説明

洗濯乾燥機

【課題】放熱器に洗剤成分やリントを付着させずにヒートポンプ装置を用いて洗浄水を加熱することができる洗濯乾燥機を提供すること。
【解決手段】本体50と、本体50内に支持された水槽70と、水槽70内に回転自在に設けられた回転槽80と、圧縮機120および放熱器130、減圧手段140、吸熱器150を冷媒の通る管路で連結したヒートポンプ装置170と、回転槽80内の空気を吸熱器150から放熱器130を経て、回転槽80へ循環させる循環風路175と、外気を導入する吸気口220から吸熱器150を経て排気口230より排出する給水加熱風路180と、循環風路175と給水加熱風路180とを切り替える風路切替装置190と、空気を送風する送風手段210と、冷媒が放熱器130を通り減圧手段140へ流れる管路の途中に、水槽70内へ給水される水と冷媒とが熱交換を行う水加熱熱交換器160を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯、脱水と乾燥を同一回転槽内で行う洗濯乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のドラム式洗濯乾燥機は、洗濯乾燥機の本体の内部に、複数の弾性体によって支持された円筒状の水槽3を設け、洗濯、脱水時の振動を吸収する構成となっている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)。
【0003】
図4は、特許文献1における従来の洗濯乾燥機の断面図である。図4に示すように、水槽3の内部には、衣類など洗濯または乾燥の対象となる衣類4を収容する円筒状の回転槽5が駆動モータ6により回転されるよう構成され、回転槽5の周壁には多数の小孔5aが設けられている。本体1の前面には衣類4を出し入れする開口部1aと、これを開閉する扉7が設けられている。水槽3および回転槽5の前面側にも同様の開口部3a、5bを有し、この水槽3の開口部3aはベローズ8によって本体1の開口部1aと水密に連結されている。水槽3の底部には洗濯水を排出する排水口9を有し、排水弁10を介して排水ホース11に連結され、その先端部は機外に導出されている。
【0004】
さらに、冷媒を圧縮する圧縮機12と、圧縮された冷媒の凝縮熱を放熱する放熱器13と、高圧の冷媒の圧力を減圧するための減圧手段14と、減圧されて低圧となった冷媒が周囲から熱を奪う吸熱器15とを冷媒が循環するように管路16で連結したヒートポンプ装置17が設けられ、放熱器13の一部が水槽3内に設置されている。
【0005】
さらに、回転槽5の小孔5aおよび水槽3に設けた排気口3bより出て、吸熱器15、放熱器13を通過し、水槽3の給気口3cより再度水槽3および回転槽5へ戻る循環風路18が構成され、循環風路18内に設けた送風機(送風手段)19により乾燥用空気の循環送風が行われる。また、吸熱器15の上流側の循環風路18aには、外気とつながる吸気風路20と、吸熱器15および送風機19の下流側の循環風路18bには同様に外気とつながる排気風路21が設けられている。また、給水弁22は水道の蛇口23に接続されたホース24で接続されている。
【0006】
上記構成において、洗濯運転を行う場合は、扉7を開いて回転槽5内へ衣類4および洗剤を入れて運転を開始する。まず、給水弁22が洗濯水側の給水口を開き、水槽3および回転槽5内に所定量の水が供給されると、駆動モータ6が作動し回転槽5が回転駆動され洗濯動作を行う。このとき、ヒートポンプ装置17の圧縮機12の運転と送風機19の運転を行うことにより、吸気風路20より外気を取り入れ、循環風路18aの空気は、吸熱器15で吸熱され、空気中の水分は冷却凝縮され、凝縮熱を奪い、排気風路21より本体1の外に排気される。
【0007】
この熱を管路16内の冷媒が運び、放熱器13で水槽3内の洗浄水を加熱し、同時に循環風路18内の空気も加熱する。このことにより、洗浄水の温度や衣類4の温度が上昇し、温度上昇のない場合に比べ、洗浄性能が大幅にアップする。さらに、所定時間洗浄後、駆動モータ6が停止して排水弁10が開き、汚れた水が水槽3および回転槽5から排水され、機外の排水場所へ排水される。
【0008】
次に、上記と同様に水槽3および回転槽5に水が供給され、すすぎ動作を行う。同様に、ヒートポンプ装置17が運転され、すすぎ水の温度を上昇させ、すすぎの性能も向上させることができる。すすぎが終了すると排水弁10が開いて排水された後、回転槽5が駆
動モータ6により高速で回転駆動されることにより、衣類4の脱水が行われる。
【0009】
以上のように洗濯、すすぎ、および脱水運転が終了すると、次に乾燥運転を開始する。
【0010】
乾燥工程では、駆動モータ6により低速で回転槽5を回転駆動させ衣類4を撹拌しながら、ヒートポンプ装置17の圧縮機12の運転と送風機19の運転により、循環風路18内の空気は吸熱器15で吸熱されて冷却除湿され、放熱器13で加熱されて給気口3cから水槽3内へ送り込まれる。この除湿された温風は、衣類4の水分を奪った後、回転槽5の小孔5aから水槽3内を通過して排気口3bを経て循環風路18へ至る。そして除湿された水は排水弁10を介して機外へ排水される。このように、循環風路18と回転槽5の間を空気が循環することにより衣類4の乾燥が行われる。
【0011】
このように、乾燥工程での消費エネルギー削減効果のみならず、洗浄やすすぎ工程においてもヒートポンプ装置17を有効に活用できる構成となっているため、洗浄性能やすすぎ性能を向上させる工夫がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2007−222455号公報
【特許文献2】特開2007−289455号公報
【特許文献3】特開2008−161639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、従来の構成では、放熱器13が水槽3内に設置されており、放熱器13が直接洗浄水と接触し加熱しており、放熱器13の表面に洗剤成分やリントが付着し、それらが熱抵抗となるため熱交換性能が低下し、引いては乾燥時および給水加熱時の消費電力が増大するという課題を有していた。
【0014】
本発明は前記従来の課題を解決するもので、放熱器に洗剤成分やリントを付着させずにヒートポンプ装置を用いて洗浄水を加熱することができる洗濯乾燥機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記従来の課題を解決するために、放熱器と減圧手段間に水槽内への給水と冷媒とが熱交換を行う水加熱熱交換器を設けたものである。
【0016】
これによって、洗浄水を槽内へ注水する前にヒートポンプ装置で加熱することができるため、洗剤成分やリントを熱交換器に付着させずにヒートポンプ装置を用いて洗浄水を加熱することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の洗濯乾燥機は放熱器への洗剤成分やリントを付着させず放熱器の熱交換性能を維持し消費電力の増大を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態1における洗濯乾燥機の断面図
【図2】本発明の実施の形態1における水加熱熱交換器の斜視図
【図3】本発明の実施の形態1における乾燥運転時の洗濯乾燥機の断面図
【図4】従来の洗濯乾燥機の断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
第1の発明の洗濯乾燥機は、本体と、前記本体内に支持された水槽と、前記水槽内に回転自在に設けられた回転槽と、圧縮機および放熱器、減圧手段、吸熱器を冷媒の通る管路で連結したヒートポンプ装置と、前記回転槽内の空気を前記吸熱器から前記放熱器を経て、前記回転槽へ循環させる循環風路と、外気を導入する吸気口から前記吸熱器を経て排気口より排出する給水加熱風路と、前記循環風路と前記給水加熱風路とを切り替える風路切替装置と、空気を送風する送風手段と、前記冷媒が前記放熱器を通り前記減圧手段へ流れる前記管路の途中に、前記水槽内へ給水される水と前記冷媒とが熱交換を行う水加熱熱交換器を設けたものである。
【0020】
このような構成によって、洗浄水を槽内注水する前にヒートポンプ装置で加熱することができるため、洗剤成分やリントを熱交換器に付着させずにヒートポンプ装置を用いて洗浄水を加熱することができる。このため、放熱器は熱交換性能が低下せず、乾燥運転時や給水加熱時の消費電力の増大を防ぐことができる。また、放熱器で給水を加熱するのではなく、水加熱熱交換器で給水を加熱するため、給水加熱によって水に含まれるスケールが放熱器に付着することも無く、給水をヒートポンプ装置で加熱しても加熱乾燥性能が低下することがなく、消費電力の増大を防ぐことができる。
【0021】
第2の発明は、第1の発明の洗濯乾燥機の水加熱熱交換器が、内管内を前記冷媒が流れ、外管内を前記水が流れ、前記冷媒と前記水とのそれぞれが互いに対向流となるように流れる二重管式熱交換器であるものである。
【0022】
このような構成によって、高温の冷媒の周りに水を流すことにより、冷媒の熱を熱ロス無く給水に与えることができる。それとともに、冷媒と水とのそれぞれが互いに対向流となるように流すことにより、冷媒と給水の平均温度差を大きくとることができ効率的に熱交換を行うことができる。これらの作用により、さらに効率よく給水を加熱することができるため、給水時の消費電力量の増大を防ぐことができる。
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0024】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における洗濯乾燥機の断面図である。
【0025】
図1において、本体50の内部に、複数の弾性体60によって支持された円筒状の水槽70が設けられている。弾性体60により、洗濯(洗い、濯ぎ)、脱水時の振動が吸収される。水槽70の内部には、衣類など洗濯または乾燥の対象となる衣類を収容する円筒状の回転槽80が、駆動モータ90により回転されるよう設けられている。回転槽80の周壁には複数の小孔(図示せず)が設けられている。
【0026】
本体50の前面には衣類を出し入れする開口部50aと、これを開閉する扉100が設けられている。水槽70および回転槽80の前面側にも、同様の開口部70a、80aを有し、水槽70の開口部70aはベローズ85によって本体50の開口部50aと水密に連結されている。水槽70の底部には、洗濯水(洗浄水および濯ぎ水)を排出する排水口105が設けられ、排水弁110を介して排水ホース115に連結され、その先端部は機外に導出されている。
【0027】
本体50内には、ヒートポンプ装置170が設置されている。ヒートポンプ装置170は、冷媒を圧縮する圧縮機120と、放熱器130と、高圧の冷媒の圧力を減圧するための減圧手段140と、減圧されて低圧となった冷媒が周囲から熱を奪う吸熱器150とを
冷媒が循環するように管路で連結して構成されている。さらに、圧縮機120と放熱器130との間に給水を加熱するための水加熱熱交換器160が設けられている。
【0028】
図2に示すように、水加熱熱交換器160は内管161と外管162とからなる二重管式の熱交換器である。冷媒は、内管161内を流れる。水槽70へ給水される水は、外管162内と内管161の外周との間で形成される空間を流れる。
【0029】
さらに、回転槽80の空気は、回転槽80の小孔および水槽70に設けた排気口70bより出て、吸熱器150、放熱器130を通過し、水槽70の給気口70cより、再度、水槽70および回転槽80へ戻る循環風路175が構成されている。また、給水加熱風路180は風路切替装置190により、循環風路175から切り替えられる。給水加熱風路180は、吸気口220から外気を導入し、吸熱器150を通過させて排気口230から排出させる風路である。また、給水加熱風路180内には送風機(送風手段)210が設置されている。送風機210を駆動させることで、循環風路175または給水加熱風路180へと送風がなされる。
【0030】
また、水道の蛇口から給水される水は、給水弁240を介して水加熱熱交換器160に接続されている。給水された水は、内管161と外管162との間で形成される空間を通過後、洗剤ケース200に流入し、水槽70へと給水される。
【0031】
以上のように構成された洗濯乾燥機において、以下給水時および乾燥時の動作、作用について説明する。
【0032】
給水弁240が開かれることにより、給水がなされる。給水された水は、まず水加熱熱交換器160の外管162に流れる。一方、ヒートポンプ装置170では、圧縮機120が駆動する。それとともに、風路切替装置190により給水加熱風路180に切り替えられる。送風機210が駆動し、吸気口220から導入された外気は、吸熱器150を通過し排気口230より本体50の外に排出される。冷媒は圧縮機120が駆動されることにより、高温高圧のガス冷媒となり、放熱器130を通過し、水加熱熱交換器160の内管161に流入する。内管161内を流れる冷媒と、外管162内を流れる水とは、互いに対向流となるように流れる。水は冷媒から熱を奪い加熱され、洗剤ケース200へと流入し、洗剤を溶解し水槽70へ注水される。この際、水は加温されることにより、洗剤が溶けやすくなり、洗浄力が向上する。冷媒は水に熱を与え冷却され、温度が下がり凝縮温度に達すると凝縮して液化する。この際、放熱器130を冷媒は通過するが、風路切替装置190により、放熱器130には空気が流れないため、若干の熱ロスは発生するが大量に冷媒の熱は奪われることは無い。次に、水加熱熱交換器160をでた冷媒は、減圧手段140で減圧され低温低圧の液冷媒もしくは気液二相冷媒となる。その後、吸熱器150に流入し、給水加熱風路180内を流れる空気と熱交換器し空気から熱を奪い蒸発し、ガス冷媒となって圧縮機120に戻ってくる。この際、給水加熱風路180内を流れる空気の流れは、吸気口220から外気が導入され、吸熱器150で冷媒に冷却されて加熱されて排気口230より、本体50外に排出される。
【0033】
次に乾燥工程について説明する。図3は本発明の第1の実施の形態における乾燥運転時の洗濯乾燥機の断面図である。風路切替装置190で乾燥運転用の循環風路250に切り替えられる。次に駆動モータ90により低速で回転槽80を回転駆動させる。衣類を撹拌しながら、ヒートポンプ装置170の圧縮機120の運転と送風機210の運転により、循環風路250内の空気は吸熱器150で吸熱されて冷却除湿され、放熱器130で加熱されて水槽70内へ送り込まれる。この除湿された温風は、衣類の水分を奪った後、回転槽80から水槽70内を通過して循環風路250へ至る。そして除湿された水は排水弁110を介して機外へ排水される。このように、循環風路250と回転槽80の間を空気が
循環することにより衣類の乾燥が行われる。
【0034】
以上のように、本実施の形態においては圧縮機と放熱器間に水槽内への給水と冷媒とが熱交換を行う水加熱熱交換器を設けたことにより、洗浄水を槽内注水する前にヒートポンプ装置で加熱することができる。このため、洗剤成分やリントを熱交換器に付着させずにヒートポンプ装置を用いて洗浄水を加熱することができる。よって、放熱器は熱交換性能が低下せず、乾燥運転時や給水加熱時の消費電力の増大を防ぐことができる。また、放熱器で給水を加熱するのではなく、水加熱熱交換器で給水を加熱するため、給水加熱によって水に含まれるスケールが放熱器に付着することも無く、給水をヒートポンプ装置で加熱しても加熱乾燥性能が低下することがなく、消費電力の増大を防ぐことができる。
【0035】
また、水加熱熱交換器は、内管内を冷媒が流れ、外管内を給水された水が流れ、冷媒と水とのそれぞれが互いに対向流となるように流れる二重管式熱交換器であるので、高温の冷媒の周りに水を流すことにより、冷媒の熱を熱ロス無く水に与えることができる。それとともに、冷媒と水とのそれぞれが互いに対向流となるように流すことにより、冷媒と給水の平均温度差を大きくとることができ、効率的に熱交換を行うことができる。これらの作用により、さらに効率よく水を加熱することができるため、給水時の消費電力量の増大を防ぐことができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上のように、本発明にかかる洗濯乾燥機は給水の加温と乾燥の消費電力を低減することができるので、食器洗い乾燥機等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0037】
50 本体
70 水槽
80 回転槽
120 圧縮機
130 放熱器
140 減圧手段
150 吸熱器
160 水加熱熱交換器
161 内管
162 外管
170 ヒートポンプ装置
180 給水加熱風路
190 風路切替装置
210 送風機(送風手段)
220 吸気口
230 排気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
前記本体内に支持された水槽と、
前記水槽内に回転自在に設けられた回転槽と、
圧縮機および放熱器、減圧手段、吸熱器を冷媒の通る管路で連結したヒートポンプ装置と、
前記回転槽内の空気を前記吸熱器から前記放熱器を経て、前記回転槽へ循環させる循環風路と、
外気を導入する吸気口から前記吸熱器を経て排気口より排出する給水加熱風路と、
前記循環風路と前記給水加熱風路とを切り替える風路切替装置と、
空気を送風する送風手段と、
前記冷媒が前記放熱器を通り前記減圧手段へ流れる前記管路の途中に、前記水槽内へ給水される水と前記冷媒とが熱交換を行う水加熱熱交換器を設けた洗濯乾燥機。
【請求項2】
前記水加熱熱交換器は、内管内を前記冷媒が流れ、外管内を前記水が流れ、前記冷媒と前記水とのそれぞれが互いに対向流となるように流れる二重管式熱交換器である請求項1に記載の洗濯乾燥機。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−85801(P2013−85801A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230492(P2011−230492)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】