である。なお、図5及び図6において、洗浄水タンク20内の満水時の水位(止水水位)をWL1で示している。
【0019】
図4〜図6に示すように、洗浄水タンク20内には、洗浄水タンク20内に洗浄水を供給する給水装置24、便器本体2へ洗浄水を供給する排水装置26、洗浄水タンク20内の洗浄水の水位Wが止水水位WL1となった状態を検知するフロートスイッチである水位センサ28(水位検出手段)が設けられ、また、洗浄水タンク20外には、種々の装置を制御する制御手段であるコントローラ21及び、使用者が操作する洗浄開始信号又は使用者が自動洗浄開始を選択していた場合の洗浄開始信号を発信する操作ボタン23が設けられている。この操作ボタン23は、例えば、3種類の洗浄水量による洗浄モード(大洗浄モード、小洗浄モード、エコ小洗浄モード)の操作ボタンを備え、洗浄水量は、例えば、大洗浄モードで4.8リットル、小洗浄モードで4.0リットル、エコ洗浄モードで3.8リットルとなっている。
なお、水位センサ28は、フロートスイッチに限定されず、光学式水位検出装置又は超音波式水位検出装置であってもよい。
【0020】
コントローラ21は、操作ボタン23、水位センサ28、給水バルブ32、及び駆動装置40(排水弁駆動手段)と連結する。コントローラ21は、操作ボタン23からの洗浄開始信号を受信して、水位センサ28を作動又は停止するよう制御する。さらに、コントローラ21は、給水バルブ32及び駆動装置40を駆動させ又は停止させるように制御できる。
【0021】
給水装置24は、水道等の給水源(図示せず)に接続された定流量弁30、給水バルブ32、及び、給水口34を備えている。
給水バルブ32は、水位センサ28の水位検知情報に基づいてコントローラ21からの指令により給水バルブ32の開閉動作が制御され、給水装置24の給水口34から洗浄水タンク20内への洗浄水の給水又は止水が切り替えられるようになっている。吐水口34は、洗浄水タンク20の内側の水位センサ28と逆側の壁を指向して吐水を行うようになっている。
【0022】
排水装置26は、オーバーフロー管36と、オーバーフロー管36の下端部に固着された排水弁38と、オーバーフロー管36を電気的駆動力により上下動させることにより排水弁38を開閉操作する駆動装置40を備えている。
また、洗浄水タンク20の排水口22の周辺部には、排水弁38の上下動をガイドし且つ高さ位置を規制するガイド部材42が取り付けられている。
【0023】
オーバーフロー管36は、洗浄水タンク20の排水口22と対向する下端開口部36aから上端開口部36bまで延びる円筒状の管部材である。そして、洗浄水タンク20内の洗浄水の水位Wが、満水時の止水水位WL1を超えてさらに水位WOFまで上昇し、オーバーフロー管36の上端開口部36bの高さ位置を上回ったときには、洗浄水がオーバーフローし、オーバーフロー管36の上端開口部36bから下端開口部36aを経て洗浄水タンク20の排水口22から便器本体2側に排水(供給)されるようになっている。
【0024】
さらに、駆動装置40は、DCモータであり、この駆動装置40から延びる回転軸44の先端には、玉鎖46が取り付けられている。この玉鎖46の下方部分は、オーバーフロー管36の下端開口部36aから下方に突出する玉鎖取付部36cに取り付けられている。駆動装置40が玉鎖46を上方に引き上げるように回転軸44を回転させると、オーバーフロー管36が玉鎖46と共に上昇し、駆動装置40が玉鎖46を引き下げるように回転軸44を回転させると、オーバーフロー管36が玉鎖46と共に下降するようになっている。
【0025】
次に、図7により、上述した本発明の一実施形態による動作(作用)を説明する。
図7は、本発明の一実施形態による一連の洗浄動作の流れを示すフローチャートである。ここで、図7において、Sは各ステップを示している。
まず、S1において、洗浄水タンク装置18の洗浄水タンク20内には、満水時の水位である止水水位WL1まで洗浄水が満たされている。この状態で使用者が、便器使用後に、例えば、大洗浄用の操作ボタン23を押すと、この操作ボタン23からの洗浄開始信号がコントローラ21に送信された後、水位センサ28の作動が開始され、S2に進み、水位センサ28が止水水位WL1を検出したか否かを判定する。
なお、コントローラ21が洗浄開始信号を受信する前については、水位センサ28は作動していないので、給水バルブ32が洗浄水タンク20へ洗浄水を給水することがない。
【0026】
つぎに、S2において、水位センサ28が止水水位WL1を検出したと判定した場合には、S3及びS4の動作に関する「通常洗浄モード」を実行する。
すなわち、通常洗浄モードでは、S3において、S2で水位センサ28が止水水位WL1を検出した信号をコントローラ21が受信し、この信号に基づいて、排水弁駆動手段である駆動装置40を駆動させ、排水装置26の排水弁38を上昇させて排水口22を開放し、洗浄水タンク20から便器本体2の導水路6へ洗浄水を供給し、S4において、便器の洗浄が行われる。
【0027】
一方、S2において、水位センサ28が止水水位WL1を検出していないと判定した場合には、洗浄水タンク20の排水口22における排水弁38による止水不良等の異常と判定し、S5及びS6の動作に関する「異常洗浄モード」を実行する。
すなわち、異常洗浄モードでは、S5において、駆動装置40を作動させることなく排水装置26の排水弁38が排水口22を閉鎖した状態で、給水装置24が作動し、給水バルブ32が開いて給水口34から洗浄水タンク20内に洗浄水が給水される。
【0028】
また、S5における異常洗浄モードでは、駆動装置40を作動させることなく排水装置26の排水弁38が排水口22を閉鎖した状態で、給水装置24がタイマー(図示せず)等により所定時間作動し、給水バルブ32が開いて給水口34から洗浄水タンク20内に洗浄水が所定時間(例えば60秒間)給水され、S6に進み、給水が停止された後、S3に進む。すなわち、S5からS6を経てS3を実行する異常洗浄モードが実行される。
ちなみに、通常の便器の洗浄においては、コントローラ21が洗浄開始信号を受信してから給水装置24による洗浄水の給水を開始するまでは6秒程度であるが、洗浄開始信号を受信した直後に異常洗浄モードによる給水を開始し、使用者に異常をさらに知らせやすくするようにしてもよい。
【0029】
なお、上述した本実施形態では、S5で給水装置24を作動させ所定時間(例えば60秒間)経過するとS6で給水を停止するようにタイマーで制御するパターン(パターン1)を採用しているが、このようなパターン1を採用する代わりに、S5で給水装置24を作動させ、水位センサ28が洗浄水タンク20の貯水水位が止水水位WL1に達したことを検知すると、S6で給水を停止するようなパターン(パターン2)を採用してもよく、上述した2つのパターン1及び2を組み合わせて採用してもよい。
また、洗浄タンク20からの漏水が微量である場合には、S5からS6への移行を水位センサ28による検知で行うパターン2を採用した方が素早く貯水タンク20を止水水位WL1まで貯水できるために効果的である。
一方、洗浄タンク20からの漏水が比較的大量である場合には、S5からS6への移行をタイマーで制御するパターン1を採用した方が、S5で無制限に洗浄水が漏水し、洗浄水を多量に漏水させてしまうことを防止できるために効果的である。
【0030】
さらに、S5における異常洗浄モードでは、万一、洗浄水タンク20の水位が止水水位WL1を超えた場合でも、水位がオーバーフロー管36の上端開口部36bの高さ位置に相当する水位WOFを上回ったときには、洗浄水がオーバーフローし、オーバーフロー管36の上端開口部36bから下端開口部36aを経て洗浄水タンク20の排水口22から便器本体2側に排水(供給)される。
【0031】
また、S6において、給水装置24による給水が停止した直後の状態では、洗浄水タンク20の排水口22の止水不良等による漏水が生じていたとしても、便器本体2の洗浄に要する最低限度の洗浄水量が洗浄水タンク内に確保されている状態となっている。
【0032】
上述した本発明の一実施形態による洗浄水タンク装置18によれば、コントローラ21が操作ボタン23から洗浄開始信号の受信する前の便器本体2の洗浄が行われていない状態において、例えば、排水弁38による排水口22の止水不良等によって洗浄水タンク20から便器本体2への洗浄水の漏水異常が発生していたとしても、水位センサ28、駆動装置40及び給水装置24が作動することなく、洗浄水タンク20内に予め貯水されている有限の洗浄水量のみが漏水されることになる。したがって、洗浄水タンク20の洗浄水の漏水について、洗浄水タンク20内に予め貯水されている有限の洗浄水量に止めることができ、漏水を最小限に抑えることができる。また、このような漏水による異常が発生し、便器洗浄前の洗浄水タンク20内の水位が止水水位WL1よりも低下している状態で、コントローラ21が洗浄開始信号を受信したとしても、水位センサ28が洗浄水タンク20内の洗浄水の止水水位WL1を検出しないため、コントローラ21が通常洗浄モードとは異なる異常洗浄モードを実行し、駆動装置40を作動させることなく、排水装置26の排水弁38が排水口22を閉鎖した状態で、給水装置24が作動し、給水バルブ32が開いて給水口34から洗浄水タンク20内に洗浄水が給水される。この結果、便器の洗浄に要する洗浄水タンク20内の洗浄水量を最低限確保した上で、その後の便器の洗浄を確実に行うことができる。また、コントローラ21が操作ボタン23からの洗浄開始信号を受信後、水位センサ28が洗浄水タンク20内の洗浄水の止水水位WL1を検出しない場合には、一般的な便器の洗浄では、排水弁が排水口を開放して便器の洗浄動作が行われてしまう代わりに、本実施形態では、異常洗浄モードを実行することにより、駆動装置40が作動せずに排水弁38が排水口22を閉鎖した状態で給水装置24による給水が所定時間(例えば60秒間)行われる異常状態であることを使用者に容易に認知させることができる。したがって、洗浄水タンク20の洗浄水を無制限に漏水させてしまうことを防ぐことができる。
【0033】
また、本実施形態による洗浄水タンク装置18によれば、便器洗浄前に洗浄水タンク20の洗浄水の漏水によって洗浄水タンク20内の水位が止水水位WL1をよりも低下している状態でコントローラ21が操作ボタン23からの洗浄開始信号を受信したとしても、水位センサ28が洗浄水タンク20内の洗浄水の止水水位WL1を検出していない場合には、異常洗浄モードを実行することにより、駆動装置40を作動させることなく、給水装置24を作動して所定時間給水を行った後、給水を停止するため、便器の洗浄を開始する際に、洗浄水タンク20の洗浄水の漏水が発生していたとしても、便器の洗浄に要する洗浄水タンク内の洗浄水量を最低限確保することができる。また、異常洗浄モードによって給水が所定時間行われた後に停止することにより、洗浄水タンク20の洗浄水を無制限に漏水させてしまうことを防ぐことができる。
【0034】
さらに、本実施形態による洗浄水タンク装置18によれば、水位センサ28がフロートスイッチであるため、低コストで洗浄水タンク28内の止水水位WL1を検出することができると共に、洗浄水タンク20の洗浄水の漏水している場合でも、無制限に漏水させてしまうことを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0035】
1 水洗大便器
2 便器本体
4 ボウル部
6 導水路
8 排水トラップ管路
8a 排水トラップ管路の入口
8b 排水トラップ管路の上昇路
8c 排水トラップ管路の下降路
10 リム
12 第1吐水口
14 溜水部
16 第2吐水口
18 洗浄水タンク装置
20 洗浄水タンク
20a 洗浄水タンクの底面
21 コントローラ(制御手段)
22 排水口
23 操作ボタン
24 給水装置(給水手段)
26 排水装置
28 水位センサ(水位検出手段)
30 定流量弁
32 給水バルブ
34 給水口
36 オーバーフロー管
36a オーバーフロー管の下端開口部
36b オーバーフロー管の上端開口部
36c オーバーフロー管の玉鎖取付部
38 排水弁
40 駆動装置(排水弁駆動手段)
42 ガイド部材
44 回転軸
46 玉鎖

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器を洗浄する洗浄水を貯水する洗浄水タンク装置であって、
底面に排水口が形成された洗浄水タンクと、
この洗浄水タンクに洗浄水を給水する給水手段と、
上記洗浄水タンクの排水口を開閉する排水弁と、
この排水弁を上昇させて排水口から洗浄水を便器に供給する排水弁駆動手段と、
上記洗浄水タンク内の上方に設けられ上記洗浄水タンク内の洗浄水の止水水位を検出する水位検出手段と、
洗浄開始信号に基づいて上記排水口から便器へ供給するように上記排水弁駆動手段の作動を制御する制御手段と、を有し、
上記制御手段は、上記洗浄開始信号の受信後に上記水位検出手段が上記洗浄水タンク内の洗浄水の止水水位を検出している場合には、上記排水弁駆動手段を駆動することにより上記排水弁を上昇させて上記排水口を開放し、上記便器へ洗浄水を供給して便器の洗浄を実行する通常洗浄モードと、上記洗浄開始信号の受信後に上記水位検出手段が上記洗浄水タンク内の洗浄水の止水水位を検出していない場合には、上記排水弁駆動手段を作動させることなく上記洗浄水タンクに洗浄水を給水するように上記給水手段を制御した後、上記便器の洗浄を実行する異常洗浄モードと、を備えていることを特徴とする洗浄水タンク装置。
【請求項2】
上記制御手段の異常洗浄モードは、上記洗浄開始信号の受信後に上記水位検出手段が上記洗浄水タンク内の洗浄水の止水水位を検出していない場合には、上記排水弁駆動手段を作動させることなく上記給水手段を作動して所定時間給水を行った後、上記給水手段を停止して上記便器の洗浄を実行する請求項1に記載の洗浄水タンク装置。
【請求項3】
上記水位検出手段はフロートスイッチである請求項1又は2に記載の洗浄水タンク装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1項に記載の洗浄水タンク装置を備えた水洗大便器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−196018(P2011−196018A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60542(P2010−60542)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】