説明

洗浄装置

【課題】液相部への給気流量を所定範囲に収めることにより、騒音を抑制しながら、洗浄性能の低下を防止する。
【解決手段】洗浄槽3には液体が貯留され、被洗浄物2が浸漬される。洗浄槽3には、減圧手段5と液相給気手段6とが設けられる。減圧手段5は、洗浄槽3内の気体を外部へ吸引排出して、洗浄槽3内を減圧する。液相給気手段6は、減圧手段5により減圧された洗浄槽3内の液相部に外気を導入する。また、液相給気手段6は、洗浄槽3内への外気流入量を絞る流量制限手段を備える。この流量制限手段は、たとえばオリフィス18から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄槽内に貯留した液体に被洗浄物を浸漬して洗浄を図る洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
出願人は、先に、下記特許文献1に開示されるように、洗浄槽内に液体を貯留して被洗浄物を浸漬し、その貯留液を設定温度まで加温後、洗浄槽内を減圧して貯留液を沸騰させた状態で、洗浄槽内の液相部に外気を導入することで、貯留液を突沸させて被洗浄物の洗浄を図る洗浄装置を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−5480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、洗浄槽内の液相部へ外気を導入する給気時に、給気流量を所定の流量範囲に収めなければ、洗浄性能にばらつきを生じたり、騒音が大きくなったりする。そこで、本発明が解決しようとする課題は、液相部への給気流量を所定範囲に収めることにより、騒音を抑制しながら、洗浄性能の低下を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、液体を貯留して被洗浄物を浸漬する洗浄槽と、この洗浄槽内の気体を外部へ吸引排出して、前記洗浄槽内を減圧する減圧手段と、この減圧手段により減圧された前記洗浄槽内の液相部に外気を導入する液相給気手段とを備え、前記液相給気手段は、前記洗浄槽内への外気流入量を絞る流量制限手段を備えることを特徴とする洗浄装置である。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、液相部への給気時の外気流入量を絞ることで、液相部への給気流量を所定範囲に収め、騒音を抑制しながら、洗浄性能の低下を防止することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記流量制限手段は、オリフィスからなり、前記液相給気手段は、フィルタを介した外気を、前記オリフィスおよび液相給気弁を介して、前記洗浄槽内底部の液相給気ノズルから前記洗浄槽内へ導入することを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置である。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、オリフィスを用いて簡易に、液相部への給気流量を所定範囲に収めることにより、騒音を抑制しながら、洗浄性能の低下を防止することができる。
【0009】
さらに、請求項3に記載の発明は、前記流量制限手段は、開度調整可能な流量調整弁からなり、前記液相給気手段は、フィルタを介した外気を、前記流量調整弁および液相給気弁を介して、前記洗浄槽内底部の液相給気ノズルから前記洗浄槽内へ導入することを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置である。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、流量調整弁の開度を調整することで、液相部への給気流量を所定範囲に収めることにより、騒音を抑制しながら、洗浄性能の低下を防止することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、液相部への給気流量を所定範囲に収めることにより、騒音を抑制しながら、洗浄性能の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の洗浄装置の一実施例を示す概略図であり、一部を断面にして示している。
【図2】図1の洗浄装置の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の洗浄装置1の一実施例を示す概略図であり、一部を断面にして示している。
【0014】
本実施例の洗浄装置1は、液体が貯留され被洗浄物2が浸漬される洗浄槽3と、この洗浄槽3内の貯留液を加温する加温手段4と、洗浄槽3内の気体を外部へ吸引排出して洗浄槽3内を減圧する減圧手段5と、減圧された洗浄槽3内の液相部へ外気を導入する液相給気手段6と、減圧された洗浄槽3内の気相部へ外気を導入する気相給気手段7と、これら各手段4〜7を制御する制御手段(図示省略)とを備える。
【0015】
被洗浄物2は、洗浄を図りたい物品であり、たとえば、医療器具、電子部品または機械部品である。なお、洗浄とは、文字通りの洗浄の他、濯ぎや除染も含まれるものとする。
【0016】
洗浄槽3は、内部空間の減圧に耐える中空容器である。洗浄槽3は、上方へ開口して中空部を有する洗浄槽本体8と、この洗浄槽本体8の開口部を開閉するドア9とを備える。ドア9を閉じた状態では、洗浄槽本体8とドア9との隙間はパッキン10で封止される。
【0017】
洗浄槽3には液体が供給されて貯留される。この液体は、その種類を特に問わないが、たとえば、洗剤を含んだ水、洗剤を含まない水の他、純水、軟水、溶剤などとされる。
【0018】
洗浄槽3には、圧力センサ11と温度センサ12とが設けられる。圧力センサ11は、洗浄槽3内の気相部の圧力を検出し、温度センサ12は、洗浄槽3内の液相部の温度を検出する。
【0019】
加温手段4は、洗浄槽3内の貯留液を加温する。加温手段4は、その構成を特に問わず、たとえば蒸気ヒータでもよいが、本実施例では電気ヒータ13とされる。この電気ヒータ13は、洗浄槽3内の底部に配置される。
【0020】
減圧手段5は、洗浄槽3内の気体を外部へ吸引排出して洗浄槽3内を減圧する。具体的には、減圧手段5は、真空発生装置14を備え、この真空発生装置14は、排気路15を介して、洗浄槽3内の気相部に接続されている。真空発生装置14は、その具体的構成を特に問わないが、典型的には水封式の真空ポンプを備え、この真空ポンプより上流側に、排気路15内の蒸気を凝縮させる熱交換器をさらに備えてもよい。
【0021】
液相給気手段6は、減圧手段5により所定圧力まで減圧された洗浄槽3内の液相部へ、液相給気路16を介して外気を導入する。液相給気路16には、洗浄槽3へ向けて順に、フィルタ17、オリフィス18および液相給気弁19が設けられている。オリフィス18は、洗浄槽3内への外気流入量を絞る流量制限手段である。
【0022】
このように、減圧手段5により洗浄槽3内が所定の圧力まで減圧されたら、液相給気手段6によって、洗浄槽3内の液相部へ、液相給気路16を介して外気を導入する。つまり、洗浄槽3内が減圧された状態で液相給気弁19を開くと、洗浄槽3の内外の差圧を利用して、フィルタ17を介した空気を洗浄槽3内の貯留液中に導入することができる。しかも、オリフィス18を設けていることで、液相部への給気流量を安定して給気することができるので、洗浄機能を維持した状態で、給気による騒音を低減することができる。オリフィス18で流量をどの程度絞るかは適宜に設定されるが、騒音がたとえば65dB以下になるよう設定される。
【0023】
ところで、液相給気路16からの空気は、洗浄槽3内の底部に設けた液相給気ノズル20を介して、洗浄槽3内の貯留液中に導入される。液相給気ノズル20は、洗浄槽3内の底部に、横向きに配置されたパイプである。液相給気ノズル20は、洗浄槽3内の底部ではあるが底面から離隔して、水平に保持されている。そして、液相給気ノズル20には、パイプの延出方向へ沿って設定間隔で、パイプの周側壁にノズル孔21が下方へ開口して形成されている。
【0024】
気相給気手段7は、減圧された洗浄槽3内の気相部へ、気相給気路22を介して外気を導入する。気相給気路22には、洗浄槽3へ向けて順に、フィルタ23および気相給気弁24が設けられている。従って、洗浄槽3内が減圧された状態で気相給気弁24を開くと、洗浄槽3の内外の差圧により、フィルタ23を介した空気を洗浄槽3内へ導入して、洗浄槽3内を復圧することができる。気相給気弁24を電磁弁から構成すれば、洗浄槽3内を瞬時に復圧することができ、気相給気弁24を電動弁から構成すれば、洗浄槽3内を徐々に復圧することができる。
【0025】
制御手段は、前記各センサ11,12の検出信号などに基づき、前記各手段4〜7を制御する制御器である。具体的には、電気ヒータ13、真空発生装置14、液相給気弁19、気相給気弁24の他、圧力センサ11および温度センサ12は、制御器に接続されている。そして、制御器は、以下に述べるように、所定の手順(プログラム)に従い、洗浄槽3内の被洗浄物2の洗浄を図る。
【0026】
洗浄装置1の具体的な運転方法は、特に問わないが、たとえば次のように運転される。まず、洗浄槽本体8に被洗浄物2を入れた後、洗浄槽3のドア9を気密に閉じる。その後、被洗浄物2が液体に浸漬されるまで、洗浄槽3内には液体が貯留される。
【0027】
そして、加温手段4により洗浄槽3内の貯留液を設定温度まで加温後、減圧手段5により洗浄槽3内を減圧して貯留液を沸騰させ、この沸騰中に、洗浄槽3内からの排気を継続したまま、液相給気手段6により洗浄槽3の内外の差圧を利用して洗浄槽3内の液相部に外気を導入する。このようにして貯留液を突沸させ、貯留液の爆発的な噴上げとそれに続く落下とによって、貯留液を大きく揺動させることができ、被洗浄物2の洗浄を効果的に図ることができる。その後、洗浄槽3内の貯留液を再び設定温度まで加温し、洗浄槽3内を減圧後に洗浄槽3内の液相部に外気を導入することを繰り返すのがよい(液相給気パルス制御)。なお、このような制御では、液相部への給気時の洗浄槽3内の圧力は、洗浄槽3内の貯留液の飽和圧力になるので、貯留液の温度で決まることになる。この温度は、本実施例ではたとえば50℃(12.3kPa)であり、この条件に対して、騒音の低減と洗浄能力の維持とを図れるように、オリフィス18の径が定められる。
【0028】
あるいは、加温手段4により洗浄槽3内の貯留液を設定温度まで加温後、所定の終了条件を満たすまで、減圧手段5による洗浄槽3内からの排気を継続して洗浄槽3内の圧力を低下させる過程で、この減圧による貯留液の沸騰中に気相給気手段7により洗浄槽3内を貯留液の沸騰が止むまで瞬時に一時的に復圧することを繰り返してもよい(気相給気パルス制御)。
【0029】
あるいは、前述した気相給気パルス制御と液相給気パルス制御とを所望順序で実行するなど、洗浄槽3内の減圧や復圧、バブリング(液相部への給気)などを適宜組み合わせて、被洗浄物の洗浄を図ってもよい。
【0030】
図2は、図1の洗浄装置1の変形例を示す図である。図1の洗浄装置1では、流量制限手段としてオリフィス18を用いたが、図2の洗浄装置1では、開度調整可能な流量調整弁25が用いられる。
【0031】
前述した液相給気パルス制御を行う場合、液相部への空気流量を増やすと、洗浄力は増すが騒音が大きくなり、液相部への空気流量を減らすと、騒音は小さくなるが洗浄力が低下するおそれがある。そこで、本変形例の洗浄装置1では、被洗浄物2の種類や汚れ具合など、用途に合わせて、流量調整弁25の開度を変えることで、多様な洗浄に対応することができる。また、洗浄槽3内の液面の高さや、液相部への給気直前の洗浄槽3内の圧力に応じて、流量調整弁25の開度を変えてもよい。さらに、圧力センサ11または温度センサ12を用いて、洗浄槽3内の圧力または温度を検出し、その検出信号に基づき流量調整弁25の開度を調整して、液相部への給気流量を適正値に保つように制御してもよい。
【0032】
本発明の洗浄装置1は、前記実施例の構成に限らず適宜変更可能である。特に、前述した洗浄装置1の運転方法は、一例であり、適宜に変更可能なことは言うまでもない。また、流量制限手段として、オリフィス18や流量調整弁25を用いたが、洗浄槽3内の液相部への外気流入量を絞ったり変更したりできるのであれば、その構成は適宜に変更可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 洗浄装置
2 被洗浄物
3 洗浄槽
4 加温手段
5 減圧手段
6 液相給気手段
7 気相給気手段
17 フィルタ
18 オリフィス(流量制限手段)
20 液相給気ノズル
25 流量調整弁(流量制限手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留して被洗浄物を浸漬する洗浄槽と、
この洗浄槽内の気体を外部へ吸引排出して、前記洗浄槽内を減圧する減圧手段と、
この減圧手段により減圧された前記洗浄槽内の液相部に外気を導入する液相給気手段とを備え、
前記液相給気手段は、前記洗浄槽内への外気流入量を絞る流量制限手段を備える
ことを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記流量制限手段は、オリフィスからなり、
前記液相給気手段は、フィルタを介した外気を、前記オリフィスおよび液相給気弁を介して、前記洗浄槽内底部の液相給気ノズルから前記洗浄槽内へ導入する
ことを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記流量制限手段は、開度調整可能な流量調整弁からなり、
前記液相給気手段は、フィルタを介した外気を、前記流量調整弁および液相給気弁を介して、前記洗浄槽内底部の液相給気ノズルから前記洗浄槽内へ導入する
ことを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−192386(P2012−192386A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−60279(P2011−60279)
【出願日】平成23年3月18日(2011.3.18)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】