説明

洗浄液回収容器

【課題】塗装ガンに対する霧状の洗浄廃液の吹き上がりを防止可能な洗浄液回収容器を提供する。
【解決手段】本発明の洗浄液回収容器10は、複数のホッパー12を併設してなるホッパーユニット11と蓋体30とからなり、蓋体30に備えた導入口43からガス及び霧状の洗浄廃液をホッパー12内に導入する。そして、蓋体30には、ホッパー12の短辺側壁13の内面から上方に延長した延長仮想面S1を横切ってガス排出口49の内外に連続した排出ガイド壁32が備えられ、その排出ガイド壁32が、ホッパー12の短辺側壁13の内面に沿って上昇したガスをガス排出口49の外側に案内する。これより、ホッパー12内に流れ込んだガスが効率よくガス排出口49から排出され、導入口43から洗浄廃液が吹き上がることを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装ガンから下方に吐出されたガス及び霧状の洗浄廃液を導入して洗浄廃液を底部に集め、ガスをガス排出口から外側に排出可能な洗浄液回収容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の洗浄液回収容器として、角筒状の容器本体の上面開放口を、下面が開放した角筒状の蓋体で覆い、その蓋体の上面壁の中央に備えた導入口から容器本体内にガスと共に霧状の洗浄廃液を導入可能としたものが知られている。その蓋体の側壁は、容器本体の側壁の真上に離間した位置に配置され、それら蓋体の側壁及び容器本体の側壁との間がガス排出口になっている。なお、蓋体の側壁の下端部からは、斜め下方に向けて庇壁が張り出し、導入口の開口縁からは、鉛直下方に向けて筒壁が垂下されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−80132号公報(図2,[0012],[0015],[0016])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した従来の洗浄液回収容器では、導入口の外側上方に霧状の洗浄廃液が吹き上げられる現象が生じていた。この現象は、霧状の洗浄廃液と共に容器本体の底部に流れ込んだガスが、洗浄廃液と分かれて容器本体の側壁の内面に沿って上昇し、その大部分のガスがガス排出口を素通りして蓋体の側壁の内面に沿ってさらに上昇して、容器本体の上部の内圧を高めるためと考えられる。そして、容器本体の内圧の上昇によりガス排出口より広い導入口からガスが外部に排出され、このとき塗装ガンから洗浄液回収容器に向かっている霧状の洗浄廃液を上方に吹き上げられると考えられる。このため、従来の洗浄液回収容器では、導入口から吹き上げられた霧状の洗浄廃液が塗装ガンに付着する事態が生じ、これを回避するために、塗装ガンを洗浄液回収容器の上方、例えば、300[mm]も離間させた位置に配置して使用せざるを得なかった。その結果、塗装ガンから吐出された洗浄廃液が洗浄液回収容器に到達する迄に広く拡散し、洗浄廃液の回収効率が悪くなっていた。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、塗装ガンに対する霧状の洗浄廃液の吹き上がりを防止可能な洗浄液回収容器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明に係る洗浄液回収容器は、上面が開放した容器本体を上方から蓋体で覆ってなり、蓋体の中央に導入口を備えると共に、容器本体の側壁の上端部と蓋体との間にガス排出口を備え、塗装ガンから下方に吐出されたガス及び霧状の洗浄廃液を導入口から容器本体内に導入して、洗浄廃液を容器本体の底部に集める一方、ガスをガス排出口から外側に排出することが可能な洗浄液回収容器において、蓋体には、容器本体の側壁の内面から上方に延長した延長仮想面を横切ってガス排出口の内外に亘って連続し、容器本体の側壁の内面に沿って上昇したガスをガス排出口の外側に案内可能な排出ガイド壁と、蓋体の中央部から下方に向かって先細り状に膨出した蓋中央膨出部とが設けられ、その蓋中央膨出部の下端部に導入口が配置されたところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載の洗浄液回収容器において、排出ガイド壁の先端から下方に屈曲し、ガス排出口を外側から覆うと共に、ガス排出口から容器本体の外側に排出されたガスを下方に案内する下方ガイド壁を設けたところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2の何れかに記載の洗浄液回収容器において、ガス排出口から洗浄液回収容器及び蓋体の外部にガスが排出されるまでのガス排出路のうち最も狭い部分の開口面積を、導入口の開口面積より大きくしたところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1乃至3の何れか1項に記載の洗浄液回収容器において、容器本体を、水平断面長方形の角筒状とし、排出ガイド壁を、平板状としかつ対にして、容器本体における水平断面長方形の短辺と平行な1対の短辺側壁の上方に配置し、蓋中央膨出部は、1対の排出ガイド壁のうち互いに接近した側の端部全体を斜め下方に折り曲げて下端部を接近させた1対の傾斜壁を含んでなり、ガス排出口は、1対の短辺側壁全体を1対の排出ガイド壁から下方に離間させて各短辺側壁と各排出ガイド壁との間に設けられたところに特徴を有する。
【0010】
請求項5の発明は、請求項4に記載の洗浄液回収容器において、複数の容器本体をそれらの水平断面長方形における短辺方向で重ねて一体化した容器本体ユニットを備える共に、蓋体を容器本体ユニットに嵌合可能な下端開放の箱形構造とし、1対の排出ガイド壁及び1対の傾斜壁を、それぞれ複数の容器本体の上方を横切らせて延ばし、1対の傾斜壁の間に挟まれた溝部内を、各容器本体毎の領域に区画する溝区画壁を設け、隣り合った容器本体同士の境界面内で容器本体ユニットの上方と側方とに張り出し、蓋体の上面壁及び側壁から短辺側壁を離間させると共に、隣り合った容器本体の間でガスの流動を規制する突出区画壁を備えたところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0011】
[請求項1の発明]
請求項1の洗浄液回収容器によれば、容器本体の側壁の内面に沿って上昇したガスが、蓋体の排出ガイド壁で受け止められてガス排出口の外側に案内されるので、導入口から容器本体内に流れ込んだガスが効率よくガス排出口から排出される。また、蓋体の中央部には、先細り状の蓋中央膨出部が設けられているので、排出ガイド壁で受け止められたガスの一部がガス排出口と反対側の蓋体中央に向かったとしても、蓋中央膨出部の傾斜面に添ってスムーズに下方に案内されて、蓋中央膨出部の下端部に備えた導入口から遠ざかる。これらにより、導入口からガスが排出される事態を防ぎ、塗装ガンに対する洗浄廃液の吹き上がりを防止することが可能になる。そして、従来より塗装ガンを洗浄液回収容器に近づけて洗浄廃液及びガスを吐出させることができる。その結果、塗装ガンから吐出された洗浄廃液の拡散を抑えて、回収効率を向上させることが可能になる。
【0012】
[請求項2の発明]
請求項2の洗浄液回収容器では、ガス排出口から容器本体の外側に案内されたガスを、蓋体に備えた下方ガイド壁が下方に案内するので、ガスに混じって洗浄廃液がガス排出口から排出されたとしても、その洗浄廃液が塗装ガンに付着することを防ぐことができる。
【0013】
[請求項3の発明]
請求項3の構成によれば、ガス排出路のうち最も狭い部分の開口面積を、導入口の開口面積より大きくしたので、洗浄液回収容器内のガスは導入口より流動抵抗が小さいガス排出口を通過して排出されるようになる。
【0014】
[請求項4の発明]
本発明に係る洗浄液回収容器の容器本体は、円筒状であってもよいし、角筒状であってもよい。また、容器本体を水平断面長方形の角筒状とした場合には、請求項4の構成のように、容器本体の1対の短辺側壁と蓋体と間にガス排出口を設けることで、容器本体の水平断面長方形における長辺方向にガスを流動させることができる。これにより、洗浄液回収容器内におけるガスの流動経路が長く確保され、洗浄廃液とガスとが分離し易くなる。
【0015】
[請求項5の発明]
請求項5の洗浄液回収容器は、複数の容器本体を備えているので洗浄廃液を色事又は成分毎に分別して容器本体に回収することができる。また、それら複数の容器本体を一体化して容器本体ユニットとし、その容器本体ユニットに蓋体を嵌合可能としたので、複数の容器本体及び複数の蓋体を別部品にして備えた場合に比べて、部品点数の削減及びコンパクト化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る洗浄液回収容器の分解斜視図
【図2】洗浄液回収容器の斜視図
【図3】洗浄液回収容器の側面図
【図4】洗浄液回収容器の平面図
【図5】洗浄液回収容器の側断面図
【図6】洗浄システムの概念図
【図7】第2実施形態の洗浄液回収容器の側断面図
【図8】変形例(2)の洗浄液回収容器の側断面図
【図9】変形例(3)の洗浄液回収容器の側断面図
【図10】変形例(4)の洗浄液回収容器の側断面図
【図11】変形例(6)の洗浄液回収容器の側断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
以下、本発明の実施形態を図1〜図6に基づいて説明する。図1に示すように、本実施形態の洗浄液回収容器10は、ホッパーユニット11(本発明の「容器本体ユニット」に相当する)と蓋体30とから構成されている。なお、ホッパーユニット11及び蓋体30は、例えば、板金によって構成されている。
【0018】
ホッパーユニット11は、複数(例えば、3つ)のホッパー12を一体化してなる。各ホッパー12は、本発明に係る「容器本体」に相当し、水平断面長方形の角筒状をなしている。また、各ホッパー12の底壁15は、下方に向かって膨出した漏斗構造になっていて、その底壁15の下端部から垂下された液排出パイプ15Pを通して、ホッパー12内の液体を下方に排出することができる。そして、複数のホッパー12は、水平断面長方形の短辺方向に並べられて一体化されて、前記ホッパーユニット11になっている。なお、隣り合ったホッパー12の外側面同士、上面同士は面一になっている。
【0019】
以下、ホッパー12の水平断面長方形の短辺と平行な方向を第1水平方向H1と呼び、ホッパー12の水平断面長方形の長辺と平行な方向を第2水平方向H2と呼ぶこととする。また、各ホッパー12において第1水平方向H1と平行な1対の側壁13を「1対の短辺側壁13,13」と呼び、第2水平方向H2と平行な1対の側壁14を「1対の長辺側壁14,14」と呼ぶこととする。
【0020】
各ホッパー12における一方の短辺側壁13には、その下端寄り位置に1対の側面中継パイプ13P,13Pが貫通した状態に設けられている。そして、それら各側面中継パイプ13P,13Pの内側がホッパー12の内外に連通している。
【0021】
ホッパーユニット11のうち第1水平方向H1の両端に位置した外側面11G,11Gには、それら外側面11G,11Gの上下及び左右の中央部に、1対ずつのシャフト固定部18,18が横並びにして設けられている。各シャフト固定部18は、平板をL字型に屈曲させてなり、互いに直交した突片18A,18Bを備えている。そして、一方の突片18Aが、ホッパーユニット11の外側面に重ねた状態で溶接され、その突片18Aの下端部から他方の突片18Bが側方に張り出している。また、側方に張り出した突片18Bには、上下に貫通した取付孔18Cが形成されている。
【0022】
隣り合ったホッパー12,12の長辺側壁14,14同士の間には、1対の突出区画壁17,17が挟まれた状態で固定されている。それら突出区画壁17,17は、隣り合ったホッパー12,12の境界面内に配置された平板状をなし、ホッパーユニット11の上面及び側面から左右対称に張り出している。
【0023】
より詳細には、両突出区画壁17,17は、ホッパーユニット11の上面の第2水平方向H2における中心寄り2位置からホッパーユニット11の両外側面の上下方向における中央位置に亘る範囲で、それぞれホッパーユニット11から張り出している。両突出区画壁17,17のうち互いに接近した先端縁17A,17Aは、上方に向かうに従って互いに離れるように傾斜し、その傾斜角は、例えば第2水平方向H2に対して約60度になっている。また、両突出区画壁17,17の上端縁17B,17Bは、水平方向に延び、両突出区画壁17,17の側端縁17C,17Cは、鉛直方向に延び、それら突出区画壁17,17の上端縁17Bと側端縁17Cとが、互いに直交している。さらに、図5に示すように、各突出区画壁17の上端縁17Bとホッパーユニット11の上面との間の距離L1は、各突出区画壁17の側端縁17Cとホッパーユニット11の外側面との間の距離L2より僅かに大きくなっている。なお、突出区画壁17,17の下縁部17Dは、水平になっている。
【0024】
以上が、ホッパーユニット11の構造に関する説明である。次に、蓋体30の構造について説明する。図1に示すように、蓋体30は、全体が下端開放の箱形構造になっていて、図2に示すように、ホッパーユニット11に上方から嵌合されている。そして、図5に示すように、各突出区画壁17の上端縁17Bが蓋体30の上面壁31に当接し、各突出区画壁17の側端縁17Cが蓋体30における1対の側壁33,33に当接し、さらに、図2に示すように、ホッパーユニット11のうち第1水平方向H1の両端に位置した外側面11G,11Gが、蓋体30における他の1対の側壁34,34に当接して、蓋体30がホッパーユニット11に対して3次元的に位置決めされている。これにより、図5に示すように、各ホッパー12における1対の短辺側壁13,13と蓋体30の上面壁31との間に、本発明に係るガス排出口49,49が形成されている。そして、各ホッパー12内のガスが、各ガス排出口49から蓋体30の側壁33と短辺側壁13との間を通過して、ホッパー12の外部に排出される。
【0025】
図1に示すように、蓋体30の上面壁31のうち第2水平方向H2の中央には、第1水平方向H1に延びた溝部40が設けられ、その溝部40により上面壁31の平板部分が1対の平板状の排出ガイド壁32,32に2分されている。そして、図2に示すように、一方の排出ガイド壁32が、ホッパーユニット11の一側面に沿って並んだ一群の短辺側壁13を上方から覆い、他方の排出ガイド壁32が、ホッパーユニット11の他の一側面に沿って並んだ一群の短辺側壁13を上方から覆っている。詳細には、図5に示すように、第2水平方向H2において各排出ガイド壁32は、突出区画壁17の上端縁17Bの全体に接触し、短辺側壁13の内面から上方に延長した延長仮想面S1を横切ってガス排出口49の内外に亘って連続している。
【0026】
図1に示すように、両排出ガイド壁32,32のうち互いに接近した側の端部からは、1対の傾斜壁41,41が斜め下方に張り出して突出区画壁17の先端縁17Aと平行に配置されている。また、それら1対の傾斜壁41,41の下端部の間は、ホッパー12の上面と平行な溝底板42によって連絡されている。そして、これら傾斜壁41,41及び溝底板42によって構成された本発明に係る蓋中央膨出部48(図5参照)が、蓋体30の中央部から下方に向かって先細り状に膨出した構造になっている。また、傾斜壁41,41及び溝底板42によって囲まれた部分が上記溝部40になっている。
【0027】
図4に示すように、溝底板42には、各ホッパー12に対応させて複数の導入口43が形成されている。各導入口43は、例えば、正方形になっていて、その導入口43の一辺の長さL3は、図3に示した短辺側壁13の横幅L4の2/3以下であると共に、短辺側壁13の上端部と排出ガイド壁32との間隔L5(即ち、前記した突出区画壁17の上端縁17Bとホッパーユニット11の上面との間の距離L1)より小さくなっている。即ち、各ホッパー12に1つずつ備えられた導入口43の開口面積より、各ホッパー12に2つずつ備えられたガス排出口49,49の1つ分の開口面積の方が大きくなっている。また、導入口43の一辺の長さL3は、各突出区画壁17の側端縁17Cとホッパーユニット11の外側面との間の距離L2より僅かに大きくなっている。しかしながら、両ガス排出口49,49から蓋体30の下方へとガスが抜けるまでのガス排出路のうち最も狭い部分の開口面積は、導入口43の開口面積より大きくなっている。なお、図4に示すように、両端のホッパー12に対しては、導入口43は、第1水平方向H1で各ホッパー12の一端側に寄せて配置され、中央のホッパー12に対しては、導入口43は第1水平方向H1でホッパー12の中央に配置されている。
【0028】
溝部40の内部には、各導入口43,43同士の間を区画するための溝区画壁44が設けられている。それら各溝区画壁44は、溝部40の断面形状に対応した台形(図5参照)の平板構造をなしている。
【0029】
図5に示すように、蓋体30の各側壁33,34は、排出ガイド壁32の端縁から直角曲げされ、突出区画壁17より僅かに下方位置まで延びている。そして、第2水平方向H2で対向した側壁33,33が、本発明に係る「下方ガイド壁」に相当し、ガス排出口49を通過したガスを下方に案内する。
【0030】
図2に示すように、第1水平方向H1で対向した1対の側壁34,34の下端縁中央には、シャフト固定部18,18との干渉を避けるための切り欠き部34Aが設けられている。また、各側壁34,34の上端寄り位置には、丸棒を門形に屈曲させた構造の持ち手部37が側方に張り出した状態にして設けられている。
【0031】
本実施形態の洗浄液回収容器10単体の構成に関する説明は以上である。この洗浄液回収容器10は、例えば、図6に示した洗浄システム70に組み込まれて、自動車の塗装ライン(図示せず)で使用される。その洗浄システム70では、洗浄液回収容器10の液排出パイプ15Pに吸引ポンプ71が接続されている。そして、この吸引ポンプ71を停止すると、液排出パイプ15Pから洗浄液が排出されなくなり、吸引ポンプ71を駆動すると、洗浄液回収容器10内の洗浄液が液排出パイプ15Pから排出されて洗浄液回収タンク73へと送給される。また、この洗浄システム70では、各ホッパー12における一方の側面中継パイプ13Pに洗浄液供給タンク65がエアー駆動バルブ74を介して接続され、他方の側面中継パイプ13Pに塗料廃棄ダクト72の終端部が接続されている。洗浄液供給タンク65には、油性塗料用の洗浄液として例えば「シンナー」が貯えられている。なお、水性塗料用の洗浄液を用意する場合には、例えば「水」を洗浄液供給タンク65に貯えればよい。
【0032】
自動車の塗装ラインは、塗装対象である自動車の搬送路の側方に複数の塗装ロボットを備えてなる。そして、各塗装ロボットの近傍に洗浄システム70の洗浄液回収容器10が設置されている。具体的には、図3に示すように、洗浄液回収容器10における各シャフト固定部18の取付孔18Cにシャフト51が固定され、それらシャフト51の下端部が自動車の塗装ラインに備えた架台50に固定されている。
【0033】
各塗装ロボットには、アームの先端部に塗装ガン60が取り付けられると共に、アームの基端部にマニホールド61が取り付けられている。塗装ガン60には、メインとサブの2つの出力口60A,60Bと1つの入力口60Cとが備えられている。そして、塗装ガン60に備えた図示しないエアー駆動バルブを作動させてメインとサブの任意の出力口60A,60Bを入力口60Cに連通させることができる。
【0034】
マニホールド61には、複数の入力口61A〜61Dと1つの出力口61Eとが備えられている。そして、マニホールド61の出力口61Eと塗装ガン60の入力口60Cとが図示しない供給チューブを介して接続されている。また、マニホールド61の入力口61A〜61Dには、複数色の塗料供給タンク63,64と、洗浄液供給タンク65と、高圧ガス配管66(ガスは、例えば、空気)とがそれぞれ接続されている。そして、マニホールド61に備えた図示しないエアー駆動バルブを作動させて任意の入力口61A〜61Dを出力口61Eに連通させることができる。
【0035】
本実施形態の構成に関する説明は以上である。次に、本実施形態の作用効果について説明する。塗装ロボットにて自動車の塗装を行う際には、マニホールド61にて所定の塗料供給タンク63(又は64)を塗装ガン60に接続して、塗装ガン60のサブ出力口60Bを閉じ、メイン出力口60Aを開いて霧状の塗料を吐出させる。そして、塗装ロボットがプログラムされた動作を行い、自動車が塗装される。
【0036】
塗装対象となる自動車が変更されると、色替えが必要になる場合がある。その色替えの際には、まず、洗浄液供給タンク65とホッパー12との間のエアー駆動バルブ74が開いて、洗浄液回収容器10の底部に所定量の洗浄液(図5のZ)を貯めておく。次いで、塗装ロボットにて塗装ガン60を塗料廃棄ダクト72(図6参照)の始端開口に移動し、メイン出力口60Aを閉じ、サブ出力口60Bを開いた状態にして、マニホールド61にて高圧ガス配管66を塗装ガン60に接続する。これにより、マニホールド61から塗装ガン60までの塗料が高圧ガスによって押し出されて、塗料廃棄ダクト72へと排出される。そして、塗料廃棄ダクト72内を移動した塗料がホッパー12内に流れ込む。ホッパー12内には洗浄液が貯留されているので、塗料がホッパー12内で固まることはない。
【0037】
次いで、塗装ロボットにて塗装ガン60を洗浄液回収容器10における所定のホッパー12の導入口43上方に配置する。具体的には、塗装ガン60を、洗浄液回収容器10の蓋体30における上面から上方10〜50[mm]の位置に配置して導入口43に対向させる。そして、塗装ガン60のサブ出力口60Bを閉じ、メイン出力口60Aを開いた状態にして、マニホールド61にて高圧ガス配管66と洗浄液供給タンク65とを交互に塗装ガン60に接続する。すると、マニホールド61、図示しない供給チューブ、及び、塗装ガン60の内部を高圧ガスと共に洗浄液が流れ、それら塗装ガン60等の内部が洗浄される。そして、その洗浄廃液がガスと共に塗装ガン60から下方に向けて霧状になって吐出され、それらガスと霧状の洗浄廃液とが、図5の二点鎖線で示すように、洗浄液回収容器10の導入口43を通してホッパー12の底部に向かって導入される。
【0038】
すると、霧状の洗浄液は、ホッパー12の底部に貯留されている洗浄液に触れて吸収され、洗浄液から分離したガスが、ホッパー12の短辺側壁13の内面に沿って上昇する。その上昇したガスは、蓋体30の排出ガイド壁32で受け止められ、そのガスの一部がガス排出口49の外側に案内される。これにより、導入口43からホッパー12内に流れ込んだガスが効率よくガス排出口49から排出される。そして、ガス排出口49から外側に移動したガスは、蓋体30に備えた側壁33にて下方に案内される。これにより、仮にガスに混じって洗浄廃液がガス排出口49から排出されたとしても、その洗浄廃液が塗装ガン60に付着することが防がれる。
【0039】
また、蓋体30の中央部には、先細り状の蓋中央膨出部48が設けられているので、排出ガイド壁32で受け止められたガスの一部がガス排出口49と反対側の蓋体30中央に向かったとしても、蓋中央膨出部48の傾斜壁41,41に添ってスムーズに下方に案内され、蓋中央膨出部48の下端部に備えた導入口43から遠ざかる。
【0040】
これらにより、導入口43からガスが排出される事態を防ぎ、塗装ガン60に対する洗浄廃液の吹き上がりを防止することが可能になる。また、本実施形態の洗浄液回収容器10では、ガス排出口49から蓋体30の下端までのガス排出路のうち最も狭い部分の開口面積は、導入口43の開口面積より大きくなっているので、ホッパー12内のガスは導入口43より流動抵抗が小さいガス排出口49に向かい、この点においても、洗浄廃液の吹き上がりを防止することが可能になる。そして、従来より塗装ガン60を洗浄液回収容器10に近づけて洗浄廃液及びガスを吐出させることができるようになる。その結果、塗装ガン60から吐出された洗浄廃液の拡散が抑えられ、回収効率を向上させることが可能になると共に、導入口43を小さくして洗浄液回収容器10全体を従来よりコンパクトな構成にすることも可能になる。
【0041】
また、本実施形態の洗浄液回収容器10における各ホッパー12は、水平断面長方形の角筒状となっているが、ホッパー12の1対の短辺側壁13,13と蓋体30と間にガス排出口49,49を設けたことで、ホッパー12の水平断面長方形における長辺方向にガスを流動させることができる。これにより、洗浄液回収容器10内におけるガスの流動経路が長く確保され、洗浄廃液とガスとが分離し易くなる。
【0042】
さらには、この洗浄液回収容器10は複数のホッパー12を備えているので洗浄廃液を色毎又は成分毎に分別して各ホッパー12に回収することができる。また、それら複数のホッパー12を一体化してホッパーユニット11とし、そのホッパーユニット11に蓋体30を嵌合可能としたので、複数のホッパー12及び複数の蓋体30を別部品にして備えた場合に比べて部品点数の削減及びコンパクト化が図られる。
【0043】
なお、塗装ガン60から洗浄液回収容器10へのガス及び洗浄廃液の吐出動作が終了したら、吸引ポンプ71(図6参照)にてホッパー12内の洗浄液が洗浄液回収タンク73(図6参照)に送給される。
【0044】
[第2実施形態]
本実施形態の洗浄液回収容器10Vは、図7に示されており、ホッパー12の内部に整流突部80等を備えている点が前記第1実施形態と異なる。具体的には、整流突部80は、三角形の4枚の平板を接合して全体が四角錐になっている。また、三角形の各平板には、洗浄液が通過可能な複数の図示しない孔が貫通形成されている。そして、整流突部80は、底壁15の中心に配置され、導入口43から流れ込んだガスを側方へと案内する。
【0045】
両短辺側壁13,13の内面上端寄り位置からは、それぞれ干渉突壁81,81が水平に張り出している。これら干渉突壁81,81は、例えば、短辺側壁13の幅方向全体に亘って延びている。また、干渉突壁81,81の斜め上方には、傾斜壁41,41と平行なガイド帯板82,82が長辺側壁14,14の間に差し渡されている。
【0046】
本実施形態の構成によれば、各短辺側壁13の内面に添って上昇したガスが、干渉突壁81と整流突部80とに衝突してから排出ガイド壁32に衝突してガス排出口49から外部に排出される。そして、それら整流突部80及び干渉突壁81にガスが衝突する際に洗浄廃液との分離が促進される。
【0047】
[他の実施形態]
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0048】
(1)前記第1実施形態の洗浄液回収容器10は、ロボットに備えた塗装ガン60からの洗浄廃液を回収するために使用されていたが、人間が取り扱う塗装ガンの洗浄廃液を回収するために使用してもよい。また、色替え時のみならず、単なる塗装ガンの洗浄時のみに使用してもよい。
【0049】
(2)前記第1実施形態の洗浄液回収容器10では、排出ガイド壁32,32が水平になっていたが、例えば、図8に示した洗浄液回収容器10Wのように、排出ガイド壁32Wが外側に向かって迫り上がるように傾斜していてもよい。
【0050】
(3)前記第1実施形態の洗浄液回収容器10では、短辺側壁13が鉛直方向と平行であったが、例えば図9に示した洗浄液回収容器10Xのように、短辺側壁13X,13X同士の間隔が上方に向かうに広がるように短辺側壁13X,13Xが傾斜していてもよい。また、第2実施形態の洗浄液回収容器10Vの整流突部80を、図9に示した洗浄液回収容器10Xの整流突部80Vのように、ホッパー12の上下方向の中間位置まで突出させてもよい。
【0051】
(4)また、図10に示した洗浄液回収容器10Yのように、側壁33における上端部を切除して排気孔33Kを形成し、ガス排出口49を通過したガスを排気孔33Kから蓋体30Xの側方に放出してもよい。
【0052】
(5)前記第1実施形態の洗浄液回収容器10は、容器本体としてのホッパー12を複数備えていたが、1つの容器本体のみを備えた構成にしてもよい。
【0053】
(6)また、図11に示した洗浄液回収容器10Zのように、円筒状の容器本体12Zに、円環状の蓋体30Zを組み合わせた構成にしてもよい。また、この洗浄液回収容器10Zのように、蓋体30Zを鉛直断面半円形とし、容器本体12Zの内側面を上昇したガスが蓋体30Zの円弧面に添って外部に排出されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0054】
10,10V〜10Z 洗浄液回収容器
11 ホッパーユニット(容器本体ユニット)
12,12X ホッパー(容器本体)
13,13X 短辺側壁
14 長辺側壁
17 突出区画壁
30,30X,30Z 蓋体
31 上面壁
32,32W 排出ガイド壁
33 側壁
40 溝部
41 傾斜壁
43 導入口
44 溝区画壁
48 蓋中央膨出部
49 ガス排出口
60 塗装ガン
S1 延長仮想面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面が開放した容器本体を上方から蓋体で覆ってなり、前記蓋体の中央に導入口を備えると共に、前記容器本体の側壁の上端部と前記蓋体との間にガス排出口を備え、塗装ガンから下方に吐出されたガス及び霧状の洗浄廃液を前記導入口から前記容器本体内に導入して、前記洗浄廃液を前記容器本体の底部に集める一方、前記ガスを前記ガス排出口から外側に排出することが可能な洗浄液回収容器において、
前記蓋体には、前記容器本体の側壁の内面から上方に延長した延長仮想面を横切って前記ガス排出口の内外に亘って連続し、前記容器本体の側壁の内面に沿って上昇したガスを前記ガス排出口の外側に案内可能な排出ガイド壁と、前記蓋体の中央部から下方に向かって先細り状に膨出した蓋中央膨出部とが設けられ、その蓋中央膨出部の下端部に前記導入口が配置されたことを特徴とする洗浄液回収容器。
【請求項2】
前記排出ガイド壁の先端から下方に屈曲し、前記ガス排出口を外側から覆うと共に、前記ガス排出口から前記容器本体の外側に排出されたガスを下方に案内する下方ガイド壁を設けたことを特徴とする請求項1に記載の洗浄液回収容器。
【請求項3】
前記ガス排出口から前記洗浄液回収容器及び前記蓋体の外部にガスが排出されるまでのガス排出路のうち最も狭い部分の開口面積を、前記導入口の開口面積より大きくしたことを特徴とする請求項1又は2の何れかに記載の洗浄液回収容器。
【請求項4】
前記容器本体を、水平断面長方形の角筒状とし、
前記排出ガイド壁を、平板状としかつ対にして、前記容器本体における前記水平断面長方形の短辺と平行な1対の短辺側壁の上方に配置し、
前記蓋中央膨出部は、前記1対の排出ガイド壁のうち互いに接近した側の端部全体を斜め下方に折り曲げて下端部を接近させた1対の傾斜壁を含んでなり、
前記ガス排出口は、前記1対の短辺側壁全体を前記1対の排出ガイド壁から下方に離間させて前記各短辺側壁と前記各排出ガイド壁との間に設けられたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の洗浄液回収容器。
【請求項5】
複数の前記容器本体をそれらの前記水平断面長方形における短辺方向で重ねて一体化した容器本体ユニットを備える共に、前記蓋体を前記容器本体ユニットに嵌合可能な下端開放の箱形構造とし、
前記1対の排出ガイド壁及び前記1対の傾斜壁を、それぞれ前記複数の容器本体の上方を横切らせて延ばし、
前記1対の傾斜壁の間に挟まれた溝部内を、前記各容器本体毎領域に区画する溝区画壁を設け、
隣り合った前記容器本体同士の境界面内で前記容器本体ユニットの上方と側方とに張り出し、前記蓋体の上面壁及び側壁から前記短辺側壁を離間させると共に、隣り合った前記容器本体の間で前記ガスの流動を規制する突出区画壁を備えたことを特徴とする請求項4に記載の洗浄液回収容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図6】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−188249(P2010−188249A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−33544(P2009−33544)
【出願日】平成21年2月17日(2009.2.17)
【出願人】(000110343)トリニティ工業株式会社 (147)
【Fターム(参考)】