説明

洗浄水供給装置および監視システム

【課題】トイレの洗浄ボタンの異常操作を適切に監視し、溢水事故を未然に防止する。
【解決手段】居室に設置された便器に洗浄水を供給する洗浄水供給装置において、洗浄ボタンが操作されると、作動水がフラッシュバルブに供給されて洗浄水を供給する管路を開放する。作動水の供給路にはフローセンサが設けられ、所定の流量以上の作動水が流れた際に検出信号を出力する。制御部は、当該検出信号を受信している時間と回数の少なくとも一方が所定の条件を満足した場合に、フラッシュバルブの異常操作を示す異常検出信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレ等の洗浄水供給装置、および当該洗浄水供給装置におけるフラッシュバルブの操作異常を監視するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
精神科病院の隔離病室等には収容患者が使用するトイレが設置されている。収容患者は時として予期せぬ行動をとることがあり、例えば不必要に洗浄ボタンを操作したりする。フラッシュバルブ式のトイレの場合、洗浄ボタンを操作する度に洗浄水が水道管から直接供給される構造であるため、便器の排水能力を超えて洗浄水が供給されると溢水事故に繋がるおそれがある。
【0003】
例えば特許文献1に記載の洗浄水供給装置は、患者が洗浄ボタンを操作するとナースステーションに設置されたコールランプが点灯し、看護士等が所定の操作を行なうことにより洗浄水を供給する構成とされている。これによって洗浄水の無用な消費を回避しようとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−300908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら特許文献1に記載の構成では、看護士等が所定の操作を行なわない限り洗浄水の供給がなされないため、患者は看護士等の制約を受けると共に衛生上の問題がある。また患者が頻繁に洗浄ボタンを操作し、その度に洗浄水の供給操作を行なう場合、結局のところ溢水事故のおそれを回避できない。看護士等にはそのような患者の行為に対してその都度状況判断が求められることとなり、業務上の負担が増加すると共に効率が低下する。
【0006】
便器に光センサを設けて水位の異常上昇を検出し、溢水事故を未然に防ごうとする提案も一方でなされているが、防水処理を施した光センサユニットを備えた便器の提供あるいは既存の便器にそのような光センサユニットを追加する工事はコストが高い。また予期せぬ行動をとる収容患者が当該光センサユニットを汚損あるいは破壊するおそれがある。
【0007】
本発明は上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、患者による洗浄ボタンの異常操作を低コストかつ汚損のおそれのない方法で適切に監視することを目的とする。これによってトイレの溢水事故を未然に防止し、かつ看護業務上の負担軽減と効率向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題の少なくとも一部を解決するため、本発明は以下に列挙する種々の態様を採り得る。
【0009】
本発明の第1の態様は、便器に洗浄水を供給する洗浄水供給装置であって、
箱体と、
前記箱体の前面に設けられた洗浄ボタンと、
前記箱体の内部に設けられ、前記洗浄ボタンの操作により開放される第1のバルブと、
前記箱体の内部に設けられ、前記便器に前記洗浄水を供給する管路と、
前記箱体の内部に設けられ、前記管路を開閉可能なフラッシュバルブと、
前記箱体の内部に設けられ、前記第1のバルブが開放されると前記フラッシュバルブを開放する作動水を供給する作動水供給路と、
前記作動水供給路に設けられ、所定の流量以上の作動水が前記作動水供給路を流れた際に検出信号を出力するフローセンサと、
前記箱体の内部に設けられ、前記検出信号を受信する制御部とを備え、
前記制御部は、前記検出信号を受信している時間と回数の少なくとも一方が所定の条件を満足した場合に、前記フラッシュバルブの異常操作を示す異常検出信号を出力することを特徴とする。
【0010】
本発明の第1の態様において、前記所定条件は可変とされていることを特徴とする。
【0011】
本発明の第1の態様において、前記制御部に接続され、前記作動水供給路を開閉可能な第2のバルブを更に備え、前記第2のバルブは、前記制御部を介して遠隔操作で開閉可能とされていることを特徴とする。
【0012】
本発明の第2の態様は、便器に洗浄水を供給する洗浄水供給装置と、前記便器が設けられた居室とは異なる場所に設置されて報知部を備える制御パネルと、制御部とを備える監視システムであって、
前記洗浄水供給装置は、
箱体と、
前記箱体の前面に設けられた洗浄ボタンと、
前記箱体の内部に設けられ、前記洗浄ボタンの操作により開放される第1のバルブと、
前記箱体の内部に設けられ、前記便器に前記洗浄水を供給する管路と、
前記箱体の内部に設けられ、前記管路を開閉可能なフラッシュバルブと、
前記箱体の内部に設けられ、前記第1のバルブが開放されると前記フラッシュバルブを開放する作動水を供給する作動水供給路と、
前記作動水供給路に設けられ、所定の流量以上の作動水が前記作動水供給路を流れた際に検出信号を出力するフローセンサとを備え、
前記制御部は、前記検出信号を受信している時間と回数の少なくとも一方が所定の条件を満足した場合に、前記フラッシュバルブの異常操作を示す異常検出信号を出力し、
前記報知部は、前記異常検出信号に基づいて報知動作を行なうことを特徴とする。
【0013】
本発明の第2の態様において、前記所定の条件は、前記制御パネルより遠隔操作で可変とされていることを特徴とする。
【0014】
本発明の第2の態様において、前記洗浄水供給装置は、前記制御部に接続されて前記作動水供給路を開閉可能な第2のバルブを更に備え、前記第2のバルブは、前記制御パネルより遠隔操作で開閉可能とされていることを特徴とする。
【0015】
本発明の第2の態様において、前記制御部は、前記異常検出信号を出力した日時と前記所定の条件を記録として保持することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1の態様によれば、例えば患者が洗浄水供給装置の洗浄ボタンを操作すると通常通り洗浄水の供給がなされるため、患者は看護士等の制約を受けることなく衛生上の問題も回避できる。
【0017】
また便器の排水能力に応じて予め適宜に設定された条件に合致する洗浄水の過剰供給が行なわれた場合にのみ異常検出信号が出力される構成とすることが可能であるため、溢水事故を未然に防ぐことができる。
【0018】
フローセンサは箱体の内部に設けられているため、患者等の予期せぬ行動によりフローセンサが破損されるおそれを回避できる。またフローセンサ自体に防水処理を施す必要もないため部品コストが抑制される。
【0019】
第2のバルブを遠隔操作で開閉可能な構成とすることにより、例えば異常信号が検出された際に、第2のバルブを即座に閉塞する操作を行なうことができる。これにより、フラッシュバルブへの作動水の供給が絶たれて便器への洗浄水供給が中断される。これにより異常操作が検出された状況下において無用な洗浄水の消費を防止することができる。
【0020】
本発明の第2の態様によれば、第1の態様と同様の効果が得られる。例えば制御パネルをナースステーションに設置した場合、患者の容態や看護環境に応じて予め設定された条件に合致する洗浄水の過剰供給が行なわれた場合にのみ自動的に異常報知が行なわれるため、看護士等は難しい状況判断を迫られることなく対応処置を遂行可能である。これにより、看護業務上の負担が軽減されると共に業務効率が向上する。この効果は病室の数が増えるほど顕著となる。
【0021】
看護士等は異常報知を受けて即座に第2のバルブを閉塞する操作を行なうことにより、フラッシュバルブへの作動水の供給が絶たれて便器への洗浄水供給が中断される。無用な洗浄水の消費を防止しつつ、看護士等は冷静に状況確認を行なうことが可能である。
【0022】
異常検出信号が出力された日時および判定条件を記録として保存するように構成されているため、患者の行動傾向の把握が容易となり、看護計画の見直し等に役立てることができる。この効果は患者の数が増えるほど顕著となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る洗浄水供給装置を隔離病室の内側から見た概観図である。
【図2】図1の洗浄水供給装置を隔離病室の外側から見た概観図である。
【図3】図1の洗浄水供給装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明に係る監視システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の一実施形態に係る洗浄水供給装置について、添付の図面を参照しつつ以下詳細に説明する。
【0025】
本実施形態の洗浄水供給装置1は、例えば精神科病院において隔離が必要な患者を収容する病室に設置される。当該病室内には患者が使用するステンレス製の便器2が設置されている。図1に示されるように、洗浄水供給装置1は金属製の箱体3を備えており、その前面3aが病室の内壁に露出するように設置されている。
【0026】
箱体3の前面3aにはステンレス製の手洗い器4と洗浄ボタン5のみが設けられている。手洗い器4の上部には出水口4aが形成され、手洗い器4の下部には排水口4bが形成されている。患者が洗浄ボタン5を操作すると、便器2に洗浄水が供給されて水洗がなされると共に、出水口4aから手洗い用の洗浄水が供給される。病室内に露出する部材を最小限にすることにより、患者の予期せぬ破壊行為等を防止している。
【0027】
図2に示されるように、洗浄水を供給するための配管等の部材は、全て病室外側に位置する箱体3の内部に収容されている。具体的には、オンオフバルブ5a(本発明の第1のバルブに対応)、フラッシュバルブ6、作動水供給路7(図4参照)、フローセンサ8、電磁バルブ9、および制御部10が収容されている。看護士や維持管理業者は病室内に立ち入ることなくこれらの部材の操作や保全が可能とされている。
【0028】
オンオフバルブ5aは、箱体3の前面3aに設けられた洗浄ボタン5に接続されており、後述するように水圧動作式のフラッシュバルブ6を制御するためのものである。
【0029】
フラッシュバルブ6は、作動水入口6a、入口側管路6b、出口側管路6c、便器側管路6d、絞りバルブ6e、および分岐管路6fを備えている。出口側管路6cは、便器側管路6dを経由して便器2に接続されている。出口側管路6cから分岐された分岐管路6dは手洗い器4の出水口4aに接続されている。絞りバルブ6eは、分岐管路6fを経由して出水口4aから流れ出る洗浄水の流量を調整するためのものである。手洗い器4の排水口4bには配水管4cが接続されている。
【0030】
作動水供給路7は、第1管路7a、第1継手7b、第2管路7c、第3管路7d、第2継手7e、第4管路7f、および第5管路7gを備えている。オンオフバルブ5a、フローセンサ8、および電磁バルブ9も作動水供給路7の一部を構成している。
【0031】
第1管路7aは、フラッシュバルブ6の入口側管路6bから水圧のかかった作動水を取り入れるためのものである。T字型の第1継手7bの各端部には、第1管路7a、電磁バルブ9、および第2管路7cが接続されている。第2管路7cはフローセンサ8およびオンオフバルブ5aを介して第3管路7dの一端に接続されている。第3管路7dの他端は第2継手7eの一端に接続されている。第2継手7eの残る端部には、第4管路7fと第5管路7gが接続されている。第4管路7fは電磁バルブ9に、第5管路7gはフラッシュバルブ6の作動水入口6aに接続されている。
【0032】
病室内の患者が洗浄ボタン5を操作すると、オンオフバルブ5aが所定時間だけ開放され、入口側管路6bから水圧のかかった作動水を第1管路7aおよび第2管路7cを経由して取り込む。作動水は第3管路7dおよび第5管路7gを経由して作動水入口6aに供給され、フラッシュバルブ6が開放される。洗浄水は入口側管路6bから出口側管路6cを経て便器側管路6dおよび分岐管路6fに供給され、便器2の洗浄および手洗い器4への放水がなされる。
【0033】
フローセンサ8は、作動水流路7を流れる作動水の流量を検出するためのものである。フローセンサ8の内部に形成された流路には磁石を備えるフロートが当該流路内を移動可能に封入されている。フローセンサ8は当該流路が鉛直方向を向くように作動水流路7に取り付けられ、定常時においてフロートはその可動範囲における最下部に位置している。オンオフバルブ5aが開放されて作動水が作動水流路7を流れると、フロートは水流により定常位置より押し上げられる。定常位置の上方には磁力によって変位可能なスイッチが設けられている。フロートが当該スイッチに対向する位置まで上昇すると、フロートが備える磁石の影響によってスイッチが変位し、接点が接続される構成とされている。
【0034】
したがって検出を要する流量に対応する距離だけスイッチの位置をフロートの定常位置から離間させておくことにより、所定流量の作動水が作動水流路7を流れた場合にスイッチの接点が接続されて検出信号を出力することができる。検出信号は制御部10に送信される。本実施形態では、検出を要する流量に応じてスイッチの位置を調整可能な構成とされている。
【0035】
フロートが備える磁石によって機械的に変位する上記のスイッチに代えて、所定の磁気を検出すると検出信号を出力する磁気センサを設ける構成としてもよい。この場合においても磁気センサの位置(フロートの定常位置からの距離)を調節可能とすることにより、検出信号の出力を要する作動水の流量を調整することができる。
【0036】
本実施形態のようなフロート式のフローセンサ8は、流路が鉛直方向を向くことを条件に、作動水流路7の任意の位置に配置することができる。フローセンサ8は羽車式をはじめとする公知の検出方式について任意のもので代えることが可能であり、その場合はセンサの設置位置について特に制約を受けない。
【0037】
電磁バルブ9は、通常は第4管路7fを閉塞しており、箱体3の内部に設けられた開放ボタン9aを操作することにより開放される構成とされている。電磁バルブ9が開放されることによっても、入口側管路6bから第1管路7aを経由して作動水が作動水入口6aに供給され、フラッシュバルブ6を開放して便器2および手洗い器4へ洗浄水を供給することができる。また電磁バルブ9は制御部10と電気的に接続されており、制御部10から制御信号の入力があった場合にも開放可能とされている。
【0038】
制御部10は、CPU(中央演算装置)およびその周辺回路ならびにタイマを含んで構成されており、図4に示されるように、ナースステーション11に設けられた遠隔制御部12と双方向通信可能に構成されている。また制御部10は図3に示される監視処理を実行可能に構成されている。
【0039】
患者が洗浄水供給装置1の洗浄ボタン5を操作すると、オンオフバルブ5aが開放されて作動水がフラッシュバルブ6に供給され、便器2および手洗い器4へ洗浄水が供給されると共に、フローセンサ8が検出信号を出力する(ステップS11)。当該検出信号を受信した制御部10は、タイマを用いて検出信号が30秒以上連続して受信されているかを判定する(ステップS12)。検出信号が30秒以上連続して受信されている状況(ステップS12においてYes)とは、患者が洗浄ボタン5を不必要に押し続けている場合に対応する。このような状態を放置すると便器2あるいは手洗い器4の排水能力を超えて洗浄水が供給されるため、溢水事故に繋がるおそれがある。この場合において制御部10は異常検出処理を実行し(ステップS13)、異常検出信号をナースステーション11の遠隔制御部12へ送信する。
【0040】
フローセンサ8の検出信号が30秒以上連続して出力されていないと判定されると(ステップS12においてNo)、制御部10は、検出信号が1分間に5回以上フローセンサ8から受信されているかをタイマを用いて判定する(ステップS14)。検出信号が1分間に5回以上受信されている状況(ステップS14においてYes)は、患者が洗浄ボタン5を不必要に頻繁に操作している場合に対応する。このような状態を放置するとやはり溢水事故のおそれがあるため、制御部10は上記と同様にして異常検出処理を実行する(ステップS13)。
【0041】
フローセンサ8の検出信号が1分間に5回以上出力されていないと判定されると(ステップS14においてNo)、制御部10は、引き続いて検出信号が2分間に8回以上フローセンサ8から受信されているかをタイマを用いて判定する(ステップS15)。制御部10は、この判定結果がYesであれば異常検出処理を実行し(ステップS13)、Noであれば引き続いて検出信号が3分間に11回以上フローセンサ8から受信されているかをタイマを用いて判定する(ステップS16)。制御部10は、この判定結果がYesであれば異常検出処理を実行し(ステップS13)、Noであれば引き続いて検出信号が5分間に20回以上フローセンサ8から受信されているかをタイマを用いて判定する(ステップS17)。制御部10は、この判定結果がYesであれば異常検出処理を実行し(ステップS13)、Noであればタイマをリセットして(ステップS18)フローセンサ8からの検出信号を待機する状態とされる。
【0042】
ステップS15ないしS17の判定条件(時間と回数の組合せ)は、いずれも患者が洗浄水供給装置1の洗浄ボタン5を不必要に頻繁に操作している状態、すなわち溢水事故のおそれがある状態とみなすことができるものとして設定されている。なお図3のフローチャートには明示されていないものの、ステップS14ないしS17の各判定の途中において検出信号が30秒以上連続して制御部10に受信されると、監視処理は無条件にステップS13に移行して異常検出処理が実行される。
【0043】
ナースステーション11には制御パネル13が設置されている。遠隔制御部12はCPU(中央演算装置)およびその周辺回路を含んで構成されている。遠隔制御部12は当該制御パネル13に設けられた制御基板の一部として提供されてもよいし、ナースステーション11に設置されたコンピューター上で動作するアプリケーションソフトウェアの一機能として実現されてもよい。隔離病室等に配置された洗浄水供給装置1と、ナースステーション11に配置された遠隔制御部12および制御パネル13とで本発明に係る監視システムを構成している。
【0044】
図4に示されるように、制御パネル13は、報知部14、操作部15、および条件設定部16を備えている。制御パネル13の機能の少なくとも一部は、ナースステーション11に設置されたコンピューター上で動作するアプリケーションソフトウェアの一機能として実現されてもよい。
【0045】
報知部14は、遠隔制御部12が洗浄水供給装置1の制御部10から異常検出信号を受信した場合に、表示と音声の少なくとも一方により看護士等に異常を報知するものである。ランプ点灯、異常メッセージ表示、ブザー音、音声メッセージ等の何れか、あるいは複数を適宜組み合わせて報知が行なわれる。看護士等は当該報知を受け、患者が洗浄水供給装置1の洗浄ボタン5(フラッシュバルブ6)を異常操作していることを認識できる。
【0046】
操作部15は、各種ボタン(タッチパネル上に表示されるものを含む)等を含んで構成されており、少なくとも報知停止ボタン、バルブ開放ボタン、監視処理リセットボタンを含んでいる。報知停止ボタンがユーザにより操作されると、報知部14の報知動作が強制的に停止される。バルブ開放ボタンが看護士等により操作されると、遠隔制御部12より制御信号が洗浄水供給装置1の制御部10に送信される。制御部10は電磁バルブ9に当該制御信号を入力し、これによって電磁バルブ9を遠隔操作で開放することができる。監視処理リセットボタンは、異常報知を受けた看護士等が対応処置を終えた後に監視処理を再開するために操作するものである。
【0047】
条件設定部16は、制御部10が実行する監視処理において行われる判定処理の条件を遠隔設定するためのものであり、各種ボタン(タッチパネル上に表示されるものを含む)等を含んで構成される。図3に示されているS12、S14ないしS17の判定条件はあくまで一例であり、患者の容態や看護環境、あるいはトイレの排水能力といった諸条件に応じて任意に変更可能である。例えばS12の判定の場合、異常操作と判定する時間を適宜に変更可能である。またS14ないしS17の判定の場合、異常操作と判定する時間と回数の組合せを適宜に変更可能である。なおS14ないしS17を通じて行なわれる判定の回数は4回に限定されるものではなく、条件設定部16を通じて適宜に増減させることが可能である。条件設定部16において入力された設定は、遠隔制御部12を介して洗浄水供給装置1の制御部10に送信され、実行される監視処理に反映される。
【0048】
洗浄水供給装置1の制御部10とナースステーション11の遠隔制御部12の少なくとも一方は、異常検出処理が実行された日時、およびいずれの判定結果をもって異常を検出したのかを記録として保存するように構成されている。
【0049】
複数の隔離病室が存在し、各病室に上記の洗浄水供給装置1が設置されている場合、ナースステーション11の遠隔制御部12は、各洗浄水供給装置1の制御部10と双方向通信可能に接続される。ナースステーション11において各洗浄水供給装置1の使用状況が統括的に監視される。なお制御部10の機能の少なくとも一部を遠隔制御部12が担う構成としてもよい。
【0050】
以上のように、本実施形態の構成によれば、患者が洗浄水供給装置1の洗浄ボタン5を操作すると通常通り洗浄水の供給がなされるため、患者は看護士等の制約を受けることなく衛生上の問題も回避できる。
【0051】
患者の容態や看護環境に応じて予め設定された条件に合致する洗浄水の過剰供給が行なわれた場合にのみ自動的に異常報知が行なわれるため、看護士等は難しい状況判断を迫られることなく対応処置を遂行可能である。看護業務上の負担が軽減されると共に業務効率が向上する。この効果は病室の数が増えるほど顕著となる。
【0052】
またトイレの排水能力に応じて予め適宜に設定された条件に合致する洗浄水の過剰供給が行なわれた場合にのみ自動的に異常報知が行なわれるため、溢水事故を未然に防ぐことができる。
【0053】
監視処理の一部を担うフローセンサ8は、箱体3のうち病室外側に配置された部分に設けられているため、患者の予期せぬ行動によりフローセンサ8が破損されるおそれを回避できる。またフローセンサ8自体に防水処理を施す必要もないため部品コストが抑制される。
【0054】
洗浄水供給装置1の制御部10とナースステーション11の遠隔制御部12の少なくとも一方が、異常検出処理が実行された日時、およびいずれの判定結果をもって異常を検出したのかを記録として保存するように構成されているため、患者の行動傾向の把握が容易となり、看護計画の見直し等に役立てることができる。この効果は患者の数が増えるほど顕著となる。
【0055】
溢水事故をより確実に防止するという観点からは、洗浄水供給装置1による便器2および手洗い器4への洗浄水供給をナースステーション11から遠隔停止できるようにすることが好ましい。このような構成を備えた洗浄水供給装置1の変形例を以下に説明する。
【0056】
電磁バルブにより構成されるカットオフバルブ(本発明の第2のバルブに対応)を作動水供給路7の任意の箇所に設置し、制御部10から入力される制御信号に応じて開閉可能に構成する。ナースステーション11の操作部15には当該カットオフバルブの操作ボタンを設け、当該ボタンの操作に応じた制御信号を遠隔制御部12および制御部10を介してカットオフバルブに入力可能な構成とする。
【0057】
看護士等は報知部14による異常報知を受けて即座にカットオフバルブを閉塞する操作を行なうことにより、フラッシュバルブ6への作動水の供給が絶たれて便器2および手洗い器4への洗浄水供給が中断される。無用な洗浄水の消費を防止しつつ、看護士等は冷静に状況確認を行なうことが可能である。問題が解消されたと判断された場合、操作部15を通じてカットオフバルブを開放すればよい。洗浄水の再供給が必要な場合は、さらに操作部15を通じて電磁バルブ9を開放すればよい。フラッシュバルブ6へ作動水が供給されて洗浄水が便器2および手洗い器4に供給される。
【0058】
本発明に係る洗浄水供給装置および監視システムは、上述した精神科病院における隔離病室とナースステーションにおける利用に限定されるものではない。例えば拘置所等における独居房と監守室においても同様にして利用可能である。
【0059】
上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。
【符号の説明】
【0060】
1:洗浄水供給装置、2:便器、3:箱体、3a:前面、5:洗浄ボタン、5a:オンオフバルブ(第1のバルブ)、6:フラッシュバルブ、7:作動水供給路、8:フローセンサ、10:制御部、11:ナースステーション、12:遠隔制御部(制御部)、13:制御パネル、14:報知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器に洗浄水を供給する洗浄水供給装置であって、
箱体と、
前記箱体の前面に設けられた洗浄ボタンと、
前記箱体の内部に設けられ、前記洗浄ボタンの操作により開放される第1のバルブと、
前記箱体の内部に設けられ、前記便器に前記洗浄水を供給する管路と、
前記箱体の内部に設けられ、前記管路を開閉可能なフラッシュバルブと、
前記箱体の内部に設けられ、前記第1のバルブが開放されると前記フラッシュバルブを開放する作動水を供給する作動水供給路と、
前記作動水供給路に設けられ、所定の流量以上の作動水が前記作動水供給路を流れた際に検出信号を出力するフローセンサと、
前記箱体の内部に設けられ、前記検出信号を受信する制御部とを備え、
前記制御部は、前記検出信号を受信している時間と回数の少なくとも一方が所定の条件を満足した場合に、前記フラッシュバルブの異常操作を示す異常検出信号を出力することを特徴とする、洗浄水供給装置。
【請求項2】
前記所定条件は可変とされていることを特徴とする、請求項1に記載の洗浄水供給装置。
【請求項3】
前記制御部に接続され、前記作動水供給路を開閉可能な第2のバルブを更に備え、
前記第2のバルブは、前記制御部を介して遠隔操作で開閉可能とされていることを特徴とする、請求項1または2のいずれか一項に記載の洗浄水供給装置。
【請求項4】
便器に洗浄水を供給する洗浄水供給装置と、
前記便器の設けられた居室とは異なる場所に設置され、報知部を備える制御パネルと、
制御部とを備える監視システムであって、
前記洗浄水供給装置は、
箱体と、
前記箱体の前面に設けられた洗浄ボタンと、
前記箱体の内部に設けられ、前記洗浄ボタンの操作により開放される第1のバルブと、
前記箱体の内部に設けられ、前記便器に前記洗浄水を供給する管路と、
前記箱体の内部に設けられ、前記管路を開閉可能なフラッシュバルブと、
前記箱体の内部に設けられ、前記第1のバルブが開放されると前記フラッシュバルブを開放する作動水を供給する作動水供給路と、
前記作動水供給路に設けられ、所定の流量以上の作動水が前記作動水供給路を流れた際に検出信号を出力するフローセンサとを備え、
前記制御部は、前記検出信号を受信している時間と回数の少なくとも一方が所定の条件を満足した場合に、前記フラッシュバルブの異常操作を示す異常検出信号を出力し、
前記報知部は、前記異常検出信号に基づいて報知動作を行なうことを特徴とする、監視システム。
【請求項5】
前記所定の条件は、前記制御パネルより遠隔操作で可変とされていることを特徴とする、請求項4に記載の監視システム。
【請求項6】
前記洗浄水供給装置は、前記制御部に接続されて前記作動水供給路を開閉可能な第2のバルブを更に備え、
前記第2のバルブは、前記制御パネルより遠隔操作で開閉可能とされていることを特徴とする、請求項4または5に記載の監視システム。
【請求項7】
前記制御部は、前記異常検出信号を出力した日時と前記所定の条件を記録として保持することを特徴とする、請求項4ないし6のいずれか一項に記載の監視システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate