説明

洗浄組成物及び半導体装置の製造方法

【課題】配線構造や層間絶縁構造を損傷することなく、半導体基板上のプラズマエッチング残渣を十分に除去しうる洗浄組成物、及び前記洗浄組成物を用いた半導体装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】57〜95重量%の(成分a)水、1〜40重量%の(成分b)第2級水酸基及び/又は第3級水酸基を有するヒドロキシ化合物、(成分c)有機酸、並びに、(成分d)第4級アンモニウム化合物、を含有し、pHが5〜10であることを特徴とする、半導体基板上に形成されたプラズマエッチング残渣除去用の洗浄組成物、並びに、前記洗浄組成物により、半導体基板上に形成されたプラズマエッチング残渣を洗浄する工程を含む、半導体装置の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄組成物及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体集積回路の製造において、大規模化、高密度化、微細化が進んでいる。集積回路の製造には、ポジ型又はネガ型のフォトレジストを使用した、リソグラフィ工程が採用されている。半導体基板に塗設されたレジスト膜は、フォトマスクなどの露光原版を通して露光される。レジスト膜中に光化学変化により生じたパターンは、現像により露光原板に対応した形状を有するレジストパターンとなる。レジストパターンの耐エッチング性を向上するために、必要に応じて、ポストベークやUVキュアリングが施される。得られたレジストパターンをマスクにして、半導体基板のエッチングやイオン注入が施される。
【0003】
レジストパターンをマスクとして、プラズマエッチングにより半導体基板上の金属層や絶縁層をエッチングする際には、フォトレジストや金属層、絶縁層に由来する残渣が半導体基板上に生じる。プラズマエッチングにより基板上に生じた残渣を除去するために、洗浄組成物を用いた洗浄が行われる。
【0004】
また、不要となったレジストパターンは、その後半導体基板から除去される。除去する方法には、ストリッパー溶液を使用する湿式の方法と、プラズマアッシングによる乾式の方法とがある。プラズマアッシングによる方法では、真空チャンバー内で、酸素プラズマに電場を与えて電界方向に加速してレジストパターンを灰化する。プラズマアッシングにより基板上に生じた残渣を除去するために、洗浄組成物が使用される。なお、以下では、プラズマエッチング又はプラズマアッシングにより生じた残渣を「プラズマエッチング残渣」ともいう。
【0005】
例えば、特許文献1には、(a)低級アルキル第4級アンモニウム塩類を0.5〜10重量%、(b)多価アルコールを1〜50重量%含有する、アッシング後の処理液が開示されている。
また、特許文献2には、多価カルボン酸及び/又はその塩と、水とを含有し、pHが8未満であるレジスト用剥離剤組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−316465号公報
【特許文献2】特開2000−214599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
技術の進展に伴い、半導体基板上に形成される構造には、種々の化学組成を有する配線構造や層間絶縁構造が採用され、プラズマアッシングで生じる残渣の特性も変化する。プラズマエッチングやプラズマアッシングで生じる残渣を除去するための洗浄組成物には、十分に残渣を除去しうること、及び、配線構造や層間絶縁構造を損傷しないことが要求される。
本発明が解決しようとする課題は、配線構造や層間絶縁構造を損傷することなく、半導体基板上のプラズマエッチング残渣を十分に除去しうる洗浄組成物、及び前記洗浄組成物を用いた半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記課題は、下記<1>又は<12>に記載の手段により解決された。好ましい実施態様である<2>〜<11>及び<13>と共に以下に示す。
<1>57〜95重量%の(成分a)水、1〜40重量%の(成分b)第2級水酸基及び/又は第3級水酸基を有するヒドロキシ化合物、(成分c)有機酸、並びに、(成分d)第4級アンモニウム化合物、を含有し、pHが5〜10であることを特徴とする、半導体基板上に形成されたプラズマエッチング残渣除去用の洗浄組成物、
<2>前記成分bがジオール化合物である、上記<1>に記載の洗浄組成物、
<3>前記成分bが、少なくとも第2級水酸基と、第1級乃至第3級水酸基のいずれかとを有する化合物である、上記<2>に記載の洗浄組成物、
<4>前記成分bが、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、及び1,3−ブタンジオールからなる群より選択される化合物である、上記<3>に記載の洗浄組成物、
<5>さらに(成分e)ヒドロキシルアミン及び/又はその塩を含有する、上記<1>〜<4>いずれか1つに記載の洗浄組成物、
<6>前記成分cが、構成元素をC、H、及びOのみとするカルボン酸である、上記<1>〜<5>いずれか1つに記載の洗浄組成物、
<7>前記成分cが、クエン酸、乳酸、グリコール酸、シュウ酸、酢酸、プロピオン酸、バレリアン酸、イソバレリアン酸、コハク酸、リンゴ酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、サリチル酸、酒石酸、グルコン酸及びマロン酸からなる群より選択される化合物である、上記<6>に記載の洗浄組成物、
<8>さらに(成分f)アミノ基含有カルボン酸を含有する、上記<1>〜<7>いずれか1つに記載の洗浄組成物、
<9>前記成分fが、ヒスチジン又はアルギニンである、上記<8>に記載の洗浄組成物、
<10>さらに(成分g)無機酸を含有する、上記<1>〜<9>いずれか1つに記載の洗浄組成物、
<11>前記成分gが、リン酸、ホウ酸、リン酸アンモニウム、及びホウ酸アンモニウムからなる群より選択される化合物である、上記<10>に記載の洗浄組成物、
<12>上記<1>〜<11>いずれか1つに記載の洗浄組成物を用いて半導体基板上に形成されたプラズマエッチング残渣を洗浄する工程を含む、半導体装置の製造方法、
<13>前記半導体基板がアルミニウム又は銅を含む、上記<12>に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、配線構造や層間絶縁構造を損傷することなく、半導体基板上のプラズマエッチング残渣を十分に除去しうる洗浄組成物、及び前記洗浄組成物を用いた半導体装置の製造方法を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の半導体装置の製造方法の概要を示す工程断面図(その1)である。
【図2】プラズマアッシング後におけるプラズマエッチング残渣が付着した状態を示す半導体装置の概略断面図である。
【図3】本発明の半導体装置の製造方法の概要を示す工程断面図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0012】
(洗浄組成物)
本発明の洗浄組成物は、57〜95重量%の(成分a)水、1〜40重量%の(成分b)第2級水酸基及び/又は第3級水酸基を有するヒドロキシ化合物、(成分c)有機酸、及び、(成分d)第4級アンモニウム化合物、を含有し、pHが5〜10であることを特徴とし、半導体基板上に形成されたプラズマエッチング残渣除去用のものである。
本発明の洗浄組成物は、後述するように、アルミニウム又は銅を含む金属膜のプラズマエッチング後に生じたプラズマエッチング残渣除去用であることが好ましい。具体的には、半導体装置の配線構造における配線、配線間を接続するビア、又は、ワイヤボンディング等により外部電極が接続されるパッドを形成する際のプラズマエッチング又はプラズマアッシングにより生じた残渣の除去に好適に使用することができる。
以下、本発明の洗浄組成物に必須の(成分a)〜(成分d)及びpHについて順に説明する。
【0013】
<(成分a)水>
本発明の洗浄組成物は、溶媒として水を含有する。水の含有量は、洗浄組成物全体の重量に対して、57〜95重量%であり、70〜90重量%であることが好ましい。
水としては、半導体製造に使用される超純水が好ましい。
【0014】
<(成分b)第2級水酸基及び/又は第3級水酸基を有するヒドロキシ化合物>
本発明の洗浄組成物は、第2級水酸基及び/又は第3級水酸基を有するヒドロキシ化合物を含有する。
前記ヒドロキシ化合物としては、第2級水酸基及び/又は第3級水酸基を有するものであれば、特に限定されるものではないが、少なくとも第2級水酸基を有する化合物が好ましく、少なくとも第2級水酸基と、第1級乃至第3級水酸基のいずれかとを有する化合物がより好ましい。なお、前記ヒドロキシ化合物は、カルボキシ基を有さないものである。
また、前記ヒドロキシ化合物は、モノアルコール化合物であってもポリアルコール化合物であってもよいが、ジオール化合物であることが好ましい。
洗浄組成物に前記ヒドロキシ化合物を含有させることにより、プラズマエッチング残渣中の有機物を十分に溶解させることができ、プラズマエッチング残渣を十分に洗浄除去することができる。特に、半導体装置におけるパッドを露出する開口部を絶縁膜に形成する際に生じるプラズマエッチング残渣を十分に洗浄除去することができる。
【0015】
前記ヒドロキシ化合物としては、そのハンセンの溶解度パラメータ(HSP:Hansen Solubility Parameter)の値(HSP値)が、溶解すべきプラズマエッチング残渣のHSP値に近い又はこれと同等であるものを選択することが好ましい。
【0016】
前記ヒドロキシ化合物の具体例としては、ジプロピレングリコール(1,1’−オキシジ(2−プロパノール))、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,3−ブタンジオール、2−ブタノール、1,2−シクロヘキサンジオール、ピナコール、グリセリン、1−アミノ−2−プロパノールなどが挙げられ、中でも、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,3−ブタンジオールが好ましい。
【0017】
前記ヒドロキシ化合物の含有量は、洗浄組成物全体の重量に対して、1〜40重量%であり、5〜20重量%であることが好ましい。
【0018】
<(成分c)有機酸>
本発明の洗浄組成物は、少なくとも1つの有機酸を含有し、1つ以上のカルボキシ基を含有することが好ましい。有機酸は、腐食防止剤として役立つ。カルボン酸、とりわけヒドロキシル基を有するカルボン酸は、アルミニウム、銅及びそれらの合金の金属腐食を有効に防止する。カルボン酸はこれらの金属に対してキレート効果を有する。好ましいカルボン酸には、モノカルボン酸及びポリカルボン酸が含まれる。カルボン酸としては、これらに限定されないが、クエン酸、乳酸、グリコール酸、シュウ酸、酢酸、プロピオン酸、バレリアン酸、イソバレリアン酸、コハク酸、リンゴ酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、サリチル酸、酒石酸、グルコン酸及びマロン酸及びその混合物が例示でき、クエン酸、グリコール酸、酢酸、グルタル酸、フマル酸、フタル酸、グルコン酸、マロン酸及びその混合物が好ましく使用でき、クエン酸、グリコール酸、又はマロン酸がより好ましく使用できる。なお、カルボン酸は、構成元素をC、H、及びOのみとするものであることが好ましく、アミノ基を有さないことがより好ましい。
【0019】
前記有機酸は、洗浄組成物に対して、好ましくは約0.01〜約30.0重量%の間で加えられ、より好ましくは約0.05〜約20.0重量%加えられ、最も好ましくは、0.1〜10.0重量%加えられる。
【0020】
<(成分d)第4級アンモニウム化合物>
本発明の洗浄組成物は、第4級アンモニウム化合物を含有する。
前記第4級アンモニウム化合物としては、第4級アンモニウム水酸化物、第4級アンモニウムフッ化物、第4級アンモニウム臭化物、第4級アンモニウムヨウ化物、第4級アンモニウムの酢酸塩、第4級アンモニウムの炭酸塩などが挙げられ、中でも、第4級アンモニウム水酸化物が好ましい。
本発明の洗浄組成物の第4級アンモニウム化合物として使われる第4級アンモニウム水酸化物としては、テトラアルキルアンモニウム水酸化物が好ましく、低級(炭素数1〜4)アルキル基又は芳香族アルキル基で置換されたテトラアルキルアンモニウム水酸化物がより好ましく、具体的には、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヒドロキシエチル、ベンジルのいずれかのアルキル基を4つ有するテトラアルキルアンモニウム水酸化物が挙げられる。かかるテトラアルキルアンモニウム水酸化物には、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(以下TMAHと称する)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリ(ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、テトラ(ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(以下BTMAHと称する)などを含む。それに加え、アンモニウム水酸化物と1つあるいはそれ以上の4級アンモニウム水酸化物の組み合わせも使用することができる。
【0021】
これらの中でも、TMAH、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、TBAH、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシド、メチルトリ(ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、テトラ(ヒドロキシエチル)アンモニウムヒドロキシド、BTMAHが好ましく、TMAH、TBAH、BTMAHがより好ましく、TMAHが更に好ましい。
【0022】
本発明の洗浄組成物において、第4級アンモニウム化合物の含有量は、約0.01〜約20重量%であることが好ましく、1.0〜15重量%であることがより好ましく、3.0〜10重量%であることが更に好ましい。
【0023】
<pH>
本発明の洗浄組成物のpHは5〜10であり、5〜8.5であることが好ましく、6〜8であることがより好ましい。pHが上記数値の範囲内であると、フォトレジスト、反射防止膜、エッチング残渣、及び、アッシング残渣を十分に除去することができる。このpH領域にすることにより、酸化ケイ素と金属層をプラズマエッチングしてビアパターンを形成した場合の残渣を完全に除去することができる。
pHの測定方法としては、市販のpHメーターを用いて測定することができる。
洗浄組成物の所定のpHへの調整は、塩基性アミン及び/又は第4級アンモニウム化合物の添加量を調節した滴定により行うことができる。
【0024】
本発明の洗浄組成物は、上記の(成分a)〜(成分d)以外に、任意成分として、以下に列挙するような1又は2以上の(成分e)〜(成分j)を含有することができる。
【0025】
<(成分e)ヒドロキシルアミン及び/又はその塩>
本発明の洗浄組成物は、前記第4級アンモニウム化合物以外に、少なくとも1つのヒドロキシルアミン及び/又はその塩を含有してもよい。ヒドロキシルアミンの塩は、ヒドロキシルアミンの無機酸塩又は有機酸塩であることが好ましく、Cl、S、N、Pなどの非金属が水素と結合してできた無機酸の塩であることがより好ましく、塩酸、硫酸、硝酸いずれかの酸の塩であることが特に好ましい。
本発明の洗浄組成物を形成するのに使われるヒドロキシルアミンの塩としては、ヒドロキシルアンモニウム硝酸塩(HANとも称される)、ヒドロキシルアンモニウム硫酸塩(HASとも称される)、ヒドロキシルアンモニウムリン酸塩、ヒドロキシルアンモニウム塩酸塩、及びこれらの混合物が好ましい。
洗浄組成物に、ヒドロキシルアミンの有機酸塩も使用することができ、ヒドロキシルアンモニウムクエン酸塩、ヒドロキシルアンモニウムシュウ酸塩、ヒドロキシルアンモニウムフルオライド、N,N−ジエチルヒドロキシルアンモニウム硫酸塩、N,N−ジエチルヒドロキシルアンモニウム硝酸塩などが例示できる。
【0026】
ヒドロキシルアミン及び/又はその塩は、本発明の洗浄組成物に対して、約0.01〜約30重量%の範囲内で含有させることが好ましく、0.1〜15重量%含有させることがより好ましい。
ヒドロキシルアミン及び/又はその塩は、プラズマエッチング残渣の除去を容易にし、金属基板の腐食を防止する。
【0027】
<(成分f)アミノ基含有カルボン酸>
本発明の洗浄組成物は、アミノ基含有カルボン酸を含有してもよい。アミノ基含有カルボン酸は、金属含有残渣を効率よく除去する点で好ましい。
アミノ基含有カルボン酸としては、以下から成るアミノポリカルボン酸塩群{エチレンジアミンテトラ酢酸塩(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸塩(HEDTA)、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン四酢酸塩(DHEDDA)、ニトリロ酸酢酸塩(NTA)、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸塩(HIDA)、β−アラニンジ酢酸塩、アスパラギン酸ジ酢酸塩、メチルグリシンジ酢酸塩、イミノジコハク酸塩、セリンジ酢酸塩、ヒドロキシイミノジコハク酸塩、ジヒドロキシエチルグリシン塩、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩など}、以下から成るヒドロキシカルボン酸塩群{ヒドロキシ酢酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩など}、以下から成るシクロカルボン酸塩群{ピロメリット酸塩、ベンゾポリカルボン酸塩、シクロペンタンテトラカルボン酸塩など}、以下から成るエーテルカルボン酸塩群{カルボキシメチルタルトロネート、カルボキシメチルオキシサクシネート、オキシジサクシネート、酒石酸モノサクシネート、酒石酸ジサクシネートなど}、以下から成るその他カルボン酸塩群{マレイン酸誘導体、シュウ酸塩など}、以下から成る有機カルボン酸(塩)ポリマー群{アクリル酸重合体及び共重合体(アクリル酸−アリルアルコール共重合体、アクリル酸−マレイン酸共重合体、ヒドロキシアクリル酸重合体、多糖類−アクリル酸共重合体など)、以下から成る多価カルボン酸重合体及び共重合体群{マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、テトラメチレン−1,2−ジカルボン酸、コハク酸、アスパラギン酸、グルタミン酸などのモノマーの重合体及び共重合体}、以下から成るグリオキシル酸重合体、多糖類群{デンプン、セルロース、アミロース、ペクチン、カルボキシメチルセルロースなど}、以下から成るホスホン酸塩群{メチルジホスホン酸塩、アミノトリスメチレンホスホン酸塩、エチリデンジホスホン酸塩、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸塩、エチルアミノビスメチレンホスホン酸塩、エチレンジアミンビスメチレンホスホン酸塩、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸塩、ヘキサメチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、プロピレンジアミンテトラメチレンホスホン酸塩、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸塩、トリエチレンテトラミンヘキサメチレンホスホン酸塩及びテトラエチレンペンタミンヘプタメチレンホスホン酸塩など}などが挙げられる。
なお、これらの塩としては、アンモニウム塩、アルカノールアミン(モノエタノールアミン、トリエタノールアミンなど)塩などが挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
(成分f)アミノ基含有カルボン酸として、ヒスチジン及び/又はアルギニンが好ましい。
本発明の洗浄組成物において、(成分f)アミノ基含有カルボン酸を含有させる場合、その添加量は、適宜選択できるが、約0.001〜約5重量%であることが好ましく、0.01〜3重量%であることがより好ましい。
【0029】
<(成分g)無機酸及び/又はその塩>
本発明の洗浄組成物は、少なくとも1つの無機酸及び/又はその塩を含有してもよい。
洗浄組成物に含有される無機酸及び/又はその塩により、半導体基板などの洗浄対象物におけるアルミニウムの表面を平滑化するとともに、洗浄性を向上することができる。さらに、アルミニウムの腐食を防止ないし抑制することができる。また、洗浄組成物に無機酸及び/又はその塩が含有されていることで、これらが含有されていない場合と比較して、腐食を防止ないし抑制しつつ十分な洗浄を実現できる洗浄組成物の温度範囲及び洗浄対象物の洗浄組成物への浸漬時間の範囲を拡大することができる。
本発明の洗浄組成物に使用される無機酸としては、リン酸、ホウ酸、六フッ化リン酸、及びそれらの混合物が例示できる。
また、洗浄組成物に前記無機酸の塩を使用することもでき、前記無機酸のアンモニウム塩などが挙げられる。具体的には、リン酸アンモニウム、ホウ酸アンモニウム、六フッ化リン酸アンモニウム及びそれらの混合物が例示できる。
これらの中でも、リン酸、リン酸塩が好ましく、リン酸がより好ましい。
【0030】
本発明の洗浄組成物には、0.1重量%以上、0.5重量%未満の前記無機酸及び/又はその塩を含有させることが好ましく、0.1〜0.4重量%含有させることがより好ましく、0.15〜0.3重量%含有させることが更に好ましい。
【0031】
<(成分h)界面活性剤>
本発明の洗浄組成物は界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤としては、ノニオン性、アニオン性、カチオン性界面活性剤、及び、両性界面活性剤を用いることができる。
【0032】
本発明で使用される界面活性剤としては、添加することで洗浄組成物の粘度を調整し、洗浄対象物への濡れ性を改良することができる点、及び、残渣物の除去性と基板や絶縁膜などに対する腐食性の両者がより優れるという点から、ノニオン性界面活性剤を好ましく用いることができる。ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリアルキレンオキサイドアルキルフェニルエーテル系界面活性剤、ポリアルキレンオキサイドアルキルエーテル系界面活性剤、ポリエチレンオキサイドとポリプロピレンオキサイドからなるブロックポリマー系界面活性剤、ポリオキシアルキレンジスチレン化フェニルエーテル系界面活性剤、ポリアルキレントリベンジルフェニルエーテル系界面活性剤、アセチレンポリアルキレンオキサイド系界面活性剤、などを用いることができる。
中でも好ましくは、ポリアルキレンオキサイド(以下PAO)アルキルエーテル系界面活性剤で、PAOデシルエーテル、PAOラウリルエーテル、PAOトリデシルエーテル、PAOアルキレンデシルエーテル、PAOソルビタンモノラウレート、PAOソルビタンモノオレエート、PAOソルビタンモノステアレート、テトラオレイン酸ポリエチレンオキサイドソルビット、PAOアルキルアミン、PAOアセチレングリコールから選択されるポリアルキレンオキサイドアルキルエーテル系界面活性剤である。ポリアルキレンオキサイドとしては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド又はポリブチレンオキサイドの重合体が好ましい。
【0033】
また、本発明で使用される界面活性剤としては、残渣物の除去性と基板や絶縁膜などに対する腐食性の両者がより優れるという点から、カチオン性界面活性剤も好ましく用いることができる。カチオン性界面活性剤として、好ましくは、第4級アンモニウム塩系界面活性剤、又はアルキルピリジウム系界面活性剤である。
【0034】
第4級アンモニウム塩系界面活性剤として、下記式(1)で表される化合物が好ましい。
【0035】
【化1】

(式(1)中、X-は水酸化物イオン、塩素イオン、臭素イオン、又は硝酸イオンを表す。R5は炭素数8〜18のアルキル基を表す。R6及びR7は、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキル基、アリール基、炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基、又はベンジル基を表す。R8は炭素数1〜3のアルキル基を表す。)
【0036】
式(1)中、X-はカウンターアニオンを表し、具体的には水酸化物イオン、塩素イオン、臭素イオン、又は硝酸イオンを表す。
【0037】
式(1)中、R5は、炭素数8〜18のアルキル基(炭素数12〜18が好ましく、例えば、セチル基、ステアリル基など)である。
【0038】
式(1)中、R6及びR7は、それぞれ独立に炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜8のヒドロキシアルキル基(例えば、ヒドロキシエチルなど)、アリール基(例えば、フェニル基など)、又はベンジル基を表す。
【0039】
式(1)中、R8は炭素数1〜3のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基など)を表す。
【0040】
式(1)で表される化合物の具体例として、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、ジドデシルジメチルアンモニウムクロリド、トリデシルメチルアンモニウムクロリド、ステアリルベンジルジメチルアンモニウムクロリドなどが挙げられる。これら化合物のカウンターアニオンは塩素イオンに限定されず、臭素イオン又は水酸化物イオンでもよい。
【0041】
また、アルキルピリジウム系界面活性剤として具体的には、セチルピリジニウムクロリドなどが挙げられる。これら化合物のカウンターアニオンは塩素イオンに限定されず、臭素イオン又は水酸化物イオンでもよい。
【0042】
洗浄組成物中の界面活性剤の含有量は、洗浄組成物の全量に対して、好ましくは0.0001〜5重量%であり、より好ましくは0.0001〜1重量%である。界面活性剤を洗浄組成物に添加することで洗浄組成物の粘度を調整し、洗浄対象物への濡れ性を改良することができるため好ましく、加えて基板や絶縁膜などに対する腐食性の両者がより優れるという点からも好ましい。このような界面活性剤は一般に商業的に入手可能である。これらの界面活性剤は、単独又は複数組み合わせて用いてもよい。
【0043】
<(成分i)水溶性有機溶剤>
本発明の洗浄組成物は、水溶性有機溶剤を含有してもよい。水溶性有機溶剤は、腐食防止の点でよい。例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のエーテル系溶剤、ホルムアミド、モノメチルホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトアミド、モノメチルアセトアミド、ジメチルアセトアミド、モノエチルアセトアミド、ジエチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶剤、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶剤、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン等のラクトン系溶剤等が挙げられる。これらの中で好ましいのは、エーテル系、アミド系、含硫黄系溶剤で、更に好ましくは、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、N−メチルピロリドン及びジメチルスルホキシドである。水溶性有機溶剤は単独でも2種類以上適宜組み合わせて用いてもよい。
【0044】
洗浄組成物中における水溶性有機溶剤の含有量は、洗浄組成物の全重量に対して、好ましくは0〜40重量%の濃度で使用され、より好ましくは0〜20重量%の濃度で使用される。更に好ましくは、0.0001〜15重量%の濃度で使用される。水溶性有機溶剤を洗浄組成物に添加することで金属膜の腐食を防止することができるため好ましい。
【0045】
洗浄組成物中におけるアミノ基含有カルボン酸の含有量は、洗浄組成物の全重量に対して、好ましくは0〜10重量%の濃度で使用される。より好ましくは、0.0001〜5重量%の濃度で使用されるアミノ基含有カルボン酸を洗浄組成物に加えて添加することで、金属含有残渣物の除去を促進することができるため好ましい。
【0046】
<(成分j)腐食防止剤>
本発明の洗浄組成物は腐食防止剤を含有してもよい。
腐食防止剤は複素環化合物であることが好ましく、ベンゾトリアゾール及びその誘導体であることがより好ましい。前記誘導体としては、5,6−ジメチル−1,2,3−ベンゾトリアゾール(DBTA)、1−(1,2−ジカルボキシエチル)ベンゾトリアゾール(DCEBTA)、1−[N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール(HEABTA)、1−(ヒドロキシメチル)ベンゾトリアゾール(HMBTA)が好ましい。
【0047】
本発明で用いる腐食防止剤は、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。また、本発明で用いる腐食防止剤は、常法に従って合成できるほか、市販品を使用してもよい。
【0048】
また、腐食防止剤の添加量は好ましくは0.01重量%以上0.2重量%以下であり、更に好ましくは、0.05重量%以上0.2重量%以下である。
【0049】
(半導体装置の製造方法)
次に、本発明の半導体装置の製造方法について詳述する。本発明の半導体装置の製造方法は、ビアホール又は配線を形成した後の半導体基板の洗浄において、本発明の洗浄組成物を適用することを特徴とする。
以下にいくつかの実施形態を例示する。
【0050】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態に基づく半導体装置の製造方法の概要を示す工程断面図である。
まず、通常の半導体装置の製造プロセスにより、シリコンウエハ等の半導体基板10上に、トランジスタその他の素子や1層又は2層以上の配線を形成する。次いで、素子等が形成された半導体基板10上に、層間絶縁膜を形成する。
【0051】
次いで、全面に、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition、化学気相堆積)法により、例えば膜厚約500nmのAl合金膜12と、例えば膜厚約50nmの窒化チタン膜14とを順次積層する。こうして、Al合金膜12と窒化チタン膜14とを順次積層してなる導体膜を形成する。なお、Al合金膜12は、例えば0.1〜5%のCuを含有するAlとCuとの合金膜である。
【0052】
次いで、フォトリソグラフィー及びドライエッチングにより、導体膜をパターニングする。こうして、Al合金膜12と窒化チタン膜14とからなる配線16を形成する。
【0053】
次いで、全面に、例えばCVD法により、例えば膜厚約500nmのシリコン酸化膜18を形成する。
【0054】
次いで、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing、化学的機械的研磨)法により、シリコン酸化膜18の表面を研磨し、シリコン酸化膜18の表面を平坦化する(図1(a)参照)。
【0055】
次いで、シリコン酸化膜18上に、フォトリソグラフィーにより、ビアパターンを有するフォトレジスト膜を形成する。続いて、このフォトレジスト膜をマスクとして、プラズマを用いたドライエッチングにより、シリコン酸化膜18をエッチングする。このとき、シリコン酸化膜18下の窒化チタン膜14の上部をもエッチングする。こうして、シリコン酸化膜18に、配線16の窒化チタン膜14に達するビアホール(ビアパターン)20を形成する(図1(b)参照)。シリコン酸化膜18及び窒化チタン膜14の上部のドライエッチングは、それぞれ公知の方法を用いて行うことができる。
【0056】
次いで、プラズマを用いたアッシングにより、マスクとして用いたフォトレジスト膜を除去する。フォトレジスト膜のアッシングは、公知の方法を用いて行うことができる。
【0057】
ビアホール20を形成するためのドライエッチング及びフォトレジスト膜を除去するためのアッシングにおいては、ビアホール20周辺の表面を含む基板表面に、変質したフォトレジスト膜、シリコン酸化膜18、及びビアホール20底に露出した窒化チタン膜14に由来する残渣(プラズマエッチング残渣)が付着する。
【0058】
そこで、フォトレジスト膜を除去するためのアッシング後、本発明の洗浄組成物により、ビアホール20までが形成された半導体基板10を洗浄する。こうして、ビアホール20までが形成された半導体基板10の表面に付着したプラズマエッチング残渣を除去する。
【0059】
次いで、全面に、例えばCVD法により、タングステン膜を形成する。
【0060】
次いで、例えばCMP法により、シリコン酸化膜18の表面が露出するまでタングステン膜を研磨する。こうして、ビアホール20内に、タングステンよりなるビアを埋め込む。
【0061】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態による半導体装置の製造方法の概要について、同じく図1を用いて説明する。本実施形態による半導体装置の製造方法は、配線16のAl合金膜12に達するビアホール22を形成する点で、第1実施形態による半導体装置の製造方法とは異なる。
まず、第1実施形態による半導体装置の製造方法と同様にして、半導体基板10上に、Al合金膜12と窒化チタン膜14とからなる配線16、及びシリコン酸化膜18を形成する(図1(a)参照)。
【0062】
次いで、シリコン酸化膜18上に、フォトリソグラフィーにより、ビアパターンを有するフォトレジスト膜を形成する。続いて、このフォトレジスト膜をマスクとして、プラズマを用いたドライエッチングにより、シリコン酸化膜18及び窒化チタン膜14をエッチングする。このとき、窒化チタン膜14下のAl合金膜12の上部をもエッチングする。こうして、シリコン酸化膜18及び窒化チタン膜14に、配線16のAl合金膜12に達するビアホール22(ビアパターン)を形成する(図1(c)参照)。シリコン酸化膜18、窒化チタン膜14、及びAl合金膜12の上部のドライエッチングは、それぞれ公知の方法を用いて行うことができる。
【0063】
次いで、プラズマを用いたアッシングにより、マスクとして用いたフォトレジスト膜を除去する。フォトレジスト膜のアッシングは、公知の方法を用いて行うことができる。
【0064】
本実施形態の場合、ビアホール22を形成するためのドライエッチング及びフォトレジスト膜を除去するためのアッシングにおいて、ビアホール22周辺の表面及びビアホール22の壁面を含む基板表面に、プラズマエッチング残渣が付着する。本実施形態の場合、プラズマエッチング残渣は、変質したフォトレジスト膜、シリコン酸化膜18及び窒化チタン膜14だけでなく、ビアホール22底に露出したAl合金膜12にも由来する。
【0065】
そこで、フォトレジスト膜を除去するためのアッシング後、本発明の洗浄組成物により、ビアホール22までが形成された半導体基板10を洗浄する。こうして、ビアホール22までが形成された半導体基板10の表面に付着したプラズマエッチング残渣を除去する。
【0066】
次いで、第1実施形態による半導体装置の製造方法と同様にして、ビアホール22に埋め込まれたビアを形成する。
【0067】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態による半導体装置の製造方法の概要について図1及び図2を用いて説明する。
まず、第1実施形態による半導体装置の製造方法と同様に、素子等が形成された半導体基板上に、層間絶縁膜24を形成する。
【0068】
次いで、全面に、例えばCVD法により、例えば膜厚約50nmの窒化チタン膜26と、例えば膜厚約20nmのチタン膜28と、例えば膜厚約500nmのAl合金膜30と、例えば膜厚約50nmの窒化チタン膜32とを順次積層する。なお、Al合金膜30は、例えば0.1〜5%のCuを含有するAlとCuとの合金膜である。
【0069】
次いで、窒化チタン膜32上に、フォトリソグラフィーにより、配線パターンを有するフォトレジスト膜を形成する。続いて、このフォトレジスト膜をマスクとして、プラズマエッチングにより窒化チタン膜32、Al合金膜30、チタン膜28及び窒化チタン膜26を順次エッチングする。こうして、窒化チタン膜32、Al合金膜30、チタン膜28及び窒化チタン膜26をパターニングし、これら導体膜よりなる配線(配線パターン)34を形成する。
【0070】
次いで、薬液を用いたウェット処理により、マスクとして用いたフォトレジスト膜の大部分を剥離除去する。続いて、プラズマを用いたアッシングにより、フォトレジスト膜の残部を除去する(図1(d)参照)。
【0071】
配線34を形成するためのエッチング及びフォトレジスト膜の残部を除去するためのアッシングにおいては、図2に示すように、配線34の上面及び側面を含む基板表面に、プラズマエッチング残渣36が付着する。このプラズマエッチング残渣36は、変質したフォトレジスト膜、窒化チタン膜32、Al合金膜30、チタン膜28、及び窒化チタン膜26に由来する。
【0072】
そこで、フォトレジスト膜の残部を除去するためのアッシング後、本発明の洗浄組成物により、配線34までが形成された半導体基板10を洗浄する。こうして、配線34までが形成された半導体基板10の表面に付着したプラズマエッチング残渣を除去する。
【0073】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態による半導体装置の製造方法の概要について図3を用いて説明する。図3は、本実施形態に基づく半導体装置の製造方法の概要を示す工程断面図である。本実施形態による半導体装置の製造方法は、半導体基板上の多層配線構造における最上部に形成されたパッド(パッド電極)を露出する開口部をパッシベーション膜などの絶縁膜に形成するものである。
【0074】
半導体基板上に形成された多層配線構造においては、積層された層間絶縁膜中に、配線パターンが形成されている。また、配線パターン間を接続するビアが層間絶縁膜中に適宜形成されている。
【0075】
図3(a)は、パッドまで形成された多層配線構造の最上部の一例を示すものである。図示するように、半導体基板(図示せず)上に形成された層間絶縁膜38中には、配線パターン44が形成されている。配線パターン44は、TiNやTi膜などのバリアメタル膜40と、バリアメタル膜40に覆われたAl膜42とを有している。
【0076】
配線パターン44が形成された層間絶縁膜38上には、層間絶縁膜46が形成されている。層間絶縁膜46中には、配線パターン44に接続されたビア52が形成されている。ビア52は、窒化チタン膜などのバリアメタル膜48と、バリアメタル膜48に覆われたタングステン膜50とを有している。
【0077】
ビア52が形成された層間絶縁膜46上には、ビア52を介して配線パターン44に接続されたパッド(パッド電極)60が形成されている。パッド60は、順次積層された密着膜54とAl膜56と密着膜58とを有している。密着膜54、58は、チタン/窒化チタンの積層構造又は窒化チタンの単層構造を有している。
【0078】
このようにパッド60が形成された層間絶縁膜46上に、例えば高密度プラズマCVD法により、シリコン酸化膜62を形成する(図3(b)参照)。
【0079】
次いで、シリコン酸化膜62上に、例えばプラズマCVD法により、シリコン窒化膜よりなるパッシベーション膜64を形成する(図3(c)参照)。
【0080】
次いで、パッシベーション膜64上に、フォトリソグラフィーにより、パッド60に達する開口部の形成領域を露出するフォトレジスト膜(図示せず)を形成する。続いて、このフォトレジスト膜をマスクとして、プラズマを用いたドライエッチングにより、パッシベーション膜64及びシリコン酸化膜62をエッチングする。このとき、パッド60の密着膜58及びAl膜56の上部もエッチングされうる。こうして、パッシベーション膜64及びシリコン酸化膜62に、パッド60を露出する開口部66を形成する(図3(d)参照)。パッシベーション膜64及びシリコン酸化膜62のドライエッチングは、それぞれ公知の方法を用いて行うことができる。
【0081】
次いで、プラズマを用いたアッシングにより、マスクとして用いたフォトレジスト膜を除去する。フォトレジスト膜のアッシングは、公知の方法を用いて行うことができる。
【0082】
開口部66を形成するためのフォトレジスト膜の形成、パッシベーション膜64及びシリコン酸化膜62のドライエッチング及びフォトレジスト膜を除去するためのアッシングにおいては、開口部66周辺の表面を含む基板表面に残渣(プラズマエッチング残渣)が付着する。この残渣は、変質したフォトレジスト膜、パッシベーション膜64、シリコン酸化62、及び密着膜58、Al膜56などに由来する。
【0083】
そこで、フォトレジスト膜を除去するためのアッシング後、本発明の洗浄組成物により、パッド60を露出する開口部66までが形成された半導体基板を洗浄する。こうして、開口部66までが形成された半導体基板の表面に付着したプラズマエッチング残渣を除去する。
【0084】
本発明の洗浄組成物は、(成分b)第2級水酸基及び/又は第3級水酸基を有するヒドロキシ化合物を含有する。このため、本発明の洗浄組成物によれば、前述したビアホールや配線を形成する際に半導体基板上に形成されたプラズマエッチング残渣のみならず、パッドを露出する開口部を形成する際に半導体基板上に形成されたプラズマエッチング残渣をも十分に洗浄除去することができる。
【0085】
なお、上記実施形態では、Al合金膜12、30を含む配線16、34を形成する場合について説明したが、配線の材料は上述したものに限定されるものではない。配線としては、Al又はAl合金よりなるAlを主材料とする配線のほか、Cu又はCu合金よりなるCuを主材料とする配線を形成することができる。
また、上記実施形態では、順次積層された密着膜54とAl膜56と密着膜58とを有するパッド60を形成する場合について説明したが、パッドの材料は上述したものに限定されるものではない。パッドの材料としては、種々の金属材料を用いることができる。また、シリコン窒化膜よりなるパッシベーション膜64及びシリコン酸化膜62にパッド60を露出する開口部66を形成する場合について説明したが、パッドを露出する開口部を形成する絶縁膜もこれらに限定されるものではない。このような絶縁膜としては、種々の絶縁膜を用いることができる。
【0086】
また、本発明の洗浄組成物は、アルミニウム又は銅を含む半導体基板からプラズマエッチング残渣を洗浄する工程に広く用いることができ、アルミニウム又は銅は半導体基板上に形成された配線構造中に含まれることが好ましい。
【実施例】
【0087】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0088】
<走査型電子顕微鏡によるエッチング残渣の観察>
上記第1及び第2実施形態について、ビアホール形成後、本発明の洗浄組成物による洗浄前に、パターンウエハを走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)により観察したところ、いずれもビアホール壁面にプラズマエッチング残渣が認められた。また、上記第3実施形態について、配線形成後、本発明の洗浄組成物による洗浄前に、パターンウエハをSEMにより観察したところ、配線の上面及び側面にプラズマエッチング残渣が認められた。また、上記第4実施形態について、パッドを露出する開口部を形成した後、本発明の洗浄組成物による洗浄前に、パターンウエハをSEMにより観察したところ、開口部側面及び開口部周辺の絶縁膜上面にプラズマエッチング残渣が認められた。
【0089】
<実施例1〜21、比較例1〜8>
以下の表1に示す組成の洗浄組成物1〜29(実施例1〜21、比較例1〜8)を調液した。
洗浄対象物としては、プラズマエッチングによりアルミニウム配線パターンを形成した後のパターンウエハ、プラズマエッチングによりビアホールのパターンを形成した後のパターンウエハ、及び、プラズマエッチングによりパッドを露出する開口部を形成した後のパッドパターンを有するパターンウエハを用意した。
【0090】
70℃に加温した各洗浄組成物に、用意したパターンウエハの切片(約2.0cm×2.0cm)を15分浸漬し、その後パターンウエハの切片を取り出し、直ちに超純水で1分水洗、N2乾燥を行った。
浸漬試験後のパターンウエハの切片の表面をSEMで観察し、プラズマエッチング残渣の除去性(洗浄性)について下記の評価基準に従って評価を行った。なお、配線パターンについては、配線側面及び上面の残渣除去性を評価した。また、ビアホールのパターンについては、ビアホール周辺の残渣除去性を評価した。また、パッドを露出する開口部が形成されたパッドパターンについては、開口部側面及び開口部周辺の絶縁膜上面の残渣除去性を評価した。
また、SEMによる観察により、配線パターンについてはそのAlの腐食性(リセス)を評価し、ビアパターンについてはビアホール底部に露出した配線のAlの腐食性を評価した。
評価基準を以下に示す。また、評価結果を表2に示す。
【0091】
<洗浄性>
◎:プラズマエッチング残渣が完全に除去された。
○:プラズマエッチング残渣がほぼ完全に除去された。
△:プラズマエッチング残渣の溶解が未完了であった。
×:プラズマエッチング残渣がほとんど除去されていなかった。
なお、上記洗浄性の評価基準は、配線パターン、ビアパターン、及びパッドパターンについて共通するものである。
【0092】
<Alの腐食性>
◎:Alの腐食は見られなかった。
○:Alの腐食が配線に対して5%以下で起こっていた。
△:Alの腐食が配線に対して10%以下で起こっていた。
×:Al配線が完全に消失していた。
なお、上記腐食性の評価基準は、配線パターン及びビアパターンに共通するものである。
【0093】
上記評価においては、洗浄性及び腐食性において全て評価が◎であることが望ましい。また、短時間、低温度で評価が◎になることが更に望ましい。
【0094】
【表1】

【0095】
なお、上記表1における略号が示す化合物は以下の通りである。
(成分b)
DPG:ジプロピレングリコール(1,1’−オキシジ(2−プロパノール))
MPD:2−メチル−2,4−ペンタンジオール
BD:1,3−ブタンジオール
BO:2−ブタノール
CHD:1,2−シクロヘキサンジオール
Pin:ピナコール
Gly:グリセリン
APO:1−アミノ−2−プロパノール
PGME:2−メトキシ−1−プロパノール
DEG:ジエチレングリコール
(成分c)
CA:クエン酸
GA:グリコール酸
LA:乳酸
MNA:マロン酸
OA:シュウ酸
AA:酢酸
PA:プロピオン酸
VA:バレリアン酸
IVA:イソバレリアン酸
SUA:コハク酸
MA:リンゴ酸
GTA:グルタル酸
MLA:マレイン酸
FA:フマル酸
PHA:フタル酸
BCA:1,2,3−ベンゼントリカルボン酸
SA:サリチル酸
TA:酒石酸
GLA:グルコン酸
FRA:蟻酸
(成分d)
TMAH:テトラメチルアンモニウムヒドロキシド
TBAH:テトラブチルアンモニウムヒドロキシド
BTMAH:ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド
(成分e)
HAS:硫酸ヒドロキシルアンモニウム
(成分f)
His:ヒスチジン
Arg:アルギニン
(成分g)
PA:リン酸
BA:ホウ酸
AP:リン酸アンモニウム
HFP:六フッ化リン酸
AHFP:六フッ化リン酸アンモニウム
AB:ホウ酸アンモニウム
【0096】
また、上記表1の(成分a)の含有量における「残部」とは(成分a)〜(成分f)の各成分の合計が100重量%となるような残部を意味する。また、(成分d)の含有量における「(pH調整)」とは、表1に示すpHの値になるように(成分d)が添加されていることを意味する。
【0097】
【表2】

【0098】
上記表2に示すように、本発明の洗浄組成物を用いた実施例1〜4、6〜20においては、配線パターン、ビアパターン、及びパッドパターンのいずれについても、プラズマエッチング残渣が完全に又はほぼ完全に除去され、優れた洗浄性が得られた。また、実施例1〜21においては、配線パターン及びビアパターンについて、Alの腐食を確実に又はほぼ確実に防止することができた。
また、本発明の洗浄組成物を用いた洗浄では、浸漬温度、浸漬時間を比較的自由に選ぶことができ、低温度、短時間での洗浄が可能であった。さらに、本発明の洗浄組成物を用いた洗浄では、浸漬時間延長の強制条件においても、Alの腐食の進行がなかった。
【0099】
他方、比較例1〜8においては、配線パターン、ビアパターン、及びパッドパターンのいずれについても、良好な洗浄性を得ることができず、特に、パッドパターンについて良好な洗浄性を得ることが困難であった。例えば、比較例1、2では、配線パターン及びビアパターンについては良好な洗浄性が得られたものの、パッドパターンについてはプラズマエッチング残渣を洗浄除去することができなかった。
【符号の説明】
【0100】
10 半導体基板
12 Al合金膜
14 窒化チタン膜
16 配線
18 シリコン酸化膜
20 ビアホール
22 ビアホール
24 層間絶縁膜
26 窒化チタン膜
28 チタン膜
30 Al合金膜
32 窒化チタン膜
34 配線
36 プラズマエッチング残渣
38 層間絶縁膜
40 バリアメタル膜
42 Al膜
44 配線パターン
46 層間絶縁膜
48 バリアメタル膜
50 タングステン膜
52 ビア
54 密着膜
56 Al膜
58 密着膜
60 パッド
62 シリコン酸化膜
64 パッシベーション膜
66 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
57〜95重量%の(成分a)水、
1〜40重量%の(成分b)第2級水酸基及び/又は第3級水酸基を有するヒドロキシ化合物、
(成分c)有機酸、並びに、
(成分d)第4級アンモニウム化合物、を含有し、
pHが5〜10であることを特徴とする、
半導体基板上に形成されたプラズマエッチング残渣除去用の洗浄組成物。
【請求項2】
前記成分bがジオール化合物である、請求項1に記載の洗浄組成物。
【請求項3】
前記成分bが、少なくとも第2級水酸基と、第1級乃至第3級水酸基のいずれかとを有する化合物である、請求項2に記載の洗浄組成物。
【請求項4】
前記成分bが、ジプロピレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、及び1,3−ブタンジオールからなる群より選択される化合物である、請求項3に記載の洗浄組成物。
【請求項5】
さらに(成分e)ヒドロキシルアミン及び/又はその塩を含有する、請求項1〜4いずれか1項に記載の洗浄組成物。
【請求項6】
前記成分cが、構成元素をC、H、及びOのみとするカルボン酸である、請求項1〜5いずれか1項に記載の洗浄組成物。
【請求項7】
前記成分cが、クエン酸、乳酸、グリコール酸、シュウ酸、酢酸、プロピオン酸、バレリアン酸、イソバレリアン酸、コハク酸、リンゴ酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、サリチル酸、酒石酸、グルコン酸及びマロン酸からなる群より選択される化合物である、請求項6に記載の洗浄組成物。
【請求項8】
さらに(成分f)アミノ基含有カルボン酸を含有する、請求項1〜7いずれか1項に記載の洗浄組成物。
【請求項9】
前記成分fが、ヒスチジン又はアルギニンである、請求項8に記載の洗浄組成物。
【請求項10】
さらに(成分g)無機酸及び/又はその塩を含有する、請求項1〜9いずれか1項に記載の洗浄組成物。
【請求項11】
前記成分gが、リン酸、ホウ酸、リン酸アンモニウム、及びホウ酸アンモニウムからなる群より選択される化合物である、請求項10に記載の洗浄組成物。
【請求項12】
請求項1〜11いずれか1項に記載の洗浄組成物を用いて半導体基板上に形成されたプラズマエッチング残渣を洗浄する工程を含む、半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記半導体基板がアルミニウム又は銅を含む、請求項12に記載の半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−204909(P2011−204909A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−70821(P2010−70821)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】