説明

洗浄装置

【課題】洗浄槽内のガス溶解水のガスの濃度を所定の値に保つガス溶解水循環手段を有する洗浄装置を提供することにある。
【解決手段】ガス溶解部21によりガスの濃度を制御したガス溶解水70を、洗浄装置の洗浄槽60の側壁から供給するガス溶解水供給手段20と、洗浄槽60からオーバーフローしたガス溶解水70を排出処理するガス溶解水排出処理手段30と、洗浄装置の洗浄槽60内に満たされたガス溶解水70を洗浄槽60の下部から取り出し、循環させて洗浄槽60の側壁から供給するガス溶解水循環手段10とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス溶解水と超音波とを用いた洗浄装置に係り、詳しくは、洗浄槽内のガス溶解水のガス濃度を均一に保つガス溶解水循環手段を有する洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は、従来のガス溶解水と超音波とを用いた洗浄装置の構成を示す装置構成図である。図3において、洗浄装置の洗浄槽60は、底部に超音波振動子50を備え、上部にオーバーフローしたガス溶解水70を溜めるガス溶解水溜め溝31を具備している。洗浄槽60に、ガス溶解水70が側壁から供給されて満たされると、被洗浄物80が洗浄槽60内に挿入され、超音波振動子50が振動して洗浄が行われる。
【0003】
洗浄中、ガス溶解水70が引き続き側壁から供給され、オーバーフローしたガス溶解水70は、ガス溶解水溜め溝31に溜まった後、循環・廃液タンク90に蓄えられる。循環・廃液タンク90に蓄えられたガス溶解水70は、ポンプ12及びフィルタ13を介して、再び洗浄槽60に循環供給される。また、循環・廃液タンク90に蓄えられたガス溶解水70の上層部分は、廃液として排出される。
【0004】
図4は、洗浄槽の深さ方向に対する、水素ガス溶解水の溶解濃度を示す水素濃度特性図である。水素溶解濃度は、水圧の高い下部において溶解ガスの放出が少ないため、初期濃度に近い値を示し、上部になる程、低濃度となっている。また、槽内の水素ガス溶解水の置換時間が短時間である程、洗浄槽の深さ方向での濃度差は少ない。ところが置換時間が長くなると、上部と下部とでは大きな濃度差を生じている。
【0005】
図3の洗浄装置において、オーバーフローしたガス濃度の低いガス溶解水70は、図4の水素濃度特性図が示すとおり、一度ガス溶解水溜め溝31及び循環・廃液タンク90に蓄えられることにより、溶解ガスが放出してさらに濃度が低くなる。これを循環させて洗浄槽60に供給するため、洗浄槽60内のガス溶解水70のガス濃度が低下する要因となる。このガス濃度の低下が原因で、洗浄力が低下するため、洗浄時間が長くなり、さらに洗浄不良を生じるなどの問題となる。
【0006】
特許文献1には、洗浄液供給管内で調合した洗浄液を洗浄槽内へ供給する途中で、透過光測定手段により紫外光の吸光度を測定して洗浄液中の過酸化水素水の濃度を検出し、赤外光の吸光度を測定してアンモニア水または塩酸の濃度を検出し、この結果に基づき、薬液供給量制御手段で各薬液導入手段を制御する、旨の記載がある。
【特許文献1】実開平5−53241号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、洗浄槽内のガス溶解水のガス濃度を均一に保つガス溶解水循環手段を有する洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の洗浄装置は、ガス溶解水と超音波とを用いた洗浄装置において、ガス溶解部によりガスの濃度を制御したガス溶解水を、洗浄装置の洗浄槽に供給するガス溶解水供給手段と、洗浄槽からオーバーフローしたガス溶解水を排出する、又はオーバーフローしたガス溶解水の一部又は全部を循環させるガス溶解水排出処理手段と、洗浄装置の洗浄槽内に満たされたガス溶解水を洗浄槽から取り出し、循環させて洗浄槽のガス溶解水の取り出し部位より上部から供給するガス溶解水循環手段とを有することを特徴とする。
【0009】
本発明の洗浄装置の超音波を発生する超音波振動子は、洗浄動作時に稼動し、洗浄待機時に停止することを特徴とする。
【0010】
本発明の洗浄装置の洗浄槽が、ガス溶解水のガスの濃度を検知するガス濃度検知部を具備し、ガス溶解部は、ガス濃度検知部のガス濃度検知信号に基づきガス溶解水のガスの濃度を制御することを特徴とする。
【0011】
本発明の洗浄装置のガス溶解水循環手段が、ガス溶解部を具備し、循環中のガス溶解水のガスの濃度を制御することを特徴とする。
【0012】
本発明の洗浄装置の洗浄槽が、ガス溶解水のガスの濃度を検知するガス濃度検知部をさらに具備し、ガス溶解水循環手段が具備するガス溶解部は、さらに具備したガス濃度検知部のガス濃度検知信号により循環中のガス溶解水のガスの濃度を制御することを特徴とする。
【0013】
本発明の洗浄装置のガス溶解水のガスは、水素及び、又はアンモニアであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、洗浄槽内のガス溶解水のガスの濃度を均一に保つガス溶解水循環手段を提供することが可能となる。このため、本発明のガス溶解水循環手段を具備することにより、ガス濃度の低下が原因で洗浄力が低下することがなく、所定の洗浄時間内で洗浄不良のない洗浄を行うことができる洗浄装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施の形態について、図を用いて説明する。図1は、本発明による洗浄装置の第1の実施例を示す装置構成図である。図1において、洗浄装置100−1は、洗浄槽60、超音波振動子50、ガス溶解水供給手段20、ガス溶解水排出処理手段30、及びガス溶解水循環手段10を有している。ガス溶解水供給手段20は、ガス溶解部21とガス溶解水噴射ノズル22とを有している。ガス溶解水排出処理手段30は、洗浄槽60からオーバーフローしたガス溶解水70を溜めるガス溶解水溜め溝31とオーバーフローしたガス溶解水70を廃液処理装置(図示せず)に排出する排出管32とを有している。ガス溶解水循環手段10は、ガス溶解水取水口11、ポンプ12、フィルタ13、及び循環ガス溶解水噴射ノズル14を有している。
【0016】
ガス溶解水供給手段20は、洗浄初期段階において、ガス溶解水が所定のガス濃度となるよう、ガス溶解部21に供給される水とガス(水素および、又はアンモニア)とを混合し、側壁に設置されたガス溶解水噴射ノズル22から噴出して洗浄槽60を満たす。洗浄槽60がガス溶解水70で満たされと、被洗浄物80が洗浄槽60内に挿入され、洗浄槽60の底部に設置された超音波振動子50が振動を開始して洗浄が開始される。又、洗浄が終了し待機状態となると超音波振動子50の振動は停止し、ガス溶解水のガスの放散を抑止する。
【0017】
洗浄中において、ガス溶解水循環手段10は、洗浄槽60の任意の底部に取り付けられたガス溶解水取水口11からガス溶解水70を取水し、ポンプ12及びフィルタ13を介し、ガス溶解水取水口11の部位より上部に設置された循環ガス溶解水噴射ノズル14から洗浄槽60内に噴出して循環させる。また、洗浄槽60の上部に設置されたガス溶解水溜め溝31には、オーバーフローしたガス溶解水70が溜まり、排出管32により廃液処理装置に排出される。
【0018】
このように、ガス溶解水循環手段10は、図4に示される初期濃度に近い値の下部のガス溶解水70を取水し、側壁に設置された循環ガス溶解水噴射ノズル14から洗浄槽60内に噴出して循環させている。このため図3におけるオーバーフローしたガス濃度の低いガス溶解水70のように、溶解ガスが放出してさらに濃度が低くなることがなく、洗浄槽60の上部近傍まで初期濃度に近い均一な値を得ることができる。
【0019】
また洗浄槽60の上部に、ガス溶解水のガスの濃度を検知するガス濃度検知部40を具備しても良い。これにより、ガス濃度検知部40は洗浄中のガスの濃度を検知し、検知信号をガス溶解部21へ送信し、ガス溶解部21は検知信号を基に、ガスの濃度を所定の値に制御することにより、所定のガス濃度の維持が容易となる。さらに、ガス濃度の低い上部のガス溶解水70を、所定の速度でオーバーフローさせることにより、上部のガス溶解水70の影響を、上部近傍以下のガス溶解水70に及ぼすことを無くすことができる。これらにより、洗浄槽内のガス溶解水のガスの濃度を一層均一に保つことができる。
【0020】
図2は、本発明による洗浄装置の第2の実施例を示す装置構成図である。図2において、洗浄装置100−2のガス溶解水循環手段10が、ガス溶解部15を有し、洗浄槽60が、ガス濃度検知部45をさらに有しているところが、図1と異なっている。洗浄装置100−2のガス溶解水循環手段10のガス溶解部15は、洗浄槽60にさらに設置されたガス濃度検知部45の検知信号を基に、ガス(水素及び、又はアンモニア)の濃度を制御する。これにより、図1の洗浄装置100−1に比べて、さらに均一に、洗浄槽内のガス溶解水のガス濃度を保つことができる。またガス濃度検知部45は、ガス濃度検知部40を共用しても良い。
【0021】
図5は、本発明による洗浄装置の第3の実施例を示す装置構成図である。図5において、洗浄装置100−3のガス溶解水排出処理手段30が、ガス溶解部33と排出ガス溶解水噴射ノズル34とを有しているところが、図2と異なっている。また、ガス溶解水排出処理手段30は、他のガス溶解部と同様に独立したガス濃度検知部を設けてもよく、他のガス濃度検知部の検知信号を用いてガス溶解部33を制御しても良い。これにより、オーバーフローしたガス溶解水の有効利用が可能となる。
【0022】
以上説明したように本発明は、洗浄槽内のガス溶解水のガスの濃度を所定の値に保つガス溶解水循環手段を可能とするため、ガス濃度の低下が原因で洗浄力が低下することがなく、所定の洗浄時間内で洗浄不良のない洗浄を行うことができる洗浄装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明による洗浄装置の第1の実施例を示す装置構成図。
【図2】本発明による洗浄装置の第2の実施例を示す装置構成図。
【図3】従来のガス溶解水と超音波とを用いた洗浄装置の構成を示す装置構成図。
【図4】洗浄槽の深さ方向に対する水素ガス溶解水の溶解濃度を示す水素濃度特性図。
【図5】本発明による洗浄装置の第3の実施例を示す装置構成図。
【符号の説明】
【0024】
10 ガス溶解水循環手段
11 ガス溶解水取水口
12 ポンプ
13 フィルタ
14 循環ガス溶解水噴射ノズル
15 ガス溶解水循環手段のガス溶解部
20 ガス溶解水供給手段
21 ガス溶解水供給手段のガス溶解部
22 ガス溶解水噴射ノズル
30 ガス溶解水排出処理手段
31 ガス溶解水溜め溝
32 排出管
33 ガス溶解水排出処理手段のガス溶解部
34 排出ガス溶解水噴射ノズル
40 ガス溶解水供給手段のガス濃度検知部
45 ガス溶解水循環手段のガス濃度検知部
50 超音波振動子
60 洗浄槽
70 ガス溶解水
80 被洗浄物
90 循環・廃液タンク
100−1 第1の実施例による洗浄装置
100−2 第2の実施例による洗浄装置
100−3 第3の実施例による洗浄装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス溶解水と超音波とを用いた洗浄装置において、
ガス溶解部によりガスの濃度を制御したガス溶解水を、前記洗浄装置の洗浄槽に供給するガス溶解水供給手段と、
前記洗浄槽からオーバーフローした前記ガス溶解水を排出する、又は前記オーバーフローしたガス溶解水の一部又は全部を循環させるガス溶解水排出処理手段と、
前記洗浄装置の洗浄槽内に満たされた前記ガス溶解水を前記洗浄槽から取り出し、循環させ、前記洗浄槽の前記ガス溶解水の取り出し部位より上部から供給するガス溶解水循環手段とを有することを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記超音波を発生する超音波振動子は、洗浄動作時に稼動し、洗浄待機時に停止することを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記洗浄装置の洗浄槽が前記ガス溶解水のガスの濃度を検知するガス濃度検知部を具備し、前記ガス溶解部は、前記ガス濃度検知部のガス濃度検知信号に基づき前記ガス溶解水のガスの濃度を制御することを特徴とする請求項1又は2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記ガス溶解水循環手段がガス溶解部を具備し、循環中の前記ガス溶解水のガスの濃度を制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記洗浄装置の洗浄槽が前記ガス溶解水のガスの濃度を検知するガス濃度検知部をさらに具備し、前記ガス溶解水循環手段が具備する前記ガス溶解部は、前記さらに具備したガス濃度検知部のガス濃度検知信号により前記循環中のガス溶解水のガスの濃度を制御することを特徴とする請求項4に記載の洗浄装置。
【請求項6】
前記ガス溶解水のガスは水素及び、又はアンモニアであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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