説明

洗浄装置

【課題】管の内径が小さくても、管にケーブルを挿通したまま、洗浄能力を担保しつつ、管内に付着する異物を除去することができる洗浄装置を提供する。
【解決手段】洗浄装置5は、砲弾状の形状を有し、容易にケーブル4に装着可能なように、中央にケーブル通し穴を有した2分割構造となっている。洗浄装置5本体は、中央縦に2分割され、分割体の前端部の円周上には、ケーブル管1の内周面に広角状に噴き付ける噴射孔が等間隔で複数個配置されている。分割体のそれぞれは、分割体内部に、複数の噴射孔同士が連通する空洞水路を有する。空胴水路のそれぞれには、2つに分岐された給水ホース6が接続される。給水ホース6によって給水車16から送られる高圧洗浄水9は、空洞水路を通り、噴射孔から斜め前方に向かって噴出され、ケーブル管1の内面に付着した錆や堆積物等の異物を除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線状体が挿通されている管の内周面を洗浄する洗浄装置に関し、特に、通信ケーブルや送電ケーブル等のケーブルを敷設したケーブル管の内周面に付着している錆や土砂等の異物を除去する洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地盤には、通信ケーブルや送電ケーブル等のケーブルを敷設するためのケーブル管が埋設されている。ケーブル管は、埋設期間が長期にわたると、管の継ぎ手部から流入した土砂等が固形状に付着したり、特に、金属製のケーブル管については錆が発生することがある。これらの異物の付着による不都合は、例えば、既存のケーブル管を有効活用して管内の余裕空間に新規のケーブルをさらに敷設するような場合に生じる。つまり、付着した異物によって管内の余裕区間が狭められていると、新規に挿入したケーブルが異物に引っ掛かって敷設が困難となるためである。したがって、異物を除去する洗浄技術が必要とされるが、必要であるとしても現在使用中の既存のケーブルを管内から撤去して洗浄する方法は取り得ない。このため、既存のケーブルを残したままで異物を除去できることが洗浄技術に求められる基本条件となる。こうした既存の洗浄技術としては、例えば、高圧洗浄水の供給ホースを接続した分割構造の洗浄装置をケーブルに挟み込み、ケーブル管の管内に送り込み、異物に対して高圧洗浄水を噴射することで除去する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−095703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来の浄装置では、洗浄装置本体が筒状の構造であることから、管路内を移動させる際に、管の曲がりに引っかかるなど、対応できない場合がある。単純に筒状の構造を短くすればこのような課題を解決できるが、筒状の構造を短くすると、洗浄水を噴射する噴射孔の数が少なくなるため、従来の噴射構造では十分な洗浄が得られないといった新たな課題が生じる。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、ケーブル(線状体)が挿通されている管の内径が小さくても、管にケーブルを挿通したまま、洗浄能力を担保しつつ、管内に付着する異物を除去することができる洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明は、線状体を挿通した管の内部を移動しながら高圧洗浄流体の噴射によって管内を洗浄する洗浄装置において、内周面にて前記線状体を挿通状態で保持する砲弾状本体を備えるとともに、前記砲弾状本体の外周面に、高圧洗浄流体を前記管の内周面に広角状に噴き付ける複数の噴射孔を有することを特徴とする。
【0007】
前記砲弾状本体は、2以上の分割体からなり、前記分割体のそれぞれは、前記複数の噴射孔が連通する空洞水路を有することが好ましく、前記噴射孔は、前記高圧洗浄流体を砲弾状本体の移動方向前向きに噴射することが好ましい。
【0008】
また、前記噴射孔は、着脱可能な噴射ノズルを有することが好ましく、前記砲弾状本体の外周面に、砲弾状本体を前記管の内周面から離した状態で支持するためのそり部を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、本体形状を砲弾型とし、小型化を図ったことで、今まで施工不可能であった内径の小さい管路に対しても、管にケーブルを挿通したまま、洗浄能力を担保しつつ、管内に付着する異物を除去することができる。また、噴射孔の減数化、連通部材の廃止によりメンテナンス性が向上するとともに、小型化により施工時の牽引張力も低減できたため、従来のような大型ポンプ車を必要とせず、施工性向上・コスト低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の洗浄装置を用いてケーブル管内を洗浄する方法を模式的に示す図である。
【図2】本発明の洗浄装置の一例を模式的に示す正面図である。
【図3】本発明の洗浄装置の一例を模式的に示す断面図である。
【図4】噴射ノズルの形状の一例を示す断面図である。
【図5】噴射ノズルの形状の一例を示す断面図である。
【図6】従来の直線的噴射と本発明の広角状噴射の違いを模式的に示す図である。
【図7】1つの噴射孔における高圧洗浄水の噴射方向を説明する図である。
【図8】洗浄装置を側面から見た模式図である。
【図9】洗浄装置を真上から見た模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。はじめにケーブル管の洗浄方法について説明する。図1は、本発明の洗浄装置を用いてケーブル管内を洗浄する方法を模式的に示す図である。図1において、地盤には鋼管製のケーブル管1(管内径79mm以下)が埋設されており、その中にはケーブル4(線状体)が収容されている。ケーブル管1の両端にはマンホール2、3が設けられており、洗浄作業は、そこを利用して行われる。
【0012】
本発明の洗浄装置を用いる洗浄方法は、予めケーブル管1に通線してある通線紐を利用して、マンホール2、3からケーブル管1の管内に牽引ロープ7を引き通すことから始める。次に、マンホール3の中で露出しているケーブル4の外周に本発明の洗浄装置5を装着する。ここで洗浄装置5の前端部(マンホール2側)には、マンホール2からマンホール3の間に引き通した牽引ロープ7の先端を接続し、洗浄装置5の後端部(マンホール3側)には、洗浄装置5を牽引するための他の牽引ロープを接続する。なお、図1では、後端部に接続される牽引ロープは記載を省略している。後端部に接続される牽引ロープは、ケーブル管1に引き込んだ洗浄装置5に異常が生じて、マンホール3の側へ引き戻すような場合に用いられる。
【0013】
また、洗浄装置5の後端部には、地上の給水車16から高圧洗浄水9(高圧洗浄流体)を供給する給水ホース6も接続される。そして、マンホール2の反力受台19に設置された電動ウィンチ17は、牽引ロープ7により洗浄装置5を、マンホール3の側からマンホール2の側へ引き戻す。洗浄装置5は、ケーブル管1の中を、給水ホース6を介して送られる高圧洗浄水9を、洗浄装置5本体に設けられた噴出孔から噴出させながら、マンホール3の側からマンホール2の側へ引き戻される。このときに、ケーブル管1の内面に付着した錆や堆積物等の異物が除去される。マンホール2に設けられたポンプ20は、除去した錆や堆積物等の異物を含んだ排水を沈殿槽21へ送る。
【0014】
次に、本発明に係る洗浄装置5について説明する。図2は、洗浄装置5の一例を模式的に示す正面図であり、図3は、洗浄装置5の一例を模式的に示す断面図である。洗浄装置5は、砲弾状の形状を有し、容易にケーブル4に装着可能なように、中央にケーブル通し穴5aを有した2分割構造となっている。洗浄装置5本体は、中央縦に2分割され、分割体5f,5gにより構成され、ボルト接合にて一体化されている。分割体5f,5gの前端部の円周上には、噴射孔5bが等間隔で複数個配置されている。分割体5f,5gのそれぞれは、分割体内部に、複数の噴射孔5b同士が連通する空洞水路5dを有する。空胴水路5dのそれぞれには、2つに分岐された給水ホース6が接続される。給水ホース6によって給水車16から送られる高圧洗浄水9は、空洞水路5dを通り、噴射孔5bから斜め前方に向かって噴出され、ケーブル管1の内面に付着した錆や堆積物等の異物を除去する。また、分割体5f,5gのそれぞれの前端部には、牽引ロープ7を取り付けるための牽引穴5cが設けられている。
【0015】
洗浄装置5は、従来の洗浄装置(引用文献1の洗浄装置)からの大幅な小型化と、同等の洗浄能力を担保するため、従来の洗浄装置よりも噴射孔5bの数を1/5以下としたほか、噴射孔5bからの噴射を広角状(円錐状)にすることでケーブル管1の内周面の全周囲に高圧洗浄水9を噴射する構造とした。噴射孔5bの噴射ノズルの形状としては、図4に示す噴射孔径を2重化した形状や、図5に示す噴射孔スリッドを拡大した形状がある。
【0016】
図6は、従来の直線的噴射と本発明の広角状噴射の違いを説明する図である。図6(a)は直線的噴射を示しており、図6(b)は広角状(円錐状)噴射を示している。従来の洗浄装置の直線的噴射から広角状噴射に変えたことにより、噴射孔1つ当たりの面積を広げることで、少ない噴射孔でも従来の洗浄装置と同等の性能を実現することができる。
【0017】
また、噴射ノズルは、螺合により着脱可能に取り付けられているので、ケーブル管1の内径の大小や異物の付着状態などの洗浄状況に応じてノズルを使い分けたり、高圧洗浄水9の噴射によって摩耗したノズルを新しいものと交換することができる。
【0018】
個々の噴射孔5bは、図7に示すように、高圧洗浄水9を管軸方向Xに沿って洗浄装置5の移動方向前向きX1に、所定の上方傾斜角θ1をもって斜め(噴射方向W)に噴射するようになっている。それぞれの噴射孔5bがこのように高圧洗浄水9を噴射することで、洗浄装置5では、全体として高圧洗浄水9を管軸方向Xへ斜め放射状に噴射してケーブル管1の内周面に吹き付けるようになっている。なお、Yは幅方向(径方向)、Zは高さ方向である。このように、高圧洗浄水9を洗浄装置5の移動方向前向きに噴射させるので、剥離した異物を洗浄後のケーブル管1の管内に残さず管外へ排出することができる。また、高圧洗浄水9を管軸方向へ斜め放射状に噴射するので、ケーブル管1の内周面の略全面を効果的に洗浄することができる。
【0019】
上述したように、洗浄装置5は、砲弾状の本体が2つに分割された構造となっており、それぞれに空洞水路5dを設ける構造となっている。図8は、洗浄装置5を側面から見た模式図であり、図9は、洗浄装置5を真上から見た模式図である。空洞水路5dのそれぞれには給水ホース6が接続され、2つの空洞水路5dに給水可能としている。図8、図9において、矢印は高圧洗浄水9の移動方向および噴射方向を示している。従来の洗浄装置は、分割した片方の洗浄装置のいずれかに一本の給水用ホースが接続されていたため、本体結合時に、片側への給水を行うための連絡通路の構造を有していたが、本発明の洗浄装置ではそれが不要となる。なお、上述した実施例において、装置本体の分割数は2としているが、2以上であってもよい。
【0020】
更に、洗浄装置5は、洗浄装置5本体の外周面に、洗浄装置5本体をケーブル管1の内周面から離した状態で支持するためのそり部5eを備える。洗浄装置5本体の外周面にそり部5eを備えることで、洗浄装置5本体をケーブル管1内の中央部に安定させる(センタリング機能)ことが可能であり、洗浄装置5本体の外周をケーブル管1の内周面から離した状態で支持することで、安定した洗浄を可能とするものである。
【0021】
従来の洗浄装置と本発明の洗浄装置の1分間あたりの流量、流速について実験した結果を以下に示す。実験は、1分間、水を噴射し、そのとき噴射された重量を計測することにより流量を測定した。なお、実験は各条件の下に3回行い、得られた流量の平均値、及び孔の断面積(1個当たりの噴射孔の孔断面積×孔数)から以下の式を用いて流速を計算し、評価した。
【数1】

【0022】
この結果から、従来の洗浄装置に比べると、本発明の洗浄装置の流速は、従来の洗浄装置と同等以上となっており、ケーブル管内の異物等を除去する能力、すなわち洗浄能力は、従来の洗浄装置と同等以上の性能を担保できることがわかる。
【表1】

【0023】
上述したように、本発明の洗浄装置は、本体形状を砲弾型とし、小型化を図ったことで、今まで施工不可能であった内径の小さい管路に対しても、管にケーブルを挿通したまま、洗浄能力を担保しつつ、管内に付着する異物を除去することができる。また、噴射孔の減数化、連通部材の廃止によりメンテナンス性が向上するとともに、小型化により施工時の牽引張力も低減できたため、従来のような大型ポンプ車を必要とせず、施工性向上・コスト低減を図ることができる。
【0024】
なお、上述した実施の形態は、本発明の洗浄装置が、管内径79mm以下のケーブル管でも管内を洗浄できることを示したものであり、本発明の洗浄装置は、これに限らず、管内径79mmよりも大きいケーブル管においても管内を洗浄できるものである。
【符号の説明】
【0025】
1 ケーブル管
2,3 マンホール
4 ケーブル
5 洗浄装置
5a ケーブル通し穴
5b 噴射孔
5c 牽引穴
5d 空洞水路
5e そり部
5f,5g 分割体
6 給水ホース
7 牽引ロープ
9 高圧洗浄水
16 給水車
17 電動ウィンチ
19 反力受台
20 ポンプ
21 沈殿槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状体を挿通した管の内部を移動しながら高圧洗浄流体の噴射によって管内を洗浄する洗浄装置において、
内周面にて前記線状体を挿通状態で保持する砲弾状本体を備えるとともに、前記砲弾状本体の外周面に、高圧洗浄流体を前記管の内周面に広角状に噴き付ける複数の噴射孔を有することを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記砲弾状本体は、2以上の分割体からなり、
前記分割体のそれぞれは、前記複数の噴射孔が連通する空洞水路を有することを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記噴射孔は、前記高圧洗浄流体を砲弾状本体の移動方向前向きに噴射することを特徴とする請求項1又は2に記載の洗浄装置。
【請求項4】
前記噴射孔は、着脱可能な噴射ノズルを有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の洗浄装置。
【請求項5】
前記砲弾状本体の外周面に、砲弾状本体を前記管の内周面から離した状態で支持するためのそり部を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の洗浄装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2013−22566(P2013−22566A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162480(P2011−162480)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】