説明

洗浄用粒子を含有する組成物

【課題】歯科用修復材料の接着剤固定の範囲内で、修復材料の表面の非アブレーション洗浄のため、特に、タンパク質汚染物質を除去するための、従来技術の欠点を有さない組成物を提供すること。
【解決手段】歯科用修復物またはインプラント橋脚歯の一部分である金属表面またはセラミック表面を洗浄するための組成物であって、該組成物は、キャリア媒体、および1nm〜10μmの重量平均粒子直径を有する金属化合物ベースの粒子を含有する、組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属表面またはセラミック表面、特に、歯科用修復物またはインプラント橋脚歯の表面を洗浄するための、組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
歯科用修復物またはインプラント橋脚歯はしばしば、セラミック材料または金属からなり、様々な様式で歯の欠損部に適合し得る。この修復物は一般に、適合性を確認する目的で、固定する前に空洞に予備的に挿入される(「試適」)。歯科用硬ゴム堰が使用される場合でさえも、タンパク質含有体液(例えば、唾液、歯液、口腔の溝の液体、血液)による汚染は、ここで事実上不可避である。これらのタンパク質は、強いイオン相互作用および部分的な共有結合相互作用によって、臨床的に一般的な全てのセラミックおよび金属に吸着される。この吸着の後に、慣習的な接着促進剤(「プライマー」)ならびにラジカル硬化性の固定セメントおよびコンポジットによる接着剤固定が起こる場合、このようなタンパク質汚染物質は、修復材料とセメントまたはコンポジットとの間の結合効果の明らかな弱化をもたらす。
【0003】
タンパク質汚染という問題は、いくつかの科学刊行物の主題であり、これらの刊行物はまた、異なる可能な解決策も議論する。非特許文献1は、唾液汚染物質を除去する目的で、Al粒子でサンドブラストすることを記載する。
【0004】
非特許文献2は、陶材表面をリン酸で洗浄することを推奨する。
【0005】
非特許文献3は、唾液汚染物質を除去する目的での、Al粒子での空気アブレーションと、37%リン酸またはイソプロパノールでの処理とを比較する。空気アブレーションは、ジルコニアセラミックを洗浄するために最も効果的であることが示された。非特許文献4は、匹敵する結果に至った。
【0006】
非特許文献5は、2% NaOClでの洗浄後に、ZrOへの最大結合強度を達成した。
【0007】
しかし、金属酸化物および卑金属に対して、リン酸での洗浄は、汚染されていない未洗浄参照サンプルと比較して、結合強度の低下をもたらすことが示された。タンパク質吸着物は、修復材料の接着剤固定の前に、従来利用可能な非アブレーション機械的方法(例えば、ウォータージェット、研磨ブラシ、超音波浴)によって、完全には除去され得なかった。機械的洗浄方法と利用可能な洗浄剤(例えば、洗剤溶液および歯科用研磨ペースト、溶媒(例えば、石油、エタノールまたはアセトン)、酸、アルカリ液、酸化剤(例えば、過酸化カルバミド、次亜塩素酸塩または過酸化水素)、あるいは可溶化助剤(例えば、尿素))とを組み合わせた使用でさえも、結合価の認容可能な改善をもたらさない。
【0008】
タンパク質で汚染された歯科用セラミック表面および金属表面を効果的に洗浄するための、文献において公知である唯一の方法は、研磨性ブラスト剤(例えば、コランダム)を吹き付けることである。この方法を用いて起こる表面アブレーションは、吸着された全ての汚染物質を除去し、従って、汚染されていない表面に匹敵する結合を可能にする。しかし、欠点は、アブレーションによる修復物の適合性の負の影響、アブレーション感受性前装材料との非適合性、繊細な面への不可避の損傷、歯科実務における適切な設備の利用可能性を欠くこと、および口腔内への適用がかろうじて可能であることである。従って、サンドブラストは、特定の条件下でのみ、臨床状況のために適切である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】B.Yang,M.Kern,Dental Materials,2008,24,508−513
【非特許文献2】Y.Aboush,J.Prosth.Dent.,1998,80(6),649
【非特許文献3】A.Quaas,M.Kern,Dental Materials,2007,23,506−512
【非特許文献4】B.Yang,M.Kern,J.Dent.Res.,2007,86(8),749−753
【非特許文献5】T.Bock,U.Salz,IAD Conference,2008,Xi’An(CN)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、歯科用修復材料の接着剤固定の範囲内で、修復材料の表面の非アブレーション洗浄のため、特に、タンパク質汚染物質を除去するための、従来技術の欠点を有さない組成物を提供することである。この洗浄組成物は、簡単に、歯科医または歯科技術者の慣習的な技術設備を用いて塗布され得るべきであり、毒性化学物質を必要としないべきであり、そして異なる修復材料の適合性に対して負の影響を有さないべきである。全く同じ洗浄組成物が異なる修復材料に塗布可能であることもまた、有利である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1A)
歯科用修復物またはインプラント橋脚歯の一部分である金属表面またはセラミック表面を洗浄するための組成物であって、該組成物は、キャリア媒体、および1nm〜10μmの重量平均粒子直径を有する金属化合物ベースの粒子を含有する、組成物。
(項目2A)
洗浄されるべき上記表面が、タンパク質によって、特に、唾液タンパク質、例えば、リン含有唾液タンパク質によって汚染されている、上記項目に記載の組成物。
(項目3A)
洗浄されるべき上記表面が、金属またはセラミックからなる、上記項目のうちのいずれかに記載の組成物。
(項目4A)
上記洗浄が、上記歯科用修復物の試適の直後に行われる、上記項目のうちのいずれかに記載の組成物。
(項目5A)
上記粒子が、1nm〜500nm、好ましくは、1nm〜100nmの重量平均粒子直径を有する、上記項目のうちのいずれかに記載の組成物。
(項目6A)
上記金属化合物の金属が、第3主族の金属、副族金属およびランタノイドから選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の組成物。
(項目7A)
上記金属化合物の金属が、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、スカンジウム、イットリウム、亜鉛、イッテルビウム、セリウムおよびこれらの組み合わせから選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の組成物。
(項目8A)
上記金属化合物が、金属カルコゲニド、特に金属酸化物;金属ハロゲン化物;金属カルコゲンハロゲン化物、特に金属オキシハロゲン化物;金属擬ハロゲン化物、特に金属イソシアノーゲン;金属−ケイ素カルコゲニド;金属水酸化物;金属オキシ水酸化物、金属硝酸塩、金属オキシ硝酸塩およびこれらの混合物から選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の組成物。
(項目9A)
上記金属化合物が、酸化アルミニウム、オキシ水酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、二酸化チタンおよびこれらの混合物から選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の組成物。
(項目10A)
上記キャリア媒体が液体である、上記項目のうちのいずれかに記載の組成物。
(項目11A)
上記粒子が、上記組成物の総重量に対して1重量%〜50重量%、好ましくは5重量%〜35重量%の量で存在する、上記項目のうちのいずれかに記載の組成物。
(項目12A)
洗浄されるべき上記表面が、酸化物セラミック、特に、二酸化ジルコニウムセラミックまたは酸化アルミニウムセラミック、ケイ酸塩セラミック、特に、二ケイ酸リチウムガラスセラミック、チタンまたはチタン合金からなる、上記項目のうちのいずれかに記載の組成物。
(項目13A)
(i)5重量%〜35重量%の、1nm〜100nmの重量平均粒子直径を有する金属化合物ベースの粒子であって、該金属化合物は、酸化アルミニウム、オキシ水酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、二酸化チタンおよびこれらの混合物から選択される、粒子、
(ii)65重量%〜95重量%の、7〜14の範囲のpHを有する水または水溶液、ならびに
(iii)0重量%〜5重量%の任意の成分、
を含有する、洗浄組成物。
(項目14A)
金属表面またはセラミック表面を洗浄する方法であって、該方法は、該表面を上記項目のうちのいずれかに記載される洗浄組成物と接触させる工程、および該洗浄組成物を該表面上で動かす工程を包含する、方法。
(項目15A)
洗浄されるべき上記表面が、上記項目のうちのいずれかに記載されるように定義される、上記項目に記載の方法。
【0012】
本発明はさらに、以下を提供する:
(項目1B)
キャリア媒体、および1nm〜10μmの重量平均粒子直径を有する金属化合物ベースの粒子を含有する組成物の使用であって、歯科用修復物またはインプラント橋脚歯の一部分である金属表面またはセラミック表面を洗浄するための、使用。
(項目2B)
洗浄されるべき上記表面が、タンパク質によって、特に、唾液タンパク質、例えば、リン含有唾液タンパク質によって汚染されている、上記項目に記載の使用。
(項目3B)
洗浄されるべき上記表面が、金属またはセラミックからなる、上記項目のうちのいずれかに記載の使用。
(項目4B)
上記洗浄が、上記歯科用修復物の試適の直後に行われる、上記項目のうちのいずれかに記載の使用。
(項目5B)
上記粒子が、1nm〜500nm、好ましくは、1nm〜100nmの重量平均粒子直径を有する、上記項目のうちのいずれかに記載の使用。
(項目6B)
上記金属化合物の金属が、第3主族の金属、副族金属およびランタノイドから選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の使用。
(項目7B)
上記金属化合物の金属が、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、スカンジウム、イットリウム、亜鉛、イッテルビウム、セリウムおよびこれらの組み合わせから選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の使用。
(項目8B)
上記金属化合物が、金属カルコゲニド、特に金属酸化物;金属ハロゲン化物;金属カルコゲンハロゲン化物、特に金属オキシハロゲン化物;金属擬ハロゲン化物、特に金属イソシアノーゲン;金属−ケイ素カルコゲニド;金属水酸化物;金属オキシ水酸化物、金属硝酸塩、金属オキシ硝酸塩およびこれらの混合物から選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の使用。
(項目9B)
上記金属化合物が、酸化アルミニウム、オキシ水酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、二酸化チタンおよびこれらの混合物から選択される、上記項目のうちのいずれかに記載の使用。
(項目10B)
上記キャリア媒体が液体である、上記項目のうちのいずれかに記載の使用。
(項目11B)
上記粒子が、上記組成物の総重量に対して1重量%〜50重量%、好ましくは5重量%〜35重量%の量で存在する、上記項目のうちのいずれかに記載の使用。
(項目12B)
洗浄されるべき上記表面が、酸化物セラミック、特に、二酸化ジルコニウムセラミックまたは酸化アルミニウムセラミック、ケイ酸塩セラミック、特に、二ケイ酸リチウムガラスセラミック、チタンまたはチタン合金からなる、上記項目のうちのいずれかに記載の使用。
(項目13B)
(i)5重量%〜35重量%の、1nm〜100nmの重量平均粒子直径を有する金属化合物ベースの粒子であって、該金属化合物は、酸化アルミニウム、オキシ水酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、二酸化チタンおよびこれらの混合物から選択される、粒子、
(ii)65重量%〜95重量%の、7〜14の範囲のpHを有する水または水溶液、ならびに
(iii)0重量%〜5重量%の任意の成分、
を含有する、洗浄組成物。
(項目14B)
金属表面またはセラミック表面を洗浄する方法であって、該方法は、該表面を上記項目のうちのいずれかに記載される洗浄組成物と接触させる工程、および該洗浄組成物を該表面上で動かす工程を包含する、方法。
(項目15B)
洗浄されるべき上記表面が、上記項目のうちのいずれかに記載されるように定義される、上記項目に記載の方法。
(項目16B)
(a)歯科用修復物を歯の空洞、歯の断端またはインプラント橋脚歯に挿入して、適合性の正確さを確認する工程、
(b)必要に応じて、該歯科用修復物を口腔から取り出す工程、
(c)上記項目のうちのいずれかに記載されるように、口内または口外で、該歯科用修復物を洗浄し、そして/または口内で該インプラント橋脚歯を洗浄する工程、ならびに
(d)該歯科用修復物を該口腔内で、該歯の空洞、該歯の断端または該インプラント橋脚歯に接着剤固定する工程、
を包含する、歯を修復する方法。
【0013】
(摘要)
キャリア媒体および1nm〜10μmの重量平均粒子直径を有する金属化合物ベースの粒子を含有する組成物の使用であって、歯科用修復物またはインプラント橋脚歯の一部分である金属表面またはセラミック表面を洗浄するための、使用。
【0014】
(要旨)
上記目的は、キャリア媒体および1nm〜10μmの重量平均粒子直径を有する金属化合物ベースの粒子を含有する組成物を、金属表面またはセラミック表面を洗浄するために使用することにより達成される。これらの粒子の形状は、球状、繊維状またはナノ微小繊維状であり得、代表的に、10〜10,000のアスペクト比を有する。球状粒子が好ましい。
【0015】
本発明また、金属表面またはセラミック表面を洗浄する方法に関し、この方法は、この表面を上記洗浄組成物と接触させる工程、およびこの洗浄組成物をこの表面上で動かす工程を包含する。
【0016】
本発明はさらに、歯科用修復物を挿入する方法に関し、この方法は、上記組成物を使用する洗浄工程を包含する。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、歯科用修復材料の接着剤固定の範囲内で、修復材料の表面の非アブレーション洗浄のため、特に、タンパク質汚染物質を除去するための、従来技術の欠点を有さない組成物が提供される。この洗浄組成物は、簡単に、歯科医または歯科技術者の慣習的な技術設備を用いて塗布され得、毒性化学物質を必要とせず、そして異なる修復材料の適合性に対して負の影響を有さない。全く同じ洗浄組成物が異なる修復材料に塗布可能である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明により使用される洗浄組成物は、キャリア媒体および1nm〜10μmの重量平均粒子直径を有する金属化合物ベースの粒子(以下において「洗浄用粒子」ともまた呼ばれる)を含有する。
【0019】
個々の粒子は、好ましくは、1nm〜500nm、好ましくは、1nm〜300nm、そして特に好ましくは、1nm〜200nmの粒子直径を有する。1nm〜100nm、そして最も好ましくは、1nm〜50nmの粒径を有するナノ粒子が、非常に特に好ましい。
【0020】
球状粒子が、好ましくは、本発明によって使用される。「球状」とは、本明細書において、その粒子が任意の方向において、別の方向の直径と最大で10%異なる直径を有することを意味する。非球状粒子の場合、粒子直径とは、等価な直径(表面が等価である球の直径)を意味する。表面が等価である球の直径とは、調査される粒子と同じ表面積を有する球の直径である。粒子直径および粒径との用語は、本明細書において同義に使用される。洗浄用粒子は、多孔性であり得るか、または好ましくは、非多孔性であり得る。
【0021】
塊状粒子または凝集粒子の場合、上記記載は、塊状物または凝集物に適用される。
【0022】
好ましい実施形態において、洗浄用粒子は、1nm〜500nm、好ましくは、1nm〜100nm、非常に特に好ましくは、1nm〜50nm、そして最も好ましくは、2nm〜25nmの範囲の重量平均直径を有する。粒径は、他に示されない限り、動的光散乱により決定される。
【0023】
本発明の洗浄用粒子は、金属化合物からなり、この金属化合物における金属は、好ましくは、第3主族の金属(例えば、アルミニウム);副族金属(例えば、スカンジウム、イットリウム、チタンおよびジルコニウム)、ならびにランタノイド(例えば、イッテルビウムおよびセリウム)から選択される。金属化合物の混合物もまた使用され得る。好ましい金属化合物は、アルミニウム、チタン、ジルコニウムおよびこれらの混合物の化合物であり、ここでジルコニウム化合物が、特に好ましい。
【0024】
金属化合物とは、特に、金属酸化物、無機金属塩および有機金属塩を意味する。金属化合物は、好ましくは、金属カルコゲニド(特に、金属酸化物);金属ハロゲン化物(例えば、フッ化物、塩化物、臭化物およびヨウ化物);金属カルコゲンハロゲン化物(特に、金属オキシハロゲン化物であり、例えば、オキシ塩化物);金属擬ハロゲン化物(特に、金属イソシアノーゲン);金属−ケイ素カルコゲニド;金属水酸化物;金属オキシ水酸化物、金属硝酸塩、金属オキシ硝酸塩およびこれらの混合物から選択される。代表的な有機金属塩は、モノカルボン酸塩(例えば、酢酸塩、ギ酸塩、ニトリロ三酢酸塩、エチレンジアミン四酢酸塩);キレート錯体(例えば、アセチルアセトネート、グルコネート、フマレート、タートレート、シトレートおよびイミノジスクシネートの錯体)である。
【0025】
粒子の金属化合物の例としては、酸化アルミニウム、オキシ水酸化アルミニウム(例えば、γ−AlO(OH)(ベーマイト))、二酸化ジルコニウム、二酸化チタン(例えば、金紅石)、塩化ジルコニル、硝酸チタンおよび硝酸ジルコニルが挙げられ、ここで酸化アルミニウム、オキシ水酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、二酸化チタンおよびこれらの混合物が好ましい。
【0026】
洗浄用粒子の材料および形態は、好ましくは、これらの洗浄用粒子が、洗浄されるべき表面に対してアブレーション効果を示さないか、またはわずかにのみ示すように、選択される。
【0027】
本発明による洗浄組成物のキャリア媒体は、液体媒体であっても固体媒体であってもよい。
【0028】
この媒体は、好ましくは、液体であり、特に好ましくは、水(水溶液を含む);有機溶媒(有機溶媒の混合物を含む)、または水と有機溶媒との混合物である。水溶液としてはまた、酸の溶液、アルカリ液、および0〜14、好ましくは7〜14のpHを有する緩衝液が挙げられる。適切な有機溶媒の例としては、脂肪族および脂環式のC〜Cアルコール、脂肪族および脂環式のケトン(例えば、アセトンおよびメチルエチルケトン);脂肪族および脂環式のエーテル(例えば、ジ−t−ブチルエーテル、メチルt−ブチルエーテル、ジオキサン、ジオキソランおよびジオキソール);スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド);アミドおよびラクタム(例えば、N−メチルピロリドン);エステル(例えば、プロピオン酸i−アミル、酢酸エチルおよび酢酸ブチル)が挙げられる。洗浄用粒子は、液体媒体中に分散される。
【0029】
固体キャリア媒体は、例えば、微小繊維状の形態(例えば、布、剛毛、ブラシ、フリース、フェルト、細片、繊維またはマイクロ繊維)、モノリシック形態および非モノリシック形態(例えば、ブロック、ディスク、スポンジ(発泡体)および球状体)で使用され得る。粒子含有不均質相またはコーティングされた固体(例えば、歯科処置のために慣習的である重炭酸塩粉末(例えば、Hager Werke製のClean Jet))もまた使用され得る。粒子含有不均質相とは、例えば、本発明により使用される洗浄用粒子の、ポリマーマトリックス中の分散物を意味する。
【0030】
ポリマー化合物(例えば、ポリオレフィン、ポリビニル化合物、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアラミド、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリアミン、ポリウレア、多糖類、ポリシロキサンおよび高分子量タンパク質(例えば、コラーゲン))ならびにそのブレンドが、固体媒体として使用され得る。ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリシロキサンおよびポリウレタンが、好ましい。固体媒体は、部分的に、粒子形態で存在し得る。
【0031】
洗浄用粒子は、例えば、代表的に0.1μm〜50μmの層の厚さのコーティングとして固体媒体に塗布され得るか、または固体媒体中に分散され得る。
【0032】
固体洗浄組成物の例としては、押し出し成形されたブラシ繊維(例えば、融解配合された熱可塑性物質から作製されたもの)が挙げられ、洗浄用粒子または粒子放出スポンジが、このブラシ繊維内に分散されるか、または好ましくは、このブラシ繊維に吸着されており、これらは、洗浄用粒子を適切なモノマー中に分散させ、引き続いて発泡体(例えば、ポリウレタンフォーム)を製造することにより、得られる。
【0033】
本発明による洗浄組成物は、さらなる成分(例えば、歯科の予防および医療において慣習的なアブレーション剤(例えば、シリカ、重炭酸塩およびポリマー粒子)、湿潤剤、浮遊助剤、洗剤(例えば、非イオン性化合物、陰イオン性化合物および陽イオン性化合物であり、好ましくは、非イオン性化合物および陽イオン性化合物)、消泡剤、安定剤ならびにさらなる補助剤(例えば、抗菌添加物、香料、矯味矯臭添加物、着色剤、漂白剤および防腐剤))を必要に応じて含有し得る。液体キャリア媒体が使用される場合、本発明による洗浄組成物は、ポリマー増粘剤(例えば、適切に可溶性のポリビニル化合物、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリエーテル、ポリアミン、ポリシリケート、および多糖類)、ならびにチキソトロープ剤およびレオロジー改変剤(例えば、シリケート粒子、層状シリケート、アルミン酸塩およびハイドロタルサイト)を必要に応じてさらに含有し得る。好ましい補助剤物質は、非イオン性または陽イオン性の洗剤、湿潤剤、香料、着色剤および防腐剤である。
【0034】
液体キャリア媒体または固体キャリア媒体を含む本発明による洗浄組成物は、好ましくは、洗浄用粒子を、組成物の総重量に対して、1重量%〜75重量%、好ましくは、1重量%〜50重量%、液体キャリア媒体の場合には特に好ましくは5重量%〜35重量%、そして液体キャリア媒体の場合には最も好ましくは10重量%〜30重量%、または固体キャリア媒体の場合には特に好ましくは1重量%〜25重量%の量で含有する。
【0035】
500nmより大きい、特に好ましくは250nmより大きい粒子を含有しない組成物が、特に好ましい。
【0036】
液体キャリア媒体は、好ましくは、洗浄組成物中に、組成物の総重量に対して、25重量%〜99重量%、好ましくは、50重量%〜99重量%、特に好ましくは、65重量%〜95重量%、そして最も好ましくは、70重量%〜90重量%の量で含有される。固体キャリア媒体は、好ましくは、洗浄組成物中に、組成物の総重量に対して、25重量%〜99重量%、好ましくは、50重量%〜99重量%、そして特に好ましくは、75重量%〜99重量%の量で含有される。任意の成分は、好ましくは、0重量%〜5重量%または0.001重量%〜5重量%、特に好ましくは、0重量%〜2.5重量%または0.001重量%〜2.5重量%、そして最も好ましくは、0重量%〜1重量%または0.001重量%〜1重量%の量で含有される。
【0037】
液体キャリア物質を含む例示的な洗浄組成物は、
(i)5重量%〜35重量%、好ましくは、10重量%〜30重量%の、1nm〜100nmの重量平均粒子直径を有する金属化合物ベースの粒子であって、この金属化合物は、酸化アルミニウム、オキシ水酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、二酸化チタンおよびこれらの混合物から選択される、粒子、
(ii)65重量%〜95重量%、好ましくは、70重量%〜90重量%の、7〜14の範囲のpHを有する水または水溶液、ならびに
(iii)0重量%〜5重量%、好ましくは、0重量%〜2.5重量%の任意の成分であって、好ましくは、洗剤、湿潤剤、香料、着色剤および防腐剤から選択される、任意の成分、
を含有する。
【0038】
いくつかの実施形態において、本発明による洗浄組成物は、洗剤を含まず、そして/または香料、着色剤、湿潤剤および/もしくは漂白剤を含まない。
【0039】
塗布を容易にするという理由により、本発明による洗浄組成物がゲル形態である場合(例えば、個々の成分の相互作用に起因してすでにゲルであるか、または適切な増粘材を添加することにより必要に応じて達成され得る場合)、有利である。
【0040】
原理的には、本発明による洗浄組成物は、全ての金属表面またはセラミック表面(例えば、酸化物およびケイ酸塩セラミック)を洗浄するために適切である。しかし、本発明による洗浄組成物は、好ましくは、歯科医療において使用される材料(すなわち、歯科用修復材料として臨床的に慣習的な材料であり、例えば、歯科用金属(例えば、チタン、金、白金族金属、ならびにこれらの合金およびクロム−コバルト合金);歯科用セラミック(例えば、二酸化ジルコニウムセラミック、酸化アルミニウムセラミックおよびケイ酸塩セラミック(例えば、二ケイ酸リチウムガラスセラミック、白榴石ガラスセラミック、白榴石リン灰石ガラスセラミックおよび長石セラミック)))から作製された表面を洗浄するために使用される。
【0041】
本発明による洗浄組成物は、タンパク質によって汚染された表面を洗浄するために特に適切であることが示された。これらのタンパク質は、例えば、体液(例えば、唾液、歯液、口腔の溝の液体および血液)起源であり得る。この洗浄組成物は、特に唾液汚染物質を除去するため、特に、唾液タンパク質(例えば、リン含有唾液タンパク質)を除去するために使用される。本発明による洗浄組成物は、強く接着するタンパク質層(「タンパク質吸着物」)でさえも除去するので、この洗浄組成物は、歯科用修復物およびインプラント橋脚歯を洗浄するため(例えば、インレー、アンレー、歯冠、ブリッジ、上部構造および橋脚歯を洗浄するため)、さらに、歯の構造体を洗浄するためにも特に適切である。適合性を確認するために口腔にほんの短時間導入した後でさえも、その歯科用修復物またはインプラント橋脚歯は、すでにタンパク質汚染物質を有し、これらのタンパク質汚染物質は、除去されない場合、引き続いて形成される結合に、かなりの有害な影響を有する。好ましくは、本発明による洗浄組成物は、試適の直後に使用される。これらの組成物はまた、歯科用修復物の支持体として働く、調製された歯およびインプラント(ここでは特に、インプラントの露出部分)を洗浄するために適切である。
【0042】
体液由来(特に、唾液由来)のタンパク質は、それらのホスフェート基に起因して、一般的な修復材料の表面に対する良好な、比較的高度なリン酸化接着を示すこと、および本発明による洗浄組成物の粒子は、その大きい表面積に起因して、正確にこれらのリン酸基と強く相互作用し得、その結果、これらのタンパク質は、これらの粒子に最終的に「結合」され得、そして洗浄されるべき表面から除去され得ると考えられる。粒子への「結合」との用語は、純粋に物理的な吸着、イオン結合および少なくとも部分的な共有結合を網羅する。従って、洗浄作用は、粒子の研磨効果に基づくのではない。このことは、実験において確認され得た。
【0043】
金属表面またはセラミック表面(上記好ましい表面が挙げられる)を洗浄する方法は、代表的に、この表面を上記洗浄組成物(好ましい実施形態が挙げられる)に接触させること、およびこの洗浄組成物をこの表面上で、例えば、適切な器具(例えば、ブラシ)を使用してこの洗浄組成物をこの表面にわたって分配すること(「こすること」)、または洗浄されるべき表面が小さい物体である場合には、この物体を液体洗浄組成物中で撹拌することによって、動かすことを包含する。必要に応じて、この洗浄組成物をこの表面上で静置するさらなる工程が後に続き得る。最後に、この洗浄組成物は、例えば、水ですすいでこの表面を圧縮空気で乾燥させることにより、除去される。動かして洗浄する工程の持続時間は、好ましくは、10秒〜60秒であり、特に好ましくは、10秒〜30秒である。静置する工程の持続時間は、好ましくは、5秒〜45秒であり、特に好ましくは、5秒〜25秒である。
【0044】
本発明はまた、歯科用修復物またはインプラント橋脚歯を洗浄するための、本発明による洗浄組成物の使用に関する。本発明による洗浄工程を使用して歯を修復する全体的な方法が考慮される場合、この方法は、好ましくは、以下の工程を包含する:
(a)歯科用修復物を、歯の空洞、歯の断端またはインプラント橋脚歯に挿入して、適合性の正確さを確認する工程、
(b)この歯科用修復物を口腔から取り出す工程、
(c)上記のような本発明による洗浄組成物を用いて、好ましくは、この洗浄組成物をこの歯科用修復物またはインプラント橋脚歯上でブラシを用いてこすり、洗浄組成物を静置し、この洗浄組成物を蒸留水ですすいで除去し、そしてこの歯科用修復物またはこのインプラント橋脚歯を圧縮空気で乾燥させることによって、この歯科用修復物を洗浄する工程、および/またはこのインプラント橋脚歯を口内で洗浄する工程、ならびに
(d)この歯科用修復物を口腔内で、歯の空洞、歯の断端またはインプラント橋脚歯に接着剤固定する工程。
【0045】
この歯科用修復物は、代表的に、慣習的な接着促進剤(「プライマー」)ならびにラジカル硬化性の固定セメントおよびコンポジットによって、接着剤固定される。しかし、プライマーを使用しない接着剤固定もまた可能である。適切な固定用セメント、コンポジットおよびプライマーは、従来技術から公知であり、そして例えば、Resin−ceramic bonding:a review of the literature:M.Blatz,A.Sadan,M.Kern;J Prosthet Dent 2003;89:268−74;Effect of primer treatment on bonding of resin cements to zirconia ceramic:S.Kitayamaa,T.Nikaidoa,R.Takahashia,L.Zhua,M.Ikedac,R.Foxtond,A.Sadrb,J.Tagamia,Dent.Mat.2009(印刷中の論文)に記載されている。
【0046】
本発明はここで、実施例によって以下により詳細に説明される。
【実施例】
【0047】
(実施例1)
(本発明による洗浄組成物の調製)
成分を容器に量り入れ、そしてこれらの成分を超音波分散デバイス(UP200S;Hielscher Ultraschalltechnik,Teltow,Germany)の作用に約10秒間供することにより混合することによって、表1に与えられる洗浄組成物を調製した。
【0048】
【表1】

1) Disperal P2W,重量平均粒径=25nm;SASOL,Johannesburg,South Africa
2) ZirCOXTM 15,重量平均粒径=12±3nm;IBU−Tec,Weimar,Germany
3) ナノ粒子状金紅石,重量平均粒径=10nm〜30nm,Io−Li−Tec,Denzlingen,Germany。
【0049】
(実施例2)
(洗浄効果の決定)
a)サンプル調製
歯科医療において使用される様々な材料からの立方体の試験片を、Dtsch Zahnaerztl Z 1993,48:769−772に記載されるプロトコルに厳密に従って調製した。これらの立方体の試験片を、水で冷却しながら、グリットサイズP120〜P400〜P1000のSiC研磨紙で表面をこすった。
【0050】
次いで、個々の基材表面を、以下のように、対応する製造業者の指示に従って調整した。すなわち、ケイ素を含む表面を、フッ化水素酸でエッチングし、そして酸化物を含む表面または金属表面を、対応する粒子サイズおよび圧力でサンドブラストした。
【0051】
二ケイ酸リチウムガラスセラミック(e.max CAD;Ivoclar Vivadent AG,Schaan,Liechtenstein)を、4.5%フッ化水素エッチングゲルと20秒間接触させ(Ceramic Etch,Ivoclar Vivadent AG)、次いで蒸留水で注意深くすすいだ。
【0052】
二酸化ジルコニウムセラミック(ZirCAD;Ivoclar Vivadent AG,Schaan,Liechtenstein)、酸化アルミニウムセラミック(Al−Cube;VITA Zahnfabrik,Bad Saeckingen,Germany)および純粋なチタン(Tritan;Dentaurum,Ispringen,Germany)を、50μmの酸化アルミニウム研磨材(Korox 50;BEGO,Germany))で、2.5×10Pa(2.5bar)の圧力で、約1cm〜2cmの距離から15秒間粗くした。
【0053】
次いで、全てのサンプルを、超音波浴中でエタノール中で10分間洗浄した。エタノールの除去後、これらのサンプルを圧縮空気の吹き付けにより乾燥させ、そして使用するまで、埃から保護して保存した。
【0054】
b)唾液汚染物質
唾液汚染物質をシミュレートするために、調製した試験片を新鮮なヒト唾液中に60秒間入れ、次いで、蒸留水で15秒間すすぎ、そして超音波浴中で60秒間、充分なエタノールで処理した。これらのサンプルを送風機で乾燥させ、そして以下に記載されるようにさらに処理した。
【0055】
c)洗浄方法
試験片を、本発明による洗浄組成物であるERM−I〜ERM−VIで洗浄した。比較の目的で、以下のように処理した試験片を使用した:
REF:汚染されていない参照サンプル
WJ:唾液汚染物質を15秒間ウォータージェットで洗浄した後のサンプル
PAG:唾液汚染物質を37%リン酸エッチングゲル(Email Preparator,Ivoclar Vivadent AG,Liechtenstein)と30秒間接触させた後のサンプル
PPP:唾液汚染物質を軽石ベースの磨きペースト(Proxyt微細磨きペースト;Ivoclar Vivadent AG)で処理した後のサンプル
NAOH:唾液汚染物質を1MのNaOHで処理した後のサンプル。
【0056】
本発明による全ての洗浄組成物ERM−I〜ERM−VI、ならびに比較剤であるPPPおよびNAOHを、試験片上で、臨床的に有用なブラシ(Microbrush;USA)を用いて10秒間動かし、次いで、20秒間静置した。洗浄方法の全てを実施する際に、剤を次いで、臨床的に有用なウォータージェットですすぎ、そして最後に試験片を、臨床的に有用な送風機からの油を含まない圧縮空気の吹き付けにより乾燥させた。
【0057】
d)結合価の決定−サンプル調製
方法1(プライマーを用いる):
上記のように調製した試験片に、ブラシ(Microbrush;USA)を使用して、慣習的な汎用歯科用接着促進剤(Monobond Plus adhesion promoter;Ivoclar Vivadent AG,Schaan,Liechtenstein)(ホスフェート官能基化メタクリレート、アルコキシシランメタクリレートおよびジスルフィドメタクリレートをアルコール溶液中に含有する)を用いて完全な単層コートを与え、そしてその液体を60秒間作用させた。次いで、上清液を圧縮空気の吹き付けにより除去した。Dtsch Zahnaerztl Z 1993,48:769−772に記載されるように、光重合性の歯科用コンポジット材料(MultiCore Flow;ラジカル硬化性断端構築コンポジット,Ivoclar Vivadent AG,Schaan,Liechtenstein)を満たしたプレキシグラススリーブを、プライムコートした表面に付けた。この目的で、このスリーブを、結合されるべき端部において1滴のラジカル硬化性固定セメント(Multilink Automix;Ivoclar Vivadent AG,Schaan,Liechtenstein)で覆い、そしてプレス装置によって試験片に押し付けた。次いで、このセメントを重合ランプ(Bluephase G2;Ivoclar Vivadent AG;Schaan,Liechtenstein)での20秒間で2回の照射により硬化させ、そしてこれらのサンプルを、37℃の水中で24時間保存した。次いで、引張り接着を、以下に記載されるように決定した。
【0058】
方法2(プライマーを用いない):
Dtsch Zahnaerztl Z 1993,48:769−772に記載されるように、光重合性の歯科用コンポジット材料(MultiCore Flow;ラジカル硬化性断端構築コンポジット,Ivoclar Vivadent AG,Schaan,Liechtenstein)を満たしたプレキシグラススリーブを、プライマーコートしていない二酸化ジルコニウム表面に付けた。この目的で、このスリーブを、結合されるべき端部において1滴の自己接着性のラジカル硬化性固定セメント(SpeedCEM;Ivoclar Vivadent AG,Schaan,Liechtenstein)で覆い、そしてプレス装置によって試験片に押し付けた。次いで、このセメントを重合ランプ(Bluephase G2;Ivoclar Vivadent AG;Schaan,Liechtenstein)での20秒間で2回の照射により硬化させ、そしてこれらのサンプルを、37℃の水中で24時間保存した。次いで、引張り接着を、以下に記載されるように決定した。
【0059】
e)結合価の決定−接着の測定
結合値を決定するために、文献(M.Kern,V.P.Thompson,J.Prosth.Dent.1995 73(3):240−249;M.Kern,V.P.Thompson,「Eine einfache Versuchsanordnung zur universellen Pruefung des Klebeverbundes im axialen Zugtest」,Dtsch Zahnaerztl Z 1993,48:769−772)に記載されるような引張り装置を使用した。表2に列挙される結果を、Z010汎用試験機(Zwick−Roell,Ulm,Germany)で決定した。この試験機は、M.Kernにより使用された装置と構造的に同一である。各群の7個の個々のサンプルを測定し、そして引張り接着の平均を計算した。
【0060】
f.結果
表2が示すように、水で洗浄した後でさえも(群WJ)、唾液汚染物質は、未処理の参照物(群REF)と比較して、結合の弱化(文献において公知である)をもたらす。
【0061】
37%リン酸ゲル(PAG)での洗浄の成功は、基材に無関係であった。一方で、群PAGからのシリケートセラミック(二ケイ酸リチウムガラスセラミック)は、群REFに匹敵する結合価を有し、二酸化ジルコニウムセラミックに対する結合は、群REFからの元の値のほんの半分の値を達成した。従って、この方法は、全ての物質に対して適切であるわけではなく、この方法は、この方法の汎用性を制限し、そして歯科医が、それぞれの表面に対して適切な洗浄方法を選択することを必要にする。
【0062】
群PPPにおいて研究された、軽石ベースの磨きペーストでのセラミックの処理は、達成される結合価に関して効果的ではなかった。研究された基材のうちのいずれに対しても、結合価は、汚染された群WJと比較して有意には増加しなかった。
【0063】
ERM−Iでの処理は、群WJと比較して、結合価の有意な増加をもたらした。走査型電子顕微鏡法(SEM)は、粒子が検出可能なアブレーション効果を有さないことを示した。群REFにおいて達成された結合価は、群ERM−Iの測定精度の範囲内で、全ての表面に対して再度達成された。従って、ERM−Iは、結合強度に関して、タンパク質で汚染されたシリケートセラミックおよび酸化物セラミック、ならびに接着剤固定治療における金属修復物の洗浄に効果的な手段を提示する。
【0064】
【表2】

) 比較例
ERM−IIは、セラミックと形成された結合強度との両方に対して、統計学的に有意に効果的であり、初期値であるREFに匹敵した。走査型電子顕微鏡法(SEM)は、これらの粒子が検出可能なアブレーション効果を有さないことを示した。それにもかかわらず、ERM−IIで洗浄した後の結合価は、驚くべきことに、表2が示すように、完全に再度もたらされた。従って、ERM−IIは、結合強度に関して、タンパク質で汚染されたシリケートセラミックおよび酸化物セラミック、ならびに接着剤固定治療における金属修復物の洗浄に効果的な手段を提示する。
【0065】
群ERM−IIIにおいてpH11で実施した試験は、両方の型のセラミックに対するERM−IIIの有効性を示した。群ERM−IIIにおいて達成された結合価は、測定精度の範囲内で、群REFの初期値に対応する。走査型電子顕微鏡法(SEM)は、これらの粒子が検出可能なアブレーション効果を有さないことを示した。それにもかかわらず、ERM−IIIで洗浄した後の結合価は、驚くべきことに、表が示すように、完全に再度もたらされた。群PAGにおいて実証された、シリケートセラミックに対するリン酸の有効性もまた達成され、その結果、ERM−IIIは、文献の参照物に匹敵するが、基材依存性ではない、洗浄剤を提示する。
【0066】
群ERM−IVにおいてpH10で実施した試験は、両方の型のセラミックに対するERM−IVの有効性を示した。群ERM−IVにおいて達成された結合価は、測定精度の範囲内で、群REFの初期値に対応する。走査型電子顕微鏡法(SEM)は、これらの粒子が検出可能なアブレーション効果を有さないことを示した。それにもかかわらず、ERM−IVで洗浄した後の結合価は、驚くべきことに、表が示すように、完全に再度もたらされた。ERM−IVはまた、群PAGにおいて実証された、シリケートセラミックに対するリン酸の有効性を達成した。従って、ERM−IVは、文献の参照物に匹敵するが、基材依存性ではない、洗浄剤を提示する。
【0067】
群ERM−VにおいてpH8で実施した試験は、両方の型のセラミックに対するERM−Vの有効性を示した。走査型電子顕微鏡法(SEM)は、これらの粒子が検出可能なアブレーション効果を有さないことを示した。表が示すように、ERM−Vでの洗浄は、群REFと比較して、結合価を完全にもたらさなかったが、その結合強度は、水のみで洗浄された群WJのサンプルの結合強度より明らかに高い。従って、ERM−Vは、基材依存性ではない洗浄剤を提示する。
【0068】
群ERM−VIの試験は、両方の型のセラミックに対するERM−VIの、基材依存性ではない有効性を示した。走査型電子顕微鏡法(SEM)は、ここで使用した粒子が検出可能なアブレーション効果を有さないことを示した。それにもかかわらず、ERM−VIで洗浄した後の結合価は、驚くべきことに、表が示すように、完全に再度もたらされ、そして測定精度の範囲内で、群REFの初期値に対応する。群PAGにおいて実証された、シリケートセラミックに対するリン酸の有効性が達成され、その結果、ERM−VIは、文献の参照物に匹敵するが、基材依存性ではない、洗浄剤を提示する。
【0069】
純粋な苛性ソーダを用いて、ナノ粒子成分を用いずに実施した、群NAOHの試験は、両方の型のセラミックに対する、明らかにより低い有効性を示した。群NAOHの結合価は、群REFの初期値より明らかに低い。群ERM−IIが同じpHにおいて非常に高い洗浄効果を有したことを考慮すると、このことは、表面洗浄に対する適切なナノ粒子の驚くべき有利な影響を証明する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯科用修復物またはインプラント橋脚歯の一部分である金属表面またはセラミック表面を洗浄するための組成物であって、該組成物は、キャリア媒体、および1nm〜10μmの重量平均粒子直径を有する金属化合物ベースの粒子を含有する、組成物。
【請求項2】
洗浄されるべき前記表面が、タンパク質によって、特に、唾液タンパク質、例えば、リン含有唾液タンパク質によって汚染されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
洗浄されるべき前記表面が、金属またはセラミックからなる、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記洗浄が、前記歯科用修復物の試適の直後に行われる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記粒子が、1nm〜500nm、好ましくは、1nm〜100nmの重量平均粒子直径を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記金属化合物の金属が、第3主族の金属、副族金属およびランタノイドから選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記金属化合物の金属が、アルミニウム、ジルコニウム、チタン、スカンジウム、イットリウム、亜鉛、イッテルビウム、セリウムおよびこれらの組み合わせから選択される、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記金属化合物が、金属カルコゲニド、特に金属酸化物;金属ハロゲン化物;金属カルコゲンハロゲン化物、特に金属オキシハロゲン化物;金属擬ハロゲン化物、特に金属イソシアノーゲン;金属−ケイ素カルコゲニド;金属水酸化物;金属オキシ水酸化物、金属硝酸塩、金属オキシ硝酸塩およびこれらの混合物から選択される、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記金属化合物が、酸化アルミニウム、オキシ水酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、二酸化チタンおよびこれらの混合物から選択される、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記キャリア媒体が液体である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記粒子が、前記組成物の総重量に対して1重量%〜50重量%、好ましくは5重量%〜35重量%の量で存在する、請求項1〜10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
洗浄されるべき前記表面が、酸化物セラミック、特に、二酸化ジルコニウムセラミックまたは酸化アルミニウムセラミック、ケイ酸塩セラミック、特に、二ケイ酸リチウムガラスセラミック、チタンまたはチタン合金からなる、請求項1〜11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項13】
(i)5重量%〜35重量%の、1nm〜100nmの重量平均粒子直径を有する金属化合物ベースの粒子であって、該金属化合物は、酸化アルミニウム、オキシ水酸化アルミニウム、二酸化ジルコニウム、二酸化チタンおよびこれらの混合物から選択される、粒子、
(ii)65重量%〜95重量%の、7〜14の範囲のpHを有する水または水溶液、ならびに
(iii)0重量%〜5重量%の任意の成分、
を含有する、洗浄組成物。
【請求項14】
金属表面またはセラミック表面を洗浄する方法であって、該方法は、該表面を請求項1または5〜11のいずれか1項に記載される洗浄組成物と接触させる工程、および該洗浄組成物を該表面上で動かす工程を包含する、方法。
【請求項15】
洗浄されるべき前記表面が、請求項2〜3または12のいずれか1項に記載されるように定義される、請求項14に記載の方法。

【公開番号】特開2011−184438(P2011−184438A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44503(P2011−44503)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(501151539)イフォクレール ヴィヴァデント アクチェンゲゼルシャフト (54)
【氏名又は名称原語表記】Ivoclar Vivadent AG
【住所又は居所原語表記】Bendererstr.2 FL−9494 Schaan Liechtenstein
【Fターム(参考)】