説明

洗浄組成物、これを用いた洗浄方法及び半導体素子の製造方法

【課題】実質的に中性に調整された特定の洗浄剤を含有する洗浄組成物に特有の課題を解決し、半導体基板の金属層、特に窒化チタンの腐食を防止し、しかもその製造工程で生じるプラズマエッチング残渣やアッシング残渣を十分に除去することができる洗浄組成物、これを用いた洗浄方法及び半導体素子の製造方法を提供する。
【解決手段】水と、洗浄剤と、塩基性有機化合物と、酸性有機化合物と、特定の含窒素芳香族環状化合物とを含有させ、実質的に中性に調整された、半導体用基板用の洗浄組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄組成物、これを用いた洗浄方法及び半導体素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路の製造において、ポジのフォトレジストは、中間マスクとして使われている。具体的には、一連の写真平板とプラズマエッチングとを組み合わせた加工工程において、半導体基板(ウエハー基板)上に、焦点板のマスクパターンを移すための媒体として利用されている。このパターン化されたフォトレジストフィルムは、集積回路の製造工程の所定の段階において基板から除去されることとなる。一般に、このフォトレジストフィルムの除去は、以下の2つの方法で行われる。
【0003】
第1の方法は、フォトレジスト被覆された基板を、まず有機溶媒とアミンからなるフォトレジストのストリッパー溶液と接触させる、「ウェットストリッピング工程」を含む方法である。しかしながら、このストリッパー溶液を用いた方法では、フォトレジストフィルムが製造中に紫外線照射やプラズマ処理にさらされた場合に、それを完全に除去することができないことがある。その要因として、フォトレジストフィルムの中には、上記のような紫外線照射処理等により変質し、ストリッパー溶液に溶解しにくくなることが挙げられる。また、こうしたウェットストリッピング法において使用される溶剤は、多くの場合、ハロゲン含有ガスを用いたプラズマエッチング中に形成される無機残渣物質を除去する効果が低い。
【0004】
第2の方法としては、プラズマアッシングが挙げられる。この方法では、まず、半導体基板の表面からレジストフィルムを燃焼させるために、フォトレジストコートされたウエハーを、酸素をベースとしたプラズマにさらす。この処理は、真空チャンバー内で行われるため、空中の微粒子や金属の汚染の影響に受けにくい。かかる利点に基づき、集積回路の製造工程において、上記プラズマアッシングが広く利用されている。
【0005】
しかしながら、プラズマアッシングも、上述したプラズマエッチングの副産物を除去するのには、完全に有効なものとはいえない。したがって、プラズマアッシングによっても、前述のウェットストリッピングによっても、プラズマエッチング副産物(残渣)の除去は、洗浄溶液等により別途洗浄除去する必要がある。また、プラズマアッシングにおいては、これにより生じた副産物(残渣)の洗浄除去も併せて行う必要がある。
【0006】
プラズマアッシングの後のプラズマエッチングにより残されたプラズマエッチング副産物(残渣)を除去するためのいくつかの市販品が現在入手できる(例えば、EKC Technology Inc.社製 EKC 265(商品名)、Ashland Chemical社製 ACT 935(商品名)、Mitsubishi Gas Chemical社製 ELM C-30(商品名))。これらの製品に関しては特許文献としても公開されている(特許文献1〜3参照)。しかしながら、これらの市販製品は、pHが11以上と高かったりフッ素化合物を含んだりしており、プラズマエッチング残渣を効果的に分解することはできるが、基板上の金属や酸化物の蒸着パターンも攻撃してしまうことがある。これらの製品では腐食防止剤が適用されているが、それだけで十分な腐食防止性が得られるものとはしがたい。
【0007】
これに対し、半導体基板に有害な影響を与えないような洗浄組成物が開発された(特許文献4参照)。これは水系の組成物(洗浄液)であり、ヒドロキシルアミン化合物、塩基性化合物、有機酸等の酸を含有し、これによって洗浄性を維持しながら、腐食防止を達成することができる。また、この洗浄液は水を主媒体とする水系のものであり、有機系の洗浄液に対して、低コストであり、環境適合性に優れるという利点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5279771号明細書
【特許文献2】米国特許第5419779号明細書
【特許文献3】米国特許第5630904号明細書
【特許文献4】特許第3871257号公報
【特許文献5】特許第3513491号公報
【特許文献6】特許第4147320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特許文献4〜6に開示されている新技術により半導体基板の洗浄組成物における金属の腐食防止性は飛躍的に高まった。しかし本発明者らは、さらに高い性能の達成を目的に研究開発を継続した。特に、ヒドロキシルアミン化合物等の特定の洗浄剤が高い洗浄力を示す実質的に中性の領域で、高い金属の腐食防止性を発揮する洗浄組成物の探索を進めた。
【0010】
本発明は、実質的に中性に調整された特定の洗浄剤を含有する洗浄組成物に特有の課題を解決し、半導体基板の金属層、特に窒化チタンの腐食を防止し、しかもその製造工程で生じるプラズマエッチング残渣やアッシング残渣を十分に除去することができる洗浄組成物、これを用いた洗浄方法及び半導体素子の製造方法の提供を目的とする。また、上記利点と同時に、水系洗浄組成物に由来する低コスト化及び環境適合化をも実現しうる洗浄組成物、これを用いた洗浄方法及び半導体素子の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)水と、洗浄剤と、塩基性有機化合物と、酸性有機化合物と、下記一般式(I)で表わされる含窒素芳香族環状化合物とを含有させ、実質的に中性に調整された、半導体用基板用の洗浄組成物。
【化1】

(式中、Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。R、R、及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アリール基、またはベンジル基を表す。)
(2)前記一般式(I)で表わされる化合物がイミダゾール、N−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールであることを特徴とする(1)に記載の洗浄組成物。
(3)前記一般式(I)で表わされる化合物がイミダゾールであることを特徴とする(2)に記載の洗浄組成物。
(4)前記酸性有機化合物が、1官能性、2官能性、3官能性、又は4官能性の有機酸であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1項に記載の洗浄組成物。
(5)前記酸性有機化合物が、乳酸、クエン酸、ギ酸、シュウ酸、酢酸、プロピオン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、グリコール酸、サリチル酸、酒石酸、及びリンゴ酸よりなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1項に記載の洗浄組成物。
(6)前記塩基性有機化合物が、有機アミン及び第4級アンモニウム水酸化物よりなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項に記載の洗浄組成物。
(7)前記塩基性有機化合物が、水酸基を有しない有機アミンであることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載の洗浄組成物。
(8)前記塩基性有機化合物が、テトラアルキルアンモニウム水酸化物であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項に記載の洗浄組成物。
(9)前記洗浄剤が、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシルアミン硫酸塩、ヒドロキシルアミン塩酸塩、ヒドロキシルアミン硝酸塩、及びヒドロキシルアミンリン酸塩からなる群より選ばれた少なくとも1つの化合物であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれか1項に記載の洗浄組成物。
(10)さらに水溶性有機溶剤を含有することを特徴とする(1)〜(9)のいずれか1項に記載の洗浄組成物。
(11)さらにアミノ基含有カルボン酸を含有することを特徴とする(1)〜(10)のいずれか1項に記載の洗浄組成物。
(12)前記アミノ基含有カルボン酸がヒスチジン及び/又はアルギニンである(11)に記載の洗浄組成物。
(13)さらに洗浄組成物の全質量に対して0.1質量%以上0.5質量%未満の酸性無機化合物を含有する、(1)〜(12)のいずれか1項に記載の洗浄組成物。
(14)前記酸性無機化合物が、リン酸、ホウ酸、六フッ化リン酸、リン酸アンモニウム、ホウ酸アンモニウム、及び六フッ化リン酸アンモニウムからなる群より選ばれた少なくとも1つの化合物である、(13)に記載の洗浄組成物。
(15)前記酸性無機化合物が、リン酸及び/又はその塩である、(14)に記載の洗浄組成物。
(16)半導体素子製造工程におけるプラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣除去用の洗浄液として特に適した(1)〜(15)のいずれか1項に記載の洗浄組成物。
(17)洗浄される半導体基板が、露出したアルミニウムの層、銅の層、又は窒化チタンの層を含むことを特徴とする(1)〜(16)のいずれか1項に記載の洗浄組成物。
(18)半導体基板上のプラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣を(1)〜(17)のいずれか1項に記載の洗浄組成物で洗浄することを特徴とする洗浄方法。
(19)前記洗浄処理を50〜90℃の温度で行うことを特徴とする(18)に記載の洗浄方法。
(20)(a)(a−1)半導体基板に対してプラズマエッチングを行うエッチング工程、及び/又は、(a−2)半導体基板上のレジストに対してアッシングを行うアッシング工程、並びに、
(b)(1)〜(17)のいずれか1項に記載の洗浄組成物により、前記エッチング工程及び/又は前記アッシング工程において前記半導体基板上に形成されたプラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣を洗浄除去する洗浄工程
を含むことを特徴とする半導体素子の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の洗浄組成物は、半導体基板の金属層、特に窒化チタンの腐食を防止し、しかもその製造工程で生じるプラズマエッチング残渣やアッシング残渣の十分な除去を可能とする。また、上記利点と同時に、水系洗浄組成物に由来する低コスト化及び環境適合化をも実現することができる。
さらに、上記洗浄組成物を用いた本発明の洗浄方法及び半導体素子の製造方法により、高品質の半導体素子を、環境適合性を実現して、かつ安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の洗浄組成物の使用における一実施態様を示す半導体素子の製造工程の一部を概略的に示す工程説明図である。
【図2】本発明の洗浄組成物の使用における別の実施態様を示す半導体素子の製造工程の一部を概略的に示す工程説明図である。
【図3】本発明の洗浄組成物の使用におけるさらに別の実施態様を示す半導体素子の製造工程の一部を概略的に示す工程説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の洗浄組成物は、水(a)に、洗浄剤(b)と、塩基性有機化合物(c)と、酸性有機化合物(d)とを含有させ、実質的に中性に調整された洗浄組成物であって、さらに一般式(I)で表わされる特定の含窒素芳香族環状化合物(e)を含有させたことを特徴とする。これにより、極めて高い残渣の洗浄力と金属の腐食防止性とを両立して実現する。その作用機構については以下のように推定される。
【0015】
まず、本発明においてpHの選定が非常に重要であり、その点について述べる。ヒドロキシルアミン等の特定の化合物を洗浄剤として用いた場合、洗浄組成物のpHが酸性領域になるとその洗浄性が落ちてしまうものがある(特願2010−11623号明細書参照)。残渣の洗浄性能のみを考えた場合、pHは7以上が良く、通常それが高いほど洗浄性は向上する。しかしながらpHが高すぎると半導体基板の金属層に腐食が生じてしまい、pHが9を超えると満足する防食性能を達成することができないことがある。
【0016】
近年、半導体素子の構造や適用部材は一層多様化し、また小型化及び微細配線化の要求は益々高まってきている。そのような状況を反映して、半導体基板の製造過程での洗浄にあたっても、金属層の腐食防止性に対する対応が厳格に求められることがある。これを考慮して、酸性化合物を増量し、洗浄組成物のpHを下げて防食性を高めることが挙げられる。しかし、それでは上記特定の洗浄剤を用いた洗浄組成物では、洗浄力の低下が避けられない。本発明においては、そのジレンマを克服し、pHを中性領域に維持して、さらに特定の含窒素芳香族環状化合物を洗浄組成物に含有させる構成を採用した。これにより、実質的に中性領域で得られる、洗浄剤の高い洗浄力はそのままに維持して、金属部材、特に窒化チタンの腐食防止性の向上を両立して達成しうるというさらなる発見をした。その作用原理は未明の点を含むが、例えば金属窒化物について説明すると、そのチタン等の金属原子に含窒素芳香族環状化合物が特有の状態で配位し金属原子の酸化を抑制することにより、腐食を防止しているものと考えられる。さらに、含窒素芳香族環状化合物は中性pHにてそのN原子がプロトネーションされておらず、特に効果的に上記金属原子に配位できることが考えられる。以下、本発明の洗浄組成物、それを用いた洗浄方法及び半導体素子の製造方法の好ましい実施形態について、一部図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
〔残渣〕
半導体素子の製造プロセスにおいては、レジストパターン等をマスクとして用いたプラズマエッチングにより半導体基板上の金属層等をエッチングする工程がある。具体的には、金属層、半導体層、絶縁層などをエッチングし、金属層や半導体層をパターニングしたり、絶縁層にビアホールや配線溝等の開口部を形成したりすることが行われる。上記プラズマエッチングにおいては、マスクとして用いたレジストや、エッチングされる金属層、半導体層、絶縁層に由来する残渣が半導体基板上に生じる。本発明においては、このようにプラズマエッチングにより生じた残渣を「プラズマエッチング残渣」と称する。
【0018】
また、マスクとして用いたレジストパターンは、エッチング後に除去される。レジストパターンの除去には、上述のように、ストリッパー溶液を使用する湿式の方法、又は例えばプラズマ、オゾンなどを用いたアッシングによる乾式の方法が用いられる。上記アッシングにおいては、プラズマエッチングにより生じたプラズマエッチング残渣が変質した残渣や、除去されるレジストに由来する残渣が半導体基板上に生じる。本発明においては、このようにアッシングにより生じた残渣を「アッシング残渣」と称する。また、プラズマエッチング残渣及びアッシング残渣等の半導体基板上に生じた洗浄除去されるべきものの総称として、単に「残渣」ということがある。
【0019】
このようなエッチング後の残渣(Post Etch Residue)であるプラズマエッチング残渣やアッシング残渣は、洗浄組成物を用いて洗浄除去されることが好ましい。本発明の洗浄組成物は、プラズマエッチングにより生じたプラズマエッチング残渣及び/又はアッシングにより生じたアッシング残渣を除去するためのものとして得に適したものである。本発明の洗浄組成物は、プラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣を除去するための洗浄方法(使用)も適用することができる。なかでも、プラズマエッチングに引き続いて行われるプラズマアッシング後において、プラズマエッチング残渣及びアッシング残渣を除去するために使用することが好ましい。
【0020】
〔洗浄組成物〕
本発明の洗浄組成物は、上述のように、水に、洗浄剤、塩基性有機化合物、及び酸性有機化合物を含み、実質的に中性に調整されている。以下、各成分について順に説明する。
【0021】
(水)
本発明の洗浄組成物は、その媒体として水が適用されており、各含有成分が均一に溶解した水溶液であることが好ましい。水の含有量は、洗浄組成物の全質量に対して50〜99.5質量%であることが好ましい。このように、水を主成分(50質量%以上)とする洗浄組成物を特に水系洗浄組成物と呼ぶことがあり、有機溶剤の比率の高い洗浄組成物と比較して、安価であり、環境にやさしい点で好ましい。水としては、本発明の効果を損ねない範囲で溶解成分を含む水性媒体であってもよく、あるいは不可避的な微量混合成分を含んでいてもよい。なかでも、蒸留水やイオン交換水、あるいは超純粋といった浄化処理を施された水が好ましく、半導体製造に使用される超純水を用いることが特に好ましい。
【0022】
(洗浄剤)
本発明の洗浄組成物は洗浄剤を含み、これは含窒素化合物洗浄剤(窒素原子を含む化合物で構成された洗浄剤)であることが好ましい。中でも、該洗浄剤がアミン化合物洗浄剤(アミン化合物とは、アンモニア、第一アミン、第二アミン、第三アミン、第四アンモニウム塩、オキシム、=N−H等を含む化合物の総称である。)であることが好ましく、−NHを有するアミン化合物洗浄剤であることがより好ましく、−NHを有しかつ分子内に酸素原子を有するアミン化合物洗浄剤であることが特に好ましい。このとき一部もしくは全部がアミンオキシドになっていてもよい。具体的には、ヒドロキシルアミン(pKa=6)化合物、後述するカルバゼートであることが好ましい。その塩としては、無機酸塩又は有機酸塩であることが好ましく、Cl、S、N、Pなどの非金属が水素と結合してできた無機酸の塩であることがより好ましく、塩酸、硫酸、硝酸いずれかの酸の塩であることが特に好ましい。
【0023】
本発明の洗浄組成物を形成するのに使われるヒドロキシルアミンの塩としては、ヒドロキシルアミン硝酸塩(HANとも称される)、ヒドロキシルアミン硫酸塩(HASとも称される)、ヒドロキシルアミンリン酸塩、ヒドロキシルアミン塩酸塩などが例示できる。洗浄組成物に、ヒドロキシルアミンの有機酸塩も使用することができ、ヒドロキシルアミンクエン酸塩、ヒドロキシルアミンシュウ酸塩などが例示できる。これらヒドロキシルアミンの塩のうち、ヒドロキシルアミン硝酸塩、ヒドロキシルアミン硫酸塩、ヒドロキシルアミンリン酸塩、ヒドロキシルアミン塩酸塩などの無機酸塩が、アルミニウムや銅、チタンなどの金属に対して不活性なので好ましい。特に、ヒドロキシルアミン硝酸塩、ヒドロキシルアミン硫酸塩が好ましい。中でも、洗浄剤はヒドロキシルアミンもしくはヒドロキシルアミン硫酸塩であることが好ましい。これらヒドロキシルアミン化合物は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0024】
本発明において、洗浄剤は上記ヒドロキシアミン化合物に限定されず、所望の作用を有する化合物や組成物を適宜選定して用いることができる。典型的には、残渣成分を溶解しやすくするための作用として求核剤として機能するものが挙げられる。その観点から下記のものを例示することができる。
・好ましくはpKaが5以上8以下の求核剤(より好ましくはpKaが5.5以上7以下の求核剤)
・α効果(α位に電子供与原子を有するとpKaから予想されるより求核性高い)を有する求核剤
・TiOのER(エッチングレート)が高い求核剤
【0025】
なお、本明細書において化合物というときには、当該化合物そのものに加え、その塩、そのイオンを含む意味に用い、典型的には、当該化合物及び/又はその塩を意味する。したがって、上記ヒドロキシルアミン化合物というときには、ヒドロキシルアンモニウムイオン、ヒドロキシルアミン、及び/又はその塩を含む意味であり、典型的には、ヒドロキシルアミン及び/又はその塩を意味する。
【0026】
本発明の洗浄組成物を形成するのに使われるヒドロキシルアミンの塩としては、ヒドロキシルアミン硝酸塩(HANとも称される)、ヒドロキシルアミン硫酸塩(HASとも称される)、ヒドロキシルアミンリン酸塩、ヒドロキシルアミン塩酸塩などが例示できる。洗浄組成物に、ヒドロキシルアミンの有機酸塩も使用することができ、ヒドロキシルアミンクエン酸塩、ヒドロキシルアミンシュウ酸塩などが例示できる。これらヒドロキシルアミンの塩のうち、ヒドロキシルアミン硝酸塩、ヒドロキシルアミン硫酸塩、ヒドロキシルアミンリン酸塩、ヒドロキシルアミン塩酸塩などの無機酸塩が、アルミニウムや銅、チタンなどの金属に対して不活性なので好ましい。特に、ヒドロキシルアミン硝酸塩、ヒドロキシルアミン硫酸塩が好ましい。中でも、洗浄剤はヒドロキシルアミンもしくはヒドロキシルアミン硫酸塩であることが好ましい。これらヒドロキシルアミン化合物は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0027】
他の洗浄剤としては、水溶性ヒドラジノカルボン酸エステル(カルバジン酸エステルまたはカルバゼートとしても知られている)が挙げられる。適当なヒドラジノカルボン酸エステルの例としては、カルバジン酸メチル、カルバジン酸エチル、カルバジン酸プロピル、カルバジン酸イソプロピル、カルバジン酸ブチル、カルバジン酸ターシャリーブチル、カルバジン酸ペンチル、カルバジン酸デシル、カルバジン酸ペンタデシル、カルバジン酸エイコシル、カルバジン酸ベンジル、カルバジン酸フェニル、およびカルバジン酸2−ヒドロキシエチルが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
洗浄剤は、本発明の洗浄組成物の全質量に対して、約0.01〜約30質量%の範囲内で含有させることが好ましく、0.1〜15質量%含有させることがより好ましい。洗浄剤は、特にプラズマエッチング残渣の除去を容易にし、金属基板の腐食を防止する作用を示す。上記範囲とすることで、高い洗浄力を特に好適に発揮し、しかも良好な金属腐食防止効果が十分に得られる点で好ましい。
【0029】
(塩基性有機化合物)
本発明の洗浄組成物は、塩基性有機化合物を含む。本発明において、「塩基性有機化合物」とは、上記洗浄剤を含まない意味であり、当該「塩基性有機化合物」として洗浄剤と同じ化合物が採用されることはない。塩基性有機化合物は、構成元素として炭素及び窒素を有することが好ましく、アミノ基を有することがより好ましい。具体的には、塩基性有機化合物は、有機アミン及び第4級アンモニウム水酸化物よりなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物であることが好ましい。なお、有機アミンとは、構成元素として炭素を含むアミンを意味する。
【0030】
塩基性有機化合物の炭素数は、4〜30であることが好ましく、沸点もしくは水への溶解度の観点から6〜16であることがより好ましい。
本発明の洗浄組成物の塩基性有機化合物として使用される有機アミンには、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレングリコールアミン、N−ヒドロキシルエチルピペラジンなどのアルカノールアミン、及び/又はエチルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミン、n−ブチルアミン、3−メトキシプロピルアミン、tert−ブチルアミン、n−ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、n−オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、o−キシレンジアミン、m−キシリレンジアミン、1−メチルブチルアミン、エチレンジアミン(EDA)、1,3−プロパンジアミン、2−アミノベンジルアミン、N−ベンジルエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの水酸基を有しない有機アミンが含まれる。金属の腐食防止の観点から、アルカノールアミンよりも、水酸基を有しない有機アミンの方が好ましい。さらにエチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、o−キシレンジアミン、m−キシリレンジアミンが金属と配位することができるので特に好ましい。
【0031】
本発明の洗浄組成物の塩基性有機化合物として使われる第4級アンモニウム水酸化物としては、テトラアルキルアンモニウム水酸化物が好ましく、低級(炭素数1〜4)アルキル基で置換されたテトラアルキルアンモニウム水酸化物がより好ましく、具体的には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)などが挙げられる。さらに第4級アンモニウム水酸化物としてトリメチルヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシド(コリン)、メチルトリ(ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、テトラ(ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(BTMAH)なども挙げられる。それに加え、アンモニウム水酸化物と1つあるいはそれ以上の第4級アンモニウム水酸化物の組み合せも使用することができる。これらの中でも、TMAH、TEAH、TPAH、TBAH、コリンがより好ましく、TMAH、TBAHが特に好ましい。
【0032】
これら有機アミン及び第4級アンモニウム水酸化物は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。塩基性有機化合物の含有量は、本発明の洗浄組成物の全質量に対して、約0.01〜約20.0質量%であることが好ましく、1.0〜10.0質量%であることがより好ましい。上記範囲とすることで、上述したヒドロキシアミン化合物の含有量と対応して、pH調整作用を十分に発揮し、高い洗浄力と金属腐食防止効果との両立が図れるため好ましい。
【0033】
(酸性有機化合物)
本発明の洗浄組成物は、少なくとも1つの酸性有機化合物を含有し、該酸性有機化合物は、1官能性、2官能性、3官能性、又は4官能性有機酸であることが好ましい。酸性有機化合物は、金属の腐食防止剤として役立つ。
酸性有機化合物は、中でも、カルボン酸化合物が、アルミニウム、銅及びそれらの合金の金属腐食を有効に防止するため好ましく、ヒドロキシル基を有するヒドロキシカルボン酸化合物が金属腐食の防止に特に有効であるためより好ましい。カルボン酸化合物はこれらの金属に対してキレート効果を有する。好ましいカルボン酸化合物には、モノカルボン酸化合物及びポリカルボン酸化合物が含まれる。カルボン酸化合物としては、これらに限定されないが、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、バレリア酸、イソバレリア酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、グリコール酸、乳酸、クエン酸、サリチル酸、酒石酸、グルコン酸、ジグリコール酸、リンゴ酸、アセトヒドロキサム酸、ベンゾヒドロキサム酸、サリチルヒドロキサム酸、フタルヒドロキサム酸、安息香酸、ジヒドロキシ安息香酸及びそれらの混合物が例示できる。中でも、ヒドロキシカルボン酸であるクエン酸、リンゴ酸、酒石酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸が好ましく使用できる。
なお、カルボン酸化合物は、構成元素をC、H、及びOのみとするものであることが好ましく、アミノ基を有しないことがより好ましい。
【0034】
また、これら酸性有機化合物は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができるが、金属の腐食を効果的に防止する観点から、2種以上を併用することが好ましい。酸性有機化合物は、本発明の洗浄組成物の全質量に対して、好ましくは約0.01〜約20.0質量%の間で加えられ、より好ましくは約0.05〜約20.0質量%加えられ、更に好ましくは0.1〜10.0質量%加えられる。上記範囲とすることで、ヒドロキシルアミン化合物及び塩基性有機化合物の上記好ましい含有量と対応して、洗浄力を低下させることなく、良好な金属腐食防止効果が十分に得られる点で好ましい。
【0035】
(アミノ基含有カルボン酸)
本発明の洗浄組成物は、アミノ基含有カルボン酸を含有してもよい。アミノ基含有カルボン酸は、金属腐食を効率よく防止する点で好ましい。
アミノ基含有カルボン酸としては、グリシン、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、アルギニン、グルタミン、グルタミン酸、ヒスチジン、セリン、システイン、チロシン、フェニルアラニンなどのアミノ酸、及び/又は以下から成るアミノポリカルボン酸塩群{エチレンジアミンテトラ酢酸塩(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸塩(HEDTA)、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン四酢酸塩(DHEDDA)、ニトリロ酸酢酸塩(NTA)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸塩(HIDA)、β−アラニンジ酢酸塩、アスパラギン酸ジ酢酸塩、メチルグリシンジ酢酸塩、イミノジコハク酸塩、セリンジ酢酸塩、ヒドロキシイミノジコハク酸塩、ジヒドロキシエチルグリシン塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩など}、以下から成るヒドロキシカルボン酸塩群{ヒドロキシ酢酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩など}、以下から成るシクロカルボン酸塩群{ピロメリット酸塩、ベンゾポリカルボン酸塩、シクロペンタンテトラカルボン酸塩など}、以下から成るエーテルカルボン酸塩群{カルボキシメチルタルトロネート、カルボキシメチルオキシサクシネート、オキシジサクシネート、酒石酸モノサクシネート、酒石酸ジサクシネートなど}、以下から成るその他カルボン酸塩群{マレイン酸誘導体、シュウ酸塩など}、以下から成る有機カルボン酸(塩)ポリマー群{アクリル酸重合体及び共重合体(アクリル酸−アリルアルコール共重合体、アクリル酸−マレイン酸共重合体、ヒドロキシアクリル酸重合体、多糖類−アクリル酸共重合体など)、以下から成る多価カルボン酸重合体及び共重合体群{マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、テトラメチレン−1,2−ジカルボン酸、コハク酸、アスパラギン酸、グルタミン酸などのモノマーの重合体及び共重合体}、以下から成るグリオキシル酸重合体、多糖類群{デンプン、セルロース、アミロース、ペクチン、カルボキシメチルセルロースなど}、以下から成るホスホン酸塩群{メチルジホスホン酸塩、アミノトリスメチレンホスホン酸塩、エチリデンジホスホン酸塩、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸塩、エチルアミノビスメチレンホスホン酸塩、エチレンジアミンビスメチレンホスホン酸塩、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸塩、ヘキサメチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、プロピレンジアミンテトラメチレンホスホン酸塩、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸塩、トリエチレンテトラミンヘキサメチレンホスホン酸塩及びテトラエチレンペンタミンヘプタメチレンホスホン酸塩など}などが挙げられる。
なお、これらの塩としては、アンモニウム塩、アルカノールアミン(モノエタノールアミン、トリエタノールアミンなど)塩などが挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらのアミノ基含有カルボン酸の中でも、アルギニン、ヒスチジン、グルタミン、EDTA、DTPA、HIDAが好ましく、アルギニン、ヒスチジンがより好ましい。
これらアミノ基含有カルボン酸は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0036】
本発明の洗浄組成物において、アミノ基含有カルボン酸を含有させる場合、その添加量は、適宜選択できるが、本発明の洗浄組成物の全質量に対して、0.01〜5.0質量%であることが好ましく、0.01〜3質量%であることがより好ましい。
【0037】
(酸性無機化合物)
本発明の洗浄組成物は、酸性無機化合物を含有してもよい。酸性無機化合物の使用は、金属、特にAlの腐食抑制の点で好ましい。
酸性無機化合物としては、リン酸化合物、ホウ酸化合物があげられ、好ましくはリン酸、リン酸塩である。具体的には例えば、リン酸、ホウ酸、六フッ化リン酸、リン酸アンモニウム、ホウ酸アンモニウム、六フッ化リン酸アンモニウムなどがある。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明の洗浄組成物において、酸性無機化合物を含有させる場合、その添加量は、適宜選択できるが、洗浄組成物の経時安定性の観点から、本発明の洗浄組成物の全質量に対して、約0.1質量%以上0.5質量%未満であることが好ましく、0.2〜0.4質量%であることがより好ましい。
【0038】
(洗浄組成物のpH)
本発明の洗浄組成物は実質的に中性に調整されている。本発明において実質的に中性とは、洗浄組成物の所望の効果が奏される範囲でその組成物がpH7付近にあることをいう。具体的にはpHが5〜10であることが好ましく、6〜8であることがより好ましい。pHが上記の数値の範囲内であると、フォトレジスト、反射防止膜、エッチング残渣、及び、アッシング残渣を十分に除去しながら金属の防食を両立することができる。このpH領域にすることにより、酸化ケイ素と金属層をプラズマエッチングしてビアパターンを形成した場合の残渣を十分に除去することができ好ましい。pHの測定方法としては、市販のpHメーターを用いて測定することができる。本発明においては、特に断らない限り、pHは実施例で示した条件で測定した値をいう。洗浄組成物を所定のpHに調整するためには、塩基性有機化合物の添加量を調節した滴定により行うことができる。
【0039】
(含窒素芳香族環状化合物)
本発明の洗浄組成物は、前記基本成分のほかに、一般式(I)で表わされる含窒素芳香族環状化合物を含有させている。
【0040】
【化2】

【0041】
一般式(I)中、Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表し、好ましくは水素原子である。
、R、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アリール基(好ましくは炭素数6〜12、例えばフェニル、ナフチルなど)、ベンジル基を表し、好ましくは水素原子である。
一般式(I)で表わされる化合物として好ましくはイミダゾール、N−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールなどが挙げられ、特に好ましくはイミダゾールを用いる。
【0042】
上述した環状化合物は、1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。一般式(I)で表わされる含窒素芳香族環状化合物は、本発明の洗浄組成物の全質量に対して、好ましくは0.01〜20質量%の間で加えられ、より好ましくは0.1〜10質量%加えられ、更に好ましくは0.5〜5質量%加えられる。上記範囲とすることで、高い洗浄力を維持して良好な金属腐食防止効果、特に窒化チタンの腐食防止効果が十分に得られる点で好ましい。当該環状化合物は、その含有量を増加させることで、より防食性を向上させることが可能となる。
【0043】
(水溶性有機溶剤)
本発明の洗浄組成物は、水溶性有機溶剤を含有してもよい。水溶性有機溶剤は、腐食防止の点でよい。例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、1−プロピルアルコール、2−プロピルアルコール、2−ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ソルビトール、キシリトール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール等のアルコール系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤、ホルムアミド、モノメチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトアミド、モノメチルアセトアミド、ジメチルアセトアミド、モノエチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶剤、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶剤、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン等のラクトン系溶剤等が挙げられる。これらの中で好ましいのはアルコール系、エーテル系であり、更に好ましくは、1,6−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルである。水溶性有機溶剤は単独でも2種類以上適宜組み合わせて用いてもよい。
【0044】
洗浄組成物中における水溶性有機溶剤の含有量は、洗浄組成物の全質量に対して、好ましくは0〜40質量%の濃度で使用され、より好ましくは0〜20質量%の濃度で使用される。更に好ましくは、0.01〜15質量%の濃度で使用される。水溶性有機溶剤を洗浄組成物に添加することで、カーボンリッチな残渣への洗浄力を向上させることができ、また金属膜の腐食防止性を高める観点からも好ましい。
【0045】
(その他の成分)
・界面活性剤
また、本発明の洗浄組成物は界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤としては、ノニオン性、アニオン性、カチオン性界面活性剤、及び、両性界面活性剤を用いることができる。洗浄組成物中の界面活性剤の含有量は、洗浄組成物の全質量に対して、好ましくは0.0001〜5質量%であり、より好ましくは0.0001〜1質量%である。界面活性剤を洗浄組成物に添加することで洗浄組成物の粘度を調整し、洗浄対象物への濡れ性を改良することができるため好ましく、加えて基板や絶縁膜などに対する腐食性の両者がより優れるという点からも好ましい。このような界面活性剤は一般に商業的に入手可能である。これらの界面活性剤は、単独又は複数組み合わせて用いてもよい。
【0046】
・腐食防止剤
本発明の洗浄組成物は腐食防止剤を含有してもよい。本発明において「腐食防止剤」とは上記一般式(I)で表わされる含窒素芳香族環状化合物を含まない意味であり、当該「腐食防止剤」として一般式(I)で表わされる含窒素芳香族環状化合物が採用されることはない。腐食防止剤は複素環化合物であることが好ましく、ベンゾトリアゾール及びその誘導体であることがより好ましい。前記誘導体としては、5,6−ジメチル−1,2,3−ベンゾトリアゾール(DBTA)、1−(1,2−ジカルボキシエチル)ベンゾトリアゾール(DCEBTA)、1−[N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール(HEABTA)、1−(ヒドロキシメチル)ベンゾトリアゾール(HMBTA)が好ましい。本発明で用いる腐食防止剤は、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。また、本発明で用いる腐食防止剤は、定法に従って合成できるほか、市販品を使用してもよい。また、腐食防止剤の添加量は好ましくは0.01質量%以上0.2質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%以上0.2質量%以下である。
【0047】
各成分の組成物中における同定は定法により適宜行えばよいが、例えば、イオンクロマトグラフィーやH−NMR、分光吸収度計を用いるのが良い。
【0048】
〔洗浄方法〕
次に、本発明の洗浄方法における好ましい実施形態について説明する。本実施形態の洗浄方法は、上記本発明の洗浄組成物を使用し、半導体基板に形成されたプラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣を洗浄する洗浄工程を含むものである。この洗浄方法においては、上述した本発明の洗浄組成物の利点である高い洗浄力と金属層の腐食防止性が効果的に発揮される点で、半導体基板において、例えばビアや配線などの金属層が形成され露出し、そこに上記残渣が堆積した状態のものであることが好ましい。金属層としては、窒化チタン、アルミニウム又は銅を含むものであることが、上記本発明の洗浄組成物の効果が発揮されるため、より好ましい。前記洗浄工程における洗浄の態様は、少なくともプラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣が形成された半導体基板の面を本発明の洗浄組成物に接触させる態様であれば、特に限定されるものではないが、本発明の洗浄組成物に該半導体基板を浸漬する態様が好ましい。
【0049】
本実施形態の洗浄方法は、上記洗浄工程において洗浄組成物が加熱された状態で行われることが好ましい。洗浄組成物の洗浄工程における加熱温度は特に限定されないが、50〜90℃であることが好ましく、55〜80℃であることがより好ましい。したがって、本実施態様によれば、上記のような範囲に組成物が加熱して使用されるため、その温度で含有成分が分解したり、揮発したり、反応したりしないものであることが好ましい。また、温度による組成物のpHの変化が大きくないことが好ましく、上述した実施形態の洗浄組成物においては、室温から上記洗浄時の温度においてのpHの変化は大きくなく実質的に中性にされている。
【0050】
〔半導体素子の製造方法〕
次に、本発明の半導体素子の製造方法における好ましい実施形態について詳述する。本実施形態の製造方法は、(a)(a−1)半導体基板に対してプラズマエッチングを行うエッチング工程、及び/又は、(a−2)半導体基板上のレジストに対してアッシングを行うアッシング工程、並びに、(b)上記の洗浄組成物により、前記エッチング工程及び/又は前記アッシング工程において前記半導体基板上に形成されたプラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣を洗浄除去する洗浄工程を含む。具体的には、ビアホール又は配線を形成した後の半導体基板の洗浄において、上記の洗浄組成物を適用する製造方法であることが好ましい。なお、本発明における「半導体基板」とは、半導体素子(最終製品)を製造する途中の中間加工品全般をいい、特に断りのない限り、シリコンウエハだけでなく、例えば、シリコンウエハ上に、層間絶縁膜や、タングステンプラグ、ビアホール、配線等を形成したものを含む意味である。
【0051】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に基づく半導体素子の製造方法の概要を示す工程断面図である。なお、図1〜3は断面を想定して示しているが、図中の煩雑さを避け、ハッチングを省略して示している。
・工程a:図1(a)参照
まず、通常の半導体素子の製造プロセスにより、シリコンウエハ10上に、トランジスタその他の素子や1層又は2層以上の配線を形成する。次いで、素子等が形成されたウエハ10上に、層間絶縁膜を形成する。次いで、全面に、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition、化学気相堆積)法により、例えば膜厚約500nmのAl合金膜12と、例えば膜厚約50nmの窒化チタン膜14とを順次積層する。こうして、Al合金膜12と窒化チタン膜14とを順次積層してなる導体膜を形成する。なお、Al合金膜12は、例えば0.1〜5質量%のCuを含有するAlとCuとの合金膜である。
【0052】
次いで、フォトリソグラフィー及びドライエッチングにより、導体膜をパターニングする。こうして、Al合金膜12と窒化チタン膜14とからなる配線16を形成する。さらに、全面に、例えばCVD法により、例えば膜厚約500nmのシリコン酸化膜18を形成する。次いで、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing、化学的機械的研磨)法により、シリコン酸化膜18の表面を研磨し、シリコン酸化膜18の表面を平坦化する。上記の手順を経て、図1(a)に示した半導体基板aとなる。
【0053】
・工程b:図1(b)参照
次いで、シリコン酸化膜18上に、フォトリソグラフィーにより、ビアパターンを有するフォトレジスト膜Rを形成する。続いて、このフォトレジスト膜をマスクとして、プラズマエッチングにより、シリコン酸化膜18をエッチングする。このとき、シリコン酸化膜18下の窒化チタン膜14の上部をもエッチングする。こうして、シリコン酸化膜18に、配線16の窒化チタン膜14に達するビアホール(ビアパターンA)20を形成する(図1(b)参照)。シリコン酸化膜18及び窒化チタン膜14の上部のプラズマエッチングは、それぞれ公知の方法を用いて行うことができる。
【0054】
・工程c:図1(c)参照
次いで、例えばプラズマ、酸素などを用いたアッシングにより、マスクとして用いたフォトレジスト膜を除去する。フォトレジスト膜のアッシングは、公知の方法を用いて行うことができる。ビアホール20を形成するためのプラズマエッチング及びフォトレジスト膜を除去するためのアッシングにおいては、ビアホール20周辺の表面を含む基板表面に、変質したフォトレジスト膜、シリコン酸化膜18、及びビアホール20底に露出した窒化チタン膜14に由来する残渣(プラズマエッチング残渣及びアッシング残渣)Gが付着する。図1cでは、この残渣Gが存在する状態を示している。
【0055】
・工程d:図1(d)参照
そこで、フォトレジスト膜を除去するためのアッシング後、本実施形態による洗浄組成物により、ビアホール20までが形成されたウエハ10を洗浄する。こうして、ビアホール20までが形成されたウエハ10の表面に付着したプラズマエッチング残渣及びアッシング残渣を除去する。その結果、半導体基板dの表面は極めて清浄な状態にされ、理想的な電気的特性を有する各材料の表面が露出した状態とされる(図1(d)参照)。
次いで、全面に、例えばCVD法により、タングステン膜を形成する。さらに、例えばCMP法により、シリコン酸化膜18の表面が露出するまでタングステン膜を研磨する。こうして、ビアホール20内に、タングステンよりなるビアを埋め込む。このようにして、素子の部材界面に上記アッシング残渣のない高品質の半導体素子が得られる。
【0056】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態による半導体素子の製造方法の概要について、図2を用いて説明する。本実施形態による半導体素子の製造方法は、配線16のAl合金膜12に達するビアホール20を形成する点で、第1実施形態による半導体素子の製造方法とは異なる。
【0057】
・工程a:図2(a)参照
まず、第1実施形態による半導体素子の製造方法と同様にして、ウエハ10上に、Al合金膜12と窒化チタン膜14とからなる配線16、及びシリコン酸化膜18を形成する(図2(a)参照)。
【0058】
・工程b:図2(b)参照
次いで、シリコン酸化膜18上に、フォトリソグラフィーにより、ビアパターンを有するフォトレジスト膜を形成する。続いて、このフォトレジスト膜をマスクとして、プラズマエッチングにより、シリコン酸化膜18及び窒化チタン膜14をエッチングする。このとき、窒化チタン膜14下のAl合金膜12の上部をもエッチングする。こうして、シリコン酸化膜18及び窒化チタン膜14に、配線16のAl合金膜12に達するビアホール20(ビアパターンB)を形成する。シリコン酸化膜18、窒化チタン膜14、及びAl合金膜12の上部のプラズマエッチングは、それぞれ常法を用いて行うことができる。
【0059】
・工程c:図2(c)参照
次いで、例えばプラズマ、酸素などを用いたアッシングにより、マスクとして用いたフォトレジスト膜を除去する。フォトレジスト膜のアッシングは、公知の方法を用いて行うことができる。本実施形態の場合、ビアホール20を形成するためのドライエッチング及びフォトレジスト膜を除去するためのアッシングにおいて、ビアホール20周辺の表面及びビアホール20の壁面を含む基板表面に、プラズマエッチング残渣及びアッシング残渣が付着する。本実施形態の場合、プラズマエッチング残渣及びアッシング残渣は、変質したフォトレジスト膜、シリコン酸化膜18及び窒化チタン膜14だけでなく、ビアホール20底に露出したAl合金膜12にも由来する。
【0060】
・工程d:図2(d)参照
そこで、フォトレジスト膜を除去するためのアッシング後、本実施形態による洗浄組成物により、ビアホール20までが形成されたウエハ10を洗浄する。こうして、ビアホール20までが形成されたウエハ10の表面に付着したプラズマエッチング残渣及びアッシング残渣を除去する。その結果、半導体基板dの表面は極めて清浄な状態にされ、理想的な電気的特性を有する各材料の表面が露出した状態とされる。本実施形態では特に、ビアホールの底部にあたるアルミニウム(Al)合金膜12の表面も十分に洗浄されその清浄面が露出されている。
【0061】
次いで、第1実施形態による半導体素子の製造方法と同様にして、ビアホール20に埋め込まれたビアを形成する。このようにして、素子の部材界面に上記アッシング残渣のない高品質の半導体素子が得られる。
【0062】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態による半導体装置の製造方法の概要について図3を用いて説明する。
・工程(a):図3(a)参照
まず、第1実施形態による半導体素子の製造方法と同様に、素子等が形成された半導体基板(ウエハ)上に、層間絶縁膜24を形成する。次いで、全面に、例えばCVD法により、例えば膜厚約50nmの窒化チタン膜26と、例えば膜厚約20nmのチタン膜28と、例えば膜厚約500nmのAl合金膜30と、例えば膜厚約50nmの窒化チタン膜32とを順次積層する。なお、Al合金膜30は、例えば0.1〜5%のCuを含有するAlとCuとの合金膜である。上記寸法は一例であり本実施形態がこれに限定して解釈されるものではない。
【0063】
・工程b:図3(b)参照
次いで、窒化チタン膜32上に、フォトリソグラフィーにより、配線パターンを有するフォトレジスト膜を形成する。続いて、このフォトレジスト膜をマスクとして、プラズマエッチングにより窒化チタン膜32、Al合金膜30、チタン膜28及び窒化チタン膜26を順次エッチングする。こうして、窒化チタン膜32、Al合金膜30、チタン膜28及び窒化チタン膜26をパターニングし、これら導体膜よりなる配線(配線パターン)34を形成する。
【0064】
・工程c:図3(c)参照
次いで、薬液を用いたウェット処理により、マスクとして用いたフォトレジスト膜の大部分を剥離除去する。続いて、例えばプラズマ、酸素などを用いたアッシングにより、フォトレジスト膜の残部を除去する(図3(c)参照)。配線34を形成するためのプラズマエッチング及びフォトレジスト膜の残部を除去するためのアッシングにおいては、図3(c)に示すように、配線34の上面及び側面を含む基板表面に、残渣(プラズマエッチング残渣及びアッシング残渣)Gが付着する。この残渣Gは、変質したフォトレジスト膜、窒化チタン膜32、Al合金膜30、チタン膜28、及び窒化チタン膜26に由来する。
【0065】
・工程d:図3(d)参照
そこで、フォトレジスト膜の残部を除去するためのアッシング後、本発明による洗浄組成物により、配線34までが形成されたウエハ10を洗浄する。こうして、配線34までが形成されたウエハ10の表面に付着したプラズマエッチング残渣及びアッシング残渣を除去する。その結果、半導体基板dの表面は極めて清浄な状態にされ、理想的な電気的特性を有する各材料の表面が露出した状態とされる(図3(d)参照)。特に本実施形態によれば、リセス(ソースとドレインとの間の溝)29における金属腐食が防止され好ましい。
【0066】
なお、上記実施形態では、Al合金膜12、30を含む配線16、34を形成する場合について説明したが、配線の材料は上述したものに限定されるものではない。配線としては、Al又はAl合金よりなるAlを主材料とする配線のほか、Cu又はCu合金よりなるCuを主材料とする配線を形成することができる。
【0067】
また、本発明の洗浄組成物は、窒化チタン、アルミニウム又は銅の金属層を含む半導体基板からプラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣を洗浄する工程に広く用いることができ、アルミニウム又は銅は半導体用基板上に形成された配線構造中に含まれることが好ましい。上記のように多様な形態及び条件の半導体製造工程において本実施形態に係る洗浄液は効果を奏し、これによる洗浄を介して製造された半導体素子の部材界面には上記残渣がなく、極めて高品質の半導体素子を得ることができる。
【実施例】
【0068】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0069】
<実施例、比較例>
以下の表1に示す成分をそこに示した組成(質量%)で水に含有させて洗浄組成物101〜115を調液した(実施例)。水は、半導体製造工程で使用される一般的な超純水を用いた。また、上記実施例に対し以下の表1に示す成分組成について代え、洗浄組成物c11、c12(比較例)、s11、s12(参考例)を調液した。なお、表中に組成(質量%)を示した成分はこの量を含有させ、塩基性有機化合物は各試料について示したpHになる量で含有させた。これらに水の組成(質量%)を合わせて100質量%となることを意味する。表中のpHは室温(23℃)においてHORIBA社製、F−51(商品名)で測定した値である。
【0070】
<洗浄試験>
上記第1及び第2実施形態について、ビアホール形成後、パターンウエハを走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)により観察したところ、いずれもビアホール壁面にプラズマエッチング残渣及びアッシング残渣が認められた(図1(c)及び図2(c)参照)。また、上記第3実施形態について、配線形成後、パターンウエハをSEMにより観察したところ、配線の上面及び側面にプラズマエッチング残渣及びアッシング残渣が認められた(図3(c)参照)。
【0071】
表1に記載した温度に調温した上記各洗浄組成物に上記残渣の付着したパターンウエハの切片(約2cm×2cm)を浸漬し、表1〜3に記載した浸漬時間後にパターンウエハの切片を取り出し、直ちに超純水で水洗、N2乾燥を行った。浸漬試験後のパターンウエハの切片の断面及び表面をSEMで観察し、フォトレジスト及び残渣(プラズマエッチング残渣及びアッシング残渣)の除去性、並びに、Al及びTiNの腐食性について下記の判断基準に従って評価を行った。除去性及び腐食性の評価結果を表1に記載した。
【0072】
<ビアホール周辺の表面の残渣除去>
AA:フォトレジスト及び残渣が完全に除去された。
A:フォトレジスト及び残渣がほぼ完全に除去された。
B:フォトレジスト及び残渣の溶解不良物が残存していた。
C:フォトレジスト及び残渣がほとんど除去されていなかった。
【0073】
<ビアホール底の金属層の腐食>
AA:TiNの腐食は見られなかった。
A:TiNの腐食が配線に対して1%以下で起こっていた。
B:TiNの腐食が配線に対して10%以下で起こっていた。
C:TiNが完全に消失していた。
【0074】
なお、第3実施形態については、ビアホール周辺の表面ではなく、配線側面・上面の残渣除去の状態を観察評価した。また、金属層については、Al腐食(リセス)により評価した。評価基準は上記と同様である。
【0075】
【表1】

【0076】
【表2】

表中の略称は以下のとおりの内容を意味する。
・「%」は質量%を意味する。
・HAS:ヒドロキシルアミン硫酸塩
・CM:カルバジン酸メチル
・HA:ヒドロキシルアミン
・TMAH:テトラメチルアンモニウムヒドロキシド
・PVP:ポリビニルピロリドン
・PVA:ポリビニルアルコール
・PAA:ポリアクリル酸
1,3-BuDO:1,3−ブタンジオール
DPG:ジプロピレングリコール
【0077】
・残渣除去[1]:第1実施形態のビアホール周辺の表面の残渣除去に対する評価結果
・金属腐食[1]:第1実施形態のビアホール底のTiNの腐食に対する評価結果
・残渣除去[2]:第2実施形態のビアホール周辺の表面の残渣除去に対する評価結果
・金属腐食[2]:第2実施形態のビアホール底のAlの腐食に対する評価結果
・残渣除去[3]:第3実施形態の配線側面・上面の残渣除去に対する評価結果
・金属腐食[3]:第3実施形態のAlの腐食(リセス)における評価結果
【0078】
上記表1に示したとおり、本発明の洗浄組成物(実施例)は、様々な形態の半導体素子の製造において、半導体基板の金属部材の腐食を防止し、しかもその製造工程で生じるプラズマエッチング残渣やアッシング残渣の十分な除去を可能とするものであることが分かる。特に、酸性であり上記一般式(I)で表わされる含窒素芳香族環状化合物を含まない組成物(比較例、組成物c11、c12)に対して、極めて高い洗浄力と金属の腐食防止効果を示すものであることが分かる。また、イミダゾールを含み、アルカリ性または酸性の組成物(比較例、組成物c13、14)に比し、極めて高い洗浄力と金属の防食防止効果を示した。さらに、中性であるが上記一般式(I)で表わされる含窒素芳香族環状化合物を用いなかった組成物(参考例)に対して、金属の腐食防止効果が高まっていることが分かる(組成物103〜105、組成物s11、s12 対比参照)。
【符号の説明】
【0079】
10 ウエハ
12 Al合金膜
14 窒化チタン膜
16 配線
18 シリコン酸化膜
20 ビアホール
24 層間絶縁膜
26 窒化チタン膜
28 チタン膜
29 リセス
30 Al合金膜
32 窒化チタン膜
34 配線
R レジスト
G 残渣(プラズマエッチング残渣及びアッシング残渣)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、洗浄剤と、塩基性有機化合物と、酸性有機化合物と、下記一般式(I)で表わされる含窒素芳香族環状化合物とを含有させ、実質的に中性に調整された、半導体用基板用の洗浄組成物。
【化1】

(式中、Rは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。R、R、及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、アリール基、またはベンジル基を表す。)
【請求項2】
前記一般式(I)で表わされる化合物がイミダゾール、N−メチルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールであることを特徴とする請求項1に記載の洗浄組成物。
【請求項3】
前記一般式(I)で表わされる化合物がイミダゾールであることを特徴とする請求項2に記載の洗浄組成物。
【請求項4】
前記酸性有機化合物が、1官能性、2官能性、3官能性、又は4官能性の有機酸であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の洗浄組成物。
【請求項5】
前記酸性有機化合物が、乳酸、クエン酸、ギ酸、シュウ酸、酢酸、プロピオン酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、グリコール酸、サリチル酸、酒石酸、及びリンゴ酸よりなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の洗浄組成物。
【請求項6】
前記塩基性有機化合物が、有機アミン及び第4級アンモニウム水酸化物よりなる群から選ばれた少なくとも1つの化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の洗浄組成物。
【請求項7】
前記塩基性有機化合物が、水酸基を有しない有機アミンであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の洗浄組成物。
【請求項8】
前記塩基性有機化合物が、テトラアルキルアンモニウム水酸化物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の洗浄組成物。
【請求項9】
前記洗浄剤が、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシルアミン硫酸塩、ヒドロキシルアミン塩酸塩、ヒドロキシルアミン硝酸塩、及びヒドロキシルアミンリン酸塩からなる群より選ばれた少なくとも1つの化合物であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の洗浄組成物。
【請求項10】
さらに水溶性有機溶剤を含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の洗浄組成物。
【請求項11】
さらにアミノ基含有カルボン酸を含有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の洗浄組成物。
【請求項12】
前記アミノ基含有カルボン酸がヒスチジン及び/又はアルギニンである請求項11に記載の洗浄組成物。
【請求項13】
さらに洗浄組成物の全質量に対して0.1質量%以上0.5質量%未満の酸性無機化合物を含有する、請求項1〜12のいずれか1項に記載の洗浄組成物。
【請求項14】
前記酸性無機化合物が、リン酸、ホウ酸、六フッ化リン酸、リン酸アンモニウム、ホウ酸アンモニウム、及び六フッ化リン酸アンモニウムからなる群より選ばれた少なくとも1つの化合物である、請求項13に記載の洗浄組成物。
【請求項15】
前記酸性無機化合物が、リン酸及び/又はその塩である、請求項14に記載の洗浄組成物。
【請求項16】
半導体素子製造工程におけるプラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣除去用の洗浄液として特に適した請求項1〜15のいずれか1項に記載の洗浄組成物。
【請求項17】
洗浄される半導体基板が、露出したアルミニウムの層、銅の層、又は窒化チタンの層を含むことを特徴とする請求項1〜16のいずれか1項に記載の洗浄組成物。
【請求項18】
半導体基板上のプラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣を請求項1〜17のいずれか1項に記載の洗浄組成物で洗浄することを特徴とする洗浄方法。
【請求項19】
前記洗浄処理を50〜90℃の温度で行うことを特徴とする請求項18に記載の洗浄方法。
【請求項20】
(a)(a−1)半導体基板に対してプラズマエッチングを行うエッチング工程、及び/又は、(a−2)半導体基板上のレジストに対してアッシングを行うアッシング工程、並びに、
(b)請求項1〜17のいずれか1項に記載の洗浄組成物により、前記エッチング工程及び/又は前記アッシング工程において前記半導体基板上に形成されたプラズマエッチング残渣及び/又はアッシング残渣を洗浄除去する洗浄工程
を含むことを特徴とする半導体素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−46685(P2012−46685A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−191974(P2010−191974)
【出願日】平成22年8月30日(2010.8.30)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】