説明

洗濯機の振動吸収装置

【課題】安価なコストで、空間的な方向に発生する振動を吸収することのできる、洗濯機における外槽の振動を吸収するための振動吸収装置を提供する。
【解決手段】振動吸収装置30aは、外槽に固定された第1固定部材7と、外枠に固定された第2固定部材8と、第1固定部材7と第2固定部材8との間に掛け渡され、それ自身が振動に伴って伸縮することにより振動成分を吸収する弾性部材10とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、洗濯機における外槽の振動を吸収するための振動吸収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、高い節水効果を実現するために、垂直ではない方向(たとえば、水平方向や斜め方向など)に回転軸を有する水槽と、水槽を保持する外槽と、を備える洗濯機が存在する。そのような洗濯機について、たとえば、下記特許文献1〜3に開示されている。
【0003】
図6は、特許文献1に記載された、水平方向に水槽の回転軸を有する洗濯機の概略構成を示す図である。図6を参照して、特許文献1の洗濯機101は、外枠102と、外枠102の天井部分から下方に向かって設けられ、所定の付勢力を有するサスペンションばね104によって、保持された外槽105と、外槽105によって保持された水槽106とを含む。外槽105の下部には、垂直方向に延在し、外槽105と洗濯機本体の下底部108とを連結するダンパ107が設けられている。特許文献2には、斜め方向に水槽の回転軸を有する洗濯機(いわゆる「斜めドラム式洗濯機」である)が開示されており、特許文献1と略同様のダンパが開示されている。また、特許文献3にも、斜め方向に回転軸を有する洗濯機が開示されており、同様のダンパが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−131075号公報
【特許文献2】特開2009−297122号公報
【特許文献3】特開2009−297387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の洗濯機は、上記したようなダンパを採用していた。すなわち、垂直方向に設けられ、水槽を保持する外槽と洗濯機本体の下底部とを連結するダンパを有し、これにより、水槽の回転によって発生する外槽の振動を吸収することで、洗濯機の振動を吸収するようにしていた。
【0006】
しかしながら、水槽の回転軸が垂直方向ではないため、回転軸の方向と直交する方向に生じる水槽の回転による遠心力と、水槽や外槽の重量により生じる重力と、が合成された力に起因して空間的な方向(3次元的な方向)に振動が生じる。また、特に水槽が回転し始める時には、水槽に収容された洗濯物の位置が不規則な位置へと変位するため、水槽自体に生じる不規則な方向にかかる力(偏心荷重)に起因して、空間的な方向に振動が生じ得る。
【0007】
上記のような、空間的な方向に発生する力に対して、特許文献1〜3に開示されるダンパは垂直方向に設けられていることより、垂直成分の力を吸収するため、垂直成分の力に起因する振動については吸収し得る。しかしながら、特許文献1〜3のダンパでは、水平成分の力を吸収しないため、水平成分の力に起因する振動を低減し得ない。
【0008】
また、上記のようなダンパは非常に高価なため、市販の洗濯機に上記のダンパを採用することは望ましくない。
【0009】
この発明の目的は、上記したような問題点に鑑みてなされたものであり、安価なコストで、空間的な方向に発生する振動を吸収することのできる洗濯機の振動吸収装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明に係る振動吸収装置は、回転する水槽と、水槽を内部で保持する外槽と、外槽を収容する内部で保持する外枠とを含む洗濯機において、外槽と外枠とを連結するように設けられる。振動吸収装置は、外槽に固定された第1固定部材と、外枠に固定された第2固定部材と、第1固定部材と第2固定部材との間に掛け渡され、それ自身が振動に伴って伸縮することにより振動成分を吸収する弾性部材を含む。
【0011】
好ましくは、振動吸収装置は複数設けられる。
【0012】
さらに好ましくは、弾性部材は補強部を含む。なお、補強部は繊維であってもよいし、カーボンファイバ、網布、または、コイルであってもよい。
【0013】
外槽は洗濯機の外枠に上方向からばねで吊り下げられ、振動吸収装置は外槽を外枠に対して下方向に引っ張るように取付けられるのが好ましい。
【0014】
弾性部材は無端ベルトであるのが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
振動吸収装置を、外槽に固定された第1固定部材と、外枠に固定された第2固定部材と、第1固定部材と第2固定部材との間に掛け渡され、それ自身が振動に伴って伸縮することにより振動成分を吸収する弾性部材とで構成したため、3次元空間においていずれの方向に外槽が振動しても、弾性部材が伸縮することによって外槽の振動を吸収することができる。すなわち、従来のような高価なダンパを用いることなく、外槽の振動を吸収することができる。従って、安価なコストで、空間的な方向に発生する振動を吸収することのできる、洗濯機における振動吸収装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(A)はこの実施形態にかかる洗濯機の要部を示す、正面からの概略図であり、(B)は洗濯機の要部を示す、右側からの側面を示す概略図である。
【図2】(A)は図1(A)に示された一点鎖線の円IIAに囲まれる部分を拡大した振動吸収装置の概略斜視図であり、(B)はゴムベルトの取付け方法の一例を示す図である。
【図3】(A)はゴムベルトの単体を示す斜視図であり、(B)は(A)のIIIB−IIIBにおける断面図である。
【図4】は図1(B)のIV−IVで示す矢視において、サスペンションばねと振動吸収装置による張力の向きを示す図である。
【図5】振動吸収装置の他の例を示す概略図である。
【図6】従来の水平方向に水槽の回転軸を有する洗濯機の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、この発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。図1(A)はこの実施形態にかかる洗濯機1の要部を示す、正面からの概略図である。また、図1(B)は、洗濯機1の要部を示す、右側からの側面を示す概略図である。すなわち、図1(A)は図1(B)のIA−IAで示される矢視図であり、図1(B)は図1(A)のIB−IBで示される矢視図である。
【0018】
図1(A)および図1(B)を参照して、洗濯機1は、上記特許文献2や3に開示されるような、いわゆる「斜めドラム式洗濯機」であり、洗濯機1の前面側に設けられた図示のない窓部から洗濯物が収容され、図示のない操作部などから入力されるユーザの要求に応じて、洗濯、すすぎ、脱水などを実行する。
【0019】
この洗濯機1は、外枠2と、外枠2の天井部分から下方に向かって設けられ、所定の付勢力を有する2本のサスペンションばね4と、特に図1(B)を参照して、サスペンションばね4により吊り下げられ、後方から前方に向かって上方に傾斜した略円筒形状の外槽5と、外槽5の内部で保持され、外槽5と同様の略円筒形状を有し、後方から前方に向かって上方に傾斜した回転軸Pを有し、外槽5の後方に設けられた回転モータ15により、外槽5の内壁面に沿って回転する水槽6と、外槽5の外壁面に固定される第1固定部材7と、外枠の内壁に固定部材20を介して固定される第2固定部材8と、ゴム部材により形成され、第1固定部材7と第2固定部材8との間に設けられ、3次元空間においてそれ自身が振動に伴って伸縮することにより振動成分を吸収するゴムベルト10とを含む。第1固定部材7と第2固定部材8とゴムベルト10とで振動吸収装置30が構成されている。
【0020】
振動吸収装置30は、図1(A)に示すように、外槽5の下方における左側の位置にも対称的に設けられている。また、洗濯機1は、外枠2の下部に設けられる脚部材9により、床(地面)上に載置されている。なお、図1(B)においては、図1(A)で示した固定部材20を省略している。
【0021】
外槽5および水槽6は、前面(上面)側が開口した略円筒形状を有しており、前述した図示のない窓部から水槽6の内部に洗濯物を収容可能である。水槽6は、図示のない水供給部から供給される水とともに洗濯物を内部に収容した状態で、回転モータ15により駆動されて回転し、洗濯、すすぎ、脱水を実行する。また、このとき、水槽6を保持する外槽5は、水槽6の回転に基づいて空間的な方向に振動する。
【0022】
2本のサスペンションばね4は、水槽6が回転していない状態において外槽5を上方向へ付勢し、それを、2つの振動吸収装置30に設けられた2本のゴムベルト10で下方向に引っ張り、それらがつり合う位置(以下「基準位置」という)に外槽5などが支持される。 次に、振動吸収装置の具体的な構成について説明する。図2(A)は図1(A)に示された一点鎖線の円IIAに囲まれる部分を拡大した振動吸収装置30aの概略斜視図であり、図2(B)はゴムベルトの取付け方法の一例を示す図である。なお、図2(A)は、水槽が回転していない状態(外槽が振動していない状態)を示している。また、図3(A)は振動吸収装置に含まれるゴムベルトの単体を示す斜視図であり、図3(B)は図3(A)のIIIB−IIIBにおける断面図である。
【0023】
図2(A)を参照して、振動吸収装置30aは、図2(A)の略上方に位置する外槽の外壁に固定される第1固定部材7と、外枠に前述の固定部材を介して固定される第2固定部材8と、ゴム部材により形成され、第1固定部材7と第2固定部材8との間に設けられるゴムベルト10とを含む。
【0024】
第1固定部材7は、板状であり、ネジ止めなどの公知の手段により外槽に直接固定され、外槽とは反対側における先端側の幅方向の両端に突出部を有する第1基部7aと、棒状であり、第1基部7aの両突出部間に着脱可能に構成され、ゴムベルト10を引っかける第1引っかけ部7cを有する。
【0025】
第2固定部材8は、第1固定部材7と略同様の構成を有し、第1固定部材7とは一対で設けられる。すなわち、第2固定部材8は、板状であり、ネジ止めなどの公知の手段により外枠の内壁に前述した固定部材を介して固定され、外枠とは反対側における先端側の幅方向の両端に突出部を有する第2基部8aと、棒状であり、第2基部8aの両突出部間に着脱可能に構成され、ゴムベルト10を引っかける第2引っかけ部8cを有する。
【0026】
ゴムベルト10は、第1固定部材7と第2固定部材8との間において、第1固定部材7の第1引っかけ部7cおよび第2固定部材8の第2引っかけ部8cの各々に引っかけられる無端のベルトである。ゴムベルト10は、図3(A)に示すように、所定の幅を有する環形状、すなわちベルト状に形成されている。このゴムベルト10は、図3(B)に示すように、環形状のゴム層10aの中心部材に補強部として所定の強度を有する繊維により形成される繊維層10bが設けられて形成されている。この補強部はゴムベルトに耐久性を持たせると共に強度を上げるために設けられる。ゴムベルト10が繊維層10bを含むことより、ゴムベルト10の周方向および幅方向のいずれにおいても所定の強度を与えることが可能となる。すなわち、ゴムベルト10の張力を調整することが可能となる。
【0027】
また、ゴムベルト10の製造方法は、たとえば、一定の長さを有する軸心の外周に、ゴム層10aの一部を形成し、そのゴム層10aの外周に繊維層10bを形成し、またさらにその繊維層10bの外周にゴム層10aの残部を形成する。このように形成したものから、軸心を外すことにより、円筒形状のゴム部材が形成され、円筒形状のゴム部材の延在する方向と直交する方向に所定の幅で切断することにより、上記で説明したゴムベルト10が製造される。なお、このとき、それぞれの中心部に1本ずつ繊維層10bが含まれるように切断する。また、ここにおけるゴムベルト10は弾性部材として作用する。
【0028】
なお、上記実施の形態においては、補強部が繊維層である場合について説明したが、これに限らず、カーボンファイバや、網布や、コイル等であってもよい。
【0029】
また、ここでゴムベルトに使用されるゴムとしては、損失係数(tanδ)の値が高い、天然ゴム、ブタジェンゴム、スチレンブタジェンゴム、アクリロニトリルブタジェンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、アクリルゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム等が好ましい。
【0030】
振動吸収装置30aにおいては、たとえば、図2(B)に示すように、第1固定部材7および第2固定部材8から第1引っかけ部7cおよび第2引っかけ部8cが取り外されてゴムベルト10の形成する環の間に通され、再び第1固定部材7および第2固定部材8の先端部の所定の位置に第1引っかけ部7cおよび第2引っかけ部8cが取り付けられて、ゴムベルト10が設置される。このとき、自然な状態にあるゴムベルト10の環の有する円周の長さより、第1引っかけ部7cおよび第2引っかけ部8cが第1固定部材7および第2固定部材8に取り付けられた状態におけるゴムベルト10の経路の長さの方が長くなるように構成する。すなわち、ゴムベルト10が引っ張られた状態で設置する。こうすることにより、ゴムベルト10は、第1引っかけ部7cおよび第2引っかけ部8cに取り付けられた状態(図2(A)の状態)において、張力を有する。その結果、ゴムベルト10自身が振動に伴って伸びることにより振動成分を吸収する。
【0031】
なお、この場合、第1固定部材7と第2固定部材8との位置関係が変化しても、ゴムベルト10が張力を有する状態に保持するように構成する。たとえば、この実施形態においては、外槽が振動してもゴムベルト10が自然な状態に戻らない程度までゴムベルト10を引っ張った状態にして、第1固定部材7および第2固定部材8に設置される。このように構成することにより、外槽の振動に応じて第1固定部材7と第2固定部材8との間隔が狭まったり、広がったり、また、捩じれたりするなどといった、第1固定部材7および第2固定部材8の空間的な位置関係が変化しても、ゴムベルト10は常に張力を有する状態を保持する。すなわち、ゴムベルト10は3次元空間におけるいずれかの方向において、張力を保持する。
【0032】
なお、上記では振動吸収装置30aについてのみ説明したが、その他の図1(A)および図1(B)に示した振動吸収装置30bについても基本構成は同様であり、いずれの振動吸収装置30も、外槽5の外枠に固定される第1固定部材と、外枠やその他振動を生じない静止部材に固定部材を介して固定される第2固定部材と、ゴム部材により形成され、第1固定部材と第2固定部材との間に設けられ、3次元空間におけるいずれかの方向においてそれ自身が振動に伴って伸びることにより振動成分を吸収するよう、振動吸収装置30は設けられる。
【0033】
次に、各振動吸収装置30の配置について説明する。図4は図1(B)のIV−IVで示す矢視において、2本のサスペンションばね4と振動吸収装置30a,30bの配置およびサスペンションばね4と振動吸収装置30a,30bの張力の向きを示す図である。図4には、図1に示した2本のサスペンションばね4の合力による張力30cを示している。なお、図4において、外槽および各振動吸収装置を破線で示す。また、外槽が収容する水槽6の回転軸Pを点O(P)で示す。
【0034】
図4を参照して、外槽5の前方側の外壁面上において、点301a、点301bで示される位置に、各々が破線で図示される振動吸収装置30a、振動吸収装置30bを設ける。
【0035】
具体的に、外槽5の外壁において略真上に位置する点が点301cであり、点301cと点O(P)とを結んで描かれる第1直線L1を時計回りに120°回転させて描かれる第2直線L2と外槽5の外壁との交点が点301aであり、さらに第2直線L2を時計回りに120°回転させて描かれる第3直線L3と外槽5の外壁との交点が点301bである。振動吸収装置30a,30bの各々は、点301a〜301bから放射状に外槽5に張力がかかるように設けられる。すなわち、点301cから相互に120°離れた301aおよび301bの位置において振動吸収装置30a,30bの各第1固定部材を設け、各第1固定部材において作用させる張力が相互に120°づつ異なる3方向になるように各第2固定部材を配置して、対をなす第1および第2固定部材同士をゴムベルトで接続する。
【0036】
このように振動吸収装置30a,30bを配置することにより、外槽5を介在させて、略同一平面(点301a、点301b、点301cにより形成される平面)において平衡状態を形成することができる。
【0037】
なお、上記において原点Oから延在する3軸は各狭角が各々120°である場合について説明したが、これに限ることなく、略同一平面において3軸方向に作用する力の平衡状態が形成されれば120°でなくてもよい。力の平衡状態を形成するには、各振動吸収装置30a,30bを左右対称の位置に設けることが好ましい。
【0038】
なお、平衡状態を形成するための各ゴムベルトの張力が強ければ強いほど、外槽の位置を強固に維持することが可能となる。
【0039】
振動吸収装置におけるゴムベルトの各張力の大きさについては、再び図1(A)、図1(B)、図4を参照して、この実施形態において、2本のサスペンションばねによる上方向の引っ張り力に対して、2つの振動吸収装置のゴムベルトにより、外槽5を介在させて空間的な方向について平衡状態を形成するように各々特定される。実際には、外槽5に作用する重力を含んだ全ての力が平衡状態になるような大きさが特定される。これは、外槽5の位置決め、すなわち、外槽5を所定の位置で維持するためである。こうすることにより、外槽5に作用する全ての力は振動吸収装置の各ゴムベルトにおける張力により平衡にされ、外槽5を所定の位置で維持することが可能となる。
【0040】
また、洗濯機1が洗濯物を収容して洗濯や脱水の機能を実行する場合を考慮すると、外槽5の振動における中心の位置の近傍において平衡状態を形成するのが好ましい。従って、空間的な方向について平衡状態を形成する振動吸収装置30a,30bにより平衡状態が形成される平面が、外槽5の振動における中心の位置の近傍に位置するように構成される。なお、外槽における振動の中心の位置については、発明者らの経験値から概ね特定するのは容易だが、洗濯機の大きさや水槽の回転数などによって振動の中心の位置は異なるため、洗濯機ごとに各振動吸収装置の配置は、適宜、微調整される。
【0041】
また、各ゴムベルトの張力の大きさの調整は、種々の方法が考えられる。たとえば、ゴムベルトの環の円周が一定の場合は、第1引っかけ部と第2引っかけ部との距離を変更することにより、張力の大きさを調整することが可能である。また、第1引っかけ部と第2引っかけ部との距離が一定の場合は、ゴムベルトの環の円周を変更することにより、張力の大きさを調整することが可能である。また、ゴムベルト自体の構成を変更する、すなわち、ゴムの素材を変更したり、繊維層に用いる繊維の強度を変更したりすることにより、張力の大きさを調整することが可能である。また、第1固定部材と第2固定部材とを接続するゴムベルトの数(あるいは、振動吸収装置の数)を変更したりすることにより、張力の大きさを調整することが可能である。上記のような方法で、各振動吸収装置における張力を適宜調整することが可能である。
【0042】
以上のように構成することにより、各振動吸収装置におけるゴムベルトそれ自身が振動に伴って伸縮することにより振動成分を吸収するようにしたため、3次元空間においていずれの方向に外槽が振動しても、ゴムベルトが振動を吸収されるとともに、ゴムベルトの張力が振動する外槽を平衡状態に戻すように作用するため、外槽の振動における変位が低減される。
【0043】
すなわち、従来のような高価なダンパを用いることなく、外槽の振動を吸収することができるため、安価なコストで、空間的な方向に発生する振動を吸収することができる。
【0044】
なお、上記実施の形態においては、2本のサスペンションばねで水槽等の重量を支持するとともに上方向に付勢し、それを下方向に2個の振動吸収装置で引っ張る場合について説明したが、これに限らず、1本のサスペンションばねで水槽等の重量を支持してもよいし、3本以上のサスペンションばねで支持してもよい。また、振動吸収装置の個数も同様である。振動吸収装置を異なる方向に複数設けることで、三次元方向の振動をより効果的に吸収できる。
【0045】
なお、上記の実施形態において、着脱可能な第1および第2引っかけ部によりゴムベルトが取付けられる場合について説明したが、これに限ることはなく、ゴムベルトが張力を有する状態に構成されればよい。たとえば、図5は第1固定部材および第2固定部材の他の例を示す図である。図5を参照して、振動吸収装置60は、第1固定部材27と第2固定部材28と、ゴムベルト10とを有する。第1固定部材27は、図の略上方に位置する外槽に固定される第1基部27aと、第1基部27aの先端側において幅方向の一方端部のみが接続され、ゴムベルト10を引っかけさせる第1フック部27bと、第1フック部27bの先端部に設けられ、第1フック部27bに引っかけられたゴムベルト10が外れないようする第1ストッパ27cと、を有する。また、第2固定部材28は、第1固定部材27と基本構成が略同一で、第1固定部材27と一対をなす構成を有する。すなわち、第2固定部材28は、図の略下方に位置する外枠の内壁またはその他振動を生じない静止部材に固定部材を介して固定される第2基部28aと、第2基部28aの先端側において幅方向の一方端部のみが接続され、ゴムベルト10を引っかけさせる第2フック部28bと、第2フック部28bの先端部に設けられ、第2フック部28bに引っかけられたゴムベルト10が外れないようする第2ストッパ28cと、を有する。なお、第1フック部27bが第1基部27と接続される一方端側と第2フック部28bが第2基部28と接続される一方端側とが同一方側にあるのが好ましい。このように構成することにより、上記の実施形態の第1固定部材7および第2固定部材8と同様の作用を奏するとともに、ゴムベルト10の取付けにおいて、上記で説明した第1引っかけ部7cおよび第2引っかけ部8cのように、着脱可能な構成にする必要もなく、ゴムベルト10を容易に設置することができる。
【0046】
また、上記の他の例として、第1および第2固定部材における着脱可能な引っかけ部に代えて、第1および第2固定部材における第1基部および第2基部は、両先端側(外槽または外枠に固定される側とは反対側)にゴムベルトを通すことが可能な貫通孔を各々有する。そして、所定の長さを有する帯状のゴム部材を両貫通孔に通し、ゴム部材の両端部を接続することにより環状のゴムベルトとして、振動吸収装置としてもよい。
【0047】
なお、上記の実施形態において、第1固定部材と第2固定部材とにおける間隔は自由に変更可能にするようにしてもよい。たとえば、第2固定部材または第2固定部材が固定される固定部材が、ゴムベルトの張力の向きに平行に伸縮し、節々で伸縮を固定可能なテレスコピックパイプのような構造を有するようにしてもよい。
【0048】
なお、上記の実施形態において、1本のゴムベルトは、環形状のゴム層の内部に1本の繊維層を有する場合について説明したが、これに限ることなく、ゴム層の内部に複数の繊維層を設けてもよい。一方、ゴムベルトは、繊維層を有さないものであってもよい。すなわち、外槽における振動の種類などに応じて、繊維層の有無を特定するようにしてもよい。
【0049】
なお、上記の実施形態において、さらに従来用いられていた、特許文献1〜3に開示されるようなダンパを洗濯機が有していてもよい。あるいは、サスペンションばねおよび上記のダンパの両者をともに洗濯機が有していてもよい。なお、この場合、サスペンションばねや上記のダンパを考慮して、振動吸収装置30a,30bの配置やゴムベルトの張力を調整して空間的な方向について平衡状態を形成する。
【0050】
また、上記実施の形態においては、円筒状の外槽の軸方向の中央部の一断面に沿った位置の上下方向にサスペンションばねと振動吸収装置とを設ける場合について説明したが、これに限らず、円筒状の外槽の軸方向における複数の位置にサスペンションばねと振動吸収装置とを設けてもよい。
【0051】
なお、上記した振動吸収装置は、基本的に洗濯機とは別の部品である。すなわち、洗濯機の製作時において、振動吸収装置を洗濯機に組み込んで構成してもよいし、洗濯機の完成品にネジ止めや接着などの公知の手段により、振動吸収装置を組み込んで構成してもよい。
【0052】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示された実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 洗濯機、2 外枠、4 サスペンションばね、5 外槽、6 水槽、7 第1固定部材、8 第2固定部材、10 ゴムベルト、30a,30b 振動吸収装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転する水槽と、前記水槽を内部で保持する外槽と、前記外槽を収容する内部で保持する外枠とを含む洗濯機において、前記外槽と前記外枠とを連結するように設けられた振動吸収装置であって、
前記振動吸収装置は、
前記外槽に固定された第1固定部材と、
前記外枠に固定された第2固定部材と、
前記第1固定部材と前記第2固定部材との間に掛け渡され、それ自身が振動に伴って伸縮することにより振動成分を吸収する弾性部材を含む、洗濯機の振動吸収装置。
【請求項2】
前記振動吸収装置は複数設けられる、請求項1に記載の洗濯機の振動吸収装置。
【請求項3】
前記弾性部材は補強部を含む、請求項2に記載の洗濯機の振動吸収装置。
【請求項4】
前記補強部は繊維である、請求項3に記載の洗濯機の振動吸収装置。
【請求項5】
前記補強部はカーボンファイバ、網布、または、コイルである、請求項3に記載の洗濯機の振動吸収装置。
【請求項6】
前記外槽は前記洗濯機の前記外枠に上方向からばねで吊り下げられ、
前記振動吸収装置は前記外槽を前記外枠に対して下方向に引っ張るように取付けられる、請求項1〜5のいずれかに記載の洗濯機の振動吸収装置。
【請求項7】
前記弾性部材は無端ベルトである、請求項1〜6のいずれかに記載の洗濯機の振動吸収装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−179244(P2012−179244A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44198(P2011−44198)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000114710)ヤマウチ株式会社 (82)
【Fターム(参考)】