説明

洗浄水タンク装置

【課題】寒冷地における排水弁の凍結を確実に防止する事ができると共に、便器洗浄前の状態に確実に復帰させる事ができる洗浄水タンク装置を提供する。
【解決手段】便器を洗浄する洗浄水を貯水する洗浄水タンク装置であって、洗浄水が貯水され、底面に排水口が形成された貯水タンクと、排水口を開閉する弁体72とこの弁体と連結し上下方向に延びる管部材74とを有する排水弁と、管部材74を外側から支持して上下方向の移動をガイドし且つ排水弁の動作を制御する制御筒78と、洗浄水タンクに固定され排水弁を所定位置に保持する操作部46と、を有し、操作部46により排水弁が保持される所定位置は、排水弁の弁体72の上面と制御筒78とが接触しない位置であることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄水タンク装置に係り、特に、便器を洗浄する洗浄水を貯水する洗浄水タンク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、便器を洗浄する洗浄水を貯水する洗浄水タンク装置として、特許文献1には、貯水タンクの底部に形成された排水口を開閉する排水弁と、洗浄水を貯水すると共にその貯水された洗浄水を所定の小さな流量で排出するよう形成された小穴を備える貯水部を備える制御筒と、この貯水部内の水位の低下に伴って下降するようその貯水部内に設けられたフロートと、を有し、フロートの下降と連動して下降して排水口を閉止するようにした排水装置を備えるものが知られている。
このような排水装置において、寒冷地では、洗浄水タンク装置の凍結を防止する目的で操作ハンドルを開位置に固定し、弁体を制御筒と接触する位置で弁体を保持して排水口を開弁することで、洗浄水タンク装置内の洗浄水を全て排出し、洗浄水タンク装置が凍結することを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61−72144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、排水装置の排水弁を排水口から引き上げ所定時間放置しておくと、その排水弁と制御筒との隙間に残っている洗浄水が凍結し、操作ハンドルを初期位置に戻したとしても、排水弁と制御筒とが洗浄水の凍結により固着しているために、弁体が排水口から引き上げられた状態で保持され、初期の状態に戻らないという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題点を解決したものであり、寒冷地における排水弁の凍結を確実に防止する事ができると共に、便器洗浄前の初期位置に確実に復帰させる事ができる洗浄水タンク装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するために、本発明は、便器を洗浄する洗浄水を貯水する洗浄水タンク装置であって、洗浄水が貯水され、底面に排水口が形成された貯水タンクと、前記排水口を開閉する弁体とこの弁体と連結し上下方向に延びる管部材とを有する排水弁と、前記管部材を外側から支持して上下方向の移動をガイドし且つ前記排水弁の動作を制御する制御筒と、前記洗浄水タンクに固定され前記排水弁を所定位置に保持する操作部と、を有し、前記操作部により前記排水弁が保持される所定位置は、前記排水弁の弁体の上面と前記制御筒とが接触しない位置であることを特徴としている。
このように構成された本発明においては、寒冷地における貯水タンク内の水抜き作業工程で、操作部により排水弁が保持される所定位置は、排水弁の弁体の上面と制御筒とが接触しない位置であるために、排水弁の弁体の上面と制御筒との隙間に残った洗浄水が凍結し、排水弁と制御筒とが固着することがなく、寒冷地における排水弁の凍結を確実に防止することができる。水抜き作業工程から通常の洗浄工程に戻す際に排水弁の上面と制御筒が凍結により固着していないために、排水弁を便器洗浄前の状態に確実に復帰させることができる。
【0007】
本発明において、好ましくは、前記排水弁が前記操作部により保持される前記所定位置から便器洗浄前の初期位置に復帰する際に、前記排水弁は前記所定位置より上方へ移動した後に下方へ移動し前記初期位置に復帰する。
このように構成された本発明においては、管部材と制御筒との隙間に残った洗浄水が凍結し固着していた場合、排水弁を所定位置より上方へ移動させた後に下方へ移動させ初期位置に復帰させることにより、その凍結による固着を破壊することができ、水抜き作業工程から通常の洗浄工程に戻す際に排水弁を便器洗浄前の状態に、より確実に復帰させることができる。
【0008】
本発明において、好ましくは、前記排水弁は前記操作部の回転操作により引き上げられ前記排水口を開閉し、前記操作部は、前記操作部の回転角度を初期位置に対して所定角度で保持する規制手段を有し、前記規制手段による前記操作部の保持により前記排水弁を前記所定位置に保持することを特徴とする。
このように構成された本発明においては、操作部に設けられた規制手段で操作部の角度を初期位置に対して所定角度で保持することにより、排水弁を所定位置に保持しているために、より簡単な構造で水抜き作業工程を実行することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、前記規制手段は、前記操作部が初期位置に対して前記所定角度より大きな回転角度の方向に操作された場合のみ、前記規制手段による前記操作部の保持を解除できるように構成されている。
このように構成された本発明においては、規制手段は、操作部が初期位置に対して所定角度より大きな回転角度の方向に操作された場合のみ、規制手段による操作部の保持を解除できるように構成されているために、必然的に使用者は排水弁を所定位置より上方へ移動させた後に下方へ移動させ初期位置に復帰させることになる。よって、管部材と制御筒との隙間に残った洗浄水が凍結し固着していた場合、その凍結による固着を破壊することができ、水抜き作業工程から通常の洗浄工程に戻す際に排水弁を便器洗浄前の状態により確実に復帰させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の洗浄水タンク装置によれば、寒冷地における排水弁の凍結を確実に防止する事ができると共に、便器洗浄前の初期位置に確実に復帰させる事ができる洗浄水タンク装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置が適用された水洗便器の断面図
【図2】本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置の水抜き動作を実行する前の状態(初期位置)を示す正面断面図
【図3】本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置の操作装置(操作部)の分解斜視図の分解斜視図
【図4】本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置の排水弁を保持した状態(操作レバーを約60°で保持した状態)を示す斜視断面図、及び、一部拡大図
【図5】本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置の排水弁の保持を解除した状態(操作レバーを約90°に回転させた状態)を示す斜視断面図、及び、一部拡大図
【図6】(a)本発明の第1実施形態による水抜き動作を実行する前の状態(初期位置)を示す操作部の断面図、(b)本発明の第1実施形態による水抜き動作移行時の状態(操作レバーを約75°回転させた状態)を示す操作部の断面図、(c)本発明の第1実施形態による水抜き動作実行中の状態(操作レバーを約60°回転させた状態)を示す操作部の断面図、(d)は、本発明の第1実施形態による水抜き動作を解除した状態(操作レバーを約90°回転させた状態)を示す操作部の断面図
【0012】
次に、添付図面により、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置を説明する。
先ず、図1により、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置が適用された水洗便器を説明する。図1は、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置が適用された水洗便器の断面図である。
【0013】
図1に示すように、符号1は洗落し式の水洗便器を示し、この便器1は、便器本体2を備え、この便器本体2にはボウル部4と、導水路6と、ボウル部4の下部と連通するトラップ管路8がそれぞれ形成されている。便器本体2のボウル部4の上縁部には、内側にオーバーハングしたリム10と、導水路6から供給される洗浄水を吐水する第1吐水口12が形成され、この第1吐水口12から吐水された洗浄水は、旋回しながら下降してボウル部を洗浄するようになっている。
【0014】
ボウル部4の下方には、一点鎖線で貯留面W0が示された溜水部14が形成されている。この溜水部14の下方には、排水トラップ管路8の入口8aが開口し、この入口8aから上昇路8bが後方に延びている。この上昇路8bには下降路8cが連続し、下降路8cの下端は排水ソケット(図示せず)を介して床下の排出管(図示せず)に接続されている。また、ボウル部4の貯留面W0の上方位置には、導水路6から供給される洗浄水を吐水する第2吐水口16が形成され、この第2吐水口16から吐水される洗浄水が溜水部14の溜水を上下方向に旋回させる旋回流を生じさせるようになっている。
【0015】
便器本体2の導水路6の上方には、便器本体2に供給する洗浄水を貯水する洗浄水タンク装置18が設けられている。後述するように、洗浄水タンク装置18の貯水タンク22の底部には、便器本体2の導水路6と連通する排水口22aが形成され、貯水タンク22内の洗浄水が導水路6へと排水されるようになっている。
【0016】
次に、図2により、洗浄水タンク装置18の概略構成について説明する。図2は、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置の水抜き動作を実行する前の状態(初期位置)を示す正面断面図である。なお、本実施形態による洗浄水タンク装置は、上述した洗落し式以外の他のタイプの水洗便器(例えば、サイホン式水洗便器など)にも適用可能である。
【0017】
図2に示すように、洗浄水タンク装置18は、陶器製の外装タンク20と、その内方に配置され、洗浄水が貯水される貯水タンク22と、外装タンク20に載せられる蓋体24と、を備えている。
【0018】
貯水タンク22は、それを取り囲むように断熱体26が設けられ、この断熱体26を介して、所定の係合部材28により、貯水タンク22が外装タンク20に取り付けられる。また、貯水タンク22の底面には、上述した便器本体の導水路6に連通する排水口22aが形成されている。この排水口22aの側面に延びる排水口部材22bを所定の係合部材30で固定することによって、貯水タンク22が外装タンク20に取り付けられる。
【0019】
また、蓋体24には、蓋体24に形成された手洗い鉢24aに手洗い用の水を吐水する手洗いカラン32が設けられている。手洗いカラン32から吐水された手洗い鉢24aの水は、手洗い鉢24aに形成された吐水口(流入口)24bにより、貯水タンク22に流入される。
この蓋体24の下方には、吐水口24bから流入する水を、後述する排水装置70の制御筒78の外方に導く導水部材25が設けられている。
【0020】
次に、洗浄水タンク装置18は、洗浄水給水装置34を備えている。この洗浄水給水装置34は、従来のものと同様のものであり、外部の水道管などの給水源(図示せず)に接続される給水管36、給水装置用フロート38、給水管36と連通し、貯水タンク22に洗浄水を吐水する吐水管40、給水装置用フロート38にレバー42を介して連結される給水バルブ44などを備えている。
【0021】
本実施形態では、この洗浄水給水装置34により、排水開始の所定時間後、給水を開始するようにしている。本実施形態では、貯水タンク22の満水時の止水水位は、図2に示す位置(WL)で一定になるようにしている。
【0022】
また、この洗浄水給水装置34は、手洗いカラン32に水を供給する手洗い給水管31を備え、便器への洗浄水の供給開始時(排水開始時)、上述した蓋体24の手洗いカラン32に水の供給を開始するようにしている。
【0023】
次に、洗浄水タンク装置18は、操作装置46(操作部)及びこの操作装置46の操作により作動される排水装置70を備えている。
【0024】
まず、操作部である操作装置46について説明する。
操作装置46は、スピンドル50と、このスピンドル50に接続される操作レバー48と、を備える。
【0025】
操作レバー48は、一方(本実施形態では、手前側)に(90度)回転させると、後述する大洗浄が開始され、他方(本実施形態では、奥側)に(90度)回転させると、後述する小洗浄が開始されるように、排水装置70を作動させる手動式の操作レバーである。また、スピンドル50の代わりにモータ等を設置して、操作ボタンにより、大洗浄のボタンが押されると、操作レバー48と同一の一方(手前側)の方向に回転し、小洗浄のボタンが押されると、操作レバー48と同一の他方(奥側)の方向に回転して、それぞれ、大洗浄或いは小洗浄が開始されるように排水装置70を作動させるようにしても良い。
【0026】
これらの操作レバー48及びスピンドル50には、ワイヤ部材やユニバーサルジョイントなどにより構成される回転伝達部材54が連結されている。この回転伝達部材54の他端側には、その回転に伴って、回転伝達部材54を中心に揺動する第1の引き上げ部材56及び第2の引き上げ部材58が取り付けられ、これらの第1の引き上げ部材56及び第2の引き上げ部材58の先端部には、それぞれ、第1玉鎖60の上端部分及び第2玉鎖62の上端部分が取り付けられている。
【0027】
これらの第1の引き上げ部材56及び第2の引き上げ部材58は、回転伝達部材54を一方側(大洗浄時)に回転させると、第1の引き上げ部材56のみが、その一方側に揺動して第1玉鎖60のみを引き上げ、一方、回転伝達部材54を他方側(小洗浄時)に回転させると、第1の引き上げ部材56及び第2の引き上げ部材58の両方が、その他方側に揺動して第1玉鎖60及び第2玉鎖62の両方を引き上げるような機械的な機構とされている。
【0028】
さらに、図3により、操作部である操作装置46について詳しく説明する。
図3は、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置の操作装置(操作部)の分解斜視図である。操作装置46(操作部)は、操作レバー48の外観を形成する操作レバーカバー48aと、操作レバー受け部48bと、操作レバー受け部48bとスピンドル50と連結固定する螺子202と、スピンドル50の回転動作をガイドするスピンドルガイド204と、スピンドルガイド204の螺子部204bと嵌合して外装タンク20の内側から操作装置46を外装タンク20に固定するスペーサー205及びナット206とを備えている。
【0029】
操作レバー受け部48bとスピンドルガイド204との間には、ねじりばね203が配置されており、使用者が操作レバー48を回転させるとこのねじりばね203が捩られて復元力を発生し、使用者が操作レバー48から手を離すと操作レバー48がねじりばね203の復元力により初期の位置に戻るように構成されている。
【0030】
操作装置46(操作部)には、操作レバー48を所定の角度に保持するための押しボタン200が具備されている。この押しボタン200の端には鍵形状である凹部200aが形成され、中央には鍔部200bが形成され、一方の端は操作レバーカバー48aの穴部に挿入されカバー外に突出する押しボタン操作部200cが形成されている。
【0031】
押しボタン200の先端である凹部200aは、操作レバー受け部48bの穴部48dに挿入され、スピンドルガイド204の係止部204aと係合する形状で形成されている。押しボタンの鍔部200bと操作レバー受け部48bの穴部48dとの間には圧縮ばね201が配置されており、詳細は後述するように、押しボタン200の凹部200aとスピンドルガイド204の係止部204aとの係合(規制手段)を解除すると、押しボタン200は圧縮ばね201の水平方向の復元力により、初期の位置に戻るように構成されている。
【0032】
本実施形態では、押しボタン200の凹部200aを鍵形状で形成したが、本発明は、この形状に限定されるものではなく、スピンドルガイド204の係止部204aに係合することができれば何れの形状でも良い。
【0033】
次に、図2により、排水装置70について説明する。
先ず、本実施形態による洗浄水タンク装置の排水装置70は、弁体72と管部材であるオーバーフロー管74とを備える排水弁と、筒体76と、制御筒78と、フロート80と、オーバーフロー管に固定される固定部材82と、筒体76に形成された後述する開口部76cを開閉する切替弁84と、を有する。
【0034】
弁体72は、図2に示すように、オーバーフロー管74の下端部に形成された断面コ字状の弁体保持部74aにはめ込まれ、オーバーフロー管74と共に上下動して、排水口22aを開閉する排水弁として機能する。また、オーバーフロー管74の側面には、その上下方向の中間部に、固定部材82を保持するための凹部74bが一周にわたって延びるように形成されている。
【0035】
制御筒78には、ほぼ円筒状の外側壁78aと、オーバーフロー管74の上下動をガイドする役割を有する円筒状の内側壁78bと、が形成されている。また、図2に示すように、制御筒78には、これらの側壁78a、78bと共に洗浄水を貯水可能にする中間水平壁78cが形成され、これらの側壁78a、78b及び中間水平壁78cにより貯水筒(貯水部)78dが構成される。
【0036】
また、貯水筒78dの外側壁78aには、貯水筒78d内に貯水された洗浄水を所定の流量で流出させるための小穴78eが形成されている。制御筒78の外側壁78aには、上述した貯水筒78dより下方部分に、排水時に、制御筒78の外方側の洗浄水を排水口22aに流入させるための流入口が形成されている。
【0037】
次に、図2に示すように、上述した貯水筒78dの内方にフロート80が配置されている。この上方には、所定の機能を有する固定部材82が、上述したオーバーフロー管74の凹部74b内に側方からはめ込まれ、これにより、固定部材82は、オーバーフロー管74に対して水平方向に回転できるように取り付けられ、一方、オーバーフロー管74に対して上下方向には移動出来ないよう固定されるようになっている。
【0038】
先ず、固定部材82には、上述した第1の引き上げ部材56に取り付けられた第1玉鎖60の下端部分が取り付けられ、排水時に、オーバーフロー管74を引き上げるために使用される。使用者が操作レバー48を回転されると、第1玉鎖60が引き上げられるが、その際に、オーバーフロー管74の弁体72は貯水タンク22内に貯水されている洗浄水のヘッド圧により鉛直下方向に抑えられているため、先ず、固定部材82がオーバーフロー管74に対して水平方向に回転し、その後、オーバーフロー管74が鉛直上方に移動することになる。
このような構成により、オーバーフロー管74が回転しながら鉛直方向上方に移動することを防ぐことができ、排水装置70の開弁動作を安定させることができる。
【0039】
次に、固定部材82は、満水時には、フロート80の上昇を抑えるストッパとしての機能を有し、排水時には、後述するように、オーバーフロー管74及び弁体72が、フロート80の下降と連動して下降するよう、オーバーフロー管74とフロート80とを接続する機能を有する。固定部材82は、これらの機能を有するように、フロート80の上面に十分に当接するような形状及び大きさに形成されている。ここで、フロート80の浮力は、満水時、弁体72にかかる水圧によりオーバーフロー管74及び弁体72を上昇させないような浮力に設定され、排水時には、オーバーフロー管74及び弁体72にかかる下方向きの力よりやや大きい浮力に設定されている。なお、フロート80とオーバーフロー管74とを互いに固定して、常時接続するようにしても良い。
【0040】
弁体72は、常時は、貯水タンク22の排水口22aを閉鎖しており、第1の玉鎖60が引き上げられると、排水口22aを開放する。また、筒体76の側面には開口部76cが形成され、この開口部76cには切替弁84が取り付けられている。切替弁84は、常時は筒体76の開口部76cを開放しており、第2の玉鎖62が引き上げられることで筒体76の開口部76cを閉鎖する。
このような構成により、第1及び第2の玉鎖60、62が引き上げられた場合には、貯水タンク22内の筒体76の上縁よりも上方の部分と、筒体76の内側の部分の洗浄水が便器本体20へと供給される(小洗浄)。また、第1の玉鎖60のみが引き上げられた場合には、貯水タンク22内内の筒体76の上縁よりも上方と、筒体76の内部と、筒体76の外部の洗浄水が便器本体2へと供給される(大洗浄)。
【0041】
次に、図2、図4、図5により、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置の寒冷地における水抜き動作を説明する。
図2は、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置の水抜き動作を実行する前の状態(初期位置)を示す正面断面図、図4は、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置の排水弁を保持した状態(操作レバーを約60°で保持した状態)を示す斜視断面図、及び、一部拡大図、図5は、本発明の第1実施形態による洗浄水タンク装置の排水弁の保持を解除した状態(操作レバーを約90°に回転させた状態)を示す斜視断面図、及び、一部拡大図である。
【0042】
寒冷地において、便器を一定期間使用しない場合、洗浄水タンク装置内に貯水された洗浄水が凍結する恐れがあるために、使用者は、凍結防止のため、貯水タンク22内の洗浄水をタンク外へ全て排出し空にする水抜き作業を行う。その水抜き作業工程の実施方法について下述する。
まず、使用者が水抜き作業を行う際には、給水管36と便器外部で接続された水抜き栓(図示せず)を閉止することで、給水管36及び洗浄水給水装置34内の洗浄水を、不凍帯に配置されている上流管(図示せず)の方へ流して、給水管36及び洗浄水給水装置34内の水抜きを行う。
【0043】
次に、貯水タンク22内の洗浄水を抜く為に、押しボタン200を押しながら操作レバー48を、大洗浄側(本実施形態では、手前側)に約75度に回転させる。それにより、第1の玉鎖60のみが引き上げられ、弁体72は、貯水タンク22の排水口22aを開放する。その後、押しボタン200を押しながら操作レバー48を初期位置の方向へ戻すと、押しボタン200の凹部200aとスピンドルガイド204の係止部204aとが係合し、操作レバー48は、初期位置(垂直方向)に対して約60度傾いた位置で保持される(図4)。一方、タンク内では、第1の玉鎖60が引き上げられ、弁体72は貯水タンク22の排水口22aを開放する状態で保持されている(図4)。これにより、貯水タンク22内の洗浄水は、貯水タンク22の排水口22aから便器本体2のボウル部4、排水トラップ管路8へと排水され、貯水タンク22外へ全て排出することでき、水抜き作業が完了する。
【0044】
また、保持されている弁体72の位置は、貯水タンク22の排水口22aのシート面から約5mm上方で、制御筒78の貯水筒78dの底壁である中間水平壁78dから約40mm下方の位置に保持されているために、弁体72の上面と制御筒78の中間水平壁78dとが離れているために、万が一、弁体72の上面と制御筒78の中間水平壁78dとの間に洗浄水が残っていたとしても、弁体72と制御筒78とが残水の凍結により固着することがない。
【0045】
上述の本実施形態では、弁体72が保持される所定位置を制御筒72の貯水筒78dの底壁である中間水平壁78dから約40mm下方の位置としたが、本発明はこれに限定されるものではなく、万が一、弁体72の上面と制御筒78の中間水平壁78dとの隙間に洗浄水が残っていたとしても、弁体72と制御筒78とが残水の凍結により固着することがない位置であれば何れでもよい。
【0046】
次に、水抜き作業工程の状態(図4)から、通常の洗浄工程前の状態(図2)に復帰させる方法について説明する。
まず、操作レバー48が約60°傾いて保持されている状態では、押しボタン200の凹部200aとスピンドルガイド204の係止部204aとが係合しているため、操作レバー48は初期位置へ戻す方向へ回転しないように規制されている(規制手段)。それゆえ、使用者は、操作レバー48を、垂直方向(初期位置)に対して約60°傾いた状態から、大洗浄側(本実施形態では、手前側)に回転させることになる。例えば、操作レバー48を垂直方向(初期位置)に対して約90°にまで回転させると(図5)、押しボタン200の凹部200aとスピンドルガイド204の係止部204aとが係合、つまり規制手段が解除される。その後、使用者は、操作レバー48を離し、操作レバー受け部48bとスピンドルガイド204との間のねじりばね203の復元力により、操作レバー48は初期位置に戻る(図2)。
【0047】
タンク内では、操作レバー48を約90°にまで回転させた場合、第1の玉鎖60及びオーバーフロー管74と共に、弁体72が排水口22aのシート面から約30mm上方に引き上げられ(図5)、その後、使用者が操作レバー48を離すことで、第1の玉鎖60及びオーバーフロー管74及び弁体72は自重により、弁体72が貯水タンク22の排水口22aを閉止した状態に戻る(図2)。
【0048】
このように、オーバーフロー管74及び弁体72が保持される所定位置から便器洗浄前の初期位置に復帰する際に、上方へ移動した後に下方へ移動することで、オーバーフロー管74と制御筒72のガイド部分との隙間に残った洗浄水が凍結し固着していたとしても、オーバーフロー管74及び弁体72を所定位置より上方へ移動させた後に下方へ移動させ初期位置に復帰することにより、その凍結による固着を破壊することができる。よって、水抜き工程から通常の洗浄工程に戻す際に排水弁を便器洗浄前の状態に確実に復帰させることができる。
【0049】
次に、図6(a)〜(d)により、本発明の第1実施形態による水抜き作業工程における操作装置(操作部)の詳しい動作を説明する。
図6(a)は、本発明の第1実施形態による水抜き動作を実行する前の状態(初期位置)を示す操作部の断面図である。図6(b)は、本発明の第1実施形態による水抜き動作移行時の状態(操作レバーを約75°回転させた状態)を示す操作部の断面図である。図6(c)は、本発明の第1実施形態による水抜き動作を実行中の状態(操作レバーを約60°回転させた状態)を示す操作部の断面図である。図6(d)は、本発明の第1実施形態による水抜き動作を解除した状態(操作レバーを約90°回転させた状態)を示す操作部の断面図である。
【0050】
水抜き作業をする場合、先ず、使用者は、操作レバーカバー48aの外側へ突出している押しボタン操作部200cを左側水平方向へ押しながら、操作レバー48を初期位置から大洗浄側(本実施形態では、手前側)に約75°に回転させる。回転中は使用者が押しボタン200に左方向の力をかけている為に、押しボタン200の凹部200aの左端がスピンドルガイド204の第一面部204cを滑りながら移動し、その後、第一表面204cより左側に一段落ち込んでいる第二面部204dに移動する(図6(b))。
【0051】
その後、使用者は、押しボタン200のボタン操作部200cを押しながら操作レバー48を初期位置の方向へ戻す。操作レバー48が初期位置に対して約60°の位置までに戻ると、押しボタン200の凹部200aとスピンドルガイド204の係止部204aとが係合し、使用者が操作レバー48から手を放しても、その係合により操作レバー48が約60°傾いた状態で保持される。この際、圧縮ばね201が圧縮されており、その復元力により押しボタン200の凹部200aとスピンドルガイド204の係止部204aとの係合がより強固な状態で保たれている(図6(c))。
【0052】
便器洗浄を行うことができる通常状態へ戻す際には、使用者は、操作レバー48を、初期位置に対して約60°の位置から、大洗浄側(本実施形態では、手前側)に回転させる。この際に、操作レバー48を初期位置の方向へ回転させようとしたとしても、押しボタン200の凹部200aとスピンドルガイド204の係止部204aとが係合しているため、操作レバー48は回転することが出来ない様に規制されている(規制手段)。操作レバー48が、大洗浄側(本実施形態では、手前側)に回転すると、押しボタン200の凹部200aとスピンドルガイド204の係止部204aとの係合が解除され(図6(d))、押しボタン200は、圧縮されていた圧縮ばね201の復元力により初期位置に自然に戻る。
【0053】
その後、使用者は、操作レバー48から手を離し、操作レバー受け部48bとスピンドルガイド204との間のねじりばね203の復元力により、操作レバー48は初期位置の位置に戻る(図6(a))。
上述の本実施形態の各状態における操作レバー48の所定角度は適時変更することができ、本発明はこれに限定されるものではない。
【0054】
上述の本実施形態では、便器を洗浄する洗浄水を貯水する洗浄水タンク装置であって、洗浄水が貯水され、底面に排水口が形成された貯水タンクと、排水口を開閉する弁体72とこの弁体と連結し上下方向に延びる管部材74とを有する排水弁と、管部材74を外側から支持して上下方向の移動をガイドし且つ排水弁の動作を制御する制御筒78と、洗浄水タンクに固定され排水弁を所定位置に保持する操作部46と、を有し、操作部46により排水弁が保持される所定位置は、排水弁の弁体72の上面と制御筒78とが接触しない位置であることを特徴としている。このように構成された本発明においては、寒冷地における貯水タンク内の水抜き作業工程で、操作部により排水弁が保持される所定位置は、排水弁の弁体72の上面と制御筒78とが接触しない位置であるために、排水弁の弁体の上面72と制御筒78との隙間に残った洗浄水が凍結し、排水弁と制御筒とが固着することがなく、寒冷地における排水弁の凍結を確実に防止することができる。水抜き作業工程から通常の洗浄工程に戻す際に排水弁の上面と制御筒が凍結により固着していないために、排水弁を便器洗浄前の状態に確実に復帰させることができる。
【0055】
また、好ましくは、排水弁が操作部46により保持される所定位置から便器洗浄前の初期位置に復帰する際に、排水弁は所定位置より上方へ移動した後に下方へ移動し初期位置に復帰する。このように構成された本実施形態においては、管部材74と制御筒78との隙間に残った洗浄水が凍結し固着していた場合、排水弁を所定位置より上方へ移動させた後に下方へ移動させ初期位置に復帰させることにより、その凍結による固着を破壊することができ、水抜き作業工程から通常の洗浄工程に戻す際に排水弁を便器洗浄前の状態により確実に復帰させることができる。
【0056】
さらに、好ましくは、好ましくは、排水弁は操作部の回転操作により引き上げられ排水口を開閉し、操作部46は、操作部46の回転角度を初期位置に対して所定角度で保持する規制手段を有し、規制手段による操作部46の保持により排水弁を所定位置に保持することを特徴とする。このように構成された本発明においては、操作部に設けられた規制手段で操作部の角度を初期位置に対して所定角度で保持することにより、排水弁を所定位置に保持しているために、より簡単な構造で水抜き作業工程を実行することができる。
【0057】
また、好ましくは、規制手段は、操作部46が初期位置に対して前記所定角度より大きな回転角度の方向に操作された場合のみ、規制手段による操作部46の保持を解除できるように構成されている。このように構成された本発明においては、規制手段は、操作部が初期位置に対して所定角度より大きな回転角度の方向に操作された場合のみ、規制手段による操作部46の保持を解除できるように構成されているために、必然的に使用者は排水弁を所定位置より上方へ移動させた後に下方へ移動させ初期位置に復帰させることになる。よって、管部材と制御筒との隙間に残った洗浄水が凍結し固着していた場合、その凍結による固着を破壊することができ、水抜き作業工程から通常の洗浄工程に戻す際に排水弁を便器洗浄前の状態により確実に復帰させることができる。
【符号の説明】
【0058】
1 洗落し式水洗便器
6 導水路
20 外装タンク
22 貯水タンク
22a 排水口
24 蓋体
34 洗浄水給水装置
46 操作装置(操作部)
48 操作レバー
48a 操作レバーカバー
48b 操作レバー受け部
48d 穴部
50 スピンドル
54 回転伝達部材
56 第1の引き上げ部材
58 第2の引き上げ部材
60 第1玉鎖
62 第2玉鎖
70 排水装置
72 弁体
74 オーバーフロー管
74a 弁体保持部
74b 固定部材保持用凹部
76 筒体
76c 筒体の開口部
78 制御筒
78d 貯水筒
78e 小穴、流出口
80 フロート
82 固定部材
84 切替弁
200 押しボタン
200a 押しボタン凹部
200b 押しボタン鍔部
200c 押しボタン操作部
201 圧縮ばね
202 螺子
203 ねじりばね
204 スピンドルガイド
204a スピンドルガイドの係止部
204b スピンドルガイドの螺子部
205 スペーサー
206 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器を洗浄する洗浄水を貯水する洗浄水タンク装置であって、
洗浄水が貯水され、底面に排水口が形成された貯水タンクと、
前記排水口を開閉する弁体とこの弁体と連結し上下方向に延びる管部材とを有する排水弁と、
前記管部材を外側から支持して上下方向の移動をガイドし且つ前記排水弁の動作を制御する制御筒と、
前記洗浄水タンクに固定され前記排水弁を所定位置に保持する操作部と、を有し、
前記操作部により前記排水弁が保持される所定位置は、前記排水弁の弁体の上面と前記制御筒とが接触しない位置であることを特徴とする洗浄水タンク装置。
【請求項2】
前記排水弁が前記操作部により保持される前記所定位置から便器洗浄前の初期位置に復帰する際に、前記排水弁は前記所定位置より上方へ移動した後に下方へ移動し前記初期位置に復帰することを特徴とする請求項1記載の洗浄水タンク装置。
【請求項3】
前記排水弁は前記操作部の回転操作により引き上げられ前記排水口を開閉し、前記操作部は、前記操作部の回転角度を初期位置に対して所定角度で保持する規制手段を有し、前記規制手段による前記操作部の保持により前記排水弁を前記所定位置に保持することを特徴とする請求項1又は2記載の洗浄水タンク装置。
【請求項4】
前記規制手段は、前記操作部が初期位置に対して前記所定角度より大きな回転角度の方向に操作された場合のみ、前記規制手段による前記操作部の保持を解除できるように構成されていることを特徴とする請求項3に記載の洗浄水タンク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−31609(P2012−31609A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−170814(P2010−170814)
【出願日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】