説明

洗浄除菌剤組成物

【課題】優れた洗浄力および除菌力を有し、分離や白濁などが生じることなく、安定性に優れた洗浄除菌剤組成物を低コストで提供すること。
【解決手段】(A)ジ長鎖アルキルジ短鎖アルキルアンモニウム塩1重量部、(B)エチレンオキサイド平均付加モル数が1.5〜2.4である陰イオン界面活性剤0.08〜0.5重量部、(C)エチレンオキサイド平均付加モル数が2.5〜3.4である陰イオン界面活性剤0.125〜0.5重量部、(D)HLB値が3.5〜10.5の非イオン界面活性剤1〜2.5重量部、(E)HLB値が11〜15の非イオン界面活性剤3〜6.5重量部、および、(F)エタノール0.1〜3重量部を含有する洗浄除菌剤組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に食品工場等の床、壁、器具及び設備等の洗浄および除菌に用いる洗浄除菌剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般家庭向けの台所用洗剤などでは、食器に付着した油汚れに対する洗浄力が重視されることから、洗浄力が高い陰イオン界面活性剤を主剤とする中性洗剤が一般的に用いられている。
【0003】
一方、食品製造工場、飲食店等の厨房、スーパー内の加工作業場などの食品を扱う現場では、器具、設備等の洗浄以外に、除菌も行う必要があり、従来より除菌力を有する塩化ベンザルコニウムやジデシルジメチルアンモニウムクロライド等の陽イオン界面活性剤が利用されている。
【0004】
また、洗浄と除菌を同時に行うために、陽イオン界面活性剤と非イオン界面活性剤や両性界面活性剤を組み合わせた洗浄除菌剤も知られている。
【0005】
しかしながら、陽イオン界面活性剤は除菌力を有するものの洗浄力が不十分である上、洗浄力に優れる陰イオン界面活性剤を併用すると分離や白濁が起こり、除菌効果および洗浄効果が著しく低下することから、洗浄と除菌は2つの工程に分けて行う必要があった。
【0006】
このような問題点を解決するために、これまでにも洗浄と除菌を同時に行うことを目的とした洗浄除菌剤が提案されている。
【0007】
特許文献1には、陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、安息香酸アルカリ金属塩および水を特定の割合で配合した液体洗濯用洗剤組成物が提案されている。
【0008】
特許文献2には、水、もしくは水と水溶性溶剤とからなる液体(a)に、アニオン性界面活性剤(b)と、カチオン性界面活性剤(c)とを添加し、可溶化剤(d)の存在下で攪拌することにより得られた可溶化溶液を含有する液体洗浄剤組成物が提案されている。
【0009】
特許文献3には、ヘキサデシルリン酸ベンザルコニウムからなるカチオン系殺菌剤、該殺菌剤の0.5〜5倍モルの金属キレート剤、非イオン性界面活性剤及び/又は両性界面活性剤、アニオン界面活性剤を含有する殺菌消毒洗浄剤組成物が提案されている。
【0010】
特許文献4には、特定のジアルキルジメチルアンモニウム塩、アニオン界面活性剤及び/または両性界面活性剤を含有する殺菌性組成物が提案されている。
【0011】
特許文献5には、(A)アルキル硫酸塩およびアルカンスルホン酸塩から選ばれるアニオン界面活性剤の少なくとも一種、(B)(b1)長鎖アルキルジ短鎖アルキルハイドロキシエチルアンモニウム塩と、(b2)長鎖アルキルジ短鎖アルキルハイドロキシエチルアンモニウム塩以外のカチオン界面活性剤の少なくとも一種とからなるカチオン界面活性剤、(C)金属イオン封鎖剤および(D)水を含有し、組成物中における(A)と(b1)の質量比が(A):(b1)=1:2〜1:7であることを特徴とする液体殺菌洗浄剤組成物が提案されている。
【0012】
しかしながら、上記提案によっても洗浄効果および除菌効果の両方において十分な効果が得られていなかった。特に洗浄力においては、陰イオン界面活性剤を主剤とする中性洗剤に劣り、十分な洗浄力とは言い難いものであった。また、これらの洗浄除菌剤は、陽イオン界面活性剤と陰イオン界面活性剤の併用による除菌効果の低下を抑制するために、安息香酸アルカリ金属塩、可溶化剤、金属キレート剤、両性界面活性剤を添加しているため、混合性、生分解性およびコストの点で問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平1−197598号公報
【特許文献2】特開2002−129189号公報
【特許文献3】特許第3251729号公報
【特許文献4】特開2002−212007号公報
【特許文献5】特許第4051269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、優れた洗浄力および除菌力を有し、分離や白濁などが生じることなく、安定性に優れた洗浄除菌剤組成物を低コストで提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定の四級アンモニウム塩に、特定の陰イオン界面活性剤、特定の非イオン界面活性剤およびエタノールを特定の割合で含有する組成物が上記課題を解決することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0016】
すなわち本発明は、
(A)ジ長鎖アルキルジ短鎖アルキルアンモニウム塩1重量部、
(B)エチレンオキサイド平均付加モル数が1.5〜2.4である陰イオン界面活性剤0.08〜0.5重量部、
(C)エチレンオキサイド平均付加モル数が2.5〜3.4である陰イオン界面活性剤0.125〜0.5重量部、
(D)HLB値が3.5〜10.5の非イオン界面活性剤1〜2.5重量部、
(E)HLB値が11〜15の非イオン界面活性剤3〜6.5重量部、および、
(F)エタノール0.1〜3重量部、
を含有する洗浄除菌剤組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明において、(A)ジ長鎖アルキルジ短鎖アルキルアンモニウム塩としては、下記一般式(1)で示される第4級アンモニウム塩が挙げられる。
【化1】

(1)
[式中R、Rは、同一であっても異なっていてもよい、炭素原子数8〜18の長鎖アルキル基を表し、RおよびRは、同一であっても異なっていてもよい、炭素原子数1〜4の短鎖アルキル基を表す]。
【0018】
およびRで表される長鎖アルキル基は、炭素原子数8〜18のアルキル基であり、例えば、2−エチルヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、オクタデシル等が挙げられ、好ましくは炭素原子数8〜10のアルキル基である。RおよびRで表される短鎖アルキル基は、炭素原子数1〜4のアルキル基であり、例えば、メチル基およびエチル基が挙げられ、特にメチル基が好ましい。
【0019】
本発明において、(A)ジ長鎖アルキルジ短鎖アルキルアンモニウム塩は、長鎖アルキル基および短鎖アルキル基をそれぞれ1分子中に2個有している必要がある。長鎖アルキル基の炭素原子数が8より小さくても18より大きくても十分な除菌力を発現しない。
【0020】
一般式(1)において、対イオンであるアニオン(X)は特に限定されないが、ハロゲン(Cl,I,Brなど)、無機酸対イオン(HSO,NO,HPOなど)、及び有機酸対イオン(CHOSO,CSO,CHCO,CHSO,CHSOなど)が挙げられる。
【0021】
ジ長鎖アルキルジ短鎖アルキルアンモニウム塩の具体例としては、ジオクチルジメチルアンモニウムクロライド、オクチルデシルジメチルアンモニウムクロライド及びジデシルジメチルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。これらのうち好ましいものはジデシルジメチルアンモニウムクロライドである。
【0022】
本発明の洗浄除菌剤組成物には、陰イオン界面活性剤として、(B)エチレンオキサイド平均付加モル数が1.5〜2.4である陰イオン界面活性剤、および、(C)エチレンオキサイド平均付加モル数が2.5〜3.4である陰イオン界面活性剤を配合する。
【0023】
本発明において使用する、(B)および(C)の陰イオン界面活性剤は、それぞれ、複数種類のエチレンオキサイドが付加された陰イオン界面活性剤の混合物であってよく、混合物を構成する全陰イオン界面活性剤の、エチレンオキサイド(CHCHO)付加モル数(1分子の陰イオン界面活性剤あたりのエチレンオキサイドの付加分子数)の平均値が、それぞれ、1.5〜2.4および2.5〜3.4の範囲のものである。
【0024】
(B)エチレンオキサイド平均付加モル数が1.5〜2.4である陰イオン界面活性剤としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。
・一般式(2)で示されるスルホサクシネート型陰イオン界面活性剤:
【化2】

(2)
[式中Rは炭素原子数8〜18のアルキル基を表し、Yはアルカリ金属イオンンまたはトリエタノールアンモニウムイオンを表し、nは、1〜15の整数である];
・一般式(3)で示されるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩;
【化3】

(3)
[式中Rは炭素原子数8〜18のアルキル基を表し、Yはアルカリ金属イオンまたはトリエタノールアンモニウムイオンを表し、nは、1〜15の整数である];および、
・一般式(4)で示されるエーテルカルボン酸型陰イオン界面活性剤:
【化4】

(4)
[式中Rは炭素原子数8〜18のアルキル基を表し、nは、1〜15の整数である]。
【0025】
一般式(2)で示されるスルホサクシネート型陰イオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸二ナトリウム等が挙げられ、一般式(3)で示されるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレントリデシルエーテル硫酸ナトリウム等が挙げられ、一般式(4)で示されるエーテルカルボン酸型陰イオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンステアリルエーテル酢酸等が挙げられる。
【0026】
これら(B)エチレンオキサイド平均付加モル数が1.5〜2.4である陰イオン界面活性剤の中でも、一般式(2)で示されるスルホサクシネート型陰イオン界面活性剤、および一般式(3)で示されるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩が好ましく、なかでも、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸二ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムが好ましい。これら(B)エチレンオキサイド平均付加モル数が1.5〜2.4である陰イオン界面活性剤は2種以上を用いてもよい。好ましくは、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸二ナトリウムは、アルキル基の炭素原子数が12〜14の混合物であるものである。
【0027】
(B)エチレンオキサイド平均付加モル数が1.5〜2.4である陰イオン界面活性剤の配合割合としては、ジ長鎖アルキルジ短鎖アルキルアンモニウム塩1重量部に対して、0.08〜0.5重量部、好ましくは0.09〜0.4重量部、より好ましくは0.1〜0.3重量部である。(B)エチレンオキサイド平均付加モル数が1.5〜2.4である陰イオン界面活性剤の割合が0.08重量部未満の場合、油汚れが再付着する傾向があり、0.5重量部を超える場合、除菌効果が低下する傾向がある。
【0028】
(C)エチレンオキサイド平均付加モル数が2.5〜3.4である陰イオン界面活性剤としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。
・一般式(5)で示されるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩;
【化5】

(5)
[式中Rは炭素原子数8〜18のアルキル基を表し、Yはアルカリ金属イオンまたはトリエタノールアンモニウムイオンを表し、nは、1〜15の整数である];および、
・一般式(6)で示されるエーテルカルボン酸型陰イオン界面活性剤;
【化6】

(6)
[式中Rは炭素原子数8〜18のアルキル基を表し、Yはアルカリ金属イオンまたは水素イオンを表し、nは、1〜15の整数である]。
【0029】
一般式(5)で示されるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等が挙げられ、一般式(6)で示されるエーテルカルボン酸型陰イオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム、ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸等が挙げられる。
【0030】
これら(C)エチレンオキサイド平均付加モル数が2.5〜3.4である陰イオン界面活性剤としては、一般式(5)で示されるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩および一般式(6)で示されるエーテルカルボン酸型陰イオン界面活性剤が好ましく、なかでも、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリル硫酸トリエタノールアミンが好ましい。これら(C)エチレンオキサイド平均付加モル数が2.5〜3.4である陰イオン界面活性剤は2種以上を用いてもよい。
【0031】
(C)エチレンオキサイド平均付加モル数が2.5〜3.4である陰イオン界面活性剤の配合割合としては、ジ長鎖アルキルジ短鎖アルキルアンモニウム塩1重量部に対して、0.125〜0.5重量部、好ましくは0.13〜0.45重量部、より好ましくは0.14〜0.4重量部である。(C)エチレンオキサイド平均付加モル数が2.5〜3.4である陰イオン界面活性剤の割合が0.125重量部未満の場合、洗浄力が低下する傾向があり、0.5重量部を超える場合、除菌力が低下する傾向がある。
【0032】
また、本発明の洗浄除菌剤組成物は、さらに(D)HLB値が3.5〜10.5の非イオン界面活性剤および(E)HLB値が11〜15の非イオン界面活性剤を含有する。好ましくは、(D)HLB値が3.5〜10.5の非イオン界面活性剤のHLB値は4〜10であり、(E)HLB値が11〜15の非イオン界面活性剤のHLB値は12〜14である。ここで、HLB値(Hydrophile Lipophile Balance)とは、親水性と疎水性のバランスを示す尺度であり、一般にグリフィン法やデイビス法により求められるが、本発明におけるHLB値はグリフィン法により求めたものをいう。
【0033】
(D)HLB値が3.5〜10.5の非イオン界面活性剤としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。
・一般式(7)で示される脂肪酸アルカノールアミド;
【化7】

(7)
[式中R10はヤシ油脂肪酸残基、または炭素原子数8〜18のアルキル基を表す];
・一般式(8)で示されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル;
【化8】

(8)
[式中R11は、炭素原子数8〜18のアルキル基を表し、nは、2〜8の整数、mは、1〜15の整数である];
・一般式(9)で示されるポリオキシエチレン脂肪酸エステル;
【化9】

(9)
[式中R12は、炭素原子数8〜18のアルキル基を表し、nは、1〜15の整数である];および、
・一般式(10)で示されるポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックポリマー;
【化10】

(10)
[式中n1は1〜6の整数、n2は1〜6の整数、mは25〜50の整数である]。
【0034】
一般式(7)で示される脂肪酸アルカノールアミドとしては、例えば、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、ラウリン酸ジエタノールアミド等が挙げられ、一般式(8)で示されるポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等が挙げられ、一般式(9)で示されるポリオキシエチレン脂肪酸エステルとしては、例えば、ジラウリン酸ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0035】
その他の(D)HLB値が3.5〜10.5の非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ソルビタンモノ脂肪酸エステル、ソルビタントリ脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0036】
これら(D)HLB値が3.5〜10.5の非イオン界面活性剤の中でも一般式(7)で示される脂肪酸アルカノールアミド、および一般式(10)で示されるポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックポリマーが好ましく、なかでも、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックポリマーが好ましい。これら(D)HLB値が3.5〜10.5の非イオン界面活性剤は2種以上を用いてもよい。好ましくは、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックポリマーは、一般式(10)において、n1が5、n2が5、mが30のものである。
【0037】
(D)HLB値が3.5〜10.5の非イオン界面活性剤の配合割合としては、ジ長鎖アルキルジ短鎖アルキルアンモニウム塩1重量部に対して、1〜2.5重量部、好ましくは1.3〜2.2重量部、特に好ましくは1.5〜2重量部である。(D)HLB値が3.5〜10.5の非イオン界面活性剤の割合が1重量部未満の場合、洗浄力が低下する傾向があり、2.5重量部を超える場合、混合後、分離や白濁が生じる傾向がある。
【0038】
(E)HLB値が11〜15の非イオン界面活性剤としては、例えば、以下のようなものが挙げられる。
・一般式(11)で示されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル;
【化11】

(11)
[式中R13は、炭素原子数8〜18のアルキル基を表し、nは2〜8の整数、mは1〜15の整数である];および、
・一般式(12)で示されるアルキルグルコシド;
【化12】

(12)
[式中R14は、炭素原子数8〜18のアルキル基を表す]。
【0039】
一般式(11)で示されるポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテルポリオキシプロピレンアルキルエーテル等が挙げられ、一般式(12)で示されるアルキルグルコシドとしては、例えば、デシルグルコシド等が挙げられる。
【0040】
その他の(E)HLB値が11〜15の非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレン脂肪酸モノエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0041】
これら(E)HLB値が11〜15の非イオン界面活性剤の中でも、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、アルキルグルコシドが好ましく、両者の併用がより好ましい。これら(E)HLB値が11〜15の非イオン界面活性剤は2種以上を用いてもよい。好ましくは、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは一般式(11)において、R13が炭素原子数12〜13のアルキル基であり、nが2、mが14のものである。好ましくは、アルキルグルコシドは、一般式(12)において、R14が炭素原子数10のアルキル基であるものである。
【0042】
(E)HLB値が11〜15の非イオン界面活性剤の配合割合としては、ジ長鎖アルキルジ短鎖アルキルアンモニウム塩1重量部に対して、3〜6.5重量部、好ましくは3.5〜6重量部、特に好ましくは4〜5.5重量部である。(E)HLB値が11〜15の非イオン界面活性剤の割合が3重量部未満の場合、混合後、分離や白濁が生じる傾向があり、6.5重量部を超える場合、すすぎ性、泡切れが悪くなる傾向がある。
【0043】
本発明の洗浄除菌剤組成物は上記界面活性剤成分に加え、さらに(F)エタノールを含有する。エタノールを含有させることにより洗浄除菌剤組成物の安定性が改善される。エタノールとしては工業用エタノール、変性アルコールのいずれも使用可能である。
【0044】
(F)エタノールの配合割合としてはジ長鎖アルキルジ短鎖アルキルアンモニウム塩1重量部に対して0.1〜3重量部、好ましくは0.15〜2.5重量部、さらに好ましくは0.2〜2重量部である。(F)エタノールの割合が0.1重量部未満の場合、保管温度や保管期間によっては、凝集や析出が発生し、安定性が悪化する傾向がある。また、(F)エタノールの割合が3重量部を超える場合、アルコール臭が強くなり、使用時に不快に感じる傾向がある。
【0045】
本発明の洗浄除菌剤組成物は、ジ長鎖アルキルジ短鎖アルキルアンモニウム塩が水溶液中0.5〜10重量%、好ましくは1〜6重量%、さらに好ましくは2〜4重量%となる濃度で提供する。かかる水溶液を希釈せずに使用することも可能であるが、希釈して使用する場合は、使用時にジ長鎖アルキルジ短鎖アルキルアンモニウム塩が80〜10000ppm、好ましくは120〜1000ppm、より好ましくは150〜640ppmとなるように水で希釈して使用する。
【0046】
例えば、本発明の洗浄除菌剤組成物をスポンジなどに直接付着せしめて対象の洗浄・除菌を行う場合は、かかる水溶液を希釈せず使用すればよく、本発明の洗浄除菌剤組成物に対象をつけ込んで洗浄・除菌を行う場合は、かかる水溶液を希釈して使用するとよい。
【0047】
本発明の洗浄除菌剤組成物には所望により上記以外の成分を含めてもよいが、洗浄除菌成分は、実質的に、水、およびジ長鎖アルキルジ短鎖アルキルアンモニウム塩(即ち(A))、陰イオン界面活性剤(即ち(B)および(C))、非イオン界面活性剤(即ち(D)および(E))およびエタノール(即ち(F))のみからなるものが好ましい。
【0048】
その他、必要により含有させることのできる他の添加剤としては、例えば、トリポリリン酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、硫酸ナトリウムなどのアルカリ性ビルダー、カルボキシメチルセルロース等の有機ビルダー、着色料、香料が挙げられる。これら他の添加剤の割合は、通常、ジ長鎖アルキルジ短鎖アルキルアンモニウム塩1重量部に対して4重量部以下である。他の添加剤の割合が4重量部を超えると、洗浄力や除菌力が低下する傾向がある。
【0049】
本発明の洗浄除菌剤組成物は食品工場、病院、畜舎、ホテル、レストラン、学校、店舗等の床や壁を洗浄および除菌する環境用洗浄除菌剤として有用である。また、食品工場等で使用される食品製造・加工機器や器具の洗浄および除菌にも有用である。食品製造・加工機器としては、各種の攪拌機、混合機、ホモジナイザー、自動カッター等が挙げられる。器具としては、まな板、包丁、食器、食品用容器、布巾等が挙げられる。
【0050】
本発明の洗浄除菌剤組成物は優れた洗浄力および除菌力を有し、長期間保管した場合でも濁りや分離等を起こさず、液性が安定している。また、両性界面活性剤等の高価な成分を必要としないため低コストに製造することが可能となる。
【0051】
以下、実施例により本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0052】
実施例1〜2および比較例1〜6
洗浄力試験
(方法)
表1に示す洗浄除菌剤組成物を用い、温度30℃、洗浄時間3分間、すすぎ時間1分間の試験条件でリーナッツ法(JIS−K3362)により洗浄力試験を行った。試験は6片のモデル汚れガラス片に残存する汚れの程度を目視により、下記基準によって判定した。尚、混合直後に白濁したものについては、その時点で試験を中止し、その後の洗浄力試験は行わなかった。実施例および比較例で使用したジ長鎖アルキルジ短鎖アルキルアンモニウム塩(以下、四級アンモニウム塩と呼ぶ)、陰イオン界面活性剤および非イオン界面活性剤は下記の通りである。また、表中の数値はwt%を表す。
【0053】
判定基準 ○:汚れが殆んど残っていない
×:明らかに汚れが残っている
【0054】
四級アンモニウム塩:ジデシルジメチルアンモニウムクロライド
陰イオン界面活性剤I(EO=2):ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸二ナトリウム
陰イオン界面活性剤II(EO=3):ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン
陰イオン界面活性剤III(EO=5):スルホコハク酸ポリオキシエチレンラウロイルエタノールアミド二ナトリウム
陰イオン界面活性剤IV(EO=2):ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム
陰イオン界面活性剤V(EO=4):ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン
陰イオン界面活性剤VI(EO=10):ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム
陰イオン界面活性剤VII(EO=3):ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム
陰イオン界面活性剤VIII(EO=3):ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム
※上記、「EO」はエチレンオキサイド平均付加モル数を表す。
【0055】
非イオン界面活性剤I(HLB=9〜10):ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド
非イオン界面活性剤II(HLB=13.1〜13.2):ポリオキシエチレンアルキルエーテル
非イオン界面活性剤III(HLB=12〜12.2):アルキルグルコシド
非イオン界面活性剤IV(HLB=13.8〜14):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル
非イオン界面活性剤V(HLB=8〜8.2):ポリオキシアルキレンアルキルエーテル
非イオン界面活性剤VI(HLB=8〜8.2):ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー
非イオン界面活性剤VII(HLB=4〜4.3):ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー
非イオン界面活性剤VIII(HLB=13.8〜14):ポリオキシエチレン脂肪酸モノエステル
※上記、「HLB」はグリフィン法によって算出されたHLB値を表す。
【0056】
(結果)
結果を表1に示す。本発明の洗浄除菌剤組成物(実施例1および2)は、混合時、白濁や分離等を起こさず安定しており、試験に用いたモデル汚れガラス片の汚れが殆んど残っておらず、洗浄力に優れていた。一方、他の洗浄除菌剤組成物(比較例1〜6)は、混合時に白濁を生じたり、モデル汚れガラス片に明らかに汚れが残存していた。
【0057】
【表1】

【0058】
実施例3〜6および比較例7〜15
除菌力試験
(方法)
下記に示す供試菌をBHI(ブレインハートインフージョン)ブイヨン培地で30℃、24hr培養し、その菌液を生理食塩水で100倍希釈したものを、実施例1で用いた洗浄除菌剤組成物および表2に示す洗浄除菌剤組成物各10mlを四級アンモニウム塩の濃度が80ppm、160ppm、320ppmとなるように希釈したものに対し、0.1ml加えて攪拌した後、25℃にて1分間保持した。感作時間経過後もう一度攪拌した後、各混合物から1白金耳を取り、BHIブイヨン培地10mlに接種した。これを30℃、48hr培養した。菌未接種のBHIブイヨン培地をコントロールとし、目視で培地の濁りを比較して、各菌体に対する洗浄除菌剤組成物の除菌効果を判定した。尚、洗浄除菌剤組成物が混合直後に白濁したものについては、その時点で試験を中止し、その後の除菌力試験は行わなかった。また、表中の数値はwt%を表す。
【0059】
供試菌:大腸菌(Escherichia coli NBRC3972)
【0060】
(結果)
結果を表3に示す。表中の「−」は除菌効果が確認されたことを示し、「+」は除菌効果が確認されなかったことを示す。また表中の濃度はジデシルジメチルアンモニウムクロライド濃度を表す。
【0061】
【表2】

【0062】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ジ長鎖アルキルジ短鎖アルキルアンモニウム塩1重量部、
(B)エチレンオキサイド平均付加モル数が1.5〜2.4である陰イオン界面活性剤0.08〜0.5重量部、
(C)エチレンオキサイド平均付加モル数が2.5〜3.4である陰イオン界面活性剤0.125〜0.5重量部、
(D)HLB値が3.5〜10.5の非イオン界面活性剤1〜2.5重量部、
(E)HLB値が11〜15の非イオン界面活性剤3〜6.5重量部、および、
(F)エタノール0.1〜3重量部、
を含有する洗浄除菌剤組成物。
【請求項2】
(A)ジ長鎖アルキルジ短鎖アルキルアンモニウム塩が、下記一般式(1)で示される第4級アンモニウム塩である請求項1に記載の洗浄除菌剤組成物:
【化1】

(1)
[式中R、Rは、同一であっても異なっていてもよい、炭素原子数8〜18の長鎖アルキル基を表し、RおよびRは、同一であっても異なっていてもよい、炭素原子数1〜4の短鎖アルキル基を表す]。
【請求項3】
(B)エチレンオキサイド平均付加モル数が1.5〜2.4である陰イオン界面活性剤が、以下からなる群から選択される請求項1または2に記載の洗浄除菌剤組成物:
一般式(2)で示されるスルホサクシネート型陰イオン界面活性剤:
【化2】

(2)
[式中Rは炭素原子数8〜18のアルキル基を表し、Yはアルカリ金属イオンンまたはトリエタノールアンモニウムイオンを表し、nは、1〜15の整数である];
一般式(3)で示されるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩;
【化3】

(3)
[式中Rは炭素原子数8〜18のアルキル基を表し、Yはアルカリ金属イオンまたはトリエタノールアンモニウムイオンを表し、nは、1〜15の整数である];および、
一般式(4)で示されるエーテルカルボン酸型陰イオン界面活性剤:
【化4】

(4)
[式中Rは炭素原子数8〜18のアルキル基を表し、nは、1〜15の整数である]。
【請求項4】
(C)エチレンオキサイド平均付加モル数が2.5〜3.4である陰イオン界面活性剤が、以下からなる群から選択される請求項1から3いずれかに記載の洗浄除菌剤組成物:
一般式(5)で示されるポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩;
【化5】

(5)
[式中Rは炭素原子数8〜18のアルキル基を表し、Yはアルカリ金属イオンまたはトリエタノールアンモニウムイオンを表し、nは、1〜15の整数である];および、
一般式(6)で示されるエーテルカルボン酸型陰イオン界面活性剤;
【化6】

(6)
[式中Rは炭素原子数8〜18のアルキル基を表し、Yはアルカリ金属イオンまたは水素イオンを表し、nは、1〜15の整数である]。
【請求項5】
(D)HLB値が3.5〜10.5の非イオン界面活性剤が、以下からなる群から選択される請求項1から4いずれかに記載の洗浄除菌剤組成物:
一般式(7)で示される脂肪酸アルカノールアミド;
【化7】

(7)
[式中R10はヤシ油脂肪酸残基、または炭素原子数8〜18のアルキル基を表す];
一般式(8)で示されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル;
【化8】

(8)
[式中R11は、炭素原子数8〜18のアルキル基を表し、nは、2〜8の整数、mは、1〜15の整数である];
一般式(9)で示されるポリオキシエチレン脂肪酸エステル;
【化9】

(9)
[式中R12は、炭素原子数8〜18のアルキル基を表し、nは、1〜15の整数である];および、
一般式(10)で示されるポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックポリマー;
【化10】

(10)
[式中n1は1〜6の整数、n2は1〜6の整数、mは25〜50の整数である]。
【請求項6】
(E)HLB値が11〜15の非イオン界面活性剤が、以下からなる群から選択される請求項1から5いずれかに記載の洗浄除菌剤組成物:
一般式(11)で示されるポリオキシアルキレンアルキルエーテル;
【化11】

(11)
[式中R13は、炭素原子数8〜18のアルキル基を表し、nは2〜8の整数、mは1〜15の整数である];および、
一般式(12)で示されるアルキルグルコシド;
【化12】

(12)
[式中R14は、炭素原子数8〜18のアルキル基を表す]。
【請求項7】
(A)ジ長鎖アルキルジ短鎖アルキルアンモニウムが、ジデシルジメチルアンモニウムクロライドである請求項1から6いずれかに記載の洗浄除菌剤組成物。
【請求項8】
(B)エチレンオキサイド平均付加モル数が1.5〜2.4である陰イオン界面活性剤が、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸二ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウムから選ばれる1種以上である請求項1から7いずれかに記載の洗浄除菌剤組成物。
【請求項9】
(C)エチレンオキサイド平均付加モル数が2.5〜3.4である陰イオン界面活性剤が、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリル硫酸トリエタノールアミンから選ばれる1種以上である請求項1から8いずれかに記載の洗浄除菌剤組成物。
【請求項10】
(D)HLB値が3.5〜10.5の非イオン界面活性剤が、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックポリマーから選ばれる1種以上である請求項1から9いずれかに記載の洗浄除菌剤組成物。
【請求項11】
(E)HLB値が11〜15の非イオン界面活性剤が、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、アルキルグルコシドから選ばれる1種以上である請求項1から10いずれかに記載の洗浄除菌剤組成物。
【請求項12】
(A)ジ長鎖アルキルジ短鎖アルキルアンモニウム塩が0.5〜10重量%の濃度となる水溶液の形態で提供される、請求項1から11いずれかに記載の洗浄除菌剤組成物。

【公開番号】特開2011−246677(P2011−246677A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124049(P2010−124049)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(000189659)上野製薬株式会社 (76)
【Fターム(参考)】