説明

洗浄装置

【課題】 洗浄ノズルの本数が少なくても十分な洗浄効果が得られ、しかも液中洗浄と気中洗浄とが行える洗浄装置を提供する。
【解決手段】 洗浄装置1は、被洗浄物10を保持し、回転駆動装置により水平面内で回転可能な基台3と、当該基台3と当該被洗浄物10とを上方から囲む大きさを有し、昇降駆動装置により昇降可能なカップ4と、当該カップ4の側面に固定された洗浄ノズル5とを備え、基台3の回転速度とカップ4の昇降速度のうち少なくともいずれか一方が調整可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被洗浄物、たとえば機械加工部品や機械加工製品(金属製、樹脂製など)、の表面に付着する金属屑片や樹脂屑片、ガラス粉、有機性油脂分などの残留付着物(以下、残留異物ともいう)を、洗浄ノズルから流体を噴射して洗い流すための洗浄装置に関し、特に、複雑な内部構造を有する被洗浄物の洗浄に適した洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、たとえば穴が回路状に形成されているような、複雑な内部構造を有する被洗浄物を洗浄する場合、その内部の残留異物を確実に除去するために、穴の入口に向けて洗浄ノズルの位置や角度等を調整して、洗浄液を被洗浄物の奥まで送り込めるようにして洗浄を行っていた。そのような、洗浄ノズルを自由に移動できる洗浄装置として特許文献1に開示のものがある。
【0003】
一方、特許文献2のように、被洗浄物を載せる基台の上に筒体を被せ、多数の洗浄ノズルが配置された洗浄ノズル部材を筒体の内部で回転させながら洗浄液を噴射する洗浄装置もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−275265号公報
【特許文献2】特開2006−122811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
構造が複雑な被洗浄物の場合、従来の洗浄装置においては、洗浄ノズルが20〜30本必要になることがある。また、特許文献1の洗浄装置のように、自由にノズルの位置を変えて洗浄する場合、被洗浄物の形状(穴の位置)に応じて、20〜30本もの洗浄ノズルの1本1本について位置と角度を調整しなければならない。被洗浄物の構造が異なれば、それぞれの被洗浄物ごとに、この作業を行うことになる。したがって、洗浄ノズルの位置や角度の調整は、作業者の熟練が必要であるばかりでなく、非効率的で、しかも一定の洗浄効果があげられないという課題があった。
【0006】
また、特許文献2の洗浄装置では、筒体内部で回転する洗浄ノズル部材に配置された多数の洗浄ノズルは、位置や角度の調整が不要であるが、1つの洗浄ノズルから噴射される洗浄液は、何回転しても被洗浄物上の同一線上にしか当たらない。したがって、被洗浄物の構造によっては、必要な箇所に洗浄液が十分に噴射されない可能性がある。一方で、それを避けるために洗浄ノズルの本数を増やせば、洗浄液の圧力が低下するか、圧力を維持するために大型ポンプが導入されることになり、設備コストや運転コストの高騰を招きかねない。
【0007】
本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、位置や角度調整の不要な、わずかな本数の洗浄ノズルで、さまざまな内部構造の被洗浄物を効果的に洗浄できる洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために本発明に係る洗浄装置は、被洗浄物を、洗浄ノズルから噴射した洗浄流体により洗浄するための洗浄装置であって、
被洗浄物を保持し、回転駆動装置により水平面内で回転可能な基台と、前記基台と前記被洗浄物とを上方から囲む大きさを有し、昇降駆動装置により昇降可能な筒体または筒状容器と、前記筒体または筒状容器の側面に、その内部に向けて固定された洗浄ノズルとを備え、前記基台の周縁部と前記筒体または筒状容器の側面内壁との間に隙間を有し、前記筒体または筒状容器が所定の振幅で昇降運動可能であるとともに、前記基台の回転速度と前記筒体または筒状容器の昇降速度のうち少なくともいずれか一方が、調整可能であることを特徴とする。
【0009】
ここで、「筒体または筒状容器」とは、「筒状容器」が筒の両端部のうち基台部側(下方)が開口し、上方が開口していないものをいい、「筒体」が筒の両端部がともに開口しているものをいう。
【0010】
この構成によれば、基台の回転と、洗浄ノズルが固定された筒体または筒状容器の昇降運動とを同時に行うことができる。その結果、被洗浄物が洗浄ノズルから受ける洗浄流体(水などの洗浄液体やエア、もしくはこれらの混合流体など)の噴射は、上下に所定の振幅Wで振動する波状のノズル噴射パターンを描くことになる(例えば、図4及び図5参照)。
【0011】
したがって、わずかな数の洗浄ノズルであっても、被洗浄物の全体を洗浄することが可能となる。基台が回転して2周目に入ったときに、ノズル噴射パターンが1周目のものと重ならないように基台の回転速度と筒状容器の昇降速度のうち少なくともいずれかの設定を調整すれば、基台が回転を繰り返すうちに洗浄流体の当たる位置が少しずつずれていくので、1周目に洗浄流体が当たらなかった部分があったとしても、最終的には被洗浄物の全表面に洗浄流体の噴射が当たることになる。そのため、本発明の洗浄装置は、被洗浄物ごとに構造が異なっていても、洗浄ノズルの位置や角度の厳密な調整が不要で、少ない洗浄ノズルで効率的な洗浄が行える。また、速度(基台の回転速度、筒状容器の昇降速度)という数値でノズル噴射パターンを確定できるため、洗浄ノズルからの洗浄流体の当たり方に関して再現性があり、作業者が熟練したスキルを身につけていなくても安定して高精度の洗浄効果を得ることができる。
【0012】
さらに、本発明の洗浄装置は、筒体または筒状容器が基台を被いながら昇降運動するように構成されているので、洗浄ノズルから噴射される洗浄液体の量に対して、筒体または筒状容器と基台との隙間が流出する洗浄液体の量よりも大きくなる設定とすれば、表面がなめらかな被洗浄物の洗浄に適した気中洗浄となり、
反対に、洗浄ノズルから噴射される洗浄液体の量に対して、筒体または筒状容器と基台との隙間が流出する洗浄液体の量より小さくなる設定とすれば、次第に洗浄液体が筒体または筒状容器内に溜まり、複雑な内部構造を有する被洗浄物の洗浄に適した液中(浸漬)洗浄が行える。
【0013】
以上述べたように、この洗浄装置は、多様な被洗浄物に対して、高いレベルで一定の効果を示す洗浄を効率的に行える利点がある。
【0014】
請求項2に係る洗浄装置においては、前記洗浄ノズルが少なくとも2個であり、高さ方向に等間隔に配置されている。
【0015】
この構成によれば、被洗浄物を、それぞれの洗浄ノズルがその高さに応じて分担するように洗浄することになるため、洗浄ノズルの本数が1個の場合に比べて、筒体または筒状容器の上下往復運動の振幅を小さくすることができ、洗浄時間が短縮される。
【0016】
一例として、図5(a)の洗浄装置のように2個の洗浄ノズルを、80mmずつ高さを変えて配置し、高さ150mm、直径200mmの円柱状の被洗浄物に向けて、上下の振幅Wを85mmとして筒状容器を昇降運動させながら洗浄流体を噴射した場合、被洗浄物に当たる洗浄流体の位置は、例えば、図5(b)の展開図において2本の線が描くノズル噴射パターンになる。この時、洗浄ノズル151は、90°における高さ0mmの1箇所、270°における高さ80mmに1箇所にそれぞれ設けている(図中の破線の丸印)。また、ノズル噴射パターンの実線部分は、各洗浄ノズルからの流体が1周目に当たる位置を示し、破線部分は、2周目に当たる位置を示している。なお、図5(b)においては、基台の回転速度を7.5rpm、筒状容器の昇降速度を145.9mm/sec、上下の振幅Wを85mmとして筒状容器を昇降運動させながら洗浄流体を噴射した場合のノズル噴射パターンである。
【0017】
さらに一例として、図1に示すように、3個の洗浄ノズルを50mmずつ高さを変えて配置し、上下の振幅Wを68mmとして筒状容器を昇降運動させながら洗浄流体を噴射した場合の被洗浄物に当たる洗浄流体の位置を図4(a)〜(c)に示す。これら各展開図における3本の線が、ノズル噴射パターンである。
【0018】
なお、この時の基台の回転速度と筒状容器の昇降速度との値は、(基台の回転速度、筒状容器の昇降速度)=((a):4.5rpm,145.9mm/sec)、((b)7.5rpm,145.9mm/sec)、((c):4.5rpm,38.9mm/sec)と設定している。洗浄ノズルは、90°における高さ0mmと100mmの2箇所、270°における高さ50mmに1箇所、それぞれ設けている(図中の破線の丸印)。また、ノズル噴射パターンの実線部分は、各洗浄ノズルからの流体が1周目に当たる位置を示し、破線部分は2周目に当たる位置を示している。
【0019】
このように、洗浄ノズルの本数を4個、5個、6個、7個、8個というように増加していけば、被洗浄物を洗浄する洗浄ノズルの分担量が少なくなり、筒体または筒状容器の上下往復運動の振幅を小さくでき、洗浄時間を短縮できる。
【0020】
ただし、洗浄ノズル本数を増加すればするほど、洗浄レベルを高めることは可能であるが、洗浄装置重量やコストが大きくなる。したがって、一定の洗浄レベルを維持したまま洗浄装置重量及びコストを抑えるために、洗浄ノズル本数は2本〜24本程度が好ましく、より好適には2本〜12本である。
【0021】
請求項3に係る洗浄装置においては、前記洗浄ノズルが少なくとも2個であり、前記洗浄ノズルが円周方向に等間隔に配置されている。
【0022】
ここで、「円周方向に等間隔」とは、例えば2個の洗浄ノズルを180度対向する位置に配置したり、4個の洗浄ノズルを90度毎に配置したり、6個の洗浄ノズルを60度毎に配置することをいう。また、4個の洗浄ノズルを180度毎に2個ずつ設置するなど、円周方向に等間隔に複数個ずつの洗浄ノズルを配置してもよい。
【0023】
この構成によれば、被洗浄物に対し効率的に洗浄液を噴射することができるし、洗浄ノズルの細かな設定が可能となり、さまざまな被洗浄物に対応可能となる。
【0024】
請求項4に係る洗浄装置においては、前記筒体または筒状容器の上部に、その内部に向けて液体の供給が可能な給水口が設けられている。
【0025】
ここで、「液体」には、前記洗浄液体を用いてもよいし、別途浸漬用液体(たとえば水等)を用いてもよい。
【0026】
この構成によれば、洗浄ノズルから噴射される洗浄液体のほかに、給水口からも液体(洗浄液体若しくは浸漬用液体)を筒体または筒状容器内に供給できるため、液中洗浄を行う場合に、被洗浄物を速やかに液体中に浸漬させることができ、効率的な液中洗浄が行える。したがって、給水口からの液体給水の有無を操作者が適宜設定することで、液中洗浄と気中洗浄とを、簡単に切り替えることができる。
【0027】
請求項5に係る洗浄装置においては、前記基台の周縁部に、弾性部材が設けられている。
【0028】
この構成によれば、基台と筒体または筒状容器との隙間が広くても、ゴムシール等の弾性部材により隙間を小さくすることができ、隙間からの洗浄液体の流出を少なくできる。したがって、被洗浄物をより速やかに液体中に浸漬させることができ、液中洗浄が効率的に行える。
【0029】
なお、基台外縁部の弾性部材と筒体または筒状容器内壁とを当接させる構成としてもよく、その場合、ゴムシールの外縁に一定の間隔で切り込みを入れることで、ゴムシール外縁と筒体または筒状容器の内壁との摩擦によるゴムシールの破損を緩和することができる。
【0030】
請求項6に係る洗浄装置においては、前記筒体または筒状容器の側面上部に、上部排水口が設けられている。
【0031】
この構成によれば、液中洗浄を行う場合、液中の表面に浮いた軽い残留異物を、上部排水口からオーバーフローする洗浄液体とともに除去することができる。逆に、底に沈むような重い残留異物は、基台と筒体の隙間から洗浄液体と共に流出させることができる。その結果、容器内の洗浄液の置換率が向上され、被洗浄物への残留異物の再付着を防止でき、効果的な洗浄を行える。
【0032】
請求項7に係る洗浄装置においては、前記基台に排水孔が設けられている。
【0033】
この構成によれば、底に沈むような重い残留異物が、基台と筒体の隙間に加えて、排水孔からも洗浄液体と共に流出させることができ、容器内の洗浄液の置換率がより向上され、被洗浄物への残留異物の再付着をさらに効率よく防止できる。
【0034】
請求項8に係る洗浄装置においては、前記洗浄ノズルが、2流体ノズルである。
【0035】
この構成によれば、洗浄ノズルから、同心円状に異なる流体を噴射可能であり、洗浄ノズルの中心部から洗浄液体を、その周囲からエアを噴射することができる。その結果、とくに液中洗浄において、洗浄液体のみを洗浄ノズルから噴射する場合と比較して、より確実に被洗浄物の内部まで、たとえば穴の奥まで、流体が届くため、洗浄効果が高まる。
【0036】
なお、前記2流体ノズルから噴射される洗浄流体は、直進性を持って噴射された洗浄液体と気体とで構成される多相流体であることが好ましく、多相流体を構成する洗浄液体と気体とを直進性を持って噴射するようにしていると、これら洗浄液体と気体とが噴射直後に混じり合うことにより、多相流体の速度低下が著しく低下する不具合は生じず、多相流体を被洗浄物に効率的に送給することができる。これにより、とりわけ液中洗浄において、被洗浄物に対する洗浄流体の噴射打力の向上を図ることができるので、洗浄効率および洗浄能力を向上できる。
【発明の効果】
【0037】
以上のように、本発明に係る洗浄装置によれば、回路状の穴などの複雑な内部構造を有する被洗浄物であっても、洗浄ノズルの位置や角度の厳密な調整なしに効率的・効果的に洗浄できる。また、洗浄ノズルの本数が少なくてすむのでコンパクトに構成できるうえ、1台の洗浄装置で気中洗浄と液中洗浄とを適宜行えるので、設備コストおよび運転コストの削減につながる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態に係る洗浄装置を示す模式図である(洗浄ノズル3本)。
【図2】図1の洗浄装置の、カップの側面図である。
【図3】図1の洗浄装置のカップが洗浄中に昇降運動する状態を説明する模式図で、(a)は、カップが最下限位置にある状態、(b)は、カップが最上限位置にある状態を示す。
【図4】図1の洗浄装置の洗浄ノズルから噴射された洗浄流体が、被洗浄物に当たる位置を示す展開図で、基台の回転速度と筒状容器の昇降速度について、(a)は4.5rpm、145.9mm/secであり、(b)は7.5rpm、145.9mm/secであり、(c)は4.5rpm、38.9mm/secである。
【図5】(a)は、本発明の一実施形態に係る洗浄装置の模式図である(洗浄ノズル2本)。(b)は、(a)の洗浄装置の洗浄ノズルから噴射された洗浄流体が、被洗浄物に当たる位置を示す展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づき説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0040】
洗浄装置1は、図1および図2に示すように、本体2内部に、被洗浄物10を載せるための円板状の基台3と、基台3と被洗浄物10とを囲む大きさを有し、本体2内部で昇降可能な円筒形のカップ4と、カップ4の側面に固定された3個の洗浄ノズル5(51・52・53)とを備えている。図示しないが、洗浄ポンプを本体2の外側に設け、カップ4への洗浄液体の給水を行っている。また、カップ4からの排水は、フィルター(図示せず)で濾過して残留異物を除去したのち洗浄ポンプに戻し、循環させている。さらに、本体2の外側に、後述するエアシリンダ6の駆動手段としてのエア供給ポンプ(図示せず)を設け、洗浄ノズル5へのエア供給も行っている。
【0041】
基台3は、直径390mmの円板で、モータ(図示せず)により回転駆動されるターンテーブル31に、支持部材32を介して固定されている。したがって、基台3は、ターンテーブル31とともに回転可能で、モータの制御により回転速度が調整できる。被洗浄物10は、基台3の上に固定した治具又は金属製バスケット33により、保持される。また、ターンテーブル31は、被洗浄物10を載せた基台3とともに、本体2の前面扉(図示せず)から引き出せる構成にしている。
【0042】
カップ4は、基台3よりやや大きい400mmの内径と、360mmの高さを有する筒状容器で、基台3と被洗浄物10に上から被さるよう、開口部を下に向けて配置している。基台3の周縁部とカップ4の内周面との隙間を塞ぐための円盤状のゴムシール34を、基台3に設けている。なお、ゴムシール34の外縁には略45°ごとに径に沿って切り込みをつけている。
【0043】
3個の洗浄ノズル5(51・52・53)を、高さ方向に等しい間隔Dをあけて配置し、カップ4の側面に貫通して固定している。そのうち2個の洗浄ノズル51・53は、カップ4の円周方向の同じ位置に100mmの間隔をあけて固定し、残りの1個の洗浄ノズル52は、それらと円周方向に対向する位置(180度間隔をあけた位置)であって、その中間の高さに固定している(図2、図3参照)。なお、洗浄ノズル5の配置はこれ以外の配置とすることも可能であり、例えば3個の洗浄ノズル5を120度ずつ円周方向に間隔をあけて設置してもよいし、洗浄ノズル5を4個とし90度ずつ円周方向に間隔をあけて設置してもよい。
【0044】
洗浄ノズル5は、いずれも2流体ノズルである。これは公知のものでよく、たとえば図2に示すように、中心に洗浄液用の噴射口5aを備え、その周囲にエアを噴射する噴射口5bを備えている。なお、液中洗浄を行わない場合には、一般的な1流体ノズルを用いても良い。
【0045】
本体2の上面部21中央には、エアシリンダ6を垂直に設けている。エアシリンダ6は、図示しないエア供給ポンプから送られる空気圧により昇降可能なロッド62を内蔵している。ロッド62は、本体2の上面部21を貫通して下方に延び、その先端はカップ4の上面部41中央に固定されている。したがって、カップ4は、本体2内でロッド62から吊下げられた状態となり、空気圧によりロッド62とともに昇降運動が可能である。カップ4に固定された3個の洗浄ノズル5も、同様の昇降運動を行うことになる。
【0046】
エアシリンダ6は、最大300mmのストロークがあり、カップ4は、その下端部が基台3下部より60mm下がる位置まで降りる。最上部までカップ4を引き上げれば、被洗浄物10を基台3に載せたまま、ターンテーブル31を本体2から引き出したり、本体2に収納したりできるよう、本体2の高さを設定している。なお、エアシリンダ6は、電動シリンダやロボットシリンダ等を用いてもよい。
【0047】
カップ4の上面部41には、洗浄液を注入して被洗浄物10を浸漬するための大流量の給水口42を設けている。また、カップ4の側面の上部に上部排水口43を設け、重量の軽い残留異物を含む洗浄液体を、カップ4からオーバーフローさせる。さらに、ターンテーブル31の下方に、防水パン22と下部排水口23とを設け、上部排水口43からオーバーフローした洗浄液体と、カップ4と基台3との隙間から排出される重い残留異物を含む洗浄液体とを、下部排水口23から排出する。
【0048】
洗浄ノズル5と給水口42への洗浄液体の供給は、上述したように、本体2の外部に接続した洗浄液ポンプにより行う。また、下部排水口23から排出された、残留異物を含む洗浄液体は、フィルターで残留異物を除去したのち、洗浄液ポンプに送り、循環させる。なお、給水口からの給水を洗浄液体に代えて、別途浸漬用の水を供給する場合には、洗浄液ポンプに加えて浸漬用水のための専用ポンプを別途配置するとよい。
【0049】
上記のように構成された洗浄装置1で、直径200mm、高さ150mmの円柱状の被洗浄物10を洗浄したときの、カップ4と被洗浄物10の位置関係を、図3(a)・(b)に示す。ここで、カップ4の昇降運動の振幅Wは、68mmに設定している。このとき、各洗浄ノズル51・52・53からの流体(洗浄液とエア)が、被洗浄物10の表面に当たる位置は、基台3の回転速度と、カップ4の昇降速度とで決定される。なお、図4(a)〜(c)は、下表の回転速度と昇降速度との組み合わせにおける、それぞれのノズル噴射パターンである。
【0050】
基台の回転速度 筒状容器の昇降速度
(a) 4.5rpm 145.9mm/sec
(b) 7.5rpm 145.9mm/sec
(c) 4.5rpm 38.9mm/sec
【0051】
図4の横軸は、被洗浄物10の表面の、円周方向に展開した位置(角度)を表し、縦軸は、高さ方向の位置を表す。図中の破線の丸印は、カップ4の側面に固定した各洗浄ノズル51・52・53の位置とノズルの噴射径を、被洗浄物10の表面に投影したものである。2つの洗浄ノズル51・53は、円周方向の同じ位置(90°)にあり、被洗浄物10に対する高さはそれぞれ、100mm、0mmである。もう一つの洗浄ノズル52は、それらと対向する位置(270°)にあり、同様の高さは50mmである。なお、図4中の上・中・下3本の折れ線は、それぞれ洗浄ノズル51,52,53に対応し、実線が1周目、長破線が2周目を表す。
【0052】
図4の各図における上・中・下3本の折れ線は、互いに重なり合っているうえ、2周目にはいると前周の位置よりずれているのがわかる。このように基台3の回転速度とカップ4の昇降速度とを調整したうえで、回転を繰り返すことにより、被洗浄物10の表面全体を洗浄できる。
【実施例】
【0053】
上記の洗浄装置1を用いて、被洗浄物10としての残留異物が付着したウォーターポンプの洗浄を行い、洗浄の精度をテストした。以下、その洗浄条件と結果とを説明する。
【0054】
<条件>
被洗浄物:ウォーターポンプ
洗浄圧力:1.6MPa(液圧)、0.3MPa(エア圧)
カップ昇降速度:119.1mm/sec
テーブル回転数:4.5RPM
液温度:59℃
洗浄時間:75秒
【0055】
<結果>
上記の条件での洗浄後、残留異物の重量計測を行った結果、0.6mgであった。これは、5mg以下という規格を十分満たすものである。
【0056】
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。とくに、カップ4の代わりに上面部のない筒体を用いることも可能である。また洗浄ノズルの数も、被洗浄物の大きさに応じて1個や2個、もしくは4個以上設けることも可能である。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0057】
1 洗浄装置
2 本体
21 上面部
22 防水パン
23 下部排水口
3 基台
31 ターンテーブル
32 支持部材
33 金属製バスケット
34 ゴムシール(シール部材)
4 カップ
41 上面部
42 給水口
43 上部排水口
5(51,52,53) 洗浄ノズル
5a 噴射口(洗浄液)
5b 噴射口(エア)
6 エアシリンダ
62 ロッド
10 被洗浄物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被洗浄物を、洗浄ノズルから噴射した洗浄流体により洗浄するための洗浄装置であって、
被洗浄物を保持し、回転駆動装置により水平面内で回転可能な基台と、
前記基台と前記被洗浄物とを上方から囲む大きさを有し、昇降駆動装置により昇降可能な筒体または筒状容器と、
前記筒体または筒状容器の側面に、その内部に向けて固定された洗浄ノズルとを備え、
前記基台の周縁部と前記筒体または筒状容器の側面内壁との間に隙間を有し、前記筒体または筒状容器が所定の振幅で昇降運動可能であるとともに、前記基台の回転速度と前記筒体または筒状容器の昇降速度のうち少なくともいずれか一方が、調整可能である洗浄装置。
【請求項2】
請求項1において、前記洗浄ノズルが少なくとも2個であり、高さ方向に等間隔に配置されている洗浄装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記洗浄ノズルが少なくとも2個であり、前記洗浄ノズルが円周方向に等間隔に配置されている洗浄装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項において、前記筒体または筒状容器の上部に、その内部に向けて液体の供給が可能な給水口が設けられている洗浄装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項において、前記基台の周縁部に、弾性部材が設けられている洗浄装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項において、前記筒体または筒状容器の側面上部に、上部排水口が設けられている洗浄装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項において、前記基台に排水孔が設けられている洗浄装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項において、前記洗浄ノズルが、2流体ノズルである洗浄装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−20250(P2012−20250A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161229(P2010−161229)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【出願人】(592258306)森合精機株式会社 (7)
【Fターム(参考)】