説明

洗浄装置

【課題】簡易な構成で測定値に影響を与えることなく、洗浄時に砂や結晶等の固形物がセンサに衝突するのを防いで、その破損を防止することができる水質検出器の洗浄装置を提供する。
【解決手段】センサホルダ11の下端部に連結された保護筒12と、保護筒12に固着されている洗浄部14と、洗浄部14の内部に配置されたエア流路15と、エア流路15と連通して保護筒12の内周面に配置された洗浄エア噴出口16とを具備する洗浄装置とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水質検出器のセンサに付着した汚濁物質を圧縮気体の作用によって除去するための洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
河川水や湖沼水、工業用水の水質を連続的に測定するpH計、ORP計等の水質検出器において、試料水に浸漬されているセンサに試料水中の各種汚濁物質が付着すると、検出能力が低下し、分析精度が低下してくる。
このため、例えば特許文献1や特許文献2には、試料水に浸漬された洗浄エア噴出口からセンサに向けて圧縮気体を間欠的に噴射させることにより、圧縮気体を試料水中で急激に膨張させて気泡を含んだ高速水流を発生させ、この水流の勢いと、センサに付着した汚濁物質に試料水及び気泡の境界部が無秩序に接触されることによる汚濁物質自体の振動との相乗作用により、汚濁物質を効率よく除去してセンサが洗浄される洗浄装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭61−16523
【特許文献2】特開2007−190535
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、試料水には砂や結晶等の固形物が含まれていることがしばしばあり、また、従来の洗浄装置は、多くの水質センサの感応面が下向きであるため、感応面全体を効率よく洗浄することができるようにエア流路の開口部(洗浄エア噴出口)が感応面に対向して真上を向くように構成されている。このため、試料水中の砂や結晶等の固形物がエア流路内に落ちて、そこに滞留し、洗浄時に洗浄エア噴出口から圧縮気体と共に噴射されてセンサに高速で衝突してセンサを破損してしまうという問題があった。
【0005】
一方、従来から、洗浄動作を行っていない期間に洗浄エア噴出口から微量の空気を流出させてエア流路内に上記固形物を溜めない工夫も行われてきたが、センサの真下に洗浄エア噴出口が配置されているため、センサが常に空気に曝されて、指示がふらつくなど測定値に影響を与えるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明の解決課題は、簡易な構成で測定値に影響を与えることなく、洗浄時に砂や結晶等の固形物がセンサに衝突するのを防いで、その破損を防止することができる水質検出器の洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を達成するため、本発明は以下の構成を採用した。
[1]センサとセンサホルダと保護筒とからなる水質検出器の、試料水中に浸漬された洗浄対象部位に付着した汚濁物質を、試料水中の洗浄エア噴出口から噴射させた圧縮気体の作用により除去する洗浄装置であって、
前記保護筒の内周面に前記洗浄エア噴出口を備えたことを特徴とする洗浄装置。
[2]前記洗浄エア噴出口は、
前記水質検出器の洗浄対象部位の下端よりも下方に位置することを特徴とする[1]に記載の洗浄装置。
[3]前記洗浄エア噴出口に連通するエア流路は、
略L字状に屈曲し、
前記屈曲部分の内角は、90度以上180度以下であることを特徴とする[1]または[2]に記載の洗浄装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、洗浄エア噴出口を保護筒の内周面に配置し、洗浄エア噴出口が上方向(水面方向)に向かって開口しないようにしたので、砂や結晶等の固形物がエア流路内に侵入し難く、かつ、溜まり難い。このため、固形物の衝突による洗浄対象部位(センサ)の破損を防止することができる。また、エア流路内への固形物の侵入を防止するために行われる洗浄動作を行っていない期間にエア流路から微量の空気を流出させ、センサを常に空気に曝す動作をする必要がなくなる。これにより、簡易な構成にすることができ、また、指示のふらつきなど測定値に影響を与えることもなくなる。
【0009】
さらに、本発明の構成によれば、圧縮気体が試料水中で急激に膨張することにより生ずる気泡を含んだ高速水流の勢いと、洗浄対象部位(センサ)に付着した汚濁物質に試料水および気泡の境界部が無秩序に接触することによる汚濁物質自体の振動との相乗作用により、汚濁物質が効率よく除去され洗浄されるため、洗浄対象部位に直接圧縮気体が噴射されなくとも、十分な洗浄力を得ることができる。したがって、洗浄エア噴出口が水質検出器の洗浄対象部位の下端よりも下方に位置することにより、十分な洗浄力を確保しつつ、エア流路内に侵入した固形物が、洗浄対象部位(センサ)に向けて噴射されることがなく、固形物の衝突による洗浄対象部位(センサ)の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態が適用される水質検出器の主要部を示す斜視図である。
【図2】図1に示す保護筒、洗浄部等の縦断面図及び底面図である。
【図3】図2に示す保護筒、洗浄部等の構成を模式的に示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態が適用される水質検出器としてのpH検出器の主要部を示す斜視図である。図1において、10は試料水に浸漬される水質検出器、11は円筒状のセンサホルダ、12はセンサホルダ11の下端部に連結された保護筒、13は保護筒12内に配置されたガラス電極、比較電極等からなるセンサ、14は後述するエア流路15および洗浄エア噴出口16等が形成されたセンサ13を洗浄するための洗浄部、17は洗浄部14に圧縮気体を供給するための気体供給チューブである。
【0012】
気体供給チューブ17は、図示しない圧縮気体供給部と接続され、圧縮気体が供給されている。この圧縮気体供給部は、例えば、エアタンクと、エアタンクに接続された気体供給チューブ接続口と、エアタンクと気体供給チューブ接続口の間に位置する電磁弁からなるものである。気体供給チューブ接続口は、気体供給チューブ17と接続され、電磁弁が開くことにより圧縮気体が、気体供給チューブ17を介して、洗浄部14に供給される。
【0013】
センサ13は、センサホルダ11の下端部に図示しないゴムパッキンにより保持されている。このゴムパッキンはセンサホルダ11の下端部を水密に封止し、保護筒12の上部に設けられたフランジ部により押さえられ、保護筒12をセンサホルダ11に螺合することにより外れないようにされている。
センサ13の取り付け位置は、ゴムパッキンによる保持位置を上下に移動させることにより調節することができるようになっている。
【0014】
図2(a)は保護筒12、洗浄部14等の縦断面図、図2(b)は同じく底面図である。これらの図において、14aは気体供給チューブ17の下端部が連結される連結部、15は連結部14aに連通して圧縮気体が供給されるエア流路、16はエア流路15に連通して保護筒の内周面に開口された圧縮気体が噴出される洗浄エア噴出口を示している。
【0015】
保護筒12は円筒状の部材からなり、複数の切り欠き部分が設けられることにより、試料水の置き換わりが容易に行われるようになっている。そして、センサを囲むように配置された切り欠き部分以外の部分がセンサの保護部であり、設置時や保守点検時の取り扱いミスにより何かにぶつかるなどしてセンサが破損することを防止できるようになっている。
【0016】
保護筒12の保護部のうち強度のある幅広部分に、洗浄部14であるブロック状の部材が溶接されて固定されている。ブロック状の部材が固着されている保護筒12の保護部の内周面に洗浄エア噴出口16が、ブロック状の部材の内部にエア流路15が、それぞれ形成されている。エア流路15と連通する連結部14aは、気体供給チューブ17の下端部と連結されており、気体供給チューブ17を介して洗浄部14に供給される圧縮気体は、連結部14aおよびエア流路15を介して洗浄エア噴出口16に供給され、洗浄エア噴出口16からセンサ13に向けて噴出される。
【0017】
洗浄部14は、例えば、保護筒12にブロック状の部材を溶接した後に、保護筒12の内周面からドリルで穴あけ加工をすることにより、洗浄エア噴出口16とエア流路15を形成した後、ブロック状の部材の上部から穴あけ加工をすることにより、連結部14aとエア流路15を形成して作製することができる。
ただし、洗浄部14はブロック状の部材に限られるものではなく、例えば、エルボ、略L字状のチューブ、継手等の一般に市販されているものを用いてもかまわない。
【0018】
図3は保護筒12、センサ13および洗浄部14の構成を模式的に示す要部断面図である。図3の(a)と(b)とでは、エア流路15の形状が異なる。図3(a)の構成はセンサ13に対向して、エア流路15が略垂直に伸びているのに対し、図3(b)の構成はエア流路15の屈曲部分の内角が大きくなっており、斜め下方に向かって伸びた先端に洗浄エア噴出口16が形成されている。
【0019】
次に、本実施形態の動作を説明する。
図1、2および3に示すように、圧縮気体は、気体供給チューブ17を介して、洗浄部14およびエア流路15に供給され、最終的に洗浄エア噴出口16からセンサ13(洗浄対象部位)に向けて噴出される。
圧縮気体は、試料水中で急激に膨張し、気泡を含んだ高速水流を発生させる。この高速水流の勢いと、センサ13に付着した汚濁物質に試料水および気泡の境界部が無秩序に接触することによる汚濁物質自体の振動との相乗作用により、汚濁物質が効率よく除去され、センサ13が洗浄される。したがって、圧縮気体が直接センサ13の洗浄対象部位に向けて噴射されなくとも十分な洗浄力を得ることができる。すなわち、洗浄エア噴出口16は、センサ13の洗浄対象部位の真横に配置されている必要はない。
【0020】
圧縮気体は、エアタンクに充填された空気や計装エアが所定の圧力となるように調整されたものである。洗浄動作は、圧縮気体の供給が所定のシーケンスに従って電磁弁等の開閉を行うタイマ機能を有するコントローラーにより制御されることによって、所定の洗浄周期で行われるようになっている。
【0021】
図2に示すように、洗浄エア噴出口16は保護筒12の内周面に位置している。このため、試料水中の固形物は、洗浄部14のエア流路15内に侵入し難く、かつ、溜り難い。
したがって、圧縮気体が洗浄エア噴出口16から噴出される際に、固形物がセンサ13に向けて噴射されることがなく、固形物の衝突による洗浄対象部位の破損を防止することができる。
【0022】
また、図3(a)に示すように、洗浄部14のエア流路15内に固形物が侵入し、溜ったとしても、洗浄エア噴出口16は、センサ13の下端よりも下方に位置しているため、洗浄部14のエア流路15内に侵入している上記固形物が高速でセンサ13に向けて直接、噴射されることがなく、固形物の衝突によるセンサ13の破損を防止することができる。
【0023】
さらに、センサ13のゴムパッキンによる保持位置を下方に移動させ、センサ13がセンサホルダ11の内部に押し込まれるようにすると、センサ13の取り付け位置を洗浄エア噴出口16よりもさらに上方に移動させることができる。このため、洗浄エア噴出口16から噴出される圧縮気体は相対的にセンサ13のさらに下方に噴出させることができる。
これにより、さらにセンサ13に固形物が高速で衝突する確率を減少させ、センサ13の破損を防止することができる。
ただし、センサ13をあまり上方に移動しすぎると、洗浄効果を損なうので、例えば、洗浄エア噴出口13の上端部よりも5mm程度上方にセンサ13の下端部が位置する程度にとどめるよう調節することが好ましい。
【0024】
図3(b)の構成は、前述のとおり、エア流路15の屈曲部分の内角が大きくなっており、斜め下方に向かって伸びた先端に洗浄エア噴出口16を有している。そのため、図3(b)の実施形態は、図3(a)実施形態に比べて固形物が洗浄部14のエア流路15にさらに侵入し難く、かつ、溜り難く、洗浄エア噴出口16から噴出される圧縮気体は相対的にセンサ13のさらに下方に噴出させることができる。
これにより、図3(b)の実施形態は、固形物がセンサ13に向けて相対的にさらに直接、かつ、噴射される確率を減少させ、センサ13の破損を防止することができる。
【0025】
上記実施形態によれば、従来方式の保護筒や洗浄部等の部分を交換するだけで、本発明の方式に置き換えることができる。
【0026】
なお、洗浄部14に侵入および溜り得るものは、上記固形物のみならず、例えば、ヘドロ等の異物(不溶性・難溶性の物質)も含まれるが、これに限られるものではない。
【符号の説明】
【0027】
10:水質検出器
11:センサホルダ
12:保護筒
13:センサ
14:洗浄部
14a:連結部
15:エア流路
16:洗浄エア噴出口
17:気体供給チューブ



【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサとセンサホルダと保護筒とからなる水質検出器の、試料水中に浸漬された洗浄対象部位に付着した汚濁物質を、試料水中の洗浄エア噴出口から噴射させた圧縮気体の作用により除去する洗浄装置であって、
前記保護筒の内周面に前記洗浄エア噴出口を備えたことを特徴とする洗浄装置。
【請求項2】
前記洗浄エア噴出口は、
前記水質検出器の洗浄対象部位の下端よりも下方に位置することを特徴とする請求項1に記載の洗浄装置。
【請求項3】
前記洗浄エア噴出口に連通するエア流路は、
略L字状に屈曲し、
前記屈曲部分の内角は、90度以上180度以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の洗浄装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−31792(P2013−31792A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168267(P2011−168267)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)
【Fターム(参考)】