説明

洗濯再汚染防止ポリエステル組成物

【課題】本発明は十分な洗濯再汚染性を有し、且つ優れた色調と耐熱性(溶融時の熱分解抑制効果)、力学的強度を保ちながら、洗濯耐久性のある汚染防止効果(防汚性)を有する共重合ポリエステル組成物である。さらに長期間連続的に紡糸しても紡糸圧上昇が非常に小さいという特性を有した共重合ポリエステル組成物等を提供することにある。
【解決手段】上記課題は、共重合ポリエチレンテレフタレート、チタン化合物、リン化合物、フェノール系化合物及びチオエーテル系化合物を含むポリエステル組成物であって、
共重合ポリエチレンテレフタレートはポリオキシアルキレングリコールが共重合ポリエチレンテレフタレートの重量を基準として0.5〜10重量%共重合され、且つイソフタル酸が共重合ポリエチレンテレフタレートの全酸成分を基準として1〜10モル%以上共重合されており、チタン化合物が共重合ポリエチレンテレフタレートに可溶なチタン化合物を含み、リン化合物及び該共重合ポリエステルに可溶なチタン化合物の含有量が、特定の数式を満たし且つポリエステル組成物の重量に対してフェノール系化合物が0.1〜1.0重量%及びチオエーテル系化合物が0.1〜1.0重量%を配合されていることを特徴とするポリエステル組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防汚性に優れた共重合ポリエステル組成物及びそれから得られる繊維に関する。更に詳しくは優れた色調と耐熱性(溶融時の熱分解抑制効果)を保ちながら、洗濯耐久性のある汚染防止効果を有する共重合ポリエステル組成物である。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレートは、その機械的、物理的、化学的性能が優れているため、繊維、フィルム、その他成形物に広く利用されている。
【0003】
このように優れた性質を有するポリエステルではあるが、繊維として使用する場合、疎水性であるが故に木綿等の親水性繊維に比べて吸水性や吸湿性が乏しく、また油汚れが付着しやすく、付着した汚れを除去しがたい。さらには洗濯中に汚れが再付着しやすいなどの問題点があった。特に病院、食品産業、学校又はオフィスで着用する各種ユニフォームとして利用する場合は上記の問題の解決が求められている。
【0004】
このような問題を解決する方法として、ポリエステルに一方の末端の活性を持たない有機基で封鎖したポリオキシアルキレンオキサイドを共重合させる方法が提案されている(例えば、特許文献1、2参照。)。さらに、共重合ポリエステルの反応触媒としてチタン化合物を使用することで製糸時の生産性を改善する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、ポリオキシアルキレンオキサイドに加えて、第三成分としてイソフタル酸などの成分を共重合させる場合、反応速度が著しく低下し、所望の重合度のポリエステルを合成するためには過大な時間を要し、それにより得られるポリエステルの色相が著しく悪化するという問題があった。
【0005】
また、ポリオキシアルキレンオキサイドを共重合したポリエステルは、長期使用時の耐候劣化により、繊維強度が著しく低下するという問題があった。これらの対策としては、ポリエステルの耐熱性を向上させる方法ポリエステルの重合反応時に酸化防止剤、耐熱安定剤、紫外線吸収剤を添加する方法が採用され、酸化防止剤、耐熱安定剤としてはフェノール系、ヒンダードフェノール系、リン系、ホスファイト系、チオエーテル系があり、紫外線吸収剤としてはベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾフェノン系などが単独若しくは併用で使用される方法(例えば、特許文献4参照。)が提案されている。しかしながら、これらの添加剤の種類や併用時の組み合わせによってはポリエステルの色相を悪化させるという問題があった。
【0006】
これらの背景より、色相に優れたポリオキシアルキレンオキサイド及びイソフタル酸共重合ポリエステル繊維は未だ供給されていないのが現状である。汚染防止を特徴としたポリエステル繊維は、病院、食品産業などで着用するユニフォームとして利用することもあり優れた色調が要求されるため、色相に優れたポリエステル繊維の提供が強く求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3130690号公報
【特許文献2】特許第2828567号公報
【特許文献3】特開2003−128769号公報
【特許文献4】特開平05−287174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は十分な洗濯再汚染性を有し、且つ優れた色調と耐熱性(溶融時の熱分解抑制効果)、力学的強度を保ちながら、洗濯耐久性のある汚染防止効果(防汚性)を有する共重合ポリエステル組成物である。さらに長期間連続的に紡糸しても紡糸圧上昇が非常に小さいという特性を有した共重合ポリエステル組成物等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題に鑑み本発明者らは鋭意検討を行った結果、本発明を完成するに至った。すなわち本発明は、共重合ポリエチレンテレフタレート、チタン化合物、リン化合物、フェノール系化合物及びチオエーテル系化合物を含むポリエステル組成物であって、
共重合ポリエチレンテレフタレートが下記一般式(I)
O−(RO−)−H ・・・(I)
[上記式中、Rは芳香族又は脂肪族の一価の有機基、Rはアルキレン基、pは30〜200の整数を表す。]
で表されるポリオキシアルキレングリコールが共重合ポリエチレンテレフタレートの重量を基準として0.5〜10重量%共重合され、且つイソフタル酸が共重合ポリエチレンテレフタレートの全酸成分を基準として1〜10モル%共重合されており、チタン化合物が共重合ポリエチレンテレフタレートに可溶なチタン化合物を含み、リン化合物及び該共重合ポリエステルに可溶なチタン化合物の含有量が、下記数式(1)〜(3)を満たし且つポリエステル組成物の重量に対してフェノール系化合物が0.1〜1.0重量%及びチオエーテル系化合物が0.1〜1.0重量%を配合されていることを特徴とするポリエステル組成物であり、当該発明によって上述の課題を解決することができる。
10≦Ti≦30 ・・・ (1)
0.5≦P/Ti≦5.0 ・・・ (2)
10≦Ti+P≦100 ・・・ (3)
[上記数式中、Tiは共重合ポリエチレンテレフタレート中の全ジカルボン酸成分に対する共重合ポリエチレンテレフタレートに可溶なチタン化合物のチタン金属元素の濃度(ミリモル%)を、Pは共重合ポリエチレンテレフタレート中の全ジカルボン酸成分に対する、共重合ポリエチレンテレフタレートに含有されるリン化合物中のリン元素の濃度(ミリモル%)を示す。]
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリエステル組成物は共重合ポリエチレンテレフタレートに対して、共重合ポリエチレンテレフタレート可溶性チタン化合物及びリン化合物がそれぞれ適正範囲に含有されており、且つフェノール系酸化防止剤とチオエーテル系酸化防止剤が適切な量併用されている。その様な構成を採用することで本発明のポリエステル組成物から得られるポリエステル繊維及びその布帛は良好な色相、耐熱性、機械的強度を有し且つ防汚性に優れているという性能を有する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明における共重合ポリエチレンテレフタレートとは共重合ポリエチレンテレフタレートの繰返し単位のうち少なくとも80モル%がエチレンテレフタレートからなるポリエステルである。エチレンテレフタレート単位が80モル%未満であると、得られるポリエステル繊維の強伸度等の基本物性が十分に保持できない。
【0012】
(共重合されるポリオキシアルキレングリコールの化学構造)
本発明における共重合ポリエチレンテレフタレートは、共重合ポリエチレンテレフタレート末端の少なくとも一部に下記一般式で表されるポリオキシアルキレングリコールが共重合されている必要がある。
O−(RO−)−H ・・・(I)
[上記式中、Rは芳香族又は脂肪族の一価の有機基、Rはアルキレン基、pは30〜200の整数を表す。]
【0013】
上記式中、Rは芳香族又は脂肪族の一価の有機基であり、例えばフェニル基やナフチル基などの芳香族基、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基などのアルキル基を表す。また、Rはアルキレン基であり、炭素数が2〜4のエチレン基、1,2−プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基が好ましく、なかでもエチレン基の場合、得られる共重合ポリエチレンテレフタレートが親水性に優れ良好な防汚性が得られるので特に好ましい。これらのアルキレン基は2種類以上が共重合されていてもよく、その際ランダム共重合であってもブロック共重合であっても良いが、1,2−プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基はエチレン基と比較して疎水性が高いので、モル濃度でエチレン基が多い共重合体であることが特に好ましい。
【0014】
また、ポリオキシアルキレングリコールの重合度pは30〜200の整数である。pが30未満の場合は十分な防汚性を得るための共重合量が高くなり、それに伴い共重合ポリエチレンテレフタレートの耐熱性が著しく低下したり、共重合ポリエチレンテレフタレートの末端が封鎖されるために共重合ポリエチレンテレフタレート自体の重合度を十分に上げることができず、ひいては得られるポリエステル繊維の力学的物性が確保できなくなる。一方、pが200より大きい場合は、共重合ポリエチレンテレフタレートとの反応性が著しく低下し、ポリオキシアルキレングリコールが共重合ポリエチレンテレフタレート中に混合してあるだけの状態となるため、繰り返しの洗濯耐久性が劣る結果となる。好ましいpの範囲は35〜150であり、特に40〜80の範囲が特に好ましい。
【0015】
(ポリオキシアルキレングリコールの共重合量)
そのポリオキシアルキレングリコールの共重合量としては、共重合ポリエチレンテレフタレートを基準として0.5〜10重量%である必要がある。該共重合量が0.5重量%未満であると、防汚性が発現せず、10重量%を超えると得られるポリエステル繊維の強伸度等の基本物性が保持できず、また熱安定性にも劣るため好ましくない。好ましい共重合量は3〜7重量%である。
【0016】
(イソフタル酸)
本発明における共重合ポリエチレンテレフタレートは、主骨格であるエチレンテレフタレート、前述のポリオキシアルキレングリコールに加えてイソフタル酸成分を1〜10モル%の範囲で共重合されている必要がある。イソフタル酸を共重合することにより、共重合ポリエチレンテレフタレートの結晶化が抑制され、その共重合ポリエチレンテレフタレートを溶融紡糸して得られるポリエステル繊維中の非晶部分が拡大する。この非晶部分に前述のポリオキシアルキレングリコールが局在化することにより、防汚性が向上するためである。ゆえに、イソフタル酸成分が1モル%未満の場合は共重合ポリエチレンテレフタレートの結晶構造を変化させる効果が乏しく防汚性が十分に発現しない。一方、10モル%を越えると得られる共重合ポリエチレンテレフタレートの結晶性が著しく低下し、得られるポリエステル繊維の強伸度等の基本物性が保持できず、また融点が低下するために熱安定性も悪化するため好ましくない。なおイソフタル酸成分としては、後述のようにイソフタル酸、イソフタル酸の炭素数1〜4のジアルキルエステル、イソフタル酸ジフェニルエステル、イソフタル酸の無水物、又はイソフタル酸の酸ジハライド(酸塩化物など)として製造工程に添加され共重合されうる。更に好ましい共重量は2〜8モル%である。
【0017】
(リン化合物)
本発明において使用されるリン化合物としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、ホスホネート化合物及びそれらの誘導体が挙げられ、これらは単独で使用してもよく、また2種類以上併用してもよい。これらのリン化合物中、下記一般式(II)又は下記一般式(III)で表されるホスホネート化合物が好ましい。
O−C(=O)−X−(P=O)−(OR ・・・(II)
[上記式中、R及びRはそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよく、Xは−CH−又は−CH(Y)−(Yは芳香環を示す)を示す。]
O−(P=O)−(OR ・・・(III)
[上記式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。]
【0018】
上記のホスホネート化合物の好ましい理由としては、通常安定剤として使用されるリン化合物と比較し、チタン化合物との反応が比較的緩やかに進行するため、チタン化合物の触媒活性の重縮合反応中における持続時間が長く、結果としてポリエステルへの添加量が少なくすることができるためである。
【0019】
上記一般式(II)で表される化合物としては、カルボメトキシメタンホスホン酸、カルボエトキシメタンホスホン酸、カルボプロポキシメタンホスホン酸、カルボブトキシメタンホスホン酸、カルボメトキシ−ホスホノ−フェニル酢酸、カルボエトキシ−ホスホノ−フェニル酢酸、カルボプロポキシ−ホスホノ−フェニル酢酸、カルボブトキシ−ホスホノ−フェニル酢酸、又はこれらの化合物のジメチルエステル、ジエチルエステル、ジプロピルエステル若しくはジブチルエステルを挙げることができ、中でもトリエチルホスホノアセテート、カルボエトキシメタン−ホスホン酸ジエチルエステルが好ましい。また上記一般式(III)で表される化合物としては、モノメチルホスフェート、モノエチルホスフェート、モノ−n−プロピルホスフェート、モノ−iso−プロピルホスフェート、モノブチルホスフェート、モノヘキシルホスフェート、モノオクチルホスフェート、モノデシルホスフェート、ジメチルホスフェート、ジエチルホスフェート、ジ−n−プロピルホスフェート、ジ−iso−プロピルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジヘキシルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジデシルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェートを挙げることができる。これらの化合物は単一種を用いても複数種を用いてもかまわない。
【0020】
(チタン化合物)
本発明で触媒として使用するチタン化合物は、触媒起因の異物低減の点から共重合ポリエチレンテレフタレート中に可溶なものを含めば特に限定されず、ポリエステルの重縮合触媒として一般的なチタン化合物、例えば酢酸チタン、テトラ−n−ブトキシチタンなどが挙げられる。これらのなかでも下記一般式(IV)で表される化合物、下記一般式(V)で表される化合物、又は下記一般式(V)で表される化合物と下記一般式(VI)で表される芳香族多価カルボン酸若しくはその無水物とを反応させた反応生成物が好ましい。
Ti−(OC(=O)R ・・・(IV)
[上記式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。]
【0021】
【化1】

[上記式中、R、R’、R’’、R’’’は炭素数2〜10のアルキル基を表し、これらは互いに同一であっても異なっていてもよい。またmは1〜3の整数を表す。]
【0022】
【化2】

[上記式中、nは1〜3の整数を表す。]
【0023】
一般式(IV)で表される化合物の具体例としては酢酸チタン、プロピオン酸チタン、酪酸チタン、イソ酪酸チタン、吉草酸チタンを挙げることができる。一般式(V)で表されるチタン化合物としてはテトラ−n−メトキシチタン、テトラ−n−エトキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−iso−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−n−ヘトキシチタン、ヘキサメチルジチタネート、ヘキサエチルジチタネート、ヘキサプロピルジチタネート、ヘキサブチルジチタネート、ヘキサヘキシルジチタネート、オクタメチルトリチタネート、オクタエチルトリチタネート、オクタプロピルトリチタネート、オクタブチルトリチタネート、オクタヘキシルトリチタネートを挙げることができ、一般式(VI)で表される芳香族多価カルボン酸としては、トリメシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸を挙げることができる。
【0024】
(チタン化合物の添加量)
本発明における共重合ポリエチレンテレフタレートには、共重合ポリエチレンテレフタレート中に可溶なチタン化合物を共重合ポリエチレンテレフタレート中の全ジカルボン酸成分に対して、チタン金属元素として10〜30ミリモル%含有する必要がある。該チタン金属元素が10ミリモル%未満では共重合ポリエチレンテレフタレートの重縮合反応速度が遅くなり、目標の分子量(固有粘度、重合度)の共重合ポリエチレンテレフタレートが得られない。一方、30ミリモル%を越えると重縮合反応での副反応などの影響で得られる共重合ポリエチレンテレフタレートの色相が悪化すると共に、共重合ポリエチレンテレフタレートの熱安定性が低下し、ポリエステル繊維製造時の分子量低下が大きくなるため、品質の優れたポリエステル繊維を得ることができない。チタン金属元素としての濃度は10〜20ミリモル%の範囲が好ましく、13〜18ミリモル%の範囲が更に好ましい。本発明におけるチタン金属元素の適正範囲は通常のポリエステルで使用されるチタン系金属触媒量よりも多いことが特徴的であるが、前述のポリオキシアルキレングリコールとイソフタル酸を共重合する本発明の共重合ポリエチレンテレフタレートでは、通常のポリエステルと比較して重縮合反応性に劣るため、使用するチタン化合物量を上記の数式(1)の範囲とする必要がある。これにより、色相の悪化が懸念されるが、この対策として、後述する酸化防止剤の添加量を適正化することで、色相の良好な共重合ポリエチレンテレフタレートを得ることができる。
【0025】
(安定剤/触媒比率、総量)
本発明における共重合ポリエチレンテレフタレートはチタン化合物を触媒とし、且つリン化合物を安定剤として製造され、下記数式(2)及び(3)を満足する必要がある。
0.5≦P/Ti≦5.0 ・・・ (2)
10≦Ti+P≦100 ・・・ (3)
[上記数式中、Tiは共重合ポリエチレンテレフタレート中の全ジカルボン酸成分に対する共重合ポリエチレンテレフタレートに可溶なチタン化合物のチタン金属元素の濃度(ミリモル%)を、Pは共重合ポリエチレンテレフタレート中の全ジカルボン酸成分に対する、共重合ポリエチレンテレフタレートに含有されるリン化合物中のリン元素の濃度(ミリモル%)を示す。]
【0026】
(P/Ti)が0.5未満の場合、共重合ポリエチレンテレフタレートの色相が著しく黄色味を帯び、一方5.0を越えると共重合ポリエチレンテレフタレートの製造時における重縮合反応性が著しく悪化し、目的の重合度の共重合ポリエチレンテレフタレートを得ることができない。一方、(Ti+P)が10未満の場合は重合工程での生産性が大きく低下し、100を超える場合は触媒に起因する異物の発生が起こり、製糸工程にて断糸などの工程調子悪化を招くため好ましくない。
【0027】
(フェノール系酸化防止剤)
本発明で使用されるフェノール系化合物は、下記一般式(VII)で表される単位構造を分子内に1個以上有するものが挙げられ、更に好ましくは下記一般式(VII)で表される単位構造を分子内に2個以上有するものが挙げられ、酸化防止剤として有効な化合物であり、好ましくは一次酸化防止剤として有効な化合物である。
【0028】
【化3】

[上記式中、Rは炭素数1〜5のアルキル基を表す。]
【0029】
は炭素数1〜5個のアルキル基を表し、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、3−メチルブチル基、1,1−ジメチルプロピル基などを挙げることができ、これらの中でもメチル基、t−ブチル基が好ましい。
【0030】
としてこのような単位構造(官能基)を有するフェノール系化合物として具体的には2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(商品名:スミライザーBHT等)、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(商品名:アデカスタブAO−50、Irganox1076等)等のモノフェノール系化合物、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)(商品名:スミライザーWX、スミライザーWXR等)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)(商品名:スミライザーBBM等)、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン(商品名:アデカスタブAO−80、スミライザーGA−80等)等のビスフェノール系化合物、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン(商品名:アデカスタブAO−30等)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン(商品名:アデカスタブAO−330、Ionox330等)、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン{別名:ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]}(商品名:Irganox1010等)、ビス[3,3’−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエスエル(商品名:Antioxidant Hoechst TMOZ等)、1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−sec−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン(商品名:アデカスタブAO−20)等の高分子型フェノール系化合物を挙げることができる。これらの中でもスミライザーGA−80(商品名)、Irganox1010(商品名)等が好ましい。
【0031】
(チオエーテル系酸化防止剤)
本発明で使用されるチオエーテル系化合物は、下記一般式(VIII)又は(IX)で表される単位構造を分子内に有するものが挙げられ、酸化防止剤として有効な化合物であり、二次酸化防止剤として有効な化合物である。
【0032】
【化4】

[上記式中、R10は炭素数1〜20のアルキル基を表し、R11は炭素数1〜20のアルキル基を表す。]
【0033】
官能基R10、R11は共に炭素数1〜20のアルキル基を表し、好ましくは炭素数10〜18のアルキル基である。具体的にはオクチル基、デシル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基、エイコシル基を挙げることができる。
【0034】
このような単位構造(官能基)を含むチオエーテル系化合物として具体的にはジラウリル−3,3’−ジチオプロピオネート(商品名:スミライザーTPL、ノクライザー400等)、ジミリスチル−3,3’−ジチオプロピオネート(商品名:スミライザーTPM、ラスミットMG等)、ジステアリル−3,3’−ジチオプロピオネート(商品名:スミライザーTPS、ラスミットSG等)、テトラキス[メチレン−3−(ドデシルチオ)プロピオネート]メタン(商品名:アデカスタブAO−412S)等を挙げることができる。これらの中でもアデカスタブAO−412S(商品名)等が好ましい。
【0035】
(酸化防止剤添加量)
フェノール系化合物、チオエーテル系化合物のポリエステルに対する添加量は、それぞれポリエステル組成物の全重量に対して0.1〜1.0重量%の範囲で、両化合物を併用して添加する必要がある。本発明のポリエステル組成物は、所定の化学構造を有するポリオキシアルキレングリコールを共重合しているが、ポリオキシアルキレングリコールは耐熱性が低いため、ポリエステル組成物から繊維を得る場合に紡糸工程で再溶融する段階で熱劣化を受けて分子量が低下する、更に熱により変色しやすいという欠点があった。これらの問題に対し、フェノール系化合物は一次酸化防止剤として有効であり、チオエーテル系化合物並びに安定剤として添加するリン系化合物は二次酸化防止剤として有効であり、両化合物を併用配合することで耐熱性が大きく改善され、紡糸工程での分子量低下や熱劣化着色を抑制することができる。この場合、安定剤として添加する上述のリン化合物とフェノール系化合物の併用配合、及びリン化合物とチオエーテル系化合物のように2種類を併用配合するだけでは、前述の問題に対する効果が小さく、溶融紡糸後に得られるポリエステル繊維の色相の悪化や重合度の低下が大きくなるため、上記3種の化合物を併用配合することが本発明においては重要である。
【0036】
すなわち、フェノール系化合物とチオエーテル系化合物の2種類を添加した上記ポリエステル組成物においては、これらの化合物を添加しない場合と比較して、耐熱性が向上し、溶融紡糸段階での色相悪化や重合度の低下が抑制されるという効果が発現する。ポリエステル組成物に対する両化合物の添加量が各々0.1重量%未満の場合は、劣化防止効果が小さく、再溶融段階での熱劣化が大きくなる。一方、1.0重量%より多い場合は各酸化防止剤自身の着色によるポリエステルの色相悪化が顕著になるため好ましくない。
【0037】
(共重合ポリエチレンテレフタレートの製造方法)
本発明における共重合ポリエステルの製造は特に限定されず、通常知られているポリエステルの製造方法が用いられる。すなわち、テレフタル酸とエチレングリコールの直接重縮合反応させる、あるいはテレフタル酸ジメチルに代表されるテレフタル酸のエステル形成性誘導体とエチレングリコールとをエステル交換反応させて低重合体を製造する。次いでこの反応生成物を重縮合触媒の存在下で減圧加熱して所定の重合度になるまで重縮合反応させることにより製造される。ポリオキシアルキレングリコール、イソフタル酸を共重合する方法についても通常知られている製造方法を用いる事ができ、好ましくは第一段階の反応が終了する以前、すなわち低重合体を重縮合触媒の存在下で重縮合を行う直前までの任意の段階で添加するのが良い。
本発明によれば、フェノール系化合物やチオエーテル系化合物の添加時期はポリエステル合成段階の任意の段階でよく、更に好ましくは重縮合反応中の任意の段階が良い。
【0038】
(その他添加剤)
また、本発明における共重合ポリエチレンテレフタレートは、必要に応じて少量の添加剤、例えば上述した以外の酸化防止剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、遮光剤又は艶消し剤などを含んでいても良い。特に酸化防止剤、蛍光増白剤、艶消し剤などは特に好ましく添加される。
【0039】
(ポリマー物性)
本発明における共重合ポリエチレンテレフタレートの固有粘度(o−クロロフェノール、35℃にて測定)は、0.40〜0.80dL/gの範囲にあることが好ましく、特に0.45〜0.75dL/gの範囲が好ましい。固有粘度が0.40dL/g未満であると、繊維の強度が不足するので好ましくない。他方、固有粘度が0.80dL/gを超えると、共重合ポリエチレンテレフタレートの色相が悪化するとともに、固有粘度を過剰に引き上げる必要があり不経済である。
【0040】
(溶融紡糸)
本発明のポリエステル組成物を用いる製糸方法は、特に制限は無く、従来公知の方法が採用される。すなわち、乾燥したポリエステル組成物を270℃〜300℃の範囲で溶融紡糸して製造することが好ましく、溶融紡糸時における引取り速度は400〜5000m/分で紡糸することが好ましい。紡糸速度がこの範囲にあると、得られるポリエステル繊維の強度も十分なものであると共に、安定して巻取りを行うこともできる。さらに、上述の方法で得られた未延伸糸もしくは部分延伸糸を、延伸工程にて1.2倍〜6.0倍程度の範囲で延伸することが好ましい。この延伸は未延伸ポリエステル繊維を一旦巻き取ってから行ってもよく、一旦巻き取ることなく連続的に行ってもよい。また、紡糸時に使用する口金の形状についても特に制限は無く、円形、三角形・四角形等の多角形、3以上の多葉形、十字断面型、C型、H型、W型、X型、Y型乃至はこれらの断面に更に中空部を有する形状であっても良い。
【実施例】
【0041】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、実施例中の分析項目などは、下記記載の方法により測定した。
【0042】
(ア)固有粘度:
ポリエステル組成物を100℃、60分間でオルトクロロフェノールに溶解した希薄溶液を、35℃でウベローデ粘度計を用いて測定した値から求めた。
【0043】
(イ)色調(L値及びb値):
ポリエステル組成物試料を290℃、真空下で10分間溶融し、これをアルミニウム板上で厚さ3.0±1.0mmのプレートに成形し、直ちに氷水中で急冷する。該プレートを160℃、1時間乾燥結晶化後、色差計調整用の白色標準プレート上に置き、プレート表面のハンターL値及びb値を、ミノルタ社製ハンター型色差計CR−200を用いて測定した。L値は大きいほど明度が高く、b値は大きいほど黄着色の度合いが大きい事を示す。評価は[L−b値]及び[b値]の2段階で評価を実施し、両方の評価ともに特級及び1級が実用に供される。
[L−b値]
特級:50以上である。
1級:45以上、50未満である。
2級:40以上、45未満である。
3級:40未満である。
[b値]
特級:15以下である。
1級:20以下、15より大きい。
2級:25以下、20より大きい。
3級:25より大きい。
【0044】
(ウ)繊維の強度、伸度:
ポリエステル組成物試料から上述した溶融紡糸法にてポリエステル繊維を製造し、得られたポリエステル繊維についてJIS L 1013記載の方法に準拠して測定を行った。繊維の(破断)強度が3.0cN/dtex以上が実用に適していると判断した。また得られたポリエステル繊維を通常の方法により平織物を作成し、後述の汚染処理、洗濯処理の試料として用いた。
【0045】
(エ)耐熱性:
ポリエステル繊維を溶融紡糸法により得る場合に、溶融紡糸前後の固有粘度を測定し、下記式により固有粘度保持率を算出した。固有粘度保持率=80%以上を合格とした。
固有粘度保持率(%)=(紡糸後の固有粘度)/(紡糸前の固有粘度)×100
【0046】
(オ)紡糸圧上昇評価:
ポリエステル繊維を溶融紡糸法により得る場合に、紡糸口金直上に2400メッシュ、径25mmの金網を設置した紡糸機に、290℃でポリエステル組成物チップを30分/gで7日間放流し、1日あたりの濾過圧上昇として求めた。
【0047】
(カ)汚染処理:
下記組成の人工汚染液に、ホルダーに挟んだ10cm×13cmの上述の織物を浸漬させて汚れを付着させた。次いで試料をろ紙の間に挟んで余分な汚染液を除去した後、乾燥機中80℃で8時間静置乾燥した。
[人工汚染液]
・モーターオイル=99.335重量%(Dia Queen Motor Oil M−2:三菱自動車工業製)
・B重油=0.634重量%
・カーボンブラック=0.031重量%
【0048】
(キ)洗濯処理:
家庭用洗濯機に温度15℃の水を入れ、これに水1リットルに対して2.67gの割合でマルセル石鹸(P&G社製)を添加溶解して洗濯液とした。この洗濯液に浴比が1:30になるように汚染処理を行った試料及び負荷布を投入し、50分間洗濯処理した後、試料及び負荷布を脱水機で脱水し、次いでオーバーフロー水洗を15分行って脱水した。上記洗濯をL5とし、同様の操作を10回繰返したL50について、後述する汚染後の汚れ除去評価を行った。また、この洗濯処理を行わないL0についても同様の汚れ除去性評価を行った。
【0049】
(ク)汚れ除去性評価:
分光光度計マクベスMS−2020(Instrumental Color System Limited製)を用い、定法に従い試料のCIE表色計のΔEを測定し、汚れ除去性を下記式により算出した。
ΔE=((L1−L2)+(a1−a2)+(b1−b2)1/2
[上記式中、ΔEは汚れ除去性を表し、L1,a1,b1は汚染処理前の試料のL,a,b値を示し、L2,a2,b2は汚染処理後の試料のL,a,b値を示す。]
本発明ではL0でΔEが10以下、L50で15以下のものを良好とした。
【0050】
(ケ)チタン元素、リン元素の含有量:
ポリエステル組成物中のチタン元素量、リン元素量は粒状のポリエステル組成物サンプルをスチール板上で加熱溶融した後、圧縮プレス機で平坦面を有する試験成形体を作成した。この試験成形体を使って蛍光X線装置(理学電機工業株式会社ポリエステル組成物製3270E型)を用いて求めた。触媒としてチタン化合物を使用したものについては、サンプルをオルトクロロフェノールに溶解した後、0.5規定塩酸で抽出操作を行った。この抽出液について日立製作所製Z−8100型原子吸光光度計を用いて定量を行った。ここで0.5規定塩酸抽出後の抽出液中に酸化チタンの分散が確認された場合は遠心分離機で酸化チタン粒子を沈降させた。次に傾斜法により上澄み液のみを回収して、同様の操作を行った。これらの操作によりサンプル中に酸化チタンを含有していても触媒として添加している共重合ポリエチレンテレフタレートに可溶性のチタン化合物に由来するチタン元素の定量が可能となる。
【0051】
(コ)共重合ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル組成物中の共重合化合物・含有化合物の化学構造と共重合量・配合量:
ポリエステル組成物サンプルを重水素化トリフルオロ酢酸/重水素化クロロホルム=1/1混合溶媒に溶解後、沈殿を濾過により除き、得られた溶液を日本電子(株)製JEOL A−600 超伝導FT−NMRを用いて核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)を測定した。そのスペクトルパターンから常法に従ってポリエステルの繰り返し単位の化学構造を同定し、ポリオキシアルキレングリコール、イソフタル酸の共重合量を定量した。またポリエステル組成物の溶液にメタノールを添加しポリエステル成分を沈殿させた後、上澄み液を濃縮して核磁気共鳴スペクトル分析を行うことによりフェノール系化合物、チオエーテル系化合物の化学構造の同定、配合量の定量を行った。
【0052】
[実施例1]
テレフタル酸ジメチル90重量部及びエチレングリコール60重量部の混合物に、トリメリット酸チタン(表1中、TMTと称する。)0.064部を加圧反応が可能な容器に仕込み、0.07MPaの加圧下で140℃から240℃に昇温しながらエステル交換反応させた。副生メタノールの生成が完了した後、イソフタル酸(表1中、IAと称する。)4.1重量部、並びにトリエチルホスホノアセテート(表1中、TEPAと称する。)0.04部を添加し、エステル交換反応を終了させた。
【0053】
その後、反応生成物に、濃度20%の二酸化チタン/エチレングリコールスラリーを1.4重量部、分子量2000のポリオキシエチレングリコールモノメチルエーテル(表1中:POAGと称する。)3.8重量部を添加し、290℃まで昇温し、65Pa以下の高真空にて重縮合反応を行った。重合釜攪拌機の運転電力が所定電力に到達した後、フェノール系酸化防止剤(住友化学社製:スミライザーGA−80)0.47重量部、チオエーテル系酸化防止剤(アデカ社製:アデカスタブAO−412S)0.47重量部を添加した。添加後20分で重縮合反応を終了させ、固有粘度0.60dL/gであるポリエステルを得た。
【0054】
得られたポリエステルを常法に従いチップ化した後、160℃で6時間乾燥後、290℃にて溶融紡糸し、60℃の加熱ローラーと160℃のプレートヒーターとを有する延伸処理機に供し、延伸倍率4.2倍で延伸処理し、93.2dtex/24フィラメントの延伸糸を得た。得られたポリエステル樹脂及びポリエステル繊維の物性を表2に示した。
【0055】
[実施例2〜4及び比較例1〜14]
実施例1において、POAGの種類、IAの添加量、チタン化合物の種類及び量、リン化合物の種類及び量、フェノール系酸化防止剤(スミライザーGA−80)の添加量、チオエーテル系酸化防止剤(アデカスタブAO−412S)の添加量を表1の通りとし、同様にしてポリエステル組成物及びポリエステル繊維を得た。これらの特性を表2に示した。なお、比較例8については、重縮合反応が進行せず、生成物の溶融粘度が低すぎたためチップ化することができなかった。
なお、表1中のTBTはテトラ−n−ブトキシチタン、PEEはカルボエトキシメタン−ホスホン酸ジエチルエステルを示した。
【0056】
【表1】

【0057】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0058】
以上の結果から明らかなように、本発明のポリエステル組成物は共重合ポリエチレンテレフタレートに対して、共重合ポリエチレンテレフタレート可溶性チタン化合物及びリン化合物がそれぞれ適正範囲に含有されており、且つフェノール系酸化防止剤とチオエーテル系酸化防止剤が適切な量併用されている。その様な構成を採用することで本発明のポリエステル組成物から得られるポリエステル繊維及びその布帛は良好な色相、耐熱性、機械的強度を有し且つ防汚性に優れているという性能を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共重合ポリエチレンテレフタレート、チタン化合物、リン化合物、フェノール系化合物及びチオエーテル系化合物を含むポリエステル組成物であって、
共重合ポリエチレンテレフタレートは下記一般式(I)
O−(RO−)−H ・・・(I)
[上記式中、Rは芳香族又は脂肪族の一価の有機基、Rはアルキレン基、pは30〜200の整数を表す。]
で表されるポリオキシアルキレングリコールが共重合ポリエチレンテレフタレートの重量を基準として0.5〜10重量%共重合され、且つイソフタル酸が共重合ポリエチレンテレフタレートの全酸成分を基準として1〜10モル%共重合されており、チタン化合物が共重合ポリエチレンテレフタレートに可溶なチタン化合物を含み、リン化合物及び該共重合ポリエステルに可溶なチタン化合物の含有量が、下記数式(1)〜(3)を満たし且つポリエステル組成物の重量に対してフェノール系化合物が0.1〜1.0重量%及びチオエーテル系化合物が0.1〜1.0重量%を配合されていることを特徴とするポリエステル組成物。
10≦Ti≦30 ・・・ (1)
0.5≦P/Ti≦5.0 ・・・ (2)
10≦Ti+P≦100 ・・・ (3)
[上記数式中、Tiは共重合ポリエチレンテレフタレート中の全ジカルボン酸成分に対する共重合ポリエチレンテレフタレートに可溶なチタン化合物のチタン金属元素の濃度(ミリモル%)を、Pは共重合ポリエチレンテレフタレート中の全ジカルボン酸成分に対する、共重合ポリエチレンテレフタレートに含有されるリン化合物中のリン元素の濃度(ミリモル%)を示す。]
【請求項2】
リン化合物が、下記一般式(II)又は下記一般式(III)で表されるホスホネート化合物である請求項1記載のポリエステル組成物。
O−C(=O)−X−(P=O)−(OR ・・・(II)
[上記式中、R及びRはそれぞれ炭素数1〜4のアルキル基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよく、Xは−CH−又は−CH(Y)−(Yは芳香環を示す)を示す。]
O−(P=O)−(OR ・・・(III)
[上記式中、Rは炭素数1〜10のアルキル基を示し、Rは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基を示す。]
【請求項3】
チタン化合物が、下記一般式(IV)で表される化合物、下記一般式(V)で表される化合物、又は下記一般式(V)で表される化合物と下記一般式(VI)で表される芳香族多価カルボン酸若しくは下記一般式(VI)で表される芳香族多価カルボン酸の無水物とを反応させた生成物である請求項1又は2のいずれかに記載のポリエステル組成物。
Ti−(OC(=O)R ・・・(IV)
[上記式中、Rは炭素数1〜4のアルキル基を表す。]
【化1】

[上記式中、R、R’、R’’、R’’’は炭素数2〜10のアルキル基を表し、これらは互いに同一であっても異なっていてもよい。またmは1〜3の整数を表す。]
【化2】

[上記式中、nは1〜3の整数を表す。]
【請求項4】
フェノール系化合物が下記一般式(VII)で表される単位構造を分子内に1個以上含有する化合物である請求項1〜3のいずれかに記載のポリエステル組成物。
【化3】

[上記式中、Rは炭素数1〜5のアルキル基を表す。]
【請求項5】
チオエーテル系化合物が下記一般式(VIII)又は(IX)で表される単位構造を分子内に有する化合物である請求項1又は2のいずれかに記載のポリエステル組成物。
【化4】

[上記式中、R10は炭素数1〜10のアルキル基を表し、R11は炭素数1〜10のアルキル基を表す。]

【公開番号】特開2010−196024(P2010−196024A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−45999(P2009−45999)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(302011711)帝人ファイバー株式会社 (1,101)
【Fターム(参考)】