説明

洗浄用不織布クリーナー

【課題】水分なしで重量が軽く、カビ発生のリスクがなく、防カビ剤、抗菌剤が不要であり、清掃能力に優れる洗浄用不織布クリーナー。
【解決手段】所定の熱接着性繊維を有するセルロース系パルプのエアレイド法によるウェブ層、所定の熱接着性繊維を有するセルロース系パルプに粉末状の有機酸を1〜50重量%含有したエアレイド法によるウェブ層、さらに所定の熱接着性繊維を有するエアレイド法によるウェブ層を順次積層し、これらの熱接着性繊維の熱結合によって全体として一体シート化した、総目付が60〜1,500g/mの、洗浄用不織布クリーナー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄用不織布クリーナーに関し、さらに詳細には、洗浄剤として非界面活性剤である特定の有機酸を用いているので、人や地球環境に対して安全で、実用上十分な洗浄作用を有する洗浄用不織布クリーナーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、キッチン周り、風呂・トイレなどの床やフロア、タタミ、さらにはシンク・レンジ・グリル・トイレ機器・換気扇などを掃除するには、固形洗剤や液体洗剤を、水を含ませた掃除シート(ぞうきん、スポンジ、など)に付けて清掃することが多い。しかしながら、このような従来の掃除シートを用いる場合、1回ごとに洗剤を付けなければならないという欠点があった。
【0003】
例えば、特許文献1(特許第3556415号公報)には、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートなどのバインダーを含有する不織布または紙に、有機酸で酸性側pHに調整されたpH緩衝液を含浸させた清掃用の水解紙が提案されている。
しかしながら、このような水解紙は、ウエット状態なので、長期間保管していると、カビが発生することがあり、その対策として、防カビ剤、抗菌剤などが入っており、人に対してやさしいクリーナーとはいえない。
さらに、これらのウエット状商品には、洗浄用合成界面活性剤を入れているものも多く、人や環境にやさしくない。
さらに、これらのウエット状商品は、紙や不織布などの基材の約2倍の水分を含有しているので、重量が重く、輸送費が高くつき、また、包装も、漏れ防止・乾燥防止のために密封式が必要で高価なものとなる。
さらに、このウエット状の清掃用水解紙は、水解性であるので、やや不織布としての強力に劣り、レンジ周りなどの汚れがひどい部分には適用できない場合が多い。
【特許文献1】特許第3556415号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、キッチンシンク、レンジ、洗面台、風呂、トイレなどのアルカリ性汚れや石鹸カス汚れが多く存在する部分や、タタミ、フローリングの洗浄、払拭、掻取りの作用に優れ、従来のウエット状クリーナーと較べて、水分なしで重量が軽く、カビ発生のリスクがなく、防カビ剤、抗菌剤が不要であり、清掃能力に優れる洗浄用不織布クリーナーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(イ)(a)繊維長が3〜10mmで繊度が1〜50dtexの熱接着性繊維60〜100重量%と、(b)セルロース系パルプ40〜0重量%〔ただし、(a)+(b)=100重量%〕を主体とし、目付け10〜250g/mのエアレイド法によるウェブ層の上に、(ロ)(a)’繊度が1〜4.4dtexの熱接着性繊維を20〜95重量%と、(b)セルロース系パルプを0〜60重量%と、(c)水酸基を有し、融点が70℃以上の粉末状の有機酸を1〜50重量%〔ただし、(a)’+(b)+(c)=100重量%〕を主体とし、目付けが20〜1,000g/mのエアレイド法によるウェブ層を積層し、さらに(ロ)ウェブ層の上に、(ハ)(a)”繊維長が3〜10mmで繊度が4〜50dtexの熱接着性繊維を主体とする目付け10〜250g/mのエアレイド法によるウェブ層を積層し、これらの熱接着性繊維の熱結合によって全体として一体シート化した、総目付が60〜1,500g/mの、洗浄用不織布クリーナー関する。
また、本発明の洗浄用不織布クリーナーは、取り扱い性の向上や、強度補強の役割を果たすために、(ニ)通気性シートを、さらに片面または両面に積層一体化させることが好ましい。
上記(ニ)通気性シートとしては、乾式不織布、湿式不織布、紙、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、プラスチックネット、穴あきフィルム、スプリットヤーンクロス、織編み物、または寒冷紗が挙げられる。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、(a)熱接着性繊維と(c)粉末状の有機酸、さらに必要に応じて(b)セルロース系パルプを主体とする(ロ)ウェブ層を形成させるに際し、エアレイド法を採用しているので、気流中でこれらが絡み合って、さらに熱処理によって構造として一体化するので、形成される(ロ)ウェブ層からの(c)粉末状の有機酸の脱落が少なくなる。また、(ロ)ウェブ層中に(b)セルロース系パルプを併用することにより、水の保持性が向上し、洗浄作用が向上する。
また、あらかじめエアレイド法により(イ)ウェブ層を形成させ、この上に上記(ロ)ウェブ層を積層させることにより、仮に(c)粉末状の有機酸が生成した(ロ)ウェブ層から脱落しても、この(イ)ウェブ層に捕集されて、系外に脱落することもない。また、得られる不織布シートは、柔軟性に富み、洗浄作用に優れる。
また、上層として、さらに(ハ)ウェブ層を積層させることにより、本発明の不織布シートは、表裏ともに、(c)粉末状の有機の脱落がない。
さらに、上層となる(ハ)ウェブ層の繊度を選定することにより、例えば、粗で硬めの汚れが多い場合は太い繊維、微細な、あるいはヌメリ状の汚れが多い場合は細い繊維、を適宜選択することにより、用途別の洗浄用不織布シートを得ることができる。
さらに、〔(ハ)ウェブ層〕/(ロ)ウェブ層/(イ)ウェブ層〕からなる不織布シートの片面または両面に、(ニ)通気性シートを積層一体化することにより、得られる洗浄用不織布クリーナーの取り扱い性が向上し、さらに強度も補強される。
また、本発明の洗浄用不織布クリーナーは、加熱処理により、一体化されているので、層間剥離や(c)粉末状の有機酸の脱落を抑えることができる。
以上の本発明の洗浄用不織布クリーナーは、ドライ状で、水分なしなので、重量が軽く、流通・保管にコストがかからず、また、カビ発生のリスクがないので、防カビ剤・抗菌剤の添加が不要である。また、クエン酸などの有機酸を清掃剤として含有し、界面活性剤を含有していないので、人体や環境にやさしく、安全である。さらに、本発明のクリーナーを実際に使用する場合において、有機酸は水に溶解し、家庭内の器具、機器類の表面にこびりついた汚れ(風呂、洗面台などの石鹸カスや油脂状カス、水アカ(主に炭酸カルシウム類の硬い白色結晶)、トイレの排泄物のカス(主にリン酸カルシウム類からなる比較的硬い褐色結晶)、キッチンシンクなどの食品カスなど)に対して、浸透・剥離・溶解の作用、還元作用(錆び取り)、アルカリ性汚れの中和作用として働くばかりか、抗菌や、アルカリ性悪臭の消臭効果も期待できる。
さらに、本発明の洗浄用不織布クリーナーは、用いられる熱接着性繊維の熱結合によって一体化されているので、乾・湿における強度が大きく、上記のような汚れのひどい箇所にも使用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(イ)ウェブ層(基材シート):
本発明に用いられる(イ)ウェブ層は、(a)繊維長が3〜10mmで繊度が1〜50dtexの熱接着性繊維を60〜100重量%と、(b)セルロース系パルプを40〜0重量%〔ただし、(a)+(b)=100重量%〕を主体とし、目付け10〜250g/mのエアレイド法による不織布から構成される。なお、この(イ)ウェブ層は、あらかじめ熱処理により繊維間結合されていてもよいが、通常、本発明の洗浄用不織布クリーナー製造工程の最終段階で、上記(イ)ウェブ層、(ロ)ウェブおよび(ハ)ウェブ層とともに熱処理されて繊維間結合される。
【0008】
(イ)ウェブ層をエアレイド法で作製するには、多孔質ネットコンベアー上に位置する単台または多数台の噴き出し部から、(a)熱接着性繊維単独、あるいはこれと必要に応じて(b)セルロース系パルプとの混合物を噴出し、ネットコンベアー下面に配置した空気サクション部で吸引しながらネットコンベアー上にウェブ層を形成する。
【0009】
(イ)ウェブ層に用いられる(a)熱接着性繊維としては、熱接着性複合繊維が好適である。例えば、低融点成分を鞘成分とし、高融点成分を芯成分とする芯鞘型、一方が低融点、他方が高融点成分であるサイドバイサイド型などが挙げられる。これらの複合繊維の両方の成分の組み合わせとしては、PP〔ポリプロピレン〕/PE(ポリエチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)/PE、PP/低融点共重合PP、PET/低融点共重合ポリエステルなどが挙げられる。ここで、上記低融点共重合ポリエステルの例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどを基本骨格として、イソフタル酸、5−金属スルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、セバチン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールなどの脂肪族多価アルコールなどとの変性共重合などが挙げられる。
【0010】
低融点成分である熱接着成分の融点は、通常、110〜160℃、好ましくは120〜155℃である。110℃未満の場合、不織布としての耐熱性が低いので、台所周り、特にレンジ、グリルなどの比較的高温度である場合の掃除に際して実用性に欠ける。一方、160℃を超えると、不織布製造工程における熱処理温度を高くする必要が生じ、生産性が落ち、実用的でないばかりか、(ロ)ウェブ層、(ハ)ウェブ層との加熱一体化における接着効果も期待できなくなる。
【0011】
ここで、(a)熱接着性繊維の繊維長は、(イ)ウェブ層の製法がエアレイド法であるので、3〜10mm、好ましくは3〜6mmである。繊維長が3mm未満の場合は、強度アップなどの効果が十分で無く、一方、10mmを超えると、繊維どうしが絡まり易くなり、工程性や地合いの悪化につながりやすい。
また、(a)熱接着性繊維の繊度は、1〜50dtex、好ましくは1.5〜40dtexである。1dtex未満の場合は、エアレイド法でウェブを形成するにあたり、細い繊維どうしが絡まり易くなり、他の繊維との混合も難しくなって、地合いの不均一性や塊状欠点発生のリスクが大になるばかりか、(ロ)ウェブ層からの(c)粉末状の有機酸の溶出に時間が掛かり過ぎて、実用性に欠ける。太い繊維の場合は洗浄・汚れ掻取り作用が増す一方、50dtexを超えた太い繊維の場合は、同一混合率でも繊維本数がダウンする結果となるので、上記(c)粉末状の有機酸の脱落防止、強度付与、ヒートシール性付与などの効果が薄れる。
【0012】
(a)熱接着性繊維は捲縮していても、していなくてもよく、またストランドチョップであってもよい。捲縮している場合、ジグザグ型の二次元捲縮繊維およびスパイラル型やオーム型などの三次元(立体)捲縮繊維の何れも使用できる。
【0013】
(イ)ウェブ層中における(a)熱接着性繊維の割合は、(a)〜(b)成分中に、60〜100重量%、好ましくは75〜100重量%である。(a)熱接着性繊維の割合が60重量%未満では、表面からの繊維脱落やリントの発生を防げない。
【0014】
また、(イ)ウェブ層に用いられる(b)セルロース系パルプは、洗浄時に水を保持する役割を担う。
(b)セルロース系パルプとしては、木材パルプ以外に、リンターパルプ、バガスなどの非木材系パルプなどを粉砕したものが挙げられる。
【0015】
(イ)ウェブ層の(b)セルロース系パルプは、(a)〜(b)成分中に、40重量%以下である必要がある。好ましくは、0〜25重量%である。水に濡らして使う実使用において、(b)セルロース系パルプは、速やかにクリーナー内部まで水分を導き、かつ保水する機能によって洗浄用クリーナーの素材として有用であるが、40重量%を超えると紙粉状脱落、リント発生のリスクが増大する。ただし、0であっても、実使用において内部にまで充分水分を浸すような使い方をすれば良い。
【0016】
なお、(イ)ウェブ層には、これらの(a)熱接着性繊維、(b)セルロース系パルプ以外の繊維として、例えばPP繊維、PET繊維、PBT繊維、ナイロン6繊維、ナイロン6,6繊維、芳香族ポリアミド繊維、アクリル繊維、合成パルプ(例えば、三井化学(株)製SWPのような、PEやPPを素材とする多分岐フィブリル状繊維)、麻、レーヨン、ビスコース繊維、コットンなどを本発明の趣旨、効果を阻害しない範囲で混合しておいても良い。この場合、他の繊維の比率は10重量%以下に留めるのが好ましい。10重量%を超えると、不織布強力やヒートシール性に影響が出るばかりか、熱接着性のない繊維は実使用中に脱落し易くなる。
【0017】
(イ)ウェブ層の目付は、10〜250g/m、好ましくは20〜150g/mである。10g/m未満の場合は、(ロ)ウェブ層に存在する(c)粉末状の有機酸が(イ)ウェブ層で捕捉されずに脱落したり、不織布強力も低くなるので実使用で破壊などのトラブルを引き起こし易い。一方、250g/mを超えると、エアレイド法の基材シートとして必要な十分な通気性を確保できなくなる傾向が生じるばかりか、(ロ)ウェブ層からの(c)粉末状の有機酸の溶出に時間が掛かり過ぎて、実用性に欠ける。
【0018】
なお、基材シートとなる(イ)ウェブ層は、(ロ)ウェブ層との積層に際し、同時に作成してもよいし、またはあらかじめエアレイド法で作製し、熱処理しておいても良い。
【0019】
(ロ)ウェブ層の形成と積層一体化:
次に、エアレイド法で、(a)’熱接着性繊維、および(c)粉末状の有機酸、さらに必要に応じて(b)セルロース系パルプを含む(ロ)ウェブ層を形成する。すなわち、多孔質ネットコンベアー上に位置する単台または多数台の噴き出し部から、上記(a)’および(c)成分、さらに必要に応じて(b)成分を含む混合物を噴出し、ネットコンベアー下面に配置した空気サクション部で吸引しながらネットコンベアー上に(ロ)ウェブ層を形成するものである。このとき、ネットコンベア上には、基材シートとなる(イ)ウェブ層をあらかじめ載置しておけば、一挙に(イ)ウェブ層と(ロ)ウェブ層との積層体が得られる。その後、積層体に熱風処理を加えて、エアレイド層の繊維間結合、および基材シートとの熱接着を形成して不織布シートとして一体化させる。
この際、(ロ)ウェブ層には、熱接着性繊維を併せて混合してあるので、粉末の固定・脱落防止、層間剥離強力の向上、などの効果が期待できる。
【0020】
(a)’熱接着性繊維としては、(イ)ウェブ層に用いられる(a)熱接着性繊維と同様な繊維が好適に使用できる。なかでも、熱接着性複合繊維が特に好適である。(a)’熱接着性繊維の繊度は、1〜4.4dtex、好ましくは1.5〜3.3dtexである。1dtex未満では、エアレイド法でウェブを形成するにあたり、細い繊維どうしが絡まり易くなり、他の繊維との混合も難しくなって、地合いの不均一性や塊状欠点発生のリスクが大になる。一方、4.4dtexを超えると、同一混合率でも繊維本数がダウンする結果となるので、粉末状の有機酸の捕捉、脱落防止、強度付与、ヒートシール性付与などの効果が薄れる。なお、(a)’熱接着性繊維の繊維長は、(イ)ウェブ層に用いられる(a)熱接着性繊維の繊維長と同様である。
(a)’熱接着性繊維の(ロ)ウェブ層中における混合率は、20〜95重量%、好ましくは20〜80重量%である。20重量%未満では、粉末状の有機酸の捕捉、固定、脱落防止の効果が確保できなくなる。一方、95重量%を超えると、熱処理後のシートの柔軟性が失われてくるばかりか、粉末状の有機酸の周囲を多くの熱接着性繊維で覆う状態となり、洗浄効果に悪影響を及ぼす。
【0021】
また、(ロ)ウェブ層に用いられる(b)セルロース系パルプは、(c)粉末状の有機酸を把持するとともに、洗浄時に水を保持する役割を担う。
(b)セルロース系パルプとしては、(イ)ウェブ層に用いられるものと同様で、木材パルプ以外に、リンターパルプ、バガスなどの非木材系パルプなどを粉砕したものが挙げられる。
(b)セルロース系パルプの(ロ)ウェブ層中における混合率は、0〜60重量%、好ましくは5〜40重量%である。60重量%を超えると、(ロ)ウェブ層としての引張り強力や層間剥離強力、特に湿潤時のこれらの強力が低下するので好ましくない。
【0022】
さらに、(ロ)ウェブ層に用いられる(c)粉末状の有機酸は、家庭内の汚れ(風呂、洗面台などの石鹸カスや油脂状カス、水アカ(主に炭酸カルシウム類の硬い白色結晶)、トイレの排泄物のカス(主にリン酸カルシウム類からなる比較的硬い褐色結晶)、キッチンシンクなどの食品カスなど)に対する、浸透・剥離・溶解の作用、還元作用(錆び取り)、アルカリ性汚れの中和作用、抗菌作用、消臭作用として働く成分である。
(c)有機酸は、水酸基を有し、その融点が70℃以上のヒドロキシ酸である。(c)有機酸は、分子中に水酸基を有することによって、水への溶解性に優れ、得られるクリーナーを水に濡らして使用する際に必須事項となる。また、(c)有機酸の融点は、70℃以上が必要であり、70℃未満の場合には、輸送・保管中に融解して溶け出したり、浸出するトラブルが生ずる場合があり好ましくない。
(c)有機酸の具体例としては、二塩基酸として、リンゴ酸(融点=99℃)、酒石酸(融点=170℃)、三塩基酸として、クエン酸(結晶水タイプの融解温度=約100℃、無水タイプの融点=153℃)、そのほかグルコノラクトン、さらにこれらの塩類などが挙げられる。
(c)有機酸の平均粒径は、0.1〜2mm、好ましくは0.2〜1.5mmである。0.1mm未満では、表裏層である(イ)ウェブ層や(ハ)のウェブ層の隙間を通して脱落し易くなり、一方2mmを超えると、得られるクリーナーの断裁端部(カット面)から輸送・保管中に脱落し易くなる。
(c)有機酸の(ロ)ウェブ層中における混合率は、1〜50重量%、好ましくは2〜40重量%である。1重量%未満では、洗浄効果が乏しい。一方、50重量%を超えると、(ロ)ウェブ層としての強力を確保するのが困難となるばかりか、製造・保管・輸送時における粉末の脱落も多くなって実用性に欠ける。
【0023】
なお、(c)粉末状の有機酸とともに、研磨剤としての無機粒子、例えばアルミナ、シリカ、グラファイト、ゼオライト、二酸化チタン、カオリン、クレイ、炭化珪素、珪藻土、炭酸カルシウム、燐酸カルシウム、酸化アルミニウムなどを混合して使用することもできる。ただし、研磨剤は、対象物を傷つけたりする可能性があるので、混入量は単位面積あたりの量を少量にとどめる必要がある。
【0024】
また、本発明の洗浄用不織布クリーナーは、台所の調理用グリルの受け皿に水とともに入れて置くことによって、調理後の内部掃除が容易になり、かつ臭い軽減効果もあることが分かっている。これは、魚などからドリップした油、肉汁などの吸収効果のみならず、水に溶け出した本発明の有機酸の中和作用によるものと考えられる。
【0025】
なお、本発明の(ロ)ウェブ層には、パルプとして、上記の(b)セルロース系パルプとともに、(d)ポリオレフィン系合成パルプを併用してもよい。
ここで、(d)ポリオレフィン系合成パルプは、例えば、高温、高圧状態にあるポリオレフィン、水の沸点よりも低い沸点を有する脂肪族炭化水素および/または芳香族炭化水素から選ばれるポリマー用溶媒、および水よりなる分散液であって、減圧領域中に急速に放出したときに、実質的にすべての溶媒が蒸発し、かつ水の実質的蒸発を起こさない温度にある分散液を、ノズルを通して減圧領域中に放出して、ポリオレフィンを水中に分散した繊維状物質として回収し、この水中に分散した繊維状物質を、界面活性剤を混合した状態で叩解またはリファイニングすることによって得られる。このポリオレフィン系合成パルプの製造方法は、例えば、特公昭52−47049号公報の第1欄の特許請求の範囲、第3欄第5行〜第19欄第25行に詳述されているが、本発明の趣旨、すなわち吸湿性粉体の捕捉作用を有するフィブリル状繊維からなるポリオレフィン系合成パルプの製法であれば、必ずしもこれらにこだわるものでは無い。
ポリオレフィン系合成パルプは、平均繊維長が0.5〜3mm、平均繊維径が1〜100μmのものが好適に使用できる。
また、このポリオレフィン系合成パルプの市販品としては、三井化学(株)製のSWP E790,E400,EST−8,E620,UL410,NL490,AU690,Y600,ESS−5,ESS−2,E380,E780,E90,UL415などが挙げられる。
【0026】
これらの(d)ポリオレフィン系合成パルプは、多分岐繊維構造(フィブリル化して、多分岐、高比表面積を有する)なので、(c)粉末状の有機酸の捕捉性に優れる特徴を有する。また、エアレイド法により上記基材シートに吹き付けると、気流中で(e)ポリオレフィン系合成パルプと(c)粉末状有機酸とが一体となったウェブ層が、該シート上に均一に載置されることになる。
【0027】
(ロ)ウェブ層を形成する(d)ポリオレフィン系合成パルプと(c)粉末状有機酸との混合比(重量比)は、1/0.2〜1/2、好ましくは1/0.25〜1/1.8である。(e)ポリオレフィン系合成パルプが少なすぎると、粉末状の有機酸の捕捉機能が充分でなくなり、粉末が脱落しやすくなる。一方、粉末状の有機酸が少なすぎると、得られる不織布シートの洗浄効果が乏しく、本発明の意図するものでなくなる。
【0028】
また、(ロ)ウェブ層には、これらの構成成分以外に、熱接着性繊維以外の繊維として、例えばPP繊維、PET繊維、PBT繊維、ナイロン6繊維、ナイロン6,6繊維、芳香族ポリアミド繊維、アクリル繊維、麻、レーヨン、ビスコース繊維、コットン繊維などを本発明の趣旨、効果を阻害しない範囲で混合しておいても良い。この場合、他の繊維の比率は30重量%未満に留めるのが好ましい。30重量%以上であると、不織布強力やヒートシール性に影響が出るばかりか、熱接着性のない繊維は実使用中に脱落し易くなる。
【0029】
エアレイド法で形成する(ロ)ウェブ層は、目付が20〜1,000g/m、好ましくは40〜750g/mである。20g/m未満の場合、洗浄効果が乏しく、また不織布強力、ヒートシール強力が低くなり、実用に適さない。一方、1,000g/mを超えると、厚過ぎて柔軟性が乏しくなり、またエアレイド法で均一なウェブを形成するのが困難となり好ましくない。
【0030】
本発明のウェブ層を作製するエアレイド法は、カード法などの既存の乾式不織布製造法に較べて、空気流によって容易に単繊維に解繊され易い、長さの短い繊維が使用できるので、極めて地合いの良好な、つまり均一性の良好な不織布が得られるという特徴を有するばかりか、粉体を混合しつつ一挙にウェブを形成することが可能であり、本発明に好適である。洗浄用シートの用途において、粉末漏れが少なく、かつ洗浄効果が大きいという性能に、均一性は重要な要件であり、既存のカード法不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布では得られ難い。また、本製造法によれば、タテ/ヨコの強力比率がほぼ1/1に近いというメリットも有する。
【0031】
(ハ)ウェブ層(表面層シート):
本発明の洗浄用不織布クリーナーは、上記(ロ)ウェブ層に存在する(c)粉末状の有機酸の脱落を一層防止し、また表面耐磨耗性などの機能を強化するために、この(ロ)ウェブ層の上に、さらに、(ハ)(a)”繊維長が3〜10mm、繊度が4〜50dtexの熱接着性繊維を主体とする目付け10〜250g/mのエアレイド法によるウェブ層を積層する。表面層となる(ハ)ウェブ層は、汚れの洗浄、払拭、掻取りの作用を担う。
(ハ)ウェブ層を構成する(a)”熱接着性繊維としては、(イ)ウェブ層や(ロ)ウェブ層に用いられる(a)熱接着性繊維や(a)’熱接着性繊維と同様の繊維が好適に使用できる。なかでも、熱接着性複合繊維が特に好適である。(a)”熱接着性繊維の繊度は、4〜50dtex、好ましくは5〜40dtexである。4dtex未満では、汚れの洗浄、払拭、掻取りの作用が小さくなり、一方、50dtexを超えると、同一目付でも繊維本数がダウンする結果となるので、(ロ)ウェブ層の粉末状の有機酸の脱落防止、シート強度付与、ヒートシール性付与などの効果が薄れる。
【0032】
(ハ)ウェブ層には、(a)”熱接着性繊維以外の繊維として、例えばPP繊維、PET繊維、PBT繊維、ナイロン6繊維、ナイロン6,6繊維、芳香族ポリアミド繊維、アクリル繊維、麻、レーヨン、ビスコース繊維、コットン繊維などを本発明の趣旨、効果を阻害しない範囲で混合しておいても良い。表面の親水性を上げて掃除作用をスムースにするためには、木材パルプ、リンターパルプ、レーヨン、ビスコース繊維、コットン繊維などの親水性繊維が好適である。他の繊維の比率は10重量%未満に留めるのが好ましい。10重量%以上であると、不織布強力やヒートシール性に影響が出るばかりか、熱接着性のない繊維は実使用中に脱落し易くなる。
【0033】
以上の(ハ)/(ロ)/(イ)からなる本発明の不織布シートの総目付けは、60〜1,500g/m、好ましくは60〜1000g/mである。40g/m未満では、洗浄効果に乏しく、また強力が低くて実用に耐えにくい。一方、1,500g/mを超えるような高目付けの場合、洗浄効果が比例的に増大することも少なくなり、かつ生産コストはアップするので商品性に欠ける。
【0034】
なお、(a)、(a)’、(a)”の各熱接着性繊維は、各種の添加物を含有、または表面処理していても良い。例えば、芳香剤、着色剤、抗菌剤、消臭剤、防黴剤、親水化剤、などが挙げられる。
これらの添加物、表面処理剤は、(イ)、(ロ)、(ハ)の各ウェブ層に含有、または処理されていても良い。
【0035】
(ニ)通気性シート:
本発明の不織布シート(不織布クリーナー)は、本発明の意図を損なわない限り、他のシートと一体化してもよい。例えば、通気性シートと一体化するのであれば、本発明の不織布シートをエアレイド法で作るにあたり、通気性シートをネットコンベア上に置いておき、この上に繊維を堆積させていくことで、容易に複合シート化することができる。
例えば、(ニ)通気性シートをネットコンベア上に載置し、(イ)ウェブ層/(ロ)ウェブ層/(ハ)ウェブ層の順で、ウェブを形成させていってもよい。
また、一体化するシートとしては、一般に知られている乾式不織布、湿式不織布、紙、スパンボンド、メルトブロー、プラスチックネット、穴あきフィルム、スプリットヤーンクロス、目の粗い織編み物、寒冷紗などが挙げられるが、熱接着性で、かつ耐水性のある材料で構成されているシートが好ましく、かつ通気性は大きい方が好ましい。エアレイド法は、通気性材料の上部から繊維と空気の混合体を噴出させ、下部からサクションで空気を引きつつ、通気性材料上に繊維層を形成する方法なので、基材となる基材シートの通気度は重要な要件となる。JIS L1096・A法(ガーレ法)による通気度は、好ましくは0.5〜2秒/300ccである。
(ニ)通気性シートの目付けは、通常、10〜200g/m、好ましくは10〜100g/mである。
なお、(ニ)通気性シートが不織布の場合、この不織布を構成する繊維の繊度は、通常、1〜11dtex、好ましくは1.5〜6.6dtexである。
(ニ)通気性シートを本発明の不織布シートの片面または両面に積層することにより、取り扱い性が向上し、また、得られる不織布シートの強度を補強することができる。
【0036】
熱処理:
本発明の洗浄用不織布クリーナーは、以上のようにして得られる不織布積層体を熱処理することが好ましい。熱処理としては、熱風処理、および熱風処理後の低圧による熱圧処理が挙げられる。
このうち、繊維間結合を形成するための熱風処理としては、熱接着性繊維として熱接着性複合繊維を用いる場合、該複合繊維の低融点成分の融点以上の温度が必要である。しかしながら、低融点成分の融点よりも30℃以上高い場合、あるいは高融点成分(芯鞘型複合繊維の芯成分、あるいはサイドバイサイド型複合繊維の高融点成分)の融点以上の場合は、繊維の熱収縮が大きくなり易く、地合いの悪化を招いたり、はなはだしい場合は繊維の劣化を生じるので好ましくない。
熱風処理温度は、通常、110〜190℃、好ましくは120〜175℃である。
【0037】
また、熱風処理したのち低圧下での熱圧処理、具体的には低圧の熱圧カレンダー処理を加えても良い。カレンダー処理に用いるローラーとしては、全体に均一な熱圧を加えるため、平滑表面の一対の金属ローラー、または金属ローラーと弾性ローラーの組み合わせを用いることが好ましいが、多段ローラーであっても良い。また、本発明の趣旨を損なわない範囲であれば、凸凹表面のエンボスローラーであっても良い。
【0038】
カレンダー処理の場合、単に厚さ調整のためであれば常温(非加熱)〜高温度の任意の温度で加圧すれば良い。圧力は希望する厚さになるよう適宜選択することができる。熱圧カレンダーにより繊維間の熱結合を補強し、強度、表面耐摩耗性、層間剥離防止などを向上するためであれば、ローラー表面の温度は、熱接着性複合繊維の低融点成分の融点以上の温度が必要である。しかしながら、低融点成分の融点よりも30℃以上高い場合、あるいは高融点成分(芯鞘型複合繊維の芯成分、あるいはサイドバイサイド型複合繊維の高融点成分)の融点以上の場合は、繊維の熱収縮が大きくなり易いばかりか、ローラー表面への粘着が発生し、工程性に欠ける。融点未満の場合は、当然のことながら繊維間結合の補強が充分でなくなる。
繊維間結合を補強する場合の熱処理温度は、通常、110〜190℃、好ましくは120〜175℃である。
【0039】
また、カレンダー処理の線圧は、幅方向で均一な接圧になるよう設定すれば、任意の圧力を選択することができる。高圧の場合は密度・不織布強力・層間強力がアップし、厚さがダウンする。低圧の場合は勿論これに反する影響が出る。不織布強力を重視するのであれば極力高圧のほうが好ましい。柔軟性を重視するのであれば低圧の方が好ましい。カレンダー処理の線圧は、通常、5〜50kgf/cmの範囲で任意に選択できる。また、一対のローラー間に任意の隙間を設けても良い。表面層である(ハ)ウェブ層に接するローラーの温度が高い場合、または、ローラー間の圧力が高圧の場合は、表面状態が平滑化してしまうので、本発明の狙いである洗浄、払拭、掻取りの作用が悪化し、好ましくない。
【0040】
なお、得られる本発明の洗浄用不織布クリーナーの厚さは、通常、0.3〜30mm、好ましくは0.5〜20mmであるが、ウェブ層の目付け(60〜1,500g/m)に応じ、かつ用途に応じて設定することができる。
また、本発明の洗浄用不織布クリーナーの通気性シートを加えた総目付けは、通常、70〜1,800g/m、好ましくは70〜1,500g/mである。
【実施例】
【0041】
以下、実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0042】
実施例1
(イ)ウェブ層(基材シート)として、PET/PE系熱接着性芯鞘型複合繊維(帝人ファイバー(株)製、2.2dtex×5mm)を69重量%(45g/m)、粉砕木材パルプ(Weyerhaeuser社製、NB416.以下同じ)を31重量%(20g/m)の比率で混合し、65g/mとなるようエアレイド法でネット上に形成した。次に、PP/PE系熱接着性芯鞘型複合繊維(チッソ(株)製、1.7dtex×5mm)を45重量%(175g/m)、粉砕木材パルプを45重量%(175g/m)、粉末状の有機酸として精製クエン酸・結晶タイプ(扶桑化学工業(株)製)を10重量%(40g/m)となるよう混合し、合計390g/mの(ロ)ウェブ層をエアレイド法で上記(イ)ウェブ層の上に形成した。さらに、この上に、(ハ)ウェブ層としてPP/PE系熱接着性芯鞘型複合繊維(チッソ(株)製、9dtex×5mm)を120g/mとなるようにエアレイド法で形成した。全体575g/mのエアレイドウェブを138℃の熱風サクション加熱炉で加熱し、一体化した。得られた厚さ9mmの不織布を水に濡らして家庭用風呂の掃除に用いたところ、合成洗剤無しでも内部のアカ、石鹸カス、ヌメリなどの汚れをきれいに掃除することができ、風呂掃除用クリーナーシートとして有用であった。なお、含有されている粉末状の有機酸は、保管・輸送などの取扱いにおいて、脱落は極めて少なかった。
【0043】
実施例2
PP/PE系熱接着性芯鞘型複合繊維(チッソ(株)製、3.3dtex×51mm)をカード法にてウェブ化し、金属(127℃)/コットンの一対のカレンダーローラーで熱圧着して加熱一体化して、目付30g/mのサーマルボンドタイプの乾式不織布を得た。この乾式不織布を(ニ)通気性シートとしてネットコンベア上に載置し、この上に、(イ)ウェブ層としてPP/PE系熱接着性芯鞘型複合繊維(チッソ(株)製、1.7dtex×5mm)を20g/mとなるようエアレイド法で形成した。次に、PP/PE系熱接着性芯鞘型複合繊維(チッソ(株)製、1.7dtex×5mm)を50重量%(230g/m)、粉砕木材パルプを30重量%(140g/m)、実施例1と同様の粉末状有機酸を20重量%(90g/m)となるよう混合し、合計460g/mの(ロ)ウェブ層をエアレイド法で上記(イ)ウェブ層の上に形成した。さらに、この上に、(ハ)ウェブ層(表面層)としてPP/PE系芯鞘型複合繊維(チッソ(株)製、20dtex×5mm)を150g/mとなるようエアレイド法で形成した。全体660g/mの複合エアレイドウェブを139℃の熱風サクション加熱炉で加熱し、一体化した。得られた厚さ11mmの不織布を水に濡らして調理レンジの魚焼きグリル内部の掃除に用いたところ、油汚れ、焦げなどの掃除に有用であった。特に、サーマルボンドタイプの乾式不織布が複合されて強度に優れているので、グリルの網に引掛かってもちぎれにくく、作業に支障は無かった。また、調理に際しては、通常、グリルの受け皿に水を入れておくが、本発明の不織布シートをあらかじめ水に浮かべて置くことにより、調理後の掃除がさらに容易になることが分かった。これは、魚などからドリップした油、肉汁などの吸収効果、および水に溶け出した有機酸の中和作用によるものと考えられる。
なお、含有されている粉末状の有機酸は、保管・輸送などの取扱いにおいて、脱落は極めて少なかった。
【0044】
実施例3
(イ)ウェブ層(基材シート)として、PP/PE系熱接着性芯鞘型複合繊維(チッソ(株)製、11dtex×5mm)を50g/mとなるようエアレイド法でネット上に形成した。次に、PET/PE系熱接着性芯鞘型複合繊維(帝人ファイバー(株)製、2.2dtex×5mm)を35重量%(60g/m)、粉砕木材パルプを41重量%(70g/m)、実施例1で用いたと同じ粉末状の有機酸を24重量%(40g/m)となるよう混合し、合計170g/mの(ロ)ウェブ層をエアレイド法で上記(イ)ウェブ層の上に形成した。さらに、この上に、(ハ)ウェブ層としてPP/PE系熱接着性芯鞘型複合繊維(チッソ(株)製、11dtex×5mm)を70g/mとなるようにエアレイド法で形成した。全体290g/mのエアレイドウェブを137℃の熱風サクション加熱炉で加熱し、一体化した。得られた厚さ6mmの不織布を水に濡らして洗面台の掃除に用いたところ、石鹸カス、歯磨きカスをきれいに掃除することができた。
なお、含有されている粉末状の有機酸は、保管・輸送などの取扱いにおいて、脱落は極めて少なかった。
【0045】
比較例1
(イ)ウェブ層(基材シート)は、実施例3と同じ繊維(11dtex×5mm)を50g/mとなるようエアレイド法でネット上に形成した。次に、PET/PE系熱接着性芯鞘型複合繊維(帝人ファイバー(株)製、2.2dtex×5mm)を50重量%(80g/m)、粉砕木材パルプを50重量%(80g/m)となるよう混合し、合計160g/mの(ロ)ウェブ層をエアレイド法で上記(イ)ウェブ層の上に形成した。さらに、この上に、(ハ)ウェブ層として実施例3と同じ繊維(11dtex×5mm)を70g/mとなるようにエアレイド法で形成した。全体280g/mのエアレイドウェブを137℃の熱風サクション加熱炉で加熱し、一体化した。得られた厚さ6mmの不織布には有機酸が含有されていなので、水に濡らして洗面台の掃除に用いても洗面台の表面に石鹸カス、歯磨きカスがスジ状に残り、十分な洗浄効果が得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の洗浄用不織布クリーナーは、熱接着性繊維、セルロース系パルプに、洗浄作用を有する粉末状の有機酸を組合わせて、エアレイド法を用いることにより製造されているので、該有機酸の粉末の脱落が少なく、柔軟性に富み、各種の用途に応用することが可能な洗浄用不織布クリーナーである。しかも、合成界面活性剤を含有していないので、ヒトや地球環境にやさしい洗浄シートであると言える。このため、本発明の洗浄用不織布クリーナーは、キッチン周り、風呂・トイレなどの床やフロア、さらにはシンク・レンジ・グリル・トイレ機器類などの家庭用器具類の洗浄用のほか、産業用、工業用など広い分野における洗浄用シートとして有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)(a)繊維長が3〜10mmで繊度が1〜50dtexの熱接着性繊維60〜100重量%と、(b)セルロース系パルプ40〜0重量%〔ただし、(a)+(b)=100重量%〕を主体とし、目付け10〜250g/mのエアレイド法によるウェブ層の上に、(ロ)(a)’繊度が1〜4.4dtexの熱接着性繊維を20〜95重量%と、(b)セルロース系パルプを0〜60重量%と、(c)水酸基を有し、融点が70℃以上の粉末状の有機酸を1〜50重量%〔ただし、(a)’+(b)+(c)=100重量%〕を主体とし、目付けが20〜1,000g/mのエアレイド法によるウェブ層を積層し、さらに(ロ)ウェブ層の上に、(ハ)(a)”繊維長が3〜10mmで繊度が4〜50dtexの熱接着性繊維を主体とする目付け10〜250g/mのエアレイド法によるウェブ層を積層し、これらの熱接着性繊維の熱結合によって全体として一体シート化した、総目付が60〜1,500g/mの、洗浄用不織布クリーナー。
【請求項2】
(c)有機酸が、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸およびグルコノラクトン、またはこれらの塩類の群から選ばれた少なくとも1種である請求項1記載の洗浄用不織布クリーナー。
【請求項3】
(ニ)通気性シートを、さらに片面または両面に積層一体化してなる、請求項1〜2いずれかに記載の洗浄用不織布クリーナー。
【請求項4】
(ニ)通気性シートが、乾式不織布、湿式不織布、紙、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、プラスチックネット、穴あきフィルム、スプリットヤーンクロス、織編み物、または寒冷紗である請求項3記載の洗浄用不織布クリーナー。

【公開番号】特開2007−197848(P2007−197848A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−14916(P2006−14916)
【出願日】平成18年1月24日(2006.1.24)
【出願人】(591196315)金星製紙株式会社 (36)
【Fターム(参考)】