洗浄用ブラシ
【課題】 ガラスコップ等の筒形食器類の洗浄用ブラシであって、長期使用に耐え、痩せ現象の発生が少なく、当初の洗浄効果を長期に亘って維持でき、ガラスコップのような短尺の食器類でも、冷却用水ポットのような深い筒体類であっても、低面とその周縁部まで確実に清浄できる洗浄用ブラシの提供。
【解決手段】 ブラシ体2を、捲縮加工された断面略三角形状又は四角形状の延伸モノフィラメントで形成した切断紐状体列の略中間部分に各単繊維の個別移動を阻止する固定手段を施し、これを一端側から簀巻き状に巻いて一塊の柱状またはボール状に形成してあるものとし、その幅方向中間部分を結束手段によって緊締挟持させた状態で、長手方向略中間部に折畳み姿勢Fと伸張姿勢Lとに変形可能とした握り柄の先端部に固着してある構成としたもの。
【解決手段】 ブラシ体2を、捲縮加工された断面略三角形状又は四角形状の延伸モノフィラメントで形成した切断紐状体列の略中間部分に各単繊維の個別移動を阻止する固定手段を施し、これを一端側から簀巻き状に巻いて一塊の柱状またはボール状に形成してあるものとし、その幅方向中間部分を結束手段によって緊締挟持させた状態で、長手方向略中間部に折畳み姿勢Fと伸張姿勢Lとに変形可能とした握り柄の先端部に固着してある構成としたもの。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ブラシに関するもので、特に使用対象物を限定しなければならないものではないが、主として、食器類の洗浄用に適したブラシであって、通常の汚れでは台所用洗剤等を使用することなく、水だけで清潔に清浄することができる洗浄用ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の食器類や台所用品等の水を利用して洗浄するブラシは、各種各様のものが出廻っており広く一般に周知され使用されている。
【0003】
しかしながら、これら従来の洗浄用ブラシは、粉末状や液状の各種の洗浄剤を使用し、洗浄剤がもつ洗浄力を利用して汚れを落とすという手段を採用している。例えば、コップ等の洗浄に際しては、洗浄剤をブラシ部分に振り掛けるか染み込ませて擦るか、洗浄剤を食器類等の汚れ部分に直接振り掛けておいてブラシで擦るかであって、何れの場合も、洗浄剤がもつ洗浄力を利用して汚れを落としているのが現状である。そのため、洗浄剤が粉末状であるか、液状であるかを問わず、洗浄の度に洗浄剤を使用し水と共に汚水を排出している。そのため、自然環境の破壊に繋がる一因となって、解決すべき社会問題となっている。
【0004】
他方、近来では、手指の荒れにくい皮膚に優しい植物性の食器洗いや台所用品洗い用の洗剤も身近なものになってきているが、これらの洗剤や洗浄剤を使用している限りにおいて、未だ皮膚荒れ現象を払拭することはできず、汚水の排出による自然破壊原因の一つとなっている。
【0005】
現在使用されている合成洗剤には、大別するとABS系洗剤(鉱油系洗剤)、高級アルコール系洗剤、非イオン系洗剤があり、ABS系洗剤は、皮膚炎や肝臓障害を引き起す危険性から既に一部でしか使用されなくなりつつあるが、現在主流を占めている高級アルコール系洗剤や非イオン系洗剤にあっても洗浄効果を高めるために添加されているリン酸分などの含有物によって、これを栄養分とするプランクトンの異常発生原因となっており、このことに起因する河川や湖沼の汚濁や汚染が恒常的に社会問題化し、沿岸海域の汚染も進んでおり、その解決が求められている。
【0006】
このように現在使用されている各種の洗剤や洗浄剤は、このような地球環境への悪影響の発生原因のみに止まらず、人体に対する皮膚障害の発生原因にもなっているため素手での洗浄作業は極力回避し、手袋を着用して行わなければならないのが現状である。
【0007】
そのため、本出願人は、このような課題を解決する有効な手段として、特許文献1(特開平11−187933号公報)にみられるように、洗浄体部分即ち、ブラシ体部分を構成する繊維体の構造を特殊形状のものとすることにより、洗剤等を使用することなく水を含ませて擦るだけで汚れを落とすことができる繊維体を開発した。また、本出願人は、この洗浄用繊維体をブラシ柄の先端に球状または近似の塊状に固着させて、握柄付きブラシとして使用することについても、前記特許文献1の他、特許文献2(特開2002−10831号公報)にみられるように既に開発済みである。
【特許文献1】特開平11−187933号公報
【特許文献2】特開2002−10831号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
而して、これらの先行開発技術にあっては、洗浄剤をほとんど使用することなく、食器類や台所用品類の洗浄を略確実に行うことができるという点で画期的なものであるが、第1の課題は、ブラシ体を構成する無数の単繊維の結束技術が未だ不完全なものであったため、ブラシ体を形成するための、平行配置された無数の単繊維が繊維の長手方向に移動し易く、能動的に引き抜かれなくても、使用している間に食器類等との接触摩擦によって繊維の移動が発生し、長年使用すると、繊維の抜け落ちにより次第にブラシ体が痩せ細って原形が崩れ、使用に耐えなくなるという課題を有することが確認されるに至った。
【0009】
他方、食器類には、ガラスコップのような深さがあまり深くない短尺の容器、即ち、短尺ではあるが指先が底までは届きにくく、皿類等の洗浄スポンジやタワシ類では、コップの底隅までは確実に洗浄しにくく、また、飲料水の冷蔵庫内収容用ポットのような、コップ類に比して深めの長尺容器類の場合は、その深さに相応しい長い柄のブラシ体でなければ底面及び底面周囲の洗浄ができないという問題がある。そのため、従来では、長さの異なる長短2種のブラシを必要としていた。
【0010】
そこで、本発明は、このような二つの課題を根元的に解決し、繊維の摩耗による変化を除けば、長年使用しても繊維の抜け落ちによる痩せ現象がほとんどなく、ブラシ体が当初の形状を維持し続け、使用感覚に変化を生じるような事態の発生が少なく、当初の洗浄効果を長い期間に亘って維持させておくことができ、また、ガラスコップのような短尺の食器類でも、冷却用水ポットのような深いまたは長尺の筒体類であっても、低面及びその周縁部まで確実に清浄することができる洗浄用ブラシを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
該目的を達成するために講じた本発明にいう洗浄用ブラシの第1の構成を、実施例において使用した符号を用いて説明すると、断面形状が略三角形状に形成された延伸モノフィラメント21に捲縮加工が施された多数本の単繊維22が引き揃えられて撚り加工を施された紐状体23が、所定長さに切断されて多数本並列配置され、該切断紐状体列23aの幅方向長さwの略中間部分cに各単繊維22の個別移動を阻止する繊維固定手段24が施されて形成された紐状体並列体25が、その一端側から簀巻き状に巻かれて一塊の柱状またはボール状に形成されたブラシ体2が、その幅方向中間部分cの外周部が適宜の結束手段3によって緊締挟持された状態で、長手方向略中間部に折畳み姿勢Fと伸張姿勢Lとに変形可能な折曲げ部12を備えた握り柄1の先端部11に固着されている構成としたものである。
【0012】
また、該洗浄用ブラシに関する第2の構成は、断面形状が略四角形状に形成された延伸モノフィラメント41に捲縮加工が施された多数本の単繊維42が引き揃えられて撚り加工を施された紐状体43が、所定長さに切断されて多数本並列配置され、該切断紐状体列43aの幅方向長さwの略中間部分cに各単繊維42の個別移動を阻止する繊維固定手段24が施されて形成された紐状体並列体45が、その一端側から簀巻き状に巻かれて一塊の柱状またはボール状に形成されたブラシ体4が、その幅方向中間部分cの外周部が適宜の結束手段3によって緊締挟持された状態で、長手方向略中間部に折畳み姿勢Fと伸張姿勢Lとに変形可能な折曲げ部12を備えた握り柄1の先端部11に固着されている構成としたものである。
【発明の効果】
【0013】
以上の説明から明らかなように、本発明にいうところの洗浄用ブラシは、断面形状を略三角形状または略四角形状に形成した延伸モノフィラメントに捲縮加工を施した単繊維を多数本引き揃えて撚り加工を施して得た紐状体を所定長さに切断して多数本並列配置し、該切断紐状体列の幅方向の略中間部分を繊維固定手段によって各単繊維の個別移動を阻止するようにしたものであり、このように紐状体の時点で単繊維の個別移動を阻止する手段を施してあるので、ブラシ体としての使用に際して個々の単繊維がブラシの塊から抜け出したり移動したりすることをほぼ確実に阻止することができ、ブラシ体を長年使用しても繊維の抜け落ちによる痩せ現象がほとんどなく、ブラシ体が当初の形状を維持し続け、当初の洗浄効果を長期に亘って維持させておくことができるという効果を有する。
【0014】
また、前記のように紐状体の時点で、単繊維の個別移動を阻止する繊維固定手段を施した紐状体並列体を、一端側から簀巻き状に巻きこんで一塊の柱状またはボール状としてあるブラシ体を形成し、更に、その幅方向中間部分の外周部を結束手段によって緊締挟持させたものとして、握り柄の先端に固着させたものであるから、ブラシ体の形成が極めて容易に効率よくできるという効果を有しており、このようにしたブラシ体を、長手方向の略中間部において折畳み姿勢Fと伸張姿勢Lとに変形可能とした折曲げ部を備えた握り柄の
先端部に固着させたものとしてあるので、ブラシ体を構成する個々の繊維がブラシ体の塊から抜け出したり移動したりすることがない状態で、ガラスコップのような深さがあまり深くない短尺の容器や、飲料水等の冷蔵庫内収容用ポットのような、コップ類に比して深めの長尺容器類であっても、ブラシ体の握り柄を長短に変化させるだけで、容器の深さに相応しい長さのブラシ体として、深形容器の底面のみならず底面周辺の洗浄を、洗浄剤を使用することなく水だけで清潔に洗浄できるという顕著な効果を期待することができるに至ったのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明にいうところの洗浄用ブラシは、握り柄1の形態を、折曲げ部12の近傍箇所に吊り下げ係止用穴13を備えたものとしておくと、使用時には柄を伸ばして長尺のブラシとして使用することができるものでありながら、非使用時には嵩を小さくして吊り下げておくことができる点で好ましい。
【0016】
前記繊維固定手段は、ミシンを用いた縫い糸による縫製手段とすることが生産効率の点と常温下で作業できる点で好ましい手段であるが、後述するように、例えば外周面に歯車状の突出部を備えた円盤体を回転させて鎖線状に加圧加熱させることによって繊維同士を熱融着させる手段を採用した場合には、繊維どうしの相対移動を確実に阻止させることができるという点で好ましい。
【0017】
また、多数の単繊維を引き揃えて撚り加工を施した紐状体の太さは、外圧を加えない状態で、例えば2〜10mm程度のものとしておくこと、殊に4〜6mm程度の太さのものとしておくと、単繊維の抜け防止を効率よく行うことができる点で好ましい。
【実施例】
【0018】
以下本発明の実施例について図面に基づいて説明する。図中、図1乃至図6は、本発明の洗浄用ブラシの実施例を示す図であって、図1は短尺状態を示す斜視図、図2は長尺状態を示す斜視図、図3は屈折途中の状態を示す斜視図、図4は柄を分解した状態を示す平面図、図5は同底面図、図6は非使用状態を示す斜視図である。
【0019】
図1は、本発明にいうところの洗浄用ブラシの握り柄1を折り畳んだ短縮姿勢を、図2は、握り柄1を直線状とした伸張姿勢をそれぞれ示してある。該握り柄1は、伸張姿勢とした場合の略中間部で前後に2分割された先端側部材1Aと後端側部材1Bとからなっていて、何れもポリプロピレン樹脂(PP)を周知の射出成形手段によって射出形成したもので、両者は折り曲げ部12において接続ピン13を介して折り畳み自在に軸連結されている。図3は、この折り曲げ姿勢と伸張姿勢との切替時の途中状態を示している。先端側部材1Aの先端部11には、後述するブラシ体2を連結固着してある。
【0020】
而して、折り曲げ姿勢とした状態では、図1に示したように、例えばガラスコップ6Aのような深さがあまり深くない短尺の容器を洗浄するのに適しており、伸張姿勢とした状態では、図2に示したように、例えば飲料水等を入れて冷蔵庫で冷やしておくのに使用されている冷蔵庫内収容用ポット6Bやビールジョッキーのような、コップ類に比して深めの長尺容器類の洗浄に適したブラシ体として使用することができるようにしたものであって、ブラシ体の握り柄1を長短に変化させるだけで、容器の深さに相応しい長さのブラシ体として使用することができるようにしたものである。
【0021】
これら握り柄1を構成する先端側部材1Aには、図5に示したように、連結部12側の背面側に幅方向に沿った一本のリブ16を突出形成してあり、後端側部材1Bには、図4に示したように、連結部12側の表面側に幅方向に沿った二本のリブ17を突出形成してあり、両部材1A,1Bを伸張姿勢としたとき、先端側部材1Aに形成してあるリブ16が、後端側部材1Bに形成してある二本のリブ17間に形成された谷間に嵌り込んで伸張姿勢を維持するようにしてある。この伸張姿勢の維持手段としては、何れが二本リブであってもよいことは言うまでもなく、他の手段として、例えば、先端側部材1Aに形成したフック係止用貫通穴14に対して、その対応箇所に突出させた突起18を契合させることによっても構成することができ、その他の周知手段を講じてもよい。
【0022】
このようにしたブラシを使用しない場合には、図6に示したように、握り柄1を折り畳んで短縮姿勢に変化させた状態として、先端側部材1Aに形成した前記のフック係止用貫通穴14を利用して係止用フック7に係止させておくことができるようにしてある。なお図中において符号15で示した部分は、滑り止めとデザインとを兼ねた小凹部である。
【0023】
而して、先端側部材1Aの先端部11には、図13に示したように、ブラシ体2の結束体3としてのバンドを挿通させて固着するための開口部19を形成してある。
【0024】
次に、ブラシ体2の構造についての第1実施例を詳細に説明する。該ブラシ体2は、無数の細繊維を密集させて塊状としたものであって、その構成繊維は、ポリエステル樹脂を樹脂繊維押出しダイに形成した特殊形状のオリフィスから押し出したモノフィラメントであって、図13に拡大して示したように、断面形状を先鋭な頂点をもつ略正三角形状としたモノフィラメントに延伸加工を施して太さ30〜40デニールとしたモノフィラメント21を用いて、図7のように、捲縮加工を施して得た単繊維22を、図8のように、多数本引き揃えて、これに緩い撚りを掛けることによって、非圧縮状態での太さを4〜6mm程度とした紐状体23を形成する。
【0025】
このようにして形成した紐状体23を、図9のように、例えば長さ80mmに切り揃えて多数本並列配置することによって、幅方向wの長さを約80mmとした紐列を形成し、その幅方向wの略中間部分cを、繊維固定手段24として、図のように、少許の間隔を隔てて2列にミシン掛け縫製することにより、この段階で、各紐状体23を形成している単繊維22の抜け出しや個別移動を阻止する手段を講じておく。また、この縫製部分の終端部分24aを加熱溶融して終端部の紐状体23が崩れるの防止してある。
【0026】
このようにして形成した紐状体並列体25を、図10のように、一端側から順次簀巻き状に巻き込んで、図11のように、全体を渦巻き状として一塊のブラシ体2を形成する。
【0027】
続いて、このように渦巻き状に巻いて一塊としたブラシ体2を、その幅方向wの中間部分cを、図12に示したように、中間部分3aをCリング状とし、その解放両端を外径方向に向けて突出させた脚部3b,3bと、その先端部を更に横外側に折り曲げた外方突出部3c,3cとを備え、平面視概形をΩ形とした結束体3によって圧縮挟持させて、図13に示した矢印aに従って結束体3の脚部3b,3bを握り柄1の先端部11に形成してある開口部13に圧入し、その外方突出部3c,3cを握り柄1の係止穴14に係止させる。この結束体3もナイロン樹脂(商標名=ポリアミド系合成高分子)を用いて射出成形したものである。このようにして、図1に示した本発明の第1実施例にいうところの洗浄用ブラシを得る。
【0028】
このようにして形成した該第1実施例にいうところの洗浄用ブラシは、ブラシ体2を構成する個々の単繊維22の断面形状を先鋭な頂点をもつ略正三角形状としたものであるから、図14に示したように、湯あかや水あかのような汚れや、食器類の油汚れを個々の単繊維22の先鋭な頂点で擦り取ることができる。一旦擦り取った汚れは繊維間に抱き込んだ水の中に漂わせて抱え込ませておくことができるので、再び清掃面に向けて擦り付けることがないので、洗浄剤を使用することなく水だけで効率よく汚れを落とすことができるのである。
【0029】
図15乃至図19は、第2実施例を示したものである。而して、図15は、断面形状を四方に突出する突条部40、40…を備えた略四角形状に形成した延伸モノフィラメント41の断面形状を拡大して示したものである。
【0030】
このような断面形状を略四角形状とした延伸モノフィラメント41を、前記第1実施例のように、捲縮加工を施して捲縮させた単繊維42を、図16のように、多数本引き揃えて撚り加工を施すことによって、撚りを備えた紐状体43を形成する。
【0031】
図17は、この紐状体43を、前記第1実施例のように、所定長さに揃えて多数本並列配置させ、各単繊維42の個別移動を阻止する繊維固定手段24として、その幅方向wの略中間部分cの上下に溶融可能な樹脂製の細幅フィルムか編組テープ51,51を当てがい、図18に示したように、外周面を歯車状に凹凸させた上下2枚の加圧加熱回転体52,52の間に通して、これらのフィルム又はテープ51,51上を挟み込ませるようにして、これらのフィルム又はテープ51,51とともに、これらのテープ間に挟み込ませた紐状体43を鎖線状に溶融させて融着53させる。このようにすることによって、紐状体43を形成する単繊維42の抜け移動を阻止するようにしたものである。これ以降のブラシ体2の形成手段については、前記第1実施例の説明に準ずる。ここにいうところのフィルム又はテープ51は上下に使用する必要はなく、片面だけに使用してもよい。
【0032】
このようにして形成されたブラシ体2にあっても、図19に示したように、ブラシ体2を構成する個々の単繊維42の先鋭な頂点40,40…で、湯あかや水あかのような汚れや、食器類の油汚れを擦り取ることができるので、前記第1実施例において示したブラシ体の場合と同様に、洗浄剤を使用することなく水だけで効率よく汚れを落とすことができる。
【0033】
以上に説明したモノフィラメントの形成素材は、ポリエチレンテレフタレート繊維に代表されるポリエステル繊維とすることが、水洗による清浄効果が著しい点で好ましい。また、モノフィラメントの太さにあっても、前記実施例において示した30〜40デニールのものに限られるものではなく、例えば20〜100デニールの範囲内の繊維であれば、洗浄効率のよい繊維として使用することができる。
【0034】
前記繊維固定手段は、ミシンを用いた縫い糸による縫製手段とすることが生産効率の点で好ましいが、後述するように、例えば外周面に歯車状の突出部を備えた円盤体を回転させて鎖線状や×線状に加圧加熱させて熱融着させる手段を採用しても、効率よく単繊維の抜け防止を講じることができる。
【0035】
前記紐状体の非圧縮状態での太さは、前記実施例において示した4〜6mm程度のものに限られるものではなく、例えば2〜10mm程度のものとしても、単繊維の抜け防止を効率よく行うことができる。
【0036】
また、結束体の形成素材は、ナイロン素材に限られるものではなく、適宜の靱性と弾性とを備えた樹脂素材であれば特に限定されるものではなく、針金のような線材とか、金属帯材のような金属素材を用いてもよい。
【0037】
更に、握り柄の形成素材にあっては、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン系合成樹脂に限られるものではなく、その他の合成樹脂素材を用いることができ、合成樹脂素材の射出成形品とすることが任意の形状にし易い点と清潔感が得られる点で好ましいが、木材や竹のような天然素材を用いて形成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上のように、本発明にいうところの洗浄用ブラシは、従来のように洗浄の都度、洗浄剤を使用することなく、固形化した強固な汚れの場合を除き、水だけの洗浄で汚れを落とすことができ、折り曲げ姿勢としてコップ等を洗浄し、伸張姿勢として深い筒形容器を洗浄することができるので、大いに社会に受け入れられて普及するものと思われる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明にかかる洗浄用ブラシの折り畳み状態を示す斜視図。
【図2】同ブラシの伸張状態を示す斜視図。
【図3】同ブラシの折り畳み途中状態を示す斜視図。
【図4】同ブラシの握り柄を分離した状態を示す平面図。
【図5】同背面図。
【図6】同ブラシの非使用状態を示す斜視図。
【図7】ブラシ体を構成する単繊維を示す側面図。
【図8】多数の単繊維を集めて撚り加工を施す前の紐状体を示す側面図。
【図9】紐状体の並列配置状態と繊維固定状態とを示す平面図(a)と側面図(b)。
【図10】紐状体並列体を一端側から簀巻き状に巻き込む途中状態を示す平面図(a)と側面図(b)。
【図11】簀巻き状に巻き終わった状態を示す平面図(a)と側面図(b)。
【図12】ブラシ体を結束して握り柄に固着させるための結束体を示す斜視図。
【図13】ブラシ体を結束体で結束した状態と握り柄への固着手段を示す斜視図。
【図14】ブラシ体による洗浄例を拡大して示した模式図。
【図15】他の実施例を示すモノフィラメントの拡大断面図。
【図16】多数の単繊維を集めて撚り加工を施す前の紐状体を示す側面図。
【図17】紐状体の並列配置状態と繊維固定状態とを示す平面図。
【図18】並列配置状態とした紐状体を繊維固定状態に加工する手段を示す側面図。
【図19】ブラシ体による洗浄例を拡大して示した模式図。
【符号の説明】
【0040】
1 握り柄
2 ブラシ体
3 結束体
4 ブラシ体
11 先端部
12 折曲げ部
21 延伸モノフィラメント
22 単繊維
23 紐状体
23a 切断紐状体列
24 繊維固定手段
25 紐状体並列体
41 延伸モノフィラメント
42 単繊維
43a 切断紐状体列
43 紐状体
45 紐状体並列体
c 幅方向中間部分
w 幅方向の長さ
F 折畳み姿勢
L 伸張姿勢
【技術分野】
【0001】
この発明は、ブラシに関するもので、特に使用対象物を限定しなければならないものではないが、主として、食器類の洗浄用に適したブラシであって、通常の汚れでは台所用洗剤等を使用することなく、水だけで清潔に清浄することができる洗浄用ブラシに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の食器類や台所用品等の水を利用して洗浄するブラシは、各種各様のものが出廻っており広く一般に周知され使用されている。
【0003】
しかしながら、これら従来の洗浄用ブラシは、粉末状や液状の各種の洗浄剤を使用し、洗浄剤がもつ洗浄力を利用して汚れを落とすという手段を採用している。例えば、コップ等の洗浄に際しては、洗浄剤をブラシ部分に振り掛けるか染み込ませて擦るか、洗浄剤を食器類等の汚れ部分に直接振り掛けておいてブラシで擦るかであって、何れの場合も、洗浄剤がもつ洗浄力を利用して汚れを落としているのが現状である。そのため、洗浄剤が粉末状であるか、液状であるかを問わず、洗浄の度に洗浄剤を使用し水と共に汚水を排出している。そのため、自然環境の破壊に繋がる一因となって、解決すべき社会問題となっている。
【0004】
他方、近来では、手指の荒れにくい皮膚に優しい植物性の食器洗いや台所用品洗い用の洗剤も身近なものになってきているが、これらの洗剤や洗浄剤を使用している限りにおいて、未だ皮膚荒れ現象を払拭することはできず、汚水の排出による自然破壊原因の一つとなっている。
【0005】
現在使用されている合成洗剤には、大別するとABS系洗剤(鉱油系洗剤)、高級アルコール系洗剤、非イオン系洗剤があり、ABS系洗剤は、皮膚炎や肝臓障害を引き起す危険性から既に一部でしか使用されなくなりつつあるが、現在主流を占めている高級アルコール系洗剤や非イオン系洗剤にあっても洗浄効果を高めるために添加されているリン酸分などの含有物によって、これを栄養分とするプランクトンの異常発生原因となっており、このことに起因する河川や湖沼の汚濁や汚染が恒常的に社会問題化し、沿岸海域の汚染も進んでおり、その解決が求められている。
【0006】
このように現在使用されている各種の洗剤や洗浄剤は、このような地球環境への悪影響の発生原因のみに止まらず、人体に対する皮膚障害の発生原因にもなっているため素手での洗浄作業は極力回避し、手袋を着用して行わなければならないのが現状である。
【0007】
そのため、本出願人は、このような課題を解決する有効な手段として、特許文献1(特開平11−187933号公報)にみられるように、洗浄体部分即ち、ブラシ体部分を構成する繊維体の構造を特殊形状のものとすることにより、洗剤等を使用することなく水を含ませて擦るだけで汚れを落とすことができる繊維体を開発した。また、本出願人は、この洗浄用繊維体をブラシ柄の先端に球状または近似の塊状に固着させて、握柄付きブラシとして使用することについても、前記特許文献1の他、特許文献2(特開2002−10831号公報)にみられるように既に開発済みである。
【特許文献1】特開平11−187933号公報
【特許文献2】特開2002−10831号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
而して、これらの先行開発技術にあっては、洗浄剤をほとんど使用することなく、食器類や台所用品類の洗浄を略確実に行うことができるという点で画期的なものであるが、第1の課題は、ブラシ体を構成する無数の単繊維の結束技術が未だ不完全なものであったため、ブラシ体を形成するための、平行配置された無数の単繊維が繊維の長手方向に移動し易く、能動的に引き抜かれなくても、使用している間に食器類等との接触摩擦によって繊維の移動が発生し、長年使用すると、繊維の抜け落ちにより次第にブラシ体が痩せ細って原形が崩れ、使用に耐えなくなるという課題を有することが確認されるに至った。
【0009】
他方、食器類には、ガラスコップのような深さがあまり深くない短尺の容器、即ち、短尺ではあるが指先が底までは届きにくく、皿類等の洗浄スポンジやタワシ類では、コップの底隅までは確実に洗浄しにくく、また、飲料水の冷蔵庫内収容用ポットのような、コップ類に比して深めの長尺容器類の場合は、その深さに相応しい長い柄のブラシ体でなければ底面及び底面周囲の洗浄ができないという問題がある。そのため、従来では、長さの異なる長短2種のブラシを必要としていた。
【0010】
そこで、本発明は、このような二つの課題を根元的に解決し、繊維の摩耗による変化を除けば、長年使用しても繊維の抜け落ちによる痩せ現象がほとんどなく、ブラシ体が当初の形状を維持し続け、使用感覚に変化を生じるような事態の発生が少なく、当初の洗浄効果を長い期間に亘って維持させておくことができ、また、ガラスコップのような短尺の食器類でも、冷却用水ポットのような深いまたは長尺の筒体類であっても、低面及びその周縁部まで確実に清浄することができる洗浄用ブラシを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
該目的を達成するために講じた本発明にいう洗浄用ブラシの第1の構成を、実施例において使用した符号を用いて説明すると、断面形状が略三角形状に形成された延伸モノフィラメント21に捲縮加工が施された多数本の単繊維22が引き揃えられて撚り加工を施された紐状体23が、所定長さに切断されて多数本並列配置され、該切断紐状体列23aの幅方向長さwの略中間部分cに各単繊維22の個別移動を阻止する繊維固定手段24が施されて形成された紐状体並列体25が、その一端側から簀巻き状に巻かれて一塊の柱状またはボール状に形成されたブラシ体2が、その幅方向中間部分cの外周部が適宜の結束手段3によって緊締挟持された状態で、長手方向略中間部に折畳み姿勢Fと伸張姿勢Lとに変形可能な折曲げ部12を備えた握り柄1の先端部11に固着されている構成としたものである。
【0012】
また、該洗浄用ブラシに関する第2の構成は、断面形状が略四角形状に形成された延伸モノフィラメント41に捲縮加工が施された多数本の単繊維42が引き揃えられて撚り加工を施された紐状体43が、所定長さに切断されて多数本並列配置され、該切断紐状体列43aの幅方向長さwの略中間部分cに各単繊維42の個別移動を阻止する繊維固定手段24が施されて形成された紐状体並列体45が、その一端側から簀巻き状に巻かれて一塊の柱状またはボール状に形成されたブラシ体4が、その幅方向中間部分cの外周部が適宜の結束手段3によって緊締挟持された状態で、長手方向略中間部に折畳み姿勢Fと伸張姿勢Lとに変形可能な折曲げ部12を備えた握り柄1の先端部11に固着されている構成としたものである。
【発明の効果】
【0013】
以上の説明から明らかなように、本発明にいうところの洗浄用ブラシは、断面形状を略三角形状または略四角形状に形成した延伸モノフィラメントに捲縮加工を施した単繊維を多数本引き揃えて撚り加工を施して得た紐状体を所定長さに切断して多数本並列配置し、該切断紐状体列の幅方向の略中間部分を繊維固定手段によって各単繊維の個別移動を阻止するようにしたものであり、このように紐状体の時点で単繊維の個別移動を阻止する手段を施してあるので、ブラシ体としての使用に際して個々の単繊維がブラシの塊から抜け出したり移動したりすることをほぼ確実に阻止することができ、ブラシ体を長年使用しても繊維の抜け落ちによる痩せ現象がほとんどなく、ブラシ体が当初の形状を維持し続け、当初の洗浄効果を長期に亘って維持させておくことができるという効果を有する。
【0014】
また、前記のように紐状体の時点で、単繊維の個別移動を阻止する繊維固定手段を施した紐状体並列体を、一端側から簀巻き状に巻きこんで一塊の柱状またはボール状としてあるブラシ体を形成し、更に、その幅方向中間部分の外周部を結束手段によって緊締挟持させたものとして、握り柄の先端に固着させたものであるから、ブラシ体の形成が極めて容易に効率よくできるという効果を有しており、このようにしたブラシ体を、長手方向の略中間部において折畳み姿勢Fと伸張姿勢Lとに変形可能とした折曲げ部を備えた握り柄の
先端部に固着させたものとしてあるので、ブラシ体を構成する個々の繊維がブラシ体の塊から抜け出したり移動したりすることがない状態で、ガラスコップのような深さがあまり深くない短尺の容器や、飲料水等の冷蔵庫内収容用ポットのような、コップ類に比して深めの長尺容器類であっても、ブラシ体の握り柄を長短に変化させるだけで、容器の深さに相応しい長さのブラシ体として、深形容器の底面のみならず底面周辺の洗浄を、洗浄剤を使用することなく水だけで清潔に洗浄できるという顕著な効果を期待することができるに至ったのである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明にいうところの洗浄用ブラシは、握り柄1の形態を、折曲げ部12の近傍箇所に吊り下げ係止用穴13を備えたものとしておくと、使用時には柄を伸ばして長尺のブラシとして使用することができるものでありながら、非使用時には嵩を小さくして吊り下げておくことができる点で好ましい。
【0016】
前記繊維固定手段は、ミシンを用いた縫い糸による縫製手段とすることが生産効率の点と常温下で作業できる点で好ましい手段であるが、後述するように、例えば外周面に歯車状の突出部を備えた円盤体を回転させて鎖線状に加圧加熱させることによって繊維同士を熱融着させる手段を採用した場合には、繊維どうしの相対移動を確実に阻止させることができるという点で好ましい。
【0017】
また、多数の単繊維を引き揃えて撚り加工を施した紐状体の太さは、外圧を加えない状態で、例えば2〜10mm程度のものとしておくこと、殊に4〜6mm程度の太さのものとしておくと、単繊維の抜け防止を効率よく行うことができる点で好ましい。
【実施例】
【0018】
以下本発明の実施例について図面に基づいて説明する。図中、図1乃至図6は、本発明の洗浄用ブラシの実施例を示す図であって、図1は短尺状態を示す斜視図、図2は長尺状態を示す斜視図、図3は屈折途中の状態を示す斜視図、図4は柄を分解した状態を示す平面図、図5は同底面図、図6は非使用状態を示す斜視図である。
【0019】
図1は、本発明にいうところの洗浄用ブラシの握り柄1を折り畳んだ短縮姿勢を、図2は、握り柄1を直線状とした伸張姿勢をそれぞれ示してある。該握り柄1は、伸張姿勢とした場合の略中間部で前後に2分割された先端側部材1Aと後端側部材1Bとからなっていて、何れもポリプロピレン樹脂(PP)を周知の射出成形手段によって射出形成したもので、両者は折り曲げ部12において接続ピン13を介して折り畳み自在に軸連結されている。図3は、この折り曲げ姿勢と伸張姿勢との切替時の途中状態を示している。先端側部材1Aの先端部11には、後述するブラシ体2を連結固着してある。
【0020】
而して、折り曲げ姿勢とした状態では、図1に示したように、例えばガラスコップ6Aのような深さがあまり深くない短尺の容器を洗浄するのに適しており、伸張姿勢とした状態では、図2に示したように、例えば飲料水等を入れて冷蔵庫で冷やしておくのに使用されている冷蔵庫内収容用ポット6Bやビールジョッキーのような、コップ類に比して深めの長尺容器類の洗浄に適したブラシ体として使用することができるようにしたものであって、ブラシ体の握り柄1を長短に変化させるだけで、容器の深さに相応しい長さのブラシ体として使用することができるようにしたものである。
【0021】
これら握り柄1を構成する先端側部材1Aには、図5に示したように、連結部12側の背面側に幅方向に沿った一本のリブ16を突出形成してあり、後端側部材1Bには、図4に示したように、連結部12側の表面側に幅方向に沿った二本のリブ17を突出形成してあり、両部材1A,1Bを伸張姿勢としたとき、先端側部材1Aに形成してあるリブ16が、後端側部材1Bに形成してある二本のリブ17間に形成された谷間に嵌り込んで伸張姿勢を維持するようにしてある。この伸張姿勢の維持手段としては、何れが二本リブであってもよいことは言うまでもなく、他の手段として、例えば、先端側部材1Aに形成したフック係止用貫通穴14に対して、その対応箇所に突出させた突起18を契合させることによっても構成することができ、その他の周知手段を講じてもよい。
【0022】
このようにしたブラシを使用しない場合には、図6に示したように、握り柄1を折り畳んで短縮姿勢に変化させた状態として、先端側部材1Aに形成した前記のフック係止用貫通穴14を利用して係止用フック7に係止させておくことができるようにしてある。なお図中において符号15で示した部分は、滑り止めとデザインとを兼ねた小凹部である。
【0023】
而して、先端側部材1Aの先端部11には、図13に示したように、ブラシ体2の結束体3としてのバンドを挿通させて固着するための開口部19を形成してある。
【0024】
次に、ブラシ体2の構造についての第1実施例を詳細に説明する。該ブラシ体2は、無数の細繊維を密集させて塊状としたものであって、その構成繊維は、ポリエステル樹脂を樹脂繊維押出しダイに形成した特殊形状のオリフィスから押し出したモノフィラメントであって、図13に拡大して示したように、断面形状を先鋭な頂点をもつ略正三角形状としたモノフィラメントに延伸加工を施して太さ30〜40デニールとしたモノフィラメント21を用いて、図7のように、捲縮加工を施して得た単繊維22を、図8のように、多数本引き揃えて、これに緩い撚りを掛けることによって、非圧縮状態での太さを4〜6mm程度とした紐状体23を形成する。
【0025】
このようにして形成した紐状体23を、図9のように、例えば長さ80mmに切り揃えて多数本並列配置することによって、幅方向wの長さを約80mmとした紐列を形成し、その幅方向wの略中間部分cを、繊維固定手段24として、図のように、少許の間隔を隔てて2列にミシン掛け縫製することにより、この段階で、各紐状体23を形成している単繊維22の抜け出しや個別移動を阻止する手段を講じておく。また、この縫製部分の終端部分24aを加熱溶融して終端部の紐状体23が崩れるの防止してある。
【0026】
このようにして形成した紐状体並列体25を、図10のように、一端側から順次簀巻き状に巻き込んで、図11のように、全体を渦巻き状として一塊のブラシ体2を形成する。
【0027】
続いて、このように渦巻き状に巻いて一塊としたブラシ体2を、その幅方向wの中間部分cを、図12に示したように、中間部分3aをCリング状とし、その解放両端を外径方向に向けて突出させた脚部3b,3bと、その先端部を更に横外側に折り曲げた外方突出部3c,3cとを備え、平面視概形をΩ形とした結束体3によって圧縮挟持させて、図13に示した矢印aに従って結束体3の脚部3b,3bを握り柄1の先端部11に形成してある開口部13に圧入し、その外方突出部3c,3cを握り柄1の係止穴14に係止させる。この結束体3もナイロン樹脂(商標名=ポリアミド系合成高分子)を用いて射出成形したものである。このようにして、図1に示した本発明の第1実施例にいうところの洗浄用ブラシを得る。
【0028】
このようにして形成した該第1実施例にいうところの洗浄用ブラシは、ブラシ体2を構成する個々の単繊維22の断面形状を先鋭な頂点をもつ略正三角形状としたものであるから、図14に示したように、湯あかや水あかのような汚れや、食器類の油汚れを個々の単繊維22の先鋭な頂点で擦り取ることができる。一旦擦り取った汚れは繊維間に抱き込んだ水の中に漂わせて抱え込ませておくことができるので、再び清掃面に向けて擦り付けることがないので、洗浄剤を使用することなく水だけで効率よく汚れを落とすことができるのである。
【0029】
図15乃至図19は、第2実施例を示したものである。而して、図15は、断面形状を四方に突出する突条部40、40…を備えた略四角形状に形成した延伸モノフィラメント41の断面形状を拡大して示したものである。
【0030】
このような断面形状を略四角形状とした延伸モノフィラメント41を、前記第1実施例のように、捲縮加工を施して捲縮させた単繊維42を、図16のように、多数本引き揃えて撚り加工を施すことによって、撚りを備えた紐状体43を形成する。
【0031】
図17は、この紐状体43を、前記第1実施例のように、所定長さに揃えて多数本並列配置させ、各単繊維42の個別移動を阻止する繊維固定手段24として、その幅方向wの略中間部分cの上下に溶融可能な樹脂製の細幅フィルムか編組テープ51,51を当てがい、図18に示したように、外周面を歯車状に凹凸させた上下2枚の加圧加熱回転体52,52の間に通して、これらのフィルム又はテープ51,51上を挟み込ませるようにして、これらのフィルム又はテープ51,51とともに、これらのテープ間に挟み込ませた紐状体43を鎖線状に溶融させて融着53させる。このようにすることによって、紐状体43を形成する単繊維42の抜け移動を阻止するようにしたものである。これ以降のブラシ体2の形成手段については、前記第1実施例の説明に準ずる。ここにいうところのフィルム又はテープ51は上下に使用する必要はなく、片面だけに使用してもよい。
【0032】
このようにして形成されたブラシ体2にあっても、図19に示したように、ブラシ体2を構成する個々の単繊維42の先鋭な頂点40,40…で、湯あかや水あかのような汚れや、食器類の油汚れを擦り取ることができるので、前記第1実施例において示したブラシ体の場合と同様に、洗浄剤を使用することなく水だけで効率よく汚れを落とすことができる。
【0033】
以上に説明したモノフィラメントの形成素材は、ポリエチレンテレフタレート繊維に代表されるポリエステル繊維とすることが、水洗による清浄効果が著しい点で好ましい。また、モノフィラメントの太さにあっても、前記実施例において示した30〜40デニールのものに限られるものではなく、例えば20〜100デニールの範囲内の繊維であれば、洗浄効率のよい繊維として使用することができる。
【0034】
前記繊維固定手段は、ミシンを用いた縫い糸による縫製手段とすることが生産効率の点で好ましいが、後述するように、例えば外周面に歯車状の突出部を備えた円盤体を回転させて鎖線状や×線状に加圧加熱させて熱融着させる手段を採用しても、効率よく単繊維の抜け防止を講じることができる。
【0035】
前記紐状体の非圧縮状態での太さは、前記実施例において示した4〜6mm程度のものに限られるものではなく、例えば2〜10mm程度のものとしても、単繊維の抜け防止を効率よく行うことができる。
【0036】
また、結束体の形成素材は、ナイロン素材に限られるものではなく、適宜の靱性と弾性とを備えた樹脂素材であれば特に限定されるものではなく、針金のような線材とか、金属帯材のような金属素材を用いてもよい。
【0037】
更に、握り柄の形成素材にあっては、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン系合成樹脂に限られるものではなく、その他の合成樹脂素材を用いることができ、合成樹脂素材の射出成形品とすることが任意の形状にし易い点と清潔感が得られる点で好ましいが、木材や竹のような天然素材を用いて形成することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上のように、本発明にいうところの洗浄用ブラシは、従来のように洗浄の都度、洗浄剤を使用することなく、固形化した強固な汚れの場合を除き、水だけの洗浄で汚れを落とすことができ、折り曲げ姿勢としてコップ等を洗浄し、伸張姿勢として深い筒形容器を洗浄することができるので、大いに社会に受け入れられて普及するものと思われる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明にかかる洗浄用ブラシの折り畳み状態を示す斜視図。
【図2】同ブラシの伸張状態を示す斜視図。
【図3】同ブラシの折り畳み途中状態を示す斜視図。
【図4】同ブラシの握り柄を分離した状態を示す平面図。
【図5】同背面図。
【図6】同ブラシの非使用状態を示す斜視図。
【図7】ブラシ体を構成する単繊維を示す側面図。
【図8】多数の単繊維を集めて撚り加工を施す前の紐状体を示す側面図。
【図9】紐状体の並列配置状態と繊維固定状態とを示す平面図(a)と側面図(b)。
【図10】紐状体並列体を一端側から簀巻き状に巻き込む途中状態を示す平面図(a)と側面図(b)。
【図11】簀巻き状に巻き終わった状態を示す平面図(a)と側面図(b)。
【図12】ブラシ体を結束して握り柄に固着させるための結束体を示す斜視図。
【図13】ブラシ体を結束体で結束した状態と握り柄への固着手段を示す斜視図。
【図14】ブラシ体による洗浄例を拡大して示した模式図。
【図15】他の実施例を示すモノフィラメントの拡大断面図。
【図16】多数の単繊維を集めて撚り加工を施す前の紐状体を示す側面図。
【図17】紐状体の並列配置状態と繊維固定状態とを示す平面図。
【図18】並列配置状態とした紐状体を繊維固定状態に加工する手段を示す側面図。
【図19】ブラシ体による洗浄例を拡大して示した模式図。
【符号の説明】
【0040】
1 握り柄
2 ブラシ体
3 結束体
4 ブラシ体
11 先端部
12 折曲げ部
21 延伸モノフィラメント
22 単繊維
23 紐状体
23a 切断紐状体列
24 繊維固定手段
25 紐状体並列体
41 延伸モノフィラメント
42 単繊維
43a 切断紐状体列
43 紐状体
45 紐状体並列体
c 幅方向中間部分
w 幅方向の長さ
F 折畳み姿勢
L 伸張姿勢
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面形状が略三角形状に形成された延伸モノフィラメント21に捲縮加工が施された多数本の単繊維22が引き揃えられて撚り加工を施された紐状体23が、所定長さに切断されて多数本並列配置され、
該切断紐状体列23aの幅方向長さwの略中間部分cに各単繊維22の個別移動を阻止する繊維固定手段24が施されて形成された紐状体並列体25が、
その一端側から簀巻き状に巻かれて一塊の柱状またはボール状に形成されたブラシ体2が、
その幅方向中間部分cの外周部が適宜の結束手段3によって緊締挟持された状態で、長手方向略中間部に折畳み姿勢Fと伸張姿勢Lとに変形可能な折曲げ部12を備えた握り柄1の先端部11に固着されている洗浄用ブラシ。
【請求項2】
断面形状が略四角形状に形成された延伸モノフィラメント41に捲縮加工が施された多数本の単繊維42が引き揃えられて撚り加工を施された紐状体43が、所定長さに切断されて多数本並列配置され、
該切断紐状体列43aの幅方向長さwの略中間部分cに各単繊維42の個別移動を阻止する繊維固定手段24が施されて形成された紐状体並列体45が、
その一端側から簀巻き状に巻かれて一塊の柱状またはボール状に形成されたブラシ体4が、
その幅方向中間部分cの外周部が適宜の結束手段3によって緊締挟持された状態で、長手方向略中間部に折畳み姿勢Fと伸張姿勢Lとに変形可能な折曲げ部12を備えた握り柄1の先端部11に固着されている洗浄用ブラシ。
【請求項3】
握り柄1が、折曲げ部12の近傍箇所に吊り下げ係止用穴13を備えたものである請求項1または2に記載の洗浄用ブラシ。
【請求項4】
繊維固定手段24が、縫い糸による縫製手段である請求項1乃至3の何れかに記載の洗浄用ブラシ。
【請求項5】
繊維固定手段24が、加熱圧縮融着手段である請求項1乃至3の何れかに記載の洗浄用ブラシ。
【請求項1】
断面形状が略三角形状に形成された延伸モノフィラメント21に捲縮加工が施された多数本の単繊維22が引き揃えられて撚り加工を施された紐状体23が、所定長さに切断されて多数本並列配置され、
該切断紐状体列23aの幅方向長さwの略中間部分cに各単繊維22の個別移動を阻止する繊維固定手段24が施されて形成された紐状体並列体25が、
その一端側から簀巻き状に巻かれて一塊の柱状またはボール状に形成されたブラシ体2が、
その幅方向中間部分cの外周部が適宜の結束手段3によって緊締挟持された状態で、長手方向略中間部に折畳み姿勢Fと伸張姿勢Lとに変形可能な折曲げ部12を備えた握り柄1の先端部11に固着されている洗浄用ブラシ。
【請求項2】
断面形状が略四角形状に形成された延伸モノフィラメント41に捲縮加工が施された多数本の単繊維42が引き揃えられて撚り加工を施された紐状体43が、所定長さに切断されて多数本並列配置され、
該切断紐状体列43aの幅方向長さwの略中間部分cに各単繊維42の個別移動を阻止する繊維固定手段24が施されて形成された紐状体並列体45が、
その一端側から簀巻き状に巻かれて一塊の柱状またはボール状に形成されたブラシ体4が、
その幅方向中間部分cの外周部が適宜の結束手段3によって緊締挟持された状態で、長手方向略中間部に折畳み姿勢Fと伸張姿勢Lとに変形可能な折曲げ部12を備えた握り柄1の先端部11に固着されている洗浄用ブラシ。
【請求項3】
握り柄1が、折曲げ部12の近傍箇所に吊り下げ係止用穴13を備えたものである請求項1または2に記載の洗浄用ブラシ。
【請求項4】
繊維固定手段24が、縫い糸による縫製手段である請求項1乃至3の何れかに記載の洗浄用ブラシ。
【請求項5】
繊維固定手段24が、加熱圧縮融着手段である請求項1乃至3の何れかに記載の洗浄用ブラシ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2007−222569(P2007−222569A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−50412(P2006−50412)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(596060594)株式会社サンコー (65)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(596060594)株式会社サンコー (65)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]