説明

洗浄装置

【課題】洗浄処理において、基板への不必要なダメージや回路パターン倒れを防ぎつつ、特定箇所の異物を除去できる洗浄装置を提供することを目的とする。
【解決手段】洗浄処理に用いるための処理流体を基板5に噴出する処理流体ノズル7と、基板5から処理流体を回収する回収装置8とを具備している。基板5を処理流体ノズル7からの処理流体により局所的に洗浄処理することができるため、基板5に対して不必要なダメージ、回路パターン倒れを防ぎつつ、特定箇所の異物を除去できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板から異物を除去する洗浄装置に係り、特に半導体製造工程で使用されるフォトマスクなどの基板表面に付着した異物を除去する洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程においては、露光装置を用いてフォトマスク上に形成された回路パターンをウエハ上に転写する必要がある。ところが、フォトマスク上に微小なほこりやごみなどの異物が付着していると、露光時にその異物がウエハ上に転写してしまい、製品の歩留まりを低下させる原因となってしまう。そのため、フォトマスクは十分に洗浄処理を行った上でペリクルを装着し清浄な状態に保っていなければならない。仮に洗浄処理後の検査で異物が検出された場合は再度洗浄処理が行われる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−318237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の洗浄装置には洗浄処理で除去できなかった異物に対する再洗浄処理において次のような問題がある。
再洗浄処理では基板の全面を再度洗浄処理することとなり、異物の除去効率が悪く、時間と薬液のロスにつながるおそれがある。また、洗浄処理によって清浄になった部分に対しても再度洗浄処理が行われることとなるため、基板に対して不必要なダメージを与える場合や、回路パターン倒れを発生させるおそれもある。
【0005】
本発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、基板に対して不必要なダメージ、回路パターン倒れを防ぎつつ、特定箇所の異物を除去できる洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態は、基板を洗浄処理する洗浄装置において、
洗浄用の流体を前記基板に向けて噴射するノズルと、
前記基板に噴射した前記流体を回収する回収機構と、
前記ノズル及び前記回収機構を前記基板の洗浄箇所に移動させる移動手段と、
を備えることを特徴とする洗浄装置である。
【0007】
また、前記回収機構は、前記流体により前記基板から除去した異物を前記流体と共に回収することができる。
【0008】
また、前記移動手段は、設定された前記基板の洗浄領域に前記ノズル及び前記回収機構を移動させるものとしてもよい。
【0009】
また、前記洗浄領域は、記憶装置に予め記憶された領域又は外部から入力指定された領域であってもよい。
【0010】
また、前記洗浄領域は、100mm以下の領域であってもよい。
【0011】
また、前記ノズルを複数有していてもよい。
【0012】
また、前記ノズルは、ノズル径を増減させる調節機構を有していてもよい。
【0013】
また、前記ノズルは、前記基板に対して角度が任意に設定可能に構成されていてもよい。
【0014】
また、前記ノズルは、一流体ノズル又は二流体ノズルであってもよい。
【0015】
また、前記流体は、複数種類であってもよい。
【0016】
また、前記回収機構は、前記流体により洗浄する前記基板の洗浄領域を覆うカバーを有していてもよい。
【0017】
前記回収機構は、前記噴射された流体が前記基板で跳ね返される方向に対向して設けられていることを特徴とする。言い換えると、前記回収機構は、前記基板の洗浄領域で反射された前記流体を受け止めるカバーを有していてもよい。
【0018】
また、前記基板は、半導体製造プロセスで用いるウエハ基板又はマスク基板であってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の洗浄装置は、洗浄用の流体を基板に噴出するノズルと、基板から流体を回収する回収機構と、これらを基板の洗浄箇所に移動させる移動手段とを具備していることから局所的に洗浄処理を行うことができるため、基板に対して不必要なダメージ、回路パターン倒れを防ぎつつ、特定箇所の異物を除去できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態に係る洗浄装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図1の洗浄処理部の一例を示す概略図である。
【図3】本発明の洗浄装置における処理基板近傍の部位を拡大した概略図である。
【図4】本発明の洗浄装置の一例を示す概略図である。
【図5】本発明の洗浄装置における処理基板近傍の部位を拡大した概略図である。
【図6】本発明の洗浄装置の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の洗浄装置について具体的に説明を行なう。
【0022】
図1に、本発明の一実施形態に係る洗浄装置の構成をブロック図で示す。
本実施形態の洗浄装置は、検査機1、記憶装置2、制御装置3、洗浄処理部4を備えている。検査機1による測定結果は記憶装置2に記憶される。制御装置3は、検査機1による測定結果、すなわち、異物の座標やサイズの情報に基づき、異物情報の測定結果に応じた基板洗浄工程を設定する。この設定された基板洗浄工程に従い、洗浄処理部4において、基板洗浄処理が実行される。
【0023】
図2に図1の洗浄処理部4の一例を示す概略図を示す。
図2の洗浄処理部4は、基板5を基板ストッパー10で固定するステージ6、処理流体ノズル7(請求項中のノズルに相当)、回収装置8(請求項中の回収機構に相当)、及び、XYステージ9(請求項中の移動手段に相当)を有している。XYステージ9は、記憶装置2に記憶された検査機1の測定結果で特定された異物の座標箇所に、制御装置3の制御によって、処理流体ノズル7や回収装置8を移動させる。
【0024】
処理流体ノズル7の開口部は、従来公知の開口径調整機構(図示せず)によって開口径調整可能に構成されている。これにより、処理流体の噴射径を変化することができる。
また、処理流体ノズル7は、処理流体を液圧にて噴射する一流体ノズルであってもよく、処理流体をエア圧に載せて噴射する二流体ノズルであってもよい。また、二流体ノズルとした処理流体ノズル7で2種類の処理流体を基板5に噴射する構成としてもよい。また、予め混合した2種類以上の処理流体を基板5に噴射する構成としてもよい。
【0025】
図3に、図2の処理流体ノズル7及び回収装置8の部位を拡大した概略図を示す。
本実施形態の洗浄処理部4は、ステージ6に基板ストッパー10で固定した基板5の、検査機1で異物が検出した位置を含む領域に対して局所的に洗浄処理を行う。噴出した処理流体と除去した異物の拡散を防ぐために、処理流体ノズル7の先端に取り付けた回収装置8は、基板5の洗浄処理領域を覆う漏斗状のカバー8aを有している。カバー8aは不図示の回収経路を経て不図示の回収タンクに連通しており、洗浄処理時に処理流体と除去した異物を瞬時に回収タンクに回収する仕組みとなっている。
なお、処理流体ノズル7が処理流体を噴射し回収装置8が処理流体を除去した異物と共に回収する基板5上の領域は、100mm以下であることが好ましい。100mm以上であると、噴出される処理流体の流量が多くなり、瞬時に処理流体と除去した異物を回収することが困難になる。また、処理流体の流量が多くなると、吹き付け圧が強くなり、パターンに悪影響が出る恐れが高くなる。
【0026】
処理流体ノズル7及び回収装置8は、図4に示すように、複数組設けてもよい。その場合、洗浄処理で除去できなかった異物が複数個あれば、各々の異物を含む領域に対して各処理流体ノズル7で洗浄処理を行う。
【0027】
処理流体ノズル7及び回収装置8は、図5に示すように、基板5に対する角度を調整できるように構成してもよい。この場合、検査機1で基板5の例えば回路パターン間に挟まった異物が検出された場合、処理流体ノズル7の基板5に対する角度を適切な角度にして洗浄処理を行う。
【0028】
上述した回収装置8のカバー8aは、図6に示すように、処理流体ノズル7から噴出された処理流体が基板5で跳ね返される方向に対向して備えられている。そのため、処理流体ノズル7から噴出された処理流体と除去した異物をカバー8aにより瞬時に回収することができる。カバー8aは、図3に示すように、処理流体ノズル7と一体でもよく、図6に示すように、処理流体ノズル7と別体としてもよい。
【0029】
上述した本実施形態の洗浄装置によれば、処理流体ノズル7により基板5の必要な領域に処理流体を限定的に噴射することができるので、再洗浄処理による基板5に対する不必要なダメージ、回路パターン倒れを防ぐことが出来る。特にフォトマスクを製造するにあたり、微細パターンが求められることから、本実施形態の洗浄装置は、フォトマスクの製造過程における洗浄に好適に用いることが出来る。
【実施例】
【0030】
<実施例>
まず、遮光膜のパターニングされたフォトマスク基板を用意した。この基板の作製において洗浄処理後に検査を行ったところ4個の異物を検出した。
検出した4個の異物に対して請求項1に記載の洗浄装置で下記条件のもと局所的に再洗浄処理を行った。
処理流体ノズルの種類 : 二流体ノズル
処理流体ノズルの開口部の大きさ : 半径30μm
処理流体 : 純水、窒素
基板に対しての処理流体ノズルの角度 : 90°(基板面に対して垂直な方向から処理流体を噴出する角度)
各異物に対しての再洗浄処理領域 : 異物を中心とした半径3mmの円形領域
【0031】
再洗浄処理を行ったところ、請求項1に記載の洗浄装置を用いることで、回路パターン倒れが発生することなく4個の異物を除去できた。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明の洗浄装置は微細加工が求められる種々の分野に応用が期待出来る。例えば、フォトマスク、半導体デバイス、配線回路(光導波路、デュアルダマシン構造の配線回路など)、パターンドメディア(ハードディスクや光学メディアなど)、ディスプレイ(拡散板、導光板など)などの製造工程において好適に利用することが期待出来る。
【符号の説明】
【0033】
1・・・検査機
2・・・記憶装置
3・・・制御装置
4・・・洗浄処理部
5・・・基板
6・・・ステージ
7・・・処理流体ノズル
8・・・回収装置
8a・・・カバー
9・・・XYステージ
10・・・基板ストッパー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を洗浄処理する洗浄装置において、
洗浄用の流体を前記基板に向けて噴射するノズルと、
前記基板に噴射した前記流体を回収する回収機構と、
前記ノズル及び前記回収機構を前記基板の洗浄箇所に移動させる移動手段と、
を備えることを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記回収機構は、前記流体により前記基板から除去した異物を前記流体と共に回収することを特徴とする請求項1記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記移動手段は、設定された前記基板の洗浄領域に前記ノズル及び前記回収機構を移動させることを特徴とする請求項1又は2記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記洗浄領域は、記憶装置に予め記憶された領域又は外部から入力指定された領域であることを特徴とする請求項3記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記洗浄領域は、100mm以下であることを特徴とする請求項3又は4記載の洗浄装置。
【請求項6】
前記ノズルを複数有することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の洗浄装置。
【請求項7】
前記ノズルは、ノズル径を増減させる調節機構を有していることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の洗浄装置。
【請求項8】
前記ノズルは、前記基板に対して角度が任意に設定可能に構成されていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の洗浄装置。
【請求項9】
前記ノズルは、一流体ノズル又は二流体ノズルからなることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載の洗浄装置。
【請求項10】
前記流体は、複数種類からなることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載の洗浄装置。
【請求項11】
前記回収機構は、前記流体により洗浄する前記基板の洗浄領域を覆うカバーを有していることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の洗浄装置。
【請求項12】
前記回収機構は、前記噴射された流体が前記基板で跳ね返される方向に対向して設けられていることを特徴とする請求項1から10のいずれかに記載の洗浄装置。
【請求項13】
前記基板は、半導体製造プロセスで用いるウエハ基板又はマスク基板であることを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−212032(P2012−212032A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77778(P2011−77778)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】