説明

洗浄装置

【課題】血液等の検体の処理にあたって、処理後の検体を効果的に洗浄できるようにする。
【解決手段】ノズルアセンブリ24の中央軸に沿って中央パイプ52が貫通している。その先端開口は吐出孔46である。吐出孔46の周囲には均等間隔をもって複数の吸引孔50が形成されている。ノズル本体40内には中間空洞部70が形成され、それには複数の吸引路82が接続されている。また中間空洞部70には放射状に複数の横穴72が形成され、更に複数の横穴72は複数の縦穴74に連なっている。それらは吸引経路を構成するものである。吐出孔46及び吸引孔アレイ48からなる開口群は先端面レベルよりも若干上方に引っ込んだ位置に設定されており、洗浄時においては検体を包み込む密閉空間が形成され、その密閉空間内において検体の洗浄が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は洗浄装置に関し、特に、反応プレート上における試薬処理後の検体を洗浄する機構に関する。
【背景技術】
【0002】
ELISA(Enzyme-Linked Immuno Sorbent Assay)に代表されるイムノアッセイによる検体分析法の実行に当たっては、一般に、上面に試薬としての抗原・抗体等のタンパク質(生体物質)が固相化された反応プレートが用いられる。それに滴下される検体は、例えば生体から抽出された血清、血漿、尿等のサンプルである。そのような検体に対して、複数の試薬を用いた反応処理が段階的に適用される。
【0003】
各反応処理工程では、通常、検体洗浄が実施される。洗浄が適切に行われない場合、前回の反応処理で利用された試薬が残留して次の反応処理に影響を与えたり、最終的な光学的測定に当たって信号検出感度の低下を招いたりする。特に、平坦な反応プレート上において検体の洗浄を行う場合、洗浄液の飛散や過剰な拡散が生じ易いので、それを防止する必要がある。もっとも重視されることは、検体の全体にわたる短時間での均一な洗浄である。下記の特許文献に記載された洗浄機構は、いずれも、複数の吸引路間における吸引圧を均一化するための特別な構造を有していない。
【0004】
【特許文献1】特開昭55−116239号公報
【特許文献2】特開平4−164256号公報
【特許文献3】特開2005−523456号公報
【特許文献4】特開2007−255936号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
検体の洗浄に際しては上記のように対象となる洗浄領域の全体にわたって均一な洗浄を行うことが望まれ、特に、複数の吸引路を利用する場合にはそれらの間での吸引圧の差ができるだけ生じないようにすることが望まれる。
【0006】
本発明の目的は、検体を洗浄する場合において、複数の吸引路の吸引圧をできるだけ均一化できる構造をもった洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、洗浄液の吐出及び吸引を行うノズルアセンブリを備え、当該ノズルアセンブリを利用して試薬処理後の検体を洗浄する洗浄装置において、前記ノズルアセンブリは、前記試薬処理後の検体に向き合う面であって、中央孔と、前記中央孔の周囲に均等間隔をもって配列された複数の周囲孔と、を有するノズル面と、前記中央孔に連通し、前記ノズルアセンブリの中心軸に沿って前記ノズルアセンブリを上下に貫通する中央路と、前記中心軸上の中間部位に設けられ、前記中心軸を中心とした円筒形状をなす中間空洞部と、前記中央路の周囲において均等間隔をもって配列され、前記複数の周囲孔と前記中間空洞部とを連通させる複数の周囲路と、前記中間空洞部に対して少なくとも1つの外部管を接続するための少なくとも1つの接続路と、を含み、前記中央孔及び前記複数の周囲孔の内で一方が洗浄液を吐出し他方が洗浄液を吸引することを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、中央孔を中心としてその周囲に均等間隔をもって複数の周囲孔が形成され、同様に、中央路の周囲に均等間隔をもって複数の周囲路が形成され、構造的な対称性から、吸引作用あるいは吐出作用の偏りあるいはアンバランスを軽減又は解消できる。特に、複数の周囲路は中間空洞部を経由してから少なくとも1つの外部管に接続されているので、中間空洞部において吸引圧あるいは吐出圧のアンバランスを効果的に防止することができる。更に中間空洞部に複数の外部管が接続される場合においても中心軸回りにおける対称性、均等性ができるだけ保たれるような構成を採用するのが望ましい。
【0009】
上記構成を用いれば、吸引圧等を検体側へ均等に与えることができるので、洗浄ムラを無くして洗浄効率を高められる。これは洗浄時間の短縮化、検体分析精度の向上といった利点につながるものである。また、局所的な圧力の高まりを防止できるので、検体の破損、剥がれ、等を防止できるという利点も得られる。
【0010】
望ましくは、前記中央孔が吐出孔であり、前記各周囲孔が吸引孔である。中央から洗浄液を吐出し、その周囲の全体から洗浄液を吸引すれば、自然な流れを生じさせて、洗浄効率を高められる。中央孔を吸引孔とし、複数の周囲孔を吐出孔とすることも考えられるが、その場合には一般に吸引孔である中央孔のサイズを大きくする必要があるので、そこへの検体の引き込み等が生じないように制御を行うのが望ましい。中央孔を吐出孔とし、複数の周囲孔をそれぞれ吸引孔とすれば、仮に一部の吸引孔に詰まりが生じても、洗浄不能という最悪の事態を回避できる。
【0011】
望ましくは、前記少なくとも1つの接続路として、前記中間空洞部と複数の外部管とを接続するための複数の接続路が設けられ、前記複数の接続路は前記中間空洞部の周囲において均等間隔をもって配列される。この構成によれば、中間空洞部以降の流路についても均等関係を維持できる。
【0012】
望ましくは、前記中央路は上下に伸長した細管によって構成され、前記細管の下端開口が前記中央孔を構成し、前記中間空洞部の中心を前記細管が上下に貫通する。細管を利用すれば中央路の形成が容易となる。
【0013】
望ましくは、前記複数の接続路は、前記中間空洞部から水平方向に放射状に伸びる複数の横穴と、前記複数の横穴の外端から垂直方向に伸びる複数の縦穴と、で構成され、前記複数の縦穴の上端部が前記複数の外部管に接続される複数の接続ポートとして機能する。望ましくは、前記中央孔及び前記複数の周囲孔からなる開口群の周囲を取り囲んで検体側へ突出した外縁部が形成され、前記外縁部の先端面が前記検体を載せた反応プレートの上面に当接され、その当接状態において前記開口群が前記検体に接触しないように前記開口群の形成レベルが前記外縁部の先端面よりも上方へ奥まった位置に設定される。この構成によれば、外縁部の当接状態においてその内部に実質的に気密(水密)空間が形成されるので、その内部に検体が取り込まれているならば、その状態で洗浄液の環流を行って、検体の洗浄効率を高められる。しかも、他の検体に対する影響を解消又は緩和できる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、検体を洗浄する場合において、複数の吸引路の吸引圧を均一化できる構造をもった洗浄ノズルを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1には、本発明に係る洗浄装置の好適な実施形態が示されている。本実施形態において、洗浄装置は検体処理装置内に組み込まれている。検体処理装置は、複数の試薬を用いて検体を段階的に処理する装置である。各試薬と検体との間で反応処理が実行され、各反応処理の終了時に洗浄工程が実行され、その洗浄工程において洗浄装置が用いられる。
【0017】
図1において、反応プレート10はプレート本体12とその上層をなす反応層14とを有している。プレート本体12は、ガラスあるいはプラスチックなどの部材により構成される平板状部材である。反応層14は、抗原抗体反応を利用して検体の処理を行なうための薬剤からなる固相である。反応用の薬剤(試薬)は図示されていない試薬ノズル等により供給される。
【0018】
反応層14上には1又は複数の検体16が設けられている。各検体16は液滴である。複数の検体16はそれら相互間において隔てられており、各検体16ごとに洗浄処理を行なえる。
【0019】
分注ノズルユニット17は、ノズルチップ20及びそれが着脱自在に装着されるノズル基部とから成るものである。分注ノズルユニット17は図示されていない搬送機構によって搬送され、図示されていないシリンジポンプにより分注ノズルユニット17における吸引力及び吐出力が生成される。検体は例えば生体から採取された血液、尿などである。もちろん他のものが検体であってもよい。分注ノズルユニット17を用いて各種試薬の分注を行うこともできるが、図1に示されるシステム構成においては図示されていない1又は複数の試薬ノズルが利用されている。図1において、各検体16は反応層14による一次反応処理後のものであり、あるいは、それに続く反応処理後のものである。いずれにおいても反応処理後の余剰液の洗浄を行う必要がある状態が示されている。
【0020】
洗浄用可動部22はノズル組立体としてのノズルアセンブリ24を有している。可動部22は搬送機構26によって搬送されるものである。可動部22は図示されるようにノズルアセンブリ24の他、距離センサ25を備えている。距離センサ25は、可動部22と反応プレート10とのの間における距離を計測する。その距離に基づいて制御部38が可動部22の位置決めを行う。
【0021】
ノズルアセンブリ24は、洗浄ノズルユニットであり、ノズルアセンブリ24は洗浄工程の実行にあたって上方から下方へ引き下げられ、ノズル先端面上の開口群を検体16に近接対向させた状態において洗浄液を吐出し、また、その洗浄液を吸引することにより、検体16の洗浄を行う。その場合においては、後に説明するように、ノズル面の外周に形成された外縁部の先端面が反応プレート10の上面に当接され、すなわち対象となる検体を包み込んだ密閉空間を形成した状態において、当該空間内に洗浄液が供給されまたそれが吸引される。
【0022】
ノズルアセンブリ24には配管32を介して吐出機構28が接続されている。この吐出機構28は、シリンジポンプ等を有しており、洗浄液が吐出機構28の作用によりノズルアセンブリ24へ供給される。また、ノズルアセンブリ24には配管34を介して吸引機構30が接続されている。この吸引機構30は洗浄液を吸引する機構である。本実施形態において、ノズルアセンブリ24においては、ひとつの吐出路に対して複数の吸引路が形成されており、配管34のアセンブリ側は複数の枝34A,34Bに分かれており、それぞれの枝が吸引路に接続されている。ただし、分岐路を利用するのではなく、複数の吸引路に対して複数の配管を個別的に接続し、それぞれの配管ごとにあるいはそれら全体として吸引機構を設けるようにしてもよい。
【0023】
なお、上述した距離センサ25は光学的に距離を計測するものである。ただし、超音波等の他の方式を利用して距離計測を行なうようにしてもよい。
【0024】
制御部38は、図1に示される各構成の動作制御を行っている。検体に対しては複数の反応処理工程が実行され、各反応処理工程の最後に洗浄工程が実行されるが、そのような一連のシーケンスは制御部38の制御により実現されている。なお、符号36は洗浄槽を表しており、この洗浄槽はノズルアセンブリ24を用いて洗浄工程を実行した後において、ノズルアセンブリ24の先端部分を洗浄するための槽である。もちろんその洗浄槽36を利用して試薬ノズルの洗浄等を行うことも可能である。
【0025】
図2及び図3には、図1に示したノズルアセンブリ24の斜視図が示されている。まず図2を参照すると、ノズル本体40は大径部とその前側に形成された小径部とを有し、その小径部には前方に突出した形態をもって先端チップ42が取り付けられている。この先端チップ42は後に説明するように交換可能に設けられている。ノズル面44は、中央に形成された吐出孔46と、その周囲に形成された吸引孔アレイ48とを有する。吸引孔アレイ48は、吐出孔46の中心(中心軸)の周囲において均等間隔をもって並べられた複数の吸引孔50からなる。吐出孔46は、本実施形態においてノズル本体40を貫通する細管としてのパイプ52の先端開口により構成されている。なお、符号62はノズル本体40において流路加工上の要請から形成された横穴を部分的に塞ぐネジ部材を表している。
【0026】
次に図3を参照すると、ノズル本体40の上面側には複数の吸引ポート54が設けられている。図3に示されるように、本実施形態においては4つの吸引ポート54が設けられているが、実際には二つの吸引ポート54だけが利用されており、残り二つの吸引ポートに対してはキャップ58が設けられ、それらの機能が実質的に停止されている。4つの吸引ポート54はノズルアセンブリ24の中心軸に対して対称に設けられており、それらに対して同じ吸引圧を発生させれば、ノズルアセンブリ24の内部に形成された中間空洞部を経由して複数の吸引孔50(図2参照)に対して均等な吸引圧を発生させることが可能である。このことは2つの吸引ポートを利用する場合においても同様であり、2つの吸引ポートが中心軸の周りに均等間隔を持って配列されているものであり、それらに対して実質的に同じ吸引圧を与えれば、複数の吸引孔において実質的に同一の吸引圧を生成させることが可能となる。
【0027】
図4には、ノズルアセンブリ24の断面図が示されている。図4における下側から上側へ順番に構成の説明を進めることにする。ノズル面44上には、上述したようにその中央部に吐出孔46が形成され、その周囲に吸引孔アレイ48が形成されている。本実施形態において、吸引孔アレイ48は8個の吸引孔50により構成されている。ただし、中心軸に対して均等配列という条件が満たされる限りにおいて、吸引孔の個数を任意に設定することが可能である。吐出孔46及び吸引孔アレイ48が形成されている面は、図示されるようにノズル面(最先端面)よりも若干奥側へ(上方へ)引っ込んでおり、それらの開口が洗浄時において検体に接触しないように構成されている。それらの開口の外側には、後に説明する外縁部が突出形成されており、その外縁部のリング状先端面が反応プレートの上面に当接することになる。
【0028】
先端チップ42は上述したようにノズル本体40に対して着脱自在に装着されるものであり、本実施形態においては、ノズル本体40の小径部には凹部が形成され、その凹部内に先端チップ42の上端部が差し込まれている。両者の接続部分には複数の凹リング80が設けられ、気密性が保持されている。
【0029】
先端チップ42の中心軸上に沿って上述した中央パイプ52が挿通されており、中央パイプ52の先端開口が上記の吐出孔46を構成する。先端チップ42の中央部分には中央パイプ52を挿通させるパイプ状の空洞が形成され、その周囲には上述した吸引孔アレイ48に対応した複数の吸引路82が設けられている。各吸引路82は円形の空洞であり、中央パイプ52の内部である吐出路(中央路)から見れば各吸引路82は周囲路として位置づけられる。
【0030】
ノズル本体40の内部にはマニホールドあるいは中間バッファとして機能する中間空洞部70が形成されている。中間空洞部70の中心軸上に沿って上記の中央パイプ52が挿通している。ただし、中央パイプ52の内部である吐出路と中間空洞部70は空間的に連なってはいない。中間空洞部70の下側においては上述した複数の吸引路82が接続されている。中間空洞部70の側周囲方向には本実施形態において4つの横穴72が形成されており、更に4つの横穴72には4つの縦穴74が連絡している。
【0031】
一つの横穴72と一つの縦穴74は一つの接続路を構成するものであり、ここで横穴72は図示されるように比較的大きな第1部分72Aとそれに連なる比較的小さな第2部分72Bとからなる。いずれにしても、複数の横穴72は、中間空洞部70から見てその中心軸に対して水平方向放射状に形成されており、しかも複数の横穴72は均等間隔をもって形成されている。本実施形態において、各横穴72間の角度は90度である。もちろん、4つの横穴72を形成するのではなく2つの横穴72だけを形成するようにしてもよい。いずれにしても中心線に対して対称の構造をもって吸引路構造を構築することにより、圧力の偏りを効果的に防止できるという利点がある。
【0032】
複数の横穴72の形成にあたってはノズル本体40の側面からの穴あけ作業が必要となるが、その場合において穴あけ後に残留した不要な空洞部分が上述したネジ62により塞がれている。上述した複数の縦穴74は複数の吸引ポート54の中央軸上に形成された複数の中空部76に連絡している。それらの中空部76は外部吸引管としての配管30A,30Bに接続されている。中央パイプ52は吐出用の配管34に接続されている
【0033】
従って、以上の説明から明らかなように、まず吐出経路に着目すると、それはノズルアセンブリの中心軸上に沿って形成されているので、吐出圧力あるいは洗浄液供給面での偏りは生じにくい。一方、吸引経路に着目すると、中心軸上の周囲に均等に形成された流路をもって洗浄液の吸引が行われるため、個々の吸引孔における吸引圧のアンバランスが効果的に防止されており、検体の周囲全体にわたって均等な吸引圧をもって洗浄液を吸引できるという利点がある。これにより、検体の洗浄効率を高められ、すなわち洗浄むらを防止できると共に、局所的に吸引圧や吐出圧が加わることによる検体の破損やはがれといった問題を未然に防止することが可能となる。逆にいえば、そのような恐れの生じない状況下において洗浄処理を行なえるため、洗浄液の流量を比較的高くすることも可能である。
【0034】
図5には、先端チップ42の先端部分の拡大図が示されている。上述したように吐出孔46及び吸引孔アレイ48が形成されている開口レベル84は先端面よりも若干上方へ引っ込んでおり、その引っ込み高さhは例えば0.5mmである。ちなみに、吐出孔46の直径は例えば2mmであり、各吸引孔50の直径は例えば1.6mmである。先端チップ42の外径は例えば8mmである。吐出孔46及び複数の吸引孔50からなる開口群はその外側に形成された外縁部86によって取り囲まれており、すなわち外縁部86は開口群よりも前方すなわち下方へ突出しており、そのリング状の先端面が洗浄工程において反応プレート上面に当接される。その当接状態においては外縁部86が検体を包み込むことになり、そこに洗浄密閉空間が形成される。その状態では、検体はいずれの開口とも接触することはなく、そのために上述した上方への引っ込み量hが設定されている。洗浄密閉空間が設定された状態において、洗浄液を吐出した上でそれを周囲全体から吸引すれば、検体の洗浄効率を極めて高められるという利点がある。また、洗浄液が他の検体へ流れ出ることを効果的に防止できるため、クロスコンタミネーションといった問題にも対処できる。もちろん、複数の検体が同時に洗浄処理されるようにしてもよい。その場合においては、それらの検体群の中央部にノズルアセンブリの中央軸を位置決めするのが望ましい。
【0035】
図6には、図5に示したノズル面の平面図が示されている。中央に設けられているのは吐出孔46であり、その周囲には均等間隔をもって複数の吸引孔からなる吸引孔アレイ48が形成されている。符号86は上述した外縁部を表している。
【0036】
上記実施形態においては、洗浄密閉空間を形成した上で、均等な吸引圧を自然に構築できる幾何学的構造を採用しているので、上述したように洗浄効率を極めて高めることができるという利点がある。上記実施形態においては中央口が吐出孔であったが、周囲において洗浄液を供給した上で、中央において洗浄液の吸引を行うことも可能である。ただし、本実施形態においては複数の吸引孔が設けられているため、吸引時においていずれかの吸引孔に詰まりが生じたとしても、吸引が完全に不能になってしまう最悪の事態を回避できるという利点がある。
【0037】
上記実施形態によれば、上述したように洗浄効率を高めることができるので、結果として少ない洗浄液を用いて効果的な洗浄を行えるという利点がある。またノズルアセンブリは小さな形態をもって構成されており、また洗浄密閉空間が形成されるため洗浄後における残液の残留量を少なくできるという利点がある。特に、複数の吸引孔をもって検体の周囲全体から吸引を行えば残留液をかなり少なくできるという利点がある。
【0038】
上記実施形態においては、ノズル本体内に中間空洞部を設け、複数の吸引路をいったん中間空洞部に接続してそれらの圧力均衡を図った上で、複数の接続路に中間空洞部を接続しているので、吸引路の個数と外部配管の個数とに違いがあったとしてもその違いにより生じる圧力の偏りという問題を未然に防止でき、また中間的な圧力のバッファリングを行えば、何らかの事情において一部の吸引路に障害が発生しても複数の吸引孔全体としての圧力分布を均一化できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明に係る洗浄装置が組み込まれた検体処理装置を示す概念図である。
【図2】ノズルアセンブリの斜視図である。
【図3】ノズルアセンブリの他の斜視図である。
【図4】ノズルアセンブリの断面図である。
【図5】ノズルアセンブリの先端部分の断面図である。
【図6】ノズルアセンブリのノズル面を表す平面図である。
【符号の説明】
【0040】
10 反応プレート、12 プレート本体、14 反応層、16 検体、22 洗浄用可動部、24 ノズルアセンブリ、25 距離センサ、28 吐出機構、30 吸引機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄液の吐出及び吸引を行うノズルアセンブリを備え、当該ノズルアセンブリを利用して試薬処理後の検体を洗浄する洗浄装置において、
前記ノズルアセンブリは、
前記試薬処理後の検体に向き合う面であって、中央孔と、前記中央孔の周囲に均等間隔をもって配列された複数の周囲孔と、を有するノズル面と、
前記中央孔に連通し、前記ノズルアセンブリの中心軸に沿って前記ノズルアセンブリを上下に貫通する中央路と、
前記中心軸上の中間部位に設けられ、前記中心軸を中心とした円筒形状をなす中間空洞部と、
前記中央路の周囲において均等間隔をもって配列され、前記複数の周囲孔と前記中間空洞部とを連通させる複数の周囲路と、
前記中間空洞部に対して少なくとも1つの外部管を接続するための少なくとも1つの接続路と、
を含み、
前記中央孔及び前記複数の周囲孔の内で一方が洗浄液を吐出し他方が洗浄液を吸引することを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
請求項1記載の洗浄装置において、
前記中央孔が吐出孔であり、前記各周囲孔が吸引孔である、ことを特徴とする洗浄装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載の洗浄装置において、
前記少なくとも1つの接続路として、前記中間空洞部と複数の外部管とを接続するための複数の接続路が設けられ、
前記複数の接続路は前記中間空洞部の周囲において均等間隔をもって配列された、ことを特徴とする洗浄装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の洗浄装置において、
前記中央路は上下に伸長した細管によって構成され、
前記細管の下端開口が前記中央孔を構成し、
前記中間空洞部の中心を前記細管が上下に貫通した、ことを特徴とする洗浄装置。
【請求項5】
請求項3又は4のいずれか1項に記載の洗浄装置において、
前記複数の接続路は、
前記中間空洞部から水平方向に放射状に伸びる複数の横穴と、
前記複数の横穴の外端から垂直方向に伸びる複数の縦穴と、
で構成され、
前記複数の縦穴の上端部が前記複数の外部管に接続される複数の接続ポートとして機能する、
ことを特徴とする洗浄装置。
【請求項6】
請求項1乃至5記載の洗浄装置において、
前記中央孔及び前記複数の周囲孔からなる開口群の周囲を取り囲んで検体側へ突出した外縁部が形成され、
前記外縁部の先端面が前記検体を載せた反応プレートの上面に当接され、その当接状態において前記開口群が前記検体に接触しないように前記開口群の形成レベルが前記外縁部の先端面よりも上方へ奥まった位置に設定された、ことを特徴とする洗浄装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2010−25572(P2010−25572A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183676(P2008−183676)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【出願人】(390029791)アロカ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】