説明

洗浄装置、水質測定装置および洗浄方法

【課題】 簡易な構造で高い洗浄効果を期待できる洗浄装置、水質測定装置および洗浄方法を提供する。
【解決手段】 操作・制御部は、測定部の円筒内面内においてセンサモジュールを上下移動させた後に(S101)、加圧水を洗浄部材に供給する(S102)。これにより、洗浄部材の複数のノズルから加圧水が噴射される。この複数のノズルは、円筒内面内で全周にわたって形成されている。操作・制御部が洗浄終了と判断したときには(S103)、加圧水の供給を中止し(S104)、今度は、エアを洗浄部材に供給する(S105)。これによりセンサモジュールの水切りを行うことができる。水切りが完了したら(S106)、操作・制御部は、エアの供給を中止し(S107)、センサモジュールの上下移動を停止する(S108)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水質計の洗浄対象物を洗浄可能に構成された洗浄装置および水質測定装置、並びに洗浄対象物を洗浄する洗浄方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工業用水や下水、河川湖沼の水などは、水質測定装置にて定期的に水質を測定して監視していく必要がある。その測定項目としては、例えばpH、濁度等の監視目的に応じた種々の項目が採用され、それに応じた各種のセンサ類が水質測定装置にセットされる。
例えば、工業用pH計は、種々の要因により不斉電位および感度が経時変化することから、定期的に校正することが必要であり、また、電極部の汚れを取るために洗浄することが必要である。そのために、種々の構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、次のような構造が開示されている。すなわち、洗浄・校正ユニットは、洗浄校正器と電極保持具とを備えている。この洗浄校正器は、被測定液内に配置され、本体に固定されて下方部が被測定液に配置されると共に、下端にパッキンが設けられたパイプを有するものである。電極保持具は、パイプとの間に電極洗浄・校正用空間部を持つようにパイプの長手方向に沿って上下動し、かつ下端部に測定電極を収容した電極カバーを有するものである。
このように構成された洗浄校正ユニットにおける洗浄は、次のように行われる。すなわち、洗浄校正器の下部に電極洗浄・校正用空間部を形成した後に、この電極洗浄・校正用空間部に洗浄液が注入された後に、エアが導入される。このエアによって薬液をバブリングし、電極の洗浄を行う。洗浄が終了したら、薬液を回収した後に電極洗浄・校正用空間部に洗浄水を注入して薬液を洗い、洗浄水を排出したら、一連の洗浄工程が終了する。
【0004】
【特許文献1】特開平3−137554号公報(第5〜6頁、図8〜図11)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、薬液を用いて電極を洗浄した場合には、必ずしも十分によく洗浄することができず、汚れが残ってしまうおそれがある。また、薬液用のタンクや洗浄後の薬液を保管しておくタンク等が必要になり、その分のスペースが水質測定装置の周辺に必要になってしまう。また、薬液の処理等が必要になり、ランニングコストを低減することが困難になる。
【0006】
また、薬液による洗浄のほかに、ブラシやワイパー等による洗浄も考えられるが、このような洗浄方法では、必然的に稼動部を有することから、機構的に複雑な構造が必要であり、装置の大型化やコストの上昇を避けることができない。また、水中での洗浄の場合には、水中に稼動部を設けなければならず、軸の浸水等の問題が新たに発生する。また、ブラシ洗浄やワイパー洗浄では、ブラシ等で表面を擦ることになり、例えば砂を噛んだ場合には傷等の問題がある。とりわけ、複雑な構造の電極や多項目水質計のような複数の電極を備えた場合には、ブラシやワイパーを数多く設けなければならず、機構的に複雑なものとなってしまう。
【0007】
本発明は、以上のような技術的課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、簡易な構造で高い洗浄効果を期待できる洗浄装置、水質測定装置および洗浄方法を提供することにある。
また別の目的は、装置の小型化やコストダウンの実現が可能な洗浄装置、水質測定装置および洗浄方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的のもと、本発明が適用される洗浄装置は、水質計に用いられる洗浄装置であって、水質計の一部を構成する洗浄対象物を受け入れ可能な洗浄筒と、洗浄筒に受け入れられる洗浄対象物の周囲から洗浄対象物に向けて略全周にわたって加圧流体を噴射して洗浄対象物を洗浄する洗浄部と、を含むものである。
【0009】
洗浄装置が、洗浄部に加圧流体として、エア、加圧水および両者を混合したエア加圧水を供給可能な流体供給手段を更に含むように構成することが好ましい。すなわち、この流体供給手段は、洗浄対象物を水中にて洗浄するときには、エア又はエア加圧水を洗浄部に供給し、洗浄対象物を空気中にて洗浄するときには、加圧水又はエア加圧水を洗浄部に供給するものである。
また、洗浄部は、中央に洗浄空間が形成されると共に洗浄空間を形成する内周面に複数のノズルが形成されるリング部材を備え、かつ、リング部材により洗浄対象物の洗浄を行うことを特徴とすることができる。また、洗浄筒が受け入れる洗浄対象物は、複数の電極もしくはセンサ、又は複雑形状の電極もしくはセンサを備えていることを特徴とすることができる。
【0010】
他の観点から捉えると、本発明が適用される水質測定装置は、検水の水質に関する項目を検出するための検出部と、検出部を収容するための空間が形成された収容部と、収容部に収容された検出部の周囲から検出部に向けて略全周にわたって加圧流体を噴射して検出部を洗浄する洗浄部と、を含むものである。
【0011】
水質測定装置が、検出部を収容部内で往復移動する移動手段を更に含むように構成することができる。この移動手段は、洗浄部により検出部が洗浄されている間、検出部を往復移動するものである。
水質測定装置が、洗浄部を往復移動する移動手段を更に含むように構成することができる。この移動手段は、洗浄部により検出部が洗浄されている間、洗浄部を往復移動することを特徴とするものである。
水質測定装置が、洗浄部に加圧流体としてエアと加圧水とを選択的に供給可能な選択供給手段を更に含むように構成することが好ましい。この選択供給手段は、洗浄された検出部の水切りを行うためのエアを洗浄部に供給するものである。
【0012】
更に本発明を別の観点から捉えると、本発明が適用される洗浄方法は、水質計に用いられる洗浄方法であって、水質計の一部を構成する洗浄対象物と洗浄対象物を洗浄する洗浄部とを相対的に移動し、洗浄部が洗浄対象物の周囲から全周にわたって加圧流体を噴射して洗浄対象物を洗浄することを特徴とするものである。
【0013】
洗浄部が水中に位置しているときには、エア又はエアを含む加圧水を加圧流体として噴射し、洗浄部が空気中に位置しているときには加圧水又はエアを含む加圧水を加圧流体として噴射することを特徴とすることができる。また、洗浄された洗浄対象物の水切りを行うためのエアを洗浄部に供給することを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、加圧流体による洗浄であり、しかもその加圧流体を洗浄対象物に対して略全周にわたって噴射するので、簡易な構造で高い洗浄効果を期待することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係る水質測定装置1を示す概略構成図である。同図の(a)は、水質測定装置1の正面図であり、(b)はその左側面図である。
同図に示すように、水質測定装置1は、ベース1aと、ベース1aに立設して取り付けられたフレーム1bとを備えている。このフレーム1bには、操作・制御部2、センサモジュール3、測定部4、送液部5およびタンクユニット6が取り付けられている。なお、この水質測定装置1は、管理者が直接操作しなくても予め定められた時間ごとに自動的に測定するもので、測定後には、予め定められた手順に従って自動校正・自動洗浄等を行うことができるように構成されている。
【0016】
センサモジュール3は、いわゆる基本5項目を測定できるように構成されている。すなわち、センサモジュール3は、一般測定項目である水温、pH、導電率(EC)、濁度(TURB)および溶存酸素(DO)を測定できるように構成されている。具体的な構成は後述する。
【0017】
センサモジュール3は、移動手段としてのワイヤ35に取り付けられており、このワイヤ35により吊り下げられている。このワイヤ35は、移動手段としての巻取り器36(図4参照)に接続されている。巻取り器36は、操作・制御部2によりその作動が制御されている。すなわち、図示しない巻取り器がワイヤ35を巻き取るように作動すると、センサモジュール3は上方に移動する。また、巻取り器36(図4参照)が、ワイヤ35が繰り出されるように作動すると、センサモジュール3は自重により下方に移動する。
このように操作・制御部2が巻取り器(図4参照)を制御することによって、測定部4内でセンサモジュール3の上下方向の位置を変えることができる。
【0018】
測定部4は、導かれた検水の測定をセンサモジュール3にて5項目を測定するための部分である。また、測定部4は、洗浄対象物としてのセンサモジュール3の検出部34(図2参照)を校正液にて校正すると共に洗浄液にて洗浄するための部分である。
【0019】
送液部5は、測定部4への校正液および洗浄液(精製水、水道水)の供給を行うと共に、校正液および洗浄液の測定部4からの排出を行うための各種の流体関連部品が配設されている。流体関連部品を図示しないが、流体関連部品としては、例えば配管やポンプ、電磁弁等である。タンクユニット6は、校正用標準液が収容されたタンクからなり、具体的には、標準液(例えばpH7)用のタンク61と標準液(例えばpH4)用のタンク62とを備えている。
【0020】
また、操作・制御部2は、センサモジュール3及び送液部5の作動等を制御する。また、操作・制御部2は、センサモジュール3での検出結果の入力を受けて図示しない記憶媒体に記憶し、必要に応じて検出結果を、通信手段(例えば携帯電話)により外部機器へ出力する。
【0021】
図2は、センサモジュール3および測定部4の各々の構成を説明するための縦断面図である。
同図に示すように、測定部4は、校正液が導かれる校正液槽41と、検水が導かれる検水槽42と、校正液槽41と検水槽42とを上下方向略中央部で仕切るためのチューブ(空気封入式チューブ)43と、センサモジュール3の検出部34を洗浄するためのリング形状の洗浄部材(洗浄部、リング部材)44と、を備えている。また、測定部4は、センサモジュール3の外形よりも大径の空間が形成されている洗浄筒ないしは収容部の内面としての円筒内面45を備えている。円筒内面45は、検水槽42の一部を構成するものである。
校正液槽41は、チューブ43の上側に配置され、また、検水槽42は、チューブ43の下側に配置されている。洗浄部材44は、チューブ43の下側、すなわち検水槽42側に配置されている。洗浄部材44には所定の加圧流体が供給される。洗浄部材44については後述する。
【0022】
測定部4の校正液槽41に相当する領域の内周面には、送液部5に配管にて連通する供給口41aと、供給口41aより下方に位置する排出口41bと、供給口41aよりも上方に位置するオーバーフロードレン41cとが形成されている。このように構成されているため、校正液は、送液部5(図1参照)から供給口41aを介して校正液槽41に供給され、排出口41bを介して排出される。
なお、排出口41bおよびオーバーフロードレン41cは、装置外に導かれる図示しない配管に接続されている。また、排出口41bに接続されている配管41dには、操作・制御部2により開閉動作が制御される電磁弁41eが取り付けられている。
【0023】
測定部4の検水槽42に相当する領域の底面には、装置外から検水槽42内に検水を導入するための入口42aと、検水槽42内の検水を装置外に排出するための出口42bとが形成されている。この出口42bには、配管42dが接続されている。そして、この配管42dには、操作・制御部2により開閉動作が制御される電磁弁42eが取り付けられている。また、測定部4の検水槽42に相当する領域の内周面には、オーバーフロードレン42cが形成されている。このように構成されているため、検水は、入口42aから検水槽42に供給され、オーバーフロードレン42cから排出される。
なお、検水槽42内には、検水の量を検知するための図示しないフロートスイッチが配設されている。
【0024】
測定部4内には、センサモジュール3が位置している。このセンサモジュール3は、本体部(電極ボディー)31と、本体部31から下方に延びる支持部材32と、支持部材32に保持され、センサモジュール3の下端に位置する仕切り部材(仕切り板)33と、本体部31に取り付けられ、本体部31と仕切り部材33との間に位置する検出部(水質計電極)34と、を備えている。
なお、検出部34は、5項目を検出するための各種のセンサ及び内蔵アンプで構成されている。各種のセンサについての詳細は後述する。
【0025】
図3は、図2に示すセンサモジュール3の検出部34の概略構成を示す斜視図である。図3の(a)および(b)において、支持部材32および仕切り部材33の図示を省略している。また、図3の(b)については、温度センサ部71と電気伝導率セル部73と濁度セル部74とを図示するために、検出部34の一部の図示を省略して表している。
同図に示すように、センサモジュール3の検出部34は、5項目を検出するための複数のセンサ類が本体部31に一体化されて構成されている。具体的には、検出部34は、検水の水温を検出する温度センサ部71と、検水のpHを検出するpH電極部72と、検水の導電率を検出する電気伝導率セル部73と、検水の濁度を検出する濁度セル部74と、検水の溶存酸素を検出するDO電極部75と、を備えている。
【0026】
検出部34を構成するセンサ類について簡単に説明する。pH電極部72は、ガラス電極法によりpHを検出するものである。そして、pH電極部72は、先端に設けられたガラス電極チップ72aと、保護カバー72bと、交換式の液絡部72cと、比較電極72dと、補充口栓72eとを有する。
また、DO電極部75は、隔膜形ガルバニ電極法により溶存酸素を検出するものである。そして、DO電極部75は、先端に設けられた隔膜セット75aと、隔膜セット75aに隣接して設けられた外筒75bとを有する。
【0027】
次に、洗浄部材44によるセンサモジュール3の検出部34の洗浄について説明する。
図4は、検出部34の洗浄時におけるセンサモジュール3および測定部4の概略縦断面図である。図5は、図4の線V−Vによる断面図である。
図4および図5に示すように、洗浄部材44は、中央部に貫通する洗浄空間A(図5参照)を有するリング形状である。そして、洗浄部材44は、所定の厚さで形成され、全周にわたって連続する内部空洞S(図2参照)が形成されている。
【0028】
洗浄部材44は、内周面44aと外周面44bとを有する。洗浄部材44の内周面44aには、円周方向に延びる複数のノズル44cが所定の配列で形成されている。複数のノズル44cは全周にわたって形成されている。また、外周面44bには、加圧流体の供給を受けるための供給部44dが設けられている。そして、供給部44dから供給された加圧流体は、洗浄部材44の内部空洞S(図2参照)に導かれて複数のノズル44cから噴射する。そのような加圧流体の噴射は、洗浄部材44の内周面44aの全周にわたって行われる。
【0029】
また、センサモジュール3は、上下移動によって、洗浄部材44の内周面44aで囲まれた洗浄空間A内に位置可能に配置されている。そして、洗浄部材44の内周面44aで囲まれた洗浄空間A内にセンサモジュール3の洗浄したい個所(例えば検出部34)を位置させることで、洗浄したい個所を全周にわたって洗浄することができる。
【0030】
ここで、洗浄部材44に加圧流体を供給する供給システムについて説明する。洗浄部材44には、所定圧(例えば、0.2MPa)に加圧された加圧水が配管81を通じて加圧水供給部82から供給される。配管81には、操作・制御部2により開閉動作が制御される電磁弁81aが取り付けられている。
また、洗浄部材44には、エア(加圧された空気)が配管83を通じてエア供給部84から供給される。配管83には、操作・制御部2により開閉動作が制御される電磁弁83aが取り付けられている。
【0031】
配管81および配管83は共に、配管85に接続されている。すなわち、配管81および配管83は、合流部86で配管85に合流するように配設されている。配管85は、洗浄部材44の供給部44dに接続されている。配管85には、操作・制御部2により開閉動作が制御される電磁弁85aが取り付けられている。
【0032】
洗浄部材44に加圧流体を供給する供給システム(流体供給手段)は上述したように構成されているため、洗浄部材44は、配管85を介して加圧水又はエアの供給を受け、また、配管85を介して、エアが混合されたエア加圧水(バブル)の供給を受ける。
【0033】
このような各種流体の供給について具体的に説明する。操作・制御部2によって電磁弁81a,85aが開かれると、加圧水供給部82の加圧水が配管81,85を介して洗浄部材44に供給される。また、操作・制御部2によって電磁弁83a,85aが開かれると、エア供給部84からのエアが配管83,85を介して洗浄部材44に供給される。また、操作・制御部2によって電磁弁81a,83a,85aが開かれると、合流部86にて加圧水供給部82の加圧水にエア供給部84のエアが混合され、エア加圧水として配管85を介して洗浄部材44に供給される。
このように、操作・制御部2の制御によって洗浄部材44への供給流体を、加圧水、エア又はエア加圧水のいずれかを選択することができる。なお、操作・制御部2の作用に着目すると、操作・制御部2を選択供給手段ということができる。
【0034】
図6は、センサモジュール3の洗浄を行う洗浄工程の手順を示すフローチャートである。
同図に示すように、操作・制御部2がセンサモジュール3(図4参照)を洗浄する必要があると判断したときには、操作・制御部2は、測定部4の円筒内面45内においてセンサモジュール3の上下移動させる(ステップ101)。すなわち、操作・制御部2は、巻取り器36(図4参照)に正転反転の駆動信号を送信して巻取り器36を駆動させる。これにより、センサモジュール3は、洗浄部材44の内周面44aに囲まれた洗浄空間A(図5参照)内に洗浄したい部分が位置するように、測定部4の円筒内面45内で上下移動を繰り返す。
【0035】
その後、操作・制御部2は、電磁弁81a,85a(図4参照)に制御信号を送って電磁弁81a,85aを開く。これにより、加圧水供給部82(図4参照)から加圧水が配管81,85を介して洗浄部材44に供給される(ステップ102)。洗浄部材44に加圧水が供給されると、洗浄部材44の複数のノズル44cから加圧水が噴射される。すなわち、加圧水が洗浄部材44に向かって噴射される。
【0036】
ここで、センサモジュール3の検出部34は、上述したように、5項目を検出するための複数の電極やセンサで構成された複雑な構造であるが、センサモジュール3の外周面はもちろん、センサモジュール3の奥まった部分や入り組んだ部分についても十分な洗浄を行うことができる。これについて詳細に説明する。
【0037】
(1)複数のノズル44cは、洗浄部材44の内周面44aの全周にわたって設けられているので、洗浄部材44の内周面44aに囲まれているセンサモジュール3は全方向から高圧の加圧水(ジェット流)の噴射を受ける。
(2)複数のノズル44cから高圧で噴射された加圧水は、センサモジュール3や測定部4の円筒内面45、洗浄部材44等の様々な個所に当たって様々な角度で跳ね返ることを繰り返す。すなわち、加圧水が円筒内面45内で乱反射する。
(3)センサモジュール3は、巻取り器36の正転反転の繰り返しによって上下移動を繰り返す。すなわち、洗浄したい検出部34を円筒内面45の中の洗浄空間Aを何回も通過するように、センサモジュール3は上下移動を繰り返す。
【0038】
上述した(1)〜(3)の作用によって、センサモジュール3の洗浄したい個所について、センサモジュール3の長手方向に沿って全周にわたる洗浄が行われる。したがって、センサモジュール3の、奥まったり入り組んだりして洗浄し難い部分についても加圧水が行き渡り、十分な洗浄を行うことができる。
【0039】
付言すると、従来の洗浄手段としては、ブラシやワイパーによる洗浄、又は、エアージェットや水ジェットによる洗浄等の、様々な手段が存在する。しかしながら、いずれも、一部の汚れ箇所をねらったものであり、複雑な構造をした電極や多項目水質計のような複数の電極、センサを備えたものを洗浄するにはその吹き出し口、ブラシを多くしなければならず、機構的に複雑なものになっている。また、ブラシやワイパーによる洗浄の場合には、砂を噛んだ場合には、擦る動作により傷等のおそれもある。そのような点で、本実施の形態による洗浄手段は、複雑な構造をもつ被洗浄体であっても、被洗浄体に対してダメージを与えることなく、簡易な洗浄手段で十分な洗浄効果を得ることができる。
【0040】
ここで、洗浄部材44には加圧水が供給される場合のほか、エアを混合したエア加圧水を洗浄部材44に供給されるように操作・制御部2が制御することも可能である。すなわち、操作・制御部2は、電磁弁81a,83a,85aに制御信号を送って電磁弁81a,83a,85aを開き、合流部86にて混合されたエア加圧水を洗浄部材44に供給することも可能である。操作・制御部2は、必要に応じて洗浄部材44に加圧水を供給するかエア加圧水を供給するかを判断し、その判断結果に基づいて電磁弁81a,83a,85aの制御を行う。エア加圧水を供給する場合には、加圧水を供給する場合と比べて、バブル混入による、より一層の汚れはがし効果が期待できる。
なお、洗浄しないと汚れてしまう場合に、本実施の形態による洗浄を1時間ごとに1回行うことにより、1ヶ月程度経過しても汚れがなく、良好な状態を維持していることを確認している。
【0041】
洗浄工程の手順に話を戻す。図6に示すように、加圧水の供給によりセンサモジュール3の洗浄が開始された後は、操作・制御部2が洗浄を終了するか否かを判断する(ステップ103)。この判断は、例えば洗浄している時間を計測し、予め定められた時間が経過したか否かで行うことができる。
操作・制御部2が洗浄を終了すべきと判断したときには、加圧水供給を中止する(ステップ104)。すなわち、操作・制御部2は、開いていた電磁弁81aに制御信号を送って電磁弁81aを閉じる。これにより、加圧水供給部82(図4参照)の加圧水が洗浄部材44に供給されなくなる。
【0042】
その後、操作・制御部2は、電磁弁83a(図4参照)に制御信号を送って電磁弁83aを開く。このときには電磁弁85aは開いた状態であることから、電磁弁83aを開くと、エア供給部84(図4参照)からエアが配管83,85を介して洗浄部材44に供給される(ステップ105)。エアが洗浄部材44に供給されると、洗浄部材44の複数のノズル44cからエアがセンサモジュール3に向けて噴射される。これにより、センサモジュール3にエアが吹き付けられ、センサモジュール3の水切りが行われる。すなわち、水流で洗浄後にエア流で水切りを行う。このように、センサモジュール3の水を吹き飛ばして乾燥させることができる。
【0043】
そして、操作・制御部2は、所定時間の経過等により水切りが完了したとの判断をしたときには(ステップ106)、電磁弁83a,85aに制御信号を送って電磁弁83a,85aを閉じる。これにより、エア供給部84から洗浄部材44へのエア供給が中止される(ステップ107)。
【0044】
また、操作・制御部2は、センサモジュール3が所定の位置に停止するように、巻取り器36(図4参照)を制御する。これにより、センサモジュール3の上下移動が中止され(ステップ108)、一連の洗浄工程が終了する。
【0045】
本実施の形態では、被洗浄体であるセンサモジュール3が、固定の洗浄部材44に対して上下移動する構成であるが、その逆の構成すなわち、被洗浄体が固定されると共に洗浄部材44が被洗浄体に対して移動する構成を採用することも考えられる。すなわち、被洗浄体と洗浄部材44とが洗浄時に相対的な移動を行う構成である。
また、被洗浄体であるセンサモジュール3を上下移動させないで、洗浄部材44にて洗浄する洗浄方法も考えられる。すなわち、センサモジュール3のうちの特に洗浄したい個所を洗浄空間A内にとどまらせることにより、より一層の洗浄効果を期待することができる。
【0046】
また、本実施の形態では、洗浄部材44による洗浄空間Aが、水中ではなく空気中に位置している状態で洗浄工程を行っているが、洗浄部材44による洗浄空間Aが水中に位置している状態で洗浄工程を行うように構成することも考えられる。このような水中洗浄の構成を採用する場合には、洗浄時に洗浄部材44に供給される加圧流体は、エア又はエア加圧水である。
【0047】
すなわち、エアによりセンサモジュール3を洗浄する際には、図6のステップ102において、操作・制御部2は、電磁弁83a,85a(図4参照)を開いて、エア供給部84のエアを配管83,85を介して洗浄部材44に供給するように制御する。また、エア加圧水による洗浄の際には、操作・制御部2は、電磁弁81a,83a,85aを開いて、加圧水供給部82の加圧水とエア供給部84のエアとを合流部86にて混合してエア加圧水とし、配管85を介して洗浄部材44に供給するように制御する。
このように、本実施の形態による構成を空気中だけでなく、水中における洗浄を行うことができるように変更することも考えられる。
【0048】
次に、本実施の形態に係る水質測定装置1の設置例について説明する。
図7は、本実施の形態に係る水質測定装置1の設置例を説明するための説明図である。
本実施の形態に係る水質測定装置1は、主に河川や湖沼等の水質測定に用いられる。すなわち、図7に示すように、水質測定装置1は、選定された地点の観測室91に設置されるものである。そして、水質測定装置1は、河川水等を連続的に自動採水した検水を測定し、測定値を図示しない指示計(図1の操作・制御部2を参照)に指示するとともに記録する。さらに、測定値を図示しないテレメータ装置に接続して伝送し、別の場所の管理事務所等にてデータの作表・解析を行うことも可能である。
【0049】
河川水等の自動採水を行うために、図7に示す設置例では、河床に設置されたパイルで組み込まれた架橋92に、河川水をポンプアップするための採水ポンプ93や、異物を取り除くフィルタ94等を支持させている。そして自動採水のための揚水管95や、測定後の検水を排出するための図示しない排水管等も設置されている。すなわち、水質測定装置1は、いわゆる浸漬型ではない。
【0050】
このように、水質測定装置1は、センサモジュール3の検出部34を河川等に常時浸漬して連続測定するものではない。すなわち、水質測定装置1は、河川等からポンプアップした検水を検水槽42に導いてセンサモジュール3の検出部34を検水槽42内に入れて測定するものであり、測定時以外には、検出部34が検水槽41内から引き上げられる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本実施の形態に係る水質測定装置を示す概略構成図である。
【図2】センサモジュールおよび測定部の各々の構成を説明するための縦断面図である。
【図3】図2に示すセンサモジュールの検出部の概略構成を示す斜視図である。
【図4】検出部の洗浄時におけるセンサモジュールおよび測定部の概略縦断面図である。
【図5】図4の線V−Vによる断面図である。
【図6】センサモジュールの洗浄を行う洗浄工程の手順を示すフローチャートである。
【図7】本実施の形態に係る水質測定装置の設置例を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0052】
1…水質測定装置、2…操作・制御部(選択供給手段)、3…センサモジュール、34…検出部(洗浄対象物)、35…ワイヤ(移動手段)、36…巻取り器(移動手段)、4…測定部、44…洗浄部材(洗浄部、リング部材)、44a…内周面、44c…ノズル、44d…供給部、45…円筒内面、81,83,85…配管、81a,83a,85a…電磁弁、82…加圧水供給部、84…エア供給部、86…合流部、A…洗浄空間、S…内部空洞

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水質計に用いられる洗浄装置であって、
水質計の一部を構成する洗浄対象物を受け入れ可能な洗浄筒と、
前記洗浄筒に受け入れられる洗浄対象物の周囲から洗浄対象物に向けて略全周にわたって加圧流体を噴射して洗浄対象物を洗浄する洗浄部と、
を含む洗浄装置。
【請求項2】
前記洗浄部に加圧流体として、エア、加圧水および両者を混合したエア加圧水を供給可能な流体供給手段を更に含み、当該流体供給手段は、洗浄対象物を水中にて洗浄するときには、エア又はエア加圧水を当該洗浄部に供給し、洗浄対象物を空気中にて洗浄するときには、加圧水又はエア加圧水を当該洗浄部に供給することを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記洗浄部は、中央に洗浄空間が形成されると共に当該洗浄空間を形成する内周面に複数のノズルが形成されるリング部材を備え、かつ、当該リング部材により洗浄対象物の洗浄を行うことを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記洗浄筒が受け入れる洗浄対象物は、複数の電極もしくはセンサ、又は複雑形状の電極もしくはセンサを備えていることを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項5】
検水の水質に関する項目を検出するための検出部と、
前記検出部を収容するための空間が形成された収容部と、
前記収容部に収容された前記検出部の周囲から当該検出部に向けて略全周にわたって加圧流体を噴射して当該検出部を洗浄する洗浄部と、
を含む水質測定装置。
【請求項6】
前記検出部を前記収容部内で往復移動する移動手段を更に含み、当該移動手段は、前記洗浄部により当該検出部が洗浄されている間、当該検出部を往復移動することを特徴とする請求項5に記載の水質測定装置。
【請求項7】
前記洗浄部を往復移動する移動手段を更に含み、当該移動手段は、当該洗浄部により前記検出部が洗浄されている間、当該洗浄部を往復移動することを特徴とする請求項5に記載の水質測定装置。
【請求項8】
前記洗浄部に加圧流体としてエアと加圧水とを選択的に供給可能な選択供給手段を更に含み、当該選択供給手段は、洗浄された前記検出部の水切りを行うためのエアを当該洗浄部に供給することを特徴とする請求項5に記載の水質測定装置。
【請求項9】
水質計に用いられる洗浄方法であって、
水質計の一部を構成する洗浄対象物と当該洗浄対象物を洗浄する洗浄部とを相対的に移動し、
前記洗浄部が前記洗浄対象物の周囲から全周にわたって加圧流体を噴射して当該洗浄対象物を洗浄することを特徴とする洗浄方法。
【請求項10】
前記洗浄部が水中に位置しているときには、エア又はエアを含む加圧水を加圧流体として噴射し、前記洗浄部が空気中に位置しているときには加圧水又はエアを含む加圧水を加圧流体として噴射することを特徴とする請求項9に記載の洗浄方法。
【請求項11】
洗浄された洗浄対象物の水切りを行うためのエアを洗浄部に供給することを特徴とする請求項9に記載の洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−101420(P2007−101420A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−293009(P2005−293009)
【出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)
【Fターム(参考)】