説明

洗浄装置及び洗浄方法

【課題】洗浄液の使用量を極端に減らした場合であっても、洗浄対象物を十分洗浄することが可能で、かつ、短時間で洗浄処理を行うことが可能な洗浄装置及び洗浄方法を提供する。
【解決手段】洗浄装置1は、所与の公転軸線L1を中心に公転しながら、公転軸線と斜めに交差するように延びる自転軸線L2を中心に自転することが可能に構成された容器ホルダ30と、容器ホルダを公転させながら自転させる駆動機構50と、容器ホルダに保持されて容器ホルダと一体的に挙動する、洗浄液Dが収納された洗浄容器110、及び、洗浄容器に収納される被洗浄部材120を有する洗浄容器ユニット100と、を含む。洗浄容器ユニットは、容器ホルダを公転させながら自転させる工程において、被洗浄部材が自転軸線に沿った方向に移動しないように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄装置及び洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、物品に付着した付着物を除去し、当該物品(洗浄対象物品)を洗浄する方法として、種々の技術が提案されている。具体的には、洗浄液が収納された容器内で洗浄対象物を回転運動させる技術(特許文献1参照)や、洗浄対象物及び液体(洗剤)が収納された密閉容器を往復運動させ、これによって付着物を除去する技術(特許文献2参照)や、洗浄対象物品を回転させることによって洗浄対象物品に遠心力を作用させ、これによって付着物を除去する技術(特許文献3参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-227580号公報
【特許文献2】特開平10-277286号公報
【特許文献3】特開平11-239753号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一つの態様は、洗浄液の使用量を極端に減らした場合であっても、洗浄対象物を十分洗浄することが可能で、かつ、短時間で洗浄処理を行うことが可能な洗浄装置及び洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明に係る洗浄装置は、
所与の公転軸線を中心に公転しながら、前記公転軸線と斜めに交差するように延びる自転軸線を中心に自転することが可能に構成された容器ホルダと、
前記容器ホルダを公転させながら自転させる駆動機構と、
前記容器ホルダに保持されて前記容器ホルダと一体的に挙動する、洗浄液が収納された洗浄容器、及び、前記洗浄容器に収納される被洗浄部材を有する洗浄容器ユニットと、
を含み、
前記洗浄容器ユニットは、前記容器ホルダを公転させながら自転させる工程において、前記被洗浄部材が前記自転軸線に沿った方向に移動しないように構成されている。
【0006】
本発明によると、洗浄液の使用量を極端に減らした場合であっても、被洗浄部材(洗浄対象物)を十分洗浄することが可能で、かつ、短時間で洗浄処理を行うことが可能な洗浄装置を提供することができる。
【0007】
(2)この洗浄装置において、
前記洗浄容器ユニットは、前記被洗浄部材が前記洗浄容器の底面近傍の所定領域に配置されるように構成されていてもよい。
【0008】
(3)この洗浄装置において、
前記洗浄容器ユニットは、前記容器ホルダを公転させながら自転させる工程で前記被洗浄部材に作用する遠心力によって、前記被洗浄部材が前記底面に押し付けられるように構成されていてもよい。
【0009】
(4)この洗浄装置において、
前記洗浄容器は、前記底面上に配置される支持部材を有し、
前記洗浄容器ユニットは、前記容器ホルダを公転させながら自転させる工程で前記被洗浄部材に作用する遠心力によって、前記被洗浄部材が前記支持部材に押し付けられるように構成されていてもよい。
【0010】
(5)この洗浄装置において、
前記洗浄容器ユニットは、前記被洗浄部材の外側面を前記自転軸線と直交する仮想平面で切断した断面と、前記洗浄容器の内側面を前記仮想平面で切断した断面とが、同じ形状になるように構成されていてもよい。
【0011】
(6)この洗浄装置において、
前記被洗浄部材は、複数の洗浄対象個片と、前記複数の洗浄対象個片を保持するための保持部材とを有してもよい。
【0012】
(7)この洗浄装置において、
前記洗浄容器の内部空間は、前記被洗浄部材よりも下方の下部領域と、前記被洗浄部材よりも上方の上部領域とを含み、
前記洗浄容器ユニットは、前記容器ホルダを公転させながら自転させる工程において、前記洗浄液が、前記下部領域と前記上部領域とを往来することが可能に構成されていてもよい。
【0013】
(8)本発明に係る洗浄方法は、
洗浄容器及び前記洗浄容器に収納された被洗浄部材を有する洗浄容器ユニットを、所与の公転軸線を中心に公転させながら、前記公転軸線と斜めに交差するように延びる自転軸線を中心に自転させる洗浄工程を含み、
前記洗浄容器ユニットは、前記洗浄工程において、前記被洗浄部材が前記自転軸線方向に移動しないように構成されている。
【0014】
本発明によると、被洗浄部材(洗浄対象物)を十分洗浄することが可能で、かつ、短時間で洗浄処理を行うことが可能な洗浄方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る洗浄装置の構成を説明するための図である。
【図2】本発明に係る洗浄装置の構成を説明するための図である。
【図3】本発明に係る洗浄装置の構成を説明するための図である。
【図4】本発明に係る洗浄装置の構成を説明するための図である。
【図5】本発明に係る洗浄方法を説明するための図である。
【図6】変形例に係る洗浄装置の構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を適用した実施の形態について図面を参照して説明する。ただし、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。すなわち、以下の実施の形態で説明するすべての構成が本発明にとって必須であるとは限らない。また、本発明は、以下の内容を自由に組み合わせたものを含む。
【0017】
(1)洗浄装置1の構成
はじめに、本発明を適用した実施の形態に係る洗浄装置1の構成について、図1を参照しながら説明する。
【0018】
本実施の形態に係る洗浄装置1は、図1に示すように、回転軸10を含む。回転軸10は、仮想の直線を中心に回転するように構成されている。本実施の形態では、回転軸10は、図1に示すように、鉛直に延びる仮想の直線(公転軸線L1)を軸として回転するように構成されている。ただし、回転軸10は、水平に延びる直線を軸として回転するように構成されていてもよい(図示せず)。
【0019】
洗浄装置1は、図1に示すように、回転体20を含む。回転体20は、回転軸10に固定されており、回転軸10の回転に伴って、公転軸線L1を中心に(軸線として)回転するように構成されている。
【0020】
洗浄装置1は、図1に示すように、容器ホルダ30を有する。以下、容器ホルダ30について詳述する。
【0021】
容器ホルダ30は、回転体20における、公転軸線L1から所定の間隔をあけた位置に取り付けられている。これにより、容器ホルダ30は、回転体20の回転に伴って、公転軸線L1を中心に公転することになる。
【0022】
容器ホルダ30は、また、回転体20に対して自転可能に取り付けられている。本実施の形態では、容器ホルダ30には自転軸32が固定されており、自転軸32は、ベアリング34を介して回転体20に取り付けられている。これにより、容器ホルダ30を、回転体20に対して自転可能とすることができる。なお、本実施の形態では、容器ホルダ30は、回転体20の所定の位置を通る仮想の直線(自転軸線L2)を軸として自転可能に構成されている。そして、本実施の形態では、公転軸線L1と自転軸線L2とは、所定の角度で斜めに交差する直線となっている。より具体的には、洗浄装置1では、公転軸線L1と自転軸線L2とは、45度の角度で交差するように構成されている。
【0023】
本実施の形態では、1つの回転体20に、1つの容器ホルダ30が取り付けられている。そして、回転体20における容器ホルダ30とは反対側の位置には、バランス錘36が取り付けられている。このバランス錘36は、公転軸線L1からの距離が可変に構成されている。これにより、洗浄装置1を、安定して運転させることができる。ただし、変形例として、回転体20に、2個の容器ホルダ30を取り付けることも可能である。この場合、2個の容器ホルダ30を、公転軸線L1を中心とする点対称の配置となるように取り付ければ、材料充填装置を安定して動作させることができる。あるいは、材料充填装置を、1つの回転体20に3個以上の複数の容器ホルダ30を取り付けた構成とすることも可能である。
【0024】
本実施の形態では、容器ホルダ30は、洗浄容器ユニット100(洗浄容器110)を保持する役割を果たす。なお、本実施の形態に適用可能な洗浄容器ユニット100の詳細については、後述する。
【0025】
本実施の形態に係る洗浄装置1は、図1に示すように、駆動機構50を含む。駆動機構50は、容器ホルダ30(収納容器100)を公転させながら自転させる役割を果たす。以下、駆動機構50の一例について説明する。
【0026】
駆動機構50は、容器ホルダ30を公転させる公転駆動機構として、回転軸10を回転させるモータ51を含む。洗浄装置1では、回転軸10が回転すると容器ホルダ30が公転する。そのため、モータ51(モータ51、及び、回転軸10、回転体20)により、容器ホルダ30を公転させることができる。なお、本実施の形態では、モータ51は、支持基板60に固定されている。
【0027】
また、駆動機構50は、容器ホルダ30を自転させる自転駆動機構52を含む。以下、自転駆動機構52について説明する。
【0028】
自転駆動機構52は、自転軸32に固定された自転プーリー54を有する。本実施の形態では、自転軸32は容器ホルダ30に固定されていることから、自転プーリー54と容器ホルダ30とは一体的に挙動する。自転駆動機構52は、回転軸10と同心軸に設けられた自転力付与プーリー56を有する。自転力付与プーリー56は、支持基板60に固定されて、回転不能に構成されている。また、自転駆動機構52は、ベルト58を含む。ベルト58は、自転プーリー54及び自転力付与プーリー56にかけまわされる。なお、ベルト58は、アイドラプーリー59によって屈曲し、自転プーリー54及び自転力付与プーリー56にかけまわされている。
【0029】
自転駆動機構52によると、ベルト58によって、自転プーリー54及び自転力付与プーリー56の回転角速度が関連付けされるため、自転プーリー54及び自転力付与プーリー56が、遊星歯車機構と同様の挙動を示すことになる。また、自転力付与プーリー56は回転不能に構成されている。そのため、回転体20を回転させると、自転プーリー54は、公転しながら自転することになる。具体的には、本実施の形態では、回転体20を時計回りに回転させると、自転プーリー54は、公転軸線L1を中心に時計回りに公転しながら、自転軸線L2を中心に反時計回りに自転する。そして、容器ホルダ30は自転プーリー54と一体的に挙動することから、自転駆動機構52によって、容器ホルダ30を公転させながら自転させることが可能になる。なお、洗浄装置1では、自転駆動機構52をプーリーとベルトを利用して構成したが、自転駆動機構は歯車等の動力伝達要素を利用して構成することも可能である。
【0030】
なお、変形例として、自転力付与プーリー56を、回転軸10を中心に所望の回転角速度で回転させることが可能な構成とすることも可能である(図示せず)。具体的には、自転力付与プーリー56をベアリングを介して回転軸10に取り付け、そして、モータ51とは別に用意されたモータの駆動力や、ブレーキの制動力を利用して自転力付与プーリー56の回転速度を制御する構成とすることで、自転力付与プーリー56を所望の回転角速度で回転させることが可能になる。かかる構成とすることで、容器ホルダ30の自転角速度(自転/公転角速度比)を所望の値に設定することが可能になる。
【0031】
洗浄装置1は、図示しない筐体や、筐体内で支持基板60を支持し、かつ、支持基板60の振動を防止する防振手段(防振ワイヤや防振バネなど)をさらに含んだ構成とすることができる。
【0032】
(2)洗浄容器ユニット100について
次に、図2(A)〜図4(C)を参照して、洗浄容器ユニット100について説明する。洗浄容器ユニット100は、容器ホルダ30に保持されて、容器ホルダ30と一体的に挙動するように構成されている(図1参照)。そして、本実施の形態では、洗浄容器ユニット100が公転しながら自転することによって、被洗浄部材120が洗浄処理される。
【0033】
洗浄容器ユニット100は、図2(A)及び図2(B)に示すように、洗浄容器110を有する。洗浄容器110は、容器ホルダ30に保持されて、容器ホルダ30と一体的に挙動するように構成されている(図1参照)。例えば、容器ホルダ30及び洗浄容器110を、両者の空回りを防止するための空回り防止機構(図示せず)を備えた構成とすることができる。
【0034】
洗浄容器110には、図2(A)に示すように、洗浄液Dが収納される。本実施の形態に適用可能な洗浄液Dの種類は特に限定されるものではなく、被洗浄部材120(被洗浄部材120及び付着物)に適したいずれかの液体を利用することができる。洗浄液Dとして、例えば、アルコールや、エタノール、メタノール、アセトン等の有機系溶剤や、無機系溶剤、あるいは純水等の既に知られているいずれかの液体の利用が可能である。また、洗浄液Dとして、溶剤に研磨剤等の個体が分散した液体(溶液)を利用することも可能である。
【0035】
洗浄容器ユニット100は、図2(A)及び図2(B)に示すように、被洗浄部材120を有する。被洗浄部材120は、洗浄容器110に保持されて、洗浄装置1による洗浄処理の対象となる部材である。
【0036】
洗浄容器ユニット100は、洗浄工程(容器ホルダ30を公転させながら自転させる工程)において、被洗浄部材120が洗浄容器110の底面近傍に配置され、かつ、被洗浄部材120が自転軸線L2に沿った方向に移動しないように構成されている。具体的には、洗浄容器ユニット100は、被洗浄部材120が、洗浄容器110の底面に接触するように構成されている(図1及び図2(A)参照)。被洗浄部材120には、洗浄工程において常に洗浄容器110の底面に向かう遠心力が作用することから、被洗浄部材120を底面に接触させることによって、被洗浄部材120の自転軸線L2に沿った方向への移動が防止される。また、洗浄容器ユニット100は、図1〜図2(B)に示すように、被洗浄部材120の外側面を自転軸線L2と直交する仮想平面で切断した断面と、洗浄容器110の内側面を当該仮想平面切断した断面とが同じ形状となるように構成されている。これにより、被洗浄部材120の外周(その一部)と洗浄容器110の内側面とを接触させることができるため、洗浄容器110内で被洗浄部材120が大きく移動することが防止され、その結果、被洗浄部材120の自転軸線L2方向への移動が抑制される。
【0037】
なお、本実施の形態では、洗浄容器ユニット100は、洗浄容器110の内部空間のうち、被洗浄部材120よりも下方である下部領域112と、被洗浄部材120よりも上方である上部領域114との間を、洗浄液Dが往来することが可能に構成されている(図2(A)参照)。
【0038】
以下、被洗浄部材120の具体的な一例として、摺動部材210について説明する。図3(A)〜図4(C)は、摺動部材210について説明するための図である。なお、摺動部材210は、第1容器242に収納された材料Mを第2容器244に移送充填するために利用される部材である。ただし、本発明に適用可能な被洗浄部材120が、これに限られるものではない。
【0039】
摺動部材210は、図3(A)〜図3(C)に示すように、円盤状の押圧部材220を有する。押圧部材220は、後述する材料Mを押圧する押圧面222と、背面224とを有し、また、押圧面222及び背面224を貫通する貫通穴225が形成されている。なお、本実施の形態では、押圧面222は凸型のテーパー面となっており、貫通穴225はテーパー領域に配置される。また、摺動部材210は、シール部材230を含む。シール部材230は、押圧部材220の外周を囲むように、押圧部材220に取り付けられている。
【0040】
そして、摺動部材210は、図4(A)〜図4(C)に示すように、第1容器242に収納された材料Mを、第2容器244に移送充填するために利用される。具体的には、図4(A)に示すように第1容器242に摺動部材210をセットして材料Mに向かって摺動させ、図4(B)に示すように押圧部材220の押圧面222及び第1容器242の内面によって材料Mを押圧する。これにより、材料Mは貫通穴225から押し出され、図4(C)に示すように、貫通穴225に連通している第2容器244に移送充填される。なお、本実施の形態では、第2容器244は、押圧部材220の背面224に固定されている。
【0041】
こうして、第1容器242に収納された材料Mを第2容器244に移送充填するために利用された摺動部材210(材料Mが付着している摺動部材210)が、本実施の形態における被洗浄部材120である。なお、材料Mは、液体として挙動する材料であればその種類を問うものではなく、例えば、接着剤、シーラント剤、液晶材料、半田ペースト、成型に利用される硬化性の樹脂材料、歯科用印象材料、歯科用セメント(穴埋め剤等)、粘性の強い液状の薬剤等の種々の材料を想定することができる。また、変形例として、摺動部材210のうち、押圧部材220のみを、被洗浄部材120とすることも可能である(図示せず)。
【0042】
(3)動作
次に、本実施の形態に係る洗浄装置1の動作について説明する。
【0043】
洗浄装置1は、図1に示すように、容器ホルダ30が洗浄容器ユニット100を保持した状態で回転体20を回転させることにより、容器ホルダ30を公転させながら自転させる。これによって、容器ホルダ30に保持された洗浄容器ユニット100が、公転しながら自転することになる。
【0044】
洗浄容器ユニット100が公転しながら自転すると、被洗浄部材120には遠心力(特に公転の遠心力)が作用し、洗浄容器110の底面に向かう力を受けることになる。これにより、被洗浄部材120は洗浄容器110の底面に押し付けられ、自転軸線L2方向への移動が規制され、底面近傍の所定領域に配置(固定)される。また、洗浄容器ユニット100が公転しながら自転すると、図1に示すように、洗浄液Dは遠心力(特に公転の遠心力)の作用を受けて、洗浄容器110内のうち、公転軸線L1から最も遠い領域(最遠領域)に集められる。
【0045】
この状態で洗浄容器ユニット100が自転すると、洗浄容器110及び被洗浄部材120が自転し、洗浄容器110内の最遠領域近傍で、被洗浄部材120と洗浄液Dとが激しく衝突する。また、被洗浄部材120に接触した洗浄液Dは、遠心力の作用を受けるため、被洗浄部材120の表面に押し付けられながら流動することになる。さらに、被洗浄部材120に付着している付着物にも遠心力が作用するため、被洗浄部材120から離れやすくなるとともに、一度被洗浄部材120から離れた付着物が被洗浄部材120に再付着する現象が起こりにくくなる。このことから、洗浄装置1を利用することで、被洗浄部材120に付着した付着物を、極めて効率よく除去することが可能になる。
【0046】
また、洗浄装置1は、公転軸線L1と自転軸線L2とが斜めに交差するように設定されているため、洗浄液Dは、洗浄容器110の底面と側面の交点(最遠領域)に集められる(図1参照)。そして、洗浄装置1は、洗浄容器ユニット100内で、被洗浄部材120が洗浄容器110の底面に押し付けられ、底面近傍に配置されることになる。このことから、洗浄液Dの使用量が少ない場合であっても、洗浄液Dと被洗浄部材120とが接触しやすくなり、両者の接触頻度を高めることができる。
【0047】
さらに、洗浄装置1では、被洗浄部材120における洗浄容器110の底面と対向する面(押圧面222)が、テーパー面となっており、かつ、貫通穴225がテーパー領域に配置されている。そのため、洗浄液Dが、貫通穴225を通って、洗浄容器110の下部領域112及び上部領域114の間を往来することが可能になる。そのため、付着物の残渣が少なくなるように、被洗浄部材120の洗浄処理を行うことができる。
【0048】
(4)洗浄方法
次に、図5を参照して、本実施の形態に係る被洗浄部材120の洗浄方法について説明する。図5は、被洗浄部材120の洗浄方法について説明するためのフローチャートである。
【0049】
本実施の形態に係る洗浄方法は、容器ホルダ30に洗浄容器ユニット100を保持させる工程(ステップS10)と、容器ホルダ30を公転させながら自転させる洗浄工程(ステップS12)とを含む。容器ホルダ30を公転させながら自転させることにより、洗浄容器ユニット100が公転しながら自転し、被洗浄部材120の洗浄処理が行われる。
【0050】
なお、本実施の形態に係る洗浄方法では、洗浄工程(ステップS12)における容器ホルダ30の回転数(公転数及び自転数)は特に限定されるものではない。一例をあげると、洗浄実験により、公転数を2000rpm程度、自転数を800rpm程度に設定した場合に、効率の良い洗浄処理を行うことが可能になることが確認された。
【0051】
また、本実施の形態に係る洗浄方法では、洗浄工程(ステップS12)の前に、洗浄容器110に洗浄液Dが収納されていない状態で、洗浄容器110を公転させながら自転させる工程を行うことも可能である。これによると、洗浄液Dを利用した洗浄工程の前に、被洗浄部材120に付着した付着物の一部を、遠心力によって被洗浄部材120から取り除く(剥離させる)ことができる。
【0052】
また、必要に応じて、洗浄工程(ステップS12)の後に、洗浄容器ユニット100内の洗浄液Dを入れ替えて、再度、容器ホルダ30に洗浄容器ユニット100を保持させる工程と、容器ホルダ30を公転させながら自転させる洗浄工程とを行うことも可能である。この場合、最初の洗浄工程と、後の洗浄工程とで、同じ種類の洗浄液Dを利用してもよく、あるいは、種類の異なる洗浄液を利用することも可能である。
【0053】
(6)効果
次に、本実施の形態が奏する作用効果について説明する。
【0054】
本実施の形態によると、遠心力が作用する環境下で被洗浄部材120の洗浄処理を行うため、極めて高い洗浄作用を得ることができる。すなわち、本実施の形態によると、短時間で、残渣の少ない洗浄処理を行うことが可能になる。
【0055】
また、本実施の形態によると、被洗浄部材120と洗浄液Dとが接触しやすくなるため、洗浄容器110内の洗浄液Dの量を少なくした場合でも、被洗浄部材120の洗浄処理を行うことが可能になる。そのため、本実施の形態によると、少量の洗浄液Dで、効果的に被洗浄部材120の洗浄処理を行うことができる。
【0056】
さらに、本実施の形態では、洗浄容器ユニット100は、洗浄液Dが、貫通穴225を通って下部領域112及び上部領域114の間を往来することが可能な構成となっている。そのため、洗浄液Dを自由に流動させることができ、被洗浄部材120の洗浄処理を効率よく行うことができるとともに、貫通穴225内部に付着した付着物も効果的に除去することができる。
【0057】
(7)変形例
次に、本実施の形態の変形例について説明する。図6(A)及び図6(B)は、変形例に係る洗浄装置について説明するための図である。
【0058】
本変形例では、洗浄装置は、図6(A)に示す、洗浄容器ユニット300を含む。洗浄容器ユニット300は、洗浄容器110に収納される被洗浄部材400を含んでいる。そして、被洗浄部材400は、図6(B)に示すように、複数の洗浄対象個片402と、複数の洗浄対象個片402を保持する保持部材404とを含んで構成されている。すなわち、本変形例では、複数の物品を一括で洗浄対象物とすることができるため、効率よく洗浄処理を行うことができる。また、本変形例では、保持部材404は網状の部材によって構成されている。これにより、洗浄液Dを自由に流動させることが可能になる。なお、被洗浄部材400は、保持部材404内で洗浄対象個片402が自由に動けるように構成してもよく、逆に、保持部材404内で洗浄対象個片402が固定されるように構成してもよい。
【0059】
また、本変形例では、洗浄容器ユニット300は、図6(A)に示すように、洗浄容器110の底面上に配置される支持部材115を含む。支持部材115として、例えば、被洗浄部材400と(ほぼ)同じ外形の、リング状の部材(例えば、Оリング)を利用することができる。そして、本変形例では、容器ホルダ30を公転させながら自転させる工程で、被洗浄部材400が、支持部材115に押し付けられる。支持部材115を利用することにより、洗浄容器110の底面と、被洗浄部材400(保持部材404)とが直接接触することを防止することができる。そのため、洗浄容器110と被洗浄部材400とが接触し、損傷する事態の発生を防止することができる。
【符号の説明】
【0060】
1…洗浄装置、 10…回転軸、 20…回転体、 30…容器ホルダ、 32…自転軸、 34…ベアリング、 36…バランス錘、 50…駆動機構、 51…モータ、 52…自転駆動機構、 54…自転プーリー、 56…自転力付与プーリー、 58…ベルト、 59…アイドラプーリー、 60…支持基板、 100…洗浄容器ユニット、 110…洗浄容器、 112…下部領域、 114…上部領域、 115…支持部材、 120…被洗浄部材、 210…摺動部材、 220…押圧部材、 222…押圧面、 224…背面、 225…貫通穴、 230…シール部材、 242…第1容器、 244…第2容器、 300…洗浄容器ユニット、 400…被洗浄部材、 402…洗浄対象個片、 404…保持部材、 D…洗浄液、 M…材料


【特許請求の範囲】
【請求項1】
所与の公転軸線を中心に公転しながら、前記公転軸線と斜めに交差するように延びる自転軸線を中心に自転することが可能に構成された容器ホルダと、
前記容器ホルダを公転させながら自転させる駆動機構と、
前記容器ホルダに保持されて前記容器ホルダと一体的に挙動する、洗浄液が収納された洗浄容器、及び、前記洗浄容器に収納される被洗浄部材を有する洗浄容器ユニットと、
を含み、
前記洗浄容器ユニットは、前記容器ホルダを公転させながら自転させる工程において、前記被洗浄部材が前記自転軸線に沿った方向に移動しないように構成されている洗浄装置。
【請求項2】
請求項1に記載の洗浄装置において、
前記洗浄容器ユニットは、前記被洗浄部材が前記洗浄容器の底面近傍の所定領域に配置されるように構成されている洗浄装置。
【請求項3】
請求項2に記載の洗浄装置において、
前記洗浄容器ユニットは、前記容器ホルダを公転させながら自転させる工程で前記被洗浄部材に作用する遠心力によって、前記被洗浄部材が前記底面に押し付けられるように構成されている洗浄装置。
【請求項4】
請求項2に記載の洗浄装置において、
前記洗浄容器は、前記底面上に配置される支持部材を有し、
前記洗浄容器ユニットは、前記容器ホルダを公転させながら自転させる工程で前記被洗浄部材に作用する遠心力によって、前記被洗浄部材が前記支持部材に押し付けられるように構成されている洗浄装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の洗浄装置において、
前記洗浄容器ユニットは、前記被洗浄部材の外側面を前記自転軸線と直交する仮想平面で切断した断面と、前記洗浄容器の内側面を前記仮想平面で切断した断面とが、同じ形状になるように構成されている洗浄装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の洗浄装置において、
前記被洗浄部材は、複数の洗浄対象個片と、前記複数の洗浄対象個片を保持するための保持部材とを有する洗浄装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載の洗浄装置において、
前記洗浄容器の内部空間は、前記被洗浄部材よりも下方の下部領域と、前記被洗浄部材よりも上方の上部領域とを含み、
前記洗浄容器ユニットは、前記容器ホルダを公転させながら自転させる工程において、前記洗浄液が、前記下部領域と前記上部領域とを往来することが可能に構成されている洗浄装置。
【請求項8】
洗浄容器及び前記洗浄容器に収納された被洗浄部材を有する洗浄容器ユニットを、所与の公転軸線を中心に公転させながら、前記公転軸線と斜めに交差するように延びる自転軸線を中心に自転させる洗浄工程を含み、
前記洗浄容器ユニットは、前記洗浄工程において、前記被洗浄部材が前記自転軸線方向に移動しないように構成されている洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−188311(P2010−188311A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37317(P2009−37317)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(393030408)株式会社シンキー (34)
【Fターム(参考)】