説明

洗浄装置

【課題】洗浄槽内に液剤が所定量正しく供給されたか否かの判定を行う。
【解決手段】洗浄槽3は、液体を貯留して被洗浄物2を浸漬する。減圧手段7は、洗浄槽3内の気体を外部へ吸引排出して、洗浄槽3内を減圧する。液剤供給手段5は、液剤タンク17が液剤供給路18を介して洗浄槽3に接続されてなり、液剤供給路18には液剤供給弁19が設けられている。減圧手段7により洗浄槽3内を減圧した状態で液剤供給弁19を開くことで、洗浄槽3の内外の差圧を利用して液剤タンク17からの液剤を洗浄槽3内へ供給する。液剤供給路18には、液剤が流れたことを検出するフローセンサ20が設けられている。液剤供給弁19への動作用出力信号と、フローセンサ20の検出信号とに基づき、洗浄槽3内への液剤の供給異常を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄槽内に液体を貯留して被洗浄物を浸漬し、洗浄槽内を減圧する工程を含んで被洗浄物の洗浄を図る洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
出願人は、先に、下記特許文献1に開示されるように、洗浄槽内に液体を貯留して被洗浄物を浸漬し、その貯留液を設定温度まで加温後、洗浄槽内を減圧して貯留液を沸騰させた状態で、洗浄槽内の液相部に外気を導入することで、貯留液を突沸させて被洗浄物の洗浄を図る洗浄装置を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−5480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の洗浄装置では、洗浄槽内に洗浄剤などの液剤が所定量正しく供給されることが必要である。そこで、本発明が解決しようとする課題は、洗浄槽内に液剤が所定量正しく供給されたか否かの判定を行うことができる洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、液体を貯留して被洗浄物を浸漬する洗浄槽と、この洗浄槽内の気体を外部へ吸引排出して、前記洗浄槽内を減圧する減圧手段と、液剤供給弁が設けられた液剤供給路を介して液剤タンクが前記洗浄槽に接続されてなり、前記減圧手段により前記洗浄槽内を減圧した状態で前記液剤供給弁を開くことで、前記洗浄槽の内外の差圧を利用して前記液剤タンクからの液剤を前記洗浄槽内へ供給する液剤供給手段と、前記液剤供給路に設けられ、液剤が流れたことを検出する流れ検出手段と、前記液剤供給弁への動作用出力信号と、前記流れ検出手段の検出信号とに基づき、前記洗浄槽内への液剤の供給異常を判定する制御手段とを備えることを特徴とする洗浄装置である。
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、液剤供給弁の開閉状態と、洗浄槽内への液剤の流れの有無との対応関係から、洗浄槽内への液剤の供給異常を判定することができる。
【0007】
請求項2に記載の発明は、前記洗浄槽内の圧力を検出する圧力センサを備え、前記制御手段は、前記液剤供給弁への動作用出力信号と、前記流れ検出手段の検出信号と、前記圧力センサの検出信号とに基づき、前記洗浄槽内への液剤の供給異常を判定することを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置である。
【0008】
請求項2に記載の発明によれば、液剤供給弁の開閉状態と、洗浄槽内への液剤の流れの有無と、洗浄槽内の所定以上の圧力上昇の有無との対応関係から、洗浄槽内への液剤の供給異常を判定することができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記液剤供給弁は、三方弁から構成され、この三方弁は、前記液剤タンクから前記三方弁への液剤供給路を前記洗浄槽と連通する第一位置と、前記液剤タンクから前記三方弁への液剤供給路を大気と連通する第二位置とを切り替え、前記制御手段は、前記三方弁を前記第一位置とした状態で、液剤が流れたことを前記流れ検出手段が検出しないか、前記三方弁を前記第二位置とした状態で、液剤が流れたことを前記流れ検出手段が検出すると、前記洗浄槽内への液剤の供給異常と判定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の洗浄装置である。
【0010】
請求項3に記載の発明によれば、液剤供給弁に三方弁を用いることで、二方弁を用いた場合よりも夾雑物の噛み込みを防止して、液剤供給弁の開閉異常を低減することができる。また、三方弁の開閉状態と、洗浄槽内への液剤の流れの有無との対応関係から、洗浄槽内への液剤の供給異常を判定することができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記洗浄槽内の圧力を検出する圧力センサを備え、前記液剤供給弁は、三方弁から構成され、この三方弁は、前記液剤タンクから前記三方弁への液剤供給路を前記洗浄槽と連通する第一位置と、前記液剤タンクから前記三方弁への液剤供給路を大気と連通する第二位置とを切り替え、前記制御手段は、前記三方弁を前記第一位置とした状態で、液剤が流れたことを前記流れ検出手段が検出するが、前記洗浄槽内の所定以上の圧力上昇を前記圧力センサが検出するか、前記三方弁を前記第二位置とした状態で、液剤が流れたことを前記流れ検出手段が検出しないが、前記洗浄槽内の所定以上の圧力上昇を前記圧力センサが検出すると、前記洗浄槽内への液剤の供給異常と判定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の洗浄装置である。
【0012】
請求項4に記載の発明によれば、液剤供給弁に三方弁を用いることで、二方弁を用いた場合よりも夾雑物の噛み込みを防止して、液剤供給弁の開閉異常を低減することができる。また、三方弁の開閉状態と、洗浄槽内への液剤の流れの有無と、洗浄槽内の所定以上の圧力上昇の有無との対応関係から、洗浄槽内への液剤の供給異常を判定することができる。
【0013】
請求項5に記載の発明は、前記液剤タンク内の液剤の液位を検出する液位検出器を備え、前記制御手段は、前記液位検出器により前記液剤タンク内の液位が設定より低いことを検出すると、運転開始を不能にすることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の洗浄装置である。
【0014】
請求項5に記載の発明によれば、液剤タンク内の液位も考慮し、液位が設定より低い場合には運転開始を不能にすることで、洗浄不良を未然に防止することができる。
【0015】
さらに、請求項6に記載の発明は、前記洗浄槽内の圧力を検出する圧力センサと、前記液剤タンク内の液剤の液位を検出する液位検出器とを備え、前記制御手段は、前記液剤供給弁への動作用出力信号と、前記流れ検出手段の検出信号と、前記圧力センサの検出信号と、前記液位検出器の検出信号とに基づき、前記液剤供給弁、前記流れ検出手段、前記液位検出器の異常を判定することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の洗浄装置である。
【0016】
請求項6に記載の発明によれば、液剤供給弁、流れ検出手段および液位検出器の異常も判定することができ、メンテナンス箇所の指示も可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、洗浄槽内に液剤が所定量正しく供給されたか否かの判定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の洗浄装置の一実施例を示す概略図であり、一部を断面にして示している。
【図2】洗浄槽内への液剤の供給異常と、液位検出器、液剤供給弁およびフローセンサの故障の判定方法を示す図である。
【図3】図1の洗浄装置の変形例を示す図であり、洗浄槽と液剤供給手段以外の構成は省略して示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の具体的実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の洗浄装置1の一実施例を示す概略図であり、一部を断面にして示している。
【0020】
本実施例の洗浄装置1は、液体が貯留され被洗浄物2が浸漬される洗浄槽3と、この洗浄槽3内への給水手段4と、洗浄槽3内への液剤供給手段5と、洗浄槽3内の貯留液を加温する加温手段6と、洗浄槽3内の気体を外部へ吸引排出して洗浄槽3内を減圧する減圧手段7と、減圧された洗浄槽3内の液相部へ外気を導入する液相給気手段8と、減圧された洗浄槽3内の気相部へ外気を導入する気相給気手段9と、これら各手段4〜9を制御する制御手段(図示省略)とを備える。
【0021】
被洗浄物2は、洗浄を図りたい物品であり、たとえば、医療器具、電子部品または機械部品である。なお、洗浄とは、文字通りの洗浄の他、濯ぎや除染なども含まれるものとする。
【0022】
洗浄槽3は、内部空間の減圧に耐える中空容器である。洗浄槽3は、上方へ開口して中空部を有する洗浄槽本体10と、この洗浄槽本体10の開口部を開閉するドア11とを備える。ドア11を閉じた状態では、洗浄槽本体10とドア11との隙間はパッキン12で封止される。
【0023】
洗浄槽3には、圧力センサ13と温度センサ14とが設けられる。圧力センサ13は、洗浄槽3内の気相部の圧力を検出し、温度センサ14は、洗浄槽3内の液相部の温度を検出する。
【0024】
洗浄槽3には液体が供給されて貯留される。この液体は、その種類を特に問わないが、給水手段4による水(純水または軟水であってもよい)に、液剤供給手段5による液剤を混入して作られる。液剤は、特に問わないが、たとえば、洗浄剤、防食剤、防錆剤または中和剤である。
【0025】
給水手段4は、洗浄槽3内に水を供給する。本実施例の給水手段4は、給水源(図示省略)からの給水路15を洗浄槽3に接続して構成される。給水路15には、給水弁16が設けられる他、給水源からの水圧に応じて、給水弁16より上流側に適宜、給水ポンプが設置される。その場合、給水ポンプの作動の有無は、給水弁16の開閉と連動させればよい。いずれにしても、給水弁16を開くことで、洗浄槽3内へ水が供給され、洗浄槽3内に所望量の水が貯留されると、給水弁16が閉じられる。
【0026】
液剤供給手段5は、洗浄槽3内に液剤を供給する。本実施例の液剤供給手段5は、液剤タンク17が液剤供給路18を介して洗浄槽3に接続されて構成される。液剤供給路18には液剤供給弁19が設けられており、減圧手段7により洗浄槽3内を減圧した状態で液剤供給弁19を開くと、洗浄槽3の内外の差圧を利用して、液剤タンク17内の液剤を洗浄槽3内へ供給することができる。液剤供給路18は、洗浄槽3に接続されており、液剤は、最終的に洗浄槽3内の液相部に混入される。なお、液剤タンク17内は、大気圧に開放状態にある。
【0027】
液剤供給手段5についてさらに具体的に説明すると、本実施例では、液剤供給路18には、液剤タンク17の側から順に、流れ検出手段(フローセンサ20)、オリフィス21および液剤供給弁19が設けられている。オリフィス21を設けることで、洗浄槽3内への液剤の供給時の流量を安定させることができ、ひいては、液剤供給弁19の開放時間で、洗浄槽3内への液剤の注入量を調整することができる。
【0028】
流れ検出手段は、液剤が所定流量以上流れたか否かを検出する手段であり、流量計でもよいが、本実施例ではフローセンサ20が用いられる。また、液剤供給弁19は、液剤タンク17からの液剤供給路18を洗浄槽3と連通させるか大気開放するかを切り替えるように開閉する三方弁で構成される。つまり、この三方弁(19)は、液剤タンク17から三方弁(19)への液剤供給路18を洗浄槽3と連通させて大気開放側を閉とする第一位置と、液剤タンク17から三方弁(19)への液剤供給路18を大気と連通させて洗浄槽3側を閉とする第二位置とを切り替える。
【0029】
液剤供給路18の基端部は、液剤タンク17内に差し込まれ、液剤タンク17の底部付近で開口する。さらに、液剤供給路18には、フローセンサ20より上流側(液剤タンク17の側)に、逆止弁23が設けられる。この逆止弁23は、洗浄槽3の側から液剤タンク17の側への液体の逆流を防止する。
【0030】
液剤タンク17には液位検出器24が設けられており、液剤タンク17内が所定以上低液位となったことを検出することができる。この液位検出器24としては、たとえばフロート式のセンサが用いられるが、これに限らず、たとえば電気伝導度や光学を用いたセンサであってもよい。そして、液剤タンク17内の液剤の残量が、後述するようにバッチ運転する洗浄装置1の一バッチの運転に必要な量よりも多いが、二バッチ分はない高さで、低液位を検出するのがよい。これにより、一旦、開始したバッチ運転は、液剤の不足により中断されることなく、最後まで運転可能となる。
【0031】
加温手段6は、洗浄槽3内の貯留液を加温する。加温手段6は、その構成を特に問わず、たとえば蒸気ヒータでもよいが、本実施例では電気ヒータ25とされる。この電気ヒータ25は、洗浄槽3内の底部に配置される。
【0032】
減圧手段7は、洗浄槽3内の気体を外部へ吸引排出して洗浄槽3内を減圧する。具体的には、減圧手段7は、真空発生装置26を備え、この真空発生装置26は、排気路27を介して、洗浄槽3内の気相部に接続されている。真空発生装置26は、その具体的構成を特に問わないが、典型的には水封式の真空ポンプを備え、この真空ポンプより上流側に、吸引する気体に含まれる蒸気を凝縮させる熱交換器をさらに備えてもよい。
【0033】
液相給気手段8は、減圧された洗浄槽3内の液相部へ、液相給気路28を介して外気を導入する。液相給気路28には、洗浄槽3へ向けて順に、フィルタ29および液相給気弁30が設けられている。従って、洗浄槽3内が減圧された状態で液相給気弁30を開くと、洗浄槽3の内外の差圧を利用して、フィルタ29を介した空気を洗浄槽3内の貯留液中に導入することができる。
【0034】
ところで、液相給気路28からの空気は、洗浄槽3内の底部に設けた液相給気ノズル31を介して、洗浄槽3内の貯留液中に導入される。液相給気ノズル31は、洗浄槽3内の底部に、横向きに配置されたパイプである。液相給気ノズル31は、洗浄槽3内の底部ではあるが底面から離隔して、水平に保持されている。そして、液相給気ノズル31には、パイプの延出方向へ沿って設定間隔で、パイプの周側壁にノズル孔32,32,…が下方へ開口して形成されている。
【0035】
気相給気手段9は、減圧された洗浄槽3内の気相部へ、気相給気路33を介して外気を導入する。気相給気路33には、洗浄槽3へ向けて順に、フィルタ34および気相給気弁35が設けられている。従って、洗浄槽3内が減圧された状態で気相給気弁35を開くと、洗浄槽3の内外の差圧により、フィルタ34を介した空気を洗浄槽3内へ導入して、洗浄槽3内を復圧することができる。気相給気弁35を電磁弁から構成すれば、洗浄槽3内を瞬時に復圧することができ、気相給気弁35を電動弁から構成すれば、洗浄槽3内を徐々に復圧することができる。
【0036】
制御手段(図示省略)は、前記各センサ13,14,20,24の検出信号などに基づき、前記各手段4〜9を制御する制御器である。具体的には、給水弁16、液剤供給弁19、電気ヒータ25、真空発生装置26、液相給気弁30、気相給気弁35の他、圧力センサ13、温度センサ14、フローセンサ20、液位検出器24は、制御器に接続されている。そして、制御器は、以下に述べるように、所定の手順(プログラム)に従い、洗浄槽3内の被洗浄物2の洗浄を図る。また、制御器は、洗浄槽3内への液剤の投入異常を判定したり、液剤供給弁19、フローセンサ20および液位検出器24の故障を判定したりする。
【0037】
次に、本実施例の洗浄装置1の運転方法の一例について説明する。
まず、バスケット等に入れた被洗浄物2を洗浄槽3に入れて、洗浄槽3のドア11を気密に閉じる。このとき、給水弁16、液相給気弁30、気相給気弁35は閉じられると共に、液剤供給弁19は第二位置の状態(非通電状態)にある。
【0038】
また、液位検出器24で液剤タンク17内の液位を確認する。液位検出器24が低液位を検出すると、制御器は、その旨報知して、液剤タンク17への液剤の追加、または液剤タンク17の付け替えを要請する。また、液位検出器24が低液位を検出している限り、制御器は、洗浄装置1の運転開始を受け付けない。
【0039】
液位検出器24が低液位を検出しない場合、まず給水手段4により、被洗浄物2が浸漬されるよう所定高さまで、洗浄槽3内に水を供給する。洗浄槽3内に所望量の水が貯留されると、給水手段4による給水を停止する。給水手段4による洗浄槽3内への給水中、本実施例では減圧手段7を作動させて洗浄槽3内の減圧が図られる。
【0040】
給水完了後も減圧手段7の作動を継続させておき、洗浄槽3内の圧力が液剤注入圧力以下になれば、液剤供給弁19を開ける(三方弁を第一位置とする)。これにより、液剤タンク17内の液剤が、洗浄槽3内へ供給される。液剤の供給量は、洗浄槽3内の圧力に応じて、液剤供給弁19を開放する時間で調整できる。
【0041】
洗浄槽3内への液剤の供給時、制御器は、液剤供給弁19への動作用出力信号と、フローセンサ20の検出信号とに基づき、洗浄槽3内への液剤の供給異常を判定する。
【0042】
すなわち、液剤供給弁19が第一位置の状態で、液剤の流れをフローセンサ20が検出すれば、液剤の供給は正常になされたことになるが、液剤供給弁19が第一位置の状態で、液剤の流れをフローセンサ20が検出しなければ、制御器は、異常と判定してその旨報知する。たとえば、アラームを鳴らして、洗浄装置1の運転を停止させる。
【0043】
また、液剤供給弁19が第二位置の状態で、液剤の流れをフローセンサ20が検出しなければ正常であるが、液剤供給弁19が第二位置の状態で、液剤の流れをフローセンサ20が検出すれば、制御器は、異常と判定してその旨報知する。たとえば、アラームを鳴らして、洗浄装置1の運転を停止させる。
【0044】
さらに、制御器は、洗浄槽3内への液剤の供給中、圧力センサ13により洗浄槽3内の圧力を監視して、所定以上の圧力上昇があれば、洗浄槽3内への液剤の供給異常と判定してその旨報知する。つまり、液剤タンク17内の液剤が空になった場合、洗浄槽3内には空気が供給されるため、液剤供給弁19の開放時間が同じでも、洗浄槽3内の圧力上昇が大きくなるのでこれを検出することで、洗浄槽3内への液剤の供給異常と判定することができる。
【0045】
図2は、洗浄槽3内への液剤の供給異常と、液位検出器24、液剤供給弁19およびフローセンサ20の故障の判定方法を示す図である。なお、液位検出器24は、ここでは、液剤がある場合はON、液剤がなくなるとOFFになるとする。また、フローセンサ20は、液剤が所定量以上流れた場合、ONになるとする。
【0046】
制御器は、液位検出器24の検出信号と、液剤供給弁19への動作用出力信号と、フローセンサ20の検出信号と、圧力センサ13の検出信号(液剤供給弁19の開放中の洗浄槽3内の所定以上の圧力上昇の有無)とに基づき、洗浄槽3内への液剤の供給異常の判定の他、液位検出器24、液剤供給弁19およびフローセンサ20の異常を判定する。そして、異常と判定した場合には、制御器は、その旨を報知し、判定結果に基づき異常を知らせる箇所のメンテナンスを要求すればよい。
【0047】
(a)に示すように、液剤供給弁19が第一位置にあるように出力した際に、フローセンサ20がONを検出し、圧力センサ13が洗浄槽3内の所定以上の圧力上昇を検出したとする。この場合、液剤タンク17内の液剤がなくなり、液剤タンク17から洗浄槽3内へ外気が導入されたことになる。また、液位検出器24およびフローセンサ20の双方が故障であると判定できる。
【0048】
(b)に示すように、液剤供給弁19が第一位置にあるように出力した際に、フローセンサ20がONを検出し、圧力センサ13が洗浄槽3内の所定以上の圧力上昇を検出しなかったとする。この場合、液剤の投入は正常になされたことになり、また、いずれのセンサの故障も認められない。
【0049】
(c)に示すように、液剤供給弁19が第一位置にあるように出力した際に、フローセンサ20がOFFを検出し、圧力センサ13が洗浄槽3内の所定以上の圧力上昇を検出したとする。この場合、液剤タンク17内の液剤がなくなり、液剤タンク17から洗浄槽3内へ外気が導入されたことになる。また、液位検出器24が故障であると判定できる。
【0050】
(d)に示すように、液剤供給弁19が第一位置にあるように出力した際に、フローセンサ20がOFFを検出し、圧力センサ13が洗浄槽3内の所定以上の圧力上昇を検出しなかったとする。この場合、液剤の投入は正常になされたが、フローセンサ20が故障しているか、フローセンサ20は正常であるが液剤供給弁19が異常で開放できなかったため、液剤の投入異常があるかのいずれかとなる。
【0051】
(e)に示すように、液剤供給弁19が第二位置にある際に、フローセンサ20がONを検出し、圧力センサ13が洗浄槽3内の所定以上の圧力上昇を検出したとする。この場合、液剤供給弁19が異常で漏れを生じたことになり、しかも液剤タンク17から洗浄槽3内へ外気が導入されたことになる。また、液位検出器24が故障し、フローセンサ20も故障と判定できる。
【0052】
(f)に示すように、液剤供給弁19が第二位置にある際に、フローセンサ20がONを検出し、圧力センサ13が洗浄槽3内の所定以上の圧力上昇を検出しなかったとする。この場合、液剤供給弁19が異常で漏れを生じたことになり、しかも液剤タンク17から洗浄槽3内へ液剤が供給されたので、液剤が供給過多の状態にある。また、フローセンサ20の故障と判定できる。
【0053】
(g)に示すように、液剤供給弁19が第二位置にある際に、フローセンサ20がOFFを検出し、圧力センサ13が洗浄槽3内の所定以上の圧力上昇を検出したとする。この場合、液剤供給弁19が異常で漏れを生じたことになり、しかも液剤タンク17から洗浄槽3内へ外気が導入されたことになる。また、液位検出器24の故障と判定できる。
【0054】
(h)に示すように、液剤供給弁19が第二位置にある際に、フローセンサ20がOFFを検出し、圧力センサ13が洗浄槽3内の所定以上の圧力上昇を検出しなかったとする。この場合は、洗浄槽3内へ液剤は供給されておらず、正常である。
【0055】
(i)に示すように、液位検出器24がOFFを検出すれば、運転操作を受け付けないことは、前述したとおりである。
【0056】
制御器は、洗浄槽3内に液剤が正常に供給されと判定した場合、その後、被洗浄物2の洗浄を図る。その具体的な方法は特に問わないが、たとえば、次のようになされる。
【0057】
すなわち、まず、液剤の投入後には、洗浄槽3内を所定圧力まで減圧後に、液相給気弁30を開いて復圧する操作を繰り返すことで、洗浄槽3内の貯留水への液剤の撹拌を図るのが好ましい。この際、各減圧は、洗浄槽3内の貯留液を沸騰させない圧力で足りるし、各復圧は、大気圧まで戻す必要はなく大気圧未満の圧力で足りる。
【0058】
その後、加温手段6により洗浄槽3内の貯留液を設定温度まで加温後、減圧手段7により洗浄槽3内を減圧して貯留液を沸騰させ、この沸騰中に、洗浄槽3内からの排気を継続したまま、液相給気手段8により洗浄槽3の内外の差圧を利用して洗浄槽3内の液相部に外気を導入する。これにより貯留液を突沸させ、貯留液の爆発的な噴上げとそれに続く落下とによって、貯留液を大きく揺動させることができ、被洗浄物2の洗浄を効果的に図ることができる。その後、洗浄槽3内の貯留液を再び設定温度まで加温し、洗浄槽3内を減圧後に洗浄槽3内の液相部に外気を導入することを繰り返すのがよい(液相給気パルス制御)。
【0059】
あるいは、加温手段6により洗浄槽3内の貯留液を設定温度まで加温後、所定の終了条件を満たすまで、減圧手段7による洗浄槽3内からの排気を継続して洗浄槽3内の圧力を低下させる過程で、この減圧による貯留液の沸騰中に気相給気手段9により洗浄槽3内を貯留液の沸騰が止むまで瞬時に一時的に復圧することを繰り返してもよい(気相給気パルス制御)。
【0060】
あるいは、前述した気相給気パルス制御と液相給気パルス制御とを所望順序で実行するなど、洗浄槽3内の減圧や復圧、バブリング(液相部への給気)などを適宜組み合わせて、被洗浄物2の洗浄を図ってもよい。
【0061】
本発明の洗浄装置1は、前記実施例の構成に限らず適宜変更可能である。
洗浄装置1が被洗浄物2を洗浄後に濯ぎする構成の場合、洗浄装置1には液剤供給手段5が二つ以上設けられ、一方が洗浄剤を供給する手段、もう一方が濯ぎ剤(防食剤や、防食剤以外の液剤)を供給する手段とし、洗浄か濯ぎか、あるいは他の工程に応じて使い分けてもよい。具体的には、図3は、前記実施例における液剤供給手段5の変形例を示す図であり、液剤供給手段5以外の構成は省略して示している。この図の場合、洗浄装置1は、第一液剤供給手段5Aと第二液剤供給手段5Bとを備える。各液剤供給手段5A,5Bの構成は、前記実施例と同様であり、第一液剤供給手段5Aの液剤タンク17Aに洗浄剤が入れられており、第二液剤供給手段5Bの液剤タンク17Bに濯ぎ剤が入れられている。従って、洗浄槽3内へ洗浄剤を供給する際には、第一液剤供給手段5Aの液剤供給弁19Aを第一位置にすればよいし、洗浄槽3内へ濯ぎ剤を供給するには、第二液剤供給手段5Bの液剤供給弁19Bを第一位置にすればよい。その他の構成は前記実施例で述べたとおりである。
【符号の説明】
【0062】
1 洗浄装置
2 被洗浄物
3 洗浄槽
4 給水手段
5 液剤供給手段
6 加温手段
7 減圧手段
8 液相給気手段
9 気相給気手段
13 圧力センサ
14 温度センサ
17 液剤タンク
18 液剤供給路
19 液剤供給弁(三方弁)
20 フローセンサ(流れ検出手段)
24 液位検出器
26 真空発生装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を貯留して被洗浄物を浸漬する洗浄槽と、
この洗浄槽内の気体を外部へ吸引排出して、前記洗浄槽内を減圧する減圧手段と、
液剤供給弁が設けられた液剤供給路を介して液剤タンクが前記洗浄槽に接続されてなり、前記減圧手段により前記洗浄槽内を減圧した状態で前記液剤供給弁を開くことで、前記洗浄槽の内外の差圧を利用して前記液剤タンクからの液剤を前記洗浄槽内へ供給する液剤供給手段と、
前記液剤供給路に設けられ、液剤が流れたことを検出する流れ検出手段と、
前記液剤供給弁への動作用出力信号と、前記流れ検出手段の検出信号とに基づき、前記洗浄槽内への液剤の供給異常を判定する制御手段と
を備えることを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記洗浄槽内の圧力を検出する圧力センサを備え、
前記制御手段は、前記液剤供給弁への動作用出力信号と、前記流れ検出手段の検出信号と、前記圧力センサの検出信号とに基づき、前記洗浄槽内への液剤の供給異常を判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記液剤供給弁は、三方弁から構成され、
この三方弁は、前記液剤タンクから前記三方弁への液剤供給路を前記洗浄槽と連通する第一位置と、前記液剤タンクから前記三方弁への液剤供給路を大気と連通する第二位置とを切り替え、
前記制御手段は、前記三方弁を前記第一位置とした状態で、液剤が流れたことを前記流れ検出手段が検出しないか、前記三方弁を前記第二位置とした状態で、液剤が流れたことを前記流れ検出手段が検出すると、前記洗浄槽内への液剤の供給異常と判定する
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記洗浄槽内の圧力を検出する圧力センサを備え、
前記液剤供給弁は、三方弁から構成され、
この三方弁は、前記液剤タンクから前記三方弁への液剤供給路を前記洗浄槽と連通する第一位置と、前記液剤タンクから前記三方弁への液剤供給路を大気と連通する第二位置とを切り替え、
前記制御手段は、前記三方弁を前記第一位置とした状態で、液剤が流れたことを前記流れ検出手段が検出するが、前記洗浄槽内の所定以上の圧力上昇を前記圧力センサが検出するか、前記三方弁を前記第二位置とした状態で、液剤が流れたことを前記流れ検出手段が検出しないが、前記洗浄槽内の所定以上の圧力上昇を前記圧力センサが検出すると、前記洗浄槽内への液剤の供給異常と判定する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記液剤タンク内の液剤の液位を検出する液位検出器を備え、
前記制御手段は、前記液位検出器により前記液剤タンク内の液位が設定より低いことを検出すると、運転開始を不能にする
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項6】
前記洗浄槽内の圧力を検出する圧力センサと、
前記液剤タンク内の液剤の液位を検出する液位検出器とを備え、
前記制御手段は、前記液剤供給弁への動作用出力信号と、前記流れ検出手段の検出信号と、前記圧力センサの検出信号と、前記液位検出器の検出信号とに基づき、前記液剤供給弁、前記流れ検出手段、前記液位検出器の異常を判定する
ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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